(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】サファイアリボンおよび単結晶リボン製造装置
(51)【国際特許分類】
C30B 29/20 20060101AFI20240424BHJP
C30B 15/34 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C30B29/20
C30B15/34
(21)【出願番号】P 2020044323
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福飯 明雄
(72)【発明者】
【氏名】干川 圭吾
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516659(JP,A)
【文献】特表2002-522353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0272413(US,A1)
【文献】特開2015-124096(JP,A)
【文献】特開2013-103863(JP,A)
【文献】特開2018-002507(JP,A)
【文献】特開2017-078013(JP,A)
【文献】特開昭51-136582(JP,A)
【文献】特表2013-503810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0174857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/20
C30B 15/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ直交する幅と厚みと長さとを有し、長さ方向が育成方向であり、厚み方向に離間する2つの主面を有し、
拡がり部と直胴部と、幅方向に離間し前記主面を接続する2つの側面とを有し、前記拡がり部の長さ方向に対する前記側面の傾き(前記直胴部の幅をWB、前記拡がり部の長さをLAとしたとき、WB/2LA)が、0.9以上2.0以下である、
前記幅が、40cm以上のサファイアリボン。
【請求項2】
前記拡がり部のうち、長さ方向の座標Lと幅方向の座標Wが、0≦L≦30mmである領域を第1領域、30mm≦L、W≦0.9WBである領域を第2領域、0.9WB≦W≦WBである領域を第3領域としたとき、前記第1領域の直線近似(W/2=aL+b)の傾きa1が、0.5以上1.5以下、前記第2領域の直線近似の傾きa2が、0.8以上2.0以下である、請求項1に記載のサファイアリボン。
【請求項3】
さらに、a2>1.19×a1-0.01である、請求項2に記載のサファイアリボン。
【請求項4】
それぞれ直交する幅と厚みと長さとを有し、長さ方向が育成方向であり、厚み方向に離間する2つの主面を有し、
拡がり部と直胴部と、幅方向に離間し前記主面を接続する2つの側面とを有し、
前記拡がり部の長さ方向に対する前記側面の傾き(前記直胴部の幅をWB、前記拡がり部の長さをLAとしたとき、WB/2LA)が、0.9以上2.0以下であり、
前記拡がり部のうち、長さ方向の座標Lと幅方向の座標Wが、0≦L≦30mmである領域を第1領域、30mm≦L、W≦0.9WBである領域を第2領域、0.9WB≦W≦WBである領域を第3領域としたと
き、前記第1領域の対数近似(W/2=alogL+b)の相関係数が指数近似(W/2=aL
b)の相関係数よりも大きく、前記第2領域の指数近似の相関係数が対数近似の相関係数よりも大きい、
前記幅が、40cm以上のサファイアリボン。
【請求項5】
前記主面のa面からの傾きが15°以内で、前記長さ方向のm軸からの傾きが15°以内である、請求項1から4のいずれかに記載のサファイアリボン。
【請求項6】
EFG法を用いて、幅が40cm以上の単結晶リボンを製造するための単結晶リボン製造装置であって、
幅が奥行きよりも大きい坩堝と、
前記坩堝内に設置され、スリットを挟んで前記奥行き方向に相対する金型と、
前記坩堝の周囲に、前記奥行き方向に対向して配置される、第1ヒータと第2ヒータと、
前記坩堝の周囲に、前記幅方向に対向して配置される、第3ヒータと第4ヒータとを備え、
前記第1ヒータと前記第2ヒータと前記第3ヒータと前記第4ヒータは、それぞれ独立して温度制御される、単結晶リボン製造装置。
【請求項7】
前記第1ヒータと前記第2ヒータは、前記金型と略平行に配置され、前記第3ヒータと前記第4ヒータは前記金型と略垂直に配置される、請求項
6に記載の単結晶リボン製造装置。
【請求項8】
前記第1ヒータと前記第2ヒータの幅は、前記坩堝の幅よりも大きく、前記第3ヒータと前記第4ヒータの奥行き方向の幅は、前記坩堝の奥行きよりも大きい、請求項6または7に記載の単結晶リボン製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EFG法によって製造されるサファイアリボン、およびEFG法を用いた単結晶リボン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リボン状の単結晶体の製造装置として、EFG(Edge-Defined Film-Fed Growth)法を用いた製造装置(EFG装置)が使用されている。
【0003】
EFG装置10では、
図2に概念的に示すように、坩堝1内に、スリットを挟んで対向する金型3が設置されている。坩堝1に充填した単結晶体の原料を、坩堝1の外周に配置した加熱手段4により加熱し、溶融させる。得られた融液5は、スリット内を毛細管現象によって金型3の上面まで上昇する。この融液5の液面に種結晶6を接触させて、上方に引き上げながら徐冷することで単結晶体(リボン)11が育成される。リボン11の水平方向断面の形状は、金型3の上面の形状により決定される。
【0004】
近年、半導体製造装置用窓部材などの用途で、大型の基板を切り出すための、大型のサファイアリボンが求められている。特許文献1には、幅305mm、特許文献2には、幅8インチ~12インチのサファイアリボンを育成するためのEFG装置が記載されている。
【0005】
EFG法の育成条件では金型およびその付近における温度分布の制御が重要となる。しかし、育成する単結晶が大型になるほど、温度分布の制御が困難になり、高品質な単結晶を得ることが難しくなる。
【0006】
EFG法の育成条件では金型およびその付近における温度分布の制御が重要となる。しかし、育成する単結晶が大型になるほど、温度分布の制御が困難になり、高品質な単結晶を得ることが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2007-532458号公報
【文献】特開2015-124096号公報
【発明の概要】
【0008】
本開示のサファイアリボンは、それぞれ直交する幅と厚みと長さとを有し、長さ方向が育成方向であり、厚み方向に離間する2つの主面を有し、前記幅が、40cm以上である。
【0009】
また、本開示のEFG法単結晶リボン製造装置は、幅が奥行きよりも大きい坩堝と、前記坩堝内に設置され、スリットを挟んで前記奥行き方向に相対する金型と、前記坩堝の周囲に、前記奥行き方向に対向して配置される、第1ヒータと第2ヒータと、前記坩堝の周囲に、前記幅方向に対向して配置される、第3ヒータと第4ヒータとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示のサファイアリボンの外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のサファイアリボン11について、図を参照しながら説明する。なお、サファイアとは、単結晶アルミナ(化学式Al
2O
3)のことである。
図1は、サファイアリボン11の外観写真である。サファイアリボン11は、幅と厚みと長さとを有する。幅方向と厚み方向と長さ方向は、それぞれ直交し、サファイアリボン11の育成方向(引き上げ方向)を長さ方向とする。長さ方向と直交する方向のうち、サイズ(幅、厚み)の大きい方を幅方向、小さい方を厚み方向とする。また、厚み方向に離間する2つの大きな表面を主面と呼び、幅方向に離間し、主面同士を接続する2つの面を側面と呼ぶ。
【0012】
本開示のサファイアリボン11の幅は、400mm以上、例えば400mm以上600mm以下である。また、厚みは、例えば、5mm以上40mm以下である。サファイアリボン11は、拡がり部12と直胴部13とを有している。拡がり部12は、育成の過程で、サファイアリボン11の幅が拡張していく部分である。直胴部13は、幅がほぼ一定の部分である。直胴部13の長さは、例えば、400mm以上、さらに好ましくは500mm以上である。サファイアリボン11は、さらに、直胴部13に続いて、育成の過程で、サファイアリボン11の幅が縮小していく部分である、尾部(不図示)を有していてもよい。
【0013】
拡がり部12の幅は、種結晶6の幅から直胴部13の幅まで増加する。拡がり部12の最大幅、すなわち直胴部13の幅をWBとする。拡がり部12の両側面の長さのうち、長い方を拡がり部12の長さLAとする。拡がり部12の上端(種結晶6の下端)を原点(0、0)として、サファイアリボン11の長さ方向の座標をL、座標Lにおける幅をWとする。両側面における拡がり部12の下端(直胴部の上端)の座標は、(LA、±WB/2)である。
【0014】
座標Lにおける拡がり部12の側面の接線と、長さ方向(L軸方向)とのなす角をθとする。2θを位置Lにおける拡がり角とする。また、ある特定の領域範囲(例えば0≦L≦LA)における、拡がり部12の側面の、長さ方向(L軸方向)に対する傾き(以下、単に傾きという)を、LとW/2をプロットした曲線から最小二乗法で求めた傾きで定義する。
【0015】
拡がり部12の傾き(0≦L≦LAにおける傾き)は、0.9以上2.0以下であるとよい。拡がり部12の傾きが0.9以上であれば、拡がり部12を短くすることができるので、相対的に、直胴部13の長いサファイアリボン11が得られる。拡がり部12は、製品として使用するには幅が不足することがあるので、相対的に、直胴部13の長いサファイアリボン11が好ましい。また、サファイアリボン11全体の長さが短い方が、結晶欠陥の増加を抑制することができるとともに、生産性の観点からも好適である。拡がり部12の傾きが、2.0以下であれば、結晶欠陥の少ない、高品質なサファイアリボン11が提供できる。サファイアリボン11の品質は、結晶粒界の有無、転位密度、リネージ密度などで表すことができる。
【0016】
拡がり部12において、0≦L≦30mmである領域を第1領域、30mm≦L、W≦0.9WBである領域を第2領域、0.9WB≦W≦WBである領域を第3領域とする。なお、第1領域の長さは、サファイアリボン11の幅WBが400mm以上であれば、直胴部13の幅WBによらず、30mmである。
【0017】
育成の初期段階である第1領域の傾きが、0.5以上1.5以下であるとよい。第1領域の傾きが、0.5以上であると、拡がり部12を短くすることができる。第1領域の傾
きが、1.5以下であると結晶欠陥の少ない、高品質なサファイアリボン11が提供できる。
【0018】
第2領域は、拡がり部12を構成する主要部分である。第2領域の傾きは、0.8以上2.0以下であるとよい。傾きが、0.8以上であると、拡がり部12を短くすることができる。F傾きが、2.0以下であると、結晶欠陥(転位、リネージ、結晶粒界など)の少ない、高品質なサファイアリボン11が提供できる。
【0019】
第1領域の傾きが、第2領域の傾きに対して比較的大きい(拡がりが早い)と、育成中のサファイアリボン11の下端が金型3に接触することによる、結晶の曲がりが生じにくい。具体的には、第1領域の傾きa1と、第2領域の傾きa2の関係が、a2>1.19×a1-0.01であれば、曲がりが生じにくい。曲がりが生じると、サファイアリボン11の厚み変動が大きくなるので、曲りの生じやすい条件でサファイアリボン11を育成する場合、製品の厚みに対して、サファイアリボン11の厚みをより大きく、つまり、加工代をより大きくする必要があるため、生産コストおよび加工時間が増加する。
【0020】
また、第1領域において、LとW/2(つまり側面形状)は、対数関数(W/2=alogL+b)で近似できる。第2領域において、LとW/2(つまり側面形状)は、指数関数(W/2=aLb)で近似できる。ここで、対数関数で近似できるとは、対数近似の相関係数が指数近似の相関係数よりも大きいことを言い、指数関数で近似できるとは、指数近似の相関係数が対数近似の相関係数よりも大きいことを言う。このように、第1領域と第2領域の拡がり形状を制御することにより、良好な品質で、拡がり部12の短いサファイアリボン11が得られる。
【0021】
第3領域と直胴部13との接続部付近では、幅方向と長さ方向に成長していたサファイアリボン11が、長さ方向のみに成長するようになることによる、育成条件の変化により、結晶欠陥(転位、リネージ、結晶粒界など)が生じやすい。そのため、第3領域は、第2領域よりも拡がり部12の傾きの上限を小さくするとよい。具体的には、第3領域の傾き(0.9WB≦W≦WBにおける傾き)が、0.3以上1.8以下であるとよい。第3領域の傾きが、0.3以上であると、拡がり部12を短くすることができる。第3領域の傾きが、1.8以下であると、結晶欠陥の少ない、高品質なサファイアリボン11が提供できる。
【0022】
サファイアリボン11の結晶欠陥の一つであるリネージは、c軸方向に成長しやすい。そのため、育成方向である長さ方向がc軸に近いと、リネージが生じやすい。逆に、長さ方向がc軸から離れていると、リネージは結晶の外部に抜ける方向に成長するので、リネージが生じにくい。また、サファイアリボン11は、主面がa面であると、最も強度が高く割れにくい。主面がa面であれば、長さ方向が、c軸から最も離れるのは、長さ方向がm軸方向である場合である。したがって、サファイアリボン11は、主面がa面に近く(a面からの傾きが15°以内)、長さ方向がm軸に近い(m軸からの傾きが15°以内)であるとよい。
【0023】
従来のEFG装置では、このような高品質な大型のサファイアリボン11を育成することが難しかった。本開示のEFG装置は、後述するように坩堝1の周囲の前後左右それぞれに、4つの独立したヒータ4を備えているので、高品質な大型のサファイアリボン11を育成することができる。
【0024】
以下、本開示のEFG法単結晶リボン製造装置(EFG装置)について、図を参照しながら説明する。
図2、
図3は、本開示のEFG装置10の概略図であり、
図2は垂直断面図、
図3は水平断面図である。
図4は、従来のEFG装置20の概略図(水平断面図)で
ある。
【0025】
EFG装置10、20では、坩堝1内に、スリットを挟んで対向する金型3が設置されている。坩堝1に充填した原料(サファイアリボン11の育成であれば、アルミナ)を、坩堝1の周囲に配置した加熱手段4により加熱し、溶融させる。得られた融液5は、スリット内を毛細管現象によって金型3の上面まで上昇する。この融液5の液面に種結晶6を接触させて、上方に引き上げながら徐冷することでリボン11が育成される。符号7は、融液5とリボン11との固液界面である。リボン11の水平断面の形状(幅と厚み)は、金型3の上面の形状により決定される。
【0026】
従来のEFG装置20の加熱手段4は、高周波加熱用のコイル、または、抵抗加熱式ヒータであり、
図4に示すような環状の形状であった。従来のEFG装置20では、融液5および金型3に、加熱手段4からの距離に応じた温度分布が存在する。例えば、金型3の幅方向における中央付近は温度が低く、端付近は温度が高い。また、EFG装置20内の坩堝1、金型3、加熱手段4の中心位置のずれが生じると、融液5および金型3の温度分布が生じる。このような温度分布は、育成されるリボン11の形状不良や結晶品質の低下の原因となり得る。しかし、従来のEFG装置20では、このような温度分布を解消するための温度調整が困難であった。
【0027】
本開示のEFG装置10の坩堝1の水平断面は、矩形状、オーバル状など、幅方向と奥行き方向とで長さが異なる形状である。坩堝1の幅方向は、リボン11の幅方向と一致させ、坩堝1の奥行き方向は、リボン11の厚み方向と一致させる。つまり、坩堝1は、幅が奥行きよりも大きい。これにより、坩堝1、融液5の断面積、体積を小さくできるとともに、加熱手段4と坩堝1、融液5、金型3との距離を小さくできるので、融液5、金型3の温度、温度分布の調整が容易になる。坩堝1の幅と奥行きの比は、例えば1.5:1以上、好ましくは2:1以上である。
【0028】
金型3の融液溜りとなる上面の形状は、育成するリボン11の幅と厚みに合わせて設計される。金型3の上面の幅は、例えば400mm以上、例えば400mm以上500mm以下である。金型3は、スリットを挟んで厚み方向に相対し、スリットは、上面から見て幅方向に延伸している。
【0029】
加熱手段4は、坩堝1の周囲に、奥行き方向に対向して配置される、第1ヒータ4aと第2ヒータ4bと、坩堝1の周囲に配置され、幅方向に対向する第3ヒータ4cと第4ヒータ4dとを備える。第1ヒータ4a、第2ヒータ4b、第3ヒータ4c、第4ヒータ4dは、それぞれ独立して温度制御される。加熱手段4に電流を供給する電極端子は、各ヒータ4a~4dそれぞれに独立して設けられてもよいし、隣接する他のヒータ4a~4dと共有して設けられてもよい。第1ヒータ4aと第2ヒータ4bとは、金型3(リボン11)と略平行に配置され、第3ヒータ4cと第4ヒータ4dは、金型3(リボン11)と略垂直に配置される。
【0030】
4つの加熱手段4によって囲まれる空間内に、坩堝1と金型3が収納される。つまり、第1ヒータ4aと第2ヒータ4bの幅は、坩堝1の幅よりも大きい。第3ヒータ4cと第4ヒータ4dの(リボン11の厚み方向の)幅は、坩堝1の奥行きよりも大きい。
【0031】
上記構成により、融液5、金型3の温度、温度分布の調整が容易になる。本開示のEFG装置10によれば、高品質な大型リボン11を提供できる。また、第1ヒータ4a、第2ヒータ4b、第3ヒータ4c、第4ヒータ4dが、それぞれ独立して温度制御できることから、リボン11の育成中に幅方向や厚み方向の温度分布の調節が容易となる。特に、第3ヒータ4cと第4ヒータ4dにより、金型3の幅方向両端の温度調節が容易なので、
拡がり部12の幅W、拡がり角2θの調整が容易となり、所望の形状の拡がり部12の形成が容易となる。同様に、所望の形状の尾部の形成が容易となる。
【0032】
以上、本開示の好ましい実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で種々の改良や変更が可能である。
【実施例】
【0033】
本開示のEFG装置10を用いて、a面を主面とし、m軸を引き上げ方向(長さ方向)とする、幅420mm、厚み8.5mmのサファイアリボン11の育成を複数回行った。金型3の幅は420mm、厚みは8.5mmである。第1ヒータ4aと第2ヒータ4bの幅は、金型3とサファイアリボン11の幅よりも大きく、第3ヒータ4cと第4ヒータ4dの奥行き方向の長さは、金型3とサファイアリボン11の厚みよりも大きくする。種結晶6は、水平方向断面が矩形状で、主面がa面、引上げ方向がm軸である。
【0034】
引き上げ速度は同条件(一定)とし、引き上げ時の加熱手段4a~4bの出力を調整することで、拡がり部12の形状の異なる条件1~7の7本のサファイアリボン11を育成した。直胴部13の幅WBはいずれも420mmである。拡がり部12の傾き(WB/2LA)、第1領域、第2領域、第3領域の傾き(a1、a2、a3)と1.19×a1-0.01の値、第1領域と第2領域の対数近似、指数近似それぞれの相関係数Rの2乗(R2)、リボン品質を表1に示す。
【0035】
【0036】
条件1~3では、結晶欠陥の少ない、良好な品質のリボン11が得られた。条件4、5も結晶欠陥の少ないリボン11が得られたが、結晶の曲がりが見られた。条件6、7は、拡がり部12の傾きが比較的小さく、拡がり部12が相対的に長い(直胴部13が相対的に短い)リボン11となった。条件6は、結晶欠陥が比較的多く、結晶の曲がりも発生した。以上のことから、拡がり部12の傾きを0.9以上2.0以下、第1領域の傾きa1を0.5以上1.5以下、第2領域の傾きa2を0.8以上2.0以下とすることで、直胴部13が相対的に長く、結晶欠陥の少ないサファイアリボン11が育成できた(条件1~5)。さらに、a2>1.19×a1-0.01、となるように育成すると、結晶欠陥も曲がりも少ないサファイアリボン11が育成できた(条件1~3)。また、第1領域の側面形状が対数近似、第2領域の側面形状が指数近似となるように育成すると、結晶欠陥の少ないサファイアリボン11が育成できた(条件1~5、7)。
【符号の説明】
【0037】
1 :坩堝
3 :金型
4 :加熱手段
4a ;第1ヒータ
4b ;第2ヒータ
4c ;第3ヒータ
4d ;第4ヒータ
5 :融液
6 :種結晶
10、20:EFG装置
11、21:サファイアリボン(リボン、単結晶体)
12 :拡がり部
13 :直胴部