(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】溶接トーチ
(51)【国際特許分類】
B23K 9/29 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
B23K9/29 E
B23K9/29 L
(21)【出願番号】P 2020089168
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】宮内 貴章
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-020028(JP,U)
【文献】実開昭51-025632(JP,U)
【文献】実開昭50-129627(JP,U)
【文献】特開2011-235302(JP,A)
【文献】特開平05-057451(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141768(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112661(US,A1)
【文献】実開昭50-140929(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00、9/007 - 9/013、
9/04、9/14 - 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アークを用いて溶接を行う溶接トーチにおいて、
溶接ワイヤを保持し、一端部から送り出す棒状のチップと、
前記チップの他端部を囲む第1ノズル筒と、
前記第1ノズル筒の軸長方向に、前記チップの前記一端部を覆う位置及び露出させる位置の間を移動する第2ノズル筒とを備え
、
前記第1ノズル筒は前記第2ノズル筒と嵌合し、
前記第1ノズル筒及び前記第2ノズル筒のうち、一方には、溝が凹設されており、他方には、前記溝に沿って摺動する突起が形成されており、
前記溝は、前記第2ノズル筒の移動方向に沿って延びており、両端及び途中に、前記突起の移動を制限する制限部が形成されていることを特徴とする溶接トーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチに関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接は、チップに保持された溶接ワイヤの先端を母材に設けた開先に近接させ、溶接ワイヤと母材との間に電圧を印加し、アークを生じさせて実行される。良好な溶接のためには、チップを開先に十分に近付ける必要がある。また、溶接の品質に悪い影響を与えるスラグ、スパッタ等の生成を防止するためには、チップの周囲をノズル筒で囲い、シールドガスを流して、アークが空気に触れることを防止する必要がある。
【0003】
また、特許文献1の溶接トーチでは、狭い開先を溶接する際、ノズル筒の先端が母材に当たり、チップを開先に近づけることができなくなることを解消すべく、サーボシリンダを有する進退駆動装置を用いてノズル筒を移動可能にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、作業者が手に持って使用する溶接トーチにおいても、狭い開先の溶接の際、ノズル筒の先端が母材に当たり、チップを開先に近づけることができなくなる問題が生じている。しかし、特許文献1のように、進退駆動装置を用いてノズル筒を移動可能にする構成を適用した場合、溶接トーチの重量が重くなり、実質上、手動による溶接の実行が困難であり、製品の製造コストアップを招く。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成にて、チップを覆う位置又は露出させる位置にノズル筒を移動させことができる溶接トーチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る溶接トーチは、アークを用いて溶接を行う溶接トーチにおいて、溶接ワイヤを保持し、一端部から送り出す棒状のチップと、前記チップの他端部を囲む第1ノズル筒と、前記第1ノズル筒の軸長方向に、前記チップの前記一端部を覆う位置及び露出させる位置の間を移動する第2ノズル筒とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、前記第2ノズル筒が、前記第1ノズル筒の軸長方向に、前記チップの前記一端部を覆う位置及び露出させる位置の間を移動できる。よって、狭い開先の溶接の際には、前記第2ノズル筒が母材に当たらないよう移動させ、チップの一端部を開先に接近させることができる。
【0009】
本発明に係る溶接トーチは、前記第1ノズル筒及び前記第2ノズル筒は、径が異なる円筒形状を有し、螺合していることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、前記第1ノズル筒及び前記第2ノズル筒が螺合しているので、前記第2ノズル筒を回転させることによって、前記チップの前記一端部を覆う位置及び露出させる位置の間を、連続的に、移動させることができる。
【0011】
本発明に係る溶接トーチは、前記第2ノズル筒は、前記第1ノズル筒よりも大きい径を有することを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、前記第2ノズル筒が前記第1ノズル筒よりも大きい径を有し、前記第1ノズル筒及び前記第2ノズル筒が螺合している。従って、前記第2ノズル筒が前記チップの前記一端部を覆う位置に位置した場合は、前記第2ノズル筒の内周面に形成されたネジが露出され、前記第2ノズル筒内を流れるシールドガスを螺旋状に案内する。
【0013】
本発明に係る溶接トーチは、前記第1ノズル筒は前記第2ノズル筒と嵌合し、前記第1ノズル筒及び前記第2ノズル筒のうち、一方には、溝が凹設されており、他方には、前記溝に沿って摺動する突起が形成されており、前記溝は、前記第2ノズル筒の移動方向に沿って延びており、両端及び途中に、前記突起の移動を制限する制限部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、前記第1ノズル筒及び前記第2ノズル筒のうち、一方には、前記第2ノズル筒の移動方向に沿って延びる溝が凹設され、他方には前記溝に沿って摺動する突起が形成されており、前記溝は途中に前記突起の移動を制限する制限部が形成されている。よって、前記第2ノズル筒は、段階的に、前記チップの前記一端部を覆う位置及び露出させる位置の間を移動できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構成にて、チップを覆う位置又は露出させる位置にノズル筒を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態1に係る溶接トーチを示す模式図である。
【
図4】第2ノズル筒がチップの一端部を最大露出させる位置にある場合の一例を示す例示図である。
【
図5】実施の形態1の溶接トーチの使用例を示す模式図である。
【
図6】実施の形態2に係る溶接トーチの一部を破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態に係る溶接トーチを、図面に基づいて詳述する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る溶接トーチ3を示す模式図である。溶接トーチ3は母材との間で発生するアークを用いて溶接を行う。
【0019】
溶接トーチ3は、曲がった筒形状を有するトーチボディ2の一端側に設けられており、トーチボディ2の他端側にはハンドル部11が設けられている。トーチボディ2は、溶接電源、溶接ワイヤ及びシールドガスの供給源からハンドル部11まで送られた電力、溶接ワイヤ及びシールドガスを溶接トーチ3に供給する。ハンドル部11はスイッチ10を有しており、スイッチ10は溶接トーチ3への電圧の印加及び遮断を切り替える。
【0020】
ハンドル部11はチューブ13を介して溶接電源、溶接ワイヤ及びシールドガスの供給源に連結されている。チューブ13は、溶接ワイヤを保持する保持管14を有し、溶接ワイヤを溶接トーチ3に供給する。保持管14はハンドル部11を経て、トーチボディ2を通り、溶接トーチ3まで延びる。
【0021】
ハンドル部11にはコイルばね12が装着されており、チューブ13の折り曲げを防止するために、チューブ13の一端側はコイルばね12の内側を通ってハンドル部11に連結されている。
【0022】
図2は、実施の形態1の溶接トーチ3の分解図であり、
図3は、実施の形態1の溶接トーチ3の断面図である。説明の便宜上、
図3においては保持管14を共に示している。
【0023】
溶接トーチ3は、トーチボディ2に接続されたチップボディ7を備えている。チップボディ7は細長い円筒形の部材である。チップボディ7の一端部には、内周にネジが形成された拡径部73が設けられており、チップボディ7は、トーチボディ2の端部に設けられた螺合部21に拡径部73を螺合させて接続されている。チップボディ7は、保持管14が挿入される挿入孔72を内側に有する。
【0024】
チップボディ7の他端部には、チップボディ7を内外に貫通する内外貫通孔71が周方向に例えば等間隔にて形成されている。また、チップボディ7の他端にはチップ8が連結されている。
【0025】
チップ8は軸心を貫通する細径のワイヤ保持孔81を有する丸棒状の部材であり、チップ8の一端部は先端に向けて徐々に縮径している。チップ8の他端部には、外周にネジが形成されており、チップ8は他端部をチップボディ7の他端部に螺合させて同軸接続されている。これによって、ワイヤ保持孔81と挿入孔72とが連通する。
【0026】
チップボディ7の外側には、インシュレータ6とオリフィス9とが外嵌されている。
インシュレータ6は、金属製の内筒と絶縁材料製の外筒とを備える、円筒形の部材である。インシュレータ6は、内外貫通孔71の形成位置と拡径部73との間を覆っている。インシュレータ6の一端部61には雄ネジが形成されており、後述する第1ノズル筒5が連結されている。
【0027】
オリフィス9は絶縁材料製の円筒形の部材であり、内外貫通孔71の形成位置を含むチップボディ7の他端部とチップ8の他端部とを覆っている。オリフィス9とチップボディ7との間には隙間がある。オリフィス9の周壁には、内外に貫通し、前記隙間に連通する連通貫通孔91が形成されている。
【0028】
更に、オリフィス9の外側は第1ノズル筒5によって取り囲まれている。第1ノズル筒5はオリフィス9及びチップ8の他端部を覆うように設けられている。第1ノズル筒5は、金属材料からなる。
【0029】
第1ノズル筒5の一端部は、内周面に、インシュレータ6の一端部61と螺合する雌ネジ52が形成されている。よって、第1ノズル筒5は、一端部がインシュレータ6と螺合する。また、第1ノズル筒5の他端部51は、外周面に、雄ネジ54が形成されている。
【0030】
第1ノズル筒5の他端部51には、第2ノズル筒4が取り付けられている。第2ノズル筒4は内周面に、全長に亘って第1ノズル筒5の雄ネジ54に対応する雌ネジ41が形成されている。即ち、第2ノズル筒4は第1ノズル筒5の他端部51と螺合している。例えば、第2ノズル筒4は金属材料からなる。第1ノズル筒5及び第2ノズル筒4は、同一軸心上に配設されている。
【0031】
以上のような構成を有する実施の形態1の溶接トーチ3では、溶接が実行される際、溶接ワイヤが保持管14を介してチップボディ7まで供給される。斯かる溶接ワイヤは、チップ8のワイヤ保持孔81内を通って、チップ8の先端部からワイヤ保持孔81の開口を介して送り出される。また、チップ8に保持された溶接ワイヤの先端を母材100に設けた開先200に近接させ、溶接ワイヤと母材100との間に電圧を印加し、アークを生じさせる。
【0032】
また、チューブ13を介して供給され、ハンドル部11及びトーチボディ2を経て溶接トーチ3に届けられたシールドガスは、保持管14とチップボディ7の挿入孔72の内周面との間に形成された環状の通路を通って内外貫通孔71からチップボディ7の外側、即ちオリフィス9の内側に流れる。チップボディ7から排出されたシールドガスはオリフィス9の連通貫通孔91を介してオリフィス9の外側、即ち第1ノズル筒5の内側に流れる。第1ノズル筒5の内側に流れ込んだシールドガスは、第1ノズル筒5の内周面に案内され、チップ8の一端側に流れる。ついで、斯かるシールドガスは第2ノズル筒4の内周面に案内され、チップ8の一端側及び母材100に向かって流れる。
【0033】
この際、ハンドル部11のスイッチ10の操作によって、前記溶接電源からチップ8と母材との間に電力が供給される。また、溶接ワイヤがチップ8と接触するので、溶接ワイヤに電力が供給され、溶接ワイヤと母材との間でアークが発生する。発生したアークによってチップ8の一端から送り出される溶接ワイヤが解けて溶接対象の開先200に落ちる。シールドガスは、アークと大気との接触をシールドすることによって、溶接品質の妨げとなるスラグ及びスパッタの生成を防止する。また、オリフィス9はチップボディ7にスパッタが付着することを防止する。
【0034】
更に、実施の形態1の溶接トーチ3は、上述の如く、第2ノズル筒4が第1ノズル筒5の他端部51と螺合している。このような構成を有することから、第2ノズル筒4は軸心回りに回転された場合、第1ノズル筒5の軸長方向(
図3中の矢印方向)に移動できる。これによって、第2ノズル筒4は、チップ8の前記一端部を覆う位置と、前記一端部を露出させる位置との間を移動する。
【0035】
例えば、
図3においては、第2ノズル筒4がチップ8の一端部を完全に覆う位置(以下、第1位置と言う)にある場合を示している。また、
図4は、第2ノズル筒4がチップ8の一端部を最大露出させる位置(以下、第2位置と言う)にある場合の一例を示す例示図である。
図4の場合、第2ノズル筒4の先端は、第1ノズル筒5の先端と面一をなす。第2ノズル筒4は、
図3の矢印方向に、例えば30mm移動可能である。
【0036】
よって、実施の形態1の溶接トーチ3では、簡単な構成で、必要に応じて作業者がチップ8の一端の露出具合、及びシールドガスによるシールド具合を調節することができる。以下、詳しく説明する。
【0037】
図5は、実施の形態1の溶接トーチ3の使用例を示す模式図である。便宜上、
図5には、溶接トーチ3の先端部のみを示す。
図5Aは溶接開始直後を示し、
図5Bは所定時間経過後を示す。
【0038】
図5に示すように、狭くて深い開先の溶接を行う場合、第2ノズル筒4が第1位置にあると(
図3参照)、第2ノズル筒4の先端が母材100と干渉するので、チップ8を開先に近づけることが出来ない。一方、斯かる場合、狭い開先内にはシールドガスが流れ込んで充満するので、溶融ビード300が大気に触れる虞は少なく、高いシールド性は要求されない。よって、作業者は、第2ノズル筒4を周方向に回して前記第2位置(
図4参照)に移動させた状態にて溶接を開始する(
図5A参照)。
【0039】
一方、溶接開始後、所定時間が経過すると、溶融ビード300が盛り上がるにつれて開先200が徐々に広がり、溶融ビード300が大気に触れる面積が広くなるので、高いシールド性が要求される。よって、作業者は第2ノズル筒4を周方向に回して前記第2位置から前記第1位置(
図3参照)に移動させて溶接を続ける(
図5B参照)。
【0040】
第2ノズル筒4と第1ノズル筒5の他端部51とが螺合しており、第2ノズル筒4は回転によって移動させるので、作業者は必要に応じて連続的に第2ノズル筒4の位置を微調整できる。
【0041】
更に、第1ノズル筒5の他端部51の外周面には雄ネジ54が形成され、第2ノズル筒4の内周面に形成された雌ネジ41と螺合する。よって、第2ノズル筒4が前記第1位置にある場合、第2ノズル筒4の内周面に形成された螺旋状の雌ネジ41が露出された状態になる。従って、第2ノズル筒4を通るシールドガスは第2ノズル筒4に案内されて螺旋状の旋回流になる。よって、シールドガスの広がりを抑制し、シールド性を高めることができる。
【0042】
なお、以上においては、第2ノズル筒4の内周面及び第1ノズル筒5の他端部51の外周面にネジが形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第2ノズル筒4の外周面及び第1ノズル筒5の他端部51の内周面にネジが形成された構成であっても良い。
【0043】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る溶接トーチ3は、実施の形態1と同様、チップボディ7、チップ8、インシュレータ6、オリフィス9及び第1ノズル筒5を備えている。これらの構成については、実施の形態1にて既に説明しており、説明を省略する。
【0044】
図6は、実施の形態2に係る溶接トーチ3の一部を破断して示す斜視図である。
図6においては、説明の便宜上、チップ8の表示を省略している。なお、
図6においては、第2ノズル筒4が前記第2位置に位置している場合を示している。
【0045】
第1ノズル筒5の他端部51には、第2ノズル筒4が取り付けられている。第2ノズル筒4は第1ノズル筒5の他端部51よりも大きい内径を有する円筒形の部材である。即ち、第2ノズル筒4は第1ノズル筒5の他端部51に外嵌されている。
実施の形態1と同様、第2ノズル筒4は、第1ノズル筒5の軸長方向に移動できるように構成されている。以下、説明する。
【0046】
第2ノズル筒4の内周面には、一対の突起43が突設されている。斯かる一対の突起43は第2ノズル筒4の軸長方向に所定間隔を隔てて突設されている。一方、第1ノズル筒5の他端部51の外周面には案内溝53が凹設されている。
【0047】
案内溝53は、第2ノズル筒4の移動方向に沿って延びる。詳しくは、案内溝53は、第1ノズル筒5の軸長方向、即ち第2ノズル筒4の移動方向に沿って延びる第1部531と、第2ノズル筒4の移動方向に対して斜めに交差する方向に延びるように形成された第2部532(制限部)とを含む。第2部532は第1部531の両端及び途中に形成されている。
【0048】
案内溝53は、第2ノズル筒4を第1ノズル筒5の他端部51に取り付けた場合、一対の突起43に対応する位置に設けられている。即ち、第2ノズル筒4を第1ノズル筒5の他端部51に取り付けた場合、第1部531に沿って一対の突起43が案内溝53内を摺動する。また、上述の如く、第2部532が第2ノズル筒4の移動方向と交差する方向に延びているので、突起43の移動(摺動)は第2部532によって制限される。
【0049】
即ち、突起43が第1部531に位置する場合(以下、解錠状態と言う)、第2ノズル筒4は第1ノズル筒5の軸長方向への移動が可能であるが、突起43が第2部532に位置する場合(以下、施錠状態と言う)、第2ノズル筒4は第1ノズル筒5の軸長方向への移動が制限される。
前記施錠状態から前記解錠状態に変更するためには、作業者が、第2ノズル筒4の移動方向に対して斜めに交差する方向に第2ノズル筒4を回転させる操作が必要である。以下、
図6を用いて詳しく説明する。
【0050】
図6に示すように、第2ノズル筒4が前記第2位置にある場合は、一対の突起43が第2部532に位置しており、施錠状態であるので、第2ノズル筒4の第1ノズル筒5の軸長方向への移動は制限されている。この際、作業者が第2ノズル筒4を案内溝53に沿って回転させると、一対の突起43が第1部531に位置するので前記解錠状態に変わり、第2ノズル筒4が第1ノズル筒5の軸長方向に移動可能になる。
【0051】
ついで、第2ノズル筒4がチップ8の一端部を覆うように、作業者が第2ノズル筒4を
図6の矢印方向に移動させてから、第2ノズル筒4を案内溝53に沿って回転させる。これによって、一対の突起43が再び第2部532に位置するので前記施錠状態になり、第2ノズル筒4の移動は制限される。この際、第2ノズル筒4は前記第1位置に位置する。
【0052】
以上の順に操作を行うことによって、作業者は第2ノズル筒4を前記第2位置から前記第1位置に、第1ノズル筒5の軸長方向に移動させることができる。なお、第2ノズル筒4を前記第1位置から前記第2位置に移動させる操作については、作業者が上述の操作順の逆順で操作を行えば良く、詳しい説明を省略する。
【0053】
以上の構成を有することから、実施の形態2の溶接トーチ3では、簡単な構成で、必要に応じて作業者が第2ノズル筒4を前記第1位置及び前記第2位置の間で移動させ、チップ8の一端の露出具合、及びシールドガスによるシールド具合を調節することができる。
【0054】
また、実施の形態2の溶接トーチ3は、上述のような一連の操作によって、第2ノズル筒4を前記第1位置から前記第2位置に、又は、前記第2位置から前記第1位置に移動させるので、作業者の手間を省くことができる。
【0055】
更に、以上においては、第2ノズル筒4の内周面に突起43が形成され、第1ノズル筒5の他端部51の外周面に案内溝53が形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。第2ノズル筒4の内周面に案内溝53が形成され、第1ノズル筒5の他端部51の外周面に突起43が形成されても良い。
【0056】
なお、以上においては、第2ノズル筒4が第1ノズル筒5の他端部51に外嵌されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。第2ノズル筒4が第1ノズル筒5の他端部51に内嵌される構成であっても良い。
【0057】
そして、以上においては、一連の操作によって、第2ノズル筒4を前記第1位置から前記第2位置に、又は、前記第2位置から前記第1位置に移動させる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、案内溝53において、第1部531の途中に第2部532を複数箇所に設けて、前記第1位置と前記第2位置との間を第2ノズル筒4が段階的に移動するように構成しても良い。
【0058】
かつ、案内溝53は、第1部531の深さと、第2部532の深さとが異なるように構成しても良い。例えば、第2部532の深さを第1部531の深さよりも浅くしても良い。
又は、第1部531の幅と、第2部532の幅とが異なるように構成しても良い。例えば、第2部532の幅を第1部531の幅よりも狭くしても良い。
この場合、前記解錠状態では、第2ノズル筒4の移動が容易になる一方、前記施錠状態では、突起43が案内溝53に圧接され、第2ノズル筒4の移動をしっかり制限できる。
【0059】
以上においては、第2ノズル筒4の内周面に、一対の突起43のみが突設されており、第1ノズル筒5の他端部51の外周面には、一対の突起43に対応する位置に案内溝53が一つ凹設されている場合を例に挙げて説明した。しかし、実施の形態2の溶接トーチ3はこれに限定されるものではない。第2ノズル筒4の内周面において互いに対向する2箇所に夫々一対の突起43が突設され、第1ノズル筒5の他端部51の外周面においても、各一対の突起43に対応する位置に案内溝53が夫々凹設されている構成であっても良い。
【0060】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0061】
1 溶接トーチ装置
3 溶接トーチ
4 第2ノズル筒
5 第1ノズル筒
8 チップ
43 突起
53 案内溝
531 第1部
532 第2部(制限部)