(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】多孔質薄膜用樹脂溶融物の製造装置及び製造装置の使用法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/36 20190101AFI20240424BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20240424BHJP
C08J 9/00 20060101ALI20240424BHJP
B29C 48/365 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/44 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/693 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20240424BHJP
B29C 48/29 20190101ALI20240424BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
B29C48/36
C08J9/28 CES
C08J9/00 A
B29C48/365
B29C48/44
B29C48/395
B29C48/693
B29C48/92
B29C48/285
B29C48/30
B29C48/29
B29L7:00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020136135
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】10 2019 121 854.3
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】トルステン・ザールハーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・マレイ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ザイベル
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-522379(JP,A)
【文献】特開2017-086083(JP,A)
【文献】特表2002-503567(JP,A)
【文献】特開2017-154469(JP,A)
【文献】特開平11-216765(JP,A)
【文献】特開2014-193604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂から流動性樹脂溶融物(2)を製造する遊星ロール押出機(3)と、遊星ロール押出機(3)の押出端(3b)から樹脂溶融物(2)を受け取る入口端(4a)を有する溶融物ポンプ(4)とを備え、
遊星ロール押出機(3)は、充填開口(3a)と、樹脂溶融物(2)を送出する押出端(3b)とを備え、
遊星ロール押出機(3)の押出端(3b)の下流に配置される溶融物ポンプ(4)は、連結装置を介して遊星ロール押出機(3)の押出端(3b)に接続されて、遊星ロール押出機(3)から樹脂溶融物(2)を受け取る入口端(4a)を備え、
連結装置は、周囲雰囲気に対して
a) 密閉された圧力路又は、
b) 密閉圧力管(6)として形成され、
遊星ロール押出機(3)と溶融物ポンプ(4)は、溶融物ポンプ(4)の入口端(4a)で樹脂溶融物(2)を加圧して待機させ又は移送可能でありかつ/又は駆動可能であり、
遊星ロール押出機(3)の充填開口(3a)から溶融物ポンプ(4)の入口端(4a)までの閉鎖領域には、空気開口が設けられず、樹脂溶融物(2)内の封入空気は、樹脂溶融物(2)の圧力上昇時に閉鎖領域から排出され、充填開口(3a)方向に押し戻されて、遊星ロール押出機(3)の充填開口(3a)から脱気することを特徴とする多孔質薄膜用樹脂溶融物(2)の製造装置(1)。
【請求項2】
溶融物ポンプ(4)の入口端(4a)に樹脂溶融物(2)を待機させ又は移送する圧力値は、4×10
5Paより大きい請求項1に記載の製造装置(1)。
【請求項3】
溶融物ポンプ(4)のポンプ回転数が低下して、溶融物ポンプ(4)の入口端(4a)から遊星ロール押出機(3)の押出端(3b)方向に樹脂溶融物(2)が後退して停滞し、連続的な樹脂溶融物(2)流の後退停滞は、樹脂溶融物(2)に更に対抗して、溶融物ポンプ(4)の入口端(4a)に樹脂溶融物(2)を待機させ又は入口端(4a)に移送可能な圧力値を上昇させる請求項1又は2に記載の製造装置(1)。
【請求項4】
粉末状重合体と、液体成分形態の充填剤とは、充填開口(3a)から遊星ロール押出機(3)に供給される請求項1~3の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項5】
充填開口(3a)は、窒素雰囲気で形成される請求項4に記載の製造装置(1)。
【請求項6】
遊星ロール押出機(3)を駆動する駆動装置(16)を備え、
遊星ロール押出機(3)は、n≧1とするn個のロール円筒体(3
1~3
n)と、歯付き中央スピンドル(20)とを備え、
n個のロール円筒体(3
1~3
n)は、各長軸に沿い互いに隣接して配置されかつ互いに固定され、特に、互いにねじ連結され、互いに対して密閉され、
各ロール円筒体(3
1~3
n)は、内歯付き円筒体(21)と、m≧3とするm個の歯付き遊星スピンドル(22)と、各ロール円筒体(21)の内部を貫通する歯付き中央スピンドル(20)とを備え、
中央スピンドル(20)とm個の遊星スピンドル(22)とは、各ロール円筒体(3
1~3
n)の各円筒体(21)の内側に配置され、遊星スピンドル(22)は、中央スピンドル(20)と円筒体(21)との間に配置され、
駆動装置(16)により駆動される中央スピンドル(20)は、遊星スピンドル(22)に噛合し、遊星スピンドル(22)は、内歯付き円筒体(21)に噛合して、中央スピンドル(20)の回転により、m個の遊星スピンドル(22)は、中央スピンドル(20)と円筒体(21)との間で転動し、
充填開口(3a)は、n個のロール円筒体(3
1~3
n)の第1のロール円筒体(3
1)内に配置され、押出端(3b)は、n個のロール円筒体(3
1~3
n)のn番目のロール円筒体(3n)内に配置される請求項1~5の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項7】
中央スピンドル(20)、円筒体(21)及び遊星スピンドル(22)の歯は、樹脂溶融物(2)の前進流を発生しかつ同時に樹脂溶融物(2)を圧送するねじれ角45°のはすば歯車により形成される請求項6に記載の製造装置(1)。
【請求項8】
a) 重合体用の少なくとも1個の重量計量部(9)と、
b) 液体成分用の少なくとも1個の計量ポンプ(10a,10b)及び少なくとも1個の注入装置(11)を有する計量ポンプ装置(10)とを含む計量装置(8)とを備え、
重合体と液体成分とを計量する計量装置(8)は、
a) 充填開口(3a)を介して重合体と液体成分とを第1のロール円筒体(3
1)内に直接導入しかつ混合し又は、
b) 1個又は2個の螺旋移送機を備える側部供給器(7)内に導入される重合体と液体成分とを混合し、螺旋移送機は、充填開口(3a)を介して第1のロール円筒体(3
1)内に混合物を供給する請求項6又は7に記載の製造装置(1)。
【請求項9】
第1の液体成分用の第1の貯蔵容器(13a)と、第2の液体成分用の第2の貯蔵容器(13b)とを備え、
計量ポンプ装置(10)は、第1の貯蔵容器(13a)及び/又は第2の貯蔵容器(13b)に連結され又は連結でき、第1の液体成分及び/又は第2の液体成分を充填開口(3a)に供給でき、又は、
第1の液体成分用の第1の貯蔵容器(13a)と、第2の液体成分用の第2の貯蔵容器(13b)とを備え、
計量ポンプ装置(10)は、第1の貯蔵容器(13a)に連結され又は連結できる第1の計量ポンプ(10a)と、第2の貯蔵容器(13b)に連結され又は連結できる第2の計量ポンプ(10b)とを備え、充填開口(3a)に第1の液体成分及び/又は第2の液体成分を供給できる請求項8に記載の製造装置(1)。
【請求項10】
計量装置(8)は、あるロール円筒体(3
1~3
n)から別の隣接するロール円筒体(3
1~3
n)への各遊星ロール押出機(3)に沿う移行領域に配置される1個又は複数個の付加注入装置(11)を備え、
付加注入装置(11)は、追加的に計量する量の液体成分を遊星ロール押出機(3)内に供給する請求項8又は9に記載の製造装置(1)。
【請求項11】
遊星ロール押出機(3)に供給する重合体量と液体成分量との比率を設定する計量装置(8)は、
a) 重合体20~50重量部に液体成分80~50重量部を添加し、
b) 重合体25~45重量部に液体成分75~55重量部を添加し又は、
c) 重合体30~40重量部に液体成分70~60重量部を添加する請求項8~10の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項12】
n番目のロール円筒体(3
n)内又はn番目のロール円筒体(3
n)と溶融物ポンプ(4)の入口端(4a)との間に配置されて、樹脂溶融物(2)の圧力を測定する少なくとも1個の圧力検出器(30)と、
圧力検出器(30)が測定する圧力値により、計量装置(8)、駆動装置(16)及び溶融物ポンプ(4)を制御する制御装置(14)とを備え、
制御装置(14)は、
a) 圧力検出器(30)が測定する圧力値が基準値未満のとき、
i) 計量装置(8)を制御してその排出量を増加しかつ/又は、
ii) 駆動装置(16)を制御して中央スピンドル(20)の回転数を増加しかつ/又は、
iii) 溶融物ポンプ(4)を制御してその回転数を減少する、
ことにより、少なくとも1個の圧力検出器(30)が測定する圧力は、所定の基準値に略到達しかつ/又は、
b) 圧力検出器(30)が測定する圧力値が基準値より高いとき、
i) 計量装置(8)を制御してその排出量を低下しかつ/又は、
ii) 駆動装置(16)を制御して中央スピンドル(20)の回転数を低下しかつ/又は、
iii) 溶融物ポンプ(4)を制御してその回転数を上昇する、
ことにより、少なくとも1個の圧力検出器(30)が測定する圧力は、所定の基準値に略到達する請求項8~11の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項13】
付加ロール円筒体(3
1~3
n-1)内又は付加ロール円筒体(3
1~3
n-1)間に配置されて、遊星ロール押出機(3)内の樹脂溶融物(2)の圧力を測定する複数の付加圧力検出器(31)を備え、
制御装置(14)は、少なくとも1個の圧力検出器(30)が測定する少なくとも1個の圧力値が閾値を上回るとき、
i) 駆動装置(16)を制御して中央スピンドル(20)の回転数を低下しかつ/又は、
ii) 溶融物ポンプ(4)を制御してその回転数を増加する請求項12に記載の製造装置(1)。
【請求項14】
中央スピンドル(20)は、
a) n個の全ロール円筒体(3
1~3
n)を貫通して一体に構成され又は、
b) 長軸に沿って互いに回転不能に中央スピンドル(20)に連結される複数の中央スピンドル区間の各々を有する請求項6~13の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項15】
遊星スピンドル(22)は、大部分のロール円筒体(3
1~3
n)の内側にのみ配置され、遊星スピンドル(22)は、ロール円筒体(3
1~3
n)の大部分に隣接するロール円筒体(3
1~3
n)内には延出せずかつ/又は、
隣接する最初の2つのロール円筒体(3
1, 3
2)は、第1のロール円筒体(3
1)と第2のロール円筒体(3
2)の両者内に貫通して配置される遊星スピンドル(22)を備える請求項6~14の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項16】
円筒体(3
1~3
n)の内歯を備える歯付き中間リング(25)は、隣接する最初の2つのロール円筒体(3
1,3
2)間に挿入される請求項6~15の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項17】
少なくとも第2のロール円筒体(3
2~3
n)の後流の隣接する2つのロール円筒体(3
2~3
n)間に各1個の分散リング(26)が配置され、
第2のロール円筒体(3
2)から第3のロール円筒体(3
3)への移行部の分散リング(26)は、n-1番目のロール円筒体(3
n-1)からn番目のロール円筒体(3
n)までの移行部の分散リング(26)よりも大きい又は小さい環状間隙を有し又は、
第3のロール円筒体(3
2)から第3のロール円筒体(3
3)への移行部の分散リング(26)は、n-1個のロール円筒体(3
n-1)からn番目のロール円筒体(3n)までの移行部の分散リング(26)と同一大きさの環状間隙を有する請求項6~16の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項18】
中央スピンドル(20)の外歯は、あるロール円筒体(3
1~3
n)から隣接するロール円筒体(3
1~3
n)への移行部で中断しかつ/又は、
遊星スピンドル(22)の中間歯は、ロール円筒体(3
1~3
n)の少なくとも1個、複数個又は全てにおいて複数回中断して、各ロール円筒体(3
1~3
n)内の十分な横断方向混合量が増加する請求項6~17の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項19】
中央スピンドル(20)の全長又は略全長に沿って貫通する少なくとも1個の流路(40a)と、
少なくとも流路(40a)を通じて加熱流体を供給するポンプ装置(41)と、
加熱流体を特定の温度に調整して、樹脂溶融物(2)を特定の温度に調整する温度調整装置(42)とを備える請求項6~18の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項20】
ロール円筒体(3
1~3
n)に設けられる少なくとも1個の温度調整路(45a)と、
各ロール円筒体(3
1~3
n)の少なくとも1個の温度調整路(45a)を通る加熱流体を供給するポンプ装置(50)と、
加熱流体を特定の温度に調整して、樹脂溶融物(2)を特定の温度に調整する温度調整装置(51)とを備え、
n番目のロール円筒体(3n)の加熱流体の温度より高い又は低い温度に第1のロール円筒体(3
1)内の加熱流体を加熱し、ロール円筒体(3
1~3
n)の少なくとも1個の温度調整路(45a)は、他の温度調整路(45a)から分離して配置されて加熱流体を異なる温度に調整する請求項6~19の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項21】
1個、複数個又は全てのロール円筒体(3
1~3
n)は、少なくとも1個の付加温度調整路(45b)を備え、
少なくとも1個の温度調整路(45a)と少なくとも1個の付加温度調整路(45b)は、各ロール円筒体(3
1~3
n)内で各ロール円筒体(3
1~3
n)の長手方向かつ/又は周囲方向に互いに離間して配置され、
ポンプ装置(50)は、各ロール円筒体(3
1~3
n)の少なくとも1個の付加温度調整路(45b)を通る加熱流体を供給し、温度調整装置(51)は、加熱流体を特定の温度に調整して、樹脂溶融物(2)を特定の温度に調整し、
各ロール円筒体(3
1~3
n)の少なくとも1個の温度調整路(45a)と少なくとも1個の付加温度調整路(45b)は、互いに分離して設けられ、温度調整路(45a, 45b)内の各加熱流体は、異なる温度に調整される請求項20に記載の製造装置(1)。
【請求項22】
異なるロール円筒体(3
1~3
n)内又は異なるロール円筒体(3
1~3
n)間に配置されて、遊星ロール押出機(3)内の複数箇所での樹脂溶融物(2)の温度を測定する複数の温度検出器(35)を備え、
制御装置(14)は、1個又は複数個の温度検出器(35)の温度値が、
a) 温度基準値を超過するとき、ポンプ装置(50)と温度調整装置(51)とを制御して、温度基準値を超過する温度値を示す温度検出器(35)を備えるロール円筒体(3
1~3
n)内の加熱流体を迅速に送出しかつ/又は冷却して、樹脂溶融物(2)を冷却しかつ/又は、
b) 温度基準値に達しないとき、ポンプ装置(50)と温度調整装置(51)とを制御して、温度基準値に達しない温度値を示す温度検出器(35)を備えるロール円筒体(3
1~3
n)内の加熱流体を緩慢に送出しかつ/又は加熱して、樹脂溶融物(2)を加熱する請求項20又は21に記載の製造装置(1)。
【請求項23】
溶融物ポンプ(4)を通電により加熱でき又は、
溶融物ポンプ(4)を熱媒体油により加熱できる請求項1~22の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項24】
溶融物ポンプ(4)の押出端(4b)に連結されるスリット金型(5)を備え、
溶融物ポンプ(4)の押出端(4b)とスリット金型(5)との間に配置される洗浄弁及び/又は溶融物用濾過器を有する請求項1~23の何れか1項に記載の製造装置(1)。
【請求項25】
スリット金型(5)から排出される樹脂溶融物(2)は、スリット金型(5)の下方に配置される冷却ロール(27)に当接する請求項24に記載の製造装置(1)。
【請求項26】
請求項1~25の何れか1項に記載の製造装置(1)の充填開口(3a)に、重合体と液体成分とを供給することを特徴とする多孔質薄膜用、特に薄膜用の樹脂溶融物(2)を製造する製造装置(1)の使用法。
【請求項27】
液体成分は、溶媒からなり又は溶媒を含みかつ/又は、
液体成分は、a) パラフィン油、b) 炭化水素、c) 石油系炭化水素及び/又はd) 白色鉱油のうちの1種又は複数種を含み又は1種又は複数種からなる請求項26に記載の製造装置(1)の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質薄膜、特に薄膜形態の多孔質薄膜用樹脂溶融物の製造装置と、製造装置の使用法とに関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば、濾過用若しくは脱塩用の薄膜又は例えば、リチウムイオン蓄電池用隔離薄膜/障壁薄膜としての延伸多孔質薄膜(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、粉末状超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight PE)、高分子量ポリエチレン(High Molecular Weight PE)又は高密度ポリエチレン(High Density PE)等の重合体製薄膜)を製造する延伸前に、可塑剤(例えば、パラフィン油、炭化水素、石油系炭化水素、白色鉱油等の溶媒又は軟化剤も配合できる)等の液体成分を重合体に均質に配合し、加熱しかつ可塑化して、重合体は、多孔質に形成される。均質に重合体に配合される可塑剤は、爾後の延伸工程と可塑剤洗浄工程又は蒸発工程では、重合体に多数の微細な孔を形成するので、可塑剤は、重合体の多孔質化に役立つ。溶融すべき/溶融される押出機内の重合体に可塑剤を均質かつ微細に配合して、延伸時と可塑剤の洗浄時ではなく蒸発時に、極力多くの微細孔を形成することが可塑剤を配合する目的である。
【0003】
多孔質構造を重合体に付与する目的に対し、液体成分、即ち可塑剤と共に、予め均質に攪拌した懸濁液(スラリー)状態で共回転二軸押出機に重合体を供給するのが標準的配合法である。取扱いが簡単な前記成分を二軸押出機に個別に供給することもある。前記成分を個別に押出機に投入するとき、押出機の混合品質に対する高度の条件に適合して均質に混合しなければならない。主に、押出機内での長滞留時間、押出機の大量混合容積と高回転数により、均質な混合を達成できる。押出機の回転数が上昇すると、高温の摩擦熱(液体成分の自己着火温度に対応する)が発生して、短時間で防爆に有効な最大許容溶融温度に達するのに対し、温度を調節する機能を持つ円筒状外被は、限定的熱量しか放出しないため、押出機を回転する回転数は、限定され、押出機を高速回転することはできない。特に、約600,000g/molを超える高分子量の超高分子量ポリエチレンを使用するとき、更に押出能力が低下する。液体成分、特に可燃性溶剤を使用するとき、防爆に対して最大可能回転数を更に低下して、処理温度領域を一層低温に保持しなければならないため、均質化性能が低下して押出力が低下する難点を生ずる。市場で要求される押出性能を達成するには、比較的大きい推進器径と長い工程長とを備え、Lを推進器長とし、Dを推進器径とすると、比L/Dは、L/D=50~70を満足する二軸押出機を採用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用する原材料と押出性能に関する市場の需要は常に高いが、安価な装置価格を保持するため、本発明の課題は、多孔質薄膜又は薄膜(例えば、電池用隔離薄膜(BSF))の生産代替手段となる新規な押出成形手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載する多孔質薄膜、特に薄膜用樹脂溶融物の製造装置により達成される。請求項26は、製造装置の使用法を記載する。請求項2~25は、本発明の製造装置の有利な付加的構成を示す。請求項27は、製造装置の使用法をより精確に具体化するものである。
【0006】
多孔質薄膜用、特に薄膜用樹脂溶融物を製造する本発明の製造装置は、遊星ロール押出機を備える。遊星ロール押出機は、熱可塑性樹脂からの流動性樹脂溶融物の製造に使用される。遊星ロール押出機は、出発材料を導入する充填開口と、樹脂溶融物を送出する押出端とを有する。溶融物ポンプも設けられる。遊星ロール押出機は、限定的な大きさの溶融物圧力しか発生しないため、溶融物ポンプが必須である。スリット金型から薄膜を冷却ロールに直接押出すとき、溶融物押出管(加圧管)、溶融物濾過器及びスリット金型を通過する薄膜の溶融物圧力は、40×105Pa、50×105Pa、60×105Paもしくは70×105Paより高く又は80×105Paより高いことが必須である。従って、溶融物圧力を発生する溶融物ポンプが、遊星ロール押出機直後に接続される。遊星ロール押出機の押出端より下流に設けられる溶融物ポンプの入口端に遊星ロール押出機を連結して、樹脂溶融物は、更に搬送される。遊星ロール押出機と溶融物ポンプと連結部は、周囲雰囲気を遮蔽する圧力路又は密閉する圧力管として形成される。密閉圧力路の採用により、遊星ロール押出機の押出端に溶融物ポンプを直接取り付けられる。密閉圧力管の採用により、溶融物ポンプから空間的距離を空けて遊星ロール押出機を設置できる。密閉圧力路を介して遊星ロール押出機と溶融物ポンプとを接続して、加圧下で溶融物ポンプの入口端に樹脂溶融物を待機し、移送しかつ/又は駆動できる。
【0007】
遊星ロール押出機の使用により、多孔質薄膜、特に薄膜形態での多孔質薄膜を製造する特に良好な結果を招来することは特に有利である。樹脂分野では、ポリ塩化ビニル(PVC)の加工のみに、遊星ロール押出機が従来用いられてきた。他の押出機に比べて、非常に大きな内側表面を有する遊星ロール押出機は、大きな内側表面により樹脂溶融物を充分に混錬することができる。孔質薄膜用に導入される液体成分、特に可塑剤(軟化剤)の不完全な脱気又は蒸発も十分な混錬により防止することができる。高圧力で樹脂溶融物を最適に十分混合すと同時に樹脂溶融物から空気を排出できるので、加圧下で樹脂溶融物を溶融物ポンプに移送することも特に有利である。溶融物圧力を発生する(後に詳述する)溶融物ポンプは、溶融物圧力変動を平滑化する機能がある。遊星ロール押出機を採用すると、全体的に比較的小型に維持される装置により、特に均質な樹脂溶融物を達成できる。また、遊星ロール押出機の採用により、液体成分、特に可塑剤を均質に重合体に混入して、押出機又は近傍装置に直接に注入することができる。遊星ロール押出機は、高混合性能で節約型の材料調製が可能な組立式単体として構成できる。更に、搬出端までの溶融温度の制御をすることができる。遮蔽圧力路又は密閉圧力管は、500cm、400cm、300cm、200cm、100cm、50cm、40cm、30cm、20cmより短く、10cmより短いことが好ましい。遮蔽圧力路又は密閉圧力管は、5cm、15cm、25cm、35cm、45cm、150cm、250cm、350cmより長く、450cmより長いことが好ましい。
【0008】
溶融物ポンプの入口端で樹脂溶融物を待機し又はこれに移送するのに特に有利な圧力は、4×105Pa、5×105Pa、6×105Pa、7×105Pa、8×105Pa、9×105Pa、10×105Pa、11×105Pa、13×105Pa、15×105Paもしくは17×105Paより大きい、又は19×105Paよりも大きく、しかも21×105Pa、18×105Pa、16×105Pa、14×105Pa又は12×105Paより小さいことが好ましい。この圧力値により、最適に十分混合される樹脂溶融物のばら材料内(例えば、粉末状重合体内又は粉末粒子間)に捕捉又は封入される空気を樹脂溶融物から押出すことができる。また、この圧力値により、後の製造工程段階で、利用不能な又は十分な濃度で利用不能な液体成分の漏出を防止することができる。基本的に窒素雰囲気で配合成分のばら材料を添加して、包含する酸素を低比率に保持することができる。従って、樹脂溶融物の酸化に伴う材料の分解と、液体成分の爆発の可能性も回避できる。
【0009】
本発明の製造装置の他の実施の形態では、溶融物ポンプの回転数を低下させて、溶融物ポンプの入口端で樹脂溶融物を待機させ又は入口端に移送する圧力を上昇することができる。ポンプ回転数の低下により、樹脂溶融物は、溶融物ポンプの入口端から遊星ロール押出機の押出端方向(押出端内)に後退して停滞し、連続的な材料流の後退停滞により、後続の樹脂溶融物に対抗する(出発材料(重合体と液体成分)の添加量を減少しないことが好ましい)結果、溶融物ポンプの入口端での溶融物圧力が上昇する。特に、添加する出発物質(重合体と液体成分)の計量値と、溶融物ポンプの回転数との間の比率により、遊星ロール押出機と溶融物ポンプとの間の溶融物圧力が、設定される。出発物質の添加量が一定でかつ特に遊星ロール押出機が一定回転数で回転するとき、溶融物ポンプがより緩慢な回転数で回転する程、遊星ロール押出機方向に溶融物が一層後退し又は停滞する。前記の通り、遊星ロール押出機内の連続的な溶融物流は、溶融物の後退停滞に対抗して、溶融物圧力が上昇する。樹脂溶融物内に捕捉され又は封入される空気が目視不能になるまで、遊星ロール押出機の押出端(押出機先端)での圧力は、基本的に継続的に上昇する。特に、溶融物圧力が5×105Paを上回り10×105Pa以下のとき、圧力上昇は、達成される。
【0010】
捕捉され又は封入される空気を後方にのみ脱気することが好ましい。遊星ロール押出機の充填開口から溶融物ポンプの入口端までの溶融物搬送領域には空気開口がないため、樹脂溶融物に封入される空気は、樹脂溶融物の圧力上昇時に、溶融物から排出され、充填開口方向に強制的に戻され、充填開口からのみ脱気される。溶融物の脱気は、後方脱気とも言われる。(特に、可燃性液体成分の採用時に)1箇所のみを特別に保護すればよい利点もある。充填開口領域に設けた換気装置により、気体を吸引し、充填開口の外部に空気を排出して、空気を濾過装置に供給することが好ましい。
【0011】
本発明の製造装置の特別な実施の形態では、重合体、特に粉末状重合体と、充填剤、特に液体成分の充填剤(軟化剤、例えば、液体炭化水素、例えば、パラフィン油又は液体溶媒等)が「共通」の充填開口として形成される充填開口内に共に投入される。遊星ロール押出機内に、重合体と液体成分とを同時に添加するので、穏やかな溶融温度と良好な均質化が確保される。窒素雰囲気下で添加を行うことが好ましい。遊星ロール押出機の別の箇所(追加して又は単一)でも液体成分を添加できる。
【0012】
本発明の好適な実施の形態では、遊星ロール押出機を駆動する駆動装置が設けられる(例えば、電動機)。遊星ロール押出機は、nをn≧1、2、3、4、5、6若しくは7又はn≧8として、n個のロール円筒体を備える。ロール円筒体は、特に、1個の大外径内歯付き外側外被(内歯付き円筒体)を備える。ロール円筒体内には複数の歯付き遊星スピンドルが配置される。歯付き遊星スピンドルは、ロール円筒体内に配置される外歯付き中央スピンドルにより駆動される。中央スピンドルは、内歯付き円筒体の中心に配置される。ロール円筒体と中央スピンドルとの間に、複数の遊星スピンドルが配置される。少なくとも3つの遊星スピンドル、装置構造に応じて、18個以下の遊星スピンドルをロール円筒体毎に設けると、良好な結果が達成される。中央スピンドルと複数の遊星スピンドルとを噛合と同時に、複数の遊星スピンドルは、内歯付き円筒体に噛合する。
【0013】
中央スピンドルを回転すると、複数の遊星スピンドルは、内歯付き円筒体と中央スピンドルとの間で遊星状に公転するので、樹脂溶融物(重合体溶融物)は、薄層に圧延される。圧延される重合体、即ち樹脂溶融物が広い表面積により、樹脂溶融物への熱エネルギの投入と除去の制御が可能になる。複数のロール円筒体、特に全ロール円筒体を貫通して、中央スピンドルが配置される。回転不能に互いに連結(例えば、互いにねじ連結、嵌合かつ/又は溶接)される複数の部品で、一体成形される中央スピンドルを構成することもできる。第1のロール円筒体は、充填開口を備え、最後のロール円筒体は、押出端を備えることが好ましい。4個、6個又は8個以上のロール円筒体を遊星ロール押出機に設けることが好ましい。複数のロール円筒体の各々を互いにねじ連結して、組立構造の遊星ロール押出機を形成することが好ましい。
【0014】
より多くのロール円筒体を設ける程、均質な溶融物が得られるが、より高い固有出力が必要となる。より多いロール円筒体により、遊星ロール押出機がより長くなるため、滞留時間と混合時間もより長くなるので、6個~8個又は8個以上のロール円筒体で特に良好な結果を達成でき、得られる樹脂溶融物は、非常に均質になる。また、各ロール円筒体の温度曲線も、個別に設定できる(例えば、充填開口をより高温に保持し、押出端を低温に保持する)。この点は、詳細に後述する。
【0015】
円筒体の内歯、中央スピンドルの外歯と、複数の遊星スピンドルの歯は、ねじれ角45°のはすば歯車(=ヘリカルギア)が好ましい。ねじれ角により、圧延する樹脂溶融物の前進流動が生じる。
【0016】
複数の遊星スピンドルの長軸に沿ってねじれ角45°のはすば歯車が、時々又は規則的間隔で中断する節を複数の遊星スピンドルに設けることもできる。1個のロール円筒体から別のロール円筒体への移行部でも中断する中央スピンドルにも同一の構成を設けることが好ましい。中断式はすば歯車により、各溶融物流が多々分割するため、非常に良好でかつ十分な横断方向混合が得られる。
【0017】
各遊星スピンドルの長さは、ロール円筒体の長さに略相当することが好ましい。各ロール円筒体の内側にのみ配置される複数の遊星スピンドルは、ロール円筒体を超えて隣接するロール円筒体内に侵入して配置されない。しかし、最初の2個の隣接するロール円筒体を貫通する複数の遊星スピンドルを備えることに相当する。複数の遊星スピンドルは、各ロール円筒体よりも長い。従って、複数の遊星スピンドルは、第1のロール円筒体中にも、第2のロール円筒体中にも延伸し、双方のロール円筒体内に共に配置される。この場合、複数の遊星スピンドルは、最初の2個の隣接するロール円筒体間にロール円筒体の内歯となる歯付き中間リングを挿入することが好ましい。中間リングは、2個のロール円筒体間の連結部材となり、特に単純な貫通遊星スピンドルを採用できる。
【0018】
本発明の好適な実施の形態では、隣接する2個のロール円筒体間に分散リングが挿入される。特に、第2からn番目のロール円筒体に該当する(第1のロール円筒体と第2のロール円筒体との間に歯付き中間リングを挿入することが好ましい)。複数の分散リングの環状間隙の寸法は、夫々異なることが好ましい。押出端方向に配置される複数の分散リングより大きい環状間隙を備える分散リングは、第2のロール円筒体と第3のロール円筒体との間に挿入される。第2のロール円筒体と第3のロール円筒体との間の分散リングの好適な環状間隙は、1mm、1.2mm、1.4mm、1.7mm又は1.9mmより大きく、しかも2.1mm、1.8mm又は1.6mmより小さい。後続の分散リングの好適な環状間隙は、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm又は1.2mmより大きく、しかも1.3mm又は1.1mmより小さい。第2のロール円筒体と第3のロール円筒体との間では不十分な混錬のため、樹脂溶融物が非均質状態の可能性があり、環状間隙が小さ過ぎると、2つのロール円筒体間での円滑な樹脂溶融物の移行が阻止される可能性があるため、第2のロール円筒体と第3のロール円筒体との間の分散リングは、より大きな環状間隙を有する。遊星ロール押出機を更に前進混錬すると、樹脂溶融物は略均質となり、円滑な圧送阻止の危険性が低減するので、より小さい複数の環状間隙を採用することができる。
【0019】
本発明の製造装置の特定の実施の形態では、更に計量装置が設けられる。計量装置は、少なくとも1個の重合体用(例えば、重量)計量部、液体成分用の計量ポンプ及び少なくとも1個の注入装置を備える。計量装置は、計量する重合体と計量する液体成分とを、第1のロール円筒体内に充填開口に直接供給して、重合体と液体成分が混合される。別法として、計量装置では、1個又は2個の螺旋移送機(スクリューコンベア)を備える側部供給器(サイドフィーダー)内に、計量する重合体と計量する液体成分とを供給し、側部供給器内で重合体と液体成分とを混合し、1個又は2個の螺旋移送機は、充填開口を介して第1のロール円筒体内に混合物を配給する。例えば、膜ポンプ又は歯車ポンプが計量ポンプに使用される。重合体と液体成分とを同時に配合して、穏やかな溶融温度で非常に良好な均質化を確保できる。重合体は、特に粉末状である。液体成分、特に可塑剤形態の液体成分と共に粉末状重合体を計量して、共通の側部供給器に供給する方法も、従来実現できなかった。
【0020】
本発明の他の実施の形態では、計量装置は、1個又は複数個の注入装置を備える。1個又は複数個の注入装置は、遊星ロール押出機に沿って配置される。特に、注入装置は、ロール円筒体と隣接するロール円筒体との間の移行領域に配置される。これにより、1個又は複数個の注入装置は、遊星ロール押出機内又は遊星ロール押出機の移行領域内に、精確に計量される追加量、同一量又は他の液体成分を注入することができる。
【0021】
遊星ロール押出機(3)に供給する重合体と液体成分との量の好適な比率を設定する計量装置は、
a) 重合体20~50重量部に、液体成分80~50重量部を加え、
b) 重合体25~45重量部に、液体成分75~55重量部を加え又は、
c) 重合体30~40重量部に、液体成分70~60重量部を加える。
【0022】
本発明の好適な実施の形態では、n番目のロール円筒体内又はn番目のロール円筒体と溶融物ポンプの入口端との間に配置される計量装置は、樹脂溶融物の圧力を測定する少なくとも1個の圧力検出器を備える。また、測定する圧力値信号を受信し、評価しかつ計量装置の排出量、中央スピンドルの回転数及び溶融物ポンプをポンプの回転数に対して、少なくとも1個の圧力検出器が測定する圧力が所定の基準値に達するように駆動装置を制御する制御装置が設けられる。測定する圧力が低過ぎるとき、溶融物ポンプの回転数をより低減することができる。別法として又は補足的に、計量装置を通じて、より多くの材料を配合することができる。測定する圧力値が高過ぎると、溶融物ポンプの回転数を増加するように制御し、計量装置を通じてより少ない材料を配合することができる。前記のように、樹脂溶融物内への空気混入を回避すべきである。そのために、遊星ロール押出機の押出端での溶融物圧力と溶融物ポンプの入口端での好適な溶融物圧力を、少なくとも5×105Pa~10×105Paに維持しなければならない。同時に、遊星ロール押出機の回転数を低下して、等しい押出圧力を維持し、固有出力[kg/h/rpm]を向上してこの段階での充填密度(充填率)を増大することができる。遊星ロール押出機内での充填密度を増加すると、遊星ロール押出機内の溶融物圧力は、上昇するので、後方の充填開口から溶融物内に捕捉される空気を早期に脱気することができる。
【0023】
遊星ロール押出機の採用により、薄膜化される樹脂溶融物の延性を改善し、大きな表面の薄膜を形成できる。このため、遊星ロール押出機による加熱/冷却を通じて、樹脂溶融物に対する熱エネルギの投入又は除去を制御することができる。本発明の製造装置の特別な実施の形態では、少なくとも1個の流路が中央スピンドルを全長に沿い又は略その全長に沿って貫通する。(逆方向に流体が貫流する往復路を構成する2つの(並行)流路を設けることが好ましい)。また、特定の温度に流体(例えば、(熱)媒油又は水)を調整しかつ少なくとも1個の流路を通じて流体を導き、中央スピンドルを介して、樹脂溶融物を特定の温度に調整するポンプ装置と、加熱及び/又は冷却装置とが設けられる。
【0024】
中央スピンドルとは別に、複数のロール円筒体の温度も(特に個別に)調節できることが好ましい。ロール円筒体の各々は、少なくとも温度調整路を備える。流体(例えば、(熱)媒体油又は水)を特定の温度に調整して、各ロール円筒体の少なくとも1個の温度調整路を通じて流体を導き、複数のロール円筒体を介して樹脂溶融物を特定の温度に調整するポンプ装置と温度調整装置とが設けられる。別のロール円筒体の温度調整路から、各ロール円筒体の少なくとも1個の温度調整路を分岐して、各ロール円筒体の温度調整路を異なる温度に調整でき、n番目のロール円筒体の流体温度よりも高い温度の流体を第1のロール円筒体内に供給できる。本明細書に使用する用語「温度調整」は、樹脂溶融物の加熱と冷却を意味する(流体は、樹脂溶融物よりも低温)。
【0025】
本発明の任意選択的実施の形態では、溶融物ポンプは、電気的に又は熱媒体油により溶融物の温度を調整(加熱可能又は冷却可能)できる。基本的に複数の温度検出器により温度を検出して、検出温度データは、制御装置に送信される。制御装置は、製造装置の様々な箇所の検出器が検出する全工程制御要因(温度、圧力)データを受信し、対応する複数の制御変数を生成し、中央スピンドルの駆動装置、溶融物ポンプの駆動装置又は計量装置に制御変数を出力することが好ましい。最大許容可能な溶融温度を上回るとき、電力切断(防爆)が起動される。逆に、測定する圧力値により、遊星ロール押出機の回転数と、溶融物ポンプの出力とを調整することが好ましい。
【0026】
本発明の製造装置の使用法も説明する。多孔質薄膜用、特に薄膜用の樹脂溶融物の製造装置の充填開口に、重合体と、液体成分、特に可塑剤(軟化剤)とが同時に供給される。前記の通り、従来の多孔質薄膜の製造に、遊星ロール押出機は、使用されなかった。
【0027】
添付図面について、本発明の種々の例示的実施の形態を以下説明する。添付図面の同一の箇所には、同一の参照符号を付す。図面は、下記を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】多孔質薄膜、特に薄膜用樹脂溶融物の製造装置の第1の実施の形態の略示工程図
【
図2】多孔質薄膜、特に薄膜用の樹脂溶融物の製造装置の第2の実施の形態の略示工程図
【
図3】遊星ロール押出機のロール円筒体の内部を示す部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、多孔質薄膜に形成される樹脂溶融物2の製造装置1を示す。製造装置1は、樹脂溶融物2の導入端の充填開口3aと、樹脂溶融物2を排出する押出端3bとを有する遊星ロール押出機3を備える。充填開口3aは、特に側部に設けられる充填開口3aである。遊星ロール押出機3の押出端3bの下流に、溶融物ポンプ4と、スリット金型5が設けられる。遊星ロール押出機3の押出端3bは、下流の溶融物ポンプ4の入口端4aに接続されて、樹脂溶融物2は、溶融物ポンプ4で更に搬送される。遊星ロール押出機3の押出端3bと溶融物ポンプ4の入口端4aとの連結部は、周囲雰囲気から遮蔽される密閉圧力管6として形成される。遊星ロール押出機3と溶融物ポンプ4により、溶融物ポンプ4の入口端4aで加圧される樹脂溶融物2が待機し又は加圧される樹脂溶融物を入口端4aに移送されかつ/又は圧送される。スリット金型5は、溶融物ポンプ4の押出端4bに連結される。図示しないが、溶融物ポンプ4の押出端4bとスリット金型5との間に、更に洗浄弁及び/又は溶融物用濾過器を任意選択的に配置できる。溶融物ポンプ4及び/又は圧力管6及び/又は洗浄弁及び/又は溶融物用濾過器の温度を電気的に調整し、特に電気的に加熱できるので、常に処理温度領域内にある樹脂溶融物2は、相応の粘度(粘性率)を有する。熱媒体油でも、温度を調整できる。特に、スリット金型5から排出される樹脂溶融物2の粘度は、1000Pa秒~4000Pa秒の範囲内にある。スリット金型5のスリット幅は、特に、300mm、400mm、500mm、600mm、700mm、800mm、1000mm、1200mm、1400mm、1600mm、1800mm、2000mm、2200mm、2400mm、2600mm、2800mmより大きく又は3000mmより大きく、しかも3100mm、2900mm、2700mm、2500mm、2300mm、2100mm、1900mm、1700mm、1500mm、1300mm、1100mm、900mm未満又は650mm未満が好ましい。スリット金型5のスリット高さは、0.1mm、0.3mm、0.5mm、0.7mm、0.9mm、1.1mm、1.3mm、1.5mm、1.7mm、1.9mm、2.1mm、2.3mm、2.5mm、2.7mm、2.9mmを上回り又は3.1mmを上回り、しかも3.2mm、3.0mm、2.8mm、2.6mm、2.4mm、2.2mm、2.1mm、2.0mm、1.8mm、1.6mm、1.4mm、1.2mm、1.0mm、0.8mm、0.6mmもしくは0.4mm未満又は0.2未満が好ましい。
【0030】
樹脂溶融物2は、スリット金型5から特定の温度に調節(制御)される冷却ロール27に押し出され、必要に応じて、冷却ロール27は、図示しない水槽に部分的に浸漬される。図示しないモータ装置(電動機)は、冷却ロール27を回転する。
【0031】
溶融物ポンプ4の入口端4aに樹脂溶融物2が待機し又は入口端4aに移送される樹脂溶融物2の印加圧力は、5×105Paより大きく10×105Pa以下が好ましい。
【0032】
溶融物ポンプ4の回転数の低下により、樹脂溶融物2の印加圧力を増加することができる。遊星ロール押出機3を通過する材料流量が継続的に一定であれば、溶融物ポンプ4の回転数を低下すると、溶融物ポンプ4の入口端4aから遊星ロール押出機3の押出端3b方向に樹脂溶融物2が後退し停滞する。樹脂溶融物2の後退停滞現象は、更なる樹脂溶融物2の更なる連続的材料流に対抗して、遊星ロール押出機3の押出端3b領域の樹脂溶融物2圧力が上昇する。樹脂溶融物2の後退停滞現象は、遊星ロール押出機3の長さの50%、40%、30%、20%未満、又は10%未満の長さに達することが好ましい。
【0033】
別法として又は補足的に、追加の出発材料を充填開口3aに供給してもよい。
【0034】
遊星ロール押出機3の充填開口3aから溶融物ポンプ4の入口端4aまでの領域に、空気開口を設けないことが特に重要である。前記の通り、遊星ロール押出機3の充填開口3aから溶融物ポンプ4の入口端4aまでの領域は、通常の密閉される圧力管6又は密閉される圧力路(不図示)で構成される。開口のない密閉路により、樹脂溶融物2内の封入空気は、樹脂溶融物2の圧力上昇(5×105Pa~10×105Paを超えることが好ましい)時に、樹脂溶融物2から絞り出され、より低圧の充填開口3a方向に押し戻され、充填開口3aから脱気される。また、空気開口がないため、例えば、樹脂溶融物2内の液体成分、特に可塑剤(軟化剤)等の充填剤は、樹脂溶融物2内に残留し、残留物は、後続の工程で利用できる。液体成分の充填剤は、制御不能な脱気は生じないが、この点は、充填剤の可燃性が高い場合には特に重要である。
【0035】
重合体、特に粉末状の重合体と、特に液体成分(液体炭化水素又は可塑剤(軟化剤)等)の充填剤とに共通する
図1の充填開口3aを設けると、特に有利である。液体成分を溶媒としても配合できる。
【0036】
遊星ロール押出機3内又は側部供給器7内に重合体と液体成分とを一緒に供給する(
図2)と、特に有利な結果を達成できることが広範囲な実験結果から判明した。計量装置8により同時配合を達成できる。計量装置8は、少なくとも1個の重量計量部9(少なくとも1個の(例えば粉末状)重合体、場合により、例えば、酸化防止剤等の処理助剤)と、計量ポンプ装置10(少なくとも1個の計量ポンプ10a, 10bを備える)と、少なくとも1個の注入装置11とを備える。充填開口3a又は側部供給器7の可能な限り近傍に、少なくとも1個の重量計量部9を配置して、粉末状重合体の静電気帯電を極力制限すべきである(離間距離は、100cm、80cm、60cm、40cm、30cm、20cm又は10cm未満である)。
【0037】
計量装置8は、重合体と液体成分とを計量しかつ充填開口3aを通じて遊星ロール押出機3内に直接供給し、遊星ロール押出機3内で重合体と液体成分とを混合(
図1)し又は1個若しくは2個の螺旋移送機を有する側部供給器7内に重合体と液体成分とを供給し、側部供給器7内の螺旋移送機で重合体と液体成分とを混合し、その後、充填開口3aから混合物が遊星ロール押出機3内に供給される。側部供給器7内では、均質な混合は、行われない。側部供給器7の1個又は複数個の螺旋移送機内に、重合体と液体成分との湿潤が生じる。液体成分で湿潤される重合体は、遊星ロール押出機3に供給される。その後、遊星ロール押出機3内で、液体成分は、混合され、重合体は、溶融され、溶融物が均質化される。
【0038】
少なくとも1個の重量計量部9は、粉末状重合体の充填に好ましい重合体貯蔵容器12に接続される。
【0039】
図1は、計量ポンプ装置10の少なくとも1個の第1の計量ポンプ10aに加えて、計量ポンプ装置10を構成する第2の計量ポンプ10bを示す。
図1は、第1の液体成分用の第1の貯蔵容器13aと、第2の液体成分用の第2の貯蔵容器13bを示す。第1の計量ポンプ10aは、第1の貯蔵容器13aに接続され、第2の計量ポンプ10bは、第2の貯蔵容器13bに接続される。制御装置14は、計量装置8を制御して、重合体と液体成分との混合比率を予め設定する。ピストン膜ポンプ又は歯車ポンプを計量ポンプ10a, 10bに使用することが好ましい。各計量ポンプ10a, 10bの前又は後の管路に、流量計15(
図2)、特にコリオリ流量計15形態の流量計を任意選択的に接続することができる。流量計15も制御装置14に接続されて制御される。
【0040】
計量ポンプ10a, 10bに起因する脈動流を減衰し又は平滑化する脈動減衰器(ブラダーアキュムレータ)を計量ポンプ10a, 10bと流量計15との間に挿入して、液体成分の計量精度を改善することが好適である。
【0041】
貯蔵容器13a, 13b内かつ/又は計量ポンプ装置(ポンプ台)10と注入装置11との間で、液体成分を所望の温度(50℃~100℃)に予熱することができる。計量ポンプ10a, 10bの後段の熱交換器に液体成分、特に可塑剤を導入して、熱交換器の熱媒体油により液体成分を所望の温度に予熱することが好ましい。予熱する液体成分の温度を保持する自己制御型加熱部を熱交換器と注入ノズルとの間の管に設けることができる。温度を測定する温度検出器(不図示)を設けて、加熱能力を調整することができる。
【0042】
遊星ロール押出機3に供給される重合体量と液体成分量との比率を設定する計量装置8は、重合体20重量部~50重量部に対し液体成分80重量部~50重量部を加えることができる。重合体25重量部~45重量部に液体成分75重量部~55重量部を加え、重合体30重量部~40重量部に液体成分70重量部~60重量部を加えることが好ましい。
【0043】
本発明の製造装置1では、広い表面積の薄膜重合体を製造しかつ中央スピンドル20の温度を調整でき、節約型の材料調製、材料の良好な均質化、分散及び溶融温度の制御が可能であり、電池用隔離薄膜を製造できる。電池用隔離薄膜(UHMWPE/HMWPE)のポリエチレン(PE)率は30%~40%、液体成分率は、60%~70%である。
【0044】
単一又は複数の注入口(工程長に沿い分布する)でも、液体成分を注入できる。
【0045】
図1は、遊星ロール押出機3を駆動する好適には電動モータの駆動装置16を示す。
【0046】
nを、n≧1、n≧2、n≧3、n≧4、n≧5、n≧6、n≧7、n≧8、n≧9又は≧10として、遊星ロール押出機3は、n個のロール円筒体3
1~3
nを備える。
図1は、6個のロール円筒体3
1~3
6を示す。
【0047】
n個のロール円筒体31~3nは、長軸17に沿って互いに隣接して配置されかつねじ止めで固定される。ロール円筒体31~3nは、密閉すべき構造を有し、製造装置1は、常時密閉される構造で形成される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、バイトン(Viton登録商標)(フッ素ゴム若しくはフルオロカーボンゴムからなり又はこれらを含む)、アルミニウム等の金属、黒鉛、黒鉛箔等を含み又はこれらで構成される密封材で、製造装置1を密閉し又は密封することができる。交換可能な構成単位や標準化される組立要素(モジュール)構造で遊星ロール押出機3を形成できる。遊星ロール押出機3は、任意数のロール円筒体31~3nを備えることができる。特に、製造すべき樹脂溶融物2に適合して、ロール円筒体31~3n数が決定される。
【0048】
図2、
図3及び
図4は、遊星ロール押出機3の精確な構造を示す。
図1に示す実施の形態と同様に、
図2に示す遊星ロール押出機3の実施の形態も、長軸17に沿って一列に配置され、ねじ止めかつ/又は連結具で接続される6個のロール円筒体3
1~3
6を備える。前記の通り、側部供給器7を通じて、充填開口3a内に出発物質を導入することができる。計量装置8又は計量ポンプ装置10は、第1の計量ポンプ10aのみを備える。複数の計量ポンプ10aの採用も勿論可能である。第1の計量ポンプ10aは、液体成分の第1の貯蔵容器13aに直接接続されない。玉弁18を介して第1の貯蔵容器13aと第2の貯蔵容器13bは、計量ポンプ装置10に接続され、第1の計量ポンプ10aは、玉弁18を介して、第1の貯蔵容器13a又は第2の貯蔵容器13bに連結され又は連結できる。不図示の設定装置を介して自動的に又は手動で玉弁18を調節し、選択することができる。制御装置14を介して設定装置を制御できる。単一の貯蔵容器13aのみを採用してもよい。この場合、玉弁18を省略できる。任意数の貯蔵容器13a, 13bを設けられるが、複数の貯蔵容器13a,13bを設けると、運転中に液体成分を迅速に交換できる。
【0049】
遊星ロール押出機3を駆動する駆動装置16と、充填開口3aを有する第1のロール円筒体31との間に設けられる接続円筒体19は、別の薄膜の製造に用いられる。接続円筒体19は、遊星ロール押出機3の長手方向17に配置される単一の螺旋移送機のみを備える。接続円筒体19は、本発明の製造装置1には不要であるが、製造装置1の概略組立構造を示し、遊星ロール押出機3の組立構造を特に明示する。特に、図示しないViton(登録商標)軸封止体(フッ素ゴム又はフルオロカーボンゴムからなり又はこれらを含む)により密閉される接続円筒体19は、樹脂溶融物2又は出発物質(重合体又は液体成分)の漏洩を阻止する。
【0050】
図3は、特定のロール円筒体3
3を例示する。中央スピンドル20は、遊星ロール押出機3全体を貫通する点に留意すべきである。全ロール円筒体3
1~3
nを貫通する中央スピンドル20を一体形成することが好ましい。中央スピンドル20に外歯が形成される。各ロール円筒体3
1~3
nは、内歯付きの円筒体21(本図では内歯を省略)と、整数mをm≧3、m≧5、m≧7、m≧9、m≧11、m≧13からm≧20として、m個の歯付き遊星スピンドル22とを有する。中央スピンドル20と、m個の遊星スピンドル22は、ロール円筒体3
1~3
nの円筒体21内に配置される。遊星スピンドル22は、(中心に配置される)中央スピンドル20と、円筒体21との間に配置される。駆動装置16は、中央スピンドル20のみを回転駆動して、中央スピンドル20の回転により、中央スピンドル20と円筒体21との間でm個の遊星スピンドル22が転動することが好ましい。
【0051】
図3は、樹脂溶融物2を前方に圧送しかつ同時に圧送力を生ずるねじれ角45°のはすば歯車を備える円筒体21、中央スピンドル20、遊星スピンドル22を示す。
【0052】
円筒体21は、外側スリーブ23により固定されかつ包囲される。
【0053】
図2に示すように、略全てのロール円筒体3
1~3
nの内側に配置される遊星スピンドル22は、各ロール円筒体3
1~3
nの内側にのみ配置され、ここから更に隣接するロール円筒体3
1~3
nには遊星スピンドル22は、延出しない。最初の2つの隣接するロール円筒体3
1, 3
2間に例外は、存在する。ロール円筒体3
1, 3
2は、第1のロール円筒体3
1内と、第2のロール円筒体3
2内に貫通して配置される遊星スピンドル22を備えることが好ましい。隣接する最初の2つのロール円筒体3
1, 3
2間に、円筒体21の内歯を形成する歯付き中間リング25を装入(挿入)して、遊星スピンドル22を良好に転動できることが好ましい。
図2の例では、更に、ロール円筒体3
1~3
n、特に第1のロール円筒体3
1の内側に、単一の追加歯付き中間リング25も装入される。第1のロール円筒体3
1の中央に中間リング25を装入することが好ましい。
【0054】
少なくとも第3のロール円筒体32後流、好ましくはn番目のロール円筒体3nまで、2つの隣接するロール円筒体32~3nの各間に、分散リング26が配置される。第3のロール円筒体32(第3のロール円筒体33への移行部)では、分散リング26の環状隙間は、n-1番目のロール円筒体3n-1と、n番目のロール円筒体3nとの間の分散リング26の環状隙間よりも大きいことが好ましい。充填開口3aの最も近くに配置される第1の分散リング26のみに、より大きな環状間隙を設けることが好ましい。これ以外の分散リング26の全ての環状隙間の大きさは、同一の大きさであることが好ましい。
【0055】
あるロール円筒体31~3n-1から隣接するロール円筒体32~3nへの移行部では、中央スピンドル20の歯は、中断する。同様の中段は、遊星スピンドル22の歯にも適用される。基本的には(規則的)間隔で中断部を設けて、十分な横断方向混合を行える。
【0056】
図2に示す実施の形態では、1個のロール円筒体3
1~3
nから別の隣接するロール円筒体3
1~3
nへの移行部に配置される単一又は複数の付加注入装置11が各遊星ロール押出機3に沿って計量装置8に設けられ、単一又は複数の付加注入装置11は、精確に計量する液体成分の追加量を遊星ロール押出機3中に注入する。各ロール円筒体3
1~3
n内に付加注入装置11を取り付けることができる。同一又は異なる液体成分を個別に注入できる。遊星ロール押出機3に沿う付加注入装置11毎に注入量を変更できる。
【0057】
図2は、採用する種々の圧力検出器30, 31も示す。n番目のロール円筒体3
nに圧力検出器30を設け又はn番目のロール円筒体3
nと溶融物ポンプ4の入口端4aとの間に圧力検出器30を設けて、樹脂溶融物2の圧力を測定することが好ましい。測定する圧力値が、基準値未満のとき、制御装置14は、計量装置8に信号を送出して、計量装置8の排出量を増加させる。また、制御装置14は、補足的又は代替的に、駆動装置16に信号を送出して、駆動装置16は、中央スピンドル20の回転数を増加させる。制御装置14は、補足的又は代替的に、溶融物ポンプ4の回転数を低下させる。これらの動作により、少なくとも1個の圧力検出器30が測定する圧力値は、所定の基準値に略到達する(誤差は<10%が好ましい)。
【0058】
測定する圧力値が基準値より大きいとき、制御装置14は、補足的又は代替的に、計量装置8に信号を送出して、計量装置8の排出量を低下させる。制御装置14は、補足的又は代替的に、駆動装置16に信号を送出して、駆動装置16は、中央スピンドル20の回転数を低下させる。制御装置14は、補足的又は代替的に、溶融物ポンプ4に信号を送出して、溶融物ポンプ4の回転数を上昇させる。前記動作により、少なくとも1個の圧力検出器30が測定する圧力は、所定の基準値に略到達する(誤差は<10%が好ましい)。
【0059】
図2に示すように、別のロール円筒体3
1~3
n-1内又は別のロール円筒体3
1~3
n-1間に設けられる複数の付加圧力検出器31により、遊星ロール押出機3内の圧力を測定することができる。少なくとも1個の圧力検出器30又は複数の付加圧力検出器31の少なくとも1個が測定する圧力値の圧力変動が、閾値より大きいとき、制御装置14は、駆動装置16に信号を送出して、駆動装置16により中央スピンドル20の回転数を低下させかつ/又は溶融物ポンプ4の回転数を上昇することができる。圧力変動が増大すると、遊星ロール押出機3内での樹脂溶融物2の滞留時間が極度に短くなり、樹脂溶融物2を均質化する遊星ロール押出機3内での混錬が不十分になる場合がある。また、樹脂溶融物2の充填量が少な過ぎると、部分的に充填される複数の領域での圧力急上昇と複数の後退停滞領域での例えば複数の分散リング26等での急放電が発生する難点がある。
【0060】
遊星ロール押出機3内の樹脂溶融物2の滞留時間に影響を与える主要因は、樹脂溶融物2を後方に停滞させる溶融物ポンプ4の搬送圧力に加えて、特定の押出力を生ずる遊星ロール押出機3の回転数である。一定出力の駆動装置16で中央スピンドル20の回転数が増加する程、押出力が低下して、樹脂溶融物2の静止時間が短くなる。これにより、樹脂溶融物2へのせん断作用が増大し、溶融温度が上昇する。
【0061】
駆動装置16の一定出力が維持されると、遊星ロール押出機3の回転数が小さい程、押出力は増大し、静止時間は長くなる。これにより、せん断作用と溶融温度は低下する。
【0062】
製剤と許容可能な溶融温度に応じて、最適な動作点を設定できる。
【0063】
溶融温度が低くかつ圧力変動が小さい程良好な均質化を達成できることが重要である。圧力変動が大きいことは、通常樹脂溶融物2の非均質性を意味する。遊星ロール押出機3の押出力が低過ぎても又は高過ぎても、圧力変動が発生し得る。押出力が低過ぎると、分散リング等の後退停滞領域で急放電が発生して、部分的に充填される領域内で、圧力上昇が生じうる。押出力が高過ぎると、樹脂溶融物2に作用するせん断力が不十分となり、均質な樹脂溶融物2が生成されない。
【0064】
図2、
図3及び
図4に示すように、中央スピンドル20を貫通する全長さに沿う少なくとも1個の流路40aが設けられる。
図4は、1個の流路40aを示すが、
図2と
図3では、2つの流路40a, 40bが設けられる。
図3は、往路となる流路40aと、復路となる別の流路40bとを示す。ポンプ装置41と、加熱及び/又は冷却装置42(
図2)は、熱媒体、特に熱媒体油又は水形態の流体を特定の温度に調整して、少なくとも1個の流路40aを通る熱媒体を循環させる。これにより、樹脂溶融物2を特定の温度に調節することができる。中央スピンドル20は、中央スピンドル20の同一端部又は異なる端部に配置される流路40a用又は流路40a, 40b用の相応の接続部又は入力部/出力部を備える。
【0065】
ロール円筒体3
1~3
nも同様である。各ロール円筒体3
1~3
nは、少なくとも1個の温度調整路45a(
図2)を備える。熱媒体を特定の温度に調整する温度調整装置51と、各ロール円筒体3
1~3
nの少なくとも1個の温度調整路45aを通じて熱媒体を流動させるポンプ装置50とが設けられ、ロール円筒体3
1~3
n内の樹脂溶融物2は、特定の温度に調整される。ロール円筒体3
1~3
nの少なくとも1個の温度調整路45aは、互いに分岐され(同一熱媒体の貫流を阻止する)、異なる温度に調整でき、第1のロール円筒体3
1内の熱媒体温度は、n番目のロール円筒体3
n中の熱媒体の温度より高いことが理想的である。しかし、この温度分布は、必ずしも必要はない。
図3は、温度調整路45aを例示するに過ぎない。温度調整路45aは、樹脂溶融物2が通過する開口ではない。
【0066】
中央スピンドル20内を貫通して流動する熱媒体の温度を170℃(誤差は、≦±10℃又は≦±5℃)に精確に設定することが好ましい。尤も、熱媒体の温度は、通常130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃若しくは190℃より高く又は200℃より高く、しかも、205℃、195℃、185℃、175℃、165℃、155℃もしくは145℃より低く又は135℃より低いことが好ましい。
【0067】
同様に、第1のロール円筒体31内の熱媒体温度を170℃(誤差は、≦±10℃、≦±5℃)に設定することが好ましい。尤も、熱媒体温度は、通常80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃もしくは190℃より高く又は200℃より高く、しかも205℃、195℃、185℃、175℃、165℃、155℃、145℃、135℃、125℃、115℃、105℃もしくは95℃より低く又は85℃より低いことが好ましい。
【0068】
第2のロール円筒体32と第3のロール円筒体33内の熱媒体温度を160℃(誤差は、≦±10℃、又は≦±5℃)に精確に設定することが好ましい。尤も、熱媒体温度は、通常100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃若しくは160℃より高く又は170℃より高く、しかも175℃、165℃、155℃、145℃、135℃、125℃若しくは115℃より低く又は105℃よりも低いことが好ましい。
【0069】
第4のロール円筒体34から第6番目又はn番目のロール円筒体3nまでの熱媒体温度を130℃(誤差は、≦±10℃又は≦±5℃)に設定することが好ましい。尤も、熱媒体温度は、通常100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃若しくは160℃より高く又は170℃より高く、しかしも175℃、165℃、155℃、145℃、135℃、125℃若しくは115℃より低く又は105℃より低いことが好ましい。
【0070】
前記温度設定により、熱媒体の均質性、圧力変動及び押出機からの帯状樹脂溶融物2を最適な形態に保持できる。中央スピンドル20とロール円筒体31~3nとを個別に温度調整すると、樹脂溶融物2の溶融温度と均質性に良好な影響を与えることができる。
【0071】
図3は、単一、複数又は全てのロール円筒体3
1~3
nに設けられる少なくとも1個の付加温度調整路45bを示す。各n個のロール円筒体3
1~3
nの内側で、各ロール円筒体3
1~3
nの長手方向かつ/又は周方向にずれて、少なくとも1個の温度調整路45aと、少なくとも1個の付加温度調整路45bが配置される。ポンプ装置50と温度調整装置51は、熱媒体を特定の温度に調整しかつ各ロール円筒体3
1~3
nの少なくとも1個の付加温度調整路45bを通じて熱媒体を流動させて、特定の温度に樹脂溶融物2を調整することができる。各ロール円筒体3
1~3
nの少なくとも1個の温度調整路45aと、少なくとも1個の付加温度調整路45bは、分離され、温度調整路45a, 45b内の各熱媒体を異なる温度に調整して、非常に精確な異なる温度に調節することができる。樹脂溶融物2は、勿論熱媒体には接触しない。明確化の目的で、
図3は、温度調整路45a, 45bを明示する。樹脂溶融物2は、温度調整路45a, 45bに流入し又はこれから流出することはない。
【0072】
また、種々のロール円筒体31~3n内又は種々のロール円筒体31~3n間に複数の温度検出器35を配置して、遊星ロール押出機3内の種々の箇所の樹脂溶融物2の温度を測定することが好適である。温度検出器35により、樹脂溶融物2の溶融温度又はロール円筒体31~3nの鋼鉄温度を測定することができる。ロール円筒体31~3nの温度が目標温度から逸脱するとき、熱媒体の温度を調整すればよい。実際の溶融温度が許容溶融温度を上回るとき、何等かの冷却手段をとる必要があり、例えば、加熱及び/又は冷却装置(例えば、溶融物管、溶融物用濾過器及び/又はスリット金型5内の)を通る熱媒体の熱供給を停止し又は遊星ロール押出機3を停止して、スリット金型5又は洗浄弁から排出される前の樹脂溶融物2の温度を冷却することができる。
【0073】
複数の温度検出器35の1個又は複数個の温度値が温度基準値上回るとき、制御装置14によりポンプ装置50と温度調整装置51とを制御して、ポンプ装置50と温度調整装置51により、温度基準値を上回る温度値を示す温度検出器35を備えるロール円筒体31~3n内の熱媒体を更に冷却しかつ/又はこれを迅速に送出して、樹脂溶融物2を冷却することができる。ポンプ装置50を貫流する熱媒体流量を一定に保持することが好ましい。ポンプ装置50が送出する熱媒体の温度のみを変更することができる。制御装置14は、補足的又は代替的に遊星ロール押出機3の作動を停止することができる。
【0074】
複数の温度検出器35の1個又は複数の温度値が温度基準値を下回るとき、制御装置14は、補足的に又は代替的に、ポンプ装置50を制御して、温度基準値を下回る温度値を示す温度検出器35を備えるロール円筒体31~3n内の熱媒体をより緩慢に送出しかつ/又は温度調整装置51を制御して、熱媒体を加熱して、樹脂溶融物2の温度を上昇することができる。これにより、目標値通りの温度調節を行うことができる。
【0075】
中央スピンドル20の少なくとも1個の流路40a又はロール円筒体31~3nの温度調整路45a又は45b内に、温度300℃以下の熱媒体油を供給することができる。
【0076】
本発明は、前記実施の形態に限定されない。本発明では、本明細書で説明する全特徴及び/又は図示する全特徴を任意に互いに組み合わせることができる。