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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】跳ね出しスラブの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20240424BHJP
   E04B 5/32 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
E04B1/00 501B
E04B5/32 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020078163
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021173077
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】臼田 雄作
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】小島 一高
(72)【発明者】
【氏名】土井 公人
(72)【発明者】
【氏名】和多田 遼
(72)【発明者】
【氏名】吉村 純也
(72)【発明者】
【氏名】木原 智美
(72)【発明者】
【氏名】森 弘誓
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-112131(JP,A)
【文献】特開平09-041475(JP,A)
【文献】特開平09-242023(JP,A)
【文献】実開昭57-111903(JP,U)
【文献】特開平08-184122(JP,A)
【文献】米国特許第04625484(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 5/32
E04G 9/00-19/00
E04G 21/00-21/10
E04G 21/12
E04G 21/14-21/22
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラブ部材を構造物から外方側に跳ね出した跳ね出し状態で構造物に固定する跳ね出しスラブの施工方法において、
前記スラブ部材の基端側部位には、上方側に延びる立ち上がり部が備えられ、
前記スラブ部材の基端側部位を構造物側の支持部材に載置させた状態で、前記スラブ部材の前記立ち上がり部と前記支持部材から構造物の内方側に延びる延設部材とを連結材にて連結して前記スラブ部材を構造物に仮固定する仮固定工程と、
コンクリートの打設により仮固定された前記スラブ材と構造物側とを接合して前記スラブ部材を本固定する本固定工程とを行う跳ね出しスラブの施工方法。
【請求項2】
前記連結材は、その長さを調整自在に構成されている請求項1に記載の跳ね出しスラブの施工方法。
【請求項3】
構造物の内方側には、前記支持部材と並ぶ状態で配設された梁と、前記支持部材と前記梁とに亘って剛接合された補強部材とが備えられ、
その補強部材は、前記延設部材として備えられ、前記連結材が接続されている請求項1又は2に記載の跳ね出しスラブの施工方法。
【請求項4】
前記スラブ部材は、前記支持部材の長さ方向に隣接して並ぶ状態で複数備えられ、
前記延設部材は、隣接する前記スラブ部材の境界部分に相当する位置に配設され、隣接する前記スラブ部材の夫々における立ち上がり部に接続された2つの前記連結材が接続されている請求項1~3の何れか1項に記載の跳ね出しスラブの施工方法。
【請求項5】
前記支持部材には、前記スラブ部材の配設予定位置に被係合部材が備えられ、前記スラブ部材の基端側部位には、その前記被係合部材に係合自在な係合部材が備えられ、
前記仮固定工程では、前記支持部材の前記被係合部材に前記スラブ部材の前記係合部材を係合させて、前記スラブ部材の基端側部位を前記支持部材に載置させている請求項1~4の何れか1項に記載の跳ね出しスラブの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ部材を構造物から外方側に跳ね出した跳ね出し状態で構造物に固定する跳ね出しスラブの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような跳ね出しスラブの施工方法では、スラブ部材を建物等の構造物に仮固定させる仮固定工程と、コンクリートの打設により仮固定されたスラブ部材と構造物側とを一体化してスラブ部材を本固定する本固定工程とが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の施工方法では、スラブ部材の基端側から構造物側に突出する突出部が備えられているので、仮固定工程では、スラブ部材の基端側部位に配設された突出部を構造物側の梁等に連結し、スラブ部材の先端側部位をその下方側に配設されたサポート等の仮設支保工にて受け止め支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平3-48970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の施工方法では、スラブ部材の先端側部位の下方側に、仮設支保工を配設しなければならず、仮固定工程後に行われる本固定工程において、打設したコンクリートが硬化するまで、スラブ部材の先端側部位を支持しておくことが必要となる。よって、仮設支保工を配設するだけでなく、仮設支保工を長期に亘って配設しておかなければならず、作業動線の確保が難しくなり、コストアップ及び施工性の低下を招くことになる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業動線を適切に確保することができ、コストの低減及び施工性の向上を図ることができる跳ね出しスラブの施工方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、スラブ部材を構造物から外方側に跳ね出した跳ね出し状態で構造物に固定する跳ね出しスラブの施工方法において、
前記スラブ部材の基端側部位には、上方側に延びる立ち上がり部が備えられ、
前記スラブ部材の基端側部位を構造物側の支持部材に載置させた状態で、前記スラブ部材の前記立ち上がり部と前記支持部材から構造物の内方側に延びる延設部材とを連結材にて連結して前記スラブ部材を構造物に仮固定する仮固定工程と、
コンクリートの打設により仮固定された前記スラブ材と構造物側とを接合して前記スラブ部材を本固定する本固定工程とを行う点にある。
【0008】
本構成によれば、仮固定工程では、スラブ部材の基端側部位を支持部材に載置させた状態で、スラブ部材側の立ち上がり部と構造物側の延設部材とを連結材にて連結するので、スラブ部材の先端側部位を支持するための仮設支保工を配設しなくても、連結材による引っ張り力を利用して、スラブ部材を構造物に適切に仮固定することができる。よって、仮設支保工を省略することができ、作業動線を適切に確保することができ、コストの低減及び施工性の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記連結材は、その長さを調整自在に構成されている点にある。
【0010】
本構成によれば、連結材の長さを調整することで、スラブ部材の先端側部位の位置(高さ)を調整することができ、スラブ部材の先端側部位の位置(高さ)を所望位置(所望高さ)に位置調整することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、構造物の内方側には、前記支持部材と並ぶ状態で配設された梁と、前記支持部材と前記梁とに亘って剛接合された補強部材とが備えられ、
その補強部材は、前記延設部材として備えられ、前記連結材が接続されている点にある。
【0012】
支持部材には、スラブ部材が載置されるので、スラブ部材の荷重等によって支持部材に対してねじれ(下方側に湾曲すること)が生じることが考えられる。そこで、本構成によれば、支持部材と梁とに亘って剛接合された補強部材を備えている。補強部材は、支持部材に載置されるスラブ部材の荷重作用点の近傍から支持部材に対して直交する方向に延びるので、支持部材に対してねじれが作用するのを防止することができる。しかも、連結材を補強部材に接続するので、スラブ部材を仮固定するための部材として、補強部材を利用することができ、コストの低減及び構成の簡素化を図ることができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記スラブ部材は、前記支持部材の長さ方向に隣接して並ぶ状態で複数備えられ、
前記延設部材は、隣接する前記スラブ部材の境界部分に相当する位置に配設され、隣接する前記スラブ部材の夫々における立ち上がり部に接続された2つの前記連結材が接続されている点にある。
【0014】
本構成によれば、隣接するスラブ部材の夫々における立ち上がり部に接続された2つの連結材の接続対象を、隣接するスラブ部材の境界部分に相当する位置に配設された延設部材としている。これにより、隣接する2つのスラブ部材を、1つの延設部材を用いて仮固定することができ、コストの低減及び構成の簡素化を図ることができ、しかも、延設部材を適切な位置に配設させて、隣接する2つのスラブ部材を安定した姿勢で仮固定することができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記支持部材には、前記スラブ部材の配設予定位置に被係合部材が備えられ、前記スラブ部材の基端側部位には、その前記被係合部材に係合自在な係合部材が備えられ、
前記仮固定工程では、前記支持部材の前記被係合部材に前記スラブ部材の前記係合部材を係合させて、前記スラブ部材の基端側部位を前記支持部材に載置させている点にある。
【0016】
本構成によれば、仮固定工程において、スラブ部材の基端側部位を支持部材に載置させる際に、支持部材の被係合部材にスラブ部材の係合部を係合させるので、支持部材に対するスラブ部材の位置決め作業や載置作業を行い易くなり、施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】跳ね出しスラブを施工した状態での側面図
図2】跳ね出しスラブを施工した状態での平面図
図3】スラブ部材を支持部材に載置させる過程を示す図
図4】スラブ部材を支持部材に載置させた状態での要部の拡大側面図
図5】スラブ部材を支持部材に載置させた状態での要部の拡大平面図
図6】仮固定工程を示す側面図
図7】仮固定工程における連結材による連結状態を示す斜視図
図8】仮固定工程における連結材による連結状態を示す斜視図
図9】本固定工程の途中における連結材と建物との連結箇所を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る跳ね出しスラブの施工方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
この跳ね出しスラブの施工方法は、図1及び図2に示すように、スラブ部材1を建物2(構造物に相当する)から外方側に跳ね出した跳ね出し状態で建物2に固定する施工方法である。
【0019】
スラブ部材1は、例えば、プレキャストコンクリートにて構成されており、図1に示すように、側面視でL字状に形成され、図2に示すように、平面視で横長の矩形状に形成されている。スラブ部材1は、図1に示すように、基端側(図1中右側)から先端側(図1中左側)に延びる跳ね出し部11と、その跳ね出し部11の基端側部位から上方側に延びる立ち上がり部12とが備えられている。スラブ部材1の跳ね出し部11が、建物2の外壁ラインAよりも建物2の外方側に存在しており、庇として機能するように備えられ、スラブ部材1の立ち上がり部12が、その庇としての跳ね出し部11から上方側に延びるパラペットとして機能するように備えられている。跳ね出し部11は、その上面部が先端側ほど下方側に位置する傾斜状に形成されている。立ち上がり部12は、跳ね出し部11の基端側端部において、上方側に延びる起立壁状に形成されている。
【0020】
スラブ部材1には、定着部13(例えば、アンカー筋)が備えられ、現場打ちのコンクリートスラブ3に定着部13を定着させることで、スラブ部材1を建物2に固定している。定着部13は、スラブ部材1の立ち上がり部12において上方側から下方側に延びたのち、建物2の内方側に折り曲げたL字状に形成されている。定着部13は、その一部がスラブ部材1に埋設され、その埋設部位以外の部位がスラブ部材1から突出して建物2の内方側に延びており、スラブ部材1から突出する部位がコンクリートスラブ3に定着されている。
【0021】
建物2の外方側端部には、図1及び図2に示すように、スラブ部材1を支持する支持部材21(例えば、支持小梁)が備えられ、スラブ部材1が支持部材21に載置させる状態で備えられている。スラブ部材1は、図2に示すように、支持部材21の長さ方向に隣接する状態で複数備えられており、支持部材21が、複数のスラブ部材1を支持している。
【0022】
この実施形態では、図1に示すように、スラブ部材1を支持部材21上に直接載置させるのではなく、支持部材21に連結された載置部形成部材上にスラブ部材1の荷重受け部14(例えば、ボルト)を載置させて、スラブ部材1の荷重を支持部材21に作用させている。
【0023】
支持部材21には、載置部形成部材として、リブプレート22及びプレート23が連結されており、スラブ部材1の荷重を直接受ける載置部が、支持部材21の上端部(上フランジ21a)よりも一段上方側に配設されている。
【0024】
リブプレート22は、支持部材21であるH形鋼における上下のフランジ21a,21bに亘る状態で備えられる第1リブプレート22a、上フランジ21aから上方側に延びる第2リブプレート22bが備えられている。プレート23は、上フランジ21aから建物2の外方側に水平方向に延びる第1プレート23a、第2リブプレート22bの上端部同士を連結する状態で水平方向に延びる第2プレート23bが備えられている。
【0025】
このようにして、スラブ部材1の荷重を直接受ける載置部を、支持部材21の上フランジ21aよりも一段上方側に配設した第2プレート23bとしている。また、リブプレート22及びプレート23を配設することで、建物2の内外方向(図1中左右方向)において、建物2の外方側端部よりも内方側に支持部材21を配設している。
【0026】
この実施形態では、載置部形成部材としてのリブプレート22及びプレート23を配設しているが、リブプレート22及びプレート23を配設せずに、スラブ部材1の荷重受け部14を支持部材21の上フランジ21a上に載置させて、スラブ部材1の荷重を支持部材21に直接作用させることもできる。
【0027】
スラブ部材1の荷重受け部14(ボルト)は、図4(A)及び図5に示すように、支持ブラケット15にて支持されている。支持ブラケット15は、その一部がスラブ部材1に埋設されてスラブ部材1に支持されており、スラブ部材1の基端面部(建物2の内方側端面部)から突出する部位に、荷重受け部14が備えられている。荷重受け部14は、ネジの螺合により、支持ブラケット15に対して上下方向での高さ(位置)を調整自在に構成されている。荷重受け部14の上下方向での高さを調整することで、荷重受け部14の下端部を第2プレート23bに当接させて荷重受け部14を第2プレート23bに載置させている。
【0028】
建物2は、図2に示すように、柱4と第1梁(大梁)5とを有する柱梁架構を有している。建物2の内方側には、支持部材21の長手方向に所定スパンの間隔を隔てて柱4が配設され、その柱4同士に亘る状態で第1梁5が備えられている。
【0029】
梁については、図2に示すように、柱4同士に亘る第1梁5だけでなく、第2~5梁6~9等の複数の梁が備えられている。第2梁6(小梁)は、第1梁5と支持部材21との間で支持部材21に接近する側において、第1梁5と平行に並ぶ状態で備えられている。第3梁7(大梁)は、第1梁5と直交する方向に延び、柱4と第2梁6とに亘る状態で備えられている。第4梁8(小梁)は、第1梁5と直交する方向に延び、第2梁6と支持部材21とに亘る状態で備えられている。第5梁9(小梁)は、第1梁5と直交する方向に延び、第1梁5と支持部材21とに亘る状態で備えられている。
【0030】
図2に示すように、隣接するスラブ部材1の境界部分に相当する位置には、支持部材21と直交する方向に延びる延設部材31(小梁)が備えられている。延設部材31は、図1及び図2に示すように、第1梁5と支持部材21とに亘る状態で第1梁5及び支持部材21に対して剛接合(例えば、溶接接合又はボルト接合)されており、支持部材21を補強する補強部材として構成されている。
【0031】
跳ね出しスラブの施工方法としては、スラブ部材1を建物2に仮固定する仮固定工程と、コンクリートの打設によりスラブ部材1を建物2に本固定する本固定工程とを順次行うことで、スラブ部材1を建物2に固定している。以下、仮固定工程及び本固定工程について説明を加える。
【0032】
(仮固定工程)
仮固定工程では、図6に示すように、スラブ部材1の跳ね出し部11における基端側部位を支持部材21に載置させた状態で、スラブ部材1の立ち上がり部12と延設部材31とを連結材41にて連結してスラブ部材1を建物2に仮固定している。
【0033】
図3に示すように、クレーン等の重機によりスラブ部材1を楊重して、支持部材21の配設予定位置にスラブ部材1を移動させて、図6に示すように、スラブ部材1の跳ね出し部11における基端側部位を、リブプレート22及びプレート23を介して、支持部材21に載置させている。上述の如く、この実施形態では、リブプレート22及びプレート23にて載置部形成部材が構成されているので、スラブ部材1の荷重受け部14を第2プレート23b上に載置させることで、支持部材21に対してスラブ部材1を載置させている。ちなみに、図3に示すように、本固定工程にてコンクリートを打設する箇所には、デッキプレート32が配設されているが、図6では、デッキプレート32を省略している。
【0034】
この実施形態では、支持部材21にリブプレート22及びプレート23が連結されて、スラブ部材1の載置部を支持部材21よりも一段上方側に配設しており、図1に示すように、コンクリートスラブ3の下端部(デッキプレート32の配設位置)も支持部材21よりも一段上方側に配設されている。そこで、支持部材21よりも1つ建物2の内方側に配設された第2梁6にも、リブプレート22及びプレート23が連結されて、コンクリートスラブ3の下端部(デッキプレート32の配設位置)も第2梁6よりも一段上方側に配設されている。
【0035】
支持部材21には、図3に示すように、スラブ部材1の配設予定位置に左右一対の被係合部材33が備えられ、一方、スラブ部材1の跳ね出し部11における基端側部位には、左右一対の被係合部材33の夫々に係合自在な左右一対の係合部材34が備えられている。そこで、仮固定工程では、図4(B)及び図5に示すように、支持部材21の被係合部材33にスラブ部材1の係合部材34を係合させて、スラブ部材1の跳ね出し部11における基端側部位を支持部材21に載置させている。これにより、被係合部材33と係合部材34との係合により、支持部材21の配設予定位置に対して、支持部材21の長さ方向及び建物2の内外方向でのスラブ部材1の位置調整を行っている。支持部材21に対して上方側からスラブ部材1を下方側に移動させることで、被係合部材33と係合部材34との係合が行われる。
【0036】
被係合部材33は、図4(B)及び図5に示すように、平面視(図5参照)において、2つのL字状の起立壁部が備えられ、その2つの起立壁部が間隔を隔てて配設されている。図4及び図5に示すように、建物2の内外方向(図4左右方向、図5上下方向)において、第2プレート23bとスラブ部材1との間に隙間が設けられており、その隙間を塞ぐプレート35が備えられている。
【0037】
係合部材34は、図4(B)及び図5に示すように、第1係合部材34aと支持部材34bと第2係合部材34cとが備えられている。第1係合部材34aは、側面視でL字状の板状体にて構成されており、被係合部材33における建物2の内方側部位に当接自在に備えられている。第2係合部材34cは、板状体にて構成されており、被係合部材33における建物2の外方側部位に当接自在に備えられている。係合部材34は、支持部材34bが被係合部材33における2つの起立壁部の間に位置して、建物2の内外方向(図4左右方向、図5上下方向)において、第1係合部材34aと第2係合部材34cとで被係合部材33を挟み込む状態で、被係合部材33に係合している。支持部材34bは、建物2の内外方向に延びる棒状体にて構成されており、第1係合部材34a及び第2係合部材34cを貫通する状態で支持している。支持部材34bにおいて建物2の外方側部位がスラブ部材1に埋設されてスラブ部材1に支持されており、スラブ部材1から建物2の内方側に突出する部位に、第1係合部材34a及び第2係合部材34cが備えられている。
【0038】
スラブ部材1を支持部材21に載置させるに当たり、支持部材21の配設予定位置に対して、支持部材21の長さ方向及び建物2の内外方向で位置調整するだけでなく、スラブ部材1の姿勢調整、及び、スラブ部材1の上下方向(高さ)の位置調整も行っている。
【0039】
支持部材21側には、図1及び図4(A)に示すように、スラブ部材1の基端面部(建物2の内方側端面部)に当接自在な当て付け部材36(ボルト)が備えられている。そこで、その当て付け部材36をスラブ部材1の基端面部に当て付けることで、スラブ部材1の姿勢調整(傾き調整)を行っている。当て付け部材36をスラブ部材1の基端面部に当て付けることで、跳ね出し部11が水平方向に延び且つ立ち上がり部12が上下方向に延びる適切な設置姿勢にスラブ部材1を姿勢調整することができる。
【0040】
当て付け部材36は、第2リブプレート22bに連結されており、水平方向(建物2の内外方向)に延びる姿勢にて備えられている。スラブ部材1には、当て付け部材36を当て付ける部位に、側面視でL字状の被当て付けプレート37が埋設されている。
【0041】
スラブ部材1の上下方向(高さ)での位置調整については、図4(A)に示すように、スラブ部材1の荷重受け部14が、ネジの螺合により、支持ブラケット15に対して上下方向での高さ(位置)を調整自在に構成されている。そこで、スラブ部材1の荷重受け部14を第2プレート23b上に載置させる際に、荷重受け部14の上下方向での高さを調整することで、上下方向(高さ)でのスラブ部材1の位置調整を行っている。
【0042】
このようにして、図6に示すように、支持部材21の配設予定位置に対して、支持部材21の長さ方向、建物2の内外方向及び上下方向(高さ)での位置調整を行い、更に、姿勢の調整も行った状態で、スラブ部材1を支持部材21に載置させると、連結材41にてスラブ部材1の立ち上がり部12と延設部材31とを連結している。
【0043】
延設部材31の上部には、建物側接続部42(金物)が備えられ、スラブ部材1の立ち上がり部12には、スラブ部材側接続部43(金物)が備えられている。連結材41は、例えば、チェーンブロック等から構成され、建物側接続部42とスラブ部材側接続部43とに亘って緊張状態(引張状態)で連結されている。連結材41は、その長さを調整自在に構成されている。これにより、連結材41の長さを調整することで、スラブ部材1の先端側部位の位置(高さ)を調整することができ、スラブ部材の先端側部位の位置(高さ)を所望位置(所望高さ)に調整することができる。ちなみに、図7では、連結材41の途中部位を簡略化して図示している。
【0044】
上述の如く、建物側接続部42が備えられる延設部材31は、図2及び図7に示すように、隣接するスラブ部材1の境界部分に相当する位置に配設されている。そこで、図7に示すように、隣接するスラブ部材1の夫々における立ち上がり部12に接続された2つの連結材41が1つの延設部材31に接続されている。隣接するスラブ部材1の夫々における立ち上がり部12には、スラブ部材側接続部43が備えられ、2つのスラブ部材側接続部43の夫々には、連結材41が連結されている。2つの連結材41の夫々は、延設部材31に備えられた1つの建物側接続部42に連結されている。隣接するスラブ部材1の立ち上がり部12に亘る隣接用連結部44が備えられ、この隣接用連結部44にて隣接するスラブ部材1が連結されている。ちなみに、図7に示すように、本固定工程にてコンクリートを打設する箇所には、デッキプレート32が配設されている。
【0045】
(本固定工程)
本固定工程では、図1に示すように、コンクリートの打設により仮固定されたスラブ部材1と建物2とを接合する状態で、コンクリートスラブ3を構築している。
【0046】
図8に示すように、仮固定工程を行うことで、連結材41にてスラブ部材1の立ち上がり部12と延設部材31とが連結されているので、本固定工程では、この連結状態を維持したまま、コンクリートを打設している。そこで、鉄筋51を配筋した後、延設部材31の建物側接続部42の上部に相当する箇所に詰め物52を充填して、コンクリートを打設している。これにより、連結材41にてスラブ部材1の立ち上がり部12と延設部材31とが連結された連結状態を維持したまま、コンクリートを打設して、コンクリートスラブ3を構築することができる。図9に示すように、延設部材31の建物側接続部42の上部に相当する箇所には、コンクリートが存在しない開放空間53が形成されることになる。よって、コンクリートの硬化後に、開放空間53を通して建物側接続部42から連結材41を取り外し、開放空間53に対してコンクリート等をあと施工により充填している。ちなみに、図8及び図9では、連結材41の途中部位を簡略化して図示している。
【0047】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)上記実施形態では、延設部材31が、第1梁5と支持部材21とに剛接合されて、支持部材21を補強する補強部材を兼用しているが、延設部材31とは別に、第1梁5と支持部材21とに剛接合された補強部材を備えることもできる。
【0049】
(2)上記実施形態では、隣接するスラブ部材1の夫々における立ち上がり部12に接続された2つの連結材41を1つの延設部材31に連結しているが、スラブ部材1における立ち上がり部12に接続された1つの連結材41を1つの延設部材31に連結する等、1つの延設部材31に対していくつの連結材41を連結するかは適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 スラブ部材
2 建物(構造物)
5 第1梁(大梁)
12 立ち上がり部
21 支持部材
31 延設部材(補強部材)
33 被係合部材
34 係合部材
41 連結材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9