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特許7477962デュアルワイヤ溶接又は付加製造システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】デュアルワイヤ溶接又は付加製造システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20240424BHJP
   B23K 9/04 20060101ALI20240424BHJP
   B23K 9/032 20060101ALI20240424BHJP
   B23K 9/133 20060101ALI20240424BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240424BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240424BHJP
【FI】
B23K9/12 301B
B23K9/12 301F
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B23K9/032 Z
B23K9/133 501A
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019213342
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2020124744
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】16/267,529
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シー.メールマン
(72)【発明者】
【氏名】トッド イー.コーケン
(72)【発明者】
【氏名】ステーヴン アール.ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー エー.ウィークス
(72)【発明者】
【氏名】ブルース ジェイ.チャントリー
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドフォード ダブリュー.ペトット
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19611597(DE,A1)
【文献】特開昭55-022460(JP,A)
【文献】特開昭60-099482(JP,A)
【文献】特開2011-125909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B23K 9/04
B23K 9/032
B23K 9/133
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の駆動ロールと、
第2の駆動ロールであって、前記第1の駆動ロール及び前記第2の駆動ロールの一方又は両方が円周方向溝を有し、前記円周方向溝は、前記第1の駆動ロールと前記第2の駆動ロールとの間の前記円周方向溝内に配置された第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の両方を同時に駆動する為のものである、前記第2の駆動ロールと、
前記第1のワイヤ電極及び前記第2のワイヤ電極の一方又は両方の消費量又は残量に対応する信号又はデータを生成するセンサ装置と、
を含み、
前記第1のワイヤ電極は前記円周方向溝内で前記第2のワイヤ電極と接触し、前記第1のワイヤ電極は更に、前記円周方向溝の第1の側壁部分と接触し、前記第2のワイヤ電極は更に、前記円周方向溝の第2の側壁部分と接触し、
前記第1のワイヤ電極及び前記第2のワイヤ電極の両方が前記円周方向溝の底面部分からオフセットし、前記底面部分は、前記円周方向溝の前記第1の側壁部分と前記第2の側壁部分との間に延びる、
溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【請求項2】
前記センサ装置は、前記第1のワイヤ電極及び前記第2のワイヤ電極の前記一方又は両方の前記消費量又は残量の重量を測定する、請求項1に記載の溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【請求項3】
前記センサ装置は、前記第1のワイヤ電極及び前記第2のワイヤ電極の前記一方又は両方の前記消費量又は残量の長さを測定する、請求項1に記載の溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【請求項4】
前記センサ装置は、前記第1のワイヤ電極及び前記第2のワイヤ電極の前記一方又は両方の前記消費量又は残量の高さを測定する、請求項1に記載の溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【請求項5】
前記円周方向溝の形状は台形である、請求項1に記載の溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【請求項6】
前記円周方向溝の前記底面部分は凹状である、請求項1に記載の溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【請求項7】
前記信号又はデータは、ワイヤ枯渇状態が差し迫っていることを示す、請求項1に記載の溶接又は付加製造のワイヤ駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明と整合性がある装置、システム、及び方法は、デュアルワイヤ構成による材料堆積に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接時には、多くの場合、溶接中に溶接ビードの幅を広げるか、又は溶接パドルの長さを伸ばすことが望ましい。これが望ましい理由として様々なものが考えられ、それらは溶接業界ではよく知られている。例えば、多孔性を低減する為に溶接金属及びフィラー金属をより長時間にわたって溶融状態に保つには溶接パドルを伸ばすことが望ましい場合がある。即ち、溶接パドルが溶融状態である時間が延びれば、溶接ビードが固まるまでの、有害ガスが溶接ビードから抜ける時間がより長くなる。更に、より幅広の溶接ギャップを覆うこと、又はワイヤ堆積速度を上げることの為には、溶接ビードの幅を広げることが望ましい場合がある。いずれの場合も、電極の径を広げることが一般的である。必要なのは溶接パドルの幅を広げること、又は長さを伸ばすことであればよく、その両方ではない場合でも、径を広げると、溶接パドルの長さが伸び、同時に幅が広がる。しかしながら、このことには不利点がないわけではない。具体的には、より大きな電極が使用される為、適正な溶接を推進する為には、より大きなエネルギが溶接アークに必要になる。このようにエネルギが大きくなると、溶接の入熱が大きくなり、その結果、より大きなエネルギが溶接作業で使用されることになる。これは、使用される電極の径が大きくなった為である。更に、それによって形成される溶接ビードの外形又は断面が、機械用途によっては理想的とはならない場合がある。電極の径を大きくする代わりに、より小さい電極を2つ同時に使用することが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第5,816,466号明細書
【文献】米国特許第8,569,653号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0264323号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の要約は、本明細書に記載の装置、システム、及び/又は方法の幾つかの態様についての基本的理解が得られるように、簡略化された要約を示す。この要約は、本明細書に記載の装置、システム、及び/又は方法の包括的な概要ではない。この要約は、クリティカルな要素を明らかにしたり、そのような装置、システム、及び/又は方法の範囲を明確化したりするものではない。この要約の唯一の目的は、後で提示される、より詳細な説明の前置きとして、幾つかの概念を簡略化された形式で提示することである。
【0005】
本発明の一態様によれば、溶接又は付加製造のワイヤ駆動システムが提供される。本システムは、第1の駆動ロール及び第2の駆動ロールを含む。第1の駆動ロール及び第2の駆動ロールの一方又は両方が円周方向溝を有し、この円周方向溝は、第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間の円周方向溝内に配置された第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の両方を同時に駆動する為のものである。センサ装置が、第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の一方又は両方の消費量又は残量に対応する信号又はデータを生成する。第1のワイヤ電極は、円周方向溝内で第2のワイヤ電極と接触する。第1のワイヤ電極は更に、円周方向溝の第1の側壁部分と接触する。第2のワイヤ電極は更に、円周方向溝の第2の側壁部分と接触する。第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の両方が円周方向溝の底面部分からオフセットし、前記底面部分は、円周方向溝の第1の側壁部分と第2の側壁部分との間に延びる。
【0006】
本発明の別の態様によれば、溶接又は付加製造システムが提供される。本システムは、第1のワイヤ電極を貯蔵する第1のワイヤ電極ソースと、第2のワイヤ電極を貯蔵する第2のワイヤ電極ソースと、を含む。溶接トーチが、第1のワイヤ電極の為の第1の出口オリフィスと、第2のワイヤ電極の為の第2の出口オリフィスと、を有するコンタクトチップアセンブリを含む。本システムは、少なくとも1つの電源と、電源の動作を制御するコントローラとを含む。電源は、コンタクトチップアセンブリに電流波形を供給する。センサ装置が、第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の一方又は両方の消費量又は残量に対応する信号又はデータを生成する。第1のワイヤ電極と第2のワイヤ電極との間に距離Sが与えられるように、コンタクトチップアセンブリの第1及び第2の出口オリフィスが互いに離れている。コンタクトチップアセンブリは、第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の両方に電流波形を送達するように構成されている。距離Sは、電流波形によって第1のワイヤ電極と第2のワイヤ電極との間にブリッジ溶滴を形成することを促進するように構成されており、前記ブリッジ溶滴は、堆積動作時に溶融パドルに接触する前に、第1のワイヤ電極と第2のワイヤ電極とをつなぐ。
【0007】
本発明の別の態様によれば、溶接又は付加製造システムが提供される。本システムは、第1の駆動ロールと、第2の駆動ロールと、第1の駆動ロールを第2の駆動ロールに向けて付勢する付勢部材と、を含むワイヤフィーダを含む。第1の駆動ロール及び第2の駆動ロールの一方又は両方が円周方向溝を有し、この円周方向溝は、第1の駆動ロールと第2の駆動ロールとの間の円周方向溝内に配置された第1のワイヤ電極及び第2のワイヤ電極の両方を同時に駆動する為のものである。溶接トーチが、第1のワイヤ電極の為の第1の出口オリフィスと、第2のワイヤ電極の為の第2の出口オリフィスと、を有するコンタクトチップを含む。第1のワイヤ電極と第2のワイヤ電極との間に距離Sが与えられるように、第1及び第2の出口オリフィスが互いに離れており、距離Sは、堆積動作中に、第1のワイヤ電極と第2のワイヤ電極との間にブリッジ溶滴を形成することを促進するように構成されており、前記ブリッジ溶滴は、堆積動作中に溶融パドルに接触する前に、第1のワイヤ電極と第2のワイヤ電極とをつなぐ。
【0008】
本発明が関係する技術分野の当業者であれば、以下の添付図面を参照しながら後述の説明を読むことにより、本発明の上述及び他の態様が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】溶接システムの一例の概略図を示す。
図1B】溶接システムの一例の概略図を示す。
図2】溶接システムの一例の斜視図を示す。
図3】ワイヤフィーダの一例の側面図を示す。
図4】駆動ロールの一例を示す。
図5】この例の駆動ロールの斜視図を示す。
図6】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図7】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図8】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図9】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図10】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図11】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図12】デュアルワイヤをフィードする駆動ロールの断面図を示す。
図13】コンタクトチップアセンブリの一例を示す。
図14A】堆積動作の一例の一部を示す。
図14B】堆積動作の一例の一部を示す。
図14C】堆積動作の一例の一部を示す。
図15A】電流と磁界の相互作用の一例を示す。
図15B】電流と磁界の相互作用の一例を示す。
図16A】溶接ビードを示す。
図16B】溶接ビードを示す。
図17】フロー図を示す。
図18】溶接電流波形の一例を示す。
図19】溶接電流波形の一例を示す。
図20】溶接電流波形の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、添付図面を見ながら、本発明の例示的実施形態を説明する。説明される例示的実施形態は、本発明の理解を支援するものであって、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではないものとする。全体を通して、類似の参照符号は類似の要素を参照する。
【0011】
本明細書では、「少なくとも1つの」、「1つ以上の」、及び「及び/又は」は、作用が接続的且つ離接的であるオープンエンデッド表現である。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ以上」、「A、B、又はCのうちの1つ以上」、並びに「A、B、及び/又はC」という各表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、又はAとBとCを意味する。実施形態の説明、特許請求項、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の選択的な用語を表す離接的な語句があれば、それらは、それらの用語のうちの1つ、それらの用語のいずれか、又はそれらの用語の両方を包含する可能性を想定しているものと理解されたい。例えば、「A又はB」という句は、「A」又は「B」又は「AとB」の可能性を包含するものと理解されたい。
【0012】
本明細書では、本発明の実施形態を溶接システムの文脈で説明する。溶接システムの例として、ガスメタルアーク溶接(GMAW)システム、サブマージアーク溶接(SAW)システム、フラックスコアードアーク溶接(FCAW)システム、メタルコアードアーク溶接(MCAW)システム等がある。更に、本明細書に記載の電極は固体電極であってよいが、本発明の実施形態は固体電極の使用に限定されない。例えば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱しない限り、フラックスコアード電極及びメタルコアード電極が使用されてもよい。更に、本発明の実施形態は、手動式、半自動式、及びロボット式の溶接作業で使用されてもよい。そのようなシステムはよく知られている為、本明細書では詳述しない。本発明の実施形態は、溶接作業に加えて、付加製造プロセス、並びに他の、従動ワイヤ電極を含む溶接型プロセス(例えば、肉盛り溶接)に使用されてよい。
【0013】
ここで図面を参照すると、図1Aは、溶接システムの一例示的実施形態100を示す。溶接システム100は電源109を含み、電源109は、溶接トーチ111及びワイヤフィーダ105の両方に結合されている。電源109は、溶接電流及び溶接波形(例えば、パルススプレー、STT、及び/又はショートアークのタイプの溶接波形)を送達することが可能な任意の既知のタイプの溶接電源であってよい。そのような電源の構造、設計、及び動作についてはよく知られているので、本明細書での詳述は不要である。また、溶接電力は、2つ以上の電源から同時に供給されてよく、そのようなシステムの動作も既知である。電源109は更に、ユーザインタフェース122に結合されたコントローラ120を含んでよく、ユーザは、ユーザインタフェース122から、溶接作業の制御パラメータ及び溶接パラメータを入力することが可能である。コントローラ120は、プロセッサ、CPU、メモリ等を有してよく、これらは、溶接プロセスの動作、及び溶接波形の生成を制御する為に使用される。トーチ111は、既知の手動式、半自動式、又はロボット式の溶接トーチと同様の構成であってよく、直線形又は雁首型であってよい。ワイヤフィーダ105は、ワイヤ電極E1及びE2をそれぞれ電極ソース101及び103から引き出し、これらの電極ソースは任意の既知のタイプであってよく、例えば、リール、スプール、容器等であってよい。ワイヤフィーダ105は駆動ロール107を使用して、電極又は溶接ワイヤE1及びE2を引き出し、トーチ111に対して電極を押したり引いたりする。駆動ロール107の詳細については、後で更に説明する。駆動ロール107及びワイヤフィーダ105は、デュアル電極溶接作業用として構成されている。即ち、それらは、アークの生成、並びに被加工物Wの溶接の為に、電極E1及びE2の両方を同時にトーチ111に供給する。図示されるように、ワイヤフィーダ105は、既知の構成の溶接作業と整合性がある電源109に作用的に接続されている。電源109と同様に、ワイヤフィーダ105も、ワイヤフィーダに帰する様々な動作を実行する為に、コントローラを含んでよい。
【0014】
電極E1及びE2は、駆動ロール107によって駆動されると、ライナ113を通り抜けて、トーチ111に送達されることが可能である。ライナ113のサイズは、電極E1及びE2がトーチ111まで通り抜けられるように適切に決定されている。例えば、0.030インチ径の電極が2つの場合は、標準的な0.0625インチ径のライナ113(これは通常、単一の0.0625インチ径の電極に使用される)を修正なしで使用できる。
【0015】
実施形態によっては、ワイヤ電極E1、E2は径が異なってよい。即ち、本発明の実施形態は、第1の径(大径)の電極と、第2の径(小径)の電極とを使用してよい。そのような実施形態では、厚さが異なる2つの被加工物をより便利に溶接することが可能になりうる。例えば、大きいほうの電極を大きいほうの被加工物に向けてよく、小さいほうの電極を小さいほうの被加工物に向けてよい。更に、本発明の実施形態は、多様なタイプの溶接作業に使用されてよく、例えば、GMAW、SAW、FCAW、MCAW等であってこれらに限定されない溶接作業に使用されてよい。更に、本発明の実施形態は、様々なタイプの電極とともに利用可能である。例えば、コアード電極(例えば、フラックスコアード電極又はメタルコアード電極)を非コアード電極又は固体電極に結合することが可能であると考えられている。更に、最終的な溶接ビードの所望の溶接特性及び溶接組成を達成する為に、組成が異なる複数の電極が使用されてよい。所望の溶接継手を形成する為に、異なる2つの(但し互いに適合する)消耗材が組み合わされてよい。例えば、組成が異なる肉盛りワイヤ、ステンレスワイヤ、ニッケル合金、鋼ワイヤ等の互いに適合する消耗材が組み合わされてよい。一具体例として、軟鋼ワイヤと過合金化ワイヤとを組み合わせて、309ステンレス綱組成を形成することが可能である。このことは、所望のタイプの単一消耗材の溶接特性が望ましいものでない場合に有利でありうる。例えば、特殊溶接用の幾つかの消耗材は、所望の溶接化学物質をもたらすが、非常に使いにくく、満足のいく溶接を行うことが困難である。これに対し、本発明の実施形態は、溶接しやすい2つの消耗材を組み合わせて使用して所望の溶接化学物質を形成することを可能にする。本発明の実施形態を使用することにより、使用しない場合には市販で入手できないか、又は製造コストが非常に高い合金/堆積化学物質を形成することが可能である。このように、異なる2つの消耗材を使用することで、高価又は入手不能な消耗材を不要にすることが可能である。更に、実施形態を使用して希釈合金を形成することが可能である。例えば、第1の溶接ワイヤが一般的な、高価でない合金であってよく、第2の溶接ワイヤが特殊ワイヤであってよい。結果として得られる堆積物は、2つのワイヤが平均化されたものとなり、溶融液滴の形成において十分に混ざり合っており、それら2つのワイヤの平均コストは、高価な特殊ワイヤのコストに比べて低くなる。更に、用途によっては、所望の堆積物は、適切な消耗材の化学物質が不足して入手不能になる可能性があるが、2つの標準的な合金ワイヤを混合することによって達成可能であり、溶融液滴内で混合可能であり、単一液滴として堆積可能である。更に、耐摩耗金属用途など、用途によっては、所望の堆積物は、1つのワイヤからのタングステンカーバイド粒子と別のワイヤからのクロムカーバイド粒子との組み合わせであってよい。更に別の用途では、より大きな粒子を中に収容している、より大きなワイヤと、より少ない粒子、又はより小さい粒子を収容している、より小さいワイヤとを混合することにより、それら2つのワイヤの混合物が堆積される。ここで、各ワイヤの予想される寄与分は、ワイヤのサイズに比例する。更に、本明細書に記載の例示的実施形態は2つのワイヤ電極を同時に利用するが、本発明の他の実施形態は3つ以上の電極を利用してよい。例えば、本明細書に記載の説明及び議論と整合性がある、3つ以上の電極の構成が利用可能であると考えられる。
【0016】
図1B図1Aとよく似ている。但し、図1Bでは、電極ソース102、104は、スプールではなくドラム缶に収容されている。ワイヤ電極E1、E2は、スプール、ドラム缶、箱、リール等のような任意の従来式パッケージングシステムから供給されてよい。
【0017】
図1A及び1Bに示されるように、システム100は、ワイヤ電極E1、E2の、それぞれのパッケージにおける残量を追跡すること、各ワイヤ電極の、パッケージから消費された量を追跡すること、及び/又は、いずれかの電極が消費され尽くされようとしているタイミングを特定すること(例えば、ワイヤ枯渇状態が差し迫っていることを示すこと)に使用されるセンサ素子又はセンサを含んでよい。堆積プロセスの途中で万一にも電極E1、E2のいずれかが消費され尽くされる(例えば、そのパッケージングシステムのワイヤが空になる)ことは望ましくない。これが起こると、堆積の一部が一方のワイヤだけを使用して行われることになりかねず、場合によってはワイヤフィードの問題(例えば、「鳥の巣作り」)が起こる可能性がある。ワイヤの消費量、又はソースにおける残量を追跡すること、又は別の形で、電極が消費され尽くされようとしているタイミングを信号で伝えることにより、作業者は、ワイヤ電極ソースの一方又は両方を枯渇前に交換する必要があることを通知されることが可能である。
【0018】
センサは、ワイヤ電極の特性、例えば、現在の重量、容器内での高さ、位置又は場所、ワイヤフィード速度等を監視又は測定する。ワイヤの、1つ以上の監視された特性から、ワイヤの消費量又は残量が特定されてよい。実施形態によっては、監視された特性は、ワイヤフィーダ105及び/又は電源109が受けて、ワイヤの消費量又は残量を算出するよう処理してよい。センサからの出力は、それ単独であれ、ワイヤフィーダ105及び/又は電源109による後処理との組み合わせであれ、ワイヤ電極E1、E2の一方又は両方の消費量又は残量に対応する信号又はデータの生成を引き起こしうる。
【0019】
センサの一例として重量センサ106又は秤があり、これは、電極ソースの重量を出力する。ワイヤフィーダ105又は電源109は、その重量から、対応するソースにおける電極の消費量又は残量を特定することが可能である。ワイヤ電極の消費量又は残量が閾値に達すると、ワイヤフィーダ105及び/又は電源109は、電極が消費され切る前に電極を交換するよう作業者に指示するアラームを生成してよい。このアラームは、ワイヤフィーダ105又は電源109にあるユーザインタフェースに表示されてよく、或いはリモート機器に送信されてよい。電極E1、E2の消費量又は残量に対応する信号又はデータが、ワイヤフィーダ105と電源109との間で、電源ケーブル又は別個の通信リンク108を介して伝達されてよい。
【0020】
センサの別の例として、溶接電極のコイルの高さ又は距離を測定する超音波高さセンサ110がある。超音波高さセンサ110は、非接触センサの一例である。ソースにおいてどれだけの電極が消費されたか、又は残っているかを測定する為に様々なタイプの非接触センサが使用されてよく、それらの例として磁気センサ又は誘導センサ112、114、116がある。磁気センサ又は誘導センサは、貯蔵されているワイヤが特性の高さに達した時点で信号を出力することが可能である。例えば、ワイヤのコイルがセンサの高さを下回ると、センサがトリガされて、対応する信号を出力することが可能である。
【0021】
ワイヤの消費量は、ワイヤフィーダ105のワイヤフィード速度から追跡可能である。ワイヤフィード速度、又はフィードされたワイヤの直線量は、直線ワイヤフィードセンサ118で測定可能である。ワイヤフィード速度は、ワイヤフィーダで使用されるワイヤフィード速度設定で決定されてもよい。フィードされたワイヤの量は、ワイヤフィード速度とフィード時間から計算可能である。実施形態によっては、ワイヤ電極E1、E2は、ワイヤフィーダ105で読みとられた情報、又はワイヤフィーダ及び/又は電源109と通信する別個の読み取り装置で読みとられた情報でエンコードされてよい。ワイヤフィーダ105又は読み取り装置は、エンコードされた情報から、ワイヤの消費量又は残量を特定することが可能である。例えば、ワイヤの最後の20~100フィートが、ワイヤが枯渇しようとしているかどうかの判定に使用される、エンコードされた情報を含んでよい。エンコード技術の例として、ワイヤに沿って情報を磁気的にエンコードすること、或いは、ワイヤにコードを(例えば、レーザで)マーキングすることが挙げられる。
【0022】
図2は、溶接システム100の斜視図を示す。ワイヤフィーダ105は、ワイヤ電極E1、E2を、特定の用途で使用されるように、電極ソース101、103から搬送する駆動ロールを含む。ワイヤ電極E1、E2は、リール、スプール、又は容器(例えば、箱又はドラム缶)から連続的に引き出され、被加工物W(この実施形態では溶接物)に送達されてよい。ワイヤフィーダ105は駆動アセンブリを含んでよく、駆動アセンブリは、1つ以上の原動機(例えば、電気モータ)からの動力を利用して、ワイヤ電極E1、E2を当該用途の作業現場又は被加工物Wまで駆動する。
【0023】
溶接電源109は、外部電源(例えば、商用電源)から入力電力を受けてよく、入力電力は、図示されていないオンボードの変圧器及びプロセッサ制御のインバータ回路又はチョッパ回路に送られる。電源109からの出力は、溶接電源の溶接出力端子121又はスタッドから供給されてよい。当該技術分野において知られている様式で溶接電流を被加工物Wに送達する溶接ワイヤフィーダ105を通じて、溶接ガン又は溶接トーチ111並びにワイヤ導管が溶接電源109に電気的に接続されてよい。従って、溶接ワイヤE1、E2は、用途及び/又はエンドユーザの要求のままに、溶接プロセスの実施に適する任意の様式で、トーチ111を通ってフィードされ、計量供給(即ち、小出し供給)される。なお、電極E1、E2は、溶接アークを確立する為の電気を伝導し、これらの電極は、アースよりかなり高くてよい、溶接電源109の出力電圧に等しいか、又はほぼ等しい電圧ポテンシャルを有する被加工物Wまで搬送される。
【0024】
ワイヤ電極E1、E2を搬送する様々な方式が当該技術分野において知られており、その一例として、原動機から得られる動力又はトルクで電極をトーチ111に押し込むことが挙げられる。別の電極搬送方式として、複数の原動機を利用する押し/引き方式がある。電極E1、E2はトーチ111に送達され、トーチ111は、ユーザの意のままに電極を小出し供給する為の、トリガなどの活性化機構を有してよい。時にはフィード速度を様々に変えて電極E1、E2を送達することが必要になる場合がある。従って、原動機の出力は、電極E1、E2の変化するワイヤフィード速度(WFS)に合わせて調節可能である。具体的には、ワイヤフィーダ105の駆動モータが、WFSを調節する為の可変速モータであってよい。
【0025】
駆動モータ123を図3に示す。ワイヤフィーダ105及び/又は駆動モータ123は、溶接電源109、又は全く別個の電源から動作電力を引き出してよい。それでも、溶接ワイヤフィーダ105及び/又は駆動モータ123を動作させる電力を供給する任意の方式が、本発明の実施形態との使用に適した音響工学的判断によって選択されてよい。
【0026】
図2及び3を参照すると、溶接ワイヤフィーダ105は、駆動アセンブリ、又は駆動ロールアセンブリを含んでよい。上述のように、駆動モータ123は、ワイヤフィーダモータとも呼ばれ、第1及び第2の溶接ワイヤE1、E2を、ワイヤフィーダからトーチ111まで、そして更に被加工物Wまで搬送する為の動力、即ち、トルクを提供する。駆動ロール107が含まれており、これは、溶接ワイヤを適切な方向に(即ち、被加工物Wに向かって)押したり引いたりする為に溶接ワイヤE1、E2をしっかりつかむ。一連の駆動ロール107が垂直方向に並べられていて、これらは、対応する、位置合わせされた環状又は円周方向の溝を有し、溶接ワイヤE1、E2がそれらの溝を同時に通り抜ける。図から分かるように、垂直方向に並べられている一連の駆動ロール107は、互いに逆方向に回転して、溶接ワイヤE1、E2を駆動してワイヤフィーダ105を通過させる。例えば、図3では、上側の駆動ロール107が時計回りに回転し、下側の駆動ロールが反時計回りに回転する。駆動ロール107は円筒形状であってよく、より具体的には円板形状であってよいが、この特定形状は限定と解釈されるべきではない。駆動ロール107の表面、即ち、外周部は、溶接ワイヤE1、E2をしっかりつかむことに関して耐久性があって好適である、十分な硬度の材料(鋼など)で構成されてよい。図示されるように、駆動ロール107はワイヤ軌道に沿ってペアで配置されてよく、ペアの各駆動ロールは溶接ワイヤE1、E2のそれぞれ逆の側面で支持されており、これによって、駆動ロールのそれぞれの外周部は、ワイヤのそれぞれ逆の側面と(例えば、上方及び下方から)係合している。なお、各駆動ロール107の中心軸は、互いにほぼ平行に延びており、溶接ワイヤE1、E2の軌道をほぼ横切っている。
【0027】
ワイヤフィーダ105は、垂直方向に並べられた一連の駆動ロール107を互いに対して付勢する付勢部材を含んでよい。付勢部材は、駆動ロール107が溶接ワイヤE1、E2に加えるクランプ力又は圧力を設定する。例えば、ワイヤフィーダ105は付勢ばね125を含んでよく、付勢ばね125は、1つ以上の駆動ロール107に付勢力を加えることにより、駆動ロールが溶接ワイヤE1、E2に加える圧縮を設定する。図3の例示的実施形態では、付勢ばね125は調節ロッド127に取り付けられており、調節ロッド127は、内向き及び外向きに動かされることによって付勢ばね125の圧力を調節することが可能である。付勢ばね125の力は、ピボットレバー129を介して上側駆動ロール107に伝わる。上述のように、垂直方向に並べられた一連の駆動ロール107は、対応する、位置合わせされた環状又は円周方向の溝を有し、溶接ワイヤE1、E2がそれらの溝を同時に通り抜ける。即ち、溶接ワイヤE1、E2は、上側駆動ロール及び下側駆動ロールの溝の中に一緒に配置される。溶接ワイヤE1、E2は、付勢ばね125から駆動ロール107にかけられた付勢力によって溝に詰め込まれるか押し込められる。後で更に説明するように、溶接ワイヤE1、E2は、駆動ロール107によって溝に詰め込まれると、溝内で互いに接触することになる。溶接ワイヤE1、E2に上方/下方から加えられる圧力に加えて、溶接ワイヤE1、E2には横からも圧力が加えられて、溶接ワイヤE1、E2は溝内で一緒にされる。横からの圧力は、溝の側壁の形状によって与えられる。
【0028】
1998年10月6日に発行された(特許文献1)及び2013年10月29日に発行された(特許文献2)に溶接ワイヤフィーダの構造の詳細が記載されており、両文献は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0029】
図4及び5は駆動ロール107の一例を示す。駆動ロールは中央にボアがある。ボアの内面は、駆動機構(例えば、駆動ギヤ)の凸部を受ける成形凹部131を含んでよく、これによって駆動トルクが駆動ロール107に伝わる。駆動ロール107は、1つ以上の環状又は円周方向のワイヤ受け溝133、135を含む。ワイヤ受け溝133、135は、駆動ロール107の円周に沿って、軸方向に間隔を空けて配置されている。ワイヤ受け溝133、135は、2つの溶接ワイヤを受けるように設計されている。駆動ロール107とともに使用される溶接ワイヤの標準的な径は、例えば、0.030インチ、0.035インチ、0.040インチ、0.045インチ等である。ワイヤ受け溝133、135は、幅及び深さが互いに同じであってよく、或いは、デュアル溶接ワイヤの異なるサイズ又は組み合わせに対応する為に、幅及び深さが異なってよい。ワイヤ受け溝133、135の幅及び深さがそれぞれ同じであれば、1つの溝が摩耗した場合に、駆動ロールをひっくり返してワイヤフィーダに再取り付けするだけで、駆動ロール107を再使用することが可能である。ワイヤ受け溝133、135は、径が同じである2つのワイヤ、又は径が異なる2つのワイヤを同時に駆動するように構成されてよい。図4では、ワイヤ受け溝133、135は、形状が台形であり、側壁が直線であるか、角度付きであるか、内側に向かって先細であり、側壁間に延びる底面が平坦である。しかしながら、ワイヤ受け溝133、135は台形以外の形状であってよく、例えば、溝の底面が湾曲した凹状であってよい。実施形態によっては、溝133、135は、溶接ワイヤをしっかりつかめるように、ぎざぎざなどの摩擦表面処理を含んでよい。
【0030】
図6~12は、デュアルワイヤ電極を供給するワイヤフィーダに駆動ロール107の様々な例が取り付けられている場合の、それらの駆動ロールの部分断面図を示す。駆動ロール107は、一緒に付勢されて、第1の溶接ワイヤE1及び第2の溶接ワイヤE2にクランプ力を与える。溶接ワイヤE1、E2は両方とも、上側及び下側の駆動ロール107の環状溝内に配置される。環状溝は、互いに位置合わせされており、台形形状であってよい。図6では、台形形状は、内側側壁137と、外側側壁139と、側壁間に延びる溝底面141とによって形成された等脚台形である。この等脚台形は、凹状断面として、駆動ロール107の外周面に対して反転されている。
【0031】
駆動ロール107に加えられた付勢力により、溶接ワイヤE1、E2は、溝を形成している上側側壁137及び下側側壁139と、隣接する溶接ワイヤとの間で環状溝内にクランプされる。溶接ワイヤE1、E2は、環状溝内での3点接触によって安定的に保持される。このクランプシステムは、両ワイヤが一貫した様式でワイヤフィーダからフィードされることを可能にしうる。2つの溶接ワイヤE1、E2は、フィード中は互いを支持し、摩擦を介して互いを長手方向に引っ張る。環状溝の内側側壁137及び外側側壁139は、角度付きである為、垂直方向と水平方向の両方のクランプ力を溶接ワイヤE1、E2に加える。水平方向のクランプ力は、溶接ワイヤE1、E2を一緒に押して、それらを互いに接触させる。実施形態によっては、溶接ワイヤE1、E2は、両溝底面141から半径方向にオフセットするように、環状溝内でクランプされる。即ち、溶接ワイヤE1、E2は、溶接ワイヤと溝底面141との間に隙間が存在するように、互いに対してと、溝の角度付き側壁137、139との間でピン留めされる。これは図6に明示されている。
【0032】
上述のクランプシステムは、溶接ワイヤE1、E2の径の(例えば、製造公差による)多少のばらつきを許容している。各溶接ワイヤE1、E2が駆動ロール107内にそれぞれの専用の環状溝を有していて、一方の溶接ワイヤが他方よりわずかに大きいとすると、小さいほうの溶接ワイヤが駆動ロール間で十分にクランプされない可能性がある。そのような状況では、大きいほうの溶接ワイヤが、駆動ロール107同士が互いに向かう半径方向の変位を制限してしまい、これによって、小さいほうのワイヤの適切なクランプが妨げられる。このことは、フィードの問題につながる可能性があり、フィード中の小さいほうの溶接ワイヤのいわゆる鳥の巣作りにつながる可能性がある。上述のクランプシステムは、自己調節式の為、異なるサイズのワイヤに対応することが可能である。図7に見られるように、一方の溶接ワイヤE1が他方の溶接ワイヤE2より太い場合、両ワイヤ間の接触点は、環状溝内の中央位置から小さいほうのワイヤに向かって軸方向にずれる。溝の側壁137、139と隣接する溶接ワイヤとによって、各溶接ワイヤE1、E2に対する3点接触は保持される。
【0033】
図8に示された駆動ロール107の環状溝143の断面の形状が、等脚台形ではなく鋭角台形である。溝の内側側壁145及び外側側壁147は、長さが様々なであり、駆動ロールの外周面に対して異なる角度を形成している。図9では、駆動ロール107の環状溝149の形状が直角台形である。鋭角台形及び直角台形の溝は、等脚台形の溝よりも、溶接ワイヤの径の差が大きい場合に対応することが可能である。従って、径が異なる溶接ワイヤ、例えば、0.040インチの溶接ワイヤと0.045インチの溶接ワイヤを駆動することを溝が意図された場合に、鋭角台形及び直角台形の溝が使用されてよい。実施形態によっては、溝の側壁及び/又は底面は湾曲していてよい(例えば、凹状又は凸状であってよい)。更に、台形溝の側壁と底面との間の内側のコーナーのつなぎ部分が湾曲しているか丸み付きであってよい。図10に示された駆動ロールの例の環状溝は、直線の角度付き側壁150に、凹状の湾曲又は丸み付きの溝底面152が接合されている。一例示的実施形態では、側壁150と駆動ロール107の外周との間の角度が約150°であるが、他の角度も可能であり、音響工学的判断により決定されてよい。
【0034】
図11に示された一例示的実施形態では、溶接ワイヤE1、E2に対して、一方の駆動ロール107の溝が台形であり、他方の駆動ロール107aの溝が非台形である。図11では非台形溝の形状が矩形であるが、他の形状も可能である。例えば、非台形溝は湾曲付きであってよく、例えば、楕円又は丸み付きの形状であってよい。更に、台形溝は、下側駆動ロール107上にあるように図示されている。しかしながら、台形溝は、上側駆動ロール107a上にあってよく、非台形溝は下側駆動ロール上にあってよい。溶接ワイヤE1、E2は、台形溝のそれぞれ側壁137、139と、非台形溝151の底面153との間でクランプされ、溶接ワイヤ同士は、上述のように、互いに接触するようにされる。従って、溶接ワイヤE1、E2は、環状溝107、107a内での3点接触によって安定的に保持される。
【0035】
図12に示された一例示的実施形態では、溶接ワイヤE1、E2に対して、一方の駆動ロール107の溝が台形であり、他方の駆動ロール107bには溝がなく、その代わりに、その外周面155で溶接ワイヤに直接接触する。台形溝は、下側駆動ロール107上にあるように図示されている。しかしながら、台形溝は、上側駆動ロール上にあってよい。溶接ワイヤE1、E2は、台形溝のそれぞれ側壁137、139と、上側駆動ロール107bの外周面155との間でクランプされ、溶接ワイヤ同士は、上述のように、互いに接触するようにされる。従って、溶接ワイヤE1、E2は、3点接触によって安定的に保持される。
【0036】
図13は、本発明の一例示的コンタクトチップアセンブリ200を示す。コンタクトチップアセンブリ200は、既知のコンタクトチップ材料で作られてよく、任意の既知のタイプの溶接ガンで使用されてよい。図示されるように、この例示的実施形態では、コンタクトチップアセンブリは、2つの別個のチャネル201及び203を有し、これらはコンタクトチップアセンブリ200の長さ方向に延びる。溶接時には、第1の電極E1が第1のチャネル201を通され、第2の電極E2が第2のチャネル203を通される。上述のように、本明細書に記載の例示的実施形態では2つのワイヤ電極を同時に利用するが、本発明の他の実施形態では3つ以上の電極が利用可能である。例えば、本明細書に記載の説明及び議論と整合性がある、3つ以上の電極の構成が利用可能であることが考えられる。従って、コンタクトチップアセンブリ200は、3つ以上の電極に同時に電流を送る為の3つ以上のチャネルを含んでよい。チャネル201/203のサイズは、典型的には、それらのチャネルに通されるワイヤの径に合わせて適切に決定される。例えば、各電極が同じ径を有する場合は、各チャネルが同じ径になる。これに対し、異なる径を使用する場合は、各電極に電流が適正に送られるように、各チャネルのサイズを適切に決定しなければならない。更に、図示された実施形態では、チャネル201/203は、電極E1/E2がコンタクトチップ200の遠位端面から互いに平行に出るように構成されている。これに対し、別の例示的実施形態では、各チャネルは、電極E1/E2が、それぞれの中心線間の角度が±15°の範囲になってコンタクトチップの遠位端面から出るように構成されてよい。この角度付けは、実施する溶接、付加製造、又は他の堆積動作の所望の性能特性に基づいて決定されてよい。更に、幾つかの例示的実施形態では、コンタクトチップアセンブリは、図示されるように、単一の、チャネルと一体化されたコンタクトチップであってよく、別の実施形態では、コンタクトチップアセンブリは、互いに近接して配置された2つのコンタクトチップサブアセンブリで構成されてよく、電流はこれらのコンタクトチップサブアセンブリのそれぞれに送られる。
【0037】
図13に示されるように、各電極E1/E2は、距離Sだけ間隔を空けて配置されており、距離Sは、各電極の最も近いエッジ同士の間隔である。本発明の例示的実施形態では、この距離は、2つの電極E1/E2のうちの大きいほうの電極の径の0.025倍から4倍の範囲にあり、別の例示的実施形態では、距離Sは、最大径の2~3倍の範囲にある。例えば、各電極の径が1mmであれば、距離Sは、2~3mmの範囲にあってよい。別の例示的実施形態では、距離Sは、一方のワイヤ(例えば、2つの電極のうちの大きいほう)の径の0.25~2.25倍の範囲にある。手動式又は半自動式の溶接作業では、距離Sは、最大電極径の0.25~2.25倍の範囲にあってよく、これに対し、ロボット式の溶接作業では、距離Sは、同じ範囲、又は別の範囲(例えば、最大電極径の2.5~3.5倍の範囲)にあってよい。例示的実施形態では、距離Sは、1.5~3.5mmの範囲にある。
【0038】
後で更に説明するように、電極同士がブリッジ溶滴を介する以外では接触しないようにしながら、単一ブリッジ溶滴が溶滴移行前に電極間に形成されるように、距離Sを選択しなければならない。
【0039】
図14Aは、本発明の一例示的実施形態を示しており、同時に、各電極E1及びE2からの磁力の相互作用を示している。図示されるように、電流が流れることによって、電極の周囲に磁界が発生し、これは、ワイヤ同士を互いに引き寄せるピンチ力を発生させる傾向がある。この磁力は、2つの電極の間に溶滴ブリッジを形成する傾向があり、これについては後で詳述する。
【0040】
図14Bは、2つの電極の間に形成された溶滴ブリッジを示す。即ち、各電極を通る電流が電極の端部を溶融すると、磁力が溶融溶滴同士を互いに引き寄せて、最後には互いにつなげる傾向がある。距離Sは、電極の固体部分が互いに引き寄せられて接触することがないほど十分遠いが、溶接アークによって形成された溶接パドルに溶融溶滴が移行される前に、溶滴ブリッジが形成されるほどには十分近い。溶滴は図14Cに示されており、この図では、溶滴ブリッジは、単一の大きな溶滴を形成し、この溶滴は溶接中にパドルに移行される。図示されるように、溶滴ブリッジに作用する磁気ピンチ力は、単一電極の溶接作業でピンチ力を使用する場合と同様に溶滴をピンチオフするように動作する。
【0041】
更に、図15Aは、本発明の一実施形態における電流の流れの一例示的表現を示す。図示されるように、溶接電流は、各電極をそれぞれ流れるように分割され、ブリッジ溶滴が形成されるとブリッジ溶滴に向かって流れ、ブリッジ溶滴を通る。その後、電流は、ブリッジ溶滴からパドル及び被加工物へと渡る。電極同士の径及びタイプが同じである例示的実施形態では、電流は、本質的には、均等に分割されて各電極を通る。例えば、電極の径及び/又は組成/構造が異なる為に、電極同士の抵抗値が異なる実施形態では、各電流は、V=I×Rの関係に従って配分される。これは、溶接電流が既知の方法論と同様にコンタクトチップに印加され、コンタクトチップは、電極とコンタクトチップのチャネル壁との間の接触を介して各電極に溶接電流を供給する為である。図15Bは、ブリッジパドル内での磁力を示しており、これらの磁力はブリッジ溶滴の形成を支援する。図示されるように、これらの磁力は、各電極のそれぞれの溶融部分を互いに引き寄せ、最後にはそれらを互いに接触させる傾向がある。
【0042】
図16Aは、単一電極の溶接作業で作られた溶接箇所の一例示的断面を示す。図示されるように、溶接ビードWBの幅は適切であるが、溶接ビードWBのフィンガFは、図示されるように、被加工物Wの中に浸透していて、幅が比較的狭い。これは、シングルワイヤの溶接作業において、堆積速度を高くした場合に起こりうる。即ち、そのような溶接作業では、フィンガFは狭くなりうるため、フィンガが所望の方向に浸透したと確実に見なすことができず、従って、フィンガFは、適正な溶接浸透の確実な指標にはなりえない。更に、この狭いフィンガが深く潜るほど、フィンガの近くに孔が集まるなどの欠陥につながる可能性がある。更に、そのような溶接作業では、溶接ビードの有用な側面が要求どおりの深さに浸透しない。従って、用途によっては、この機械的接着は、要求どおりの強度にならない。更に、水平隅肉溶接を行う場合など、幾つかの溶接用途では、単一電極を使用すると、過剰な熱を溶接作業に追加しない限り、高い堆積速度において溶接脚を等サイズにすることが困難になる。これらの問題は本発明の実施形態によって軽減される。即ち、本発明の実施形態は、フィンガの浸透を低減して、フィンガを広げて、溶接の側方浸透の幅を広げることが可能である。このことの一例を、図16Bに示す。これは、本発明の一実施形態の溶接ビードを示している。図示されるように、この実施形態では、同様の、又は改善された、溶接ビード脚の対称性及び/又は長さが達成可能であり、同時に、溶接継手内の溶接深度において溶接ビードの幅を広げることも達成可能である。この改善された溶接ビード形状は、溶接箇所への全入熱を減らしながら達成される。従って、本発明の実施形態は、入熱量を減らし、堆積速度を高めながら、機械的溶接性能を高めることが可能である。堆積動作中に2つ以上の電極を使用することにより、アークの特性を向上させることも可能である。
【0043】
図17は、本発明の一例示的溶接作業のフローチャート600を示す。このフローチャートは、限定ではなく例示であるものとする。図示されるように、既知のシステム構造と整合性があるコンタクトチップ及び電極に電流が誘導されるように、溶接電源によって溶接電流/出力が与えられる(610)。後で例示的な波形について詳述する。溶接中に、電極間でブリッジ溶滴の形成が可能にされ(620)、各電極からのそれぞれの溶滴が互いに接触して、ブリッジ溶滴が形成される。ブリッジ溶滴は、溶接パドルに接触する前に形成される。ブリッジ溶滴の形成時には、溶滴が移行対象サイズに達する時刻まで、継続時間又は溶滴サイズの少なくとも一方が検出され、その後、溶滴が溶融パドルに移行される(640)。このプロセスは、溶接作業の間、繰り返される。溶接プロセスを制御する為に、電源コントローラ/制御システムは、ブリッジ溶滴電流継続時間及び/又はブリッジ溶滴サイズ検出結果のいずれかを使用して、ブリッジ溶滴が移行対象サイズかどうかを判定することが可能である。例えば、一実施形態では、所与の溶接作業に対して所定のブリッジ電流継続時間が使用されて、その継続時間の間はブリッジ電流が保持され、その後に溶滴移行が開始される。別の例示的実施形態では、電源のコントローラは、溶接電流及び/又は電圧を監視し、所定の閾値(例えば、電圧閾値)を所与の溶接作業に利用してよい。例えば、そのような実施形態では、(既知のタイプのアーク電圧検出回路で検出された)検出されたアーク電圧がブリッジ溶滴閾値レベルに達すると、電源は、溶接波形の溶滴分離部分を開始する。これについては後で、本発明の実施形態とともに使用可能な溶接波形の例示的実施形態に関して詳述する。
【0044】
次に図18~20を参照すると、本発明の例示的実施形態とともに使用可能な様々な例示的波形が示されている。概して、本発明の例示的実施形態では、電流を増やすことによって、ブリッジ溶滴を形成し、それを移行に向けて成長させる。例示的実施形態では、移行時のブリッジ溶滴の平均径が、電極間の距離Sと同等であり、これは、いずれかの電極の径より大きくてよい。溶滴は、形成されると、高ピーク電流によって移行され、その後、電流は、より低いレベル(例えば、バックグラウンドレベル)まで低下して、ワイヤに作用しているアーク圧力が除去される。その後、ブリッジング電流は、ブリッジ溶滴を成長させる。ピンチ力をかけすぎて溶滴の成長をピンチオフできないということはない。例示的実施形態では、このブリッジング電流は、バックグラウンド電流とピーク電流との間で、30~70%の範囲のレベルにある。別の例示的実施形態では、ブリッジング電流は、バックグラウンド電流とピーク電流との間で、40~60%の範囲にある。例えば、バックグラウンド電流が100アンペアであり、ピーク電流が400アンペアであれば、ブリッジング電流は220~280アンペアの範囲にある(即ち、300アンペアの差の40~60%である)。幾つかの実施形態では、ブリッジング電流は、1.5~8ミリ秒の範囲の継続時間にわたって保持されてよく、別の例示的実施形態では、ブリッジング電流は、2~6ミリ秒の範囲の継続時間にわたって保持されてよい。例示的実施形態では、ブリッジング電流継続時間は、バックグラウンド電流状態の終わりから始まり、ブリッジング電流が一定比率で増加する時間を含み、この一定比率で増加する時間は、ブリッジング電流レベル及び一定増加率に応じて、0.33~0.67ミリ秒の範囲にあってよい。本発明の例示的実施形態では、波形のパルス周波数は、シングルワイヤのプロセスと比べて、減速されてよく、これは、制御を改善しうる、溶滴の成長を考慮するためであり、且つ、シングルワイヤの作業に比べて、より高い堆積速度を可能にする為である。
【0045】
図18は、パルススプレー溶接型の作業の一例示的電流波形800を示す。図示されるように、波形800はバックグラウンド電流レベル810を有し、これがブリッジ電流レベル820に遷移し、その間にブリッジ溶滴が移行対象サイズに成長する。ブリッジ電流レベルは、溶滴がパドルに移行し始めるスプレー遷移電流レベル840より低い。ブリッジ電流820の終わりには、電流は、スプレー遷移電流レベル840を超えてピーク電流レベル830まで上げられる。その後、ピーク電流レベルは、ピーク継続時間の間、保持され、これによって、溶滴の移行が完了することが可能になる。移行後の電流は再びバックグラウンドレベルまで低減され、プロセスが繰り返される。従って、これらの実施形態では、波形ブリッジ電流部分の間は、単一溶滴の移行が行われない。そのような例示的実施形態では、ブリッジ電流の低いほうの電流レベル820は、過剰なピンチ力で溶滴をパドルに誘導することなく、溶滴の形成を可能にする。ブリッジ溶滴を使用することで溶接作業が達成可能であり、ピーク電流830は、シングルワイヤを使用する場合に比べて、より高いレベルで、より長い継続時間にわたって保持されることが可能である。例えば、幾つかの実施形態は、ピーク電流レベルが550~700アンペアで、バックグラウンド電流が150~400アンペアの範囲の場合に、ピーク継続時間を少なくとも4ミリ秒、4~7ミリ秒の範囲にわたって保持することが可能である。そのような実施形態では、堆積速度を大幅に改善することが可能である。例えば、幾つかの実施形態は、19~26ポンド毎時の範囲の堆積速度を達成しており、これに対し、同様のシングルワイヤプロセスは、10~16ポンド毎時の範囲の堆積速度しか達成できない。例えば、非限定的な一実施形態では、径が0.040インチである一対のツインワイヤは、ピーク電流が700アンペア、バックグラウンド電流が180アンペア、並びに溶滴ブリッジ電流が340アンペアの場合には、周波数120Hzで、19ポンド毎時の速度で堆積されることが可能である。そのような堆積は、従来の溶接プロセスより格段に低い周波数で、従って、より安定的に行われる。
【0046】
図19は、ショートアーク型の溶接作業で使用可能な別の例示的波形900を示す。この場合も、波形900はバックグラウンド部分910を有し、その後に、溶滴とパドルとの間の短絡をクリアするように構造化された短絡応答部分920を有する。短絡応答920の間に電流が上げられて短絡がクリアされ、短絡がクリアされると、電流はブリッジ電流レベル930まで低減され、その間にブリッジ溶滴が形成される。この場合も、ブリッジ電流レベル930は、短絡応答920のピーク電流レベルより低い。ブリッジ電流レベル930は、ブリッジ溶滴が形成されてパドルに誘導されることを可能にするブリッジ電流継続時間にわたって保持される。その後、溶滴の移行中に、電流はバックグラウンドレベルまで低減され、これにより、短絡が発生するまで溶滴が前進することが可能になる。短絡が発生すると、短絡応答/ブリッジ電流波形が繰り返される。なお、本発明の実施形態では、溶接プロセスをより安定的にしているのは、ブリッジ溶滴の存在である。即ち、複数のワイヤを使用する従来式の溶接プロセスでは、ブリッジ溶滴はない。そのようなプロセスでは、1つのワイヤが短絡するか、パドルと接触すると、アーク電圧は下がり、他方の電極に対するアークは消えるか絶える。これは、本発明の実施形態では発生せず、ブリッジ溶滴は各ワイヤに共通である。
【0047】
図20は別の例示的波形1000を示しており、これはSTT(表面張力移行)型の波形である。このような波形は知られているので、ここでは詳しく説明しない。STT型の波形、その構造、使用法、及び実装についての詳しい説明の為に、2012年4月5日に出願された(特許文献3)が完全な形で本明細書に組み込まれている。この場合も、この波形はバックグラウンドレベル1010を有しており、更に第1のピークレベル1015及び第2のピークレベル1020を有しており、第2のピークレベルは、溶滴とパドルとの間の短絡がクリアされた後に到達される。第2のピーク電流レベル1020の後、電流はブリッジ電流レベル1030まで低減され、そこでブリッジ溶滴が形成され、その後、電流はバックグラウンドレベル1010まで低減され、これにより、溶滴は、パドルと接触するまで、パドルに向かって進められることが可能になる。別の実施形態では、AC波形が使用されてよく、例えば、AC STT波形、パルス波形等が使用されてよい。
【0048】
本明細書に記載の実施形態を使用することは、既知の溶接作業に対する、安定性、溶接構造、及び性能の大幅な改善をもたらしうる。しかしながら、実施形態は、溶接作業にとどまらず、付加製造作業にも使用されてよい。実際、上述のシステム100は、付加製造作業においても、溶接作業の場合と同様に使用可能である。例示的実施形態では、付加製造作業において堆積速度の向上が達成可能である。例えば、シングルワイヤの付加製造プロセスにおいてSTT型の波形を使用する場合、0.045インチのワイヤを使用して可能な堆積速度は、不安定になるまでは約5ポンド毎時である。これに対し、本発明の実施形態を使用し、2つの0.040インチワイヤを使用すると、安定した移行において、7ポンド毎時の堆積速度が達成可能である。付加製造のプロセス及びシステムは知られているので、そのようなプロセス及びシステムの細部を詳細に説明することは、本明細書では不要である。そのようなプロセスでは、ブリッジング電流、例えば、上述のようなブリッジング電流が、付加製造の電流波形において使用されてよい。
【0049】
なお、例示的実施形態は、上述及び本明細書に記載の波形の使用に限定されず、他の溶接型の波形が本発明の実施形態とともに使用されてもよい。例えば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、別の実施形態が、様々な極性のパルススプレー溶接波形、AC波形等を使用してよい。例えば、様々な極性の実施形態において、溶接パドルへの全入熱を減らしながらブリッジ溶滴が形成されるように、溶接波形のブリッジ部分が負の極性で完了してよい。例えば、AC型の波形を使用する場合、この波形は、交番する正負のパルスの周波数が60~200Hzであってよく、これによって、2つのワイヤを溶融し、それらの間にブリッジ溶滴を形成することが可能である。別の実施形態では、この周波数は80~120Hzの範囲にあってよい。
【0050】
説明してきたように、本発明の実施形態は、フラックスコアード消耗材を含む様々なタイプ及び組み合わせの消耗材とともに使用可能である。実際、本発明の実施形態は、フラックスコアード電極を使用した場合に、より安定的な溶接作業を実現しうる。具体的には、ブリッジング溶滴を使用することは、シングルワイヤの溶接作業では不安定になりがちなフラックスコア溶滴の安定化に役立ちうる。更に、本発明の実施形態は、より高い堆積速度において溶接及びアークの安定性を高めることを可能にする。例えば、シングルワイヤの溶接作業では、電流が大きく、堆積速度が高い場合に、溶滴の移行タイプがストリーミングスプレーから回転スプレーに変わる可能性があり、これは、溶接作業の安定性をかなり低下させる。これに対し、本発明の例示的実施形態を用いると、ブリッジ溶滴によって溶滴が安定し、これによって、堆積速度が高い場合(例えば、20ポンド毎時を超える場合)のアーク及び溶接の安定性が大幅に向上する。
【0051】
当然のことながら、本開示は例示であり、本開示に含まれる教示の公正な範囲から逸脱しない限り、細部を追加したり修正したり削除したりすることによる様々な変更が行われてよい。従って、本発明は、以下の特許請求項が必然的にそのように限定されている範囲を除いて、本開示の具体的詳細に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
100 溶接システム
105 ワイヤフィーダ
106 重量センサ
107 駆動ロール
107a 駆動ロール
107b 駆動ロール
108 通信リンク
109 電源
110 超音波高さセンサ
111 溶接トーチ
113 ライナ
118 直線ワイヤフィードセンサ
120 コントローラ
121 溶接出力端子
122 ユーザインタフェース
123 駆動モータ
125 付勢ばね
127 調節ロッド
131 成形凹部
133、135 ワイヤ受け溝
137 内側側壁
139 外側側壁
141 溝底面
143 環状溝
145 内側側壁
147 外側側壁
149 環状溝
150 側壁
151 非台形溝
152 溝底面
153 底面
155 外周面
200 コンタクトチップアセンブリ
201、203 チャネル
図1A
図1B
図2
図3
図4
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図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20