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特許7478021制御装置、制御方法、制御システム、および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、制御システム、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/32 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B66C13/32 E
B66C13/32 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020079951
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172514
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平林 照司
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼村 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 康樹
(72)【発明者】
【氏名】安永 雅典
(72)【発明者】
【氏名】川端 馨
(72)【発明者】
【氏名】小貫 由樹雄
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-107035(JP,A)
【文献】特開平08-133670(JP,A)
【文献】特開昭63-225096(JP,A)
【文献】特開昭60-202086(JP,A)
【文献】特開平07-323991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットにより堆積物を掴んで運搬するクレーンの制御装置であって、
上記堆積物を掴んだ上記バケットの巻き上げを制御する昇降制御部と、
上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量と所定の上限値との比較結果に基づき、上記昇降制御部が上記バケットを所定の高さまで巻き上げるまでの期間内に、上記バケットの巻き上げと並行して、上記バケットの開度を一時的に上げる制御を含む上記バケットの開閉制御を行い、上記堆積物が上記バケットに掴まれた状態で上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量を漸減させて上記上限値以下とする開閉制御部と、を備え
上記上限値は、上記バケットの掴み重量の上限値である、制御装置。
【請求項2】
上記開閉制御部は、上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量が中間目標重量以下となるまで上記開閉制御を行う処理を、上記中間目標重量を段階的に引き下げながら複数回行った上で、上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量を上記上限値以下とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
上記開閉制御部は、設定された上記上限値に1より大きい所定の係数を乗じた値を上記中間目標重量とし、該中間目標重量の算出に使用する上記所定の係数の値を段階的に引き下げることにより上記中間目標重量を段階的に引き下げる、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
上記所定の係数を乗じて算出した上記中間目標重量以下となるまで行った上記開閉制御の制御結果に基づいて当該所定の係数を更新する係数更新部を備える、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
バケットにより堆積物を掴んで運搬するクレーンの制御装置による制御方法であって、
上記バケットで上記堆積物を掴んだ後、当該バケットを所定の高さまで巻き上げるまでの期間内に、
上記バケットの巻き上げを開始する巻上開始ステップと、
上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量と所定の上限値との比較結果に基づき、上記バケットの巻き上げと並行して、上記バケットの開度を一時的に上げる制御を含む上記バケットの開閉制御を行い、上記堆積物が上記バケットに掴まれた状態で上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量を漸減させて上記上限値以下とする重量調整ステップと、を実行し、
上記上限値は、上記バケットの掴み重量の上限値である、制御方法。
【請求項6】
請求項1から4の何れか1項に記載の制御装置と、
上記制御装置の制御に従って動作するクレーンと、を含むクレーンの制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記昇降制御部および上記開閉制御部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットにより堆積物を掴んで運搬するクレーンの制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ごみ焼却設備等の設備においては、クレーンを用いてごみの運搬を行っている。そして、このようなクレーンを自動制御するための技術の開発も従来から進められている。例えば、下記の特許文献1には、クレーンのバケットから荷を排出する際に、バケットの微開動作と微閉動作を繰り返す制御を行い、これにより、荷の落下に伴う衝撃を緩和する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-107035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ごみ焼却設備等の設備においては、クレーンのバケットでごみピット内に堆積されたごみを掴み、ホッパーに投入して焼却炉に送り込む作業を繰り返し行っている。この作業の際に、大量のごみを一度にホッパーに投入してしまうと、ホッパーでブリッジが発生するなどしてごみの送り込みに支障が生じる場合がある。
【0005】
このような問題の発生を回避するために、例えば特許文献1の技術を適用し、ホッパーにごみを少量ずつ落下させることも考えられるが、この場合、ごみの投入完了までの所要時間(サイクルタイム)が長くなるという問題がある。またこれは、ごみの運搬に限られず、クレーンのバケットで堆積物を運搬する際に共通して生じる問題点である。
【0006】
本発明の一態様は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クレーンによる堆積物の運搬におけるサイクルタイムの短縮を実現することができる制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御装置は、バケットにより堆積物を掴んで運搬するクレーンの制御装置であって、上記堆積物を掴んだ上記バケットの巻き上げを制御する昇降制御部と、上記昇降制御部が上記バケットを所定の高さまで巻き上げるまでの期間内に、上記バケットの巻き上げと並行して、上記バケットの開閉制御を行い、上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量を所定の上限値以下とする開閉制御部と、を備える。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、バケットにより堆積物を掴んで運搬するクレーンの制御装置による制御方法であって、上記バケットで上記堆積物を掴んだ後、当該バケットを所定の高さまで巻き上げるまでの期間内に、上記バケットの巻き上げを開始する巻上開始ステップと、上記バケットの巻き上げと並行して、上記バケットの開閉制御を行い、上記バケットが掴んでいる上記堆積物の重量を所定の上限値以下とする重量調整ステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、クレーンによる堆積物の運搬におけるサイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】上記制御装置を含む制御システムの概要を示す図である。
図3】上記制御装置が、バケットにより掴んだごみの重量を調整する処理(制御方法)の一例を示すフローチャートである。
図4】上記制御装置が実行する係数更新処理の一例を示すフローチャートである。
図5】上記制御装置による重量調整のサイクルタイムを比較例と比較する実験の結果を示す図である。
図6】重量上限値を1.5トンおよび1.4トンとして上記制御装置による重量調整を行った実験の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔システム概要〕
本発明の一実施形態に係る制御システム100の概要を図2に基づいて説明する。図2は、制御システム100の概要を示す図である。制御システム100には、クレーンの動作制御を行う制御装置1と、制御装置1による動作制御の対象となるクレーン93が含まれる。また、図2には、クレーン93を備えたごみ焼却設備の概要についても併せて示している。
【0012】
図2に示すように、ごみ焼却設備は、収集車Pが搬入するごみを一時的に貯留するごみピット91とごみの焼却炉92とを含む。ごみピット91と焼却炉92はホッパーで接続されており、ごみピット91内のごみは、ホッパーを通って焼却炉92に送り込まれ、焼却される。
【0013】
ごみピット91の底部はごみの貯留部となっており、収集車Pは、搬入用扉から貯留部にごみを落とし込み、このごみが貯留部に貯留される(図示のごみG)。また、ごみピット91の天井部分にはクレーン93が設けられている。このクレーン93は、ガーダ931、横行台車932、ワイヤー933、およびバケット934を備えている。
【0014】
ガーダ931は、ごみピット91の建屋の対向する壁面にそれぞれ設けられたレール(同図の奥行き方向に延在)間を架け渡すように配置されており、このレールに沿って同図の奥行き方向に移動させることができるようになっている。また、横行台車932は、ガーダ931上に設けられており、ガーダ931上を同図の左右方向(ガーダ931の移動方向と直交する方向)に移動させることができるようになっている。この横行台車932には、巻取機(例えばウインチ)が載置されており、巻取機から延びるワイヤー933の先端にはごみGを掴むバケット934が設けられている。このバケット934は開閉動作を行うことができる。
【0015】
このように、ガーダ931は同図の奥行き方向に移動させることができ、横行台車932は同図の左右方向に移動させることができるから、これらの移動の組合せにより、バケット934を貯留部内の任意の位置に移動させることができる。また、巻取機からワイヤー933を伸ばし、バケット934を降下させて、貯留部内のごみGをバケット934で掴み取ることができる。また、バケット934とワイヤー933との接続部には、図示しない重量計が設けられており、この重量計によりバケット934が掴んでいるごみの重量を計測することができるようになっている。そして、掴み取ったごみGは、ガーダ931、横行台車932、バケット934、および巻取機の動作を制御することにより、貯留部内の別の位置に積み替えたり、ホッパーに投入したりすることができる。
【0016】
このようなクレーン93の動作制御は、貯留部内を監視できるように建屋の側壁部に設けられた操作室94から行うことができる。操作室94には、制御装置1が配置されている。なお、制御装置1の配置は特に限定されない。例えば、ごみ焼却設備の外部の遠隔監視施設等に制御装置1を配置してもよい。
【0017】
以上のように、制御システム100は、制御装置1とその制御に従って動作するクレーン93とを含む。そして、詳細は後述するが、制御装置1は、堆積物(図2の例ではごみG)を掴んだバケット934の巻き上げを制御する。そして、制御装置1は、バケット934を所定の高さまで巻き上げるまでの期間内に、バケット934の巻き上げと並行してバケット934の開閉制御を行い、バケット934が掴んでいる堆積物の重量を所定の上限値以下とする。なお、以下ではバケット934が掴んでいる堆積物の重量を掴み重量と呼ぶ。また、上記所定の上限値を重量上限値と呼ぶ場合がある。
【0018】
上記の構成によれば、巻き上げと並行してバケット934の開閉制御を行うので、バケット934を所定の高さまで巻き上げた時点で、バケット934の掴み重量を所定の上限以下とすることが可能になる。これにより、バケット934を所定の高さまで巻き上げた後にバケット934の掴み重量を調整する場合と比べて、堆積物運搬のサイクルタイムを短縮することができる。
【0019】
なお、以下では、クレーン93で運搬する堆積物が、ごみピット内に堆積されたごみである例を説明する。ただし、運搬対象はバケット934で掴んで移動させることができるものであり、バケット934の開閉制御によって掴み重量を調整できるようなものであればよく、ごみに限られない。例えば、運搬対象は、ごみ等を焼却することにより生じた灰や焼却残差、砂礫、あるいは各種製造原料等であってもよい。
【0020】
〔制御装置の構成〕
制御装置1の構成を図1に基づいて説明する。図1は、制御装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、制御装置1は、制御装置1の各部を統括して制御する制御部10と、制御装置1が使用する各種情報を記憶する記憶部20と、ユーザの指示入力を受け付ける入力部30と、制御部10が各種情報を出力するための出力部40とを備える。また、制御部10には、クレーン制御部101、移動制御部102、昇降制御部103、開閉制御部104、中間目標重量算出部105、および係数更新部106が含まれている。
【0021】
クレーン制御部101は、クレーン93の動作を制御する。具体的には、クレーン制御部101は、クレーン93によるごみの掴み位置と、掴んだごみの投下位置とを決定する。そして、クレーン制御部101は、移動制御部102、昇降制御部103、および開閉制御部104を制御することにより、クレーン93に上記掴み位置でごみを掴む動作を行わせ、上記投下位置でごみを投下させる。ごみの掴み位置と投下位置の決定方法は特に限定されず、例えばごみピット内の各位置におけるごみの撹拌状態や堆積高さ等に基づいて決定してもよいし、予め設定されたスケジュールに従って決定してもよい。
【0022】
移動制御部102は、クレーン制御部101の制御に従って、ガーダ931と横行台車932を移動させ、バケット934をごみ掴み位置または投下位置の直上に移動させる。
【0023】
昇降制御部103は、クレーン制御部101の制御に従ってバケット934の巻き上げおよび巻き下ろしを制御し、バケット934を昇降させる。また、昇降制御部103は、バケット934を昇降させる際の昇降速度も制御することができる。本実施形態では、昇降制御部103は、6段階(高速巻き上げ、微速巻き上げ、ニュートラル、微速巻き下げ、中速巻き下げ、高速巻き下げ)でバケット934を昇降させる例を説明する。なお、巻き上げ速度をニュートラルとした場合、バケット934は静止状態となる。無論、昇降速度は5段階以下あるいは7段階以上で切り替えられるようにしてもよいし、段階的ではなく連続的に昇降速度を切り替えられるようにしてもよい。
【0024】
開閉制御部104は、クレーン制御部101の制御に従って、バケット934の開度を変更する。具体的には、開閉制御部104は、昇降制御部がバケット934を所定の高さまで巻き上げるまでの期間内に、バケット934の巻き上げと並行して、バケット934の開閉制御を行い、掴み重量を所定の上限値(重量上限値)以下とする。
【0025】
なお、重量上限値をどのような値に設定しておくかは特に限定されないが、ホッパーでブリッジ等が生じにくい程度で、かつ、できるだけ大きい値に設定しておくことが好ましい。また、バケットのサイズおよびホッパーのサイズはごみ焼却設備によって異なることも多いため、ごみ焼却設備ごとに重量上限値を設定してもよい。この場合、重量上限値を仮設定して掴み重量を調整し、ホッパーへの投入を行ってブリッジ等の発生の有無を確認するという作業を、重量上限値の仮設定を変更しながら繰り返し行うことによって、妥当な重量上限値を特定してもよい。なお、掴み重量を仮設定した重量上限値以下とする重量調整は制御装置1の制御で行ってもよいし、人が行ってもよい。
【0026】
また、所定の高さは、移動制御部102がバケット934を水平移動させる際の高さとして予め設定されている。この所定の高さは、水平移動時にバケット934がごみピット内に堆積しているごみ等の障害物に衝突しない程度の高さに設定しておけばよい。
【0027】
本実施形態では、開閉制御部104は、クレーン93に正の値の開閉指令を送信することによりバケット934を開状態とし、負の値の開閉指令を送信することによりバケット934を閉状態とする。また、クレーン93への開閉指令の値をニュートラル(0)にすることにより、バケット934の開閉状態を現在の状態に維持する。以下では、バケット934を開状態とする指令を開指令、閉状態とする指令を閉指令、ニュートラル状態とする指令をニュートラル指令と呼ぶ。
【0028】
掴み重量を減らすための開閉制御は、掴み重量を漸減させることができるようなものであればよく、その内容は特に限定されない。例えば、閉指令が送信されている状態であれば、ニュートラル指令、開指令、ニュートラル指令、および閉指令をこの順序で順次送信する制御を上記開閉制御としてもよい。この開閉制御をおこなうことにより、バケット934を一時的に開いた状態として掴み重量を減らすことができる。また、開指令の送信期間を調整することにより、掴み重量の減少幅を調整することができる。
【0029】
また、例えば、開閉制御部104は、ニュートラル状態から開指令を複数回連続して送信した後、ニュートラル指令と閉指令を順次送信してもよい。また、開閉制御部104は、バケット934を閉じる際にも、閉指令を複数回連続して送信してもよい。
【0030】
また、詳細は後述するが、開閉制御部104は、掴み重量が中間目標重量以下となるまで開閉制御を行う処理を、中間目標重量を段階的に引き下げながら複数回行った上で、掴み重量を上限値以下とする。この構成によれば、掴み重量を段階的に減らして、最終的に上限値以下とすることができる。これにより、重量調整時に掴み重量を減らしすぎてしまう可能性を低減して、安定した量のごみを運搬することが可能になる。
【0031】
本実施形態では、第1中間目標重量と第2中間目標重量という2つの異なる中間目標重量を設定する例を説明する。なお、第1中間目標重量の方が第2中間目標重量よりも大きいものとする。つまり、開閉制御部104は、1段階目の重量調整制御では、掴み重量を第1中間目標重量以下とする。また、開閉制御部104は、2段階目の重量調整制御では、掴み重量を第2中間目標重量以下とする。そして、開閉制御部104は、3段階目の重量調整制御では、掴み重量を上限値以下とする。なお、3段階の重量調整における途中段階で掴み重量が上限値以下となった場合、以降の重量調整は行わない。また、重量調整を何段階で行うかは任意であり、4段階以上で行ってもよいし、2段階または1段階で行ってもよい。
【0032】
中間目標重量算出部105は、上記中間目標重量を算出する。具体的には、中間目標重量算出部105は、予め設定された掴み重量の上限値に1より大きい所定の係数を乗じて中間目標重量を算出する。
【0033】
また、3段階以上の重量調整を行う場合、中間目標重量算出部105は、大きさの異なる複数の係数を用いて複数の中間目標重量を算出する。そして、大きい係数を乗じて算出された中間目標重量から順に開閉制御に使用される。これにより、開閉制御部104は、中間目標重量の算出に使用する上記係数の値を段階的に引き下げることにより中間目標重量を段階的に引き下げながら、段階的に重量調整を行うことになる。
【0034】
この構成によれば、設定された重量上限値に所定の係数を乗じた値を中間目標重量とするので、制御装置1のユーザは、所望の重量上限値を設定するだけでよく、複数段階の中間目標重量は自ら設定する必要がない。したがって、上記の構成によれば、ユーザの手間を省きつつ、設定された重量上限値に応じた適切な中間目標重量に基づいてクレーン93の制御を行うことができる。
【0035】
2つの中間目標重量を算出する場合、中間目標重量算出部105は、1より大きい所定の係数を重量上限値に乗じて第1中間目標重量を算出する。以下、第1中間目標重量の算出に用いる上記係数を係数K1と呼ぶ。また、所定の係数K1を重量上限値に乗じて第1中間目標重量を算出する1より大きく係数K1より小さい所定の係数を重量上限値に乗じて第2中間目標重量を算出する。以下、第2中間目標重量の算出に用いる上記係数を係数K2と呼ぶ。
【0036】
例えば、係数K1を1.2、K2を1.1とした場合、ユーザが重量上限値を1トンに設定したときには第1中間目標重量が1.2トン、第2中間重量が1.1トンと算出される。また、この場合に、ユーザが重量上限値を1.5トンに設定すると、第1中間目標重量が1.8トン、第2中間重量が1.65トンと算出される。
【0037】
係数更新部106は、中間目標重量算出部105が算出した中間目標重量以下となるまで開閉制御部104が繰り返した開閉制御の制御結果に基づいて上述の所定の係数を更新する。係数の更新方法の詳細は後述する。
【0038】
〔処理の流れ(重量調整処理)〕
図3は、制御装置1が、バケット934により掴んだごみの重量を調整する処理(制御方法)の一例を示すフローチャートである。図3の処理は、例えば、クレーン93によりごみをホッパーに投入する際に実行される。なお、図3の処理が開始される前提として、ごみの掴み位置にバケットが開状態で着床しているとする。また、以下の説明における各種指令の送信先は何れもクレーン93である。
【0039】
S1では、開閉制御部104が、バケット934の閉指令を送信する。この閉指令によりバケット934は閉状態となり、ごみがバケット934に掴まれた状態となる。
【0040】
S2(巻上開始ステップ)では、昇降制御部103がバケット934の微速巻き上げ指令を送信する。これによりバケット934は堆積しているごみの表面から少し浮いた状態となり、掴み重量が計測可能になる。
【0041】
S3では、クレーン制御部101が、計測された掴み重量が、予め設定された重量上限値に係数K1を乗じた値以下となっているか否かを判定する。なお、重量上限値に係数K1を乗じた値は、上述した第1中間目標重量であり、S3の処理が行われるまでに中間目標重量算出部105が予め算出しておく。ここでYESと判定された場合にはS5に進み、NOと判定された場合にはS4に進む。
【0042】
S4(重量調整ステップ)では、クレーン制御部101は、開閉制御部104に重量調整制御を行わせ、その後、処理はS3に戻る。つまり、S3およびS4の処理は、S3でYESと判定されるまで繰り返し行われる。上述のように、重量調整制御は、掴み重量を漸減させることができるような制御であればよい。
【0043】
S5では、クレーン制御部101は、掴み重量が、予め設定された重量上限値に係数K2を乗じた値以下となっているか否かを判定する。ここでYESと判定された場合にはS7に進み、NOと判定された場合にはS6に進む。なお、重量上限値に係数K2を乗じた値は、上述した第2中間目標重量であり、中間目標重量算出部105がS5の処理が行われるまでに予め算出しておく。
【0044】
S6(重量調整ステップ)では、クレーン制御部101は、開閉制御部104に重量調整制御を行わせ、その後、処理はS5に戻る。つまり、S5およびS6は、S3およびS4と同様に、S5でYESと判定されるまで繰り返し行われる。
【0045】
S6の重量調整制御もS4と同様に掴み重量を漸減させることができるように、バケット934の開閉制御を含むものであればよい。S6の処理はS4と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、S4では微速巻き上げを一時停止した状態で開閉制御を行い、S6では微速巻き上げ中に開閉制御を行ってもよい。
【0046】
S7では、クレーン制御部101は、開閉制御部104に指示してバケット934の閉指令を送信させる。そして、S8では、クレーン制御部101は、バケット934が完全に閉じているか否かを判定する。S8でYESと判定された場合にはS9の処理に進み、S8でNOと判定された場合にはS7の処理に戻る。これらの処理により、意図せずバケット934からごみが落ちてしまう可能性を低減することができる。
【0047】
なお、バケット934が完全に閉じているか否かの判定方法は任意である。例えば、バケット934の開度を測定するセンサを設けておけば、クレーン制御部101は、その出力値からバケット934が完全に閉じているか否か判定することができる。
【0048】
S9では、クレーン制御部101は、昇降制御部103に指示してバケット934を高速で所定の高さまで巻き上げさせて、所定の高さまで巻き上がった時点で巻き上げを停止させる。この制御は、一般に「地切り」と呼ばれる状態、すなわちバケット934により掴まれたごみの塊が、堆積しているごみ層から切り離されて、バケット934の高速での巻き上げが可能になった状態で行われる制御である。
【0049】
S10では、クレーン制御部101は、掴み重量が、予め設定された重量上限値以下となっているか否かを判定する。ここでYESと判定された場合にはS12に進み、NOと判定された場合にはS11に進む。
【0050】
S11では、クレーン制御部101は、開閉制御部104に重量調整制御を行わせ、その後、処理はS10に戻る。つまり、S11およびS12もS3およびS4と同様に、S10でYESと判定されるまで繰り返し行われる。
【0051】
S11の重量調整制御もS4およびS6と同様に掴み重量を漸減させることができるように、バケット934の開閉制御を含むものであればよい。ただし、S11の段階ではバケット934は既に所定の高さまで巻き上げられているので、ここでは更なる巻き上げは行わず、バケット934の開閉制御のみで掴み重量を調整する。
【0052】
S12では、クレーン制御部101は、掴み重量が、予め設定された重量下限値以上となっているか否かを判定する。ここでYESと判定された場合には掴み完了となり、NOと判定された場合には掴み失敗となる。
【0053】
掴み完了となった場合、クレーン制御部101は、移動制御部102に指示してバケット934をホッパーの直上に移動させる。そして、クレーン制御部101は、開閉制御部104に指示してバケット934の開指令を送信させる。これにより、バケット934で掴まれていたごみがホッパー内に投下される。
【0054】
一方、掴み失敗となった場合には、クレーン制御部101は、開閉制御部104に指示してバケット934の開指令を送信させると共に、昇降制御部103にバケット934の下降指令を送信させ、その後S1の処理に戻る。なお、掴み失敗となった場合、クレーン制御部101は、移動制御部102に指示してごみ掴み位置を変更させてもよい。
【0055】
以上のように、制御装置1による制御方法では、S1の処理によりバケット934でごみが掴まれた後、S9でバケット934を所定の高さまで巻き上げるまでの期間内にバケット934の巻き上げを開始する(S2)。さらに、この制御方法では、バケット934の巻き上げと並行して、バケット934の開閉制御を行って、バケット934が掴んでいるごみの重量を所定の上限値以下とする(S4、S6)。
【0056】
これにより、バケット934を所定の高さまで巻き上げた後にバケット934が掴んでいるごみの重量を調整する従来技術と比べて、ごみ運搬のサイクルタイムを短縮することができる。
【0057】
〔地切り判定〕
制御装置1は、地切り状態となったか否かを判定する地切判定部を備えていてもよい。この場合、図3のフローチャートにおけるS2の処理の後に地切判定部が地切り状態となったか否かを判定する。そして、地切判定部が地切り状態となったと判定したことを契機としてS3の処理に進む。
【0058】
地切り状態となることにより掴み重量の計測値が正確なものとなるので、地切り状態となったと判定したことを契機としてS3の処理に進むようにすることにより、S3の処理を正確な掴み重量に基づいて行うことができる。これにより、S3およびそれに続くS4の処理の所要時間を短縮することも可能になる。
【0059】
なお、地切り状態となったか否かを判定する方法は特に限定されない。例えば、制御システム100に含まれる各種センサ(例えば掴み重量を計測する重量センサ)の出力値に基づいて判定することが可能である。また、例えば、制御システム100の外部の機器(例えば各種センサや撮影装置)の出力値に基づいて判定することも可能である。例えば、バケット934の開度等ごみを掴んでいるバケット934を撮影し、その画像を解析することにより地切り状態となったか否かを判定してもよい。この場合、地切り状態となったバケット934の外観を撮影した画像を教師データとして構築した判定モデルを用いてもよい。
【0060】
〔処理の流れ(係数更新処理)〕
係数更新部106が実行する係数更新処理の流れを図4に基づいて説明する。図4は、係数更新処理の一例を示すフローチャートである。なお、係数K1の更新は、係数K1を用いた重量調整の終了後(図3のS3でYESと判定された後)に行われる。また、係数K2の更新は、係数K2を用いた重量調整の終了後(図3のS5でYESと判定された後)に行われる。以下では、係数K1を更新する例を説明するが、係数K2の更新も同様の処理である。
【0061】
S21では、係数更新部106は、係数K1を用いた重量調整の終了直後(図3のS3でYESと判定された直後)の掴み重量を特定する。そして、S22では、係数更新部106は、S21で特定した掴み重量が重量上限値以下であるか否かを判定する。S22でYESと判定された場合にはS23の処理に進み、NOと判定された場合にはS24の処理に進む。
【0062】
S23では、係数更新部106は、係数K1を増加させる調整を行い、係数更新処理は終了する。この後、中間目標重量算出部105は、図3のS3の判定にあたり、上記調整後の係数K1を用いて中間目標重量を算出することになる。
【0063】
S24では、係数更新部106は、係数K1を減少させる調整を行い、係数更新処理は終了する。この後、中間目標重量算出部105は、図3のS3の判定にあたり、上記調整後の係数K1を用いて中間目標重量を算出することになる。
【0064】
以上のように、係数更新部106は、所定の係数(K1/K2)を乗じて算出した中間目標重量(第1中間目標重量/第2中間目標重量)以下となるまで繰り返した開閉制御の制御結果に基づいて当該所定の係数を更新する。
【0065】
開閉制御の制御結果には、その開閉制御に使用した所定の係数の良し悪しが反映されるから、上記の構成によれば、所定の係数をより適切な値に更新することが可能になる。
【0066】
つまり、掴み重量が重量上限値以下となる(S22でYES)ということは、中間目標重量を用いた重量調整においては重量を落とし過ぎたことになる。この場合には、係数の値をより大きな値に更新して、その係数を用いて算出した中間目標重量を用いた次回の重量調整では、掴み重量が重量上限値以下になりにくくする。
【0067】
一方、掴み重量が重量上限値より大きければ(S22でNO)、中間目標重量を用いた重量調整においてはさらに重量を落とす余地があったということになる。この場合には、係数の値をより小さな値に更新して、その係数を用いて算出した中間目標重量を用いた次回の重量調整では、掴み重量を重量上限値により近づけて、以後の重量調整がよりスムーズに進行するようにする。
【0068】
〔係数更新方法の他の例〕
係数更新部106は、重量調整のための開閉制御の制御結果に基づいて係数を更新するものであればよく、更新方法は上述の例に限られない。例えば、係数更新部106は、ベイズ最適化等の最適化手法により係数を更新してもよい。
【0069】
ベイズ最適化により係数を更新する場合、上記係数を制御変数とし、該制御変数と制御結果との関係を示す評価関数を規定しておく。制御結果は、例えば、開閉制御後の掴み重量と重量上限値との差や、中間目標重量以下とするための所要時間等とすればよい。
【0070】
そして、係数更新部106は、ガウス過程回帰により上記評価関数の予測分布を算出し、この予測分布において獲得関数が最大となる制御変数を、制御変数の最適値の候補として探索する。この探索で検出された制御変数が、次回の開閉制御に適用される。また、次回の制御結果が得られると、係数更新部106は、新たに得られた制御結果をこれまでに得られた制御結果に追加して、ガウス過程回帰により上記評価関数の予測分布を更新する。そして、係数更新部106は、更新後の予測分布において獲得関数が最大となる制御変数を、制御変数の最適値の候補として探索する。このような処理を繰り返すことにより、制御変数すなわち係数の最適値を特定することができる。
【0071】
ただし、ごみピット内のごみは一般的に多種多様なものが混在していてその性状が一定しない。このため、開閉制御の制御結果には、真の評価関数から外れた外れ値が含まれる可能性が少なからずある。そして、開閉制御の制御結果に外れ値が含まれていると、係数の最適値が得られるまでの開閉制御の試行回数が嵩んでしまう。
【0072】
このため、ベイズ最適化を適用する場合、外れ値が存在しても安定して評価関数の回帰を行うことができるようにするため、ガウス過程回帰における尤度関数として、ガウス分布の代わりにより外れ値に頑健な分布を適用することが好ましい。これにより、性状が一定しないごみの運搬における開閉制御において、適切な係数を少ない試行回数で特定することが可能になる。なお、尤度関数としては、例えばスチューデントのt分布を用いればよい。
【0073】
〔実施例:比較例とのサイクルタイム比較〕
図5は、制御装置1による重量調整のサイクルタイムを比較例と比較する実験の結果を示す図である。図5には、バケット934の開度および掴み重量の計測値の遷移を示していると共に、クレーン93の横行、走行、巻上、および開閉制御の指令値の遷移を示している。
【0074】
図5に示す実施例および変形例では、巻き上げの指令値が6段階(高速巻き上げ、微速巻き上げ、ニュートラル、微速巻き下げ、中速巻き下げ、高速巻き下げ)である。なお、巻き上げは正の値、ニュートラルは0、巻き下げは負の値で示している。また、開閉制御の指令値は3段階(開:正の値、ニュートラル:0、閉:負の値)である。
【0075】
比較例では、まず、期間p1において、クレーン93の横行および走行制御を行い、バケット934をごみ掴み位置まで移動させた。そして、その位置でごみのほぐし作業を行った。ほぐし作業とは、掴んだごみを一度持ち上げてその場で投下する作業であり、ホッパーに投入するごみの均質化等を目的としている。なお、ホッパーへのごみの投入を緊急で行う必要がある場合や、投入するごみが既に均質化されているような場合にはほぐし作業は省略される。
【0076】
次に、期間p2では、ほぐし作業を行ったごみ掴み位置でバケット934を降下させて再度ごみを掴み、バケット934を微速で巻き上げた。そして、期間p3では、バケット934の閉指令とニュートラル指令とを所定時間ずつ繰り返す制御を行った。そして、バケット934が完全に閉じた状態となったことが確認できたタイミングでバケット934を高速で所定の高さまで巻き上げた(図中白抜き矢印で示す制御)。
【0077】
その後、期間p4では、掴み重量が重量上限値以下となるまで、掴み重量を確認しながらバケット934の開指令と閉指令を繰り返した。図5の例では、9回の繰り返しにより掴み重量を重量上限値以下とすることができた。この後、バケット934をホッパーまで移動させた。バケット934がホッパーの直上に到達するまでの所要時間(サイクルタイム)は約227秒であった。
【0078】
制御装置1による重量調整においても、期間P1では上述の比較例と同様のほぐし作業を行った。そして、続く期間P2においても、上述の比較例と同様に、ほぐし作業を行ったごみ掴み位置にバケット934を降下させてごみを掴み、バケット934を微速で巻き上げた。ここまでの制御は比較例と同じである。
【0079】
期間P3以降の制御は、比較例とは異なっている。具体的には、期間P3では、巻き上げを停止させると共に、バケット934の開指令を送信し、所定時間後に微速で巻き上げを再開させると共に、バケット934の閉指令を送信した。このような開閉制御により、開指令の送信後に、バケット934の開度が上がり、これに伴って掴み重量が低下した。図5の例では、このような開閉制御を2回繰り返すことにより、掴み重量が第1中間目標重量以下となったので、1段階目の重量調整を終了した。このように巻き上げと開閉制御を交互に行う構成も、巻き上げと開閉制御を並行して行う例の1つである。
【0080】
なお、図5の例では、1回目の開閉制御よりも2回目の開閉制御の方が、開指令の送信期間が短い。このように、複数回の開閉制御を行う場合、各開閉制御の内容を異ならせてもよい。例えば、図5の例のように、回を増すごとに開指令の送信期間を短くすることにより、掴み重量の減少量を少なくして、掴み重量を減らし過ぎが発生しにくいようにしてもよい。
【0081】
1段階目の重量調整が終了した後も、微速での巻き上げは継続した。そして、掴み重量を第2中間目標重量以下とするための2段階目の重量調整を行った。図5の例では、微速での巻き上げを継続した状態でバケット934の開指令と閉指令を順次送信し、これにより一時的にバケット934の開度を上げて、掴み重量を減少させた。そして、図5の例では、この開閉制御により掴み重量が第2中間目標重量以下となったので、2段階目の重量調整を終了した。このように巻き上げ中に開閉制御を行う構成も、巻き上げと開閉制御を並行して行う例の1つである。
【0082】
その後、バケット934を完全に閉じた状態にするために、バケット934の閉指令とニュートラル指令とを所定時間ずつ繰り返す制御を行った。そして、バケット934が完全に閉じた状態となったことが確認できたタイミングで、バケット934の巻き上げ速度を高速に切り替えて高速巻き上げを行った(図中白抜き矢印で示す制御)。
【0083】
図5の例では、バケット934を高速で所定の高さまで巻き上げた時点で、掴み重量が上限値以下となっていたため、その後は重量調整を行わず、バケット934をホッパーまで移動させた。バケット934がホッパーの直上に到達するまでの所要時間(サイクルタイム)は約148秒であった。このように、制御装置1による重量調整では、比較例と比べて約35%もサイクルタイムを短縮できた。
【0084】
〔実施例:重量上限値を変更した例〕
図6は、重量上限値を1.5トンおよび1.4トンとして制御装置1による重量調整を行った実験の結果を示す図である。図6には、図5と同様に、バケット934の開度およびバケット934によるごみの掴み重量の計測値の遷移を示していると共に、クレーン93の巻上および開閉制御の指令値の遷移を示している。また、図6では、第1および第2中間目標重量と重量上限値についても示している。
【0085】
重量上限値を1.5トンとした実施例では、バケット934でごみを掴んだ後、微速で巻き上げることにより、ごみの重量が正確に計測できる状態となった後の期間P10において、1段階目の重量調整を行った。より詳細には、期間P10では、バケット934の巻き上げを停止させると共に開指令を送信し、その所定時間後に微速で巻き上げを再開させると共に閉指令を送信する、という制御を2回繰り返した。この1段階目の重量調整により、掴み重量は図6に一点鎖線で示す第1中間目標重量以下となった。
【0086】
期間P11では、2段階目の重量調整を行った。より詳細には、期間P11では、バケット934の微速巻き上げを維持したまま、ニュートラル指令と開指令を順次送信し、その後閉指令を送信した。この2段階目の重量調整により、掴み重量は図6に二点鎖線で示す第2中間目標重量以下となった。
【0087】
その後、バケット934を完全に閉じた状態にするために、ニュートラル指令と閉指令を順次送信する開閉制御を2回繰り返した。そして、バケット934が完全に閉じた状態となったことが確認できたタイミングで、バケット934の巻き上げ速度を高速に切り替えて高速巻き上げを行った(図中白抜き矢印で示す制御)。
【0088】
期間P12には、高速巻き上げを継続して行い、バケット934の高さが所定の高さに達した時点でニュートラル指令を送信してバケット934を停止させた。バケット934が所定の高さに位置している期間P13では、掴み重量を重量上限値以下とするための3段階目の重量調整を行った。より詳細には、期間P13では、開指令とニュートラル指令を順次送信した。この3段階目の重量調整により、掴み重量は重量上限値以下となったので、バケット934を完全に閉じた状態にするために、ニュートラル指令と閉指令を順次送信し、これによりごみを掴み上げる制御を終了した。
【0089】
以上のように、重量上限値を1.5トンとして行った実験では、3段階の重量調整により掴み重量を重量上限値以下とすることができた。特に、高速巻き上げ後の3段階目の重量調整は1回の開閉制御のみで終了しており、図5に示した比較例と比べて高速巻き上げ後の開閉制御の実行回数を大幅に減らし、サイクルタイムも短く抑えることができた。また、3段階の重量調整におけるバケット934の開閉回数の合計も4回に抑えられており、これは比較例における開閉回数(9回)と比べて著しく少ない。この要因としては、重量調整を段階的に行ったことが考えられる。
【0090】
重量上限値を1.4トンとした実施例においても、バケット934でごみを掴んだ後、微速で巻き上げることにより、ごみの重量が正確に計測できる状態となった後の期間P20において、1段階目の重量調整を行った。期間P20では、バケット934の巻き上げを停止させると共に開指令を送信し、その所定時間後に微速で巻き上げを再開させると共に閉指令を送信する、という制御を1回行った。この1段階目の重量調整により、掴み重量は第1中間目標重量以下となった。
【0091】
期間P21では、2段階目の重量調整を行った。より詳細には、期間P21では、バケット934の微速巻き上げを維持したまま、ニュートラル指令と開指令を順次送信し、その後閉指令を送信した。この2段階目の重量調整により、掴み重量は第2中間目標重量以下となった。
【0092】
その後、バケット934を完全に閉じた状態にするために、ニュートラル指令と閉指令を順次送信する開閉制御を2回繰り返した。そして、バケット934が完全に閉じた状態となったことが確認できたタイミングで、バケット934の巻き上げ速度を高速に切り替えて高速巻き上げを行った(図中白抜き矢印で示す制御)。
【0093】
期間P22には、高速巻き上げを継続して行い、バケット934の高さが所定の高さに達した時点でニュートラル指令を送信してバケット934を停止させた。バケット934が所定の高さに位置している期間P23では、掴み重量を重量上限値以下とするための3段階目の重量調整を行った。
【0094】
より詳細には、期間P23では、まずニュートラル状態から開指令とニュートラル指令を順次送信した。そして、この開閉制御では掴み重量は重量上限値以下とならなかったため、閉指令を送信してバケット934を完全に閉じた状態とした上で、ニュートラル指令、開指令、ニュートラル指令、そして閉指令をこの順序で順次送信した。この開閉制御を2回繰り返すことにより、掴み重量は重量上限値以下となったので、バケット934を完全に閉じた状態にするために、ニュートラル指令と閉指令を順次送信し、これによりごみを掴み上げる制御を終了した。
【0095】
以上のように、重量上限値を1.4トンとして行った実験においても、3段階の重量調整により掴み重量を重量上限値以下とすることができた。高速巻き上げ後に行った3段階目の重量調整では、重量上限値を1.5トンとした場合よりも多い3回の開閉制御が必要となったが、図5に示した比較例と比べると開閉制御の実行回数の合計は十分に少なくなっており、サイクルタイムも短く抑えることができた。
【0096】
また、図示していないが、重量上限値を0.8~1.3トンとした実験も行った。これらの実験においても、図5に示した比較例と比べると開閉制御の実行回数の合計は十分に少なくなっており、サイクルタイムも短く抑えることができた。
【0097】
〔変形例〕
上記実施形態で説明した各処理の主体は適宜変更することができる。例えば、図3の処理は制御装置1に実行させ、図4の処理は他の装置に実行させる構成としてもよい。この場合、制御装置1は、他の装置で調整された係数を用いて中間目標重量を算出する。
【0098】
また、上記実施形態では、ごみ焼却設備の天井に設けられたクレーン93の制御を行う例を説明したが、制御装置1の制御対象のクレーンは天井に設けられたものに限られない。例えば、ジブクレーンや橋形クレーンなどの制御に制御装置1を適用することもできる。
【0099】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置1の制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0100】
後者の場合、制御装置1は、各機能を実現するソフトウェアである制御プログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記制御プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記制御プログラムは、該制御プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや電波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記制御プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0101】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1 制御装置
103 昇降制御部
104 開閉制御部
106 係数更新部
93 クレーン
934 バケット

図1
図2
図3
図4
図5
図6