(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20240424BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02K5/24 B
F16F15/04 M
(21)【出願番号】P 2020116153
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】島田 彩加
(72)【発明者】
【氏名】関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】癸生川 幸嗣
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-024059(JP,A)
【文献】特開2004-150563(JP,A)
【文献】特開2015-030379(JP,A)
【文献】特開2001-268875(JP,A)
【文献】特開2006-057653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに保持されるロータと、
前記ロータの外周側に設けられているステータと、
前記シャフトに固定される一対の軸受と、
前記一対の軸受を保持するスリーブと、
前記スリーブを支持するホルダと、
径方向において、前記スリーブと前記ホルダとの
間に設けられている
空隙と、
を備え
、
前記空隙は、前記一対の軸受の少なくともいずれか一方と径方向において重なる位置に設けられている、
モータ。
【請求項2】
前記スリーブは、前記空隙により径方向に変形可能である、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記空隙は、環状に形成されている、
請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
シャフトと、
前記シャフトに保持されるロータと、
前記ロータの外周側に設けられているステータと、
前記シャフトに固定される一対の軸受と、
前記一対の軸受を保持するスリーブと、
前記スリーブを支持するホルダと、
前記スリーブと前記ホルダとの少なくともいずれか一方に設けられている緩衝部と、
を備え、
前記緩衝部は、前記ホルダに設けられている凹部及び前記スリーブに設けられている複数の孔であり、
前記凹部と前記複数の孔とは連通している、
モータ。
【請求項5】
前記複数の孔は、前記凹部を介して互いに連通している、
請求項
4に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータにおいて、シャフトが回転することで遠心力が生じる。シャフトを支持する軸受は、遠心力による振動が加わる。
【0003】
なお、軸受の振動減衰に関する技術としては、球状粒子をダンパ要素にした振動減衰装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、モータの軸受は、遠心力によるものも含めて様々な原因による振動が継続的に加わることで、劣化を生じる恐れがある。このため、モータにおいて、軸受の劣化を抑制するために、軸受に加わる振動を低減することが求められている。
【0006】
本発明は、上述の課題を一例とするものであり、軸受の劣化を抑制することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータは、シャフトと、前記シャフトに保持されるロータと、前記ロータの外側に設けられているステータと、前記シャフトに固定される一対の軸受と、前記一対の軸受を保持するスリーブと、前記スリーブを支持するホルダと、前記スリーブと前記ホルダとの少なくともいずれ一方に設けられている緩衝部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記緩衝部は、前記一対の軸受の少なくともいずれか一方と径方向において重なる位置に設けられている。
【0009】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記緩衝部は、前記スリーブと前記ホルダの少なくともいずれか一方に設けられた凹部である。
【0010】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記緩衝部により径方向に変形可能である。
【0011】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記緩衝部は、前記スリーブに設けられている孔である。
【0012】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記緩衝部は、前記ホルダに設けられている凹部及び前記スリーブに設けられている複数の孔であり、前記凹部と前記複数の孔とは連通している。
【0013】
本発明の一態様に係るモータにおいて、前記複数の孔は、前記凹部を介して互いに連通している。
【0014】
本発明に係るモータによれば、軸受の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るモータの構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係るモータの構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係るモータの構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係るモータについて図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るモータの構成を概略的に示す断面図である。
【0018】
以下の説明では、便宜上、軸線x方向において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。また、軸線xに垂直な径方向において、軸線xから遠ざかる方向(
図1の矢印c方向)を外周側cとし、軸線xに向かう方向(
図1の矢印d方向)を内周側dとする。以下の説明では、便宜上、
図1に示す方向をモータ1の側面とする。また、以下の説明では、便宜上、
図1に示すようにモータ1を上側aから下側bに向かって見る方向を正面、下側bから上側aに向かって見る方向を底面とする。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係るモータ1は、シャフト10と、シャフト10に保持されるロータ20と、ロータ20の外周側cに設けられているステータ30と、シャフト10に固定される一対の軸受41,42と、一対の軸受41,42を保持するスリーブ50と、スリーブ50を支持するホルダ61と、スリーブ50とホルダ61との少なくともいずれ一方、例えば、ホルダ61に設けられている緩衝部63と、を備える。以下、モータ1の構成及び動作を具体的に説明する。
【0020】
[モータの構成]
図1に示すように、モータ1は、上述したシャフト10、ロータ20、ステータ30、一対の軸受41,42、スリーブ50、及び、ホルダ61に加えて、ハウジング62を備える。
【0021】
シャフト10は、モータ1の上側aから見て中心に位置して、軸線x方向、つまり上下方向に延在している。シャフト10の下側b(一端側)は、ハウジング62内に位置し、上側a(他端側)は、ホルダ61から上方に突き出している。シャフト10は、一対の軸受41,42に嵌入された状態でスリーブ50を介してホルダ61に固定されている。なお、本実施形態において、「周方向」と云うときは、シャフト10の軸線xを中心とする円の周方向を意味する。
【0022】
ロータ20は、ハウジング62内において、シャフト10の下側b(一端側)に固定されている。ロータ20は、シャフト10に固定されたローターヨーク22と、ローターヨーク22の外周に取り付けられたマグネット21と、を有する。ローターヨーク22は、例えば、磁性体により形成されるが、特性上問題がなければ、アルミニウム等の非磁性体で形成してもよい。
【0023】
マグネット21は、ステータ30と対向するようにローターヨーク22の外周面に取り付けられている。マグネット21は、環状に形成されている。マグネット21には、N極に着磁された領域と、S極に着磁された領域とが、周方向に沿って一定の周期で交互に設けられている。
【0024】
ステータ30は、ステータコア31と、コイル32と、インシュレータ33と、を備える。ステータ30は、ロータ20を取り囲んでいる。
【0025】
ステータコア31は、珪素鋼板等の積層体となっており、シャフト10と同軸上に配された円環部(コア)34と、円環部34からロータ20へ(回転軸線L方向に)向かって延びる複数のティース部35と、を有する。
【0026】
コイル32は、例えば、3相のコイルであり、複数のティース部35の各々の周囲に巻き回されている。ステータコア31とコイル32とは、絶縁体で形成されたインシュレータ33によって絶縁されている。なお、モータ1では、インシュレータ33を用いるのに代えて、ステータコア31の表面に絶縁膜を塗装してステータコア31とコイル32とを絶縁してもよい。
【0027】
一対の軸受41,42は、シャフト10の軸線x方向で一定の間隔を置いて並んで取り付けられている。軸受41は、シャフト10における、ロータ20が固定されている下側(一端側)に取り付けられている。軸受42は、軸受41と反対側の上側a(他端側)に取り付けられている。軸受41は、ロータ20が固定された下側b(一端側)寄りに位置する。また、軸受42は、一端側とは反対側の他端側である、上側a寄りに位置する。
【0028】
軸受41,42は、外輪と、内輪と、外輪及び内輪の間に介在する転動体(ボール)とを有する、いわゆるボールベアリングである。転動体が外輪と内輪との間で転がることにより、外輪に対する内輪の回転抵抗が低減される。軸受41,42は、その機能から、例えば、鉄等の硬質の金属やセラミックスの部材で形成されている。シャフト10は、一対の軸受41,42の内輪に固定されており、外輪に対して回転自在になっている。
【0029】
スリーブ50は、筒状(特に円筒状)の形状を有する部材であり、例えば、プラスチックあるいは金属で形成されている。スリーブ50は、筒状の外周側cがホルダ61に収容されている。スリーブ50は、筒状の内周側dに一対の軸受41,42が保持されている。具体的には、一対の軸受41,42の外輪は、スリーブ50の内周面52にそれぞれ嵌め込まれるとともに固定されている。軸受41,42の外輪は、スリーブ50の内周面52に支持されている。このように、シャフト10は、スリーブ50に対して回転自在となるように支持されている。なお、スリーブ内部に、一対の軸受41,42に対して与圧を付与する不図示の与圧ばねを配置してもよい。
【0030】
ホルダ61は、シャフト10の上側aで軸受41,42、及び、スリーブ50を収容する。ホルダ61は、スリーブ50を収容するために、スリーブ50の外周面51の形状に対応した筒状または略筒状の空間を形成する内周面611を有している。ホルダ61の内周面611には、スリーブ50にて軸受41,42が嵌め込まれている位置の径方向外周側cに緩衝部63が設けられている。
【0031】
緩衝部63は、例えば、内周面611において、スリーブ50の内周面52に取り付けられている一対の軸受41,42の位置(以下、「軸受取付部54」ともいう。)と径方向において重なる位置に設けられている。緩衝部63は、ホルダ61の内周面611に設けられている凹部である。緩衝部63は、軸受取付部54の外周側cに対応する位置の内周面611を径方向外周側cに向かって拡径することによって形成されている。スリーブ50の、軸受取付部54の径方向外周側cにおいて、外周面51と緩衝部63の間に環状の空隙G1が形成されている。
【0032】
ハウジング62は、シャフト10の下側bでロータ20及びステータ30を収容する。ホルダ61及びハウジング62は、例えば、樹脂材料や金属材料により作製される。ハウジング62の内部の空間には、その他モータ1の構成要素が収容されている。
【0033】
以上のように構成されていることにより、モータ1では、シャフト10の遠心力により振動などの力が生じる場合であっても、シャフト10から軸受41,42、及びスリーブ50へと径方向に伝達した力が緩衝部63の空隙G1により逃がされる。詳細には、モータ1では、スリーブ50の軸受取付部54の外周側cに緩衝部63が設けられていることにより、シャフト10及び軸受41,42から伝わった力がスリーブ50から直接的にホルダ61に伝わることを回避することができる。また、緩衝部63により空隙G1が設けられていることで、モータ1のスリーブ50は、径方向に変形可能である。このように、緩衝部63が設けられていることにより、スリーブ50は、シャフト10と一対の軸受41,42との間に伝わる力の緩衝作用を得ることができる。
【0034】
また、一般に、モータでは、軸受の位置決めの精度を向上させるためにスリーブへ軸受を圧入することを考えた場合に、軸受の外輪が圧入する力によって変形し、内外輪のレースと転動体との隙間が減少し回転負荷トルクが上昇してしまう。
【0035】
一方、以上説明したモータ1では、ホルダ61の内周面611に緩衝部63が設けられていることにより、緩衝作用を得ることによって、軸受41,42の外輪部分の圧入力を逃がすための空間ができるため、使用時における回転負荷トルクの上昇を抑えることができる。
【0036】
従って、ホルダ61の内周面611に凹部を設けることで緩衝部63とすることによって、モータ1によれば、軸受41,42にかかっていた力を分散し、軸受41,42の劣化を遅くすることができる。
【0037】
なお、一般に、衝撃を受ける際の力の向きを問わず、内部から外部(シャフト10から軸受41,42)への衝撃と、外部から内部(軸受41,42からシャフト10)への衝撃とは等価である。このため、緩衝部63は、上述したシャフト10の遠心力による共振のみならず、例えば、落下衝撃等に対しても有効である。
【0038】
[第2の実施の形態]
次に、本発明に係るモータの第2の実施の形態について、説明する。なお、本実施の形態に係るモータ2において、先に説明したモータ1と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0039】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係るモータ2の構成を概略的に示す断面図である。
図2に示すように、本実施の形態に係るモータ2は、緩衝部253が先に説明したモータ1の緩衝部63と異なり、ホルダ261ではなくスリーブ250に設けられている。
【0040】
緩衝部253は、スリーブ250において、一対の軸受41,42が嵌め込まれている位置に設けられている。緩衝部253は、例えば、スリーブ250の径方向において、軸受41,42が取り付けられている位置と重なる位置、つまり、軸受取付部254の外周面251または内周面252に設けられている。緩衝部253は、スリーブ250の軸受取付部の外周面51を径方向内周側dに向かって薄肉化することによって形成されている凹部である。スリーブ250は、軸受取付部254の径方向外周側cにおいて、緩衝部253とホルダ61の内周面611との間に環状の空隙G2が形成されている。
【0041】
以上のように構成されていることにより、モータ2では、先に説明したモータ1と同様に、シャフト10の遠心力により振動などの力が生じる場合であっても、シャフト10から軸受41,42、及びスリーブ250へと径方向に伝達した力が緩衝部253の空隙G2により逃がされる。また、緩衝部253は、モータ2のスリーブ250の他の部分と比較して薄肉化されていることで変形が生じやすいため、径方向に変形可能である。このように、緩衝部253が設けられていることにより、スリーブ250は、シャフト10と軸受41,42との間に伝わる力の緩衝作用を得ることができる。
【0042】
また、以上説明したモータ2では、先に説明したモータ1と同様に、使用時における回転負荷トルクの上昇を抑えることができる。
【0043】
従って、スリーブ250に凹部を設けることで緩衝部253とすることによって、モータ2によれば、一対の軸受41,42にかかっていた力を分散し、軸受41,42の劣化を遅くすることができる。
【0044】
なお、スリーブ250に設けられている緩衝部253は、スリーブ250の軸受取付部254に形成されている凹部であればよい。すなわち、緩衝部253は、
図2に示したように外周面251に設けられているものに限定されず、内周面252に設けられていてもよい。また、緩衝部253は、スリーブ250の外周面251または内周面252に環状に設けられているものに限定されず、例えば、所定の間隔で設けられている複数の凹部あるいは孔であってもよい。
【0045】
[第3の実施の形態]
次に、本発明に係るモータの第3の実施の形態について、説明する。なお、本実施の形態に係るモータ3において、先に説明したモータ1,2と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るモータ3の構成を概略的に示す断面図である。
図3に示すように、本実施の形態に係るモータ3は、先に説明したモータ1の緩衝部63に加えて、スリーブ350にも緩衝部353が設けられている。また、モータ3は、緩衝部353が先に説明したモータ2の緩衝部253と異なり、スリーブ350の外周面351と内周面352とを径方向に貫通する孔である。
【0047】
スリーブ350に形成されている緩衝部353は、軸受取付部254に重なる位置の変形を容易にして軸受41,42に加わる力を緩衝することができればよい。このため、先に説明したモータ2が備えるスリーブ250の緩衝部253のようにスリーブ250の軸受取付部254に重なる位置を薄肉化するものに限定されず、緩衝部353のように複数の孔によりスリーブ250を径方向に変形可能にしてもよい。
【0048】
モータ3は、ホルダ61及びスリーブ350の双方に緩衝部63,353が設けられている。このため、モータ3は、ホルダ61及びスリーブ350の双方で、先に説明したモータ1,2と同様に、衝撃の緩和作用を得ることができる。
【0049】
従って、緩衝部63,353を備えるモータ3によれば、軸受41,42の劣化を抑制することができる。
【0050】
また、モータ3は、スリーブ350に孔形状の緩衝部353が設けられ、緩衝部353の外周側cのホルダ61の内周面611に緩衝部63が設けられていることにより、スリーブ350の内周側dと外周側cとを連通し、緩衝部353を構成している複数の孔がホルダ61の緩衝部63を介して互いに連通する流路Cとが形成される。この流路Cにより、モータ3によれば、軸受41,42の周囲に通風を促すことができるため、軸受41,42の冷却効果を得ることができる。
【0051】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1,2,3…モータ、10…シャフト、11…外周面、20…ロータ、21…マグネット、22…ローターヨーク、30…ステータ、31…ステータコア、32…コイル、33…インシュレータ、34…円環部(コア)、34…円環部、35…ティース部、41,42…軸受、50,250,350…スリーブ、51,251,351…外周面、52,252,352…内周面、54,254…軸受取付部、61,261…ホルダ、62…ハウジング、63,253,353…緩衝部、611…内周面、G1,G2…空隙、C…流路