(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】水素・酸素発生装置、及び、気液分離タンク
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20240424BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240424BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20240424BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/00 303
C25B15/08 304
(21)【出願番号】P 2020191096
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石井 豊
(72)【発明者】
【氏名】中尾 末貴
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203218(JP,A)
【文献】特開平10-259490(JP,A)
【文献】特開2000-104191(JP,A)
【文献】特開2014-043615(JP,A)
【文献】特開2006-193756(JP,A)
【文献】特開平09-078278(JP,A)
【文献】特開2007-100204(JP,A)
【文献】特開2006-347779(JP,A)
【文献】特開2012-111981(JP,A)
【文献】特開2019-019386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/00
C25B 1/04
C25B 15/00
C25B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュールを備え、
前記水電解モジュールの陽極側からは前記酸素ガスを含む前記生成ガスが前記水とともに排出されるよう構成されており、
前記陽極側から排出された前記生成ガスと前記水とを気液分離するための陽極側気液分離タンクを備えている水素・酸素発生装置であって、
前記陽極側気液分離タンクは、前記陽極側から排出された前記生成ガスと前記水とを収容する収容空間を有し、該収容空間から前記酸素ガスが排出されるガス排出口を有しており、該収容空間の上部において該収容空間の一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口が備えられており、前記陽極側気液分離タンクの内圧が大気圧状態となるように制御され
、前記陽極側気液分離タンクで分離された前記水が前記水電解モジュールに再び供給されて電気分解されるように構成されている水素・酸素発生装置。
【請求項2】
前記電気分解を停止するのに際して前記陽極側気液分離タンクから前記ガス排出口を通じて前記酸素ガスを排出させるための排気装置がさらに備えられている請求項1記載の水素・酸素発生装置。
【請求項3】
前記突出部における水位を検知する水位検知器をさらに備える請求項1
又は2記載の水素・酸素発生装置。
【請求項4】
前記陽極側気液分離タンクは、底部と、底部より上方に向けて筒状に延びる胴部と、該胴部よりも小径な首部とを備え、該首部が前記胴部の上端から肩部を介して上方に延びるように設けられており、前記首部が前記突出部の上端部を構成し、前記ガス排出口が該首部に備えられている請求項1乃至
3の何れか1項に記載の水素・酸素発生装置。
【請求項5】
前記水電解モジュールの陰極側からは前記水素ガスを含む前記生成ガスが前記水とともに排出されるように構成されており、
前記陰極側から排出された前記生成ガスと前記水とを気液分離するための陰極側気液分離タンクをさらに備える、請求項1乃至
4の何れか1項に記載の水素・酸素発生装置。
【請求項6】
水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュールを備え、
前記水電解モジュールの陽極側からは前記酸素ガスを含む前記生成ガスが前記水とともに排出されるよう構成されており、
前記陽極側から排出された前記生成ガスと前記水とを気液分離するための陽極側気液分離タンクを備えている水素・酸素発生装置であって、
前記陽極側気液分離タンクは、前記陽極側から排出された前記生成ガスと前記水とを収容する収容空間を有し、該収容空間から前記酸素ガスが排出されるガス排出口を有しており、該収容空間の上部において該収容空間の一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口が備えられており、
該ガス排出口より排出される酸素ガス中の水素濃度を測定する水素測定器を備えている水素・酸素発生装置。
【請求項7】
水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュールを備え、前記水電解モジュールの陽極側からは前記酸素ガスを含む前記生成ガスが前記水とともに排出されるよう構成されている水素・酸素発生装置に用いられ、且つ、
前記酸素ガスを含む前記生成ガスと前記水とを気液分離するために用いられる陽極側気液分離タンクであって、
前記酸素ガスを含む前記生成ガスと前記水とを収容する収容空間を有し、該収容空間から前記酸素ガスが排出されるガス排出口を有しており、該収容空間の上部において該収容空間の一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口が備えられており、前記陽極側気液分離タンクの内圧が大気圧状態となるように制御され
、
底部と、底部より上方に向けて筒状に延びる胴部とを備え、該胴部よりも上方に該胴部よりも小径な前記突出部を備え、該突出部における水位を検知する水位検知器と前記胴部における水位を検知する水位検知器とを備えている気液分離タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素・酸素発生装置に関し、より詳しくは、水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュールを備えた水素・酸素発生装置、及び、このような水素・酸素発生装置に用いられる気液分離タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギー源として水素ガスを利用することが検討されている。
水素ガスを得る方法として、水を電気分解することによって水素ガスと酸素ガスとを生成ガスとして発生させる水電解モジュールを備えた水素・酸素発生装置を利用することが従来行われている。
【0003】
前記水電解モジュールとしては、水素ガスを発生させる陰極室と、酸素ガスを発生させる陽極室と、該陽極室と該陰極室との間を仕切る固体高分子電解質膜とを有するものが知られている。
また、この種の水電解モジュールを備えた水素・酸素発生装置としては、電気分解される水量よりも過剰な水を前記陽極室に供給し、陽極側から電気分解されずに残った水と酸素ガスとを含む気液混合状態の流体を排出させ、該流体を気液分離タンクで気液分離するようにし、分離された水を再び陽極室に供給して電気分解させるように構成されているものが知られている(下記特許文献1)。
【0004】
このような水素・酸素発生装置で得られる生成ガスの内、水素ガスの利用を主目的とする場合には、酸素ガスについては利用されない場合があり、前記気液分離タンクで分離された水は、再び陽極室に供給されて電気分解に用いられる一方で酸素ガスは気液分離タンクから排出されて大気中に放出されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水素・酸素発生装置には、省スペース化が求められている。
水素・酸素発生装置の省スペース化には種々の取り組みがなされているが、いまだ改善の余地が残されている。
そこで、本発明は、水素・酸素発生装置の省スペース化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明者は、生成ガスと水とを気液分離するための気液分離タンクでは、分離性を高める上で水面から一定以上の高さのところから生成ガスが排出されており、水の収容スペース以外に生成ガスの収容スペースも広く確保されている点に着目して鋭意検討を行った。
そして、本発明者は、鋭意検討を行った結果、気液分離タンクにおける生成ガスの排出箇所に水面からの距離を保たせつつ該気液分離タンクの収容スペースを減少させることが装置の省スペース化に有効であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、
水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュールを備え、
少なくとも一方の前記生成ガスが前記水とともに前記水電解モジュールから排出されるよう構成されており、
前記生成ガスと前記水とを気液分離するための気液分離タンクを備えている水素・酸素発生装置であって、
前記気液分離タンクは、前記生成ガスと前記水とを収容する収容空間を有し、該収容空間から前記生成ガスが排出されるガス排出口を有しており、該収容空間の上部において該収容空間の一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口が備えられている水素・酸素発生装置、を提供する。
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、
水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュールを備え、少なくとも一方の前記生成ガスが前記水とともに前記水電解モジュールから排出されるよう構成されている水素・酸素発生装置に用いられ、且つ、
前記生成ガスと前記水とを気液分離するために用いられる気液分離タンクであって、
前記生成ガスと前記水とを収容する収容空間を有し、該収容空間から前記生成ガスが排出されるガス排出口を有しており、該収容空間の上部において該収容空間の一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口が備えられている気液分離タンク、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば収容空間の一部が上方に突出している突出部が気液分離タンクに設けられており、生成ガスが排出されるガス排出口が該突出部に備えられていることから、生成ガスの排出箇所に水面からの距離を保たせつつ気液分離タンクの収容スペースを減少させることができ、水素・酸素発生装置の省スペース化が図られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る水素・酸素発生装置の装置構成を示した概略図。
【
図2】水素・酸素発生装置に備えられる気液分離タンク(陽極側気液分離タンク)の構造を示した概略図。
【
図3】水素・酸素発生装置の運転開始時のフローを示した概略図。
【
図4】水素・酸素発生装置に備えられる他の態様の気液分離タンク(陽極側気液分離タンク)の構造を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
まず、水素・酸素発生装置1の概要について説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、水を電気分解することにより、該電気分解による生成ガスとして水素ガス及び酸素ガスを発生させる水素・酸素発生部2と、空気から窒素ガスを得る窒素ガス生成部3と、前記窒素ガスを前記水素・酸素発生部2に供給する窒素ガス供給経路4と、前記水素・酸素発生部2で消費される水を補給する水補給部5と、前記水素・酸素発生部2で生成された酸素ガスを系外(例えば、大気中)に放出するための酸素ガス放出経路6と、余剰水を系外に放出するための排水経路7とを備える。
【0014】
前記水素・酸素発生部2は、水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる水電解モジュール21を備える。
該水電解モジュール21は、水素ガスを発生させる陰極室(図示せず)と、酸素ガスを発生させる陽極室(図示せず)とを有する。
また、前記水電解モジュール21は、固体高分子電解質膜(図示せず)を有する。
前記陽極室と前記陰極室は、前記固体高分子電解質膜によって仕切られている。
【0015】
前記水電解モジュール21は、水が供給される水供給口21aを前記陽極室に有する。
また、前記水電解モジュール21は、前記陽極室から排出される気液混合状態の流体として、酸素ガスを含む水を排出する第1排出口21bと、水素ガスを陰極室から排出する第2排出口21cとを有する。
前記第1排出口21bから排出される前記流体に含まれる水は、前記水電解モジュール21に供給された水のうち、電気分解されなかった分であり、前記水電解モジュール21で発生した酸素ガスと共に排出される。
即ち、本実施形態の前記水素・酸素発生部2は、電気分解に必要な水の量に対して過剰な量の水が陽極室に供給されるように構成されている。
前記水素・酸素発生部2は、斯かる構成により、発生した酸素ガスを陽極室から素早く排出できる。
また、前記水素・酸素発生部2は、斯かる構成により、水電解モジュール21を冷却できる。
前記第2排出口21cから排出される水素ガスは、陽極室から固体高分子電解質膜を介して透過する水を含んでおり、湿潤状態の水素ガスとなっている。
【0016】
上記の通り本実施形態の水電解モジュール21は、水が供給されて電気分解が行われるとともに電気分解されずに残った水が陰極側及び陽極側の両方から生成ガスとともに排出されるように構成されている。
【0017】
前記水素・酸素発生部2は、前記水電解モジュール21に供給するための純水を貯留するとともに気液混合状態の流体を気液分離するための気液分離タンク(以下「陽極側気液分離タンク22」ともいう)と、該陽極側気液分離タンク22から前記水電解モジュール21の前記陽極室に水を供給する供給経路23と、前記気液混合状態の流体を前記陽極側気液分離タンク22に返送する返送経路24とをさらに備える。
【0018】
前記供給経路23は、前記陽極側気液分離タンク22から前記水電解モジュール21へと至り、これらを連通させる管などによって構成され得る。
前記返送経路24は、前記水電解モジュール21から前記陽極側気液分離タンク22へと至り、これらを連通させる管などによって構成され得る。
即ち、本実施形態においては、前記水電解モジュール21の陽極室と前記陽極側気液分離タンク22との間を前記供給経路23と前記返送経路24とを通って水が循環する循環経路が形成されている。
前記供給経路23は、前記陽極側気液分離タンク22から前記水電解モジュール21に水を循環供給するためのポンプ23aを有する。
【0019】
本実施形態の水素・酸素発生装置1では、前記水補給部5からの水の補給が前記陽極側気液分離タンク22に対して実施されるべく構成されている。
具体的には、該水補給部5は、前記水素・酸素発生部2で電気分解される水(純水)を製造する純水製造装置51と、該純水を貯留する純水タンク52と、前記陽極側気液分離タンク22と純水タンク52とを連通する管などで構成された水の補給経路53とを備えており、該補給経路53における純水の流通を制御する補給水ポンプ531を備えている。
【0020】
前記陽極側気液分離タンク22は、
図2に示すように、前記酸素ガスと前記水とを収容する収容空間22aを有し、該収容空間22aに前記水補給部5より水が供給される給水口22bと、前記返送経路24を通じて前記陽極室から戻ってきた水(気液混合状態の流体)を流入させるための水流入口22cと、前記酸素ガス放出経路6へ酸素ガスを排出するためのガス排出口22dと、該収容空間22aから水を排出するための排水口22eとを備えている。
該排水口22eには、前記供給経路23を構成する管と前記排水経路7を構成する管とが接続されており、該排水経路7を構成する管には当該管の開閉を行う排水弁71が設けられている。
【0021】
前記水素・酸素発生部2は、前記水電解モジュール21の前記陰極室から排出された湿潤状態の水素ガスを気液分離して水素ガスから液体状態の水を取り除く気液分離タンク(以下「陰極側気液分離タンク25a」ともいう)と、該陰極側気液分離タンク25aから排出された湿潤状態の水素ガスに含まれる水分を捕捉するドレンポット25bと、該ドレンポット25bで水分が除去された水素ガスと吸湿剤(例えば、シリカゲル、ゼオライト等)とを接触させて、水素ガス中にミストや水蒸気となって含まれている水分をさらに取り除く除湿部26とを備える。
【0022】
また、前記水素・酸素発生部2は、前記ドレンポット25bから前記除湿部26に水素ガスを移送する水素ガス移送経路28と、該水素ガス移送経路28を開閉する弁29とをさらに有する。
さらに、前記水素・酸素発生部2は、該水素・酸素発生部2の駆動状態を制御する制御システム80と、該制御システム80で利用される計装用空気としての加圧空気を生成するエアコンプレッサ81と、該エアコンプレッサ81で生成された計装用空気としての加圧空気を貯留する空気貯留タンク82とをさらに有する。
【0023】
本実施形態の前記弁29は、前記計装用空気で駆動する弁である。
前記水素・酸素発生部2は、前記制御システム80からの指令により前記計装用空気を前記弁29に供給することにより、前記弁29を駆動させ前記水素ガス移送経路28を開閉する水素・酸素発生部である。
なお、前記ポンプ23aは、前記エアコンプレッサ81から供給された加圧状態の空気たる計装エアで駆動するポンプであってもよい。
即ち、前記水素・酸素発生部2は、前記制御システム80からの指令により前記計装用空気を前記ポンプ23aに供給することにより、前記ポンプ23aを駆動させ前記陽極側気液分離タンク22から前記水電解モジュール21に水を供給する水素・酸素発生部であってもよい。
【0024】
本実施形態の前記水素・酸素発生部2は、前記水電解モジュール21における水の電気分解が停止されるのに際して前記陽極側に存在する酸素ガスを窒素ガスでパージして前記酸素ガス放出経路6を通じて系外に排出させるべく構成されている。
本実施形態の前記水素・酸素発生部2は、このパージ用の窒素ガスを製造するために前記窒素ガス生成部3を有している。
即ち、本実施形態においては、前記電気分解の停止に際して前記陽極側気液分離タンク22から前記ガス排出口22dを通じて前記酸素ガスを排出させるための排気装置が前記窒素ガス生成部3に備えられている。
【0025】
本実施形態の前記陽極側気液分離タンク22は、図に示されているように、該収容空間22aの上部において該収容空間22aの一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口22dが備えられている。
本実施形態での陽極側気液分離タンク22は、該収容空間22aの上端部の一部が上端中央部において上方に突出したボトル形状を有している。
より詳しくは、本実施形態での陽極側気液分離タンク22は、底部221と、底部221より上方に向けて筒状に延びる胴部222と、該胴部222よりも小径な首部223とを備え、該首部223が前記胴部222の上端から肩部224を介して上方に延びるように設けられている。
【0026】
本実施形態では、前記肩部224が、上方に向かうに従って縮径するテーパー状となっており、前記首部223は、該肩部224の上端から上方に向けて筒状に突出するように形成されている。
本実施形態においては前記ガス排出口22dが該首部223に備えられ、該首部223の上端部に前記ガス排出口22dが備えられている。
一方で、前記給水口22bや前記水流入口22cは、胴部222の内壁面において開口されており、前記排水口22eは底部221に配されている。
【0027】
当該陽極側気液分離タンク22は、重力の作用によって気液分離を行うため、収容空間22aの垂直方向における寸法が大きいほど良好な気液分離性が発揮される。
この点に関してより詳しく説明すると、水位が同じであれば、垂直方向における寸法が大きいほど水面からより離れた位置で酸素ガスを排出させることができ、酸素ガスに水が混入して排出されてしまうことを抑制することができる。
しかしながら、陽極側気液分離タンク22の収容空間22aにおいて形成される水面からガス排出口22dまでの高さを単に高くしただけでは収容空間22aに本来は貯留する必要性の低い酸素ガスを多く収容させることになり、必要性の低いスペースが装置に設けられてしまうことになる。
【0028】
本実施形態においては、収容空間22aの上端部の一部を上方に突出させるように前記首部223が形成され、しかも、該首部223の内壁面において前記ガス排出口22dが開口されている。
そのため、本実施形態においては、水面からガス排出口22dまでの距離を確保しつつ省スペース化が図られ得る。
【0029】
本実施形態の陽極側気液分離タンク22には、収容空間22aでの水位を検知する水位検知器が設けられており、本実施形態での該水位検知器は、前記水位を検知するための水位センサーとして、第1水位センサーS1、第2水位センサーS2、第3水位センサーS3、及び、第4水位センサーS4の4つの水位センサーを備えている。
【0030】
4つの水位センサーの内の第1水位センサーS1と第2水位センサーS2とは、上下に対になって前記首部223に設けられている。
前記第1水位センサーS1は、前記ガス排出口22dよりも下方における水位を検知し得るように配され、前記第2水位センサーS2は、前記第1水位センサーS1よりも下方における水位を検知し得るように配されている。
即ち、前記第1水位センサーS1及び前記第2水位センサーS2は、前記陽極側気液分離タンク22が満水状態になりつつあることを検知すべく配されており、前記第2水位センサーS2は、前記第1水位センサーS1よりも事前に満水状態が近付いていることを検知し得るように配されている。
本実施形態においては、該水位検知器で満水状態となるのを事前に検知することができるため、突出部の容積を小さくしても水が酸素ガスとともにガス排出口22dから排出されてしまうことを抑制することができる。
【0031】
前記水位検知器で満水状態となることが検知された場合、前記排水弁71を開状態として陽極側気液分離タンク22から水を排出させるようにすればよい。
水がガス排出口22dから排出されることをより確実に抑制する上において、前記排水弁71は、前記水位検知器で検知される前記水位に基づいて開閉される自動排出弁であることが好ましい。
【0032】
4つの水位センサーの内の第3水位センサーS3と第4水位センサーS4とは、前記第1水位センサーS1や前記第2水位センサーS2と同様に上下に対になって前記陽極側気液分離タンク22に設けられている。
但し、前記第3水位センサーS3及び前記第4水位センサーS4は、前記胴部222又は前記底部221に配されている。
即ち、前記第3水位センサーS3及び前記第4水位センサーS4は、前記第2水位センサーS2よりも下方における水位を検知し得るように配されている。
【0033】
前記第4水位センサーS4は、前記排水口22eよりも上方における水位を検知し得るように配され、前記第3水位センサーS3は、前記第4水位センサーS4よりも上方における水位を検知し得るように配されている。
即ち、前記第3水位センサーS3及び前記第4水位センサーS4は、前記陽極側気液分離タンク22で水が不足した状態になりつつあることを検知すべく配されており、前記第3水位センサーS3は、前記第4水位センサーS4よりも事前に水が不足し始めていることを検知し得るように配されている。
【0034】
前記水位検知器で水不足状態が検知された場合、前記補給水ポンプ531をオン状態として純水タンク52から陽極側気液分離タンク22に水を補給させるようにすればよい。
本実施形態においては、該水位検知器で水不足状態となるのを事前に検知することができるため、前記陽極側気液分離タンク22の全体容積を小さくしても前記ポンプ23aへのエア(酸素ガス)の混入などといった水不足によるトラブルが生じるおそれを抑制することができる。
即ち、本実施形態の水素・酸素発生装置1は、前記水位検知器を備えることで陽極側気液分離タンク22の小型化が可能になっており、より省スペース化し易い状態になっている。
【0035】
本実施形態においては、水電解モジュール21での電気分解の停止に際して前記陽極側気液分離タンク22に窒素ガスを供給し、該陽極側気液分離タンク22に収容されている酸素ガスが前記ガス排出口22dを通じて排出されるため、前記のような突出部(首部223)を形成させることで酸素ガスを陽極側気液分離タンク22から排出させるための窒素ガス消費量を削減できる。
したがって、本実施形態の水素・酸素発生装置1は、前記窒素ガス生成部3も小型化し易い状態になっている。
【0036】
本実施形態の水素・酸素発生装置1は、陽極側気液分離タンク22の収容空間の内、突出部における第1の箇所(例えば、前記第1水位センサーS1や前記第2水位センサーS2の設置箇所)と、突出部よりも下方の収容空間における第2の箇所(例えば、前記第3水位センサーS3や前記第4水位センサーS4の設置箇所)とを含む複数箇所で水面の位置を検知可能な水位検知器を備えているため、前記第1の箇所で水面が検知される第1状態と前記第2の箇所で水面が検知される第2状態との間での水量の差を大きく確保することができる。
そのため、本実施形態の水素・酸素発生装置1は、補給水ポンプ531を小まめにオンオフしなくても必要な水量を陽極側気液分離タンク22の内部に蓄えることができる。
【0037】
本実施形態においては、前記のように陽極側気液分離タンク22の上部側(首部223)において垂直方向での位置を異ならせた2つの水位センサー(第1水位センサーS1,第2水位センサーS2)を有することから陽極側気液分離タンク22が満水に近付く方向に水位が変化する際の水位の上昇スピードをこれら2つの水位センサーを用いて検知することができる。
また、本実施形態においては陽極側気液分離タンク22の底部側(胴部222)において垂直方向での位置を異ならせた2つの水位センサー(第3水位センサーS3,第4水位センサーS4)を有することから陽極側気液分離タンク22が渇水(空)に近付く方向に水位が変化する際の水位の下降スピードをこれら2つの水位センサーを用いて検知することができる。
【0038】
本実施形態のように前記首部223に垂直方向での位置を異ならせた複数の水位センサーを設ける場合、この複数の水位センサーの内の一水位センサーと他水位センサーとの高低差は、水素・酸素発生装置1の始動時、通常運転時、運転終了時などにおける陽極側気液分離タンク22での水量の変化の程度や前記首部223の径(水量の変化による水位の変化の度合い)などによって適宜設定することができる。
前記胴部222に設ける複数の水位センサーについても同様である。
【0039】
陽極側気液分離タンク22では、単位時間当たりの水量の変化が同じであっても、首部223において水位が上下する速度の方が胴部222において水位が上下する速度よりも速くなる。
したがって、陽極側気液分離タンク22での水位がガス排出口22dに到達することを確実に防ぐ意味で、突出部(首部223)に設ける複数の水位センサーの内の少なくとも1つを首部223の突出方向基端部(首部223の下端部)に設けてもよい。
また、首部223の下端部には、垂直方向での位置を異ならせた複数の水位センサーを設けるようにしてもよい。
さらには、陽極側気液分離タンク22の満水の検知に用いられる少なくとも2つの水位センサーの内、1つを首部223に設けてもう一つを該首部223に向けて縮径するように形成された前記肩部224に設けるようにしてもよい。
陽極側気液分離タンク22の満水の検知に用いる水位センサーは、首部223に複数設るとともに前記肩部224に1又は複数設けるようにしてもよい。
【0040】
陽極側気液分離タンク22への水の供給は、通常、前記胴部222に設けた第3水位センサーS3の位置よりも水位が低下した状態で開始され、水位が該第3水位センサーS3の位置を超えている状態で停止される。
水の供給停止は、タイマー制御などとすることができ、第3水位センサーS3が水位を検知してから一定時間(t)経過後に行われ得る。
水の供給停止は、第3水位センサーS3よりも上方に配置された水位センサーで水位が検知されたタイミングでもよい。
例えば、首部223に設けた第2水位センサーS2以上に水位が達した時点で給水を停止させるようにすれば、陽極側気液分離タンク22の容積を十分有効活用させることができる。
前記補給水ポンプ531のような給水装置による陽極側気液分離タンク22への給水は、例えば、水が前記首部223に到達しない量に設定することができる。
そして、給水によって陽極側気液分離タンク22から水が溢れることを抑制する意味で、水位が第3水位センサーS3の位置を超えてから給水を終了するまでの期間において、単位時間当たりの給水量を変化させるようにしてもよい。
具体的には、期間後半には、第3水位センサーS3での水位検知直後よりも給水量を低下させた低水量給水を実施する期間を設けてもよい。
前記低水量給水の開始は、タイマー制御などとすることができ、第3水位センサーS3が水位を検知してから一定時間(t1:t1<t)経過後とすることができる。
前記低水量給水は、第3水位センサーS3よりも上方に設けた水位センサー(例えば、肩部224に設けた水位センサーなど)によって水位が検知されたタイミングで開始されてもよい。
【0041】
本実施形態の水素・酸素発生装置1は、電気分解の停止に際して陽極側気液分離タンク22に水を導入してもよく、要すれば、前記第1の状態となるまで水を導入するようにしてもよい。
そのことにより陽極側気液分離タンク22から酸素ガスを排出させるために必要となる窒素ガスの量を削減することができる。
【0042】
水電解モジュール21で水素ガスや酸素ガスといった生成ガスを発生させる際には、固体高分子電解質膜を通じて一方の生成ガスが他方の生成ガスに混入する可能性がある。
そのため高純度の水素ガスを得る上では陰極側を陽極側よりも圧力を高めにしておくことが好ましい。
その場合、酸素ガスに含まれる水素ガスの量を測定して固体高分子電解質膜にピンホールなどの異常が生じていないかをモニタリングすることが好ましく、前記陽極側気液分離タンク22から排出される酸素ガスに含まれる水素ガスの量を測定する水素測定器(水素ガス濃度計など)を設けることが好ましい。
本実施形態においては、陽極側気液分離タンク22における酸素ガスの収容量の低減を図ることができるため、水素ガスが陽極側に透過した際に酸素ガスにおける水素ガス濃度がいち早く向上し、水素ガスの漏洩を水素測定器でいち早く検知することができる。
【0043】
本実施形態の前記陽極側気液分離タンク22では、前記水流入口22cが胴部222において開口している。
前記水流入口22cからは酸素ガスと水とを含んだ気液混合状態の流体が前記陽極側気液分離タンク22に導入されるため、本実施形態の前記陽極側気液分離タンク22では、水の電気分解が行われる期間中、泡を含んだ水が流入されることになる。
したがって、前記陽極側気液分離タンク22では、水量から想定される水面の位置よりも実際の水面の位置の方が水中に含む泡の分だけ高い位置になり得る。
前記陽極側気液分離タンク22では、前記首部223をより細くする方が省スペース化を図る上で有利となり得る。
しかし、前記胴部222に比べて前記首部223を過度に細くすると先のような理由から想定外の位置に水面が形成される場合、前記胴部222での水面の上昇スピードに比べて前記首部223での水面の上昇スピードが急峻になって水がいち早くガス排出口22dまで到達してしまうことにもなり得る。
前記陽極側気液分離タンク22での水面上昇は、前記給水口22bからの水の補給に際しても生じるため、首部223における急峻な水面上昇は、そのような場合にも起こり得る。
本実施形態では、このようなことから、前記首部223の径(D1)と前記胴部222の径(D2)との比(D1/D2)が一定の範囲内であることが好ましい。
この比(D1/D2)は、1/20以上1/2以下であることが好ましい。
この比(D1/D2)は、1/10以上1/5以下であることがより好ましい。
本実施形態においては、前記陰極側気液分離タンク25aも胴部や首部を備えるようにしてもよく、その場合、陰極側気液分離タンク25aでの胴部と首部との径についても上記のような関係性を持たせることが好ましい。
尚、前記胴部222の径(D2)は、その内容積を形成高さで除して求められる断面積と同じ断面積を有する円の直径として求められる。
前記首部223の径(D1)についても同様に求められる。
【0044】
前記窒素ガス生成部3は、窒素富化膜を有する。
前記窒素富化膜は、加圧状態の空気から加圧状態の窒素ガスを得る膜である。
該窒素富化膜は、酸素ガスが選択的に透過しやすく、且つ、窒素ガスが透過し難い膜である。
該窒素富化膜としては、シリコン系膜、ポリオレフィン系膜、ポリスルフォン系膜、ポリアミド系膜、酢酸セルロース系膜、ポリイミド系膜などが挙げられる。
また、該窒素富化膜としては、平膜、スパイラル膜、チューブラー膜、中空糸膜などが挙げられる。
【0045】
前記窒素ガス生成部3は、前記エアコンプレッサ81により生成された前記加圧空気から前記窒素富化膜を通じて加圧状態の窒素ガスを生成する窒素ガス生成部である。
前記窒素ガス生成部3は、前記空気貯留タンク82に貯留された加圧空気から前記窒素富化膜を通じて加圧状態の窒素ガスを生成する窒素ガス生成部であってもよい。
水素・酸素発生装置1は、前記エアコンプレッサ81及び前記空気貯留タンク82と、前記窒素ガス生成部3とを接続し、前記エアコンプレッサ81と前記空気貯留タンク82との内の少なくとも一方から前記窒素ガス生成部3へ加圧空気を供給するための空気供給経路62を備えている。
【0046】
前記窒素ガス供給経路4は前記返送経路24に接続されており、前記陽極側気液分離タンク22の水面下に窒素ガスを供給する窒素ガス供給経路である。
本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、斯かる構成を有することにより、窒素ガスを供給する際に陽極側気液分離タンク22に収容されている水をバブリングすることができ、水に溶存している酸素ガスが分離し易いという利点を有する。
その結果、水から分離した前記陽極側気液分離タンク22内の酸素ガスを大気に放出しやすくなる。
なお、本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、窒素ガス生成部3で得た窒素ガスによって、水素ガスを装置外(大気)に排出させる装置であってもよい。
また、本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、窒素ガス生成部3で得た窒素ガスによって、水を装置外に排出させる装置であってもよい。
【0047】
本実施形態の窒素ガスは、水素・酸素発生装置1が日常の運転を停止する際に酸素ガスや水素ガスを水素・酸素発生装置1から外部に放出させるために用いられる他に、装置の一部を分解して装置内に外気が入り込むような状況で装置内の各所の点検・修理などが行われるのに際して事前に酸素ガスや水素ガスを外部に放出させるためにも用いられ得る。
日常の運転を停止する際に用いる窒素ガスは純度が高い方が好ましいものの分解点検における窒素ガスは過度に高純度である必要はない。
日常の運転を停止する際に用いる窒素ガスは、純度が99体積%以上であることが好ましい。
解体点検に際して用いる窒素ガスは、純度が95体積%以上であることが好ましい。
窒素富化膜を用いて窒素ガスを作製する場合、より高純度な窒素ガスを得ようとすると単位時間あたりに製造できる量が低減し、投入するエネルギーに対して得られるガス量を低減させることにもなり得る。
そのため、本実施形態の窒素ガス生成部3は、純度が99体積%以上となるように前記窒素ガスを生成する第1の状態と、純度が95体積%以上99体積%未満となるように前記窒素ガスを生成する第2の状態とに切り替え可能であることが好ましい。
【0048】
本実施形態においては、前記陽極側気液分離タンク22の酸素ガスをパージするために供給経路23に加圧状態の窒素ガスを供給するようにしてもよいが、その場合、窒素ガスが水電解モジュール21の陽極室を通過することになる。
本実施形態においては、上記のように水素・酸素発生装置1の運転時における水の流通方向において前記水電解モジュール21よりも下流側となる位置(返送経路24)に窒素ガスが供給されるため、窒素ガスによって陽極室に異物が導入されることが抑制されるとともに窒素ガスの圧力が直接的に高分子固体電解質膜に加わることも抑制される。
しかも、本実施形態においては、前記陽極側気液分離タンク22の内圧が大気圧状態となるように制御されているため、前記返送経路24に供給した窒素ガスの圧力が高分子固体電解質膜に悪影響を及ぼすことをより一層抑制し得る。
【0049】
上記のような効果をより顕著に発揮させるべく、窒素ガスの供給地点と前記水電解モジュール21との間において前記返送経路24に管内の流体の移動を遮断する遮断弁を設け、前記窒素ガスを前記返送経路24に供給する際には当該遮断弁を閉状態にし、窒素ガスの圧力が前記水電解モジュール21へと伝わることを防ぐようにしてもよい。
【0050】
上記のような機能をより顕著に発揮させる上において、前記窒素ガスの元となる加圧空気を生成する前記エアコンプレッサ81は、排出する該加圧空気の圧力(ゲージ圧)が規定値を超えないように規制する規制部材を備えていることが好ましい。
前記規定値は、1MPa未満の何れかの値に設定されることが好ましく、0.9MPa以下の何れかの値に設定されることがより好ましい。
但し、窒素ガスの生成量を一定以上確保する上において、前記エアコンプレッサ81は、排出する前記加圧空気の圧力が0.1MPa以上となるように設定されることが好ましい。
【0051】
該規制部材としては、エアコンプレッサ81のエアタンクの圧力の上限を規制する安全弁などが挙げられる。
即ち、本実施形態において用いられるエアコンプレッサ81としては、空気を加圧する圧縮器と、該圧縮器から吐出された加圧空気を貯留するエアタンクとを備え、該エアタンクの圧力が規定値を超えたときにエアタンクから空気を放出して前記圧力を規定値以下に調整する安全弁とを備え、前記安全弁の作動する前記規定値が0.9MPa以下であることが好ましい。
該安全弁の作動する前記規定値は、0.1MPa以上であることが好ましい。
【0052】
前記エアコンプレッサ81から加圧空気を取り出す際の圧力制御を行うレギュレーターも前記規制部材として利用可能である。
前記エアコンプレッサ81は、前記圧縮器から吐出する加圧空気の圧力が0.1MPa以上0.9MPa以下となるように構成されていることがより好ましい。
このようにしてエアコンプレッサ81から排出される加圧空気の圧力が規制されることにより、何らかの原因で加圧空気の圧力が直接的に水電解モジュール21に伝わることがあっても当該水電解モジュール21に大きな損傷が起きてしまうことを抑制することができる。
【0053】
前記エアコンプレッサ81は、異物の導入を防ぐ意味においてオイルフリータイプであってもよい。
本実施形態においては前記エアコンプレッサ81から排出される加圧空気を通過させて該加圧空気から異物を除去するためのフィルターを設けるようにしてもよい。
【0054】
本実施形態の前記窒素ガス供給経路4は、前記窒素ガス生成部3の前記窒素富化膜で得られた加圧状態の窒素ガスを貯留する窒素ガス貯留タンク41を有する。
【0055】
本実施形態においては、前記エアコンプレッサ81と前記陽極側気液分離タンク22との間に前記窒素ガス貯留タンク41が設けられ、該窒素ガス貯留タンク41から窒素ガスを供給するようになっているため、エアコンプレッサ81の圧力が直接的に水電解モジュール21に伝わることが抑制され得る。
本実施形態においては、前記エアコンプレッサ81と同様に、該窒素ガス貯留タンク41などにも安全弁を設けるようにしてもよい。
即ち、本実施形態においては、窒素ガス貯留タンク41に貯留されている窒素ガス、及び、該窒素ガス貯留タンク41から前記陽極側気液分離タンク22へと至る経路を流通する窒素ガスの何れかの窒素ガスの圧力が規定値以上となった場合に該窒素ガスを系外に放出するよう作動する安全弁がさらに設けられていてもよく、当該安全弁の作動する前記規定値が0.9MPa以下に設定されていてもよい。
当該安全弁の作動する規定値は、エアコンプレッサ81と同様に、0.1MPa以上であることが好ましい。
【0056】
前記窒素ガス貯留タンク41は、内容積が0.04m3未満であることが好ましく、0.03m3以下であることがより好ましい。
前記窒素ガス貯留タンク41は、内容積が0.04m3未満であれば、その形状について内径を200mm未満とするか、又は、長さを1000mm未満とすることで第2種圧力容器としての点検義務を負うことが無くなり、メンテナンスに要する手間を簡略化することができる。
前記窒素ガス貯留タンク41は、内容積が0.03m3以下であれば、第2種圧力容器に該当することはなく、点検義務を負うことが無くなり、メンテナンスに要する手間を簡略化することができる。
また、窒素ガス貯留タンク41を第2種圧力容器に該当させないようにする場合、内容積が0.03m3以下の方が圧力の高い状態で窒素ガスを貯留することができることになるため、ノルマル立米換算では0.03m3を超える内容積のものよりも多くの量の窒素ガスを貯留し得る。
即ち、窒素ガス貯留タンク41を0.03m3以下の内容積とすることで効率良く装置の省スペース化が行われることになる。
【0057】
本実施形態においては、メンテナンスの手間の削減を図る上において、エアコンプレッサ81に設けられたエアタンクや、エアコンプレッサ81で生成された加圧空気を貯留する空気貯留タンク82も第2種圧力容器に該当しないことが好ましい。
即ち、本実施形態の水素・酸素発生装置1は、加圧状態の気体を蓄えるタンクが1又は2以上設けられている場合、少なくとも1つが上記のような要件を満たしていることが好ましく、全てのタンクが上記のような要件を満たしていることがより好ましい。
【0058】
本実施形態の水素・酸素発生装置1は、前記窒素ガス貯留タンク41における窒素ガス貯留量を検知する窒素ガス量検知装置をさらに備えていることが好ましい。
本実施形態の窒素ガス貯留タンク41は、窒素ガスを貯留するタンク本体411と、該タンク本体411の内部のガス圧を検知するための窒素ガス量検知装置である圧力計412とを備えている。
即ち、本実施形態における窒素ガス貯留タンク41は、内部のガス圧が測定されることによって窒素ガスの貯留量が把握され得るように構成されている。
【0059】
本実施形態の水素・酸素発生装置1は、圧力計で検知された窒素ガス貯留タンク41での窒素ガス貯留量に基づいてエアコンプレッサ81の運転状況や、水電解モジュール21の運転状況を制御し得るように構成されており、前記制御システム80によってこれらの制御が行われるように構成されている。
【0060】
本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、窒素ガス供給経路4を備えることから窒素ガス生成部3で得られた窒素ガスを水素・酸素発生部2に供給することができ、陽極側気液分離タンク22の酸素ガスを窒素ガスをつかって簡単に排出させることができる。
本実施形態に係る水素・酸素発生装置1では、前記窒素ガス生成部3が窒素富化膜を有する。
斯かる水素・酸素発生装置1は、窒素ガス生成部3が窒素富化膜を有することにより、簡便に窒素ガスを生成することができる。
【0061】
作製された窒素ガスは、例えば、水素・酸素発生装置1が前記水素・酸素発生部2での前記電気分解を停止して次の電気分解が開始されるまでの休転状態となっている間に装置内部で水素ガスと酸素ガスとの両方を含む気体が形成されることを防止すべく用いられ得る。
即ち、窒素ガスは、前記酸素ガスを前記水素・酸素発生部2から排出させるべく用いられるばかりでなく、前記水素ガスを前記水素・酸素発生部2から排出させるべく用いられてもよい。
【0062】
上記のように、本実施形態では、水を電気分解することにより、水素ガス及び酸素ガスを発生させる水素・酸素発生部2と、空気から窒素ガスを生成する窒素ガス生成部3と、前記窒素ガスを前記水素・酸素発生部2に供給する窒素ガス供給経路4とを備える、水素・酸素発生装置1を用いて前記水素ガスを製造し、前記水素・酸素発生部2での前記電気分解を停止する際には、該水素・酸素発生部2に前記窒素ガスを供給し、前記水素・酸素発生部2に存在している前記水素ガスと前記酸素ガスとの内の少なくとも一方を前記水素・酸素発生装置1から排出させる水素ガスの製造方法が実施されるため、簡便な方法で安全性を確保しつつ水素ガスを製造することができる。
【0063】
本実施形態の水素・酸素発生装置1を利用した水素ガスの製造方法では、前記電気分解を停止する際に、前記水素ガスと前記酸素ガスとの内の少なくとも一方を前記水素・酸素発生装置1から素早く排出させるために前記窒素ガス貯留タンク41から加圧状態の窒素ガスを水素・酸素発生部2に供給することが好ましい。
具体的には、該窒素ガスの圧力(ゲージ圧)は0.1MPa以上であることが好ましい。
しかし、窒素ガスの圧力を過度に高くしても水素ガスや酸素ガスの排出スピードが上がり難くなるとともに高い圧力によって水素・酸素発生装置に備えられている機器にダメージが生じることにもなりかねない。
そこで、酸素ガスや水素ガスを水素・酸素発生装置1の外部に放出させる際には、前記装置内での圧力(ゲージ圧)が0.2MPa以下となるように圧力が調整された窒素ガスを用いることが好ましい。
即ち、窒素ガス貯留タンク41から窒素ガス供給経路4に供給される窒素ガスは、レギュレーターなどによって0.1MPa以上0.2MPa以下に調整されることが好ましい。
【0064】
窒素ガス貯留タンク41から水素・酸素発生部2への窒素ガスの供給は、予め定めた量を一度に連続的に供給してもよい。
窒素ガス貯留タンク41から水素・酸素発生部2への窒素ガスの供給は、ガスの供給と停止とを繰り返して複数回にわたって実施されてもよい。
【0065】
本実施形態においては、水素・酸素発生装置1が不測の事態において予期せぬ停止をしなければならなくなった場合に備え、前記圧力計412によって窒素ガス貯留タンク41での窒素ガス貯留量をモニタリングすることが好ましい。
このようなモニタリングを行うことで、余分な窒素ガスを蓄えることが防止され、窒素ガス貯留タンク41をより小型化させ得る。
即ち、本実施形態における水素ガスの製造方法では、前記窒素ガス生成部3で生成された前記窒素ガスを加圧状態で貯留する窒素ガス貯留タンク41が備えられ、該窒素ガス貯留タンク41における窒素ガス貯留量を検知する窒素ガス量検知装置(圧力計412)がさらに備えられている前記水素・酸素発生装置1を用い、前記窒素ガス量検知装置で前記窒素ガス貯留量の検知を行う窒素ガス量検知工程が実施されることが好ましい。
【0066】
窒素ガス貯留タンク41における窒素ガス貯留量は、水の電気分解を開始する時点で十分確保されていることが好ましい。
したがって、本実施形態における水素ガスの製造方法では、水の前記電気分解を開始する際に前記窒素ガス量検知工程を実施することが好ましい。
【0067】
水の電気分解を開始する際の前記水素・酸素発生装置1の動作について、
図3を参照しつつ説明する。
本実施形態の水素ガス製造方法では、まず、装置を起動する起動ステップSTP1が実施され、それによって水素・酸素発生部2での水の電気分解を開始する電解開始ステップSTP2が実施される。
そして、この起動ステップSTP1と電解開始ステップSTP2との間に並行動作として、電気分解に必要な水が準備できているかなどの水素・酸素発生部2での準備状況を確認する電解準備確認ステップSTP11と、窒素ガス貯留タンク41での窒素ガス貯留量が予め定めた基準値以上に確保できているかを前記窒素ガス量検知工程によって確認する窒素ガス量確認ステップSTP22とが実施される。
本実施形態においては、窒素ガス量確認ステップSTP22の前段にエアコンプレッサ81を起動するコンプレッサ起動ステップSTP21を設けており、窒素ガス量確認ステップSTP22で窒素ガス貯留タンク41での窒素ガス貯留量が予め定めた基準値に満たない場合は、前記窒素ガス生成部3で窒素ガスを製造して窒素ガス貯留タンク41に蓄える窒素ガス貯留ステップSTP23が実施される。
そして、本実施形態においては、電解準備確認ステップSTP11により水素・酸素発生部2での準備が整い、且つ、窒素ガス貯留タンク41が基準値以上の窒素ガスを貯留していることが確認された時点で起動ステップSTP1から電解開始ステップSTP2へと移行することとなる。
【0068】
本実施形態においては、このような形で水素・酸素発生装置1が起動されることにより、安全性が確保された状態で水素ガスを製造できる。
尚、水素・酸素発生装置1が起動して水の電気分解が開始された後も窒素ガス貯留タンク41の窒素ガス貯留量は前記圧力計412などによってモニタリングされることが好ましい。
【0069】
尚、上記においては、収容空間の一部が上方に突出している突出部を有するとともに該突出部に前記ガス排出口が備えられている気液分離タンクを陽極側気液分離タンク22として備えた場合を例に詳細な記載がなされているが、本実施形態に係る水素・酸素発生装置では、陰極側気液分離タンク25aも突出部を有する構成としてもよい。
また、本実施形態に係る水素・酸素発生装置では、突出部を有する気液分離タンクを陰極側気液分離タンク25aのみとして陽極側気液分離タンク22を従来の陽極側気液分離タンクと同様のものとしてもよい。
【0070】
本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、水が供給され、該水が電気分解されて該電気分解による生成ガスとして水素ガスと酸素ガスとが排出される水電解モジュール21を備え、前記生成ガスが前記水とともに前記水電解モジュール21から排出されるよう構成されており、前記生成ガスと前記水とを気液分離するための陽極側気液分離タンク22を備えている。
そして、本実施形態に係る水素・酸素発生装置1の前記気液分離タンクは、前記生成ガスと前記水とを収容する収容空間を有し、該収容空間から前記生成ガスが排出されるガス排出口を有しており、該収容空間の上部において該収容空間の一部が上方に突出している突出部を有し、前記突出部に前記ガス排出口が備えられている。
そのため、本実施形態に係る水素・酸素発生装置1の気液分離タンクは、高い気液分離性能を有しつつ小型コンパクト化され得るとともに窒素ガスパージが行われる場合でも必要となる窒素ガス量を低減させ得る。
【0071】
前記のように、上記のような効果を発揮する上で、当該気液分離タンクは、陽極側気液分離タンク22と陰極側気液分離タンク25aとのいずれか一方であっても両方であってもよい。
上記効果をより顕著に発揮する上において、少なくとも陽極側気液分離タンク22に前記突出部を備えさせることが好ましい。
また、本実施形態においては前記気液分離タンクが、前記水電解モジュールの陽極側から排出される前記酸素ガスと前記水とを気液分離する陽極側気液分離タンク22であり、且つ、該陽極側気液分離タンク22で分離された前記水が前記水電解モジュールに再び供給されて電気分解されるように構成されていることが好ましい。
【0072】
本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、前記電気分解を停止するのに際して前記気液分離タンクから前記ガス排出口を通じて前記生成ガスを排出させるための排気装置がさらに備えられていることでより高度な安全性が確保され得る。
【0073】
本実施形態に係る水素・酸素発生装置1は、前記突出部における水位を検知する水位検知器をさらに備えたり、前記気液分離タンクから前記水を排出する自動排出弁を備え、前記水位検知器で検知される前記水位に基づいて前記自動排出弁が開閉されたりすることで装置をより省スペース化し易くなるという利点を有する。
【0074】
本実施形態に係る前記陽極側気液分離タンク22は、底部221と、底部221より上方に向けて筒状に延びる胴部222と、該胴部222よりも小径な首部223とを備え、該首部223が前記胴部222の上端から肩部224を介して上方に延びるように設けられており、前記首部223が前記突出部の上端部を構成し、前記ガス排出口22dが該首部223に備えられており、小型コンパクト化に有利な形状となっている。
【0075】
本実施形態に係る前記陰極側気液分離タンク25aは、陽極側気液分離タンク22と同様に胴部222よりも細い筒状となって首部223が上方に延びるような形状を有していても、陽極側気液分離タンク22とは違った形状を有していてもよい。
前記陰極側気液分離タンク25aは、例えば、前記陰極室から排出された湿潤状態の水素ガスを導入する際に、当該水素ガスが内部に収容されている水中に放出されるように構成されていることが好ましい。
水素ガスの水中への放出をより確実に実施させる上において、前記陰極側気液分離タンク25aは、オーバーフロー機構や自動排出弁を設けるなどして一定以上の水位が保たれるように構成されることが好ましい。
【0076】
前記陰極側気液分離タンク25aは、陽極側気液分離タンク22と同様に電気分解を停止する際に窒素ガスや水によって内部の水素ガスが排出されるように構成されていてもよい。
電気分解が再開した際に生成された水素ガスに窒素ガスが混入してしまうことを防止する上において前記陰極側気液分離タンク25aでの水素ガスの排出には、窒素ガスを用いるよりも水を用いることが好ましい。
前記陽極側気液分離タンク22のように前記陰極側気液分離タンク25aにも突出部を設けるようにし、該陰極側気液分離タンク25aから水素ガスを排出するためのガス排出口を前記突出部に設ければ、電気分解を停止する際に排出する水素ガス量の低減が図られ得る。
陰極側気液分離タンク25aから排出した水素ガスは、例えば、大気中に放出することができ、要すれば、触媒を使用するなどして大気中の酸素と反応させて水の形で大気中に放出することができる。
【0077】
電気分解を停止する際には、陰極側気液分離タンク25aに収容されている水素ガスだけでなく、水電解モジュール21の陰極室と、該陰極室から該陰極側気液分離タンク25aに至る経路とに存在する水素ガスも排出されることが好ましい。
本実施形態の水素・酸素発生装置は、水電解モジュール21が電気分解を停止する際に該水電解モジュール21の陰極室に水を供給し得るように構成されていることが好ましく、供給した水を陰極室内の水素ガスと共に気液混合状態の流体となって排出させるとともに該流体を陰極側気液分離タンク25aに流入させ得るように構成されていることがより好ましい。
本実施形態の水素・酸素発生装置は、水電解モジュール21が電気分解を停止する際に水電解モジュール21の陰極室、陰極側気液分離タンク25a、及び、該陰極側気液分離タンク25aと前記陰極室との間の経路に水を充満させ得るように構成されていることが特に好ましい。
【0078】
陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへの水の供給は、前記水素・酸素発生部2で消費される水を補給するために前記水補給部5に設けられている補給水ポンプ531のような給水装置を利用してもよく、水補給部5とは別に設けた給水装置を利用してもよい。
前記給水装置は、ポンプのような能動的に水を搬送するものでなくてもよい。
例えば、前記陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへ給水する水がこれらよりも上方に貯留されているような場合、前記給水装置は、水が前記陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへ自然流下するのを規制する開閉弁のようなものであってもよい。
給水装置による陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへの給水については、前記水位検知器で検知される陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aでの水位に基づいて実施されることが好ましい。
前記水位検知器で得られる水位についての情報を利用すれば、例えば、PID制御等を行うことも容易になり、陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aが満水に近い第1の状態(タンク内水量が相対的に多い状態)よりも水量の少ない第2の状態(タンク内水量が相対的に少ない状態)において単位時間当たりの給水量を多くしてスピーディーに必要な水量を供給することも可能になる。
言い換えれば給水装置による陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへの給水では、満水に近くなった場合に単位時間当たりの給水量を低下させた低水量給水を実施することもできる。
【0079】
陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへの水の供給は、タイマー制御などとすることができる。
陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aへの水の供給は、突出部に設けた水位センサーで水位が検知されてから一定時間(t2)経過後とすることができる。
前記低水量給水は、突出部に設けた水位センサーで水位が検知されたタイミングで開始してもよく水位センサーで水位が検知されてから一定時間(t3:t3<t2)経過後に開始されてもよい。
このような制御を行うことで、余分な水を用いることなく陽極側気液分離タンク22や陰極側気液分離タンク25aを満水状態にすることができる。
【0080】
なお、本発明に係る水素・酸素発生装置は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る水素・酸素発生装置は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。
さらに、本発明に係る水素・酸素発生装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、本実施形態においては、
図2に示したように肩部224がテーパー状となって垂直方向に一定の高さを有する形で設けられている陽極側気液分離タンク22を例示しているが、前記陽極側気液分離タンク22は、
図4に示すように肩部224が高さを有するものではなく、階段状に胴部222と首部223とを接続するようなものであってもよい。
また、本実施形態の陽極側気液分離タンク22は、このような例示にも限定されるものではなく、種々の形態とすることができる。
この点に関しては前記陰極側気液分離タンク25aについても同じである。
【0082】
本実施形態の水素・酸素発生装置は、太陽光、風力、潮力、地熱などの再生可能エネルギーによって得られた電力を用いて水の電気分解を実施してもよい。
尚、本実施形態の水素・酸素発生装置は、水の電気分解のエネルギー源の一部、又は、全部が一般的な外部系統電力であってもよい。
【0083】
再生可能エネルギーは安定した入手が困難で、外部系統電力を利用する場合に比べて水電解モジュールを停止する機会が多い。
そのため水の電気分解が停止した後に陽極側気液分離タンク22に窒素ガスを供給して酸素ガスを陽極側気液分離タンク22から排出させるのは、電気分解の停止直後に開始してもよいが、タイマー制御などによって電気分解の停止後に一定の時間(例えば、0.5分~30分)が経過した後に開始するようにしてもよい。
例えば、デイタイムに太陽光発電によって得た電気エネルギーで水の電気分解を行っている最中に突然の日照不足が生じて電気分解を停止しなければならなくなったような場合、比較的、短時間に日射が回復して電気分解が再開可能な状態になることがある。
本実施形態においては、そのような場合においてまで陽極側気液分離タンク22から酸素ガスを排出させるには及ばない。
そのため、電気分解を停止させた後、直ぐに窒素ガスを陽極側気液分離タンク22に供給するのではなく、予め定めた設定時間(例えば、0.5分~30分)が経過するまで待っても電気分解が再開可能な状態にならない場合に窒素ガスを陽極側気液分離タンク22に供給させるようにしてもよい。
この点に関しては他の再生可能エネルギーで電気分解を行う場合も同じである。
【0084】
本実施形態における水素・酸素発生装置は、前記陽極側気液分離タンク22で分離された酸素ガスに含まれている水素ガスの濃度を計測するための水素ガス濃度計を設け、該水素ガス濃度計での測定結果(陽極側気液分離タンク22収容されている酸素ガス中の水素ガス濃度)に基づいて陽極側気液分離タンク22への窒素ガスの供給を行うようにしてもよい。
具体的には、水の電気分解が停止した後の前記陽極側気液分離タンク22への窒素ガスの供給は、前記電気分解を停止する前、又は、前記電気分解を停止した後の少なくとも一方において前記水素ガス濃度計で計測される水素濃度が予め定めた規定値未満の場合に実施せず、該水素濃度が前記規定値以上の場合に実施するようにしてもよい。
【0085】
本実施形態に係る水素・酸素発生装置では、陽極側気液分離タンク22の酸素ガスを窒素ガスで装置外に排出させることを例示しているが、本発明に係る水素・酸素発生装置は、要すれば、前記陰極側気液分離タンク25aの水素ガスを窒素ガスで装置外に排出させるように構成させることもできる。また、本発明に係る水素・酸素発生装置は、窒素ガスで酸素ガスや水素ガスを装置外に排出させることを必須要件とはしていない。
本実施形態における水素・酸素発生装置は、このような例示に限らず、各種の態様で利用され得る。
【実施例】
【0086】
次に、1つの比較計算を例示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない(
図5参照)。
【0087】
(基準例)
従来の陽極側気液分離タンクとして、内径200mmで高さ650mm(内容積約20リットル)のもの(
図5(X))を用い、水位が上昇して上端から1/4(162.5mm(650/4))の位置に水面が到達したときを満水警戒ライン(LH)として水を放出し、該満水警戒ライン(LH)から水が5リットル減少した場合に水不足警戒ライン(LL)として水の補給を行うことを想定すると、満水警戒ライン(LH)では5リットルの酸素ガスが収容され、水不足警戒ライン(LL)では10リットルの酸素ガスが陽極側気液分離タンクに収容されていることになり、単純平均で7.5リットルの酸素ガスを平均的に収容させる状態となる。
【0088】
(実施例)
次に、
図5(Y)に示したような下部と上部とで径が異なり上部(首部)が下部(胴部)に比べて細径となっている陽極側気液分離タンクを用いて同様の制御を行うことを想定する。
ここでは、下部を基準例と同じ内径とし、高さが500mm(内容積約16リットル)とする。
そして、上部を下部の半分の内径(100mm)とし、高さを450mm(容量約4リットル)とし上下合わせて基準例と同じ20リットルの容積を確保させた場合を想定する。
ここで、上部の半分の高さ(450/2:mm)に水位が到達した場合を満水警戒ライン(LH)とすると、この状態でも上方に225mmの空間が存在し、基準例での満水警戒ライン(LH)における空間高さ(162.5mm)よりも余裕のある状態とすることができる。
そして、この時の酸素収容量は上部容積(4リットル)の半分の2リットルとなる。
ここから水が5リットル減少した場合を水不足警戒ライン(LL)とすると、当該水不足警戒ライン(LL)では酸素ガス収容量が7リットルとなる。
即ち、当該実施例での平均酸素ガス収容量は約4.5リットルとなり、基準例に比べて酸素ガス収容量を3リットルも減少させることができる。
【0089】
本発明によれば水素・酸素発生装置の省スペース化が図られることが以上のことからもわかる。
【符号の説明】
【0090】
1:水素・酸素発生装置、2:水素・酸素発生部、3:窒素ガス生成部、4:窒素ガス供給経路、5:水補給部、6:酸素ガス放出経路、7:排水経路、
21:水電解モジュール、21a:水供給口、21b:第1排出口、21c:第2排出口、22:陽極側気液分離タンク、22a:収容空間、22b:給水口、22c:水流入口、22d:ガス排出口、22e:排水口、23:供給経路、23a:ポンプ、24:返送経路、25a:陰極側気液分離タンク、25b:ドレンポット、26:除湿部、28:水素ガス移送経路、29:弁、41:窒素ガス貯留タンク、71:排水弁、80:制御システム、81:エアコンプレッサ、82:空気貯留タンク、
221:底部、222:胴部、223:首部、224:肩部、
S1:第1水位センサー、S2:第2水位センサー、S3:第3水位センサー、S4:第4水位センサー