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特許7477988コンディション判定装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】コンディション判定装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240424BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20240424BHJP
   G16H 50/30 20180101ALI20240424BHJP
【FI】
G16H20/00
G06Q10/06
G16H50/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020030432
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021135659
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】518135412
【氏名又は名称】株式会社リクルート
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】羽田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】桑原 惇
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-130579(JP,A)
【文献】特開2018-180983(JP,A)
【文献】特開2005-182738(JP,A)
【文献】特開2012-208669(JP,A)
【文献】特開平03-223967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0239791(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0377727(US,A1)
【文献】特開2014-215691(JP,A)
【文献】特開2005-182362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザのコンディションを判定するコンディション判定装置であって、
1以上の質問に対する前記ユーザの回答内容を取得する回答内容取得部と、
前記回答内容に基づいて、前記ユーザの実際のコンディション値を算出するコンディション値算出部と、
前記ユーザの過去に算出されたコンディション値の時系列変化と、1以上の他のユーザを含む複数ユーザのコンディション値の時系列変化に基づいて、前記ユーザの今回のコンディション値の範囲を推定するコンディション値推定部と、
前記実際のコンディション値が、推定された前記範囲に含まれるか否かに基づいて、前記ユーザのコンディションを判定する判定部と、を備え
前記1以上の質問は、少なくとも、仕事の満足度に関する質問と、職場の人間関係に関する質問とを含み、
前記コンディション値推定部は、前記複数ユーザのコンディション値の時系列変化のデータを用いて、機械学習手法により作成した予測モデルを用いて、前記コンディション値の時系列変化のばらつきが少ないユーザに比べ、前記コンディション値の時系列変化のばらつきの多いユーザの方が、前記範囲が広くなるように前記範囲を推定する、コンディション判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記範囲からの差分に応じてコンディションを判定する請求項1に記載のコンディション判定装置。
【請求項3】
ユーザのコンディションを判定するコンピュータを、
1以上の質問に対する前記ユーザの回答内容を取得する回答内容取得部と、
前記回答内容に基づいて、前記ユーザの実際のコンディション値を算出するコンディション値算出部と、
前記ユーザの過去に算出されたコンディション値の時系列変化と、1以上の他のユーザを含む複数ユーザのコンディション値の時系列変化に基づいて、前記ユーザの今回のコンディション値の範囲を推定するコンディション値推定部と、
前記実際のコンディション値が、推定された前記範囲に含まれるか否かに基づいて、前記ユーザのコンディションを判定する判定部として、機能させ
前記1以上の質問は、少なくとも、仕事の満足度に関する質問と、職場の人間関係に関する質問とを含み、
前記コンディション値推定部は、前記複数ユーザのコンディション値の時系列変化のデータを用いて、機械学習手法により作成した予測モデルを用いて、前記コンディション値の時系列変化のばらつきが少ないユーザに比べ、前記コンディション値の時系列変化のばらつきの多いユーザの方が、前記範囲が広くなるように前記範囲を推定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンディション判定装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従業員の心身の健康状態(コンディション)を日常的に把握するために、システムを活用する企業が増えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、退勤時に、「晴れ」、「曇り」、「雨」の3種類のボタンのいずれかを選択してもらい、選択したボタンに基づいて、従業員の健康状態を判定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-164737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の方法では、個々の従業員の回答の傾向(選択するボタンの傾向)を考慮して判定することはできなかった。例えば、いつも「雨」を選ぶ人が「雨」を選んだ場合と、日頃は「晴れ」を選択している人が急に「雨」を選択した場合とでは、後者の方がより深刻な状況であると考えられるが、そのような判定を実現する仕組みがなかった。
【0006】
本発明は、以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、個人の回答の傾向を考慮して、適切なコンディションの判定を行うことが可能なシステムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るコンディション判定装置は、ユーザのコンディションを判定するコンディション判定装置であって、1以上の質問に対する前記ユーザの回答内容を取得する回答内容取得部と、前記回答内容に基づいて、前記ユーザの実際のコンディション値を算出するコンディション値算出部と、前記ユーザの過去に算出されたコンディション値の時系列変化と、1以上の他のユーザを含む複数ユーザのコンディション値の時系列変化に基づいて、前記ユーザの今回のコンディション値の範囲を推定するコンディション値推定部と、前記実際のコンディション値が、推定された前記範囲に含まれるか否かに基づいて、前記ユーザのコンディションを判定する判定部と、を備えたものである。
【0008】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、ユーザのコンディションを判定するコンピュータを、1以上の質問に対する前記ユーザの回答内容を取得する回答内容取得部と、前記回答内容に基づいて、前記ユーザの実際のコンディション値を算出するコンディション値算出部と、前記ユーザの過去に算出されたコンディション値の時系列変化と、1以上の他のユーザを含む複数ユーザのコンディション値の時系列変化に基づいて、前記ユーザの今回のコンディション値の範囲を推定するコンディション値推定部と、前記実際のコンディション値が、推定された前記範囲に含まれるか否かに基づいて、前記ユーザのコンディションを判定する判定部として、機能させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、個人の回答の傾向を考慮して、適切なコンディションの判定を行うことが可能なシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1の概略構成を示す図。
図2】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1におけるコンディション値算出処理のフローチャート。
図3】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1におけるコンディション判定処理のフローチャート。
図4】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1におけるユーザ端末30に表示されるアンケート回答画面を例示する図。
図5】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1におけるコンディション値の推定値の分布を例示する図。
図6】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1における管理端末20に表示される判定結果画面を例示する図。
図7】本発明の実施形態に係るコンディション判定システム1におけるコンディション値の時系列変化と推定範囲を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るコンディション判定システム1の構成を示す図である。図1に示すように、コンディション判定システム1は、管理サーバ(コンディション判定装置)10と、管理端末20と、ユーザ端末30を含んでいる。管理サーバ10と、管理端末20およびユーザ端末30は、通信ネットワークNを介して接続されている。
【0013】
通信ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN、電話回線、企業内ネットワーク、移動体通信網、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。また、ユーザ端末30は複数含まれていてもよい。
【0014】
管理サーバ10は、企業などの従業員のコンディション情報を管理するサーバである。コンディション情報は、従業員が定期的に回答するアンケートの回答内容に基づいて算出された数値(コンディション値)である。
【0015】
管理サーバ10は、汎用的なコンピュータであり、1台のコンピュータで構成されていてもよいし、通信ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。管理サーバ10は、制御装置(回答内容取得部、コンディション値算出部、コンディション値推定部、判定部)11と、外部記憶装置12を備えている。制御装置11は、ハードウェアとして、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース及びこれらを結ぶバス等を備えている。制御装置11は、CPUがROM等に格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。
【0016】
外部記憶装置12は、ハードディスクドライブ等である。外部記憶装置12は、コンディション情報管理テーブルT1を実装している。
【0017】
コンディション情報管理テーブルT1には、各従業員のアンケートへの回答内容と、それに基づいて算出されたコンディション値の履歴が記憶されている。アンケートは定期的(例えば、毎月)に行われ、各従業員の過去の所定回数分(数か月分)のコンディション値の時系列データが記憶されている。
【0018】
管理端末20は、企業の管理者等が、従業員が登録したアンケートへの回答内容や回答内容に基づいて算出された各従業員のコンディション値を閲覧するための端末である。管理端末20は、タブレット端末、スマートフォン、ノートPC(パーソナルコンピュータ)、PCなど、通信ネットワークNを介して管理サーバ10と通信が可能な端末である。
【0019】
ユーザ端末30は、ユーザ(従業員)が管理サーバ10にアクセスしてアンケートの回答を登録するための端末である。ユーザ端末30は、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC、携帯電話など、通信ネットワークNを介して管理サーバ10と通信が可能な端末である。
【0020】
次に、コンディション判定システム1によるコンディション判定の流れについて、図2図3のフローチャートを用いて説明する。
【0021】
図2は、従業員Aのアンケートへの回答内容に基づいてコンディション値を算出する処理のフローチャートである。まず、従業員Aは、ユーザ端末30から、社内のコンディション判定システム1の専用サイトにアクセスする(ステップS101)。
【0022】
ユーザ端末30のディスプレイには、図4に示すようなアンケート回答画面が表示される(ステップS102)。図4に示すように、アンケート回答画面には、質問(図4の例では3項目)の内容と、回答を選択するためのボタン(例えば、5段階で選択)、フリーコメントを入力するためのエリア等が表示される。
【0023】
従業員Aが、ユーザ端末30の入力手段(タッチパネル等)を用いて質問への回答を完了すると(ステップS103:YES)、回答内容が管理サーバ10へ送信される(ステップS104)。
【0024】
管理サーバ10は、受信した回答内容をコンディション情報管理テーブルT1に記憶する。また、管理サーバ10は、受信した回答内容に基づいて今回のコンディション値を算出し、コンディション情報管理テーブルT1に記憶する(ステップS105)。例えば、各質問項目の回答内容を1~5点までのスコア(大変良いが5点、大変悪いが1点)で表し、各質問のポイントの合計点をコンディション値とするようにしてもよい。
【0025】
図3は、従業員Aの実際のコンディション値から、従業員Aのコンディションを判定する処理のフローチャートである。管理サーバ10は、情報管理テーブルT1に記憶されている従業員K人分のコンディション値の履歴データ(コンディション値の時系列データ)を用いて、コンディション値の予測モデルを作成する(ステップS201)。
【0026】
具体的には、K人分の過去N回分のコンディション値(例えば、前月までの12か月分のコンディション値)の傾向(時系列変化)から、N+1回目のコンディション値の取り得る範囲を予測する予測モデルを作成する。予測モデルは、既存の統計手法や機械学習手法を用いて作成することができる。
【0027】
さらに、管理サーバ10は、作成した予測モデルを用い、従業員Aの過去N回分のコンディション値の傾向に基づいて、今回(N+1回目)のコンディション値の取りうる範囲を推定する(ステップS202)。コンディション値の取り得る範囲は、例えば図5に示すような確率分布で表すことができる。
【0028】
管理サーバ10は、従業員Aの実際のコンディション値(図2のステップS105で算出されたコンディション値)が、推定されたコンディション値の範囲に含まれるか否かに基づいて、従業員Aのコンディションを判定する(ステップS203)。
【0029】
例えば、図5に示すように、コンディション値の確率分布において、全体の95%に含まれるコンディション値(x)を推定される範囲(図中の「標準」の範囲)とし、実際のコンディション値が標準の範囲に含まれるか否かを判定する。
【0030】
管理サーバ10は、実際のコンディション値が標準の範囲に含まれない場合には、従業員Aについて、実際のコンディション値の標準範囲からの差分に応じてコンディションを判定する。例えば、実際のコンディション値が標準よりも低い場合(図5の「悪い」の範囲)には、「不調」と判定する。また、実際のコンディション値が標準よりも高い場合(図5の「良い」の範囲)には、「好調」と判定する。
【0031】
判定結果は、管理者が閲覧する管理端末20に通知するようにしてもよい。図6は、管理端末20のディスプレイに表示される判定結果画面を例示する図である。図6に示すように、各従業員の最新のアンケートへの回答内容の一覧が表示され、「不調」または「好調」と判断された従業員が確認できるように表示される。管理者は、「不調」と判断された従業員に対しては、優先的に必要な対応を取ることが出来る。また、「好調」と判断された従業員を明示することにより、調子が良い従業員を発見することができる。
【0032】
コンディション値の時系列変化と範囲の推定について、具体例を用いて説明する。図7のグラフ(1)、(2)は、それぞれ2人の従業員の、過去1年の各月のコンディション値の変化と、最新の実測値Rを示している。推定範囲Pは、予測モデルを用いて推定されたコンディション値の範囲を示している。グラフから明らかなように、コンディション値のばらつきが少ない(1)に比べ、ばらつきの多い(2)の推定範囲Pは広くなっている。また、今回の実測値Rは共に前回より下がっているが、推定範囲Pよりも低くなっているのは(1)のみであり、(2)は推定範囲P内に収まっているため、(1)のみが「不調」と判断される。このように、実測値R自体は(1)が「9」、(2)が「7」と(2)の方が低いものの、推定範囲Pとの関係から(1)が「不調」と判断される。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、従業員のアンケートへの回答内容に基づいて算出した実際のコンディション値が、複数のユーザのコンディション値の時系列変化に基づいて推定した範囲に含まれるか否かによって、従業員のコンディションを判定するようにした。これにより、実際のコンディション値自体によらず、「不調」なのか「好調」なのかを適切に判断することができる。
【0034】
また、コンディションの判定は、推定範囲からの差分(高いか、低いか)に応じて、「好調」または「不調」と判断するようにした。これにより、すぐに対応が必要な不調の従業員だけでなく、調子の良い従業員も発見することができる。
【0035】
また、コンディション値の推定は、統計手法や機械学習手法により作成した予測モデルを用いて行うようにしたので、大量の履歴データを適切に反映して、精度の高い推定を行うことができる。
【0036】
なお、上記の実施形態では、各質問への回答を数値化し、それらの合計をコンディション値としているが、コンディション値の算出方法はこれに限定されず、質問への回答内容を反映できる方法であればよい。
【0037】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…コンディション判定システム
10…管理サーバ
11…制御装置
12…外部記憶装置
20…管理端末
30…ユーザ端末
T1…コンディション情報管理テーブル
N…通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7