(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ガントリ型の位置決め装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20240424BHJP
B23Q 1/62 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
H01L21/68 K
B23Q1/62 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227850
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-09-14
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502149218
【氏名又は名称】エテル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・コーベル
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-264147(JP,A)
【文献】特開平09-034135(JP,A)
【文献】特開2001-238485(JP,A)
【文献】特表昭58-501736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0229860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
B23Q 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガントリ型の位置決め装置であって、第1の方向(Y)および第2の方向(X)に平行な平坦なベース(B)と、第1の方向(Y)に配置された、それぞれ1つの第1のリニアドライブ(LMY1、LMY2)を有する2つの第1のリニア軸(Y1、Y2)を備え、該第1のリニア軸(Y1、Y2)がフレーム(R)を第1の方向(Y)に移動可能に保持し、フレーム(R)が、第2の方向(X)に延在する2つの横方向ビーム(Cb、Cd)を備え、該横方向ビーム(Cb、Cd)が、第1の方向(Y)に延在する2つの縦方向ビーム(Ca、Cc)に固定されており、縦方向ビーム(Ca、Cc)は横方向ビーム(Cb、Cd)と共にフレーム(R)を形成しており、それぞれ1つの縦方向ビーム(Ca、Cc)が、それぞれ1つの第1のリニアドライブ(LMY1、LMY2)に結合されており、横方向ビーム(Cb、Cd)が、第2の方向(X)に平行なそれぞれ1つの第2のリニアドライブ(LMX1、LMX2)を有する第2のリニア軸(X1、X2)を支持し、これにより横方向ビーム(Cb、Cd)の間に配置された可動要素(S)が、第2のリニアドライブ(LMX1、LMX2)によって第2の方向(X)に移動可能に保持されており、フレーム(R)は、可動要素(S)が第1および第2の方向(Y、X)への並進に加えて、第1および第2の方向(Y、X)に垂直な第3の方向(Z)を中心として回動することもできるように、柔軟に構成されており、可動要素(S)が、第3の方向(Z)と、平坦なベース(B)の第1および第2の方向(Y、X)を中心とした回転とに関して案内される
位置決め装置において、
可動要素(S)が、第1の方向(Y)に関して、可動要素(S)のためのガイドビーム(Cd)としての役割を果たす横方向ビーム(Cb、Cd)のうちのちょうど1つのガイド面(GS)によって案内さ
れ、
前記ガイドビーム(Cd)が、ジョイント(G1、G2、G2’)を介して、それぞれ前記第3の方向(Z)を中心とした回転を可能にする前記縦方向ビーム(Ca、Cc)に結合されていることを特徴とする
位置決め装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の位置決め装置において、
前記ジョイントの1つ(G2’)が、前記ガイドビーム(
Cd)に沿って、前記第1の方向(
Y)への並進を付加的に可能にする位置決め装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の位置決め装置において、
前記フレーム(R)のコーナーで、
前記横方向ビーム
の1つ(Cb)と
前記縦方向ビーム
の1つ(Cc)とが互いに堅固に結合されている位置決め装置。
【請求項4】
請求項
1から
3までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記フレーム(R)の前記縦方向ビーム(Ca、CC)と前記横方向ビーム(Cb、Cd)との間のジョイント(G1、G2、G2’、G3、G4)が、横方向ビーム(Cb、Cd)と縦方向ビーム(Ca、Cc)とを相互に結合し、これにより、合計で4つの面内自由度がフレーム(R)に可撓性を与える位置決め装置。
【請求項5】
請求項
1から
4までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
ジョイント(G1、G2、G2’、G3、G4)が中実ジョイントである位置決め装置。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記ガイドビーム(Cd)が、前記縦方向ビーム(Ca、Cc)および
前記横方向ビームの1つ(Cb)の材料とは異なる材料により作製されている位置決め装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の位置決め装置において、
前記
ガイドビーム(Cd)が、炭化ケイ素または酸化アルミニウムから作製されている位置決め装置。
【請求項8】
請求項
6または
7に記載の位置決め装置において、
前記縦方向ビーム(Ca、Cc)および前記
横方向ビームの1つ(Cb)がアルミニウムから作製されている位置決め装置。
【請求項9】
請求項
6から
8までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記ガイドビーム(Cd)が中空断面を有する位置決め装置。
【請求項10】
請求項
6から
9までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記フレーム(R)が、4つの水平方向の空気軸受(L2)によって前記平坦なベース(B)上を案内されており、2つの水平方向の空気軸受(L2)が前記縦方向ビーム(Ca、Cc)の下方に位置し、しかもガイドビーム(Cd)に近接する前記縦方向ビーム(Ca、Cc)の端部に位置し、他の2つの水平方向の空気軸受(L2)が、ガイドビーム(Cd)に平行な前記横方向ビーム
の1つ(Cb)の下方に位置し、しかもそれぞれ該横方向ビーム
の1つ(Cb)の両端に位置している位置決め装置。
【請求項11】
請求項
6から
9までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記フレーム(R)が、5つの水平方向の空気軸受(L2)によって前記平坦なベース(B)上を案内されており、それぞれ2つの水平方向の空気軸受(L2)が前記縦方向ビーム(Ca、Cc)の下方に位置し、しかも横方向ビーム(Cb、Cd)に近接する縦方向ビーム(Ca、Cc)端部に位置し、別の水平方向の空気軸受(L2)が、前記ガイドビーム(Cd)に平行な前記横方向ビーム
の1つ(Cb)の下方に位置し、しかもこのガイドビーム(Cd)の中央に位置する位置決め装置。
【請求項12】
請求項1から
11までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記可動要素(S)が、予荷重をかけられた側方の空気軸受(L1)によって前記ガイドビーム(Cd)のガイド面(GS)に沿って案内される位置決め装置。
【請求項13】
請求項1から
12までのいずれか1項に記載の位置決め装置において、
前記ガイドビーム(Cd)のガイド面(GS)と前記可動要素(S)との間に、前記第3の方向(Z)を中心として前記可動要素(S)を回転させるための仮想回転軸線(VA)を有するジョイント(VAG)が配置されている位置決め装置。
【請求項14】
請求項
13に記載の位置決め装置において、
前記仮想回転軸線(VA)が、前記可動要素(S)の質量中心を通過する位置決め装置。
【請求項15】
請求項
13または
14に記載の位置決め装置において、
前記第1および第2の方向(Y、X)に垂直な第3の方向(Z)を中心とした前記可動要素(S)の回転が、前記第2のリニアドライブ(LMX1、LMX2)によって調節可能である位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガントリ型の位置決め装置に関する。このような位置決め装置は、例えば、半導体製造において、ウェーハテーブルなどの可動要素を平面に正確に位置決めするために使用される。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6789088号明細書により、ガントリ型の位置決め装置が知られている。リニアドライブを有する2つの平行なガイドは、第1の方向に2つの横方向ビームを有する剛性フレームを可動に保持する。これらの横方向ビームの間には、可動要素が第2の方向に移動可能に保持されている。したがって、可動要素は2つの方向に位置決めすることができる。フレームは堅固なので、可動要素は、第3の方向を中心として回転することができない。これは、例えば、テーブルに載置されたウェーハのわずかなねじれを補償するために、半導体製造分野において求められている課題である。
【0003】
したがって、欧州特許第2066996号明細書により、単一の横方向ビームが2つの平行な直線軸に柔軟に結合されており、位置決め装置の本来の処理平面に垂直な方向を中心としてわずかに(数度だけ)回転できるガントリ型の位置決め装置が知られている。したがって、可動要素は、3つの全ての自由度で平面に位置決めすることができる(平面内の2つの方向への並進、平面に垂直な第3の方向を中心とした回転、「平面内自由度」とも呼ぶ)。この文献は、可動要素の位置を特に正確に位置決めするために、可動要素の位置を検出する様々な方法を開示している。
【0004】
前述の2つの文献の組み合わせを、本発明が出発点とする米国特許第5874820号明細書が開示している。この明細書では、前述のように、2つの平行なリニア軸の間に移動可能に保持されている位置決め装置の可動フレームが開示されている。このフレームのコーナーは、中実ジョイントによって互いに柔軟に結合されており、フレームは所定の範囲内で回動することができる。可動要素は、フレームの2つの横方向ビームの間で案内される。フレームおよび可動要素は、空気軸受によって位置決め装置のベース上を案内され、可動要素は、さらにフレームの2つの横方向ビームに沿って側方の空気軸受によって案内される。しかしながら、このようなフレームの製造は、フレームを非常に高品質の材料により作製し、側方の空気軸受のためには幾つかの精密に機械加工された案内面を作製する必要があるので、複雑で高価である。
【0005】
米国特許第4098001号明細書は、仮想中心を有する特別な中実ジョイントを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6789088号明細書
【文献】欧州特許第2066996号明細書
【文献】米国特許第5874820号明細書
【文献】米国特許第4098001号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、可動要素を3つの自由度によって平面内に高精度に位置決めすることが可能であり、従来技術と比較してより単純かつ安価に構成されたガントリ型の位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の装置によって達成される。この装置の有利な詳細は、請求項1に従属する請求項からも得られる。
【0009】
ガントリ型の位置決め装置であって、第1の方向および第2の方向に平行な平坦なベースと、第1の方向に配置され、それぞれ1つの第1のリニアドライブを有する2つの第1のリニア軸を備え、第1のリニア軸がフレームを第1の方向に移動可能に保持するガントリ位置決め装置が開示される。フレームは、第2の方向に延在する2つの横方向ビームを備え、これらの横方向ビームは、第1の方向に延在する2つの縦方向ビームに固定されており、縦方向ビームは横方向ビームと共にフレームを形成しており、それぞれ1つの縦方向ビームは、それぞれ1つの第1のリニアドライブに結合されている。横方向ビームは、第2の方向に平行なそれぞれ1つの第2のリニアドライブを有する第2のリニア軸を支持し、これにより横方向ビームの間に配置された可動要素は、第2のリニアドライブによって第2の方向に移動可能に保持されている。フレームは、可動要素が第1および第2の方向への並進に加えて、第1および第2の方向に垂直な第3の方向を中心として回動することもできるように、柔軟に構成されている。可動要素は、第3の方向と、平坦なベースの第1および第2の方向を中心とした回転とに関して案内され、第1の方向に関して、可動要素のためのガイドビームとしての役割を果たす横方向ビームのうちのちょうど1つのガイド面によって案内される。
【0010】
本発明によれば、高品質の材料により作製され、精密に加工された表面を有するフレームの1つのガイドビームのみを作製するだけで十分であり、フレームの他の3つのビームは、例えばアルミニウムなどの安価な材料で作製することができる。これにより、一方では、フレームをより軽量に構成することができ、このことは、位置決め装置のダイナミクスに利点をもたらす。他方では、材料コスト、ならびにそれほど高品質ではない材料の単純化された加工によって、そのようなフレームのための加工コスト、ひいては製造の総コストも従来技術の場合よりも低い。
【0011】
縦方向ビームと横方向ビームとがフレームのコーナーにおいて互いに適切に結合されている場合には、可動要素の位置決めは、平坦なベースに垂直な第3の方向を中心とした回転に関しても所定の範囲内で可能になる。このためには、フレームのコーナーのジョイントが、ベースの平面内にある全部で4つの自由度を許可することが有利である。本明細書では「面内自由度」とも呼ぶこれらの自由度は、ベースの平面に平行な第1および第2の方向への並進、およびベースに垂直な第3の方向を中心とした回転である。最も単純な場合には、これは、フレームの4つのコーナーそれぞれの中実ジョイントによって達成することができ、中実ジョイントは、それぞれ第3の方向を中心とした回転を許可する。この場合、フレームは、コーナーにおいて90度とは異なる角度を有することができる。この場合、横方向ビームは、もはや縦方向ビームに対して垂直ではないが、依然として互いに平行である。
【0012】
好ましい実施形態では、位置決め装置は、可動要素がガイドビームに沿って案内する予荷重をかけられた空気軸受と、可動要素自体との間に、可動要素の重心に位置する仮想中心を有するジョイントを備える。このように、可動要素が第2の方向に加速された場合には第3の方向を中心としたトルクは生じない。
【0013】
本発明のさらなる利点および詳細は、図面を参照した様々な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】位置決め装置のフレームを示す平面図である。
【
図3】別の実施形態によるフレームを示す平面図である。
【
図4】仮想中心を有するジョイントを示す図である。
【
図5】空気軸受と可動要素との間の
図4のジョイントの位置決めを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、第1の例示的な実施形態による位置決め装置の3D図を示す。平坦なベースBが2つの平行なリニア軸Y1、Y2を支持し、リニア軸Y1、Y2はベースBの平面内にある第1の方向Yに平行な第1のリニアドライブLMY1、LMY2を備える。この場合、リニア軸とは、リニアガイド、リニアモータ、および位置測定装置との組み合わせであり、これらは、位置決め装置において一般的なものであると理解される。対応する制御により、このような軸は公知の方法で位置決めすることができる。
【0016】
リニアドライブLMY1、LMY2の可動ランナは、それぞれフレームRの縦方向ビームCa、Ccに結合されている。縦方向ビームCa、Ccは第1の方向Yに平行である。フレームRは、全体として第1の方向Yに移動可能に案内され、第1リニアドライブLMY1、LMY2によって位置決め可能である。
【0017】
さらにフレームRは、第1方向Yに垂直な第2方向Xに実質的に延在する2つの横方向ビームCb、Cdを有する。フレームRのコーナーでは、縦方向および横方向ビームCa、Cc、Cb、Cdは、この第1の実施形態では、4つのジョイントG1、G2、G3、G4によって結合されており、これらのジョイントは、中実ジョイントとして構成されており、それぞれ、平坦なベースBに垂直な第3の方向Zを中心とする回転自由度を許可し、他の全ての自由度は、ジョイントG1、G2、G3、G4によって遮断されている。これにより、フレームRは、横方向ビームCb、Cdが第2方向Xからわずかにそれるように、所定の範囲内で変形することができる。したがって、この例示的な実施形態では、ジョイントG1、G2、G3、G4は、合計4つの面内自由度を許可する。
【0018】
さらに横方向ビームCb、Cdはまた、第2のリニアドライブLMX1、LMX2を有するそれぞれ1つの第2のリニア軸X1、X2を有する。これらの第2のリニアドライブLMX1、LMX2の可動ランナは可動要素Sに結合されており、この可動要素Sの位置決めが位置決め装置の実際のタスクである。可動要素Sは、例えば、ウェーハを載置するためのテーブルを支持することができ、次いで、ウェーハは、顕微鏡下で位置決め装置によって位置決め可能である。これにより、ウェーハを様々な箇所で検査することができる。ウェーハが載置される場合にほとんど回避することができないウェーハのわずかなねじれを補正するために、第2のリニアドライブLMX1、LMX2を反対方向に制御することによって、ジョイントG1、G2、G3、G4によって可動要素Sの対応する反対方向の回転を引き起こすことができる。このようにして、通常所望されるように、ウェーハの構造は、顕微鏡下で第1および第2の方向Y、Xに正確に平行に整列される。
【0019】
摩擦をできるだけ低く保つために、位置決め装置の可動部品には空気軸受L1、L2が装備されており、これらの空気軸受の配置は
図2でより良く見ることができる。リニアドライブLMY1、LMY2、LMX1、LMX2は、明確に示すために
図2および次の
図3にも示されておらず、これらについては
図1を参照されたい。
【0020】
縦方向ビームCa、したがってフレームR全体は、2つの側方の空気軸受L1によって、第1の方向Yに延在するベースBの突出部に沿って案内される。この場合、予荷重をかけられた空気軸受が使用され、フレームRの向かい合った横方向ビームCcは、側方の空気軸受によって単独で案内しなくてもよい。しかしながら、横方向ビームCcに沿ったこのような向かい合った側方の空気軸受は、図示の実施形態の考えられる変形例である。互いに向かい合った空気軸受は互いに対して予荷重をかけられている。
【0021】
平坦なベースBに対して、フレームRは4つの水平方向の空気軸受L2によって支持され、これらの空気軸受の配置は
図2にはっきりと見ることができる。これらの空気軸受の好ましい配置を以下にさらに詳細に説明する。これらの空気軸受は、フレームRの重量によって予荷重をかけられる従来の空気軸受であってもよい。しかしながら、フレームRの質量は比較的小さいので、水平方向の空気軸受L2の十分に高い剛性を達成するために、真空を用いて予荷重を加えられた空気軸受も好ましい。可動要素Sの水平方向の空気軸受L2についても同様のことがいえる。
【0022】
さらに、可動要素Sは、予荷重をかけられた側方の空気軸受L1によって、フレームRの内側に面する横方向ビームCdのガイド面GSに沿って案内される。したがって、この横方向ビームCdは、ガイドビームCdとも呼ばれる。この可動要素SとガイドビームCdとの間の側方の空気軸受L1もしくはガイド面GSは、可動要素Sが第1方向YへのフレームRの全ての移動に追従させる役割を果たす。別の言い方をすれば、可動要素Sは、第1の方向Yに関してガイドビームCdのガイド面GSによって案内される。
【0023】
特に有利には、フレームRにおいて、ガイドビームCdのみを、特に高品質の(例えば、低い熱膨張係数または特に高い強度を有する)材料から製造し、ガイド面GSに関して特に正確に加工すればよい。これに対して、フレームRの他のビームCa、Cb、Ccは、それほど高品質でない材料からなっていてもよく、それほど正確に加工しなくてもよい。例えば炭化ケイ素SiCまたは酸化アルミニウムA12O3をガイドビームCdの材料として適当であり、他のビームはアルミニウムから作製されていてもよい。フレームRの全てのビームCa、Cb、Cc、Cdは、好ましくは中空断面を備える部材として形成されている。
【0024】
図3は、フレームRのコーナーの構成が変更された本発明のさらなる実施形態を示す。
図3の右下に位置するコーナーは、ジョイントのない堅固な結合部として形成されている。それにもかかわらず4つの面内自由度を得るためには、したがって、右上に示したジョイントG2’は中実ジョイントであり、このような中実ジョイントは、第3の方向Zを中心とした回転自由度に加えて、第2方向Xの並進自由度を許可するが、他の全ての自由度は遮断されている。したがって、中実ジョイントG1およびG3の2つの回転自由度と共に、4つの面内自由度がフレームRに再び提供されている。このフレームは、可動要素Sが第3の方向Zを中心として回転できるように、所定の範囲内で変形することもできる。同様に合計して4つの面内自由度を許可する場合には、ジョイントの他の組み合わせが可能である。
【0025】
図2および
図3からよくわかる水平方向の空気軸受L2の配置については、以下にさらに説明する。フレームRは重力に抗して水平方向の空気軸受L2によって支持される。水平方向の空気軸受L2の間に位置するビームCa、Cb、Cc、Cdは、振動可能な構成要素である。水平方向の空気軸受L2を配置する場合には、空気軸受の間のビームの共振周波数がほぼ等しいことに注意すべきである。その結果、本発明によるフレームRでは、フレームRが、平坦なベースB上で4つの水平方向の空気軸受L2によって案内され、そのうちの2つの水平方向の空気軸受L2は縦方向ビームCa、Ccの下方に位置し、しかもガイドビームCdに近接する縦方向ビームCa、Ccの端部に位置し、他の2つの水平方向の空気軸受L2は、ガイドビームCdに平行な横方向ビームCbの下方に位置し、しかもそれぞれこの横方向ビームCbの両端に位置している。したがって、横方向ビームCb、Cdによってブリッジされた水平方向の空気軸受L2の間の間隔はほぼ同じ大きさであり、ガイドビームCdによってブリッジされる水平方向の空気軸受L2の間の間隔は、これよりもわずかに大きい。より良好な材料特性によって、ガイドバーCdは、より長い幅にもかかわらず、アルミニウムからなる水平方向の空気軸受L2の間のより短い部分とほぼ同じ高さの共振周波数を有する。
【0026】
代替的には、図示されていないが、例えば、より大型の機械では、フレームRが、5つの水平方向の空気軸受L2によって平坦なベースB上を案内されており、そのうちの2つの水平方向の空気軸受L2は、縦方向ビームCa、Ccの下方に位置し、しかも横方向ビームCb、Cdに近接する端部に位置し、別の水平方向の空気軸受L2は、ガイドビームCdに平行な横方向ビームCbの下方に位置し、しかもこのガイドビームCdの中央に位置する。この配置は、水平方向の空気軸受L2の間でアルミニウムによってブリッジされる領域のほぼ等しい間隔をもたらし、高品質の材料からなるガイドビームCdに沿ってより長い間隔をもたらす。より小型の機械では、フレームRの下に3つの水平方向の空気軸受だけを設ければ十分である。このために、ビームCbの端部に配置された
図2では2つのビームCbの端部に配置された2つの空気軸受L2は、ビームCbの中央の単一の空気軸受によって置き換えることができる。
【0027】
可動要素Sが、第1の方向Yに関してガイド面GSに沿ってガイドビームCdに面する側でのみ案内されるという事実は、配置のある程度の非対称性につながる。可動要素Sが第2方向Xに加速された場合、可動要素Sの片側のみに配置された重い側方の空気軸受L1によって、不都合なトルクが生じる場合がある。このことを回避するために、
図4に示す仮想回転軸線VAを有するジョイントVAGが使用され、このジョイントVAGは、
図5に示すように、ガイド面GSに沿って滑動する側方の空気軸受L1と可動要素Sとの間に挿入される。仮想回転軸線VAは可動要素Sの重心を通り、平坦なベースBに垂直に延在する。側方の空気軸受L1によって可動要素Sが第2の方向Xへ加速された場合には、側方の空気軸受L1は、加速度に比例したトルクおよび力を発生する。トルクはガイドビームCdに伝送され、力は仮想回転軸線VAに沿って可動要素Sに作用する。可動要素Sの質量中心および仮想回転軸線VAは第2のリニアドライブLMX1,LMX2の中央に位置するので、第2のリニアドライブLMX1,LMX2は同じ力によって完全にバランスのとれた状態で加速することができる。
【0028】
同じことは、中央の回転軸線を重心とした回転加速度についても当てはまり、反対の同じ力によってモータを加速することができ、これにより、最適な性能が得られる。
【0029】
仮想回転軸線VAを有するジョイントVAGは、平行な2つのプレートP1、P2により構成されており、これらのプレートは、互いに傾斜した2つの結合ウェブV1、V2によって間隔をおいて保持される。結合ウェブV1、V2は、弱い箇所を有し、中実ジョイントとして作用し、したがって、一方のプレートP2は他方のプレートP1に対して傾斜することができる。この傾斜運動の仮想回転軸線VAはジョイントVAGの外側に位置する。
【0030】
仮想回転軸線VAを有するジョイントVAGは、過度の撓み、ひいてはジョイントVAGの損傷を防止することを目的とする機械的エンドストップEAを有する。この例では、これは、一方のプレートP2の突起によって解決され、この突起は、他方のプレートP1の向かい合った収容部または凹部に、この凹部に接触することなく突入する。最大限に撓んだ場合には、プレートP2の突起は、プレートP1内の向かい合った凹部に接触する。突起と凹部との間のクリアランスは、ジョイントVAGの最大限に可能な撓みを決定する。
【0031】
仮想回転軸線VAを有するジョイントVAGによって、第3の方向Zを中心とした可動要素Sの回転はガイドビームCdから切り離される。したがって、この回転は、もっぱら2つの第2のリニアドライブLMX1、LMX2によって設定される。
【0032】
好ましくは、可動要素S上のそれぞれの構造(すなわち、例えば、ウェーハを載置するためのテーブルまたはチャック)は、構造の中心が可動要素Sの中心と一致するように取り付けられる。この共通の回転軸線は、最小の慣性モーメントに対応し、したがって、最高のダイナミクスを可能にする。さらに、中心の仮想回転軸線によってXおよびY方向の追加の補正は必要とされないので、この目的のためにフレームRを加速する必要はない。これにより、可動要素Sのエネルギー効率のよい制御が可能となる。
【符号の説明】
【0033】
B ベース
Ca、Cc 縦方向ビーム
Cb、Cd 横方向ビーム(Cd ガイドビーム)
EA エンドストップ
G1、G2、G2’、G3、G4 ジョイント
GS ガイド面
L1、L2 空気軸受
P1、P2 プレート
R フレーム
S 可動要素
V1,V2 結合ウェブ
VA 仮想回転軸線
VAG ジョイント
Y 第1の方向
Y1、Y2 リニア軸
X 第2の方向
Z 第3の方向
LMY1、LMY2 第1のリニアドライブ,第2のリニアドライブ