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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】防食塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20240424BHJP
   C09D 5/10 20060101ALI20240424BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240424BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240424BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/10
C09D7/61
C09D7/63
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020051046
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2020164831
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019066852
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】住田 友久
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164261(JP,A)
【文献】特開2019-026843(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104610845(CN,A)
【文献】特開昭59-176360(JP,A)
【文献】特開2020-37622(JP,A)
【文献】特開2013-23542(JP,A)
【文献】特開2005-41987(JP,A)
【文献】特開2002-80564(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109486359(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109504238(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、アミン硬化剤(B)、亜鉛粉末(C)、亜鉛粉末(C)以外の平均アスペクト比(メジアン径(D50)/平均厚さ)が15以上である顔料(D)、および、シランカップリング剤(E)を含有
前記顔料(D)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、15~70質量部であり、
顔料体積濃度(PVC)が30~70%である、防食塗料組成物。
【請求項2】
前記アミン硬化剤(B)が、脂肪族系アミン硬化剤、脂肪族系アミンのエポキシアダクト、および、脂肪族系アミンのマンニッヒ変性物から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の防食塗料組成物。
【請求項3】
前記亜鉛粉末(C)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、25~140質量部である、請求項1または2に記載の防食塗料組成物。
【請求項4】
乾燥膜厚100μm以上の防食塗膜形成用である、請求項1~の何れか1項に記載の防食塗料組成物。
【請求項5】
請求項1~の何れか1項に記載の防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
【請求項6】
請求項に記載の防食塗膜と基材とを含む防食塗膜付き基材。
【請求項7】
下記工程[1]および[2]を含む、防食塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、請求項1~の何れか1項に記載の防食塗料組成物を塗装する工程
[2]塗装された防食塗料組成物を乾燥させて防食塗膜を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食塗料組成物、防食塗膜、防食塗膜付き基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の推進駆動源である主機として搭載される大型のディーゼルエンジンの燃料油には、主にC重油が使用されている。該C重油は、粘度が高いため、予め、燃料ヒータを用いて加熱して粘度を低下させてから主機に供給されている。
該該燃料ヒータは、水をボイラにより加熱して得られる蒸気を加熱源としており、このボイラに供給される水は、通常、カスケードタンクに保管される。この場合、カスケードタンク内の水温を高温に保つと、ボイラサイクルの熱効率を高めることができる。このように、タンク内の水温を高温に保つ場合、該タンクには、防食性、耐熱性および耐水性が求められ、タンク内面に通常形成される塗膜にも、防食性、耐熱性および耐水性が求められている。
【0003】
また、化学物質等を輸送または貯蔵する場合には、タンク等に該化学物質等を入れ、輸送または貯蔵されている。該化学物質として、例えば、原油のように高粘度であり、常温で半固形状の物質が用いられることがある。このような高粘度の化学物質は、加熱して輸送または貯蔵される。よって、加熱した化学物質を輸送または貯蔵するためのタンクには、防食性、耐熱性および耐油性(耐薬品性)が求められ、タンク内面に通常形成される塗膜にも、防食性、耐熱性および耐油性(耐薬品性)が求められている。
【0004】
耐熱性に優れる塗膜を形成可能な塗料としては、シリコーン樹脂を主成分とする塗料や無機ジンクリッチペイントなどが従前から使用されている(例:特許文献1)。
また、防食塗料を形成可能な塗料としては、亜鉛粉末を含む防食塗料が知られている(例:特許文献2および3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-309748号公報
【文献】特開2002-69367号公報
【文献】特開2000-239570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリコーン樹脂を主成分とする塗料から得られた塗膜は防食性が十分ではなく、無機ジンクリッチペイントから得られた塗膜は、基材への密着性の点で改良の余地があった。
また、前記特許文献2および3に記載の塗料から形成される塗膜を、高温の水と接触する条件で使用する場合、防食性が不十分であることが分かった。
【0007】
前記カスケードタンクなどの特殊タンクは、タンク容積が小さく、該タンク内面を塗装する際に、ブラスト処理等による前処理が困難である場合がある。このような場合、パワーツール等でタンク内面を前処理しているが、このような前処理により得られるタンク内面は、表面粗度が小さく、従来の塗料を用いた場合、得られる塗膜は、該タンク内面への密着性が十分ではないことが分かった。
【0008】
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、基材への密着性に優れ、防食性、耐熱性、耐水性および耐油性(耐薬品性)にバランスよく優れる防食塗膜を形成可能な防食塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、所定の塗料組成物によれば前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は以下の通りである。
【0010】
<1> エポキシ樹脂(A)、アミン硬化剤(B)、亜鉛粉末(C)、亜鉛粉末(C)以外の平均アスペクト比(メジアン径(D50)/平均厚さ)が15以上である顔料(D)、および、シランカップリング剤(E)を含有する、防食塗料組成物。
【0011】
<2> 前記アミン硬化剤(B)が、脂肪族系アミン硬化剤、脂肪族系アミンのエポキシアダクト、および、脂肪族系アミンのマンニッヒ変性物から選択される1種以上を含む、<1>に記載の防食塗料組成物。
【0012】
<3> 前記亜鉛粉末(C)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、25~140質量部である、<1>または<2>に記載の防食塗料組成物。
【0013】
<4> 前記顔料(D)の含有量が、前記エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、15~70質量部である、<1>~<3>の何れかに記載の防食塗料組成物。
<5> 前記防食塗料組成物の顔料体積濃度(PVC)が30~70%である、<1>~<4>の何れかに記載の防食塗料組成物。
【0014】
<6> 乾燥膜厚100μm以上の防食塗膜形成用である、<1>~<5>の何れかに記載の防食塗料組成物。
【0015】
<7> <1>~<6>の何れかに記載の防食塗料組成物より形成された防食塗膜。
<8> <7>に記載の防食塗膜と基材とを含む防食塗膜付き基材。
【0016】
<9> 下記工程[1]および[2]を含む、防食塗膜付き基材の製造方法。
[1]基材に、<1>~<6>の何れかに記載の防食塗料組成物を塗装する工程
[2]塗装された防食塗料組成物を乾燥させて防食塗膜を形成する工程
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材への密着性に優れ、防食性、耐熱性、耐水性および耐油性(耐薬品性)にバランスよく優れる防食塗膜を形成することができる。
また、特に、50~120℃の高温水や沸騰水への耐性、および、加熱した化学物質への耐性に優れる防食塗膜を形成できる。このため、本発明に係る防食塗料組成物は、高温の水や加熱した化学物質を輸送または貯蔵等するためのタンク、特に、船舶のカスケードタンクや貨物タンクに好適に用いることができる。
さらに、本発明によれば、基材への前処理が制限される場合にも、該基材への密着性に優れる防食塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪防食塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係る防食塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂(A)、アミン硬化剤(B)、亜鉛粉末(C)、亜鉛粉末(C)以外の平均アスペクト比(メジアン径(D50)/平均厚さ)が15以上である顔料(D)、およびシランカップリング剤(E)を含有する。
本組成物によれば、前記効果を奏する。なお、一般に、耐熱性が上がれば、基材への密着性が低下するが、本組成物によれば、このような相反する特性を両立できる。
【0019】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、通常、エポキシ樹脂(A)を含有する主剤成分と、アミン硬化剤(B)を含有する硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である。また、必要により、3成分型以上の組成物としてもよい。
これら主剤成分および硬化剤成分は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
【0020】
本組成物の顔料体積濃度(PVC)は、塗装作業性に優れる組成物を容易に得ることができ、防食性および耐水性により優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下である。
PVCが前記下限を下回ると、得られる防食塗膜の防食性が低下する傾向にあり、また、前記上限を超えると、本組成物の塗装作業性、および、得られる防食塗膜の耐水性が低下する傾向にある。
【0021】
前記PVCとは、本組成物中の不揮発分の体積に対する、前記亜鉛粉末(C)、顔料(D)、後述の導電性顔料、体質顔料(F)および着色顔料を含む、すべての顔料の合計の体積濃度のことをいう。PVCは、具体的には下記式より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積合計×100/本組成物中の不揮発分の体積
【0022】
前記本組成物中の不揮発分の体積は、本組成物の不揮発分率および真密度から算出することができる。前記不揮発分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
【0023】
本組成物の不揮発分率(本組成物の加熱残分の含有率)は、以下のようにして算出できる。
JIS K 5601-1-2:2008に従って、本組成物(例:主剤成分と硬化剤成分とを混合した直後の組成物)1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間放置後、110℃で1時間、常圧下で乾燥させ、得られた加熱残分から針金の質量を減算し、質量百分率の値とすることで算出される。
【0024】
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。測定値としては、例えば、本組成物の不揮発分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0025】
なお、本明細書では、主剤成分または硬化剤成分を構成する原材料(例:エポキシ樹脂(A))中、主剤成分中、硬化剤成分中それぞれの溶剤以外の成分を「固形分」という。
【0026】
<エポキシ樹脂(A)>
エポキシ樹脂(A)としては特に制限されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
エポキシ樹脂(A)としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマー、オリゴマー等が挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、脂肪酸変性エポキシ樹脂、リン酸化合物変性エポキシ樹脂およびエポキシ化油系エポキシ樹脂から選ばれる変性エポキシ樹脂(a1)、および変性エポキシ樹脂(a1)以外のエポキシ樹脂(a2)が挙げられる。該エポキシ樹脂(a2)としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、耐水性により優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、エポキシ樹脂(a2)が好ましい。
【0028】
前記エポキシ樹脂(a2)としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類);ビスフェノールAD型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂が挙げられ、これらの水素添加反応(以下「水添」ともいう。)物、樹脂中の水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化物等であってもよい。
これらの中でも、基材に対する密着性に優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールA型およびビスフェノールF型のエポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0029】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類などの縮重合物が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂(A)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、常温(15~25℃の温度、以下同様。)で液状のものとして、「E-028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量180~190、粘度12,000~15,000mPa・s/25℃)、「jER807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~175、粘度3,000~4,500mPa・s/25℃)等が挙げられる。常温で半固形状のものとして、「jER834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270)等が挙げられる。常温で固形状のものとして、「jER1001」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500)、「jER1004」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量875~975)、「jER1007」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量1750~2200)等が挙げられる。
【0031】
また、前述の半固形状または固形状のエポキシ樹脂を溶剤で希釈し、溶液とした「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量255)、「E-001-75X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(1001タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量475)、「EPICLON N-740-80X」(DIC(株)製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のメチルエチルケトン溶液)等も使用することができる。
なお、本明細書におけるエポキシ当量の値は、エポキシ樹脂の固形分当たりのエポキシ当量のことをいう。
【0032】
エポキシ樹脂(A)としては、高温下においても基材に対する密着性に優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、常温で半固形状または固形状のエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、防食性に優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは150以上、より好ましくは210以上、特に好ましくは230以上であり、好ましくは2200以下、より好ましくは1000以下である。
【0034】
エポキシ樹脂(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量は、得られる組成物の塗装硬化条件(例:常乾塗装または焼付け塗装)などにもより一概に決定されないが、好ましくは350~20,000、より好ましくは450~10,000である。
【0035】
本組成物中のエポキシ樹脂(A)、好ましくはエポキシ樹脂(a2)の含有量は、防食性により優れる防食塗膜を得ることができる等の点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、エポキシ樹脂(A)、好ましくはエポキシ樹脂(a2)は、本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、主剤成分に含まれ、該主剤成分中に、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~50質量%の量で含まれていることが望ましい。
また、本組成物の不揮発分100質量%に対するエポキシ樹脂(A)、好ましくはエポキシ樹脂(a2)の含有量は、前記と同様の理由より、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
【0036】
<アミン硬化剤(B)>
アミン硬化剤(B)としては後述する三級アミン(3級アミノ基のみを有するアミン化合物)を除く、アミン化合物であれば特に制限されないが、脂肪族系、脂環族系、芳香族系、複素環系アミン硬化剤などのアミン化合物が好ましい。なお、これらアミン化合物は、アミノ基が結合している炭素の種類により区別され、例えば、脂肪族系アミン硬化剤とは、脂肪族炭素に結合したアミノ基を少なくとも1つ有する化合物のことをいう。
アミン硬化剤(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
前記脂肪族系アミン硬化剤としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンが挙げられる。
【0038】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0039】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(Cm2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン等が挙げられる。
【0040】
前記アルキルアミノアルキルアミンとしては、例えば、式:「R2 2N-(CH2p-NH2」(R2は独立して、水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり(但し、少なくとも1つのR2は炭素数1~8のアルキル基である。)、pは1~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノブチルアミン等が挙げられる。
【0041】
これら以外の脂肪族系アミン硬化剤としては、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン等が挙げられる。
【0042】
前記脂環族系アミン硬化剤としては、具体的には、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリン等が挙げられる。
【0043】
前記芳香族系アミン硬化剤としては、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
この芳香族系アミン硬化剤として、より具体的には、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0044】
前記複素環系アミン硬化剤としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0045】
アミン硬化剤(B)としては、さらに、前述したアミン硬化剤の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。
【0046】
アミン硬化剤(B)としては、脂肪族系アミン硬化剤、脂肪族系アミンのエポキシアダクト、および、脂肪族系アミンのマンニッヒ変性物が好ましく、脂肪族系アミンのエポキシアダクトおよび脂肪族系アミンのマンニッヒ変性物がより好ましく、脂肪族系アミンのエポキシアダクトが特に好ましい。
【0047】
前記エポキシアダクトとしては、脂肪族系アミン硬化剤、脂肪族系アミン硬化剤の脂肪酸変性物、脂肪族系アミン硬化剤のマンニッヒ変性物等のアミン化合物1種または2種以上と、ビスフェノールA型エポキシ化合物等のエポキシ化合物1種または2種以上とを反応させることで得られる。また、このようなエポキシアダクトは、内在型、分離型等に分類することができる。耐熱性および耐水性に優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、過剰なmol数のアミン化合物をエポキシ化合物と反応させ、余剰のアミン化合物を除去することで合成される分離型が好ましい。
前記アミン化合物100質量部に対するエポキシ化合物の使用量は、好ましくは5~800質量部、より好ましくは100~800質量部、特に好ましくは300~800質量部である。
【0048】
該エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;スチレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;フェノール、クレゾール、t-ブチルフェノール等の(アルキル)フェノールや、ブタノール、2-エチルヘキサノール、炭素数8~14のアルコール等のグリシジルエーテル;アルキルグリシジルエーテル(例:Epodil 759[Evonik社製])が挙げられる。
【0049】
これらのアミン硬化剤(B)を用いると、前記効果にバランスよく優れ、特に、耐油性および耐薬品性に優れ、さらには、パワーツール等で基材を前処理する場合等、表面粗度の小さい基材に対しても密着性に優れ、防食性および耐水性に優れる防食塗膜を容易に得ることができる。
【0050】
アミン硬化剤(B)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品でもよい。
市販品としては、例えば、脂肪族系アミンの分離型エポキシアダクトである「AD-71」(大竹明新化学(株)製)、ポリアミドアミン(脂肪族系ポリアミンとダイマー酸との脱水縮合物)である「PA-66S」(大竹明新化学(株)製)、フェナルカミン(脂肪族系ポリアミンとホルマリン、カルダノールとの脱水縮合物)である「Cardolite CM-5055」(カードライト社製)が挙げられる。
【0051】
アミン硬化剤(B)の活性水素当量は、防食性により優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは50以上、より好ましくは100以上であり、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下である。
なお、本明細書における活性水素当量の値は、アミン硬化剤(B)の固形分当たりの活性水素当量のことをいう。
【0052】
防食性、塗膜強度および乾燥性に優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、アミン硬化剤(B)は、下記式(2)で算出される反応比が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上となるような量、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下となるような量で用いることが望ましい。
【0053】
反応比={(アミン硬化剤(B)の配合量(固形分)/アミン硬化剤(B)の活性水素当量)+(エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の配合量(固形分)/エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分の官能基当量)}/{(エポキシ樹脂(A)の配合量(固形分)/エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量)+(アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の配合量(固形分)/アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の官能基当量)} ・・・(2)
【0054】
ここで、前記式(2)における「アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するシランカップリング剤(E)、エポキシ基含有反応性希釈剤、およびアクリレート化合物が挙げられ、また、「エポキシ樹脂(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するシランカップリング剤(E)が挙げられる。前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分の固形分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
後述のシランカップリング剤(E)としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができるため、該反応性基の種類によって、該シランカップリング剤がエポキシ樹脂(A)に対して反応性を有するのか、アミン硬化剤(B)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
【0055】
本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、前記硬化剤(B)は硬化剤成分に含まれる。この硬化剤成分のE型粘度計で測定した25℃における粘度は、取扱い性、塗装作業性により優れる組成物となる等の点から、好ましくは100,000mPa・s以下であり、より好ましくは50~10,000mPa・sである。
【0056】
<亜鉛粉末(C)>
亜鉛粉末(C)としては、球状や鱗片状などの様々な形状のものを用いることができる。なお、本組成物は、亜鉛粉末(C)として鱗片状の亜鉛粉末を用いた場合でも、硬度等に優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、顔料(D)を用いる。
亜鉛粉末(C)としては、金属亜鉛の粉末、または、亜鉛を主体(亜鉛の含有量が全体の90質量%以上)とする合金(例:亜鉛とアルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金、好ましくは亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-錫合金)の粉末が挙げられる。これらの中でも、金属亜鉛の粉末が好ましい。
亜鉛粉末(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
球状の亜鉛粉末としては、メジアン径(D50)が30μm以下である粉末が好ましい。該球状亜鉛粉末の市販品としては、例えば、亜鉛末F(ハクスイテック(株)製)、F-2000(本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0058】
鱗片状の亜鉛粉末としては、メジアン径(D50)が30μm以下であり、かつ平均厚さが1μm以下である粉末が好ましい。該鱗片状の亜鉛粉末の市販品としては、例えば、STANDART Zinc flake GTT、STANDART Zinc flake G(ECKART GmbH製)が挙げられる。
【0059】
本明細書において、メジアン径(D50)は、レーザー散乱回折式粒度分布測定装置、例えば「SALD 2200」((株)島津製作所製)を用いて測定することができる。平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、例えば「XL-30」(フィリップス社製)を用いて測定対象(鱗片状顔料)の主面(最も面積の大きい面)に対して水平方向から観察し、数十~数百個の顔料粒子の厚さを測定することで、その平均値として算出できる。
【0060】
亜鉛粉末(C)の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、通常5質量%以上、好ましくは8質量%以上であり、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であり、エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、好ましくはエポキシ樹脂(a2)の固形分100質量部に対し、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、好ましくは140質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。
亜鉛粉末(C)の含有量が前記範囲にあると、前記効果にバランスよく優れ、特に、耐湿性に優れ、さらには、パワーツール等で基材を前処理する場合等、表面粗度の小さい基材に対しても密着性に優れ、耐熱性および耐水性に優れる防食塗膜を容易に得ることができる。
本組成物は、従来のジンクリッチ組成物で使用される亜鉛粉末量に比べ、亜鉛粉末(C)の含有量が少ないことが好ましい。
【0061】
<顔料(D)>
顔料(D)は、前記亜鉛粉末(C)以外の顔料であり、平均アスペクト比(メジアン径(D50)/平均厚さ)が15以上であれば、特に制限されないが、前記効果により優れる防食塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは非金属顔料であり、より好ましくは鱗片状(なお、鱗片状は、針状や繊維状を含まない。)の非金属顔料であり、特に好ましくは鱗片状の鉱物系顔料またはガラスフレークである。
顔料(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0062】
前記平均アスペクト比は、得られる防食塗膜の防食性、内部応力緩和による基材との密着性の向上等の点から、好ましくは30~100である。
顔料(D)のD50は、同様の理由から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0063】
顔料(D)としては、マイカ、ガラスフレーク、プラスチックフレーク等が挙げられ、安価で入手容易性に優れ、より前記効果に優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点から、マイカが好ましい。
該マイカとしては、市販品を用いることができる。
【0064】
顔料(D)の含有量は、前記効果により優れる防食塗膜を容易に形成できる等の点から、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
また、同様の理由から、エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、好ましくはエポキシ樹脂(a2)の固形分100質量部に対し、好ましくは15~70質量部、より好ましくは15~50質量部である。
【0065】
<シランカップリング剤(E)>
シランカップリング剤(E)を用いることで、得られる防食塗膜の基材への密着性をさらに向上させることができるのみならず、得られる防食塗膜の耐塩水性等の防食性をも向上させることができる。
シランカップリング剤(E)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0066】
シランカップリング剤(E)としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、基材に対する密着性の向上、本組成物の粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:「X-SiMen3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
【0067】
シランカップリング剤(E)としては、反応性基としてエポキシ基またはアミノ基を有する化合物が好ましく、具体的には、「KBM-403」(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)、「サイラエースS-510」(JNC(株)製)、「KBM-603」(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0068】
シランカップリング剤(E)の含有量は、本組成物100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。また、エポキシ樹脂(A)の固形分100質量部に対し、好ましくはエポキシ樹脂(a2)の固形分100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。また、亜鉛粉末(C)100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
シランカップリング剤(E)の含有量が前記範囲にあると、本組成物の塗料粘度を低減できるため、塗装作業性が向上するだけでなく、得られる防食塗膜の基材に対する密着性および防食性が向上する。また、亜鉛粉末(C)に対するシランカップリング剤(E)の含有量が前記範囲にあると、亜鉛粉末(C)の過剰な消耗が抑制される傾向にあり、また、エポキシ樹脂(A)への分散性が向上すること等により、基材との密着性により優れる防食塗膜を容易に得ることができる。
【0069】
<その他の成分>
本組成物は、前記(A)~(E)の他に、必要に応じて、有機溶剤、エポキシ樹脂(A)以外の樹脂、エポキシ基含有反応性希釈剤、可塑剤、アクリレート化合物、導電性顔料、体質顔料(F)、着色顔料、タレ止め剤(沈降防止剤)、硬化促進剤、無機脱水剤(安定剤)、分散剤、消泡剤、防汚剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
前記その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0070】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロパノール、n-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶剤、ミネラルスピリット、n-ヘキサン、n-オクタン、2,2,2-トリメチルペンタン、イソオクタン、n-ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0071】
<エポキシ基含有反応性希釈剤>
本組成物は、エポキシ基含有反応性希釈剤を含んでいてもよい。
前記エポキシ基含有反応性希釈剤としては、25℃における粘度が500mPa・s以下のエポキシ化合物であれば特に制限されず、単官能型であっても、多官能型であってもよい。
【0072】
単官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1~13)、フェニルグリシジルエーテル、o-クレシルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1~20、好ましくは1~5、例:メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル)、フェノールグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、フェノール(EO)nグリシジルエーテル(繰り返し数n=3~20、EO:-C24O-)が挙げられる。
【0073】
多官能型エポキシ基含有反応性希釈剤としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、モノまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(アルキレン基の炭素数1~5、例:エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0074】
本組成物が前記エポキシ基含有反応性希釈剤を含有する場合には、防食性等により優れる防食塗膜が得られる等の点から、該エポキシ基含有反応性希釈剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0075】
<可塑剤>
本組成物は、得られる防食塗膜の柔軟性を向上させる等の点から、可塑剤を含んでいてもよい。
前記可塑剤としては、従来公知のものを広く使用でき、ナフサを熱分解して得られる低沸点留分等の液状炭化水素樹脂、常温で固形の石油樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂等が挙げられる。具体的には、特開2006-342360号公報に記載の液状炭化水素樹脂および可撓性付与樹脂等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、前記エポキシ樹脂(A)との相溶性がよい等の点から、液状炭化水素樹脂、ならびに、水酸基を含有し、かつ、常温で固形状である、石油樹脂、キシレン樹脂およびクマロンインデン樹脂が好ましい。
【0077】
前記液状炭化水素樹脂の市販品としては、「ネシレス EPX-L」、「ネシレス EPX-L2」(以上、NEVCIN社製/フェノール変性炭化水素樹脂)、「HILENOL PL-1000S」(KOLONケミカル社製/液状炭化水素樹脂)等が挙げられ、常温で固形状の石油系樹脂の市販品としては、「ネオポリマー E-100」、「ネオポリマー K-2」、「ネオポリマー K-3」(以上、新日本石油化学(株)製/C9系炭化水素樹脂)等が挙げられ、クマロンインデン樹脂の市販品としては、「NOVARES CA 100」(Rutgers Chemicals AG社製)等が挙げられ、キシレン樹脂の市販品としては「ニカノールY-51」(三菱ガス化学(株)製)等が挙げられる。
【0078】
本組成物が前記可塑剤を含有する場合、耐クラック性等により優れる防食塗膜が得られる等の点から、該可塑剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0079】
<アクリレート化合物>
本組成物は、得られる組成物の硬化速度を向上させる等の点から、アクリレート化合物を含んでいてもよい。
前記アクリレート化合物としては、例えば、単官能または多官能の脂肪族(メタ)アクリレートモノマー、単官能または多官能の芳香族(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。
【0080】
前記アクリレート化合物の市販品としては、「M-CURE 100」(単官能の芳香族アクリレート、官能基当量257~267g/eq)、「M-CURE 200」(二官能の芳香族アクリレート、官能基当量130~140g/eq)、「M-CURE 201」(二官能の脂肪族アクリレート、官能基当量95~105g/eq)、「M-CURE 300」(三官能の脂肪族アクリレート、官能基当量112~122g/eq)、「M-CURE 400」(四官能の脂肪族アクリレート、官能基当量80~90g/eq)(いずれも、SARTOMER COMPANY,INC製)等が挙げられる。
【0081】
本組成物が前記アクリレート化合物を含有する場合、硬化速度により優れる組成物が得られる等の点から、該アクリレート化合物の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0082】
<導電性顔料>
本組成物は、形成される防食塗膜の防食性を向上させることができる等の点から、導電性顔料を含んでいてもよい。
【0083】
前記導電性顔料としては、例えば、亜鉛粉末(C)以外の金属粉末、酸化亜鉛、炭素粉末が挙げられる。これらの中でも、安価で導電性の高い酸化亜鉛が好ましい。
【0084】
前記酸化亜鉛の市販品としては、例えば、酸化亜鉛1種(堺化学工業(株)製)、酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製)が挙げられる。
【0085】
前記金属粉末としては、例えば、Fe-Si粉、Fe-Mn粉、Fe-Cr粉、磁鉄粉、リン化鉄が挙げられる。該金属粉末の市販品としては、例えば、フェロシリコン(キンセイマテック(株)製)、フェロマンガン(キンセイマテック(株)製)、フェロクロム(キンセイマテック(株)製)、フェロフォス2132(オキシデンタル ケミカルコーポレーション製)が挙げられる。
【0086】
前記炭素粉末としては、カーボンブラック等が挙げられる。該炭素粉末の市販品としては、例えば、MA-100(三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0087】
本組成物が前記導電性顔料を含有する場合、該導電性顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対して、0質量%を超えて20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、亜鉛粉末(C)100質量部に対し、好ましくは0.1~100質量部、より好ましくは1~50質量部である。
導電性顔料の含有量が前記範囲にあると、亜鉛粉末(C)の含有量を少なく抑えつつ防食性を維持できる点で好ましい。
【0088】
<体質顔料(F)>
前記体質顔料(F)を用いることで、得られる本組成物のコスト面におけるメリットのみならず、防食性、特に耐塩水性および耐湿性等に優れる防食塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物は体質顔料(F)を含むことが好ましい。
【0089】
前記体質顔料(F)としては、前記(C)、(D)および導電性顔料以外の顔料であれば特に制限されないが、具体的には、硫酸バリウム、カリ長石、ナトリウム長石、バライト粉、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。
【0090】
本組成物が前記体質顔料(F)を含有する場合、前記効果をより発揮できる等の点から、該体質顔料(F)の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0091】
<着色顔料>
前記着色顔料としては、前記(C)、(D)、導電性顔料および(F)以外の顔料であれば特に制限されず、従来公知の着色顔料を使用することができる。前記着色顔料としては、具体的には、チタン白、ベンガラ、黄色ベンガラ等が挙げられる。
【0092】
本組成物が前記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0093】
また、本組成物が、前記体質顔料(F)および/または着色顔料を含有する場合、防食性により優れる防食塗膜を得ることができる等の点から、前記体質顔料(F)および着色顔料の合計含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0094】
<タレ止め剤(沈降防止剤)>
前記タレ止め剤(沈降防止剤)としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
【0095】
このようなタレ止め剤(沈降防止剤)としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン 305」、「ディスパロン 4200-20」、「ディスパロン 6650」;伊藤製油(株)製の「ASAT-250F」;共栄社化学(株)製の「フローノンRCM-300」;Elementis Specialties, Inc社製の「ベントンSD-2」等の商品が挙げられる。
【0096】
本組成物が前記タレ止め剤(沈降防止剤)を含有する場合、該タレ止め剤(沈降防止剤)の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.3~3質量%である。
【0097】
<硬化促進剤>
本組成物は、硬化速度の調整、特に促進に寄与できる硬化促進剤を含むことが好ましい。
前記硬化促進剤としては、例えば、三級アミン類が挙げられ、具体的には、例えば、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン[1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン]、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール(例:「バーサミンEH30」(ヘンケル白水(株)製)、「Ancamine K-54」(エボニックジャパン(株)製))が挙げられる。
【0098】
本組成物が前記硬化促進剤を含有する場合、該硬化促進剤の含有量は、本組成物の不揮発分100質量%に対し、好ましくは0.05~2.0質量%である。
【0099】
≪防食塗膜、防食塗膜付き基材≫
本発明の一実施形態に係る防食塗膜は、前記本組成物から形成されたものであれば特に制限されず、本発明の一実施形態に係る防食塗膜付き基材は、該防食塗膜と基材とを含めば特に制限されないが、基材上に前記本組成物を塗装した後、該塗装された本組成物を乾燥させること、好ましくは該塗装された本組成物を乾燥、硬化させることで得られたものであることが好ましい。この方法は、基材の防食方法ともいえる。
この防食塗膜は、耐水性や耐湿性などの防食性に優れ、高温の水に長期間浸漬しても基材に対する密着性に優れる。
【0100】
前記基材としては、特に制限されないが、本発明の効果がより発揮できることなどから、防食性が求められる基材であることが好ましい。
このような基材としては、鉄鋼、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム等)、ステンレスなどからなる基材が好ましく、これらからなる、高温の水や、加熱した化学物質等を輸送または貯蔵するためのタンク、特にこれらタンクの内面がより好ましい。
【0101】
前記基材としては、錆、油脂、水分、塵埃、スライム、塩分などを除去するため、また、得られる防食塗膜の密着性を向上させるために、必要により前記基材表面を処理(例えば、ブラスト処理(ISO8501-1 Sa2 1/2)やパワーツール処理(ISO8501-1 St3)、摩擦法、脱脂による油分・粉塵を除去する処理)等したものでもよく、基材の防食性や、溶接性、せん断性等の点から、必要により、前記基材表面に従来公知の一次防錆塗料(ショッププライマー)等の薄膜形成用塗料や、その他プライマー等を塗布し乾燥させたものでもよい。
【0102】
本組成物を基材上に塗布する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を制限なく使用可能であるが、作業性に優れるスプレー塗装やローラー塗装が好ましい。
【0103】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい防食塗膜の厚みに応じて適宜調整すればよいが、エアレススプレー時には、例えば、1次(空気)圧:0.4~0.8MPa程度、2次(塗料)圧:10~26MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度に塗装条件を設定すればよい。
【0104】
前記防食塗膜の膜厚は、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、防食性に優れる防食塗膜となる等の点から、好ましくは100μm以上、より好ましくは250μm以上であり、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下である。
このような膜厚の防食塗膜を形成する際は、1回の塗装(1回塗り)で、所望の厚みの防食塗膜を形成してもよいし、防食性等に応じ、2回(必要によりそれ以上)の塗装で、所望の厚みの防食塗膜を形成してもよい。防食性に優れる防食塗膜を作業性よく形成することができる等の点から、2回塗りで前記範囲の厚みの防食塗膜を形成することが好ましい。
【0105】
前記本組成物を乾燥、硬化させる方法としては特に制限されず、乾燥、硬化時間を短縮させるために5~60℃程度の加熱により本組成物を乾燥、硬化させてもよいが、通常は、常温、大気下で1~14日程度放置することで本組成物を乾燥、硬化させる。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【0107】
[実施例1]
下記表1に示すように、容器に、エポキシ樹脂1(注1)27質量部、メチルイソブチルケトン3.5質量部、n-ブタノール1.5質量部、1-メトキシ-2-プロパノール1.5質量部、キシレン7質量部、トルエン3質量部、ブチルセロソルブ1質量部、シランカップリング剤1(注6)0.5質量部、タルク(注11)22.5質量部、チタン白(注15)4質量部、マイカ1(注8)10質量部、亜鉛粉末(注7)6.5質量部、タレ止め剤(注18)1.5質量部、および、水分吸着剤(注19)0.5質量部を入れ、そこにガラスビーズを添加し、ペイントシェーカーを用いてこれら成分を混合した。次いで、ガラスビーズを取り除き、ハイスピードディスパーを用い56~60℃で分散後、30℃以下まで冷却し、主剤成分を調製した。
【0108】
また、下記表1に示すように、エポキシアダクト物1(注21)8質量部、三級アミン(注27)0.1質量部、n-ブタノール1質量部、および、キシレン0.9質量部を、ハイスピードディスパーを用いて混合することで、硬化剤成分を調製した。
【0109】
得られた主剤成分と硬化剤成分とを塗装前に混合することで塗料組成物を調製した。
なお、表1に記載の各成分の詳細は表2に示すとおりである。
【0110】
[実施例2~14および比較例1~4]
主剤成分および硬化剤成分に配合する原材料の種類および配合量を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして塗料組成物を調製した。なお、表1中の数値は、質量部を示す。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
<各種試験>
前記実施例および比較例で得られた塗料組成物から形成した防食塗膜について、以下の試験(1)~(5)を行った。結果を表3に示す。
【0114】
(1)耐塩水性試験
防食塗膜の耐塩水性を、JIS K 5600-6-2:2016に準拠して測定した。具体的には以下のようにして行った。
寸法が150mm×70mm×1.6mm(厚)のブラスト処理またはパワーツール処理された鋼板(以下「試験板」ともいう。)上に、実施例および比較例で得られた各塗料組成物を、乾燥膜厚が約320μmとなるようにスプレー塗装し、得られた防食塗膜付試験板を、23℃、50%RHの雰囲気で7日間乾燥することで、防食塗膜付き試験板を作製した。この防食塗膜付き試験板を用い、85℃の3%塩水中に180日間浸漬した後の防食塗膜の外観および防食塗膜下の鋼板の状態を以下の基準に従って評価した。なお、防食塗膜下の鋼板の状態は、カッターナイフ等により1cm2の防食塗膜を除去し、鋼板素地を露見させた箇所における錆の占める面積を評価した。
【0115】
なお、ブラスト処理またはパワーツール処理した鋼板の粗度(Rzjis)を、JIS B0601:2013に準拠して測定したところ、以下の通りであった。
ブラスト処理鋼板の粗度:25~35μm
パワーツール処理鋼板の粗度:0~5μm
【0116】
(評価基準)
5:防食塗膜外観にフクレがなく、防食塗膜下(鋼板上)に錆の発生がない。
4:防食塗膜外観にフクレがなく、防食塗膜下(鋼板上)の錆の占める面積が1%未満である。
3:防食塗膜外観にフクレがないが、防食塗膜下(鋼板上)の錆の占める面積が1%以上5%未満である。
2:防食塗膜全面の5%未満にフクレが見られる、および/または防食塗膜下(鋼板上)の錆の占める面積が5%以上20%未満である。
1:防食塗膜全面の5%以上にフクレが見られる、および/または防食塗膜下(鋼板上)の錆の占める面積が20%以上である。
【0117】
(2)耐水性試験
前記耐塩水性試験と同様にして作成した防食塗膜付き試験板を、85℃の水道水中に180日間浸漬した後の防食塗膜の外観および防食塗膜下の鋼板の状態を、前記耐塩水性試験と同様の評価基準に従って評価した。
【0118】
(3)耐湿性試験
防食塗膜の耐湿性を、JIS K 5600-7-2:1999に準拠して測定した。具体的には以下のようにして行った。
前記耐塩水性試験と同様にして作成した防食塗膜付き試験板(但し、ブラスト処理鋼板のみを使用)を、温度50℃、湿度95%の試験器内に180日間保持した後の防食塗膜の外観および防食塗膜下の鋼板の状態を、前記耐塩水性試験と同様の評価基準に従って評価した。
【0119】
(4)耐油性試験
防食塗膜の耐油性を、JIS K5600-6-1:2016に準拠して測定した。具体的には以下のようにして行った。
前記耐塩水性試験と同様にして作成した防食塗膜付き試験板(但し、ブラスト処理鋼板のみを使用)を、下記の耐油性試験用浸漬液の調製方法で得られた浸漬液に60℃で180日間浸漬した後の防食塗膜の外観および防食塗膜下の鋼板の状態を、前記耐塩水性試験と同様の評価基準に従って評価した。
【0120】
・耐油性試験用浸漬液の調製方法
1.LSA重油の酸価が2.5になるようにナフテン酸を加える。
2.重油に対して8質量%のベンゼン/トルエン(質量比1:1の混合物)を加える。
3.前記2.で得られた液に対し、3%塩水を5質量%加える。
4.一定濃度の硫化水素溶液を、硫化水素濃度が5ppmになるように加える。
5.前記4.で得られた混合物を使用する直前に十分に撹拌する。
【0121】
(5)耐薬品性試験
防食塗膜の耐薬品性を、JIS K 5600-6-1:2016に準拠して測定した。具体的には以下のようにして行った。
前記耐塩水性試験と同様にして作成した防食塗膜付き試験板(但し、ブラスト処理鋼板のみを使用)を、エチレンジクロライドに水1質量%を添加した浸漬液に、23℃で180日間浸漬した後の防食塗膜の外観および防食塗膜下の鋼板の状態を、前記耐塩水性試験と同様の評価基準に従って評価した。
【0122】
【表3】