(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ガス警報器
(51)【国際特許分類】
G08B 21/14 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
G08B21/14
(21)【出願番号】P 2019221855
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中村 信介
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-118939(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143386(WO,A1)
【文献】特開2014-215875(JP,A)
【文献】特開2008-146183(JP,A)
【文献】特開2009-211172(JP,A)
【文献】特開2007-199840(JP,A)
【文献】特開2008-154228(JP,A)
【文献】特開2005-128967(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01037183(EP,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0107142(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被検知ガスを検知するセンサから前記被検知ガスの状態をガス情報として取得するガス情報取得部と、
前記被検知ガスの状態が、あらかじめ設定された複数の警報状態のいずれかに該当するかを、前記複数の警報状態のそれぞれに係る重要性と対応づけられた優先度とともに判定するガス情報判定部と、
前記ガス情報について、警報状態発生前後のデータが記録される記録部と、
前記記録部に対する前記ガス情報の記録態様を制御するガス情報記録制御部と、を備え、
前記ガス情報記録制御部は、
複数の警報状態が発生し、複数の前記ガス情報の前記記録部への記録が時間的に競合した場合、各警報状態に対応づけられた優先度を比較し、その比較結果に応じて、前記記録部に記録されるガス情報を選択する、ガス警報器。
【請求項2】
前記複数の警報状態として、少なくとも2つの前記警報状態が発生したものとして、
前記2つの警報状態のうち、先に発生した前記警報状態に対応づけられた前記優先度を第1優先度とし、
前記2つの警報状態のうち、後に発生した前記警報状態に対応づけられた前記優先度を第2優先度とすると、
前記ガス情報記録制御部は、前記第1優先度と前記第2優先度とを比較する、請求項1に記載のガス警報器。
【請求項3】
前記第2優先度が、前記第1優先度よりも高い場合、
前記ガス情報記録制御部は、前記先に発生した前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を中止し、前記後に発生した前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を開始する、請求項2に記載のガス警報器。
【請求項4】
前記第1優先度が、前記第2優先度以上である場合、
前記ガス情報記録制御部は、前記先に発生した前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を継続する、請求項2または3に記載のガス警報器。
【請求項5】
選択された前記ガス情報が前記記録部に記録されている間に、前記選択された前記ガス情報に対応する前記警報状態が解除された場合、
前記ガス情報記録制御部は、前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を中止する、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス警報器。
【請求項6】
前記ガス情報が一時的に記録される一時記録領域をさらに備え、
前記ガス情報記録制御部は、
前記ガス情報を常時取得し、前記ガス情報を、前記一時記録領域に一時的に保存するとともに、前記一時記録領域に保存された前記ガス情報の少なくとも一部を前記記録部にコピーすることにより、前記記録部へ記録する、請求項1~5のいずれか1項に記載のガス警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性ガス漏洩警報機能またはCOガス漏洩警報機能などの機能を有するガス警報器(ガス警報装置)が知られている。また、警報が発せられた時点における検知対象ガスについてのガス濃度等の情報を書き込むための記録装置を備えたガス警報器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、警報発生時に、2つのリングバッファに検知データを二重に書き込むことで、常に最新の警報データを記録することができるガス警報器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなガス警報器では、発生した警報の重大性について考慮していない。例えば、特許文献1に記載のガス警報器では、重大な警報が発生した後に比較的軽微な警報が連続して発生した場合、重大な警報に関する記録が上書きされ、比較的軽微な警報に関する記録のみが残る。このように特許文献1の発明では、警報の重要度に応じた記録が行われておらず、ガス警報器が記録可能な記録領域が有効活用されていない。
【0006】
本発明の一態様は、警報の重要度の観点からガス警報器のデータ容量を有効活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係るガス警報器は、少なくとも被検知ガスを検知するセンサから前記被検知ガスの状態をガス情報として取得するガス情報取得部と、前記被検知ガスの状態が、あらかじめ設定された複数の警報状態のいずれかに該当するかを、前記複数の警報状態のそれぞれに係る重要性と対応づけられた優先度とともに判定するガス情報判定部と、前記ガス情報について、警報状態発生前後のデータが記録される記録部と、前記記録部に対する前記ガス情報の記録態様を制御するガス情報記録制御部と、を備え、前記ガス情報記録制御部は、複数の警報状態が発生し、複数の前記ガス情報の前記記録部への記録が時間的に競合した場合、各警報状態に対応づけられた優先度を比較し、その比較結果に応じて、前記記録部に記録されるガス情報を選択する。
【0008】
前記構成によると、複数の警報状態のそれぞれに関連付けられた優先度の比較結果に応じて、記録部へのガス情報の記録を制御することができる。これにより、記録部に書き込まれるガス情報は、警報状態に対応した優先度を鑑みたものとなる。従って、記録部のデータ容量を有効活用することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係るガス警報器は、前記複数の警報状態として、少なくとも2つの前記警報状態が発生したものとして、前記2つの警報状態のうち、先に発生した前記警報状態に対応づけられた前記優先度を第1優先度とし、前記2つの警報状態のうち、後に発生した前記警報状態に対応づけられた前記優先度を第2優先度とすると、前記ガス情報記録制御部は、前記第1優先度と前記第2優先度とを比較する。
【0010】
前記構成によると、優先度に応じて警報状態についての記録部に記録されるガス情報が選択されるため、記録部全体としてのデータ量がより効果的に抑制される。
【0011】
また、本発明の一態様に係るガス警報器は、前記第2優先度が、前記第1優先度よりも高い場合、前記ガス情報記録制御部は、前記先に発生した前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を中止し、前記後に発生した前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を開始する。
【0012】
前記構成によると、より優先度の高い警報状態についてのガス情報を優先して記録部に書き込む。これにより、優先度の低い警報状態についての記録部への書き込みは抑制され、記録部に書き込まれるガス情報についてはより優先度の高い警報状態に係るものが主体となる。従って、記録部のデータ容量をさらに有効活用することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係るガス警報器は、前記第1優先度が、前記第2優先度以上である場合、前記ガス情報記録制御部は、前記先に発生した前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を継続する。
【0014】
前記構成によると、より優先度の高い警報状態についてのガス情報を優先して記録部に書き込む。これにより、優先度の低い警報状態についての記録部への書き込みは抑制され、記録部に書き込まれるガス情報については優先度の高い警報状態に係るものが主体となる。従って、記録部のデータ容量をさらに有効活用することができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係るガス警報器は、選択された前記ガス情報が前記記録部に記録されている間に、前記選択された前記ガス情報に対応する前記警報状態が解除された場合、前記ガス情報記録制御部は、前記警報状態に対応する前記ガス情報の前記記録部への記録を中止する。
【0016】
前記構成によると、警報状態が解除されるということは、被検知ガスの状態が警報状態に該当していないことを意味する。警報状態が解除された場合に警報状態についての記録部への記録を中止することで、当該警報状態が解除された後のガス情報は記録部に記録されなくなる。これにより、記録部に、警報状態に該当しない必要性の低いガス情報が記録されることがなくなるため、記録部のデータ容量をさらに有効活用することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係るガス警報器は、前記ガス情報が一時的に記録される一時記録領域をさらに備え、前記ガス情報記録制御部は、前記ガス情報を常時取得し、前記ガス情報を、前記一時記録領域に一時的に保存するとともに、前記一時記録領域に保存された前記ガス情報の少なくとも一部を前記記録部にコピーすることにより、前記記録部へ記録する。
【0018】
前記構成によると、一時記録領域には、常時ガス情報の書き込みが行われているが、一時記録領域ではガス情報が順次上書きされていくため、一時記録領域に記録されるデータ量が過大となる可能性は低減される。また、いつ警報状態が発生したとしても、所定の期間のガス情報を記録部にコピーすることができる。また、記録部には、一時記録領域に記録されたガス情報がコピーされるため、記録部に記録されるデータ量が過大となる可能性も低減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、ガス警報器のデータ容量を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1に係るガス警報器の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係るガス警報器において、一時記録領域にガス情報を記録する際に行われる処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【
図3】警報状態発生時に行われる処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【
図4】警報状態発生時に行われる他の処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係るガス警報器ガス警報器における時間の流れと警報状態との対応関係を示す図である。
【
図6】実施形態1に係るガス警報器の記録態様について説明するための図である。
【
図7】実施形態2に係るガス警報器の構成を示すブロック図である。
【
図8】実施形態2に係るガス警報器における処理の流れの一例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施形態1〕
〔ガス警報器1の構成〕
以下、実施形態1について、詳細に説明する。
図1は、実施形態1に係るガス警報器1の構成を示すブロック図である。ガス警報器1は、被検知ガスを検知し、当該ガスの種類または濃度等に応じて警報を発し、当該警報に関する情報を記録する。
図1に示すように、ガス警報器1は、センサ2、タイマ3、一時記録部40、記録部42、FRAM43、および制御部5を備える。
【0022】
センサ2は、被検知ガスを検知する。センサ2は、被検知ガスの検知対象区域に設置されている。センサ2は、被検知ガスの種類、濃度、またはそれらの組み合わせに応じた出力値を制御部5のガス情報取得部51(後述)へ出力する。センサ2として、例えば拡散式または吸引式のセンサを用いることができる。タイマ3は現在時刻を取得する。タイマ3としては、例えば電波時計を用いることができる。ガス警報器1は、タイマ3を介して現在時刻を取得する。
【0023】
一時記録部40は、制御部5のガス情報記録制御部53(後述)によって所定の時間ごとにガス情報(後述)が記録される一時記録領域41を備える(後述の
図6も参照)。以下、当該「所定の時間」を「第1所定時間」と称する。また、一時記録領域41には、所定の数のガス情報が記録される。以下、一時記録領域41に記録されるガス情報の数を「第1所定数」と称する。
図6に示すように、一時記録領域41は、第1所定数の単位記録領域Sによって構成されている。単位記録領域Sとは、1つの単位記録領域Sに1回の検知分のガス情報を記録することができる記録領域である。実施形態1では、一例として、第1所定時間が1秒であり、第1所定数が10である場合について説明する。但し、第1所定時間の数値および第1所定数は、これらに限定されるものではなく、例えば第1所定数は30であってもよい。なお、一時記録領域41は、データバッファリングエリアとも称される。
【0024】
記録部42は、一時記録領域41に記録されているガス情報の少なくとも一部がコピーされ、また、警報状態発生前後のガス情報が記録される階層状の記録領域を備える(
図6も参照)。記録部42は、(i)警報状態(後述)が発生する前のガス情報が記録される警報前記録領域421、および、(ii)警報状態が発生した後のガス情報が記録される警報後記録領域422、を備える。以下、警報前記録領域421に記録されるガス情報の数を第2所定数と称する。また、警報後記録領域422に記録されるガス情報の数を第3所定数と称する。実施形態1では、一例として、第2所定数および第3所定数が、それぞれ10である場合について説明する。但し、第2所定数および第3所定数は、これに限られない。例えば第2所定数および第3所定数は、それぞれ30であってもよい。警報前記録領域421および警報後記録領域422のそれぞれでは、より上の階層に記録されるガス情報はより古く、より下の階層に記録されるガス情報はより新しくなるよう記録が行われる。
【0025】
FRAM(登録商標)(Ferroelectric Random Access Memory)43は、不揮発性のメモリである。FRAM43は、記録部42に記録されたガス情報の少なくとも一部がガス情報記録制御部53によってコピーされ、当該ガス情報を蓄積する複数の警報データ記録領域431を備える(
図6も参照)。警報データ記録領域431のそれぞれには、記録部42に記録された警報前後ガス情報(後述)がコピーされる。複数の警報データ記録領域431は、それぞれが別個の警報状態に対応する警報前後ガス情報を蓄積する。以下、FRAM43に記録される警報前後ガス情報の数を第4所定数と称する。実施形態1では、第4所定数が10である、すなわち、警報データ記録領域431の個数が10個である場合について説明する。FRAM43に蓄積された警報前後ガス情報は、コンピュータ等に読み出すことができる。
【0026】
図1では、一時記録部40、記録部42、およびFRAM43が、異なる記録媒体である場合を例示している。但し、上述の各記録領域は、同一の記録媒体に設けられてもよい。なお、一例として、一時記録部40および記録部42は、揮発性のメモリであるSRAM(Static Random Access Memory)であってよい。
【0027】
制御部5は、ガス情報取得部51、ガス情報判定部52、およびガス情報記録制御部53を備える。ガス情報取得部51は、(i)センサ2から被検知ガスの状態を、(ii)タイマ3から現在時刻を、ガス情報として常時取得する。被検知ガスの状態とは、ガス警報器1が検知可能なガスである被検知ガスの種類および当該被検知ガスの濃度を示す。あるいは、ガス警報器1が1種類の被検知ガスを検知する場合には、被検知ガスの状態とは、被検知ガスの濃度のみを示す。ガス情報取得部51は、取得したガス情報のうち最新のものを、第1所定時間ごとにガス情報判定部52およびガス情報記録制御部53に出力する。ガス情報取得部51が、第1所定時間ごとにガス情報取得部51からガス情報判定部52およびガス情報記録制御部53に出力するガス情報を、1個のガス情報と称する。
【0028】
ガス情報判定部52は、ガス情報取得部51からガス情報を取得し、当該ガス情報に含まれる被検知ガスの状態が、複数の警報状態のいずれかに該当するか否かを判定する。警報状態とは、あらかじめ設定された被検知ガスの状態である。一例として、警報状態とは、例えば、被検知ガスの種類が有毒ガスであれば、当該被検知ガスの濃度が設定値以上となった状態である。あるいは、警報状態とは、被検知ガスの種類が酸素であれば、当該被検知ガスの濃度が設定値以下になった状態である。また、ガス情報判定部52は、同一の種類の被検知ガスに対応する警報状態を区別してもよい。例えば、ガス情報判定部52は、(i)「ある被検知ガスの濃度が設定値以上であり、かつ、あらかじめ設定された閾値未満である場合」と、(ii)「当該被検知ガスの濃度が設定値以上であり、かつ、当該閾値以上である場合」とを区別して、両者を異なる警報状態であると判定してもよい。
【0029】
ガス情報判定部52は、取得したガス情報に含まれる被検知ガスの状態が警報状態に該当すると判定した場合、さらに当該ガス情報の優先度を設定する。優先度は、当該警報状態に係る重要性と対応付けられた値である。具体的には、警報状態の重要性に応じて、より高い優先度が設定される。
【0030】
ガス情報判定部52は、ガス情報に含まれる被検知ガスの状態がより危険であると設定された警報状態に該当すると判定した場合には、当該ガス情報に高い優先度を設定する。他方、ガス情報判定部52は、上記被検知ガスの状態が比較的危険でないと設定された警報状態に該当すると判定した場合には、当該ガス情報に低い優先度を設定する。
【0031】
被検知ガスの状態がより危険であるか、あるいは比較的危険でないかを判断する基準としては、例えば被検知ガスの種類、濃度、濃度の上昇率、またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ある被検知ガスの濃度が急激に上昇した場合は、当該被検知ガスの濃度が緩やかに上昇する場合に比べてより危険であると判断される。
【0032】
ガス情報判定部52は、ガス情報に含まれる被検知ガスの状態が警報状態に該当すると判定した場合、(i)当該被検知ガスの状態が警報状態に該当することを示す情報、(ii)当該警報状態の種類、および、(iii)当該警報状態に対応する優先度を、警報情報として、ガス情報記録制御部53に出力する。ガス情報判定部52は、警報情報を出力する処理を定期的に、例えば1秒間隔で行う。あるいは、当該処理は、(i)「警報状態が発生していない状態から新たに警報状態が発生した場合」、または、(ii)「警報情報を出力した後、新たに取得した被検知ガスの状態が、当該警報情報に係る警報状態とは異なる警報状態に該当すると判定した場合」、のいずれかの場合に行われる。
【0033】
ガス情報記録制御部53は、一時記録部40、記録部42およびFRAM43に対するガス情報の記録態様を制御する。具体的には、ガス情報記録制御部53は、ガス情報取得部51からガス情報を常時取得し、一時記録領域41に一時的に保存する。当該保存は第1所定時間ごと(1秒ごと)に行われる。ガス情報記録制御部53が、一時記録領域41に、新たに取得したガス情報を記録するとき、一時記録領域41に記録されているガス情報が第1所定数に達しているとする。この場合、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に記録されているガス情報の内、少なくとも一部、例えば最も古いガス情報を削除する。そして、ガス情報記録制御部53は、ガス情報が削除され空白となった記録領域に、新たに取得したガス情報を記録する。換言すると、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に記録されているガス情報の数が第1所定数に達している場合、最も古いガス情報に対して新たに取得したガス情報を上書きする。
【0034】
また、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に保存されたガス情報の少なくとも一部を記録部42にコピーすることにより、当該ガス情報を記録部42に記録する。以下、具体的な処理について説明する。ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に新たなガス情報を記録する処理を行った後、当該新たなガス情報を警報前記録領域421にコピーする。具体的には、ガス情報記録制御部53は、警報前記録領域421の階層状の記録領域に記録されているガス情報を、それぞれ1つ上の階層の記録領域にスライドさせる。この時、警報前記録領域421に、既に第2所定数のガス情報が記録されている場合、最も上の階層の記録領域に記録されている最も古いガス情報を削除する。その後、ガス情報記録制御部53は、警報前記録領域421の最も下の階層の記録領域に、一時記録領域41から新たなガス情報をコピーする。
【0035】
ガス情報記録制御部53がガス情報判定部52から警報情報を取得した場合、ガス情報記録制御部53はガス情報のロギングを開始する。具体的には、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に記録されているガス情報の警報前記録領域421へのコピーを中止する。その後、ガス情報記録制御部53は、警報状態が発生した時間および当該警報状態が所属する警報の種類を記録部42に記録する。
【0036】
その後、ガス情報記録制御部53は、警報状態が発生してから新たに一時記録領域41に記録されるガス情報を、警報後記録領域422にコピーする。当該処理は、新たに一時記録領域41にガス情報が記録されるのと同時に、すなわち第1所定時間ごとに行われる。
【0037】
警報後記録領域422に記録されているガス情報が第3所定数に達していたとする。この場合、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を、警報前後ガス情報としてFRAM43にコピーする。このとき、FRAM43の備える複数の警報データ記録領域431のうち、第3所定数の警報データ記録領域431(例えば全ての警報データ記録領域431)に既に警報前後ガス情報が蓄積されているとする。この場合、ガス情報記録制御部53は、複数の警報データ記録領域431に蓄積されている警報前後ガス情報のうちの少なくとも一部(例えば最も古いガス情報が記録されている警報データ記録領域431の警報前後ガス情報)を削除する。
【0038】
続けて、ガス情報記録制御部53は、ガス情報が削除され空白となった警報データ記録領域431のうちの1つに、記録部42に記録されているガス情報を警報前後ガス情報としてコピーする。その後、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を削除する。ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を削除すると、一時記録領域41に記録されているガス情報全体を警報前記録領域421にコピーする。
【0039】
以下、(i)警報情報を取得したガス情報記録制御部53が一時記録領域41から警報前記録領域421へのガス情報のコピーを中止する処理、(ii)一時記録領域41から警報後記録領域422にガス情報をコピーする処理、および、(iii)記録部42からFRAM43にガス情報をコピーする処理を、総称的に「警報状態に関する記録」と称する。また、第1警報状態(後述)に基づいて行われる「警報状態に関する記録」を、「第1警報状態に関する記録」と称し、第2警報状態(後述)に基づいて行われる「警報状態に関する記録」を「第2警報状態に関する記録」と称する。
【0040】
ガス情報記録制御部53が、「警報情報を取得した時、既に別の警報状態に関する記録を行っている場合」、換言すると、「複数の警報状態が発生し、複数のガス情報の記録部42への記録が時間的に競合した場合」について説明する。以下、既に記録を行っている警報状態を第1警報状態と称し、新たに取得した警報状態を第2警報状態と称する。
【0041】
この場合、ガス情報記録制御部53は、それぞれの警報状態に対応する優先度の比較および当該比較の結果に応じた処理を行う。以下、具体的な処理について説明する。ガス情報記録制御部53は、警報情報を取得した時、既に別の警報状態に関する記録を行っている場合、既に記録を行っている警報状態を第1警報状態と判定し、新たに取得した警報情報を第2警報状態と判定する。また、ガス情報記録制御部53は、(i)先に発生した警報状態である第1警報状態に対応付けられた優先度である第1優先度と、(ii)後に発生した警報状態である第2警報状態に対応付けられた優先度である第2優先度と、を比較する。
【0042】
なお、第1警報状態および第2警報状態に係る被検知ガスの種類が異なる場合、第1警報状態と第2警報状態とは、重複して発生し続ける場合がある。一方、それぞれの当該被検知ガスの種類が異なる場合(つまり、第2警報状態の発生が、被検知ガスの濃度または濃度の上昇率が第1警報状態とは異なることによるものである場合)、第2警報状態が発生した時点において、第1警報状態は解除される。
【0043】
ガス情報記録制御部53は、第1優先度と第2優先度との比較結果に応じて、記録部42に記録されるガス情報を選択する。具体的には、第1優先度が第2優先度以上の場合、ガス情報記録制御部53は、第2警報状態に関する記録は行わず、第1警報状態に関する記録を継続する。一方、第1優先度よりも第2優先度の方が高い場合、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に関する記録を中止し、第2警報発生前後のガス情報を新たに記録し始める。具体的には、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報をFRAM43にコピーした後、一時記録領域41に記録されているガス情報を警報前記録領域421にコピー(上書き)する。続いて、ガス情報記録制御部53は、警報後記録領域422に記録されているガス情報を削除する。その後、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41から警報後記録領域422へのガス情報のコピーを開始する。
【0044】
また、第1警報状態および第2警報状態が発生し、ガス情報記録制御部53が、第1警報状態または第2警報状態に関する記録を行っている間に新たに警報情報を取得した場合について説明する。この場合、第2警報状態を新たな第1警報状態と称し、新たに取得した警報情報に対応する警報状態を新たな第2警報状態と称する。
【0045】
ガス情報記録制御部53が第2警報状態に関する記録を行わず、第1警報状態に関する記録を継続して行っている場合、ガス情報記録制御部53は、新たに取得した警報情報に係る警報状態を新たな第2警報状態と判定する。その後、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態および新たな第2警報状態について、それぞれの警報状態に対応する優先度の比較および当該比較の結果に応じた処理を行う。
【0046】
一方、ガス情報記録制御部53が第2警報状態に関する記録を行っている場合、ガス情報記録制御部53は、新たに取得した警報情報に係る警報状態を第3警報状態と判定する。第3警報状態とは、第2警報状態の後に発生した警報状態である。その後、ガス情報記録制御部53は、第2警報状態および第3警報状態について、それぞれの警報状態に対応する優先度の比較および当該比較の結果に応じた処理を行う。
【0047】
〔ガス警報器1における処理の流れの例〕
次に、ガス警報器1の処理(制御方法)の流れの例について、
図2~
図4を用いて説明する。
図2は、ガス警報器1において、一時記録領域41にガス情報を記録するときに行われる処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
図3は、警報状態発生時に行われる処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
図4は、警報状態発生時に行われる他の処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【0048】
<一時記録領域41にガス情報を記録する際の処理の流れの一例>
以下、
図2を参照し、一時記録領域41にガス情報を記録する際に行われる処理の流れの一例について説明する。なお、一時記録領域41にガス情報を記録するための処理は、ガス警報器1が動作している間、常に行われている。
【0049】
まず、ガス情報取得部51は、センサ2から被検知ガスの状態を、タイマ3から現在時刻をそれぞれ取得し、ガス情報としてガス情報記録制御部53に出力する。ガス情報記録制御部53は、ガス情報を取得する(S1)と、ガス情報記録制御部53が前回一時記録領域41にガス情報を記録した時間から、現在時刻までの時間が、第1所定時間に達しているか否か、すなわち第1所定時間が経過したか否かを判定する(S2)。
【0050】
ガス情報記録制御部53が前回一時記録領域41にガス情報を記録した時刻から、現在時刻までの時間が、第1所定時間に達していない場合(S2においてNO)、ガス情報記録制御部53は、再度ガス情報取得部51からガス情報を取得する。その後、S1に戻る。
【0051】
一方、ガス情報記録制御部53が前回一時記録領域41にガス情報を記録した時刻から、現在時刻までの時間が、第1所定時間に達している場合(S2においてYES)、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41を参照する(S3)。ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41を参照し、一時記録領域41に記録されているガス情報の数が、第1所定数に達しているか否かを判定する(S4)。
【0052】
一時記録領域41に記録されているガス情報の数が、第1所定数に達している場合(S4においてYES)、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に記録されているガス情報の内、少なくとも一部を削除する(S5)。例えば、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に記録されているガス情報の内、最も古いガス情報を削除する。S5の後、以下に述べるS6に進む。
【0053】
一方、一時記録領域41に記録されているガス情報の数が、第1所定数に達していない場合(S4においてNO)、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41にガス情報を記録する(S6)。
【0054】
<警報状態発生時の処理の流れの一例>
以下、
図3を参照し、警報状態発生時に行われる処理の流れの一例について説明する。なお、警報状態が発生していない間、一時記録領域41に新たなガス情報が記録された場合、ガス情報記録制御部53は、当該新たなガス情報を一時記録領域41から警報前記録領域421にコピーする。
【0055】
ガス情報記録制御部53は、ガス情報判定部52から警報情報を取得すると(S11)、一時記録領域41から警報前記録領域421へのガス情報のコピーを中止する(S12)。また、ガス情報記録制御部53は、警報状態が発生した時間および警報状態が所属する警報の種類を記録部42に記録する。
【0056】
続いて、ガス情報記録制御部53は、警報状態発生後新たに一時記録領域41に記録されたガス情報を警報後記録領域422にコピーする(S13)。その後、ガス情報記録制御部53は、警報後記録領域422に記録されているガス情報の数が第3所定数に達しているか否かを判定する(S14)。
【0057】
警報後記録領域422に記録されているガス情報の数が第3所定数に達している場合(S14においてYES)、ガス情報記録制御部53は、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が第4所定数に達しているか否かを判定する(S15)。
【0058】
FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が第4所定数に達している場合(S15においてYES)、ガス情報記録制御部53は、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報のうちの少なくとも一部を削除する(S16)。S16の処理の後、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を、警報前後ガス情報としてFRAM43にコピーする(S17)。その後、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を削除する。
【0059】
一方、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が第4所定数に達していない場合(S15においてNO)、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を、警報前後ガス情報としてFRAM43にコピーする(S17)。その後、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を削除し、警報前記録領域421に、一時記録領域41に記録されているガス情報をコピーする。
【0060】
なお、警報後記録領域422に記録されているガス情報の数が第3所定数に達していない場合(S14においてNO)、ガス情報記録制御部53は、ガス情報取得部51から現在時刻を取得する(S18)。ガス情報記録制御部53は、取得した現在時刻に基づいて、警報後記録領域422にガス情報を前回記録した時刻から現在時刻までの時間が第1所定時間に達しているか否か、すなわち第1所定時間が経過したか否かを判定する(S19)。
【0061】
警報後記録領域422にガス情報を前回記録した時刻から現在時刻までの時間が第1所定時間に達している場合(S19においてYES)、S13に戻る。一方、警報後記録領域422にガス情報を前回記録した時刻から現在時刻までの時間が第1所定時間に達していない場合(S19においてNO)、S18に戻る。
【0062】
<警報状態発生時に行われる他の処理>
以下、
図4を参照し、警報状態発生時に行われる他の処理の流れの一例について説明する。当該処理は、上述した
図3に示す処理と同時に行われる。まず、ガス情報記録制御部53は、警報情報を取得すると(S21)、ガス情報記録制御部53が、他の警報状態に関する記録を既に行っているか否かを判定する(S22)。
【0063】
ガス情報記録制御部53が、他の警報状態に関する記録を行っていない場合(S22においてNO)、
図4の処理は終了する。一方、ガス情報記録制御部53が、他の警報状態に関する記録を行っている場合(S22においてYES)、ガス情報記録制御部53は、該警報状態を第1警報状態と判定し、新たに取得した警報情報に対応する警報状態を第2警報状態と判定する。また、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に対応付けられた第1優先度と第2警報状態に対応付けられた第2優先度とを比較する(S23)。
【0064】
第1優先度が第2優先度以上の場合(S23においてYES)、ガス情報記録制御部53は、第2警報状態に関する記録を行わず、第1警報状態に関する記録を継続する(S24)。一方、第1優先度よりも第2優先度の方が高い場合(S23においてNO)、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に関する記録を中止する(S25)。S25の処理の後、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されていたガス情報を全て削除し、第2警報状態に関する記録を開始する(S26)。具体的には、ガス情報記録制御部53は、
図3に示す処理のうち、S13以降の処理を行う。
【0065】
ガス情報記録制御部53が第2警報状態に関する記録を行っている間に、さらに別の警報状態に対応する新たな警報情報を取得した場合、ガス情報記録制御部53は、当該新たな警報情報に対応する警報状態を新たな第3警報状態と判定し、S22以降と同様の処理を行う。
【0066】
〔ガス警報器1における記録態様と時間の流れとの関係〕
図5は、ガス警報器1における時間の流れと警報状態との対応関係を示す図である。
図6は、ガス警報器1の記録態様について説明するための図である。以下、
図5および
図6を用いて、ガス警報器1における記録態様と時間の流れとの対応関係について説明する。
【0067】
まず、
図6の全期間において、ガス警報器1が動作しているものとする。ガス警報器1が動作している間、一時記録領域41には、ガス情報記録制御部53によって、第1所定時間ごとにガス情報が記録される。上述の通り、一時記録領域41は、第1所定数の単位記録領域Sによって構成されている。複数の単位記録領域Sには、それぞれ1個のガス情報を記録することが可能である。従って、
図6に示す例では、一時記録領域41には、10個のガス情報を記録することが可能である。
【0068】
一時記録領域41に10個のガス情報が記録されている場合、ガス情報記録制御部53は、新たにガス情報を記録する時には、最も古いガス情報が削除され、新たなガス情報が記録される。これにより、一時記録領域41には、常に最新のものから9秒前までの、10個のガス情報が記録される。なお、一時記録領域41において、最も古いガス情報は順次削除されるため、一時記録領域41に記録されるガス情報の量が過大となることはない。
【0069】
<警報状態発生時>
第1警報状態が発生した場合における、ガス警報器1の記録態様の一例について説明する。以下に述べる「警報状態Y」は、第1警報状態の一例である。以下、警報状態Yが発生した時点(時刻)を、tyと称する。警報状態Yが発生した場合、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に記録されているガス情報を、記録部42の警報前記録領域421にコピーする。一時記録領域41に記録されているガス情報は、最新のものから10秒分のガス情報である。従って、警報前記録領域421にコピーされるガス情報は、「tyの9秒前」から「ty」までの間(
図5においてY1で示す期間)に記録された10個の、言い換えれば9秒分のガス情報となる。
【0070】
その後、記録部42の警報後記録領域422に、一時記録領域41に新たに記録されるガス情報がコピーされる。警報後記録領域422は、例えば10個のガス情報を記録可能な記録領域である。この場合、警報後記録領域422にコピーされるガス情報は、「tyの1秒後」から「tyの10秒後」までの間(
図5においてY2で示す期間)に記録される10個の、言い換えれば9秒分のガス情報となる。
【0071】
以上のことから、記録部42には、「tyの9秒前」から「tyの10秒後」までの19秒分のガス情報、言い換えれば20個のガス情報が記録される。記録部42に20個のガス情報が記録されると、当該ガス情報は警報前後ガス情報としてFRAM43が備える複数の警報データ記録領域431のうちの1つに記録される。FRAM43が10個の警報データ記録領域431を備えている場合、ガス警報器1は、10回分の警報状態について、当該警報状態の発生前後合わせて19秒分のガス情報を記録することが可能である。
【0072】
<複数の警報状態が時間的に競合した場合>
第2警報状態が発生した場合における、ガス警報器1の記録態様の一例について説明する。以下に述べる「警報状態Z」は、第2警報状態の一例である。以下、警報状態Zが発生した時点を、tzと称する。
図5から明らかである通り、tzは、tyよりも後の時点である。tzにおいて、ガス情報記録制御部53は、警報状態Yに関する記録として、一時記録領域41に新たに記録されるガス情報を警報後記録領域422にコピーしている。警報状態Zが発生した場合、警報状態Yに対応する第1優先度と警報状態Zに対応する第2優先度とが比較される。
【0073】
当該比較の結果、第1優先度が第2優先度以上であると判定された場合について説明する。この場合、ガス情報記録制御部53は、警報状態Zに関する記録を行わない。また、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に関する記録を継続する。従って、この場合、記録部42には、tyの前後19秒間のガス情報が警報状態Yに係る警報前後ガス情報として記録され、FRAM43にコピーされる。
【0074】
一方、前記比較の結果、第1優先度よりも第2優先度の方が高いと判定された場合、ガス情報記録制御部53は、警報状態Yに関する記録を中止する。言い換えれば、ガス情報記録制御部53は、警報後記録領域422へのガス情報のコピーを中止する。続いて、ガス情報記録制御部53は、警報状態Yに関する記録を中止した時点で記録部42に記録されているガス情報をFRAM43にコピーする。つまり、FRAM43には、「tyの9秒前」から「tz」までの間(
図5においてY3で示す期間)のガス情報が、第1警報状態に係る警報前後ガス情報として記録される。
【0075】
その後、警報状態Zに関する記録が開始される。具体的には、ガス情報記録制御部53は、警報前記録領域421に記録されたガス情報を削除し、一時記録領域41に記録されているガス情報を警報状態Z発生前のガス情報として警報前記録領域421にコピーする。その後、ガス情報記録制御部53は、一時記録領域41に新たに記録されるガス情報を、警報状態Z発生後のガス情報として警報後記録領域422にコピーする。警報後記録領域422に第3所定数のガス情報が記録されると、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を、警報状態Zに係る警報前後ガス情報としてFRAM43にコピーする。従って、FRAM43には、警報状態Zに係る警報前後ガス情報として、(i)「tzの9秒前」から「tz」までの期間(
図5においてZ1で示す期間)、および、(ii)「tzの1秒後」から「tzの10秒後」までの期間(
図5においてZ2で示す期間)を合計した19秒分のガス情報、換言すると20個のガス情報が記録される。
【0076】
〔ガス警報器1の効果〕
実施形態1に係るガス警報器1では、ガス情報判定部52は、ガス情報取得部51から取得した被検知ガスの状態が警報状態に該当する場合、ガス情報記録制御部53に警報情報を出力する。ガス情報記録制御部53は、警報情報を取得したときに、当該警報情報に係る警報状態に関する記録を開始する。そのため、ガス警報器1では、警報状態が発生したときにのみFRAM43への記録が行われる。従って、FRAM43のデータ容量を有効活用することができる。
【0077】
また、従来のガス警報器では、警報の重要度に応じた記録が行われておらず、ガス警報器が記録可能な記録領域において、重要度の低い警報に関する記録の占有率が高くなるというデータの容量の無駄が生じてしまう可能性があった。
【0078】
これに対して、ガス警報器1では、複数の警報状態が発生し、複数の警報状態に関する記録部42への記録が時間的に競合した場合、ガス情報記録制御部53は、当該複数の警報状態のそれぞれに対応する優先度を比較する。ガス情報記録制御部53は、当該比較の結果に応じて、記録部42に記録されるガス情報を選択する。これにより、記録部42に記録され、FRAM43にコピーされるガス情報は、警報状態に対応する優先度の比較結果を鑑みたものとなる。従って、記録部42およびFRAM43のデータ容量を有効活用することができる。
【0079】
また、2つの警報状態が発生し、当該2つの警報状態に関する記録が時間的に競合した場合、ガス情報記録制御部53は、2つの警報状態のうち、先に発生した警報状態を第1警報状態と判定し、後に発生した警報状態を第2警報状態と判定する。また、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に対応する優先度である第1優先度と第2警報状態に対応する優先度である第2優先度とを比較する。
【0080】
さらに、当該比較の結果、第1優先度よりも第2優先度の方が高い場合、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に関する記録を中止し、第2警報状態に関する記録を開始する。一方、第1優先度が第2優先度以上である場合、ガス情報記録制御部53は、第2警報状態に関する記録を行わず、第1警報状態に関する記録を継続する。
【0081】
これにより、より優先度の高い警報状態についてのガス情報が優先して記録部42に書き込まれる。そのため、優先度の低い警報状態についての記録部42への記録は抑制され、記録部42に記録されるガス情報については優先度の高い警報状態に係るものが主体となる。従って、記録部42のデータ容量を有効活用することができる。また、記録部42からFRAM43にコピーされ、保存される警報前後ガス情報も、優先度の高い警報状態に係るものが主体となるため、FRAM43のデータ容量も有効活用することができる。
【0082】
また、一時記録領域41には、常時ガス情報の記録が行われている。しかしながら一時記録領域41ではガス情報が順次上書きされていくため、一時記録領域41に記録されるデータ量が過大となる可能性は低減される。また、いつ警報状態が発生したとしても、所定の期間のガス情報を記録部42にコピーすることができる。記録部42には、一時記録領域41に記録されるガス情報がコピーされ、記録されるため、記録部42に記録されるデータ量が過大となる可能性も低減される。
【0083】
〔変形例〕
上述した実施形態1では、ガス情報記録制御部53は警報後記録領域422にガス情報を記録する時、一時記録領域41に記録したガス情報をコピーしていた。但し、一時記録領域41および警報後記録領域422に同時に同様のガス情報を記録する構成としてもよい。
【0084】
ガス警報器1が故障している場合は、ガス情報取得部51が取得するガス情報が正確でない場合があるため、当該故障の種類に応じてガス情報の記録を行わないようにする構成としてもよい。
【0085】
また、ガス警報器1は、初期遅延モード、メンテナンスモード、またはテストモードといった各種モードを備えていてもよい。この場合、ガス警報器1の状態が上述の各種モードであるときには、ガス情報記録制御部53は、ガス情報に関する各種処理を行わない構成としてもよい。
【0086】
また、上述した実施形態1では、ガス情報記録制御部53は、警報状態に関する記録を行うときには、警報後記録領域422に第3所定数のガス情報が記録された時点で記録部42への記録を終了していた。但し、警報後記録領域422に第3所定数のガス情報が記録された時点において当該警報状態が解除されず継続している場合、当該警報状態が解除されるまで、警報後記録領域422へのガス情報の記録を継続してもよい。
【0087】
なお、当該警報状態に関する記録が継続されている途中に新たな警報状態が発生した場合、ガス情報記録制御部53は、先に発生した警報状態を第1警報状態と判定し、新たな警報状態を第2警報状態と判定し、
図4に示す処理を行う。
【0088】
また、上述した実施形態1では、第1優先度以下の優先度である第2優先度に対応する第2警報状態が発生した場合、当該第2警報状態に関する記録を行わなかった。但し、第1警報状態に関する記録が完了した後、当該第2警報状態に関する記録を行ってもよい。
【0089】
例えば、第1警報状態が発生した10秒後に優先度の低い第2警報状態が発生した場合、ガス情報記録制御部53は、第1警報状態に関する記録が完了した時点から10秒後までのガス情報を一時記録領域41から記録部42にコピーする。その後、ガス情報記録制御部53は、当該ガス情報を第2警報状態に係るガス情報としてFRAM43に保存する。
【0090】
また、ガス警報器1は、警報遅延機能をさらに有していてもよい。具体的には、ガス警報器1が警報遅延機能を有している場合、ガス情報判定部52は、ある警報状態が所定の時間(例えば5秒)継続した場合に、当該警報状態が確定したと判定し、警報情報を出力する。これにより、ガス情報記録制御部53は、警報状態が所定の時間継続した場合は当該警報状態に関する記録を行う。一方、警報状態が所定の時間継続していない場合にはガス情報記録制御部53は、警報情報を取得しないため、当該警報状態に関する記録を行わない。
【0091】
センサ2が取得する被検知ガスの状態を示す出力値は、瞬間的にぶれる場合がある。ガス警報器1においてこのぶれが発生した場合、実際の被検知ガスの状態が警報状態に該当しない場合であっても、ガス情報判定部52は警報情報を出力し、ガス情報記録制御部53は、警報情報に基づいて記録を開始する可能性がある。ガス警報器1が警報遅延機能を有している場合は、実際の被検知ガスの状態が警報状態に該当する場合にのみ警報状態に関する記録を行うことができる。
【0092】
また、上述の実施形態1では、ガス情報記録制御部53がFRAM43に新たな警報前後ガス情報を記録する時、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が第4所定数に達している場合、最も古い警報前後ガス情報を削除していた。但し、ガス情報記録制御部53は、警報前後ガス情報に係る警報状態の優先度を比較した上で、削除する警報前後ガス情報を選択してもよい。
【0093】
例えば、ガス情報記録制御部53は、FRAM43の警報データ記録領域431に記録されている警報前後ガス情報を参照し、それぞれの警報前後ガス情報に係る警報状態に対応づけられたそれぞれの優先度を取得する。ガス情報記録制御部53は、取得した複数の優先度および新たな警報前後ガス情報に係る警報状態に対応づけられた優先度を比較し、最も優先度の低い警報状態に係る警報前後ガス情報を削除する。その後、ガス情報記録制御部53は、新たな警報前後ガス情報をFRAM43にコピーする。なお、上記比較の結果、新たな警報前後ガス情報に係る警報状態に対応づけられた優先度が最も低かった場合、ガス情報記録制御部53は、当該新たな警報前後ガス情報をFRAM43にコピーしない。
【0094】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0095】
図7は、実施形態2に係るガス警報器1Aの構成を示すブロック図である。
図7に示すように、ガス警報器1Aの制御部を、制御部5Aと称する。また、制御部5Aのガス情報判定部を、ガス情報判定部52Aと称する。ガス情報判定部52Aは、ガス情報判定部52とは異なり、警報状態に関する記録を行っている間に当該警報状態が解除された場合、当該警報状態に関する記録を中止する。
【0096】
以下、具体的な処理の流れの一例について、
図8を用いて説明する。
図8は、ガス警報器1Aにおける処理の流れの一例について説明するフローチャートである。
【0097】
図8に示すフローチャート開始時には、ガス情報記録制御部53は、警報状態に関する記録を行っている。このとき、記録が行われている警報状態を、警報状態Pと称する。ガス情報判定部52Aは、警報状態Pに係る警報情報を出力した後新たに取得したガス情報に含まれる被検知ガスの状態が、警報状態に該当するか否かを判定する(S31)。
【0098】
新たに取得したガス情報に含まれる被検知ガスの状態が警報情報に該当する場合(S31においてYES)、ガス情報判定部52Aは、当該警報状態が、警報状態Pと同一の警報状態であるか否かを判定する(S32)。新たに取得したガス情報に含まれる被検知ガスの状態が警報状態Pと同一の警報状態に該当する場合(S32においてYES)、S31に戻る。新たに取得したガス情報に含まれる被検知ガスの状態が警報状態Pとは異なる警報状態に該当する場合(S32においてNO)、ガス情報判定部52Aは、ガス情報記録制御部53に当該警報状態に係る警報情報を出力する(S33)。警報情報を取得したガス情報記録制御部53は、当該警報情報に対応した各種制御を行う。
【0099】
なお、新たに取得したガス情報に含まれる被検知ガスの状態が警報状態に該当しない場合(S31においてNO)、ガス情報判定部52Aは、ガス情報記録制御部53に、警報状態Pが解除されたことを示す警報解除情報を出力する(S34)。ガス情報判定部52Aは、警報解除情報を取得すると、その時に行っている警報状態Pに関する記録を中止する(S35)。その後、ガス情報記録制御部53は、FRAM43を参照し、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が、第4所定数に達しているか否かを判定する(S36)。
【0100】
FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が、第4所定数に達している場合(S36においてYES)、ガス情報記録制御部53は、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の内、少なくとも一部を削除する(S37)。例えば、ガス情報記録制御部53は、複数の警報データ記録領域431に記録されている警報前後ガス情報の内、最も古いものを削除する。その後、ガス情報記録制御部53は、記録部42に記録されているガス情報を警報前後ガス情報として、空白となった警報データ記録領域431にコピーする(S38)。
【0101】
一方、FRAM43に記録されている警報前後ガス情報の数が、第4所定数に達していない場合(S36においてNO)、S38に進む。
【0102】
FRAM43に記録される警報前後ガス情報は、警報前記録領域421に記録された警報状態P発生時点から所定期間内のガス情報および警報後記録領域422に記録された警報状態P発生時点から警報状態P解除までの期間内のガス情報となる。
【0103】
<ガス警報器1Aの効果>
警報状態が解除されるということは、被検知ガスの状態が警報状態に該当していないことを意味する。ガス警報器1Aでは警報状態が解除された場合に警報状態についての記録部42への記録を中止することで、当該警報状態が解除された後のガス情報は記録部42に記録されなくなる。これにより、記録部42に、警報状態に該当しない必要性の低いガス情報が記録されることがなくなるため、記録部42のデータ容量を有効活用することができる。
【0104】
〔ソフトウェアによる実現例〕
ガス警報器1~1Aの制御ブロック(特にガス情報取得部51、ガス情報判定部52、ガス情報判定部52A、およびガス情報記録制御部53)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0105】
後者の場合、ガス警報器1~1Aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0106】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1、1A ガス警報器
2 センサ
5、5A 制御部
41 一時記録領域
42 記録部
51 ガス情報取得部
52、52A ガス情報判定部
53 ガス情報記録制御部