(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】クラッシュボックス、及びクラッシュボックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20240424BHJP
B60R 19/34 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B62D21/15 C
B60R19/34
(21)【出願番号】P 2020188479
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 浩平
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051473(JP,A)
【文献】特開平08-188174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B60R 19/34
F16F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延出されたウェブ、当該ウェブの上端から車幅方向に延出された上部フランジ、及び当該ウェブの下端から車幅方向に延出された下部フランジによって略U字状に形成される第一部材及び第二部材を含んで構成され、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした状態で当該上部フランジ同士及び当該下部フランジ同士が溶接されたクラッシュボックスであって、
前記第一部材及び前記第二部材におけるそれぞれの前記上部フランジ及び前記下部フランジは、車体前後方向に間隔が隔てられ、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした際に孔部となる複数の切欠き部を備え
、
前記孔部には、前記切欠き部を介して前記第一部材及び前記第二部材とを位置決めする円柱状の位置決めピンを配置可能であり、
前記孔部は、前記上部フランジ及び前記下部フランジに設けられる前側孔部と、前記前側孔部の後方で前記上部フランジ及び前記下部フランジに設けられる後側孔部とを備え、
前記上部フランジの前記前側孔部と前記下部フランジの前記前側孔部とは、車体前後方向において同位置に設けられ、
前記上部フランジの前記後側孔部と前記下部フランジの前記後側孔部とは、車体前後方向において同位置に設けられ、
前記前側孔部は、前記位置決めピンによって車体前後方向及び車体幅方向に位置決めされることが可能な円形状又は正多角形状であり、
前記後側孔部は、前記位置決めピンに対し車体前後方向に長い細長形状であって、車体前後方向に延びる一対のストレート部を有して前記位置決めピンによって車体幅方向に位置決め可能であるクラッシュボックス。
【請求項2】
前記第一部材の前記ウェブ及び前記第二部材の前記ウェブの少なくとも一方は、貫通孔を備える請求項
1に記載のクラッシュボックス。
【請求項3】
前記貫通孔は、車体前後方向において、前記孔部に対応する位置に設けられる請求項
2に記載のクラッシュボックス。
【請求項4】
車体前後方向に延出されたウェブ、当該ウェブの上端から車幅方向に延出された上部フランジ、及び当該ウェブの下端から車幅方向に延出された下部フランジによって略U字状に形成される第一部材及び第二部材を含んで構成され、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした状態で当該上部フランジ同士及び当該下部フランジ同士が溶接されたクラッシュボックスを製造する方法であって、
前記第一部材及び前記第二部材におけるそれぞれの前記上部フランジ及び前記下部フランジとなる部位に、車体前後方向に間隔が隔てられ、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした際に孔部となる複数の切欠き部を設ける工程と、
前記第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにするとともに、前記孔部に位置決めピンを配置する工程と、
前記位置決めピンを前記孔部に配置した状態で前記上部フランジ同士及び前記下部フランジ同士を溶接する工程と、
前記上部フランジ同士及び前記下部フランジ同士を溶接した後、前記位置決めピンを前記孔部から取り外す工程と、を含むクラッシュボックスの製造方法。
【請求項5】
複数の前記切欠き部による複数の前記孔部は、一つは正多角形状又は円形状であり、他は車体前後方向の長さが車幅方向よりも長くなる細長形状である請求項
4に記載のクラッシュボックスの製造方法。
【請求項6】
前記位置決めピンを前記孔部から取り外した後、前記クラッシュボックスを所定の溶剤に浸漬してその後引き上げるとともに、前記孔部から当該クラッシュボックス内の当該溶剤及び/又は空気を排出させる工程を含む請求項
4又は
5に記載のクラッシュボックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が衝突した際の衝撃を吸収するクラッシュボックス、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば
図6に示すように、ピックアップトラックやSUV用の車両120に使用される車体フレーム121の前頭部には、車両が衝突した際に潰れることで衝撃を吸収するクラッシュボックス100が設けられている。下記の特許文献1にも、同様のクラッシュボックスが示されている。
【0003】
図6に示すように従来のクラッシュボックス100は、一般的に第一部材101と第二部材102で構成されている。第一部材101と第二部材102は、車体前後方向に延出されたウェブ101a、102aと、ウェブ101a、102aの上端から車幅方向に延出された上部フランジ101b、102bと、ウェブ101a、102aの下端から車幅方向に延出された下部フランジ101c、102cとを備えて略U字状に形成されている。そして、第一部材101と第二部材102を向かい合わせにした状態で上部フランジ101bと上部フランジ102bを溶接し、また下部フランジ101cと下部フランジ102cを溶接することによって閉断面構造のクラッシュボックス100が形成される。
【0004】
またクラッシュボックス100には、衝突時の軸圧潰と衝撃吸収が安定して行われることを目的として、図示したように第一部材101と第二部材102に対して上下方向に延在するビード部101d、102dを設けることが一般的である。
【0005】
また、向かい合わせにして組み合わせた際に上部フランジ101bと上部フランジ102bとの重なる部位(下部フランジ101cと下部フランジ102cとが重なる部位)が外側に位置する部材(本実施形態では第一部材101)には、これらを組み合わせた際に幅方向の位置決めとなるランス部101eが設けられている。ランス部101eは、
図6に示すように上部フランジ101bと下部フランジ101cを局所的に凹ませるようにして形成した突起状になる部分であって、第一部材101に対して第二部材102を車幅方向に移動させた際、上部フランジ102bの長手方向端部と下部フランジ102cの長手方向端部がランス部101eに当接して幅方向の位置が一意に決まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところでこのような第一部材101と第二部材102を形成するにあたっては、
図7に示すように、まず板状の素材に対してブランク加工を行って所定の外形や穴等を備えるブランクピアスB10を形成する工程を実施し(
図7(a)を参照)、次いで、ブランクピアスB10を曲げるフォームを行う工程を実施する(
図7(b)を参照)。なお、
図6に示したように第一部材101と第二部材102にはビード部101d、102dを設けているため、ウェブ101a、102aに対する上部フランジ101b、102bと下部フランジ101c、102cの角度を1回の工程で安定的に直角にすることは難しい。このため、フォームを行った後は、角度の矯正を行う2次加工(リストライク工程)を実施する必要がある(
図7(c)を参照)。更に第一部材101においては、ランス部101eを形成するためにランス加工を実施する工程も必要である(
図7(d)を参照)。
【0008】
このように従来のクラッシュボックス100は、ビード部101d、102dを備えることによる角度を矯正する工程やランス部101eを設けるための工程を必要としていて、加工費や金型費の増大につながっている。
【0009】
本発明はこのような従来の問題点を解決することを目的とするものであって、適切な衝撃吸収能力を確保しつつ、従来に比してコスト削減を図ることができるクラッシュボックス、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体前後方向に延出されたウェブ、当該ウェブの上端から車幅方向に延出された上部フランジ、及び当該ウェブの下端から車幅方向に延出された下部フランジによって略U字状に形成される第一部材及び第二部材を含んで構成され、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした状態で当該上部フランジ同士及び当該下部フランジ同士が溶接されたクラッシュボックスであって、前記第一部材及び前記第二部材におけるそれぞれの前記上部フランジ及び前記下部フランジは、車体前後方向に間隔が隔てられ、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした際に孔部となる複数の切欠き部を備え、前記孔部には、前記切欠き部を介して前記第一部材及び前記第二部材とを位置決めする円柱状の位置決めピンを配置可能であり、前記孔部は、前記上部フランジ及び前記下部フランジに設けられる前側孔部と、前記前側孔部の後方で前記上部フランジ及び前記下部フランジに設けられる後側孔部とを備え、前記上部フランジの前記前側孔部と前記下部フランジの前記前側孔部とは、車体前後方向において同位置に設けられ、前記上部フランジの前記後側孔部と前記下部フランジの前記後側孔部とは、車体前後方向において同位置に設けられ、前記前側孔部は、前記位置決めピンによって車体前後方向及び車体幅方向に位置決めされることが可能な円形状又は正多角形状であり、前記後側孔部は、前記位置決めピンに対し車体前後方向に長い細長形状であって、車体前後方向に延びる一対のストレート部を有して前記位置決めピンによって車体幅方向に位置決め可能であることを特徴とする。
【0012】
また前記第一部材の前記ウェブ及び前記第二部材の前記ウェブの少なくとも一方は、貫通孔を備えることが好ましい。
【0013】
また前記貫通孔は、車体前後方向において、前記孔部に対応する位置に設けられることが好ましい。
【0014】
また本発明は、車体前後方向に延出されたウェブ、当該ウェブの上端から車幅方向に延出された上部フランジ、及び当該ウェブの下端から車幅方向に延出された下部フランジによって略U字状に形成される第一部材及び第二部材を含んで構成され、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした状態で当該上部フランジ同士及び当該下部フランジ同士が溶接されたクラッシュボックスを製造する方法であって、前記第一部材及び前記第二部材におけるそれぞれの前記上部フランジ及び前記下部フランジとなる部位に、車体前後方向に間隔が隔てられ、当該第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにした際に孔部となる複数の切欠き部を設ける工程と、前記第一部材及び当該第二部材を向かい合わせにするとともに、前記孔部に位置決めピンを配置する工程と、前記位置決めピンを前記孔部に配置した状態で前記上部フランジ同士及び前記下部フランジ同士を溶接する工程と、前記上部フランジ同士及び前記下部フランジ同士を溶接した後、前記位置決めピンを前記孔部から取り外す工程と、を含むクラッシュボックスの製造方法でもある。
【0015】
このようなクラッシュボックスの製造方法において、複数の前記切欠き部による複数の前記孔部は、一つは正多角形状又は円形状であり、他は車体前後方向の長さが車幅方向よりも長くなる細長形状であることが好ましい。
【0016】
また前記位置決めピンを前記孔部から取り外した後、前記クラッシュボックスを所定の溶剤に浸漬してその後引き上げるとともに、前記孔部から当該クラッシュボックス内の当該溶剤及び/又は空気を排出させる工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のクラッシュボックスによれば、車両が衝突した際には、第一部材及び第二部材の切欠き部によって形成される孔部を起点として軸圧潰させることができるため、意図した衝撃吸収能力を得ることができる。また従来のようなビード部は不要であり、更にクラッシュボックスを製造する際は孔部を第一部材と第二部材との位置決めとして利用できてランス部も不要であるため、これらを設けるために必要としていた加工費や金型費を省くことが可能となり、コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るクラッシュボックスの一実施形態を示した斜視図である。
【
図2】
図1に示したクラッシュボックスの分解斜視図である。
【
図3】クラッシュボックスを構成する第一部材、第二部材を製造する工程を説明するための図である。
【
図4】第一部材と第二部材からクラッシュボックスを製造する工程を説明するための図である。
【
図5】
図1に示したクラッシュボックスの変形例を示した図である。
【
図6】従来のクラッシュボックスを示した図である。
【
図7】従来のクラッシュボックスを構成する第一部材を製造する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係るクラッシュボックスを具現化した一例について説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るクラッシュボックスの一実施形態を示した図である。
図1、
図2に示すように本実施形態のクラッシュボックス10は、第一部材1と第二部材2とで構成されている。第一部材1は、車体前後方向に延出されたウェブ1aと、ウェブ1aの上端から車幅方向に延出された上部フランジ1bと、ウェブ1aの下端から車幅方向に延出された下部フランジ1cとを備えて略U字状に形成されている。第二部材2は、第一部材1に対して車体前後方向を基準として略線対称の形状になるものであって、車体前後方向に延出されたウェブ2aと、ウェブ2aの上端から車幅方向に延出された上部フランジ2bと、ウェブ2aの下端から車幅方向に延出された下部フランジ2cとを備えて略U字状に形成されている。
【0021】
また第一部材1は、上部フランジ1bの長手方向端部に、車体前後方向に間隔が隔てられている複数の切欠き部(以下、車体前側を上部前側第一切欠き部1dと称し、車体後側を上部後側第一切欠き部1eと称する)を備えている。また下部フランジ1cの長手方向端部には、上部前側第一切欠き部1dと上部後側第一切欠き部1eに対して車体前後方向において同位置に、下部前側第一切欠き部1fと下部後側第一切欠き部1gが設けられている。本実施形態において、上部前側第一切欠き部1dと下部前側第一切欠き部1fは半円形状であり、上部後側第一切欠き部1eと下部後側第一切欠き部1gは、車体前後方向の長さが車幅方向よりも長くなる半角丸長方形状(半トラック形状)である。
【0022】
更に第一部材1は、ウェブ1aを貫通する貫通孔(以下、車体前側を前側貫通孔1hと称し、車体後側を後側貫通孔1jと称する)を備えている。前側貫通孔1hと後側貫通孔1jはともに同径の円形状である。また前側貫通孔1hは、車体前後方向において、上部前側第一切欠き部1dと下部前側第一切欠き部1fに対応する位置(前側貫通孔1hの中心における車体前後方向位置と、上部前側第一切欠き部1dと下部前側第一切欠き部1fの中心における車体前後方向位置は一致する)に設けられている。そして後側貫通孔1jは、車体前後方向において、上部後側第一切欠き部1eと下部後側第一切欠き部1gに対応する位置(後側貫通孔1jの中心における車体前後方向位置と、上部後側第一切欠き部1eと下部後側第一切欠き部1gの車体前後方向における中心の位置は一致する)に設けられている。
【0023】
そして第二部材2は、上述した上部前側第一切欠き部1d、上部後側第一切欠き部1e、下部前側第一切欠き部1f、下部後側第一切欠き部1g、前側貫通孔1h、後側貫通孔1jと同様の形態になる上部前側第二切欠き部2d、上部後側第二切欠き部2e、下部前側第二切欠き部2f、下部後側第二切欠き部2g、前側貫通孔2h、後側貫通孔2jを備えている。
【0024】
このような第一部材1と第二部材2は、
図3に示す手順で形成することができる。まず板状の素材に対してブランク加工を行って、第一部材1と第二部材2の外形、上述した切欠き部(上部前側第一切欠き部1d等や上部前側第二切欠き部2d等)、及び上述した貫通孔(前側貫通孔1h等や前側貫通孔2h等)を備えるブランクピアスB1を形成する工程を実施する(
図3(a)を参照)。次いで第一部材1と第二部材2の長手方向両端部を直角に曲げるフォームを行う工程を実施する(
図3(b)を参照)。これにより、略U字状になる第一部材1と第二部材2を形成することができる。
【0025】
ところで、
図6に示した従来の第一部材101と第二部材102は、これを形成するにあたって
図7に示したように基本的に4つの工程を要する。これに対して本実施形態の第一部材1と第二部材2は、基本的に2つの工程で形成することができるため、従来に比して加工費や金型費を抑制してコストを削減することができる。
【0026】
このようにして形成した第一部材1と第二部材2は、
図4に示す手順でクラッシュボックス10として組み立てられる。まず
図4(a)に示すように、第一部材1と第二部材2の何れか一方(図示例では第一部材1)を平板状の組み立て治具J1に載置する。図示したように第一部材1は、組み立て治具J1に対してウェブ1aが組み立て治具J1の上面に当接する向きで載置される。
【0027】
そして
図4(b)に示すように第二部材2を、第一部材1に対して向かい合わせにした状態で第一部材1に被せる。このとき、上部前側第一切欠き部1dと下部前側第一切欠き部1f、及び上部前側第二切欠き部2dと下部前側第二切欠き部2fとの間には、位置決めピンJ2を配置する。なお、本実施形態の位置決めピンJ2は、半円形状になる上部前側第一切欠き部1d等と直径が等しい円柱状である。また上部後側第一切欠き部1eと下部後側第一切欠き部1g、及び上部後側第二切欠き部2eと下部後側第二切欠き部2gとの間にも、位置決めピンJ2を配置する。このように位置決めピンJ2を配置することによって、第一部材1と第二部材2は、車体前後方向と車体幅方向に対して一意に位置決めされる。なお、第一部材1と第二部材2を形成する際の加工条件や金型精度等によっては、例えば上部前側第一切欠き部1dに対する上部後側第一切欠き部1eの車体前後方向位置と、上部前側第二切欠き部2dに対する上部後側第二切欠き部2eの車体前後方向位置にバラツキが生じることがあるが、上述したように上部後側第一切欠き部1eと上部後側第二切欠き部2eは、半角丸長方形状(半トラック形状)であるため、このバラツキを吸収することができる。そして第二部材2を第一部材1に被せた後は、第二部材2を第一部材1に押し付けるようにしてクランプを行う。
【0028】
その後は、
図4(c)に示すように、溶接トーチWによって、上部フランジ1bの長手方向端部で上部フランジ1bと上部フランジ2bを溶接し、また下部フランジ1cの長手方向端部で下部フランジ1cと下部フランジ2cを溶接する。その後、2本の位置決めピンJ2を取り外すことによって、
図1に示すクラッシュボックス10が形成される。このようにして組み立てたクラッシュボックス10には、図示したように上部前側第一切欠き部1dと上部前側第二切欠き部2dで構成される円形状の孔部(以下、前側孔部H1と称する)が形成される。なお
図1には示していないが、下部前側第一切欠き部1fと下部前側第二切欠き部2fによっても円形状の前側孔部H1が形成される。またクラッシュボックス10には、上部後側第一切欠き部1eと上部後側第二切欠き部2eで形成される角丸長方形状(トラック形状)の後側孔部H2も形成される。なお
図1には示していないが、下部後側第一切欠き部1gと下部後側第二切欠き部2gによっても角丸長方形状(トラック形状)の後側孔部H2が形成される。
【0029】
このようにクラッシュボックス10を形成した後は、
図6に示した従来のクラッシュボックス100のように、車体フレーム121の前頭部に溶接等でこれを取り付ける。そして所定の溶剤(塗装剤、錆止め剤等)に浸漬させてこれを引き上げることによって、クラッシュボックス10の周囲に溶剤を塗着させることができる。なお、クラッシュボックス10を溶剤に浸漬させると、クラッシュボックス10の内側に溶剤が入り込むことになるが、内側の空気が抜けずにエアポケットができた状態になると、溶剤が塗着できない部分が生じることになる。また溶剤に浸漬させたクラッシュボックス10を引き上げた際、その内側に溶剤が残っていると、空気等をクラッシュボックス10の内側に噴出させて残った溶剤を排出させる工程が必要になる。一方、本実施形態のクラッシュボックス10は、前側孔部H1や後側孔部H2、更には前側貫通孔1h、2hや後側貫通孔1j、2jを設けていて、内側の空気や溶剤を前側孔部H1等から排出することができるため、これらの不具合を防止することができる。
【0030】
以上の工程により形成したクラッシュボックス10は、前側孔部H1や後側孔部H2が位置する部位の強度が他の部位よりも弱くなっている。このため、車両が衝突した際には前側孔部H1や後側孔部H2が起点となって軸圧潰が発生する。すなわち、意図した部位から潰れていくため、適切な衝撃吸収能力を発揮させることができる。また本実施形態においては、後側孔部H2は車体前後方向にストレート部がある角丸長方形状(トラック形状)である一方、前側孔部H1は円形状であるため、車体前後方向からの力に対して前側孔部H1の方が後側孔部H2よりも強度が弱くなっている。すなわち、車両が衝突した際に前方から衝撃力が加わった際、前方に位置する前側孔部H1を、後側に位置する後側孔部H2よりも優先して圧潰させることができるため、意図した部位から潰れる機能がより安定的なものとなる。またクラッシュボックス10は、前側貫通孔1h、2hや後側貫通孔1j、2jを備えていて、ウェブ1a、2aにおけるこれらを設けた部位の強度も局所的に弱くなっている。特に本実施形態においては、前側貫通孔1h、2hや後側貫通孔1j、2jは、車体前後方向において、前側孔部H1や後側孔部H2に対応する位置に設けられているため、意図した部位から潰れる機能が更に安定的なものとなる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0032】
例えば前側貫通孔1h、2hや後側貫通孔1j、2jは、必要に応じて設ければよく、前側貫通孔1h、2hのみを残してもよいし、
図5に示すように、これらを全て廃止してもよい。
【0033】
また前側孔部H1や後側孔部H2の形状も種々変更可能である。例えば本実施形態においては、円柱状になる位置決めピンJ2に対して前側孔部H1が円形状になるようにして製造時の位置決めとしたが、前側孔部H1を正方形や正六角形のような正多角形状としても同様の機能を得ることができる。また後側孔部H2は、本実施形態では車体前後方向の長さが車幅方向よりも長くなる角丸長方形状(トラック形状)であったが、この形状に限られず、他の細長形状(例えば車体前後方向の長さが車幅方向よりも長くなる楕円形、長方形等)でもよい。また後側孔部H2は、車体前後方向に2つ以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:第一部材
1a:ウェブ
1b:上部フランジ
1c:下部フランジ
1d:上部前側第一切欠き部(切欠き部)
1e:上部後側第一切欠き部(切欠き部)
1f:下部前側第一切欠き部(切欠き部)
1g:下部後側第一切欠き部(切欠き部)
1h:前側貫通孔(貫通孔)
1j:後側貫通孔(貫通孔)
2:第二部材
2a:ウェブ
2b:上部フランジ
2c:下部フランジ
2d:上部前側第二切欠き部(切欠き部)
2e:上部後側第二切欠き部(切欠き部)
2f:下部前側第二切欠き部(切欠き部)
2g:下部後側第二切欠き部(切欠き部)
2h:前側貫通孔(貫通孔)
2j:後側貫通孔(貫通孔)
10:クラッシュボックス
H1:前側孔部(孔部)
H2:後側孔部(孔部)