(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】保護素子および保護回路
(51)【国際特許分類】
H01H 85/045 20060101AFI20240424BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20240424BHJP
H01H 85/143 20060101ALI20240424BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H01H85/045 A
H01H37/76 F
H01H37/76 K
H01H37/76 Q
H01H85/143
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2019197864
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】小森 千智
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-214572(JP,A)
【文献】特開2016-035816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 85/045
H01H 37/76
H01H 85/143
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、
1つの接続配線によって電気的に接続された複数の可溶導体を介して電気的に接続されている保護素子。
【請求項2】
前記接続配線と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、1つの可溶導体を介して電気的に接続されている請求項1に記載の保護素子。
【請求項4】
前記可溶導体と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている請求項3に記載の保護素子。
【請求項5】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記発熱体が、前記可溶導体と電気的に絶縁されている保護素子。
【請求項6】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記3つ以上の電極は、多相交流における位相の異なる電力を供給する給電配線と、それぞれ電気的に接続されている保護素子。
【請求項7】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記3つ以上の電極のうち一部または全部の電極供給される電力の異常が検知されることにより、前記発熱体に電力を供給する制御回路を備える保護素子。
【請求項8】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、
1つの接続配線によって電気的に接続された複数の可溶導体を介して電気的に接続されている保護回路。
【請求項9】
前記接続配線と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている請求項8に記載の保護回路。
【請求項10】
前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、1つの可溶導体を介して電気的に接続されている請求項8に記載の保護回路。
【請求項11】
前記可溶導体と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている請求項10に記載の保護回路。
【請求項12】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記発熱体が、前記可溶導体と電気的に絶縁されている保護回路。
【請求項13】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記3つ以上の電極は、多相交流における位相の異なる電力を供給する給電配線と、それぞれ電気的に接続されている保護回路。
【請求項14】
可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有し、
前記3つ以上の電極のうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、前記発熱体に電力を供給する制御回路を備える保護回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子および保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動パワーステアリングシステム(EPS)が備えられた車両がある。電動パワーステアリングシステムは、車両の運行時にドライバーのハンドル操作に必要な力(操舵力)を補助する。
電動パワーステアリングシステムには、操舵力を補助する力の大きさに応じた回転トルクを出力するモータ(発動機)と、モータを駆動する駆動回路と、モータの異常挙動を防ぐ保護回路とが備えられている。
【0003】
一般に、モータを回転させる方法として、3つのコイル(固定子)と、各コイルに供給される3相交流における位相の異なる電力とを用いて回転磁界を作り、回転磁界に同調して磁石(回転子)を回転させる方法が用いられている。モータを回転させるための3つのコイルにはそれぞれ、インバータから給電配線を介して、3相交流における位相の異なる電力が供給される。
【0004】
従来の電動パワーステアリングシステムにおいては、各コイルと、各コイルに電力を供給するインバータとを繋ぐ給電配線に、各コイルとインバータとの電気的な接続の開閉を行う3端子有接点(メカニカル)リレーが設置されている。3端子有接点リレーは、車両のエンジンの起動に連動して、各コイルとインバータとの接続・遮断を行って、モータの駆動・停止を行う。また、3端子有接点リレーは、インバータの故障などによってコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、各コイルとインバータとの接続を遮断し、モータの駆動を停止する。
【0005】
従来の電動パワーステアリングシステムとして、例えば、特許文献1には、モータ駆動回路にて生成したモータ駆動電流により、3相交流モータからなる操舵アシストモータを駆動して、ハンドルの操舵を補助する操舵制御装置が記載されている。特許文献1に記載の操舵制御装置では、操舵アシストモータに接続される給電ライン上に非常用スイッチ素子を設け、異常発生時に非常用スイッチ素子をターンオフしてモータ駆動回路と操舵アシストモータとの間を断絶する。特許文献1には、非常用スイッチ素子のターンオフ後、操舵アシストモータにて発電される電力を受けて溶断され得るヒューズを有する保護回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電動パワーステアリングシステムにおいて、コイルに供給された電力に異常が発生した場合などに、3端子有接点リレーを用いてモータの駆動を停止させているものでは、以下に示す問題があった。
3端子有接点リレーでは、機械的に接点を開閉させることにより、各コイルとインバータとの接続・遮断の切り替えを行う。このため、接点に、汚れなどの導通を阻害する成分が付着して、導通不良が生じる場合があった。
【0008】
また、3端子有接点リレーでは、接点を接触させて通電するため、内部抵抗が高く、発熱しやすい。このため、コイルに大電流を流してモータに十分な回転トルクを出力させることよりも、3端子有接点リレーの発熱を抑制することを優先せざるを得ず、モータの出力を抑制しなければならない場合があった。
【0009】
3端子有接点リレーの内部抵抗を低下させる方法としては、通電時に接触させる接点を大きくすることが考えられる。しかし、3端子有接点リレーの接点を大きくすると、3端子有接点リレーの容積が増大し、電動パワーステアリングシステムが大型化する。このことから、3端子有接点リレーの接点を大きくして、内部抵抗を低下させる方法を用いることは、困難である。
【0010】
これらのことから、3端子有接点リレーを用いることなく、電動パワーステアリングシステムにおいて、コイルに供給された電力に異常が発生した場合にモータを停止できる技術が求められている。
【0011】
特許文献1に記載の操舵制御装置では、異常発生時に非常用スイッチ素子をターンオフしてモータ駆動回路と操舵アシストモータとの間を断絶するため、3端子有接点リレーを用いる必要はない。
しかし、特許文献1に記載の技術を用いて、異常発生時にモータ駆動回路と操舵アシストモータとを断絶できるようにするためには、多数の素子を設ける必要があった。このため、特許文献1に記載の操舵制御装置は、製造時に手間がかかるという不都合があった。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、3端子有接点リレーと比較して小型で大電流を流すことができ、しかも3端子有接点リレーのように接点の汚れによる導通不良が生じることはなく、少ない素子数で遮断すべき電流経路を遮断できる保護素子および保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0014】
(1)可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有する保護素子。
【0015】
(2)前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、接続配線によって電気的に接続された複数の可溶導体を介して電気的に接続されている(1)に記載の保護素子。
(3)前記接続配線と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている(2)に記載の保護素子。
【0016】
(4)前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、1つの可溶導体を介して電気的に接続されている(1)に記載の保護素子。
(5)前記可溶導体と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている(4)に記載の保護素子。
【0017】
(6)前記発熱体が、前記可溶導体と電気的に絶縁されている(1)~(5)のいずれかに記載の保護素子。
(7)前記発熱体が、前記可溶導体と電気的に接続されている(1)~(5)のいずれかに記載の保護素子。
【0018】
(8)前記3つ以上の電極は、多相交流における位相の異なる電力を供給する給電配線と、それぞれ電気的に接続されている(1)~(7)のいずれかに記載の保護素子。
(9)前記3つ以上の電極のうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、前記発熱体に電力を供給する制御回路を備える(1)~(8)のいずれかに記載の保護素子。
【0019】
(10)可溶導体と、
前記可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、
前記可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有する保護回路。
【0020】
(11)前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、接続配線によって電気的に接続された複数の可溶導体を介して電気的に接続されている(10)に記載の保護回路。
(12)前記接続配線と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている(11)に記載の保護回路。
【0021】
(13)前記3つ以上の電極のうち2つ以上の電極同士が、1つの可溶導体を介して電気的に接続されている(10)に記載の保護回路。
(14)前記可溶導体と前記発熱体の少なくとも一部とが平面視で重なっている(13)に記載の保護回路。
【0022】
(15)前記発熱体が、前記可溶導体と電気的に絶縁されている(10)~(14)のいずれかに記載の保護回路。
(16)前記発熱体が、前記可溶導体と電気的に接続されている(10)~(14)のいずれかに記載の保護回路。
【0023】
(17)前記3つ以上の電極は、多相交流における位相の異なる電力を供給する給電配線と、それぞれ電気的に接続されている(10)~(16)のいずれか一項に記載の保護回路。
(18)前記3つ以上の電極のうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、前記発熱体に電力を供給する制御回路を備える(10)~(17)のいずれか一項に記載の保護回路。
【発明の効果】
【0024】
本発明の保護素子および保護回路は、可溶導体と、可溶導体を介して電気的に接続された3つ以上の電極と、可溶導体を加熱して溶断させる発熱体とを有する。このため、本発明の保護素子および保護回路によれば、発熱体の発熱により、3つ以上の電極と電気的に接続された電流経路を1つの素子で遮断できる。したがって、本発明の保護素子および保護回路を用いることで、1つの電流経路のみ遮断する素子を用いる場合と比較して、素子数を少なくできる。また、本発明の保護素子および保護回路は、3端子有接点リレーと比較して小型で大電流を流すことができ、しかも3端子有接点リレーのように接点の汚れによる導通不良が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の保護素子を示した平面図である。
【
図2】
図1に示す保護素子を
図1の反対側から見た平面図である。
【
図3】
図1に示す保護素子をA-A´線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図1に示す保護素子の回路構成からなる第1実施形態の保護回路を示した模式図である。
【
図5】第2実施形態の保護素子を示した平面図である。
【
図6】
図5に示す保護素子を
図5の反対側から見た平面図である。
【
図7】
図5に示す保護素子をB-B´線に沿って切断した断面図である。
【
図8】
図5に示す保護素子の回路構成からなる第2実施形態の保護回路を示した模式図である。
【
図9】第3実施形態の保護素子を示した平面図である。
【
図11】
図9に示す保護素子をC-C´線に沿って切断した断面図である。
【
図12】
図9に示す保護素子の回路構成からなる第3実施形態の保護回路を示した模式図である。
【
図13】第4実施形態の保護素子を示した平面図である。
【
図15】
図13に示す保護素子をD-D´線に沿って切断した断面図である。
【
図16】
図13に示す保護素子の回路構成からなる第4実施形態の保護回路を示した模式図である。
【
図17】第5実施形態の保護素子を示した平面図である。
【
図18】
図17に示す保護素子の回路構成からなる第5実施形態の保護回路を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る保護素子および保護回路について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施できる。
【0027】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の保護素子を示した平面図である。
図2は、
図1に示す保護素子を
図1の反対側から見た平面図である。
図3は、
図1に示す保護素子をA-A´線に沿って切断した断面図である。
図4は、
図1に示す保護素子の回路構成からなる第1実施形態の保護回路を示した模式図である。
本実施形態の保護素子10は、
図1~
図3に示すように、絶縁基板5と、可溶導体1aと、3つの電極2a、2b、2cと、発熱体3aと、第1発熱体電極4aと、第2発熱体電極4bとを有する。
【0028】
本実施形態においては、
図1および
図4に示す保護素子10を、3つのコイル(固定子)と、各コイルに供給される3相交流における位相の異なる電力とを用いて回転磁界を作り、回転磁界に同調して磁石(回転子)を回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の保護素子10は、可溶導体1aが3つのコイルに電力を供給する電流経路の一部を構成する。本実施形態では、可溶導体1aが溶断することにより、3つのコイルのうち少なくとも2つのコイルに電力を供給する電流経路を遮断する。
【0029】
絶縁基板5は、平面視略長方形の板状である。絶縁基板5は、電気絶縁性を有するものであればよく、例えば、樹脂基板、セラミックス基板、樹脂とセラミックスとの複合体基板など、公知の絶縁基板を用いることができる。樹脂基板としては、具体的には、エポキシ樹脂基板、フェール樹脂基板、ポリイミド基板などが挙げられる。セラミックス基板としては、具体的には、アルミナ基板、ガラスセラミックス基板、ムライト基板、ジルコニア基板などが挙げられる。複合体基板としては、具体的には、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。
【0030】
本実施形態の保護素子10では、可溶導体(ヒューズエレメント)1aは、
図1に示すように、絶縁基板5の一方の面(
図1における表面5a)の略中央に、1つのみ設けられている。可溶導体1aは、
図3に示すように、ハンダなどの導電接続部材8によって接合されていることにより、3つの電極2a、2b、2cと、それぞれ電気的に接続されている。
図3に示すように、可溶導体1aと絶縁基板5の表面5aとの間には、空間が形成されている。可溶導体1aは、発熱体3aの発熱によって、および/または定格を超える過剰な電流が通電された過電流状態となることによって、溶断する。
【0031】
図1に示すように、可溶導体1aの平面形状は、絶縁基板5の側面と略平行の辺を有する略長方形である。本実施形態においては、可溶導体1aが、絶縁基板5の側面と略平行な辺を有する平面視略長方形である場合を例に挙げて説明するが、可溶導体の平面形状は、電極2a、2b、2cの配置などに応じて適宜決定でき、特に限定されない。例えば、可溶導体の平面形状は、略正方形、略円形、略楕円形、略三角形などの多角形、略星形などであってもよいし、不定形であってもよい。
可溶導体1aの厚みは、可溶導体1aの材料、保護素子10の用途などに応じて適宜決定でき、特に限定されない。また、可溶導体の厚みは、略均一であってもよいし、厚い領域と薄い領域とを有していてもよい。
【0032】
可溶導体1aは、均一の材料からなる1層のものであってもよいし、高融点金属層と低融点金属層とを含有する構造体であってもよい。
可溶導体1aが均一の材料からなる1層のものである場合、可溶導体1aの材料としては、例えば、SnAgCu系のPbフリーハンダのほか、BiPbSn合金、BiPb合金、BiSn合金、SnPb合金、PbIn合金、ZnAl合金、InSn合金、PbAgSn合金等を用いることができる。
【0033】
可溶導体1aが高融点金属層と低融点金属層とを含有する構造体である場合、例えば、低融点金属からなる内層と、内層の外面を被覆するように形成された高融点金属からなる外層とからなる積層構造体、高融点金属からなる内層と、内層の外面を被覆するように形成された低融点金属からなる外層とからなる積層構造体、低融点金属からなる層と高融点金属からなる層とを厚み方向に交互に積層した4層以上の多層構造体などを用いることができる。
【0034】
低融点金属層に用いられる金属としては、ハンダ又はSnを主成分とする金属を用いることが好ましい。このような金属としては、一般的に「Pbフリーハンダ」と呼ばれる金属(例えば、千住金属工業製、M705等)などを用いることができる。低融点金属層に用いられる金属は、リフロー炉の温度よりも高い融点を有するものでなくてもよく、例えば200℃程度で溶融するものであってもよい。
高融点金属層に用いられる金属としては、例えば、Ag若しくはCu、またはこれらのうちのいずれかを主成分とする金属などを用いることができる。高融点金属層に用いられる金属は、リフローによって可溶導体1aを実装する場合に可溶導体1aが溶融しないように、リフロー炉の温度よりも高い融点を有するものであることが好ましい。
【0035】
可溶導体1aが、低融点金属からなる内層と高融点金属からなる外層とからなる上記の積層構造体である場合、内層の外面を被覆するように外層が形成されているため、低融点金属の溶融温度を超えるリフロー温度で可溶導体1aを実装しても、可溶導体1aが溶断しない。したがって、リフローによって効率よく可溶導体1aを実装できる。
【0036】
また、可溶導体1aが、低融点金属からなる内層と高融点金属からなる外層とからなる積層構造体である場合、可溶導体1aが溶断される際に、溶融した低融点金属が高融点金属からなる外層を浸食する。このため、外層を形成している高融点金属が融点よりも低温で溶融し、効率よく溶断される。したがって、可溶導体1aが、低融点金属からなる内層と高融点金属からなる外層とからなる積層構造体である保護素子10では、例えば、高融点金属からなる同じ大きさの可溶導体を有する場合と比較して、可溶導体の断面積を大きくでき、電流定格を向上させることができる。また、例えば、高融点金属からなる同じ電流定格の可溶導体を有する場合と比較して、小型化および/または薄型化でき、速溶断性に優れる。
【0037】
可溶導体1aが、高融点金属層と低融点金属層とを含有する構造体である場合、周知の積層技術および/または膜形成技術を用いて可溶導体1aを形成できる。
例えば、可溶導体1aが、高融点金属からなる内層と高融点金属からなる外層とからなる積層構造体である場合、低融点金属からなる箔の表面に、メッキ技術を用いて高融点金属層を成膜する方法を用いて製造できる。
【0038】
本実施形態の保護素子10に備えられている3つの電極2a、2b、2cはそれぞれ、
図1および
図3に示すように、絶縁基板5の表面5aにおいて導電接続部材8によって可溶導体1aと電気的に接続されている。このことにより、電極2a、2b、2c同士が、1つの可溶導体1aを介して電気的に接続されている。
3つの電極2a、2b、2cは、3相交流における1/3ずつ位相の異なる電力を供給する給電配線(不図示)と、それぞれ電気的に接続されている。このことにより、保護素子10の可溶導体1aが3つのコイルに電力を供給する電流経路の一部とされている。
【0039】
図1~
図3に示すように、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2a、2b、2cは、それぞれ絶縁基板5の側面に形成されたキャスタレーションを介して、絶縁基板5の他方の面(
図1における裏面5b)に形成された電極2a、2b、2cと電気的に接続されている。キャスタレーションは、絶縁基板5の側面に設けられた略半円のスルーホール内を、導電材料で被覆してなるものである。絶縁基板5の表面5aに形成された電極2a、2b、2cと、絶縁基板5の裏面5bに形成された電極2a、2b、2cとは、スルーホールを介して電気的に接続されていてもよい。
【0040】
図1および
図2に示すように、本実施形態の保護素子10では、絶縁基板5の表面5aおよび裏面5bに形成された電極2a、2b、2cは、いずれも平面視略長方形の絶縁基板5における長辺に沿う縁部に配置されている。より詳細には、電極2a、2bは、絶縁基板5の2つの長辺のうち一方の長辺の縁部に沿って離間して配置されている。電極2cは、絶縁基板5の2つの長辺のうち、電極2a、2bが配置されていない方の長辺の縁部に沿って配置されている。
図1および
図2に示すように、電極2a、2bと電極2cとは、平面視で対向配置されている。電極2cは、電極2a、2bと比較して、絶縁基板5の長辺に沿う方向の長さが長いものとされている。
【0041】
本実施形態の保護素子10に備えられている3つの電極2a、2b、2cは、それぞれAg配線、Cu配線などの導電パターンによって形成されている。3つの電極2a、2b、2cは、それぞれ異なる材料で形成されていてもよいし、3つのうちの一部または全部が同じ材料で形成されていてもよい。
電極2a、2b、2cの表面は、それぞれ酸化などによる電極特性の変質を抑制するために、電極保護層で被覆されていてもよい。電極保護層の材料としては、例えば、Snめっき膜、Ni/Auめっき膜、Ni/Pdめっき膜、Ni/Pd/Auめっき膜などを用いることができる。
【0042】
本実施形態の保護素子10に備えられている発熱体3aは、
図2に示すように、平面視略長方形の絶縁基板5における裏面5bに設けられている。発熱体3aは、絶縁基板5の裏面5bにおける短辺方向略中央部に、長辺方向に沿って帯状に設けられている。
図1~
図3に示すように、発熱体3aは、絶縁基板5によって、可溶導体1aと電気的に絶縁されている。
【0043】
発熱体3aは、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知された場合に、後述する制御回路によって通電される。発熱体3aは、通電されることにより発熱し、絶縁基板5を介して可溶導体1aを加熱し、溶断させる。
本実施形態では、
図3に示すように、可溶導体1aと発熱体3aの一部とが平面視で重なっている。具体的には、発熱体3aの中央部が、可溶導体1aと平面視で重なっており、可溶導体1aにおける絶縁基板5の短辺方向略中央部と発熱体3aとが重なるように配置されている。本実施形態では、発熱体3aが発熱すると、可溶導体1aの発熱体3aと平面視で重なっている領域に効率よく熱が伝わり、可溶導体1aの絶縁基板5の短辺方向略中央部が効率よく加熱され、可溶導体1aが速やかに溶断される。
【0044】
発熱体3aは、比較的抵抗が高く、通電することにより発熱する高抵抗導電性材料によって形成されている。高抵抗導電性材料としては、例えば、ニクロム、W、Mo、Ruを含む材料などが挙げられる。
【0045】
本実施形態の保護素子10に備えられている発熱体3aは、
図2に示すように、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bの2つの発熱体電極と電気的に接続されている。第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bは、平面視略長方形の絶縁基板5の裏面5bにおける短辺に沿う縁部に、平面視で対向して配置されている。第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bの材料としては、電極2a、2b、2cに用いることのできる材料と同じ材料を用いることができる。第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bは、それぞれ異なる材料で形成されていてもよいし、同じ材料で形成されていてもよい。
【0046】
本実施形態の保護素子10は、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、発熱体3aに電力を供給する制御回路を備えている。具体的には、本実施形態では、上記の異常を検知することにより、制御回路から、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bとを用いて、発熱体3aに電力が供給されるようになっている。
【0047】
本実施形態の保護素子10は、3つの電極2a、2b、2cに供給された電力の異常を検出する検出回路を備えている。検出回路は、3つの電極2a、2b、2cにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線上において、所定の抵抗成分に通電して生じた電圧量をそれぞれ検出し、その結果を制御回路に供給する。
制御回路は、検出回路による検出結果に応じて、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知された場合に、第2発熱体電極4bを地絡させ、第1発熱体電極4aを介して発熱体3aに電力を供給する。
【0048】
(製造方法)
本実施形態の保護素子10は、例えば、以下に示す方法により製造できる。
まず、絶縁基板5の表面5aの所定の位置に、3つの電極2a、2b、2cを形成する。電極2a、2b、2cは、絶縁基板5の表面5aに導電材料をパターニングする方法など公知の方法により形成できる。次に、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、表面5aと同様にして、3つの電極2a、2b、2cを形成する。
【0049】
次に、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、導電材料をパターニングする方法など公知の方法を用いて、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bを形成する。第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bを、電極2a、2b、2cと同じ材料を用いて形成する場合には、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bと電極2a、2b、2cとを同時に形成してもよい。
電極2a、2b、2c、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bは、絶縁基板5となる基材の表面および裏面の所定の位置に、所定の導電材料を含む導電ぺーストを塗布し、これを焼成する方法により形成してもよい。
【0050】
次に、絶縁基板5の側面おける電極2a、2b、2cに対応する位置に、略半円のスルーホールを形成する。次いで、スルーホール内を導電材料で被覆し、キャスタレーションを形成する。これにより、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2a、2b、2cと、絶縁基板5の裏面5bに形成された電極2a、2b、2cとが、電気的に接続される。
【0051】
次に、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、発熱体3aを形成する。発熱体3aは、例えば、上記の高抵抗導電性材料と樹脂バインダとを含む混合ペーストを製造し、これをスクリーン印刷技術を用いて絶縁基板5の裏面5bにパターン形成し、焼成する方法などにより形成できる。
次に、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2a、2b、2c上に、クリームハンダなどを用いて可溶導体1aを接合し、リフロー炉を用いてリフローはんだ付けする方法などにより、電極2a、2b、2c上にハンダなどの導電接続部材8を介して可溶導体1aを固定する。
以上の工程により、本実施形態の保護素子10が得られる。
【0052】
本実施形態の保護素子10を用いて停止させるモータ(不図示)は、3つのコイル(固定子)と、各コイルに供給される電力とを用いて回転磁界を作り、回転磁界に同調して磁石(回転子)を回転させるものである。
モータを回転させるための3つのコイルとしては、公知のコイルを用いることができる。3つのコイルは、120°ずつ離れて同心円状に配置されている。3つのコイルには、それぞれインバータから給電配線を介して、3相交流における1/3ずつ位相の異なる電力が供給されている。3つのコイルは、それぞれ一端がインバータと電気的に接続され、インバータと反対側の端部が給電配線を介して保護素子10の電極2a、2b、2cと電気的に接続されている。このことにより、本実施形態の保護素子10は、Y結線(スター結線)における接合部を形成している。そして、保護素子10の可溶導体1aに、Y結線の中性点が形成されている。
【0053】
図4は、
図1に示す保護素子10の回路構成からなる第1実施形態の保護回路を示した模式図である。
図4において、
図1~
図3に示す保護素子10と同じ部材については、同じ符号を付している。
図4に示すように電極2aは、可溶導体11と電気的に接続されている。電極2bは、可溶導体12と電気的に接続されている。電極2cは、可溶導体13と電気的に接続されている。
図4に示す保護回路には、可溶導体11の電極2aと反対側と、可溶導体12の電極2bと反対側と、可溶導体13の電極2cと反対側とを、中性点で一括して接続してなるY結線(スター結線)が用いられている。
【0054】
図4においては3つの可溶導体11、12、13が記載されているが、
図1~
図3に示す保護素子10においては、
図4における3つの可溶導体11、12、13の機能が、3つの可溶導体11、12、13に対応する一体化された1つのみの可溶導体1aによって得られるようになっている。
図4に示すように、発熱体3aは、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bの2つの発熱体電極と電気的に接続されている。また、発熱体3aは、
図4に示すように、可溶導体11、12、13(
図1~
図3における可溶導体1a)と電気的に絶縁されている。
【0055】
本実施形態の保護回路は、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、3つの電極2a、2b、2cにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路を遮断する。
本実施形態では、保護回路の有する検出回路(不図示)が、3つの電極2a、2b、2cに供給された電力の異常を検出する。検出回路は、3つの電極2a、2b、2cにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線上において、所定の抵抗成分に通電して生じた電圧量をそれぞれ検出し、その結果を制御回路(不図示)に供給する。
【0056】
制御回路は、検出回路による検出結果に応じて、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知された場合に、第2発熱体電極4bを地絡させ、第1発熱体電極4aを介して発熱体3aに電力を供給する。このことにより、保護素子10の発熱体3aが発熱し、
図4に示す可溶導体11、12、13(
図1~
図3における可溶導体1a)が溶融して溶断される。
また、本実施形態では、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に定格を超える過電流が通電された場合、発熱体3aに電力が供給されていなくても、保護素子10の可溶導体1aが自己発熱により溶融して溶断する。
【0057】
図4に示すように、可溶導体11、12、13(
図1~
図3における可溶導体1a)が溶断されることにより、電極2aと電極2b、電極2bと電極2c、電極2aと電極2cのうち少なくとも2つの接続が遮断されると、3つの電極2a、2b、2cにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路が遮断される。
その結果、本実施形態では、モータを回転させる回転磁界が発生しなくなり、モータの回転が停止する。モータの回転が停止した後、制御回路で第2発熱体電極4bの地絡をやめることにより、発熱体3aへの電力供給が停止される。
【0058】
本実施形態の保護素子10および保護回路は、可溶導体と、可溶導体を介して電気的に接続された3つの電極2a、2b、2cと、可溶導体を加熱して溶断させる発熱体3aとを有する。このため、本実施形態の保護素子10および保護回路によれば、発熱体3aの発熱により、3つの電極2a、2b、2cと電気的に接続された3つの電流経路を、1つの素子で遮断できる。したがって、本実施形態の保護素子10および保護回路を用いることで、例えば、3つの電流経路それぞれに1つの電流経路のみ遮断する素子を設置する場合と比較して、素子数を少なくできる。また、本実施形態の保護素子10および保護回路は、3端子有接点リレーと比較して小型で大電流を流すことができ、しかも3端子有接点リレーのように接点の汚れによる導通不良が生じることはない。
【0059】
本実施形態の保護素子10および保護回路は、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、発熱体3aに電力を供給する制御回路を備えている。このため、本実施形態の保護素子10および保護回路では、3つの電極2a、2b、2cのうち一部または全部の電極に供給された電力に異常が発生した場合に、発熱体3aが発熱して可溶導体が溶断され、可溶導体を介した電流経路が遮断される。
【0060】
また、本実施形態の保護素子10および保護回路では、3つの電極2a、2b、2cが、3相交流における1/3ずつ位相の異なる電力を供給する給電配線と、それぞれ電気的に接続されている。このため、本実施形態の保護素子10および保護回路は、例えば、3つのコイルと、各コイルに供給される位相の異なる電力とを用いて回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に好適に用いることができる。より具体的には、本実施形態の保護素子10および保護回路は、電動パワーステアリングシステムにおいて、コイルに供給する電力を変換するインバータが故障した場合など、コイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途などに好ましく使用できる。
【0061】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態の保護素子を示した平面図である。
図6は、
図5に示す保護素子を
図5の反対側から見た平面図である。
図7は、
図5に示す保護素子をB-B´線に沿って切断した断面図である。
図8は、
図5に示す保護素子の回路構成からなる第2実施形態の保護回路を示した模式図である。なお、
図5は、
図7に示す保護素子20のカバー部材6を外した状態を示している。
【0062】
本実施形態の保護素子20は、
図5~
図7に示すように、絶縁基板5と、3つの可溶導体1b、1c、1dと、3つの電極2d、2e、2fと、発熱体3aと、絶縁部材3bと、第1発熱体電極4aと、第2発熱体電極4bと、カバー部材6と、接続配線7aとを有する。
本実施形態の保護素子20において、第1実施形態の保護素子10と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態の保護素子20では、第1実施形態の保護素子10とは異なり、絶縁基板5の表面5aに、略同形の3つの可溶導体1b、1c、1dが設けられている。3つの可溶導体1b、1c、1dは、いずれも平面視略矩形である。
3つの可溶導体1b、1c、1dは、それぞれ異なる材料で形成されていてもよいし、3つのうちの一部または全部が同じ材料で形成されていてもよい。本実施形態では、3つの可溶導体1b、1c、1dが略同形であるため、これらが全て同じ材料で形成されている場合、3つの可溶導体1b、1c、1dの溶断しやすさが略均一となり、好ましい。また、3つの可溶導体1b、1c、1dが、全て同じ材料で形成されている場合、3つのうちの一部または全部が異なる場合と比較して、少ない製造工程で可溶導体1b、1c、1dを形成でき、生産性に優れる。
【0064】
また、本実施形態の保護素子20では、第1実施形態の保護素子10における電極2a、2bと同様に、電極2d、2eが設けられている。しかし、
図5に示すように、本実施形態の保護素子20における電極2fは、第1実施形態の保護素子10における電極2cとは異なり、電極2d、2eと略同形とされている。
【0065】
また、
図5に示すように、本実施形態の保護素子20では、第1実施形態の保護素子10とは異なり、絶縁基板5の表面5aに接続配線7aが設けられている。接続配線7aは、
図5および
図7に示すように、平面視略長方形の絶縁基板5の短辺方向略中央部に長辺方向に沿って帯状に設けられている。接続配線7aは、
図7に示すように、発熱体3aの少なくとも一部と平面視で重なっている。このため、発熱体3aが発熱すると、絶縁基板5を介して、接続配線7aの発熱体3aと平面視で重なっている領域に効率よく熱が伝わる。そして、接続配線7aを介して可溶導体1b、1c、1dが効率よく加熱され、可溶導体1b、1c、1dが速やかに溶断される。
【0066】
接続配線7aの材料としては、第1実施形態の保護素子10における電極2a、2b、2cに用いることのできる材料と同じ材料などを用いることができる。
【0067】
本実施形態の保護素子20では、
図5に示すように、可溶導体1bは、接続配線7aと電極2dとに跨って配置されている。可溶導体1cは、接続配線7aと電極2eとに跨って配置されている。可溶導体1dは、接続配線7aと電極2fとに跨って配置されている。このことにより3つの電極2d、2e、2f同士が、接続配線7aによって電気的に接続された3つの可溶導体1b、1c、1dを介して電気的に接続されている。
【0068】
本実施形態の保護素子20では、
図7に示すように、絶縁基板5の表面5aに、接着剤(不図示)を介してカバー部材6が取り付けられている。カバー部材6が取り付けられていることによって、絶縁基板5の表面5aに形成されている可溶導体1b、1c、1dおよび電極2d、2e、2fが保護される。また、カバー部材6が取り付けられていることによって、可溶導体1b、1c、1dが溶断することにより発生する溶融物の飛散が防止される。カバー部材6の材料としては、例えば、各種エンジニアリングプラスチックおよび/またはセラミックスなどを用いることができる。
【0069】
本実施形態の保護素子20では、
図6および
図7に示すように、絶縁基板5の裏面5bに設けられている発熱体3aを被覆する絶縁部材3bが設けられている。絶縁部材3bは、ガラスなどの絶縁材料で形成されている。
【0070】
(製造方法)
本実施形態の保護素子20は、例えば、以下に示す方法により製造できる。
まず、絶縁基板5の表面5aおよび/または裏面5bの所定の位置に、第1実施形態の保護素子10と同様にして、3つの電極2d、2e、2fと、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bを形成する。
また、電極2d、2e、2fと同様にして、絶縁基板5の表面5aに、接続配線7aを形成する。接続配線7aを、電極2d、2e、2fと同じ材料を用いて形成する場合には、接続配線7aと電極2d、2e、2fとを同時に形成してもよい。
【0071】
その後、第1実施形態の保護素子10と同様にして、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2d、2e、2fと、絶縁基板5の裏面5bに形成された電極2d、2e、2fとを、電気的に接続する。
次に、第1実施形態の保護素子10と同様にして、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、発熱体3aを形成する。続いて、従来公知の方法により、発熱体3a上に、発熱体3aを被覆する絶縁部材3bを形成する。
【0072】
次に、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2d、2e、2fおよび接続配線7a上に、ハンダなどの導電接続部材8を用いて可溶導体1b、1c、1dをそれぞれ接合する。
次に、
図7に示すように、絶縁基板5の表面5aに、接着剤(不図示)を用いてカバー部材6を取り付ける。
以上の工程により、本実施形態の保護素子20が得られる。
【0073】
本実施形態においては、保護素子20を、第1実施形態と同様のモータを停止させる用途に用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の保護素子20は、可溶導体1b、1c、1dがそれぞれ3つのコイルに電力を供給する電流経路の一部を構成する。本実施形態では、可溶導体1b、1c、1dのうち少なくとも2つが溶断することにより、3つのコイルのうち少なくとも2つのコイルに電力を供給する電流経路を遮断する。
本実施形態の保護素子20は、第1実施形態の保護素子10と同様に、Y結線(スター結線)における接合部を形成している。しかし、本実施形態の保護素子20は、第1実施形態の保護素子10と異なり、保護素子20の可溶導体1b、1c、1dに電気的に接続された接続配線7aに、Y結線の中性点が形成されている。
【0074】
図8は、
図5に示す保護素子20の回路構成からなる第2実施形態の保護回路を示した模式図である。
図8において、
図5~
図7に示す保護素子20と同じ部材については、同じ符号を付している。
図5および
図8に示すように、電極2dは、可溶導体1bと電気的に接続されている。電極2eは、可溶導体1cと電気的に接続されている。電極2fは、可溶導体1dと電気的に接続されている。
図8に示す保護回路には、可溶導体1bの電極2dと反対側と、可溶導体1cの電極2eと反対側と、可溶導体1dの電極2fと反対側とを、接続配線7aによって一括して接続してなるY結線(スター結線)が用いられている。
【0075】
図8に示すように、発熱体3aは、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bの2つの発熱体電極と電気的に接続されている。また、発熱体3aは、
図8に示すように、可溶導体1b、1c、1dと電気的に絶縁されている。
【0076】
本実施形態の保護回路は、3つの電極2d、2e、2fのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、3つの電極2d、2e、2fにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路を遮断する。
本実施形態では、第1実施形態と同様にして、検出回路が3つの電極2d、2e、2fに供給された電力の異常を検出する。
【0077】
制御回路は、検出回路による検出結果に応じて、第1実施形態と同様にして、第2発熱体電極4bを地絡させ、第1発熱体電極4aを介して発熱体3aに電力を供給する。このことにより、保護素子20の発熱体3aが発熱し、絶縁基板5を介して接続配線7aを加熱する。そして、絶縁基板5および/または接続配線7aを介して可溶導体1b、1c、1dが加熱されて、溶断される。
また、本実施形態では、3つの電極2d、2e、2fのうち一部または全部の電極に定格を超える過電流が通電された場合、発熱体3aに電力が供給されていなくても、保護素子20の可溶導体1b、1c、1dが自己発熱により溶融して溶断する。
【0078】
図8に示す可溶導体1b、1c、1dのうち少なくとも2つが溶断されることにより、電極2dと接続配線7a、電極2eと接続配線7a、電極2dと接続配線7aのうち少なくとも2つの接続が遮断されると、3つの電極2d、2e、2fにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路が遮断される。
その結果、本実施形態では、モータを回転させる回転磁界が発生しなくなり、モータの回転が停止する。モータの回転が停止した後、制御回路で第2発熱体電極4bの地絡をやめることにより、発熱体3aへの電力供給が停止される。
【0079】
本実施形態の保護素子20および保護回路は、可溶導体1b、1c、1dと、可溶導体1b、1c、1dを介して電気的に接続された3つの電極2d、2e、2fと、可溶導体を加熱して溶断させる発熱体3aとを有する。このため、本実施形態の保護素子20および保護回路によれば、発熱体3aの発熱により、3つの電極2d、2e、2fと電気的に接続された電流経路を1つの素子で遮断できる。
また、本実施形態の保護素子20および保護回路は、例えば、3つのコイルと、各コイルに供給される位相の異なる電力とを用いて回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に好適に用いることができる。
【0080】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態の保護素子を示した平面図である。
図10は、
図9に示す保護素子を
図9の反対側から見た平面図である。
図11は、
図9に示す保護素子をC-C´線に沿って切断した断面図である。
図12は、
図9に示す保護素子の回路構成からなる第3実施形態の保護回路を示した模式図である。
【0081】
本実施形態の保護素子30は、
図9~
図11に示すように、絶縁基板5と、3つの可溶導体1e、1f、1gと、3つの電極2g、2h、2iと、発熱体3aと、第1発熱体電極4aと、第2発熱体電極4bと、接続配線7bとを有する。
本実施形態の保護素子30において、第1実施形態の保護素子10と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0082】
本実施形態の保護素子30と、第2実施形態の保護素子20との異なるところは、本実施形態の保護素子30では、第2実施形態の保護素子20における絶縁部材3bおよびカバー部材6とが設けられていないことと、接続配線の形状のみである。したがって、本実施形態の保護素子30においては、第2実施形態の保護素子20と異なるところのみ説明する。
【0083】
本実施形態の保護素子30における接続配線7bは、平面視略長方形の絶縁基板5の短辺方向略中央部に長辺方向に沿って帯状に設けられている。保護素子30における接続配線7bは、一端が絶縁基板5の一方の短辺方向側面と離間しており、第2実施形態の保護素子20における接続配線7aと異なり、他端が絶縁基板5の他方の短辺方向側面まで伸びている。そして、保護素子30における接続配線7bは、絶縁基板5の側面に形成した略半円のスルーホール内を導電材料で被覆してなるキャスタレーションを介して、絶縁基板5の裏面5bに設けられている発熱体電極4aと電気的に接続されている。このことにより、本実施形態の保護素子30では、発熱体電極4aと電気的に接続されている発熱体3aが、接続配線7bに電気的に接続された3つの可溶導体1e、1f、1gと電気的に接続されている。
【0084】
本実施形態の保護素子30は、第1実施形態の保護素子10および第2実施形態の保護素子20と同様に、3つの電極2g、2h、2iのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、発熱体3aに電力を供給する制御回路を備えている。しかし、本実施形態の保護素子30の制御回路は、上記の異常が検知された場合に、第1実施形態の保護素子10および第2実施形態の保護素子20と異なり、第2発熱体電極4bを地絡させ、3つの可溶導体1e、1f、1gおよび第1発熱体電極4aを介して発熱体3aに電力を供給する。
【0085】
(製造方法)
本実施形態の保護素子30は、例えば、以下に示す方法により製造できる。
まず、絶縁基板5の表面5aおよび/または裏面5bの所定の位置に、第2実施形態の保護素子20と同様にして、3つの電極2g、2h、2iと、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bと、接続配線7bとを形成する。
【0086】
その後、第1実施形態の保護素子10と同様にして、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2g、2h、2iと、絶縁基板5の裏面5bに形成された電極2g、2h、2iとを、電気的に接続する。また、電極2g、2h、2iと同様にして、絶縁基板5の表面5aに形成された接続配線7bと、絶縁基板5の裏面5bに形成された第1発熱体電極4aとを、電気的に接続する。
【0087】
次に、第1実施形態の保護素子10と同様にして、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、発熱体3aを形成する。
次に、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2g、2h、2iおよび接続配線7b上に、ハンダなどの導電接続部材8を用いて可溶導体1e、1f、1gをそれぞれ接合する。
以上の工程により、本実施形態の保護素子30が得られる。
【0088】
本実施形態においては、保護素子30を、第1実施形態および第2実施形態と同様のモータを停止させる用途に用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の保護素子30は、第2実施形態の保護素子20と同様に、可溶導体1e、1f、1gがそれぞれ3つのコイルに電力を供給する電流経路の一部を構成する。本実施形態では、可溶導体1e、1f、1gのうち少なくとも2つが溶断することにより、3つのコイルのうち少なくとも2つのコイルに電力を供給する電流経路を遮断する。
本実施形態の保護素子30は、第2実施形態の保護素子20と同様に、Y結線(スター結線)における接合部を形成している。また、本実施形態の保護素子30は、第2実施形態の保護素子20と同様に、保護素子30の可溶導体1e、1f、1gに電気的に接続された接続配線7bに、Y結線の中性点が形成されている。
【0089】
図12は、
図9に示す保護素子30の回路構成からなる第3実施形態の保護回路を示した模式図である。
図12において、
図9~
図11に示す保護素子30と同じ部材については、同じ符号を付している。
図9および
図12に示すように電極2gは、可溶導体1eと電気的に接続されている。電極2hは、可溶導体1fと電気的に接続されている。電極2iは、可溶導体1gと電気的に接続されている。
図12に示す保護回路には、可溶導体1eの電極2gと反対側と、可溶導体1fの電極2hと反対側と、可溶導体1gの電極2iと反対側とを、接続配線7bによって一括して接続してなるY結線(スター結線)が用いられている。
【0090】
図12に示すように、発熱体3aは、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bの2つの発熱体電極と電気的に接続されている。また、発熱体3aは、発熱体電極4aと接続配線7bとが電気的に接続されていることにより、可溶導体1e、1f、1gと電気的に接続されている。
【0091】
本実施形態の保護回路は、3つの電極2g、2h、2iのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、3つの電極2g、2h、2iにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路を遮断する。
本実施形態では、第1実施形態と同様にして、検出回路が3つの電極2g、2h、2iに供給された電力の異常を検出する。
【0092】
制御回路は、検出回路による検出結果に応じて、第2発熱体電極4bを地絡させ、3つの可溶導体1e、1f、1gおよび第1発熱体電極4aを介して発熱体3aに電力を供給する。このことにより、保護素子30の発熱体3aが発熱し、絶縁基板5を介して接続配線7bを加熱する。そして、絶縁基板5および/または接続配線7bを介して可溶導体1e、1f、1gが加熱されて、溶断される。
また、本実施形態では、3つの電極2g、2h、2iのうち一部または全部の電極に定格を超える過電流が通電された場合、発熱体3aに電力が供給されていなくても、保護素子30の可溶導体1e、1f、1gが自己発熱により溶融して溶断する。
【0093】
図12に示す可溶導体1e、1f、1gのうち少なくとも2つが溶断されることにより、電極2dと接続配線7b、電極2eと接続配線7b、電極2dと接続配線7bのうち少なくとも2つの接続が遮断されると、3つの電極2g、2h、2iにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路が遮断される。
その結果、本実施形態では、モータを回転させる回転磁界が発生しなくなり、モータの回転が停止する。モータの回転が停止した後、制御回路で第2発熱体電極4bの地絡をやめることにより、発熱体3aへの電力供給が停止される。
【0094】
本実施形態の保護素子30および保護回路は、可溶導体1e、1f、1gと、可溶導体1e、1f、1gを介して電気的に接続された3つの電極2g、2h、2iと、可溶導体を加熱して溶断させる発熱体3aとを有する。このため、本実施形態の保護素子30および保護回路によれば、発熱体3aの発熱により、3つの電極2g、2h、2iと電気的に接続された電流経路を1つの素子で遮断できる。
また、本実施形態の保護素子30および保護回路は、例えば、3つのコイルと、各コイルに供給される位相の異なる電力とを用いて回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に好適に用いることができる。
【0095】
[第4実施形態]
図13は、第4実施形態の保護素子を示した平面図である。
図14は、
図13に示す保護素子を
図13の反対側から見た平面図である。
図15は、
図13に示す保護素子をD-D´線に沿って切断した断面図である。
図16は、
図13に示す保護素子の回路構成からなる第4実施形態の保護回路を示した模式図である。
【0096】
本実施形態の保護素子40は、
図13~
図15に示すように、絶縁基板5と、2つの可溶導体1h、1iと、3つの電極2j、2k、2mと、発熱体3aと、第1発熱体電極4aと、第2発熱体電極4bと、接続配線7cとを有する。
本実施形態の保護素子30において、第1実施形態の保護素子10と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0097】
本実施形態の保護素子40と、第3実施形態の保護素子30との異なるところは、本実施形態の保護素子40では、第3実施形態の保護素子30における可溶導体1fが設けられていないことと、接続配線7cが電極2kと連結して一体化されていることのみである。したがって、本実施形態の保護素子40においては、第3実施形態の保護素子30と異なるところのみ説明する。
【0098】
本実施形態の保護素子40における接続配線7cは、第3実施形態の保護素子30における接続配線7bと異なり、平面視略L字状の形状を有している。より詳細には、保護素子40における接続配線7cは、平面視略長方形の絶縁基板5の短辺方向略中央部に長辺方向に沿って帯状に設けられ、一端が絶縁基板5の一方の短辺方向側面まで伸びる線状部と、線状部の他端から絶縁基板5の一方の長辺方向側面まで伸びる電極2kとが一体化された形状を有する。
【0099】
本実施形態の保護素子40における接続配線7cは、第3実施形態の保護素子30における接続配線7bと同様に、絶縁基板5の裏面5bに設けられている発熱体電極4aと電気的に接続されている。このことにより、本実施形態の保護素子40においては、発熱体電極4aと電気的に接続されている発熱体3aが、接続配線7cに電気的に接続された2つの可溶導体1h、1iと電気的に接続されている。
【0100】
(製造方法)
本実施形態の保護素子40は、例えば、以下に示す方法により製造できる。
まず、絶縁基板5の表面5aおよび/または裏面5bの所定の位置に、第1実施形態の保護素子10と同様にして、3つの電極2j、2k、2mと、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bを形成する。また、本実施形態においては、電極2kと同時に、絶縁基板5の表面5aに、電極2kと一体化された接続配線7cを形成する。
【0101】
その後、第1実施形態の保護素子10と同様にして、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2j、2k、2mと、絶縁基板5の裏面5bに形成された電極2j、2k、2mとを、電気的に接続する。また、電極2j、2k、2mと同様にして、絶縁基板5の表面5aに形成された接続配線7cと、絶縁基板5の裏面5bに形成された第1発熱体電極4aとを、電気的に接続する。
【0102】
次に、第1実施形態の保護素子10と同様にして、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、発熱体3aを形成する。
次に、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2j、2mおよび接続配線7c上に、ハンダなどの導電接続部材8を用いて可溶導体1h、1iをそれぞれ接合する。
以上の工程により、本実施形態の保護素子40が得られる。
【0103】
本実施形態においては、保護素子40を、第1実施形態~第3実施形態と同様のモータを停止させる用途に用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の保護素子40は、可溶導体1h、1iがそれぞれ、3つのコイルのうち2つのコイルに電力を供給する電流経路の一部を構成する。本実施形態では、可溶導体1hと可溶導体1iの両方が溶断することにより、3つのコイルのうち少なくとも2つのコイルに電力を供給する電流経路を遮断する。
本実施形態の保護素子40は、第3実施形態の保護素子30と同様に、Y結線(スター結線)における接合部を形成している。また、本実施形態の保護素子40では、可溶導体1h、1iに電気的に接続された接続配線7cに、Y結線の中性点が形成されている。
【0104】
図16は、
図13に示す保護素子40の回路構成からなる第4実施形態の保護回路を示した模式図である。
図16において、
図13~
図15に示す保護素子40と同じ部材については、同じ符号を付している。
図13および
図16に示すように、電極2jは、可溶導体1hと電気的に接続されている。また、電極2mは、可溶導体1iと電気的に接続されている。
図16に示す保護回路には、可溶導体1hの電極2jと反対側と、可溶導体1iの電極2mと反対側と、電極2kとを、接続配線7cによって一括して接続してなるY結線(スター結線)が用いられている。
【0105】
図16に示すように、発熱体3aは、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bの2つの発熱体電極と電気的に接続されている。また、発熱体3aは、発熱体電極4aと接続配線7cとが電気的に接続されていることにより、可溶導体1h、1iと電気的に接続されている。
【0106】
本実施形態の保護回路は、3つの電極2j、2k、2mのうち一部または全部の電極に供給された電力の異常が検知されることにより、3つの電極2j、2k、2mにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、電極2j、2mに電力を供給する電流経路を遮断する。
本実施形態では、第1実施形態と同様にして、検出回路が3つの電極2j、2k、2mに供給された電力の異常を検出する。
【0107】
制御回路は、検出回路による検出結果に応じて、第2発熱体電極4bを地絡させ、接続配線7cと、可溶導体1h、1iと、第1発熱体電極4aとを介して発熱体3aに電力を供給する。このことにより、保護素子30の発熱体3aが発熱し、絶縁基板5を介して接続配線7cを加熱する。そして、絶縁基板5および/または接続配線7cを介して可溶導体1h、1iが加熱されて、溶断される。
また、本実施形態では、3つの電極2j、2k、2mのうち一部または全部の電極に定格を超える過電流が通電された場合、発熱体3aに電力が供給されていなくても、保護素子40の可溶導体1h、1iが自己発熱により溶融して溶断する。
【0108】
図16に示す2つの可溶導体1h、1iが溶断されることにより、電極2jと接続配線7cとの接続、および電極2mと接続配線7cとの接続が遮断されると、3つの電極2j、2k、2mにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路が遮断される。
その結果、本実施形態では、モータを回転させる回転磁界が発生しなくなり、モータの回転が停止する。モータの回転が停止した後、制御回路で第2発熱体電極4bの地絡をやめることにより、発熱体3aへの電力供給が停止される。
【0109】
本実施形態の保護素子40および保護回路は、可溶導体1h、1iと、可溶導体1h、1iを介して電気的に接続された3つの電極2j、2k、2mと、可溶導体1h、1iを加熱して溶断させる発熱体3aとを有する。このため、本実施形態の保護素子40および保護回路によれば、発熱体3aの発熱により、3つの電極2j、2k、2mと電気的に接続された電流経路を1つの素子で遮断できる。
また、本実施形態の保護素子40および保護回路は、例えば、3つのコイルと、各コイルに供給される位相の異なる電力とを用いて回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に好適に用いることができる。
【0110】
[第5実施形態]
図17は、第5実施形態の保護素子を示した平面図である。
図18は、
図17に示す保護素子の回路構成からなる第5実施形態の保護回路を示した模式図である。
図17に示す保護素子を
図17の反対側から見た平面図は、
図14と同じである。
図17に示す保護素子の断面図は、
図15と同じである。
【0111】
本実施形態の保護素子50は、絶縁基板5と、2つの可溶導体1h、1iと、3つの電極2j、2k、2mと、発熱体3aと、第1発熱体電極4aと、第2発熱体電極4bと、接続配線7dとを有する。
本実施形態の保護素子50において、第4実施形態の保護素子40と同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0112】
本実施形態の保護素子50と、第4実施形態の保護素子40との異なるところは、接続配線の形状のみである。したがって、本実施形態の保護素子50においては、第4実施形態の保護素子40と異なるところのみ説明する。
【0113】
図17に示すように、本実施形態の保護素子50における接続配線7dは、平面視略L字状の形状を有している。しかし、本実施形態の保護素子50における接続配線7dは、第4実施形態の保護素子40における接続配線7cと異なり、平面視略長方形の絶縁基板5の短辺方向略中央部に長辺方向に沿って帯状に設けられた線状部の両端が、絶縁基板5の短辺方向側面と離間している。したがって、接続配線7dは、絶縁基板5によって発熱体電極4aと絶縁され、発熱体電極4aとは電気的に接続されていない。このことにより、本実施形態の保護素子50においては、発熱体電極4aと電気的に接続されている発熱体3aが、接続配線7dに電気的に接続された2つの可溶導体1h、1iと電気的に絶縁されている。
【0114】
(製造方法)
本実施形態の保護素子50は、例えば、以下に示す方法により製造できる。
まず、絶縁基板5の表面5aおよび/または裏面5bの所定の位置に、第4実施形態の保護素子40と同様にして、3つの電極2j、2k、2mと、第1発熱体電極4aおよび第2発熱体電極4bを形成する。また、本実施形態においては、電極2kと同時に、絶縁基板5の表面5aに、電極2kと一体化された接続配線7dを形成する。
【0115】
その後、第4実施形態の保護素子40と同様にして、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2j、2k、2mと、絶縁基板5の裏面5bに形成された電極2j、2k、2mとを、電気的に接続する。
次に、第4実施形態の保護素子40と同様にして、絶縁基板5の裏面5bの所定の位置に、発熱体3aを形成する。
次に、絶縁基板5の表面5aに形成された電極2j、2mおよび接続配線7d上に、ハンダなどの導電接続部材8を用いて可溶導体1h、1iをそれぞれ接合する。
以上の工程により、本実施形態の保護素子50が得られる。
【0116】
本実施形態においては、保護素子50を、第1実施形態~第4実施形態と同様のモータを停止させる用途に用いる場合を例に挙げて説明する。
本実施形態の保護素子50は、第4実施形態の保護素子40と同様に、可溶導体1h、1iがそれぞれ、3つのコイルのうち2つのコイルに電力を供給する電流経路の一部を構成する。本実施形態では、第4実施形態の保護素子40と同様に、可溶導体1hと可溶導体1iの両方が溶断することにより、3つのコイルのうち少なくとも2つのコイルに電力を供給する電流経路を遮断する。
本実施形態の保護素子50は、第4実施形態の保護素子40と同様に、Y結線(スター結線)における接合部を形成している。また、本実施形態の保護素子50では、可溶導体1h、1iに電気的に接続された接続配線7dに、Y結線の中性点が形成されている。
【0117】
図18は、
図17に示す保護素子50の回路構成からなる第5実施形態の保護回路を示した模式図である。
図18において、
図17に示す保護素子50と同じ部材については、同じ符号を付している。
図17および
図18に示すように電極2jは、可溶導体1hと電気的に接続され、電極2mは、可溶導体1iと電気的に接続されている。
図18に示す保護回路には、可溶導体1hの電極2jと反対側と、可溶導体1iの電極2mと反対側と、電極2kとを、接続配線7dによって一括して接続してなるY結線(スター結線)が用いられている。
【0118】
図18に示すように、発熱体3aは、第1発熱体電極4aと第2発熱体電極4bの2つの発熱体電極と電気的に接続されている。また、発熱体3aは、絶縁基板5によって、可溶導体1h、1iと電気的に絶縁されている。
【0119】
本実施形態における制御回路では、第4実施形態と異なり、検出回路による検出結果に応じて、第2発熱体電極4bを地絡させ、第1発熱体電極4aを介して発熱体3aに電力を供給する。このことにより、保護素子30の発熱体3aが発熱し、絶縁基板5および/または接続配線7cを介して可溶導体1h、1iが加熱されて、溶断される。
また、本実施形態では、3つの電極2j、2k、2mのうち一部または全部の電極に定格を超える過電流が通電された場合、発熱体3aに電力が供給されていなくても、保護素子40の可溶導体1h、1iが自己発熱により溶融して溶断する。
【0120】
図18に示す2つの可溶導体1h、1iが溶断されることにより、電極2jと接続配線7cとの接続、および電極2mと接続配線7cとの接続が遮断されると、3つの電極2j、2k、2mにそれぞれ電力を供給する3本の給電配線のうち、少なくとも2本の電流経路が遮断される。
その結果、本実施形態では、モータを回転させる回転磁界が発生しなくなり、モータの回転が停止する。モータの回転が停止した後、制御回路で第2発熱体電極4bの地絡をやめることにより、発熱体3aへの電力供給が停止される。
【0121】
本実施形態の保護素子50および保護回路は、可溶導体1h、1iと、可溶導体1h、1iを介して電気的に接続された3つの電極2j、2k、2mと、可溶導体1h、1iを加熱して溶断させる発熱体3aとを有する。このため、本実施形態の保護素子50および保護回路によれば、発熱体3aの発熱により、3つの電極2j、2k、2mと電気的に接続された電流経路を1つの素子で遮断できる。
また、本実施形態の保護素子50および保護回路は、例えば、3つのコイルと、各コイルに供給される位相の異なる電力とを用いて回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に好適に用いることができる。
【0122】
(他の例)
本発明の保護素子および保護回路は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した第1実施形態においては、3つの電極2a、2b、2c同士が、1つの可溶導体1aを介して電気的に接続されている場合を例に挙げて説明したが、3つの電極のうち2つの電極同士が、1つの可溶導体を介して電気的に接続されていてもよい。この場合、1つの可溶導体を介して電気的に接続されていない電極は、他の可溶導体と接続配線とを介して、1つの可溶導体を介して電気的に接続されている2つの電極と電気的に接続されていてもよいし、他の可溶導体を介さずに接続配線を介して、1つの可溶導体を介して電気的に接続されている2つの電極と電気的に接続されていてもよい。
【0123】
また、上述した実施形態においては、保護素子および保護回路の有する電極が3つである場合を例に挙げて説明したが、本発明の保護素子および保護回路における電極の数は3つ以上であり、3つに限定されるものではない。
【0124】
また、上述した実施形態においては、3つのコイル(固定子)と、各コイルに供給される3相交流における位相の異なる電力とを用いて回転磁界を作り、回転磁界に同調して磁石(回転子)を回転させるモータにおいて、一部または全部のコイルに供給された電力に異常が発生した場合に、モータを停止させる用途に用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明の保護素子および保護回路の用途は、上記の用途に限定されるものではない。
したがって、本発明の保護素子および保護回路における3つ以上の電極は、多相交流における位相の異なる電力を供給する給電配線以外の配線と電気的に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0125】
10、20、30、40、50 保護素子
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、11、12、13 可溶導体
2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2m 電極
3a 発熱体
3b 絶縁部材
4a 第1発熱体電極
4b 第2発熱体電極
5 絶縁基板
5a 表面
5b 裏面
6 カバー部材
7a、7b、7c、7d 接続配線
8 導電接続部材