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特許7478027アルカリ電池用のガスケット部材、及びアルカリ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】アルカリ電池用のガスケット部材、及びアルカリ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240424BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240424BHJP
【FI】
H01M50/184 D
H01M50/342 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020089806
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184369
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 隼司
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀典
(72)【発明者】
【氏名】野上 武男
(72)【発明者】
【氏名】安西 晋吾
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-521674(JP,A)
【文献】特開平2-201865(JP,A)
【文献】特開2007-180052(JP,A)
【文献】特開2005-71648(JP,A)
【文献】特開2002-208391(JP,A)
【文献】特開平7-240195(JP,A)
【文献】実公平4-3395(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池缶の開口を封止する、アルカリ電池用のガスケット部材であって、
前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、
前記支持部の外周に沿って形成された環状の安全弁と、
前記電池缶に支持される外周部と、を備え、
前記安全弁は、前記安全弁の周方向において前記安全弁の厚さが最小に形成された最薄部を有し、前記厚さが、前記最薄部から前記周方向に沿って連続的に厚くなるように形成されている、
アルカリ電池用のガスケット部材。
【請求項2】
前記安全弁は、前記安全弁の周方向において前記安全弁の厚さが最大に形成された最厚部を有し、前記最厚部が、前記支持部を挟んで前記最薄部とは反対側に位置し、前記厚さが、前記周方向における前記最薄部の両側から前記最厚部に向かって連続的に厚くなるように形成されている、
請求項1に記載のアルカリ電池用のガスケット部材。
【請求項3】
前記最厚部の厚さは、前記最薄部の厚さの1.5倍以上である、
請求項2に記載のアルカリ電池用のガスケット部材。
【請求項4】
前記最厚部の厚さは、前記最薄部の厚さの3倍未満である、
請求項3に記載のアルカリ電池用のガスケット部材。
【請求項5】
前記電池缶と、
前記集電棒と、
前記集電棒と接して前記電池缶の前記開口に設けられ、前記電池缶の内部で発生したガスを排出するための貫通穴を有する電極端子と、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアルカリ電池用のガスケット部材と、
を備える、アルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池用のガスケット部材、及びアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ電池としては、電池缶の内部に設けられた集電棒を支持するガスケット部材を備えており、ガスケット部材に、例えば、誤使用に伴って発生する内部ガスを電池缶の外部へ排出するための安全弁が形成されたものが知られている。この種のアルカリ電池用のガスケット部材は、集電棒を支持する円筒状の支持部と、電池缶に支持される外周部と、支持部の外周に沿って形成された環状の安全弁と、を有する。安全弁は、ガスケット部材の厚さが薄く形成されており、内部ガスの圧力で破断することにより、内部ガスを排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-351585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した環状の安全弁は、周方向にわたって厚さが均一に形成されており、安全弁の周方向において破断する位置や、破断が進行する方向が不規則である。つまり、安全弁が破断した際に、安全弁の周囲における厚さが厚い肉厚部分に破断が生じる場合がある。このように安全弁以外の箇所が破断した場合には、電池缶の内部ガスをスムーズに排出することができずに、電池缶が破裂するおそれがある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、安全弁の周方向に沿って安全弁を規則的に破断させることができるアルカリ電池用のガスケット部材、及びアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示するアルカリ電池用のガスケット部材の一態様は、電池缶の開口を封止する、アルカリ電池用のガスケット部材であって、前記電池缶の内部に設けられた集電棒を支持する筒状の支持部と、前記支持部の外周に沿って形成された環状の安全弁と、前記電池缶に支持される外周部と、を備え、前記安全弁は、前記安全弁の周方向において前記安全弁の厚さが最小に形成された最薄部を有し、前記厚さが、前記最薄部から前記周方向に沿って連続的に厚くなるように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示するアルカリ電池用のガスケット部材の一態様によれば、安全弁の周方向に沿って安全弁を規則的に破断させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例のアルカリ電池を示す縦断面図である。
図2図2は、実施例のアルカリ電池の要部を示す縦断面図である。
図3図3は、実施例のアルカリ電池のガスケット部材を示す平面図である。
図4図4は、実施例のアルカリ電池のガスケット部材を示す図3におけるA-A断面図である。
図5図5は、実施例のアルカリ電池のガスケット部材を示す図3におけるB-B断面図である。
図6図6は、実施例のアルカリ電池の負極端子のガス抜き穴を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示するアルカリ電池用のガスケット部材、及びアルカリ電池の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示するアルカリ電池用のガスケット部材、及びアルカリ電池が限定されるものではない。
【実施例
【0010】
(アルカリ電池の構成)
図1は、実施例のアルカリ電池を示す断面図である。図1に示すように、実施例のアルカリ電池1は、水溶液系一次電池、いわゆる乾電池である。アルカリ電池1は、開口3aを有する円筒状の電池缶3と、集電棒4と、正極材料5及び負極材料6と、正極材料5と負極材料6とを仕切るセパレータ部材7と、電池缶3の開口3aを封止するガスケット部材8と、を備える。また、アルカリ電池1は、電極端子として、電池缶3の一端に形成された正極端子11と、電池缶3の他端に配置された負極端子12と、を備える。
【0011】
電池缶3の一端には、正極端子11が一体に形成されている。電池缶3の他端には、電池缶3の外周に沿ってビーディング加工されたくびれ部(ビーディング部)3bが形成されている。電池缶3のくびれ部3bには、開口3aを塞ぐように負極端子12及びガスケット部材8が設けられている。集電棒4は、電池缶3の内部の中央に配置されている。集電棒4は、基端部がガスケット部材8に支持されており、先端部が正極端子11側に向かって延びている。
【0012】
負極材料6は、電池缶3の内部における集電棒4の周囲に設けられており、例えば、亜鉛を主成分とするゲル状の負極合剤が用いられる。正極材料5は、電池缶3の内部に収容された負極材料6の外周側に、セパレータ部材7を挟んで設けられている。正極材料5としては、例えば、リング状の正極合剤が用いられており、集電棒4の軸方向に沿って複数のリング状の正極合剤が積層されて配置されている。セパレータ部材7は、例えば、不織布等によって円筒状に形成されており、集電棒4の軸方向に沿って配置されている。
【0013】
(ガスケット部材の構成)
図2は、実施例のアルカリ電池1の要部を示す縦断面図である。図3は、実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8を示す平面図である。
【0014】
図2及び図3に示すように、アルカリ電池1のガスケット部材8は、集電棒4の一端部を支持する支持部としての円筒状の中央部15と、中央部15の外周に沿って形成された環状の安全弁16と、電池缶3の開口3aに支持される環状の外周部17と、を有する。また、ガスケット部材8は、安全弁16と外周部17との間に形成された環状の中間部18と、外周部17を中間部18に対して弾性変形可能にする緩衝部19と、を有する。本実施例のガスケット部材8おける安全弁16は、電池缶3の内部ガスによって破断される溝状の肉薄部分を指す。
【0015】
中央部15は、集電棒4が通される支持穴15aを有しており、図2に示すように、集電棒4が負極端子12に接するように支持穴15aに支持されている。外周部17は、電池缶3のくびれ部3b近傍と負極端子12の外周部との間に挟み込まれることで、ガスケット部材8が電池缶3に支持されている。
【0016】
中間部18には、図2に示すように、セパレータ部材7の端部が突き当てられており、負極材料6が収容された空間が、セパレータ部材7によって塞がれている。
【0017】
図2及び図3に示すように、緩衝部19は、中間部18と外周部17との間に形成されており、セパレータ部材7の外周側に配置されている。緩衝部19は、ひだ状に形成されており、集電棒4の軸方向において外周部17から延びると共に折り返して中間部18に連結されている。なお、本実施例のガスケット部材8は、緩衝部19を有するが、緩衝部19を有する構造に限定されない。
【0018】
(安全弁の形状)
図4は、実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8を示す図3におけるA-A断面図である。図5は、実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8を示す図3におけるB-B断面図である。
【0019】
図3図4及び図5に示すように、安全弁16の周方向において、安全弁16は、安全弁16の厚さが最小に形成された最薄部16aと、安全弁16の厚さが最大に形成された最厚部16bと、を有する。最厚部16bは、中央部15を挟んで最薄部16aとは反対側に位置している。
【0020】
安全弁16の厚さは、最薄部16aから安全弁16の周方向に沿って連続的に厚くなるように形成されている。言い換えると、安全弁16の厚さは、図3中の矢印方向に示すように、安全弁16の周方向における最薄部16aの両側から、最厚部16bの両側に向かって連続的に厚くなるように形成されている。
【0021】
安全弁16の厚さとは、集電棒4の軸方向に対する厚さを指す。安全弁16の周方向における最薄部16aの範囲は、周方向における一部分、例えば、支持穴15aまわりの中心角の範囲において10度程度の範囲に形成されるが、最薄部16aの範囲を限定するものではない。同様に、安全弁16の周方向における最厚部16bの範囲は、周方向における一部分、例えば、支持穴15aまわりの中心角の範囲において10度程度の範囲に形成されるが、最厚部16bの範囲を限定するものではない。
【0022】
(ガス抜き穴)
図6は、実施例のアルカリ電池1の負極端子12のガス抜き穴を示す斜視図である。図6に示すように、電極端子としての負極端子12は、集電棒4と接して電池缶3の開口3aに設けられており、電池缶3で発生した内部ガスを排出するための貫通穴としての複数のガス抜き穴12aを有する。
【0023】
ガス抜き穴12aは、負極端子12の周方向において、例えば、4箇所に等間隔に形成されている。図2に示すように、ガス抜き穴12aは、電池缶3の径方向(集電棒4の径方向)において、ガスケット部材8の中間部18の外周側及び緩衝部19に対向する位置に形成されており、安全弁16が破断したときにガス抜き穴12aが電池缶3の内部とつながるように配置されている。
【0024】
(安全弁が破断する動作)
以上のように形成された安全弁16は、電池缶3の内部ガスが所定値を超えたときに判断することにより、安全弁16が作動する。安全弁16が破断することにより、電池缶3の内部ガスを、負極端子12のガス抜き穴12aを通して、電池缶3の外部へ放出する。これにより、安全弁16は電池缶3の破裂を防ぐ。
【0025】
本実施例における安全弁16は、図3に示すように、安全弁16の周方向において最薄部16aが最も破断しやすいので、安全弁16の破断が最薄部16aから始まる。安全弁16は、最薄部16aに破断が生じたとき、最薄部16aの両側から、最厚部16bに向かって破断が進行することになり、安全弁16の周方向において破断が規則的に進行する。このように安全弁16の破断が進行する方向性が確保されるので、安全弁16が作動したときに安全弁16の周囲、例えば、偶発的に中間部18等の肉厚部分から破断したり、肉厚部分まで破断が進行したりすることが抑えられる。つまり、実施例では、安全弁16が破断する挙動が規則的になり、安全弁16以外の肉厚部分の破断が抑えられるので、電池缶3の内部ガスを、ガス抜き穴12aを通してスムーズに電池缶3の外部へ放出できる。
【0026】
なお、図示しないが、必要に応じて、最薄部16a及び最厚部16bは、支持穴15aまわりの中心角において、例えば、2つの最薄部16aが0度及び180度の各位置に対向して設けられ、2つの最厚部16bが90度及び270度の各位置に対向して設けられてもよい。この場合においても、各最薄部16aから各最厚部16bに向かって破断が規則的に進行し、安全弁16の破断が進行する方向性を確保できる。
【0027】
(安全弁の最薄部と最厚部の厚さの比率)
安全弁16の最厚部16bの厚さT2は、最薄部16aの厚さT1の1.5倍以上である。言い換えると、最薄部16aの厚さT1は、最厚部16bの厚さT2の66.6%以下である。これにより、最薄部16aから最厚部16bに向かって安全弁16をスムーズに破断させることが可能になり、電池缶3の破裂の発生と、安全弁16の周囲の肉厚部分の破断の発生を抑えることができる。最厚部16bの厚さT2が最薄部16aの厚さT1の1.5倍未満の場合には、安全弁16以外の肉厚部分が破断するおそれがあるので好ましくない。
【0028】
また、安全弁16の最厚部16bの厚さT2は、最薄部16aの厚さT1の3倍未満である。言い換えると、最薄部16aの厚さT1は、最厚部16bの厚さT2の33.3%よりも大きい。これにより、最厚部16bの厚さT2が厚くなり過ぎることを避けて、安全弁16が作動しにくくなることが抑えられる。このため、最薄部16aから最厚部16bに向かって安全弁16をスムーズに破断させることが可能になり、電池缶3の破裂の発生を抑えることができる。最厚部16bの厚さT2が最薄部16aの厚さT1の3倍以上である場合には、安全弁16全体がスムーズに破断せずに、安全弁16が作動しにくくなり、電池缶3が破裂するおそれがあるので好ましくない。
【0029】
(実験結果)
以下、安全弁16の最薄部16aと最厚部16bの厚さの比率を変えた各ガスケット部材8を備える各アルカリ電池1について、電池缶3の破裂の発生率、及び安全弁16の周囲の肉厚部分の破断の発生率を比較した。本実験は、JIS規格の水溶液系一次電池の安全性(JIS C 8514)の項目6.3.2.1に規定された試験D:逆装填(電池4個の直列接続)に基づいて行った。
【表1】
【0030】
表1に示すように、比較例、及び実施例1~8では、ガスケット部材8の肉厚部分(例えば、中間部18の外周側の部分)の厚さが0.70[mm]に形成されて、安全弁16を除いて同一形状のガスケット部材8を用いた。比較例として、安全弁16の厚さが、安全弁16の周方向にわたって0.15[mm]で均一に形成されたガスケット部材8を用いた。実施例1~4は、最薄部16aの厚さT1を0.15[mm]とし、最厚部16bの厚さT2を、最薄部16aの厚さT1の125[%]、150[%]、200[%]、300[%]の各々としたガスケット部材8を用いた。実施例5~8は、最薄部16aの厚さT1を0.10[mm]とし、最厚部16bの厚さT2を、最薄部16aの厚さT1の125[%]、150[%]、200[%]、300[%]の各々としたガスケット部材8を用いた。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、比較例では、電池缶3の破裂の発生率が0[%]であるが、安全弁16の周囲の肉厚部分の破断の発生率が50[%]である。実施例1~8のうち、最厚部16bの厚さT2が最薄部16aの厚さT1の150[%]以上である実施例2、3、6~8では、電池缶3の破裂の発生率、安全弁16の周囲の肉厚部分の破断の発生率が共に0[%]である。しかし、最厚部16bの厚さT2が最薄部16aの厚さT1の300[%]である実施例4では、電池缶3の破裂の発生率が20[%]である。一方で、最厚部16bの厚さT2が最薄部16aの厚さT1の150[%]未満となる125[%]である実施例1、5では、安全弁16の周囲の肉厚部分の破断が発生した。
【0033】
以上の結果から、安全弁16の最厚部16bの厚さT2は、最薄部16aの厚さT1の150[%](1.5倍)以上であることにより、電池缶3の破裂の発生率、安全弁16の周囲の肉厚部分の破断の発生率を共に抑えることができる。ただし、最厚部16bの厚さT2が最薄部16aの厚さT1の300[%]以上の場合、実施例4のように、安全弁16の作動不良によって電池缶3が破裂するおそれがあるので、300[%]未満であることが望ましい。
【0034】
(アルカリ電池の製造工程)
以上のように構成されたアルカリ電池1の製造工程について、工程順に説明する。
(1)電解二酸化マンガン、黒鉛、バインダー、水酸化カリウム溶液を用いて、正極材料5としての正極合剤を作り、正極合剤をリング状に成型する。
(2)亜鉛合金粉、電解液等を用いて、負極材料6としてのゲル状の負極合剤を作る。
(3)電池缶3の内部に、リング状の正極合剤を収容する。
(4)電池缶3の端部にビーディング加工によってくびれ部3bを形成し、ガスケット部材8と電池缶3との接触面にシール剤を塗布する。
(5)電池缶3に収容した正極合剤の内側にセパレータ部材7を挿入する。
(6)セパレータ部材7に水酸化カリウム電解液を含浸させる。
(7)電池缶3に設けられたセパレータ部材7の内側に負極合剤を充填する。
(8)ガスケット部材8、集電棒4、負極端子12を組み付けた集電体を作る。
(9)集電体を電池缶3の開口3aに組み付けて、集電体によって開口3aを封止する。
【0035】
(実施例の効果)
上述したように実施例のアルカリ電池1のガスケット部材8が有する安全弁16は、安全弁16の周方向において安全弁16の厚さが最小に形成された最薄部16aを有しており、安全弁16の厚さが、最薄部16aから安全弁16の周方向に沿って連続的に厚くなるように形成されている。これにより、環状の安全弁16が破断するときに最薄部16aから破断が始まり、最薄部16aから安全弁16の周方向に沿って破断を規則的に進行させることが可能になる。このため、安全弁16の破断を進行させる方向性を確保できるので、安全弁16をスムーズに破断させて、安全弁16の周囲における安全弁16以外の肉厚部分に破断が生じることを抑えられる。
【0036】
したがって、実施例によれば、安全弁16以外の肉厚部分が破断することに伴い、電池缶3内に収容された収容物が負極端子12まで流れ出て、例えば、負極端子12のガス抜き穴12a等のガスを排出する経路が収容物によって塞がり、電池缶3の内部ガスのスムーズな放出ができずに電池缶3が破裂することが避けられる。つまり、実施例は、安全弁16がスムーズに破断することにより、電池缶3の内部ガスを電池缶3の外部へスムーズに放出できるので、電池缶3の破裂を抑えることができる。
【0037】
また、実施例におけるガスケット部材8の安全弁16は、安全弁16の周方向において安全弁12の厚さが最大に形成された最厚部16bを有し、最厚部16bが、中央部15を挟んで最薄部16aとは反対側に位置し、安全弁16の厚さが、安全弁16の周方向における最薄部16aの両側から最厚部16bに向かって連続的に厚くなるように形成されている。これにより、最薄部16aが破断したときに、最薄部16aの両側から、最厚部16bに向かって破断を規則的に進行させることが可能になる。このため、安全弁16の周方向に沿って破断を更にスムーズに進行させることができるので、安全弁16の周囲における安全弁16以外の肉厚部分に破断が生じることを更に抑えられる。
【0038】
また、実施例におけるガスケット部材8の安全弁16は、最厚部16bの厚さT2が、最薄部16aの厚さT1の1.5倍以上である。これにより、最薄部16aから最厚部16bに向かって安全弁16をスムーズに破断させることが可能になり、電池缶3の破裂の発生と、安全弁16の周囲の肉厚部分の破断の発生を抑えることができる。
【0039】
また、実施例におけるガスケット部材8の安全弁16は、最厚部16bの厚さT2が、最薄部16aの厚さT1の3倍未満である。これにより、最厚部16bの厚さT2が厚くなり過ぎることを避けて、安全弁16が作動しにくくなることが抑えられるので、最薄部16aから最厚部16bに向かって安全弁16をスムーズに破断させることが可能になり、電池缶3の破裂の発生を抑えることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 アルカリ電池
3 電池缶
3a 開口
4 集電棒
7 セパレータ部材
8 ガスケット部材
12 負極端子(電極端子)
12a ガス抜き穴(貫通穴)
15 中央部(支持部)
16 安全弁
16a 最薄部
16b 最厚部
17 外周部
18 中間部
T1、T2 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6