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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】試験化合物の選択性を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
C12Q1/06
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020524308
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018079746
(87)【国際公開番号】W WO2019086476
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】17199353.8
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523082716
【氏名又は名称】エクセンシア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス クラル
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ スペルティ-フルガ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ウラジミール
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/046346(WO,A1)
【文献】特表平04-507199(JP,A)
【文献】国際公開第2011/149013(WO,A1)
【文献】特表2013-511999(JP,A)
【文献】国際公開第2005/061707(WO,A1)
【文献】Snijder B et al,Image-based ex-vivo drug screening for patients with aggressive haematological malignancies: interim results from a single-arm, open-label, pilot study,The Lancet. Haematology.,Elsevier Ltd.,,2015年01月,4,e595-e606
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12M
C12Q
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験化合物の、区別することができる表現型の誘導に関する選択性を決定する方法であって、以下の工程:
(b)試料を少なくとも2つの試料部分に分けること、ここで当該試料は、細胞の合計集団において、細胞の少なくとも2つの区別することができるサブ集団を含む;
(c)
試験化合物の非存在下で、工程(b)で得られる少なくとも1つの試料部分、及び
試験化合物の存在下での、工程(b)で得られる少なくとも1つの試料部分を
インキュベートすること;
(d)
(i)前記試験化合物の存在下でインキュベートされた、前記少なくとも1つの試料部分、及び
(ii)前記試験化合物の非存在下でインキュベートされた、前記少なくとも1つの試料部分
のそれぞれについて、区別することができる表現型を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける表現型陽性の細胞数及び当該細胞数の比率を決定すること、ここで当該細胞数の比率は同じ表現型を示す細胞の合計集団の細胞数に対するものである;
並びに
(e)前記工程(d)における(i)のインキュベート後の細胞数の比率を(ii)のインキュベート後の細胞数の比率で割ることによって、前記試験化合物の選択性を決定すること、ここで当該選択性は、前記ステップ(d)に記載の1つのサブ集団における(d)に記載の前記表現型を誘導することに関するものであり、その他の全てのサブ集団に対比されるものである:
ここで、
(i)における細胞数の比率を(ii)における細胞数の比率で割った値が1より大きい場合、前記試験化合物は、(d)に記載の前記表現型を選択的に誘導する、及び
(i)における細胞数の比率を(ii)における細胞数の比率で割った値が1未満である場合、当該試験化合物は、(d)に記載の前記表現型を選択的に阻害又は減少する、
と判断する;
ことを含む方法。
【請求項2】
前記工程(e)において、(i)における細胞数の比率を(ii)における細胞数の比率で割った値が、1.05、1.1、1.5、2、3又は5より大きい場合、前記試験化合物は、(d)に参照される前記表現型を選択的に誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(e)において、(i)における細胞数の比率を(ii)における細胞数の比率で割った値が、0.95、0.9、0.7、0.5、0.3又は0.2未満である場合、前記試験化合物は、(d)に参照される前記表現型を選択的に阻害又は減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)の前記区別することができる表現型が生存率であり、ここで
(i)工程(e)で決定される前記選択性が1未満である場合、前記試験化合物は、工程(d)の前記1つのサブ集団の生細胞の数を選択的に減少することが決定され、及び
(ii)工程(e)で決定される前記選択性が1より大きい場合、前記試験化合物は、前記1つのサブ集団の生存率を選択的に改善すること、及び/又は工程(d)の前記1つのサブ集団以外の前記サブ集団(複数可)の1つ以上の生存率を選択的に減少することが決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する又は応答性があるかどうかを決定する方法であって、以下の工程:
(b)試料を少なくとも2つの試料部分に分けること、ここで、当該試料は、合計集団細胞において、細胞の少なくとも2つのサブ集団を含み、ここで少なくとも1つのサブ集団は、癌性細胞に対応し、そして、少なくとも1つのサブ集団は非癌性細胞に対応する;
(c)試験化合物の非存在下で工程(b)で得られる少なくとも1つの試料部分及び試験化合物の存在下で工程(b)で得られる少なくとも1つの試料部分をインキュベートすること;
(d)
(i)前記試験化合物の存在下でインキュベートされた前記少なくとも1つの試料部分及び
(ii)前記試験化合物の非存在下でインキュベートされた前記少なくとも1つの試料部分
のそれぞれについて、細胞の前記合計集団の生細胞の数に対して、癌細胞に対応する前記サブ集団の少なくとも1つにおける、生細胞の数および当該生細胞数の比率を決定すること;並びに
(e)(i)における細胞数の比率を(ii)における細胞数の比率で割ることによって、前記対象が前記試験化合物による治療に応答する又は応答性があるかどうかを決定すること、ここで前記対象は、前記割り算で得られる値が1未満である場合、治療に応答する又は応答性があると決定する、
を含む、方法。
【請求項6】
前記工程(e)において、前記対象は、前記割り算で得られる値が0.95、0.9、0.8、0.6、0.4又は0.2未満である場合、治療に応答する又は応答性がある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は少なくとも2つの試験化合物について繰り返され、前記対象が前記少なくとも2つの試験化合物の組み合わせによる治療に応答する又は応答性であるかどうかは、1.0から少なくとも前記2つの試験化合物のそれぞれについての(e)で得られる値を引き、前記少なくとも2つの試験化合物についての得られる値の和を出し、前記得られる和が-1より大きい場合、前記対象は、前記少なくとも2つの試験化合物の組み合わせによる治療に応答する又は応答性であることが決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は少なくとも2つの試験化合物について繰り返され、前記対象が前記少なくとも2つの試験化合物の組み合わせによる治療に応答する又は応答性であるかどうかは、1.0から少なくとも前記2つの試験化合物のそれぞれについての(e)で得られる値を引き、前記少なくとも2つの試験化合物についての得られる値の和を出し、前記得られる和が-0.5、0、0.5又は1より大きい場合、前記対象は、前記少なくとも2つの試験化合物の組み合わせによる治療に応答する又は応答性であることが決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記試験化合物が1つ以上の化学物質を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(b)において、少なくとも1つの試料部分がさらに少なくとも2つの試料部分に分けられ、当該更に分けて得られた少なくとも2つの試料部分が
前記工程(c)において異なる濃度の試験化合物の存在下でインキュベートされ、前記工程(d)及び前記工程(e)において、工程(c)における試験化合物の異なる濃度ごとの、工程(d)における(i)のインキュベート後の細胞数の比率を(ii)のインキュベート後の細胞数の比率で割ることにより得られる数値からそれらの平均値を求め、当該平均値により、表現型の誘導に関する選択性を決定する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)において、前記試料が少なくとも3つの試料部分に分けられ、工程(c)において、少なくとも2つの試料部分が試験化合物の非存在下でインキュベートされる及び/又は少なくとも2つの試料部分が試験化合物の存在下でインキュベートされ、それによって、前記試験化合物の存在下でインキュベートされる各試料部分が、同じ濃度の前記試験化合物の存在下でインキュベートされ、工程(d)において、同区別することができる表現型を示す前記細胞の合計集団の数に対して、前記区別することができる表現型を示す前記少なくとも2つのサブ集団の1つの細胞数が、
(i)独立して前記試験化合物の存在下でインキュベートされた各試料部分、及び/又は
(ii)独立して前記試験化合物の非存在下でインキュベートされた各試料部分について決定され、並びに(i)で得られる表現型陽性の細胞数比率の平均及び/又は(ii)で得られる表現型陽性の細胞数比率の平均が、前記表現型の誘導に関する選択性を決定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が3つの試料分部に分けられる、請求項10に記載の方法
【請求項13】
前記方法が少なくとも2つの試験化合物について繰り返され、工程(e)で得られる最も低い値を有する前記試験化合物が癌を罹患している前記対象の治療に選択される、請求項5又は9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が少なくとも3つの試験化合物について繰り返され、前記組み合わせの少なくとも2つの試験化合物のそれぞれについて、(e)で得られる値を1.0から引き、前記組み合わせの前記少なくとも2つの試験化合物についての得られる結果の値を足すことによって得られる最も高い値を有する前記少なくとも3つの試験化合物の少なくとも2つの組み合わせが、癌を罹患している前記対象の治療のために選択される、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記癌がPBMC又は骨髄細胞又はPBMC若しくは骨髄細胞に由来する細胞に関連する癌である、請求項5~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が少なくとも1%の癌性細胞及び/又は少なくとも1%の非癌性細胞を含む組織試料である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記組織試料が非接着性細胞単層として培養される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記生存癌性及び非癌性細胞が、自動顕微鏡を使用して決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生存細胞の数が断片化されていない核の数として決定される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験化合物の選択性を決定する方法、及び癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答するのか、又は応答性であるのかを決定する方法等の関連の方法に関する。特に、方法は、(a)細胞の合計集団において、細胞の少なくとも2つの区別することができるサブ集団を含む試料を提供し、(b)試料を少なくとも2つの部分に分け、(c)試験化合物の非存在下において(b)で得られる少なくとも1つの部分、及び試験化合物の存在下において(b)で得られる少なくとも1つの部分をインキュベートし、(d)(i)試験化合物の存在下でインキュベートされる少なくとも1つの部分、及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされる少なくとも1つの部分において同じ表現型を示す細胞の合計集団の細胞数に対して、区別することができる表現型を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおいて、細胞数を決定し、並びに(e)試験化合物の選択性を決定して、(i)を(ii)で割ることによって、全てのその他のサブ集団におけるステップ(d)に参照される1つのサブ集団の(d)において参照される表現型を誘導し、(i)を(ii)で割った値が1より大きい場合、好ましくは、1.05、1.1、1.5、2、3より大きい、最も好ましくは5未満である場合、試験化合物は、(d)に参照される表現型を選択的に誘導し、及び(i)を(ii)で割った値が1未満、好ましくは0.95、0.9、0.7、0.5、0.3未満、最も好ましくは0.2未満である場合、(d)に参照される表現型を選択的に阻害又は減少する工程を含む。本発明は、癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する、又は応答性であるのかを決定する方法も提供し、方法は、(a)細胞の合計集団における少なくとも2つのサブ集団を含む対象から試料を提供し、少なくとも1つのサブ集団は、癌性細胞に対応し、少なくとも1つのサブ集団は、非癌性細胞に対応し、(b)試料を少なくとも2つの部分に分け、(c)試験化合物の非存在下で(b)で得られる少なくとも1つの部分及び試験化合物の存在下の少なくとも1つの部分をインキュベートし、(d)(i)試験化合物の存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされる少なくとも1つの部分における細胞の合計集団の生存細胞の数に対して、癌細胞に対応するサブ集団の少なくとも1つの生存細胞の数を決定し、並びに(e)対象が(i)を(ii)で割ることによって、試験化合物による治療に応答する、又は応答性であるのかを決定し、得られる値が1未満、好ましくは0.95、0.9、0.8、0.6、0.4未満、最も好ましくは0.2未満である場合、対象が治療に応答する又は応答性であることを含む。
【背景技術】
【0002】
ヒト及び/又は動物の疾患の治療のための薬剤の識別は、その他の細胞に影響しない、すなわち望ましくない副作用を引き起こすことなく、特定の細胞種において、所望の生物学的効果を選択的に誘導する分子の同定が必要とされる。逆に、個別の患者の所望の細胞種において、所望の生物学的効果を選択的に誘導することができる薬剤は、患者に医学的利益を提供する可能性がある。より低い選択性しか有さない薬剤は、深刻な副作用をもたらし得、治療用量の減少を必要とし得、結果的に所望の医学的転帰を導くことができない。
【0003】
過去において、薬剤の発見は、細胞株モデルシステムに大きく依存していた。しかしながら、これらの細胞株モデルシステムは、異なる細胞種の相互作用を伴うことが多いより高次の生物の複雑なプロセスを不完全に再現するだけであることが徐々に理解されている。特に、所望の標的細胞種にだけ効果を誘導する能力としての選択性は、このようなシステムにおいて研究することができない。技術分野で実施される可能な解決策は、異なる細胞株で独立して分子を試験することである。しかしながら、これは、異なる細胞種の可能な相互作用を考慮に入れていない。代替の解決策は、異なる細胞種を混合して、より現実的な環境を再現する共培養モデルシステムの確立である。さらに、ex vivoの複数の細胞種から成るPBMC又は骨髄等の一次材料において、化学物質を直接的に試験することもできる。そのため、薬の発見及び開発において、少なくとも2つの異なる細胞種を含む細胞の混合物において、化学物質がどのようにしてその他の細胞種より1つの細胞種に選択的に影響するのかを測定するために、効率的な方法が必要とされる。
【0004】
同じ医学的病態を罹患している異なる患者が、同じ医薬品に大きく異なる応答を有し得ることが徐々に明らかになってきてもいる。全ての処方薬の最大90%は、25%の患者にしか利益をもたらさないことが推測される。効果のなさそうな医薬品で患者を治療することは、副作用及び医学的利益の欠如による不必要な苦しみを引き起こすだけでなく、貴重なヘルスケアの財源を無駄にすることでもある。したがって、臨床医が適した薬剤を適した患者に適した時期に与えることができるように、個別の患者の治療転帰を正確に予測する方法が必要とされる。
【0005】
治療応答の個別的な予測について、技術分野の方法は、広義に、間接的なバイオマーカーから治療応答を推測する方法(例えば、患者がイマチニブに応答しそうにないBCR-ABLの変異から推測する)及び一次患者材料の薬剤の活性を直接測定して、治療転帰を予測する方法に分けることができる(すなわち、機能的ex vivo薬剤試験)。
【発明の概要】
【0006】
技術分野で知られている機能的ex vivo薬剤の試験として、MiCKアッセイ(Kravtsov等、Blood.92(3):968-80)を含み、米国特許出願公開第20100298255(A1)号明細書に記載の方法、又はPromega Coporationの細胞力価Gloアッセイが挙げられる。これらの方法は、患者から抽出される標的細胞集団が、適切なex vivoインキュベーション条件下で、特定の医薬品に応答性があるかどうかを試験することに焦点を置いている。ここで、我々は、この分野の先行の考えと異なり、標的細胞集団における薬剤応答を測定するだけでは不充分であるが、事実として、オフターゲット細胞と対照的な標的細胞に影響する薬剤の選択性は、治療転帰を予測するために欠かせないことの根拠を示す(実施例2~4)。したがって、機能的ex vivo薬剤応答試験を使用して、臨床的な薬剤応答を予測するためにも、どのようにして化学物質(例えば、FDA承認薬)が、少なくとも2つの細胞の異なるサブ集団を含む細胞の混合物において、他の細胞集団よりも1つの細胞集団に選択的に影響するのかを測定するための効率的な手段が必要とされる。
【0007】
別の細胞集団よりも1つの細胞集団に影響する薬剤の選択性は、伝統的に、所望又はオンターゲット効果の50%が目的の細胞集団で達成される濃度(EC50)を、細胞のオフターゲット集団において同効果の50%が達成される集団と比較することによって測定される。
【0008】
技術分野で実施される1つの方法は、標的及びオフターゲット細胞集団を単離し、又は標的及びオフターゲット細胞集団を示す単離細胞株を提供し、これらの単離細胞集団の異なる濃度において、個別に薬剤応答を測定することである。この方法の不利な点は、標的細胞が自然環境で分析されず、様々な方法で転帰に影響し得ることである。さらに、標的細胞を複雑な細胞混合物(例えば、PBMC)から単離する必要がある場合、この操作は、測定転帰に影響し得るシステムに追加の摂動を導入する。さらに、可溶性メッセンジャー(例えば、損傷しているがアポトーシス性ではない癌細胞を除去する免疫システムの細胞)によって一定の距離で、直接的な物理相互作用又は活性によって、細胞間相互作用に依存する効果は、単離細胞モデルシステムにおいて再現することができない。
【0009】
2つ以上の細胞種から成る複雑な混合物において、薬剤又はその他の化学試験化合物の選択性を決定するために、異なる細胞集団間を区別し、各細胞集団に対する薬剤効果を個別に選択的に測定する新規方法が必要とされる。複雑な細胞混合物を分析するために技術分野で実施されるこの標準的な方法は、フローサイトメトリーである。ここで、個別の細胞集団は、区別することができ、試験化合物の効果は、蛍光染色及びマーカーを使用して(例えば、蛍光標識された抗体、蛍光生-死染色によって)測定することができる。別の方法は、国際公開第2016/046346号に記載されている。
【0010】
フローサイトメトリーを使用して、細胞の複雑な混合物において特定の細胞サブ集団に作用する薬剤等の化学試験化合物のEC50を決定するために、当業者は、化学化合物で治療を行うときに、通常、4つ以上の化合物の濃度で、所望の表現型を示す目的のサブ集団の細胞を数え(すなわち、絶対細胞数を決定する)、化学化合物の濃度に対して、化学化合物で治療を行うときの所望の表現型を示す細胞数をプロットし、4パラメータロジスティック又はその他のシグモイドモデルを適合して、EC50を決定する。あるいは、生存細胞の合計数について、ATPレベル等の表現型に直接的に比例する代理の尺度を使用することができる。これは、多くの先行技術文献及びHernandez等、SLAS Technology 2017、Vol.22(3)325-337(ここでは表現型は生きている白血病細胞である)又はRoss等、Cancer Research 49、3776-3782.1989年7月15日等の出願ノート、並びにフローサイトメトリーを使用した細胞の絶対数を数える能力を検証し、最適化することに費やした多大な努力によって根拠付けられる。
【0011】
細胞の複雑な混合物において別の細胞種よりも1つの細胞種に影響する試験化合物の選択性を決定するために、当業者は、結果として、両方の細胞集団に対して試験化合物のEC50を測定し、選択性の尺度として、EC50値の比又はlogEC50値の差を有する(FDAによって使用される治療指数の定義を参照されたい)。
【0012】
しかしながら、この方法は、多くの限界を有する。絶対細胞数は、本来、フローサイトメトリー及びまたその他の単細胞分析技術を使用して測定することが困難である。アッセイプレートに蒔かれる絶対細胞数は、自動細胞分注機械を使用する場合、特に、大きく変動し得る。続く染色及び洗浄工程の間、細胞は、異なるアッセイウェルから差示的に失われることがある。さらに、絶対細胞定量化は、通常、エラーの別の源を導入し、追加の試みを示すビーズ標準に対して評価される必要がある。最後に、選択性の決定は、試料の必要条件及びアッセイの時間を大きく増加させる異なる試験化合物の濃度での試験化合物の効果の測定を必要とする。
【0013】
前述の観点において、複雑な細胞混合物における化合物の選択性を決定する方法が技術分野で必要である。
【0014】
本発明によって解決される技術的課題は、1つ以上の試験化合物(複数可)の選択性を決定するための改善された方法及び改善された決定された選択性に基づく関係する方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施形態において、本発明は、試験化合物の選択性を決定する方法に関し、方法は、以下の工程:
(a)細胞の合計集団において、細胞の少なくとも2つの区別することができるサブ集団を含む試料を提供すること、
(b)試料を少なくとも2つの部分に分けること、
(c)試験化合物の非存在下の工程(b)で得られる少なくとも1つの部分及び試験化合物の存在下の工程(b)で得られる少なくとも1つの部分をインキュベートすること、
(d)
(i)試験化合物の存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分及び
(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分
において、区別することができる表現型を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける細胞の数を決定すること、ここで当該細胞数は同じ表現型を示す細胞の合計集団の細胞数に対比されるものである、
(e)試験化合物の選択性を決定して、(i)を(ii)で割ることによって、全てのその他のサブ集団におけるステップ(d)に参照される1つのサブ集団の(d)において参照される表現型を誘導し、(i)を(ii)で割った値が1より大きい場合、好ましくは、1.05、1.1、1.5、2、3より大きい、最も好ましくは5より大きい場合、試験化合物は、(d)に参照される表現型を選択的に誘導し、及び(i)を(ii)で割った値が1未満、好ましくは0.95、0.9、0.7、0.5、0.3未満、最も好ましくは0.2未満である場合、(d)に参照される表現型を選択的に阻害又は減少すること、を含む。
【0016】
細胞の合計集団において、その他の細胞集団よりも1つの区別することができる細胞集団の表現型を誘導又は阻害する試験化合物の選択性を決定するために、技術分野で実施される方法と異なり、本発明の方法は、絶対細胞数を測定する必要がないが、同じ表現型を示す合計細胞集団の所望の表現型を有する細胞の画分の測定に依存する。結果として、本発明の方法は、自動細胞分注機械を使用する場合、特に大きく変化し得るアッセイプレートに蒔かれる厳密な細胞数の変化例に強固である。本発明の方法は、さらに、細胞が異なるアッセイウェルから差示的に失われ得る場合、続く染色及び洗浄工程の間に細胞の喪失に対して強固である。この方法は、さらに、エラーの別の源を導入し、追加の試みを示すビーズ標準に対して評価される必要がない。本発明の方法は、したがって、内部で制御される。また、本発明の方法は、測定される化合物のわずか1つの濃度点で、選択性情報を得ることができ、競合する方法は、例えば、複数の濃度点の測定を必要とし、例えば、実施例8を参照されたい。
【0017】
さらに、本発明の方法は、技術分野で実施される方法と異なり、細胞の合計集団を構成する細胞集団に関して、試験化合物の選択性を決定する前に、細胞の合計集団を構成する細胞集団の分離を必要としない。そのため、本発明の方法は、その選択性を決定するために、分離された細胞集団に対する試験化合物の効果に依存するだけでなく、細胞の複合集団に含まれる細胞の相互作用にも考慮する。したがって、本発明の方法は驚くべきことに、細胞の混合物において試験化合物の選択性の測定を可能にすることができ、それにより得られる選択性は、異なる測定値間で細胞数の変化例に対して本質的に強固であり、本質的に制御され、細胞の合計集団に含まれる異なる細胞集団間の相互作用を考慮する。
【0018】
さらに、本発明の方法は、用量-反応曲線からのEC50を決定することに依存しない。これは、選択性を測定するためにEC50の決定を必要とする先行技術の方法と対照的である。EC50は、化合物によって誘導され、又は試験化合物によって阻害される最大半量効果が得られる化合物の濃度である。EC50は、また、文脈に依存してIC50(「阻害濃度50%」)又はGI50(「増殖阻害50%」)とも呼ばれることが多い。あるいは、この効果のその他の割合が達成される、又は阻害される濃度も使用されることがある(例えば、EC90、EC80等)。EC50は、通常、4つ以上の濃度で試験化合物に対する細胞の応答を測定することによって、及びデータにS字状曲線を適合させることによって得られる。別の細胞集団よりも1つの細胞集団に影響する化合物の選択性を決定するために、両方の細胞集団に影響する化合物のEC50は、独立して測定されなければならなく、logEC50の差は選択性の尺度として考えられる。EC50を決定するために、特定の表現型又は効果の強度を有する細胞の数等の試験化合物に対する応答に直接的に比例する測定値が必要とされる。このような測定値は、所望の表現型の測定の前に試験化合物でインキュベートされる絶対細胞数の変化例に本質的に感受性である。むしろ、本発明の方法は、同じ表現型を有する細胞の合計数の特定の表現型を示す1つの集団の細胞の画分に依存して、選択性を決定する。したがって、本発明の方法は、絶対細胞数の定量化に依存せず、内部制御され、EC50の決定、したがって完全な用量-反応曲線を必要とする技術分野における方法によって必要とされる濃度点よりも少ない濃度点で試験化合物に対する応答を測定することによって、試験化合物の選択性を定量化することができる(実施例1)。後者は、特に、一次患者試料のように、提供される試料の量が限定される場合に有利である。
【0019】
EC50値は、治療において実施される方法の選択性を決定する中心であり、実施例12に示されるように、所望の表現型を示す細胞の合計数の表現型を示す細胞のサブセットの画分から決定することができる。したがって、同じ表現型を示す細胞の合計数の特定の表現型を示す細胞の画分を使用して、選択性についての情報を生み出すことが、当業者にとって明白ではない。
【0020】
先行技術の方法と対照的に、本発明の方法において、別の細胞のサブ集団よりも1つの細胞のサブ集団に影響する試験化合物の選択性を評価するために、試験化合物の選択性は、同じ表現型を示す細胞の合計集団における細胞数に対して、目的の特定の表現型を示す細胞の特定のサブ集団の細胞数に基づいて決定される。得られる選択性は、したがって、実施例13に示されるように、異なる測定値間の絶対細胞数の変化例に対して本質的に強固であり、内部制御され、細胞の合計集団に含まれる異なる細胞集団間の相互作用を考慮する。さらに、この選択性は、技術分野の方法によって必要とされる濃度点よりも少ない濃度点で試験化合物に対する細胞の応答を測定することによって決定することができる。
【0021】
癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する又は応答性があるかどうかを決定する先行技術の方法と異なり、本発明の方法は、全体として、細胞の同じ複合集団に対する同じ試験化合物の効果に対して、患者からの様々な細胞集団の複合集団に含まれる細胞の癌性細胞に対する試験化合物の効果と相関する。そのため、本発明の方法は、その選択性を決定し、試験化合物で治療を受ける患者が応答するのかしないのかを結論付けるために、標的の癌細胞集団に対する試験化合物の影響に依存するだけでなく、さらに、細胞の複合集団に含まれる代替の細胞に対する試験化合物の望ましくない影響を考慮する。言い換えれば、本発明の方法は、癌を罹患している対象が試験化合物又は薬剤による治療に応答する又は応答性があるかどうかを決定するために、非癌性細胞よりも癌性細胞を殺傷する抗癌剤の選択的能力を定量化する。癌細胞に対する試験化合物の効果を測定するだけである先行技術に記載の方法に比べて、本発明の方法は、癌を罹患している対象が実施例2~4に示されるように、試験化合物による治療に応答する又は応答性があるかどうかについてのより正確な情報を与える。特に、添付の実施例に示されるように、ある方法が本発明の方法を使用して、2つのクラスを区別することができる品質の測定値としてのROC曲線(AUROC)値下の面積は、0.97であり、国際公開第2016/046346号に記載の方法を使用した場合はたったの0.91のAUROCであり、細胞数に基づく場合は0.86のAUROCであった(図5を参照されたい)。同様に、減少した分類精度は、実施例2及び3に観察され、結果的に図4をもたらした。このように、本発明の方法は、0.85の分類精度となり、薬剤応答が癌細胞の感受性又は合計細胞集団のみに基づいて決定された場合、分類精度は0.65以下であった(図4、それぞれ、中央及び下のパネル)。本出願において提供される比較データに基づいて、本発明の方法は、改善された精度を提供する。
【0022】
さらに、癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答するか又は応答性があるのかを決定するための先行技術の方法と異なり、本発明の方法は、絶対細胞数の定量化に依存せず、細胞の合計集団を含む細胞集団の用量反応曲線又は単離は、異なる測定値、個別の測定値からの細胞の選択的喪失間の合計細胞数の変化例に対してより強固であり、試験化合物に対する細胞集団の応答に影響し得る異なる細胞集団の相互作用を考慮することができ(例えば、免疫系の細胞による損傷したが死んでいない癌細胞の認識)、より少ない濃度点での測定を必要とする。
【0023】
本発明の方法は、工程(a)において、細胞の合計集団において、細胞の少なくとも2つの区別することができるサブ集団を含む試料を提供することを含む。本発明において、「区別することができるサブ集団」という用語は、より大きな集団の一部である細胞を指し、細胞マーカーによって、集団のその他の細胞と区別することができる。すなわち、2つの区別することができるサブグループの細胞は、細胞が細胞マーカーの異なる発現特性を示す限り、同じ又は異なる細胞種に属することができ、共焦点顕微鏡等のイメージング技術を使用してこれらを区別することができる。細胞が細胞のサブグループに属しているかどうかを容易に決定するために、単層の形態の細胞を提供することが好ましい。添付の実施例に示されるように、単層の形成は、技術分野で知られている方法を使用して実施することができる。非接着性細胞のみ、又は接着性及び非接着性細胞の混合物を含む試料について、単層の形成は、好ましくは、国際公開第2016/046346号に教示される方法によって行われる。したがって、本発明の好ましい実施形態において、本発明の方法は、さらに、工程(b)に続いて、さらなる分析の前に、使用される細胞試料の細胞を含む単層の形成をさらに含む。これに関して、本発明の方法で使用される細胞試料の種類は、細胞の少なくとも2つの区別することができるサブ集団を含む限り、特に限定されない。本発明の好ましい実施形態において、しかしながら、使用される細胞試料は、PBMC試料又は骨髄試料である。
【0024】
細胞マーカーは、単独又はその他のタンパク質と組み合わせて、この種類の細胞を他の細胞種と区別することができる特定の種類の細胞によって発現されるタンパク質である。すなわち、細胞の表面又は本明細書で使用される細胞の合計集団に含まれる、例えば、ドナーから得られる試料に含まれるように、細胞の内部(細胞質又は内部の膜の内部を含む)に発現される細胞マーカーを使用することによって、区別することができ、そのため、区別することができるサブ集団に起因される。したがって、細胞の2つ以上の区別することができるサブグループは、異なる細胞種に属する細胞に限定されない。むしろ、2つ以上の区別することができるサブグループの細胞は、このサブグループが細胞マーカーを使用して区別することができる限り、例えば、それらの表面に発現される細胞、例えば、異なる病期の同じ細胞種の細胞、及び/又は同じ種類であるが異なる活性状態、及び/又は同じ種類であるが異なる分化ステージである限り、同じ細胞種であってもよい。
【0025】
末梢血単核球細胞(PBMC)は、(浅裂の核とは対照的な)円形の核を有する血液細胞である。PBMCは、リンパ球(B細胞、T細胞(CD4又はCD8陽性)、及びNK細胞)、単球(樹状細胞及びマクロファージ前駆体)、マクロファージ及び樹状細胞を含む。これらの血液細胞は、感染と戦い、侵入者に適合するために免疫系において欠くことのできない成分である。本発明のいくつの実施形態において、本発明のPBMC単層若しくはPBMC単層を含む細胞培養装置を作製するために、又は本発明のいくつかの態様に提供される方法で使用するために、フィコール密度勾配精製PBMC、好ましくはヒトPBMCを使用することが好ましい。本発明は、任意の単核細胞と共に使用することができる。好ましい実施形態において、本発明は、限定されないが、PBMC又は骨髄細胞試料に含まれる標的細胞に関して試験化合物の選択性、すなわち、細胞の以下のグループの細胞、及び末端の細胞の状態を含む細胞系譜に対する選択性を決定することができ、造血幹細胞(限定されないが、リンパ球系共通前駆細胞、骨髄前駆細胞、及びそれらの成熟系譜及びプロB細胞、B細胞、二重陰性T細胞、血漿B細胞、NK細胞、単球(マクロファージ、樹状細胞)を含む)。これらは、限定されないが、末梢血、骨髄(局所化される扁平骨)、臍帯血、脾臓、胸腺、リンパ細胞、及び胸腔内液等の疾患の結果、形成される任意の流体に見つけることができる。細胞は、任意の健康又は疾患の状態にあってもよい。
【0026】
本明細書に記載の方法に使用されるPBMC細胞は、技術分野で知られている、又は本明細書に記載の任意の適切な方法を使用して全血から単離することができる。例えば、Panda等によって記載されたプロトコルを使用することができる(Panda,S.and Ravindran,B.(2013).Isolation of Human PBMCs.Bio-protocol3(3):e323)。好ましくは、密度勾配遠心分離が単離に使用される。このような密度勾配遠心分離は、全血を層によって分離される成分、例えば、血漿の上層、次にPBMCの層、及び多形核細胞の下部画分(好中球及び好酸球)及び赤血球に分離する。多形核細胞は、さらに、赤血球、すなわち無核細胞を溶解することによってさらに分離することができる。このような遠心分離に有用な共通の密度勾配は、限定されないが、フィコール(親水性多糖類、例えば、Ficoll(登録商標)-Paque(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン))及びSepMate(商標)(StemCell Technologies,Inc、ケルン、ドイツ)が挙げられる。
【0027】
本明細書に記載の方法に使用される骨髄細胞は、技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して骨髄から単離することができる。特に、密度勾配遠心分離及び磁気ビーズを使用して、このような試料のその他の成分から骨髄細胞を分離することができる。例えば、MACS細胞分離試薬を使用してもよい((Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)。
【0028】
技術分野で知られているように、このような単離された培養物は、少ない割合の別の細胞種、例えば、赤血球細胞等の無核細胞1つ以上の集団を含み得る。PBMCは、さらに、技術分野で知られているように、及び/又は本明細書に記載のこのようなその他の細胞集団から単離及び/又は精製することができ、例えば、赤血球細胞を溶解する方法が、このような細胞を単離されたPBMCから取り除くために通常使用される。しかしながら、本発明の方法は、さらなる精製方法に頼ることなく、本明細書の単離された単離PBMCが直接的に使用されてもよい。したがって、本明細書に開示される方法は、単離PBMCの試料から赤血球細胞を溶解することを含んでも、含まなくてもよい。しかしながら、現在、無核細胞、例えば、赤血球細胞の存在は、概して、PBMCより少なく、PBMCの下及び間の培養表面に定着し、イメージングに適切な単層の形成を潜在的に干渉すると考えられている。そのため、PMBCに対する無核細胞、例えば、赤血球細胞の濃度は、できるだけ低い好ましい濃度で、約500~1、より好ましくは約250~1、最も好ましくは約100~1である。すなわち、本明細書に開示される方法に使用される単離されたPBMC試料は、PBMCにつき約100未満の非核細胞、例えば、赤血球細胞を含む。
【0029】
試料を提供することに続いて、詳細に前述したように、試料、特に細胞の合計集団の少なくとも2つの区別することができる細胞のサブ集団を含む試料において、及び特にPBMC又は骨髄細胞を含む試料を提供し、この試料は少なくとも2つの部分に分けられる。あるいは、(a)で提供される試料を分ける他に、同じ起源及び種類の少なくとも2つの試料、すなわち、さらなる分割を必要としない試料が提供されてもよい。この2つの部分は、等しいサイズであっても、異なるサイズであってもよい。しかしながら、少なくとも2つの部分のそれぞれが、それぞれの区別することができるサブ集団の同様の、好ましくは同一の細胞の比を含むことが好ましい。
【0030】
試料を少なくとも2つの部分に分けることに続いて、部分の少なくとも1つは、試験化合物、すなわち、選択性が決定される試験化合物の非存在下でインキュベートされる。すなわち、この部分は、コントロール/参照部分として使用される。
【0031】
工程(b)で得られる残りの部分の少なくとも1つは、試験化合物の存在下でインキュベートされる。この点に関して、試験化合物又は複数の試験化合物は、概して医薬品としての使用に適している限り、特に限定されない。しかしながら、試験化合物(複数可)は、疾患、特に血液系腫瘍及び/又は骨髄及び/又はリンパ組織の腫瘍及炎症性及び自己免疫疾患の治療に効果的であることが知られている化合物から選択されることが好ましい。このような疾患の治療に効果的であることが知られている化合物は、化合物及び例えば抗体等の生物学的化合物を含む。このような疾患の治療に効果的であることが知られている化合物の例として、限定されないが、アレムツズマブ、アナグレリド、亜ヒ酸、アスパラギナーゼ、ATRA、アザシチジン、ベンダムスチン、ブリナツモマブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、セプレン、クロラムブシル、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デニロイキンジフチトクス、デキサメタゾン、ドキソルビシン、デュベリシブ、EGCG=没食子酸エピガロカテキン、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ヒスタミン二塩酸塩、ホモハリントニン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2a、組み換え、インターフェロンアルファ-2b、組み換え、静注用免疫グロブリン、L-アスパラギナーゼ、レナリドミド、マシチニブ、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミドスタウリン、ミトキサントロン、MK-3475=ペンブロリズマブ、ニロチニブ、ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンアルファ-2a、プレリキサホル、ポナチニブ、プレドニゾロン、プレドニゾン、R115777、RAD001(エベロリムス)、リツキシマブ、ルキソリチニブ、セリネクソール(KPT-330)、ソラフェニブ、スニチニブ、サリドマイド、トポテカン、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ボリノスタット、ゾレドロネート、ABL001、ABT-199=ベネトクラクス、ABT-263=ナビトクラックス、ABT-510、ABT-737、ABT-869=リニファニブ、AC220=キザルチニブ、AE-941=ネオバスタット、AG-858、AGRO100、アミノプテリン、アスパラギナーゼエルウィニア・クリサンテミ、AT7519、AT9283、AVN-944、バフェチニブ、ベクツモマブ、ベスタチン、βアレチン、ベキサロテン、BEZ235、BI2536、ブパルリシブ(BKM120)、カーフィルゾミブ、カルムスチン、セリチニブ、CGC-11047、CHIR-258、CHR-2797、CMC-544=イノツズマブオゾガマイシン、CMLVAX100、CNF1010、CP-4055、クレノラニブ、クリゾチニブ、エラグ酸、エルサミトルシン、エポエチンゼータ、エプラツズマブ、FAV-201、FavId、フラボピリドール、G4544、ガリキシマブ、ガリウムマルトレート、硝酸ガリウム、ギビノスタット、GMX1777、GPI-0100、Grn163l、GTI2040、IDM-4、インターフェロンアルファコン-1、IPH1101、ISS-1018、イクサベピロン、JQ1、レスタウルチニブ、メクロレタミン、MEDI4736、MGCD-0103、MLN-518=タンデュチニブ、モテクサフィンガドリニウム、天然型インターフェロンアルファ、ネララビン、オバトクラックス、オビヌツズマブ、OSI-461、パノビノスタット、PF-114、PI-88、酪酸ピバロイルオキシメチル、ピクサントロン、ポマリドミド、PPI-2458、プララトレキサート、アルデスロイキン(プロリュウキン)、PU-H71、ラノラジン、レバスチニブ、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、SGN-30、骨格放射線治療、タセジナリン、タミバロテン、テムシロリムス、チオグアニン、トロキサシタビン、ビンデシン、VNP40101M、ボラセルチブ、XL228、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)、レフルノミド(アラバ)、メトトレキサート(トレキサル)、スルファサラジン(アザルフィジン)、ミノサイクリン(ミノシン)、アバタセプト(オレンシア)、リツキシマブ(リツキサン)、トシリズマブ(アクテムラ)、アナキンラ(キネレト)、アダリムマブ(ヒュミラ)、エタネルセプト(エンブレル)、インフリキシマブ(レミケード)、セルトリズマブ、ペゴル(シムジア)、ゴリムマブ(シンポニー)、トファシチニブ(ゼルヤンツ、ゼルヤンツXR)、バリシチニブ、セレコキシブ(セレブレックス)、イブプロフェン(処方用量)、ナブメトン(レラフェン)、ナプロキセンナトリウム(アプラナックス)、ナプロキセン(ナプロシン)、ピロキシカム(フェルデン)、ジクロフェナク(ボルタレン、ジクロフェナクナトリウムXR、カタフラム、カンビア)、ジフルニサル、インドメタシン(インドシン)、ケトプロフェン(オルヂス、ケトプロフェンER、オルバイル、アクトロン)、エトドラク(ロヂン)、フェノプロフェン(ナルフォン)、フルルビプロフェン、ケトロラク(トラドル)、メクロフェナム酸、メフェナム酸(ポンステル)、メロキシカム(モービック)、オキサプロジン(デイプロ)、スリンダク(クリノリル)、サルサラート(ジサルシド)、アミゲスシック、マルスリティック、サルフレックス、モノジェシック、アナフレックス、サルシタブ)、トルメチン(トレクチン)、ベタメタゾン、プレドニゾンデルタゾン、ステラプレド、リキッドプレド)、デキサメタゾン(Dexpak、Taperpak、デカドロン、ヘキサドロール)、コルチゾン、ヒドロコルチゾン(コルテフ、A-Hydrocort)、メチルプレドニゾロン(メドロール、メサコート、Depopred、Predacorten)、プレドニゾロン、シクロホスファミド(シトキサン)、シクロスポリン(Gengraf、ネオーラル、サンディミュン)、アザチオプリン(アザサン、イムラン)、及びヒドロキシクロロキン(プラケニル)が挙げられる。
【0032】
したがって、本発明の方法において、細胞試料の少なくとも1つの部分は、試験化合物(複数可)の非存在下でインキュベートされ、少なくとも1つの試料は、試験化合物(複数可)の存在下でインキュベートされる。
【0033】
この点に関して、本発明の方法のいくつかの実施形態において、細胞、特にPBMCは、インキュベートされて、続いて、約100細胞/mmの増殖面積~30000細胞/mmの増殖面積の密度で単離される。好ましくは、細胞、特にPBMCは、約500細胞/mmの増殖面積~約20000細胞/mmの増殖面積、約1000細胞/mmの増殖面積~約10000細胞/mmの増殖面積、約1000細胞/mmの増殖面積~約5000細胞/mmの増殖面積又は約1000細胞/mmの増殖面積~約3000細胞/mmの増殖面積の密度でインキュベートされる。より好ましくは、細胞、特にPBMCは、約2000細胞/mmの増殖面積の密度でインキュベートされる。「約」という用語は、所与の値又は範囲の10%以内、より好ましくは5%以内の意味を有する。したがって、細胞、特にPBMCは、いくつかの実施形態において、本発明の方法でインキュベートされて、約100、すなわち、90~110細胞/mmの増殖面積~30000、すなわち、27000~33000細胞/mmの増殖面積の密度を培養装置に有する。より好ましくは、細胞、特にPBMCは、約500、すなわち450~550細胞/mmの増殖面積~約20000、すなわち18000~22000細胞/mmの増殖面積、約1000、すなわち900~1100細胞/mmの増殖面積~約10000、すなわち9000~11000細胞/mmの増殖面積、約1000、すなわち900~1100細胞/mmの増殖面積~約5000、すなわち4500~5500細胞/mmの増殖面積又は約1000、すなわち900~1100細胞/mmの増殖面積~約3000、すなわち2700~3300細胞/mmの増殖面積の密度でインキュベートされる。最も好ましくは、細胞、特にPBMCは、約2000、すなわち1800~2200細胞/mmの増殖面積の密度でインキュベートされる。
【0034】
細胞、特にPBMCの数は、技術分野で知られている標準的方法を使用して決定することができる。特に、PBMCの数は、血球計数器、又はChan等(Chan等(2013)J.Immunol.Methods388(1-2)、25-32)によって記載される方法を使用して細胞を数えることによって決定することができる。骨髄細胞の数は、また、技術分野で知られている方法を使用して決定することもできる。特に、骨髄細胞は、細胞を数えることを使用して決定することができる。その他の細胞は、また、技術分野で知られている方法を使用して数えることもできる。
【0035】
インキュベーションは、培養培地で実施される。当業者は、細胞、特にPBMC又は骨髄細胞の生存率を維持する適切な方法を認識している。しかしながら、本発明の方法で使用される培養培地は特に限定されない。この点に関して、細胞の培養に必要な栄養物及び物質を有する液体の略語である。真核細胞を培養するための液体培養培地は、当業者に知られている(例えば、DMEM、RPMI1640等)。適切な培地は、細胞の種類に依存して選択され、培養することができる。例えば、PBMC又は骨髄細胞は、RPMI1640の10%のFCSで培養することができる。任意の適切な培地を選択することができるが、PBMC応答及び/又は骨髄細胞の応答に人工的に影響しないことが知られている培地の成分が選択されるべきである。栄養補助剤は、細胞機能を誘導又は修正するために、培養培地に加えられる物質を記載する(例えば、サイトカイン、増殖及び分化因子、マイトジェン、血清)。栄養補助剤は、当業者に知られている。真核細胞と共に通常使用される血清の一例は、ウシ胎仔血清である。培養培地は、さらに、ペニシリン、ストレプトマイシン、シプロフロキサシン等の抗生物質で補充されてもよい。一実施形態において、試験物質及び/又は刺激剤が別々にそれぞれの個別の単位の生細胞材料に加えられてもよい。試験物質は、薬剤又は薬剤成分であってもよい。刺激因子は、細胞の維持、増殖又は分化を支持する任意の物質を含み得る。特定の実施形態において、刺激因子は、例えば、免疫細胞を活性化することによって、免疫細胞に作用する物質である。免疫細胞を活性化するための刺激因子は技術分野で知られている。このような薬剤は、ポリペプチド、ペプチド又は抗体及びその他の刺激因子であってもよい。例えば、OKT-3、インターフェロン-α、インターフェロン-β及びインターフェロン-γ、マイトジェン(例えば、PWM、PHA、LPS)等である。試験物質及び刺激因子は、細胞培養培地に注入することができる。好ましくは、PBMCは、10%でFBS/FCSで補充されたRPMIで培養される(好ましくは、活性化を最小にするために低いエンドトキシン評点を必ずしも有しない)。PBMC培養物は、さらに、PBMCドナーからヒト血清を含んでもよい。
【0036】
「増殖領域」という用語は、本発明の意味で使用される場合、細胞が静止する培養装置の内部の表面を指す。「密度」は、本発明の意味で使用される場合、細胞が静止する装置の内部の表面の単位面積当たりの細胞の量である。細胞培養、特に、非細胞毒性細胞培養試験材料と適合性の任意の材料の培養装置が製造され得る。材料の例は、プラスチック材料、例えば、熱可塑性又はデュロプラスチック(duroplastic)材料である。適切なプラスチックの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。特に、装置は、PBMCの培養及び/又は維持に適している。技術分野で知られている、及び本発明で使用される典型的な培養装置は、培養フラスコ、皿、プレート及びマルチウェルプレートである。マルチウェルプレートが特に使用され、例えば、最小の材料必要条件、例えば、最小の培地必要条件を有する多重摂動(multiple perturbations)のために複数の培養物を別々に維持する能力を提供する。好ましい培養装置として、96ウェルプレート、384ウェルプレート及び1536ウェルプレートが挙げられる。培養物のイメージング分析に関連して技術分野で知られているように、特に蛍光イメージングにおいて、最小の光散乱及び減少したクロストークで、背景の蛍光/背景の光学的干渉を減少させるイメージングのために特別に設計された黒色の壁板を使用することが特に好ましい。培養装置は殺菌されてもよい。最も好ましい実施形態において、マルチウェルイメージングプレートが使用され、プレートは、複数のウェルを含み、少なくともいくつかのウェルは、第1チャンバを含み、第1チャンバは1つ以上の第1側壁及び底壁によって形成され、第2チャンバを含み、第2チャンバは1つ以上の第2側壁によって形成され、液体を導入するための開口を含み、第2チャンバは、第1チャンバの上部に整列され、第1チャンバと妨害排除構造を形成する第2チャンバとの間に中間のフロアが提供され、中間フロアは、第1チャンバと第2チャンバとの間の液体の接続を提供する少なくとも1つのスルーホールが提供され、スルーホールは、ピペットの先端が第2チャンバから第1チャンバに挿入されて、スルーホールを通過するように構成される。
【0037】
装置は、特に、自動イメージングシステム及び分析に使用される。そのため、装置/培養装置は、このようなシステムの使用に適している。非限定的な例において、培養装置は半透明であってもよい。イメージング、例えば、蛍光イメージングに使用される培養皿及びプレートは、技術分野で知られており、市販されている。本発明の実施に使用される市販されている培養プレートの非限定的な例は、Corning(登録商標)384-ウェル、組織培養処理される黒色の蓋、透明な底板(Corning Inc.、マサチューセッツ州、米国)又はCorning(登録商標)384Well Flat Clear Bottom Black Polystyrene TC-Treated Microplates(製品番号#3712)である。別の例は、Perkin Elmer Cellcarrier(登録商標)である。
【0038】
前述で示されるように、本発明の方法の1つの驚くべき技術的利点は、この方法が細胞の複合集団内の標的細胞の自然環境をより近く示す環境において決定される標的細胞に対する試験化合物の選択性を決定/依存することである。すなわち、本発明の方法では、自然発生の細胞間相互関係が好ましく維持される。この点に関して、当業者は、細胞間相互関係を決定/評価/追跡/検証する手段及び方法に気が付いている。特に、当業者は、自然発生の細胞間相互関係と細胞試料の調製の間に導入されるものとを区別することができる。このように、当業者は、同じ種類の細胞及び/又は異なる種類の細胞が生存生物において相互作用することを理解している。さらに、当業者は細胞の合計集団に含まれる細胞の区別することができるサブグループの細胞が、生存生物において相互作用することを理解している。本発明において、細胞試料に含まれる細胞の大部分が、これらの自然発生の細胞間相互関係を維持することが好ましい。すなわち、細胞の大部分、特に、細胞試料に含まれる細胞の少なくとも50%、好ましくは、細胞試料に含まれる細胞の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%が、同細胞又は同細胞種の細胞又はin vivoとして同区別することができるサブグループの細胞と相互作用する。細胞間相互関係は、当業者に知られている方法を使用して、検証/評価/決定することができる。例えば、共焦点顕微鏡を使用して、細胞間相互関係が自然環境において相互作用する細胞間であるのか、又は自然環境において相互関係を示さない細胞間であるのかを評価/決定/検証することができる。このような非自然の細胞間相互関係は、とりわけ細胞クランピングによる場合がある。
【0039】
さらに、本発明の方法において、細胞の大部分が、好ましくは、生理学的に関連する状態に見つけられ、これは、好ましくは、細胞の60%、70%、80%、90%、95%又は100%が生理学的に関連する状態にあることを意味する。本発明の方法で使用される生理学的に関連する状態の細胞の前述の割合は、技術分野で知られている方法を使用して決定/測定/評価される。特に、細胞試料が生理学的に関連する状態で見つけられる細胞に含まれるかどうかは、細胞試料に含まれる細胞の定量化によって決定される。これは、技術分野で知られている方法を使用してなされてもよい。特に、定量化は、参照試料、例えば、参照個体又は複数の参照個体の末梢血又は骨髄の細胞、例えば、特に、PBMC又は骨髄細胞試料の細胞試料が疾患を有するドナーに由来される場合、1名以上の健康なドナー(複数可)と比較されるイメージ分析によってなされてもよい。細胞の定量化は、標準的な診断ツールである。細胞試料、特にPBMC及び/又は骨髄細胞に含まれる細胞サブ集団の閾値は、健康なドナー及び疾患を有するドナーについて良好に記載される。したがって、本発明の手段及び方法を使用して評価される試料の差に基づいて、生理学的な関連性を決定することができる。造血細胞に含まれる細胞サブ集団の記述は、例えば、Hallek等(2008)Blood111(12)に見つけることができる。したがって、定量化並びにさらなる手段及び方法、例えば、顕微鏡を使用した細胞間相互作用の決定は、細胞試料が生理学的に関連する状態を示すのかどうかを決定することができる。
【0040】
本発明の発明者は、自然発生の細胞間相互作用を維持し、生理学的に関連する状態に主に見つけられる細胞を含む試料の分析を可能にする方法を提供した。そのため、本発明の好ましい実施形態において、細胞は、単層の形態で分析される。この点に関して、前述に開示される細胞密度のインキュベーションが、特にPBMC又は骨髄細胞において、細胞の画像化可能な単層を形成する。単層は、さらなる分析の前に、試料を少なくとも2つの部分、すなわち、ステップ(b)に分けた後に形成される。そのため、本発明の方法は、特にPBMC集団及び/又は骨髄集団において、とりわけ、細胞集団のイメージング及び/又は顕微鏡的分析を可能にする。本明細書で使用される単層は、イメージング装置、例えば、技術分野で知られている、又は本明細書に記載の顕微鏡又は自動カメラの同焦平面に優勢に見られる細胞の単一の層を意味する。単一の層という用語は、この層の細胞が優勢に2次元である培養物を形成する、すなわち、培養物は優勢に単細胞の層であることを意味するために使用される。すなわち、培養物において、細胞の大部分は、その他の細胞に、又はその上に静止していることが見つけられない、及び(例えば、その他の細胞に、又はその上に静止する細胞を含むことによって、単細胞の層の上で伸長する細胞の集団から成る)凝集物に見つけられない。そのため、本発明の意味において、細胞単層、特にPBMC単層は、好ましくは、とりわけ、特にPBMCの1つの単細胞の高さの厚みを有するPBMC細胞において、細胞の水平層を含む。同様に、本発明の意味において、骨髄細胞の単層は、好ましくは、1つの骨髄細胞の高さの厚みを有する骨髄細胞の水平層を含む。本明細書で使用される場合、単層という用語は、培養容器の細胞凝集物又は多層構築物(すなわち、それぞれ、特にPBMC細胞又は1つの骨髄細胞において、1つの細胞より大きい高さを有する細胞培養物を有する領域)又は細胞のない領域が見つけられ得ることを除外しない。むしろ、この用語は、本発明の培養物が、(例えば、顕微鏡的な方法によって)細胞の単一層から成る画像化可能又は可視化可能な領域の大部分を有することを意味するために使用される。これは、細胞培養面において、細胞の単一層を提供するものとして、最も容易に達成される。しかしながら、当業者が認識するように、細胞試料のその他のフォーマットも本発明の方法で使用することもできる。
【0041】
使用される非接着性細胞、例えば、PBMC又は骨髄細胞の場合、このような細胞が、通常、細胞培養面との強い接触又は強い細胞間接触とを形成しないことが知られている。したがって、本発明で使用される細胞単層、特に、本発明の様々な態様で使用されるPBMC単層は、すなわち、しっかりと付着し、均一に拡散し、培養面の大部分を覆う細胞の層を含む技術分野で理解されている接着性細胞の単層と必ずしも等価であると予想されていない。むしろ、いくつかの実施形態において、細胞単層、特に、本発明で使用されるPBMC単層は、1つ以上のその他の細胞と直接的に接触するが、培養面に必ずしも接着しない細胞の大部分を含む高密度の培養物を含み得、細胞は、単層に存在するが、培養物の任意のその他の細胞との(直接物理的に)接触を有しない。本発明の特定の態様で使用される細胞単層は、また、中間の密度の培養物も含み得、分離した領域を有し、細胞がその他の細胞に接触を示さない場合、細胞は1つ以上の細胞及びその他の領域と接触する。
【0042】
本発明の方法で使用するための細胞、特にPBMC、骨髄細胞、又はその他の接着性及び非接着性一次細胞は、健康な対象、すなわち、疾患を罹患していると思われない、若しくは疾患になりやすいと思われない対象から得られる試料から単離することができ、又は疾患を罹患していることが知られている、若しくは疾患を罹患していることが疑われる対象から得られる試料から単離することができる。対象の疾患状態の診断は、当業者、例えば、臨床医によって日常的に実施される標準的な方法によって行うことができる。このような伝統的な方法は、補充される、又は本発明の方法に置き換えることができる。例えば、対象が疾患を罹患している又は罹患している可能性があるかどうかを決定するために、疾患を罹患していることが知られている対象からの試料を使用して、個別の疾患に特徴的な細胞間相互関係のパターンが決定される。さらに、又はあるいは、健康なドナーの細胞間相互関係のパターンは、個別の疾患によるものと思われる差を決定するために使用することができる。ここでの細胞間相互関係のパターンは、本発明に従って決定される互いに相互作用する1つ以上の異なる細胞種又は細胞集団の傾向を指す。
【0043】
インキュベーションの後、(i)試験化合物の存在下でインキュベートされる少なくとも1つの部分、及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされる少なくとも1つの部分の同じ表現型を示す細胞の合計集団の細胞数に対して、区別することができる表現型を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける細胞数が決定される。当業者は、特定の表現型の細胞を数えるための利用可能な様々な方法に気が付いている。この点に関して、「表現型」は、細胞の観察することができる特徴又は形質を指す。表現型は、生物の遺伝子コード、その遺伝子型の発現、並びに環境要因及びその2つの間の相互作用の影響から生じる。細胞の表現型として、限定されないが、特定の細胞の形態、大きさ、全体としての細胞又は細胞内の部分の両方、細胞生存率、タンパク質の発現、特定の位置における特定のタンパク質の位置、タンパク質の共存、リン酸化、栄養摂取及び消費及びその他等のタンパク質の翻訳後修飾が挙げられる。表現型は、また、特定の形質が、サイトカイン、病原体又はいくつのかのその他の細胞外若しくは細胞内刺激による刺激等の特定の刺激に応答して示されるだけである点において、本質的に機能的であり得る。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、工程(d)の区別することができる表現型は、生存率であり、(i)工程(e)で決定される選択性が1未満である場合、試験化合物は工程(d)の1つのサブ集団の生存細胞の数を選択的に減少させることが決定され、及び(ii)工程(e)で決定される選択性が1より大きい場合、試験化合物は、1つのサブ集団の生存率を選択的に改善し、及び/又は工程(d)の1つのサブ集団以外のサブ集団(複数可)の1つ以上の生存率を選択的に減少させることが決定される。
【0045】
続いて、サブ集団の1つの部分として、前の工程で数えられた細胞の表現型を誘導する試験化合物(複数可)の選択性が決定される。本発明において、これは、直ぐ上の(i)を直ぐ上の(ii)で割ることによって行われ、試験化合物は、(ii)で割られた(i)が1より大きい場合、好ましくは1.05、1.1、1.5、2、3より大きい、最も好ましくは5より大きい場合、(d)において示される表現型を選択的に誘導し、(ii)で割られた(i)が1未満である場合、好ましくは0.95、0.9、0.7、0.5、0.3未満、最も好ましくは0.2未満である場合、(d)に示される表現型を選択的に阻害又は減少する。
【0046】
添付の実施例に示されるように、標的細胞集団に対する試験化合物(複数可)の得られる選択性は、方法の過程で実施される異なる測定値の合計細胞数の変化例に対してより強固であり、より低い濃度で測定することを必要とし、細胞の合計集団を含む異なる細胞集団の相互作用を考慮する。
【0047】
本発明のさらなる実施形態において、癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答するのか、又は応答性であるのかを決定する方法が提供され、方法は、(a)細胞の合計集団における細胞の少なくとも2つのサブ集団を含む対象から得られる試料を提供し、少なくとも1つのサブ集団は、癌性細胞に対応し、少なくとも1つのサブ集団は、非癌性細胞に対応し、(b)試料を少なくとも2つの部分に分け、(c)試験化合物の非存在下で工程(b)で得られる少なくとも1つの部分及び試験化合物の存在下の少なくとも1つの部分をインキュベートし、(d)(i)試験化合物の存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされる少なくとも1つの部分における細胞の合計集団の生存細胞の数に対して、癌細胞に対応するサブ集団の少なくとも1つの生存細胞の数を決定し、並びに(e)対象が(i)を(ii)で割ることによって、試験化合物による治療に応答するか、又は応答性であるのかを決定し、得られる値が1未満、好ましくは0.95、0.9、0.8、0.6、0.4未満、最も好ましくは0.2未満である場合、対象が治療に応答する又は応答性である、工程を含む。
【0048】
したがって、本発明は、対象が試験化合物、特に治療薬による治療に応答する、又は応答性であるかどうかを決定する診断方法に使用される方法を提供する。前述のように、特定の治療薬、例えば、前述においてさらに列挙される治療薬の1つにおいて、所与の試験化合物が、同じ又は類似の疾患、例えば、癌を罹患している個別の対象について、異なる治療効果を示し得る。したがって、試験化合物、特に治療薬の選択性を所与の対象に個別に決定することが有利である。本発明の前述の方法において、試験化合物、特に治療薬の選択性は、先行技術の方法に比べて、改善された確率を有する非常に信頼できる方法で、決定することができ、1つ以上の代替の試験化合物(複数可)、特に治療薬(複数可)に比べて、改善された選択性を有することが決定され、in vivoにおいて有利な効果を示す。
【0049】
すなわち、本明細書に提供される方法を使用して、試料/画像の細胞のサブ集団に対する試験化合物の選択性の分析は、ドナーにおいて試験が行われた治療に対する疾患の状態の応答を予測し、この点に関して、本発明の方法は、技術分野で使用することができる現在の方法を上回る利点を提供する。
【0050】
一実施形態において、癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する又は応答性があるかどうかを決定する方法は、少なくとも2つの試験化合物について繰り返され、この対象が少なくとも2つの試験化合物の組み合わせによる治療に応答する又は応答性であるかどうかは、1.0から少なくとも2つの試験化合物のそれぞれについての(e)で得られる値を引き、少なくとも2つの試験化合物についての得られる値の和を出し、得られる和が-1より大きい場合、好ましくは-0.5、0、0.5より大きい、最も好ましくは1より大きい場合、対象は、少なくとも2つの試験化合物の組み合わせによる治療に応答する又は応答性であることが決定される。
【0051】
本発明の一実施形態において、本発明の方法で使用される試験化合物は、1つ以上の化学物質を含み得る。すなわち、本発明は、一実施形態において、本明細書に開示される本発明の方法に関し、試験化合物(複数可)は、1つ以上の化学物質を含む。本発明の方法に使用される試験化合物における1つ以上の化学物質の存在は、例えば、少なくとも2つの化学物質間の相乗効果について有用な情報を提供し得る。すなわち、化学物質は、所与の標的細胞についてのそれらの選択性について互いに影響し得る。本発明の方法において、選択性を確実に決定し、及び/又は決定された選択性を使用するために、1つ以上の化学物質を含む試験化合物(複数可)を使用することは有利である。
【0052】
本発明のさらなる実施形態において、本発明の方法の工程(b)で得られる少なくとも1つの部分は、さらに、少なくとも2つの部分に分けられ、少なくとも2つの部分のそれぞれは異なる濃度で試験化合物でインキュベートされる。異なる濃度の試験化合物における試験化合物の選択性を決定すること、及び/又は癌を罹患している対象が異なる濃度の試験化合物の試験化合物による治療に応答する又は応答性であるかどうかを決定することは、in vivoの効果的な濃度が投与される試験化合物の用量及び投与のタイミングに依存して変化し得るため、さらなる改善された結果を提供し得る。すなわち、試験化合物の濃度に関連する潜在的な効果を考慮に入れるために、試験化合物(複数可)は、本発明の一実施形態において、異なる濃度で、本発明の方法の工程(b)で得られる少なくとも2つの部分でインキュベートされ得る。当業者は、試験化合物の選択性を決定するために、技術分野で知られている方法で使用される典型的な濃度に気が付いている。すなわち、通常、100μM~100pM、好ましくは10μM~1μM、より好ましくは10μM、1μM~100nMの濃度が使用される。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、特に試験化合物が本発明の方法の工程(b)で得られる1つ以上の部分(複数可)を有する異なる濃度でインキュベートされる本発明の方法において、平均選択性は、工程(e)で計算され、最終的な選択性を決定するために使用することができる。平均選択性は、技術分野で知られている方法によって決定される選択性よりもさらに改善されるより信頼性のある尺度を提供することができる。
【0054】
同様に、本発明の一実施形態において、本発明の方法は、少なくとも2つの部分が試験化合物の非存在下でインキュベートされる及び/又は少なくとも2つの部分が試験化合物の存在下でインキュベートされる工程(c)、(i)試験化合物の存在下でインキュベートされる少なくとも2つの部分、及び/又は試験化合物の非存在下でインキュベートされる少なくとも2つの部分において、細胞の合計集団の細胞数に対して少なくとも2つのサブ集団の1つが決定される工程(d)を含む。複数の測定値を平均することは、自然の試料の変化例による1つの測定値に生じ得る潜在的な望ましくない効果を減少する。すなわち、平均することは、得られる結果の予想されるエラーをかなり減少させることができ、そのため、本発明の方法のより信頼性のある転帰が生じ得る。
【0055】
したがって、一実施形態において、本発明は本発明に記載の方法に関し、工程(b)に得られる少なくとも1つの部分がさらに少なくとも2つの部分に分けられ、少なくとも2つの部分のそれぞれが異なる濃度の試験化合物で工程(c)においてインキュベートされ、工程(d)及び(e)は、独立して試験化合物の各濃度で繰り返されて、試験化合物の各濃度の選択性/値を決定し、それによって全ての濃度の平均値が工程(e)の後に計算され、最終選択性/値を決定するために使用される。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法に関し、工程(b)において、試料は少なくとも3つの部分に分けられ、工程(c)において、少なくとも2つの部分は、試験化合物の非存在下でインキュベートされ、及び/又は少なくとも2つの部分は、試験化合物の存在下でインキュベートされ、それによって、試験化合物の存在下でインキュベートされる各部分は、試験化合物の同じ濃度の存在下でインキュベートされ、工程(d)において、同区別することができる表現型を示す細胞の合計集団における細胞数に対して区別することができる表現型を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける細胞数は、(i)独立して試験化合物の存在下でインキュベートされる各部分及び/又は(ii)独立して試験化合物の非存在下でインキュベートされる各部分について決定され、並びに/又は(i)で得られる相対的な数の平均及び/又は(ii)で得られる相対的な数の平均が使用される。
【0057】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法に関し、工程(b)において、試料は少なくとも3つの部分に分けられ、工程(c)において、少なくとも1つの部分は、試験化合物の非存在下でインキュベートされ、及び/又は少なくとも2つの部分は、試験化合物の少なくとも2つの異なる濃度の存在下でインキュベートされ、工程(d)において、同区別することができる表現型を示す細胞の合計集団における細胞数に対して区別することができる表現型を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける細胞数は、(i)独立して試験化合物の存在下でインキュベートされる各部分及び/又は(ii)独立して試験化合物の非存在下でインキュベートされる各部分について決定され、(i)の平均は、独立して各濃度について決定され、及び/又は(ii)の平均はさらなる工程のために決定され、使用され、並びに工程(e)において、選択性/値は、各濃度について(i)の平均を(ii)の平均で割ることによって各濃度について決定され、最終的な選択性/値は、各濃度についての選択性/値を平均化することによって得られる。
【0058】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明に記載の方法に関し、この方法は、少なくとも2つの試験化合物について繰り返され、工程(e)で得られる最も低い値を有する試験化合物は、癌を罹患している対象の治療に選択される。
【0059】
さらなる実施形態において、本発明は本発明に記載の方法に関し、この方法は、少なくとも3つの試験化合物について繰り返され、組み合わせの少なくとも2つの試験化合物のそれぞれについて、(e)で得られる値を1.0から引き、組み合わせの少なくとも2つの試験化合物についての得られる結果を足すことによって得られる最も高い値を有する少なくとも3つの試験化合物の少なくとも2つの組み合わせが、癌を罹患している対象の治療のために選択される。
【0060】
したがって、本発明は、また、いくつかの試験化合物のどれが癌を罹患している患者に最高の臨床利益を与える可能性が最も高いのかを決定する方法に関し、それによって、本発明の方法は、2つ以上の試験化合物について繰り返され、本発明の方法の工程(e)において決定される最も低い値を有する試験化合物は、癌を罹患している患者に最も大きい臨床的利益を与える可能性が最も高い試験化合物になる。したがって、本発明は、また、得られる試験化合物の癌治療における使用、及び癌治療に使用するための医薬組成物の製造における試験化合物の使用に関する。
【0061】
さらなる実施形態において、本発明は、それぞれ2つ以上の試験化合物を含む試験化合物の2つ以上の固有の組み合わせのどれが癌を罹患している患者に最も大きい臨床的利益を柄ら得る可能性が最も高いのかを決定する方法に関し、それによって、本発明に記載の方法がそれぞれの試験化合物の2つ以上の固有の組み合わせを含む2つ以上の試験化合物について繰り返される。それぞれの組み合わせを含む少なくとも2つの試験化合物のそれぞれについて、(e)で得られる選択性の値を1.0から引き、少なくとも2つの試験化合物について得られる値を足すことから得られる最も高い和を有する2つ以上の試験化合物の組み合わせが、癌を罹患している患者に最も高い臨床利益を与える可能性が最も高い試験化合物の組み合わせである。したがって、本発明は、また、癌治療のための試験化合物の組み合わせの使用に関する。
【0062】
前述で詳細に記載したように、本発明の方法は、細胞の合計集団に含まれる細胞に対する試験化合物の選択性を決定するために使用することができ、細胞の合計集団は、少なくとも2つの区別することができる細胞のサブグループを含む。原則として、細胞の任意の集団は、本発明の方法で使用することができる。しかしながら、PBMC又は骨髄細胞を使用することが好まれる。PBMC又は骨髄細胞試料に含まれる細胞に関連する様々な疾患が、特に癌等の増殖疾患にある。そのため、本発明の方法において、特に癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する又は応答性があるのかどうかを決定する方法において、癌は、好ましくは、PBMC若しくは骨髄細胞又はPBMC若しくは骨髄細胞に由来する細胞に関連する癌である。当業者は、この定義に入る癌性疾患、すなわちPBMC若しくは骨髄細胞又はPBMC若しくは骨髄細胞に由来する細胞に関連する癌を知っている。しかしながら、本発明の方法は、癌に限定されない。すなわち、本発明の方法は、対象が、以下のICD-10コード(これに限定されない)A00-B99-特性の感染性及び病原性疾患、C00-C97悪性腫瘍;D70-77-血液形成系のその他の疾患、D80-89-他に分類されない免疫機構に関与する特定の障害;D82-その他の主要な欠損に関連する免疫不全;D83-分類不能型免疫不全症、D84-その他の免疫不全、G35-37-中枢神経系の疾患、I00-I03-急性リウマチ熱、I05-I09-慢性リウマチ性心疾患、I01-心臓合併症を有するリウマチ熱、I06-リウマチ性大動脈弁疾患、I09-リウマチ性心筋炎、I70-粥状動脈硬化、K50-クローン病、K51-大腸炎、K52-その他の非感染性胃腸炎及び大腸炎、M00-M19関節症、M05-血清反応陽性関節リウマチ、M06-その他の関節リウマチ;M10-痛風、M11-その他の結晶性関節症、M35-乾燥症候群、M32-全身性エリテマトーデス、N70-77-女性の骨盤内器官の炎症性疾患、P35-39-周産期特定の感染症、P50-P61-胎児及び新生児の出血性及び血液学的障害、Z22-感染性疾患のキャリア、Z23-特定の1つの細菌疾患に対する免疫化の必要性、及び/又はZ24-特定の1つのウイルス疾患に対する免疫化の必要性の以下の疾患の治療に反応する又は反応性であるかどうかを決定するために使用することができる。
【0063】
試験化合物の選択性のさらにより信頼性のある決定を行う及び/又は対象が治療に応答する、応答性があるかどうかを決定するために、本発明の方法は、好ましい実施形態において、少なくとも1%の癌性細胞及び/又は少なくとも1%の非癌性細胞を含む組織試料である試料を使用する。より好ましくは、組織試料は、少なくとも2%の癌性細胞、及び/又は少なくとも2%の非癌性細胞、さらにより好ましくは少なくとも5%の癌性細胞及び/又は少なくとも5%の非癌性細胞を含む。最も好ましくは、組織試料は、少なくとも10%の癌性細胞及び/又は少なくとも10%の非癌性細胞を含む。
【0064】
前述により開示されるように、試料、特に組織試料は、単層として培養されることが本発明の方法において好まれる。試料が非接着性細胞を含むPBMC又は骨髄に含まれる細胞に由来する場合、組織試料は好ましくは非接着性細胞単層として培養される。本発明は、そのため、イメージング研究における特に一次造血試料において、生理学的に関連のある、多集団細胞試料を使用する方法を提供してハイスループットな方法:1)試験化合物、例えば、化学療法/免疫療法/免疫抑制療法に使用される試験化合物のex vivo細胞集団診断又はその他の単細胞分析に基づくグローバルレベルのマーカーに対する効果、2)患者の試料のex vivo測定値に基づいて、どの患者にどの化学療法が利益があるのかについての予想を提供するこの技術の能力、3)免疫機能に対する多くの刺激(例えば、薬剤)の効果を決定する本技術の能力、及び4)治療評価におけるパターンを決定するために、経時的な多くの患者データの統合で決定する。原則として、任意の細胞試料は、血液、骨髄、胸水、脾臓ホモジネート、リンパ組織ホモジネート、皮膚ホモジネート等からの単核細胞等を本発明の方法に使用することができる。しかしながら、単核細胞が使用されることが好まれる。当業者は、本発明の方法で使用される単核細胞試料がとりわけ、PBMC及び骨髄細胞並びにその他を含むことに気が付いている。したがって、細胞試料、好ましくは、本発明の方法で使用される一次単核細胞の単層は、PBMC及び/又は骨髄細胞を含むことができる。すなわち、本明細書で提供される方法は、概して細胞又はPBMCについて記載されるが、当業者は、方法が骨髄細胞又はさらなる細胞に提供されることを理解している。したがって、本明細書では、骨髄細胞を使用する方法、骨髄試料に含まれる細胞に対する試験化合物の選択性を決定する方法、及び疾患を罹患している又は罹患しやすい対象が骨髄細胞の使用を含む試験化合物による治療に応答する又は応答性があるのかどうかを決定する方法が提供される。
【0065】
この点に関して、骨髄は、骨の内部で柔軟な組織である。ヒトにおいて、造血発生として知られる過程において、長管骨の上部の骨髄のコアによって赤血球細胞が産生される。骨髄移植は、白血病等の癌の特定の形態を含む骨髄の重度の疾患を治療するために実施される。さらに、骨髄幹細胞は、機能的神経細胞に形質転換されることに成功し、また、炎症性腸疾患等の病気を治療するために使用することができる。したがって、骨髄細胞は、様々な疾患、例えば、癌性疾患又は延長性腸疾患等の炎症性疾患の治療において価値のある標的を示す。このように、ドナーから得られる骨髄試料を使用した本明細書に提供される方法は、ドナーがこのような疾患を罹患している又は疾患を罹患しやすいかどうかを評価/決定する場合に非常に有用である。さらに、骨髄細胞を使用する本明細書に提供される方法は、ハイスループット薬剤スクリーニング等において様々な利点を提供する。
【0066】
染色可能で画像化することができる単層を形成するために接着性細胞(マクロファージ、HeLa等)を必要とする定説は、国際公開第2016/046346号の単層を提供することによって克服される。本明細書に記載の単層の前に、研究者グループは、例えば、リンパ腫及び白血病等の血液系疾患又は病態において、特に、疾患状態が非接着性細胞に示される又は反映される場合において、イメージベースの単細胞スクリーニング技術を、化学療法誘導分子(バイオマーカー)の変化、癌性芽細胞生存能評価及び細胞間接触のハイスループット決定について、一次患者試料に実施することができなかった。この問題を解決するために、国際公開第2016/046346号の発明者は、本明細書に「ファーマコスコピー」として参照される手段、及び方法、並びに方法論及び画像分析パイプラインを提供し、1つの画像において、接着性及び非接着性細胞の視覚化を可能にし、通常、技術分野で知られている方法に比べて、摂動につき必要とされる材料の1/10thしか必要とせず、スループット及び速度を最大化する。ファーマコスコピーは、知られている方法、例えば、フローサイトメトリーによって集められた同情報を提供することができるが、細胞内表現型(タンパク質の局所化/共局所化)、及び細胞微小環境/隣接する関係の測定等の追加の有利な情報を提供する。さらに、国際公開第2016/046346号の記載の方法は、細胞をほとんど必要とせず、したがって、より少ない患者の試料、より少ない液体量しか必要とせず、ほぼヒトの介入がなく、ファーマコスコピーは、したがって並行して試験を行うことができる分子摂動の数がかなり増加し、より詳細な評価を作り出す。さらに、生来の健康な集団から疾患細胞を選別する必要がなく、ファーマコスコピーは、オフターゲット薬剤効果を並行して制御しながら、薬剤媒介性表現型の変化を追跡することができる。これらの重要な制御は、に対する標的細胞(例えば、癌性細胞)の試験化合物を同ウェル及び同イメージング領域に存在する同ドナーからの全体の細胞(例えば、健康な細胞)に関係することによってなされる。本発明の方法は、国際公開第2016/046346号の方法論を使用するが、さらなる驚くべき及び予期しない利点を含む。特に、より信頼性を有して、試験化合物の選択性を決定し、及び/又は疾患、特に癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する又は応答性があるかどうかを決定することが可能である。このことは、試料の提示、特に単層に含まれるオフターゲットに対する試験化合物の特別ではない効果を考慮することによって達成される。
【0067】
本発明の方法を使用して、多数の試験化合物が効率的に、迅速に分析することができ、すなわち、これらの選択性は、例えば、患者/対象、特にPBMC試料又は骨髄試料から得られる1つの試料に由来し得る多数の単層を使用して決定される。通常、少なくとも1000、少なくとも4000、少なくとも8000、少なくとも12000、少なくとも16000、少なくとも20000、少なくとも24000少なくとも50000、少なくとも75000又は最大90000個以上の試験化合物がこのような1つの試料から得られる複数の単層において調査することができる。特定の実施形態において、本明細書で提供される単層は、複数のチャンネルを使用して、高含有量データと同時に画像にし、分析することができる。使用可能なデータのチャンネル数は、特定のイメージングソフトウェア及び使用可能な染色方法論にのみ依存し、この分野は急速に進歩している。現在使用可能な方法論は、少なくとも2つのチャンネル、及びより一般的に高含有量データの4、5、又は8つのチャンネルの同時のイメージング、処理及び分析を可能にする。
【0068】
本発明の方法において、好ましくは単層の形態の細胞は、技術分野で知られている及び/又は本明細書に記載される任意の方法に従って画像化することができ、本明細書に提供される方法は、技術分野で知られている任意のイメージング技術を使用することができる。特定のイメージング方法は、必須ではなく、当業者の知識に従って決定されてもよい。イメージングは、染料又は染色の使用を必要としても、又は必要としなくてもよく、染色及び非染色成分の両方のイメージングを備えてもよく、及び/又は染色が可視化される若しくは可視化されない条件下(例えば、明るい領域のイメージングであり、蛍光染色は可視化されない)、及び紫外線(蛍光染色は可視化される)、又はその組み合わせである条件下でのイメージングを備えてもよい。明るい領域の条件下でのイメージングは、知られており、技術分野で通常使用され、標準的な方法に従って及び/又は本明細書に記載されるように実施されてもよい。さらに、又はあるいは任意の他の標識のないイメージングは本発明に従って使用されてもよい。このような標識のない方法は、知られており、例えば、PhaseFocusイメージング(Phase Focus Ltd、シェフィールド、イングランド)が挙げられる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、生存癌性及び非癌性細胞の数は、自動顕微鏡を使用して決定される。よりさらに好ましい実施形態において、生存細胞の数は、断片化されていない核の数として決定される。核の断片化を決定する方法として、限定されないが、DAPI、又は核染料のHoechstシリーズの染料による核の染色及び蛍光顕微鏡下のそれらの形態の評価が挙げられる。
【0070】
本発明の実施は、また、細胞、好ましくは単層、特にPBMC単層(無標識方法に関連して又は独立してのいずれか)に検出可能な標識を加えることを含み、標識は、区別することができるサブ集団の生存率及び/又は細胞等の特定の表現型の細胞を選択的に標識するために、顕微鏡的方法を使用して検出することができる。検出可能な標識は、技術分野で知られている別々の細胞構造、成分又はタンパク質を標識することができる。標識は、また、抗体に付着して、特異的に標識し、抗体抗原を検出することもできる。好ましい実施形態において、検出可能な標識は、可視化又は紫外線光下で標識を可視化することができる。そのため、検出可能な標識は、蛍光であってもよい。可視化標識の多数は、本発明に適している。標識は、さらなる活性が無くても検出することができ、又は二次工程、例えば、基質の添加、酵素反応への暴露、又は特定の光波長への暴露の実施後にのみ検出することができる。
【0071】
細胞サブ集団、すなわち、特定のPBMCサブ集団又は骨髄細胞サブ集団において、本明細書で使用される区別することができるサブ集団は、標的細胞の表面又は細胞の内部における1つ以上のマーカーの発現を介して、検出することができる標識によって識別することができる。あるいは、又はさらにサブ集団は、標的細胞の表面又は標的細胞の内部における1つ以上のマーカーの発現の欠損によって定義することができる。1つ以上のマーカー(例えば、2つのマーカー、3つのマーカー、4つのマーカー等)の発現又は発現の欠損について試験を行って、マーカーを発現する又は発現しない細胞が、実際に、標的細胞、例えば、所望の細胞のサブ集団のメンバーであることのさらなる保証を提供することが望ましい場合がある。例えば、異なるマーカーに対する抗体の「カクテル」は、それぞれ、同じ標識又は異なる標識に(直接的又は間接的のいずれか)に結合することができる。一例として、異なるマーカーに対する抗体のカクテルは、それぞれ、同標識に結合する結合モチーフを含み得る(例えば、それぞれ、同二次抗体によって認識される同じ種類のFcを含み得る、又はそれぞれが同アビジン結合標識によってビオチン化及び特異的に結合し得る)。任意に、抗体の2つ以上の異なる抗体又はカクテルを使用することができる。好ましくは、細胞は、互いに区別することができる少なくとも2つの標識を使用して染色され、それによって、標的細胞種の少なくとも2つの異なるマーカーを発現する細胞の識別を可能にする。細胞は、また、互いに区別することができる少なくとも3、4、5個以上の異なる標識を使用して染色され、それによって、標的細胞種のより多くの数のマーカーを発現する細胞の検出を可能にする。任意に、細胞は、前選択した数のマーカー若しくは特定の前選択したマーカーの組み合わせを発現する場合、標的種の細胞として識別することができ、又は前選択したマーカーを発現しない場合、細胞は標的種の細胞として識別することができる。さらに、標的細胞種のマーカー(複数可)は、集団において、標的細胞を他の細胞と区別することができる限り、標的細胞に固有である必要はない。PBMCの場合、PBMC細胞集団の主要成分は、樹状細胞についてのCD11C、マクロファージについてのCD14、T細胞についてのCD3(CD4又はCD3を有するCD8)及びB細胞についてのCD19によって示される。前述のマーカーがPBMCのこれらの主要クラスのサブセットで重なり、PBMCのサブ集団を識別するためにこれらのマーカーによる染色は、この分野で広く受け入れられる。本発明の方法の使用に適したさらなるマーカーは、CDマーカーハンドブック(Becton、Dickinson and Co.2010、CA、USA)に見つけることができる。骨髄細胞に含まれる主要な細胞サブ集団は、好中性後骨髄球、好中骨髄球、分葉核好中球、正赤芽球及びリンパ球である。
【0072】
本発明の実施において、検出可能な標識に結合される抗体を使用することが好ましい。このような抗体は、個別の細胞構造の標的化を可能にし、そのため、このような抗体のカクテル(それぞれが異なる標識を有する)を使用して、複数の標的/細胞構造/細胞成分を同時に可視化することができる。単層の崩壊を回避するために、染色の間、ケアを行わなければならない。当業者が理解するように、これは、抗体ベースの標識の使用に特に問題であり、その理由は、抗体ベースの標識の使用は、正確な可視化を妨害し得る、すなわち非特異的染色及び/又はアッセイ「ノイズ」が生じ得る非結合標識を削除するために、通常、1つ以上の洗浄工程を必要とするためである。したがって、本発明は、検出可能な標識、特に、抗体ベースの標識で細胞の単層を染色する方法を含み、染色後の洗浄要件を最小限にし、又は無くす。本発明の方法は、洗浄がない状態で、ノイズシグナルの生成を回避する濃度で、検出可能な標識(複数可)を含み得、技術分野で知られている及び/又は本明細書に記載の方法によって決定することができる。そのため、本発明は、抗体の製造者によって推奨される前述又は以下の濃度で標識抗体の使用を含む。
【0073】
いくつかの例示的な細胞集団について、細胞は、マーカーが細胞内で特徴的な局所化又はパターンを示す場合、所与のマーカーに陽性であると考えられるだけであり得る。例えば、細胞は、細胞骨格マーカーが細胞骨格に存在する場合、「陽性」であると考えられ得、いくつかの拡散性細胞質染色である場合、「陰性」であると考えられ得る。このような場合、細胞は、適切な条件下で培養して(例えば、接着性培養物として)、細胞内の特徴的な局所化又はパターンを確立することができる。所与のマーカーの強固な検出に必要とされ得る細胞骨格アセンブリ(又は細胞内組織化を確立するためのその他の工程)適切な培養条件及び時間は、当業者によって容易に決定される。さらに、マーカーは、強固な染色に対する前提条件として接着性培養についての必要性を減少する、又は無くすマーカーを容易に選択することができる。
【0074】
標識タンパク質に有用な染料は、技術分野で知られている。概して、染料は、比色分析、発光、生物発光、化学発光、リン光又は蛍光シグナル等の光学的に検出可能なシグナルを提供することができる分子、化合物又は物質である。本発明の好ましい実施形態において、染料は、蛍光染料である。染料の非限定的な例は、そのいくつかは市販されており、CF染料(Biotium,Inc.)、Alexa Fluor染料(Invitrogen)、DyLight染料(Thermo Fisher)、Cy染料(GE Healthscience)、IRDyes(Li-Cor Biosciences,Inc.)及びHiLyte染料(Anaspec,Inc.)が挙げられる。いくつかの実施形態において、染料の励起及び/又は放出波長は、350nm~900nm又は400nm~700nm又は450~650nmである。
【0075】
例えば、染色は、複数の検出可能な標識、例えば、抗体、自己抗体又は患者血清を使用することを含み得る。染色は、可視光及び紫外線光の下で検出することができる。染色は、着色試薬又は着色試薬を作製することができる酵素に直接的又は間接的に結合される抗体を含み得る。抗体が染色の成分として使用される場合、マーカーは、抗体に直接的又は間接的に結合することができる。間接的な結合の例として、アビジン/ビオチン結合、二次抗体及びその組み合わせを介した結合を含む。例えば、細胞は、標的特異的抗体を結合する維持、及び一次抗体若しくは一次抗体に結合される分子を結合する二次抗体で染色することができる細胞は、検出可能なマーカーに結合することができる。間接的な結合の使用は、例えば、バックグラウンド結合を減少し、及び/又はシグナル増幅を提供することによってノイズに対するシグナルの比を改善することができる。
【0076】
染色は、また、蛍光標識に直接的又は間接的に結合される(前述で説明したように)一次又は二次抗体を含み得る。蛍光標識は、以下から成る群:Alexa Fluor350、Alexa Fluor405、Alexa Fluor430、Alexa Fluor488、Alexa Fluor514、Alexa Fluor532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor555、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor610、Alexa Fluor633、Alexa Fluor635、Alexa Fluor647、Alexa Fluor660、Alexa Fluor680、Alexa Fluor700、Alexa Fluor750及びAlexa Fluor790、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テキサスレッド、SYBR Green、DyLight Fluors、緑色蛍光タンパク質(GFP)、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド染料、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、TET(6-カルボキシ-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン)、HEX(6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン)、Joe(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、Tamra(テトラメチルローダミン)、6-カルボキシローダミン、Rox(カルボキシ-X-ローダミン)、R6Gローダミン6G)、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン(例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、N,N-ジエチル-4-(5’-アゾベンゾトリアゾリル)-フェニルアミン、アミノアクリジン、及び量子ドットから選択することができる。
【0077】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、臭化エチジウム、SYBR Green、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、DyLight Fluors、緑色蛍光タンパク質(GFP)、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド染料、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、TET(6-カルボキシ-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン)、HEX(6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン)、Joe(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、Tamra(テトラメチルローダミン)、6-カルボキシローダミン、Rox(カルボキシ-X-ローダミン)、R6Gローダミン6G)、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン(例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、N,N-ジエチル-4-(5’-アゾベンゾトリアゾリル)-フェニルアミン、アミノアクリジン等の蛍光分子に直接的又は間接的に結合される抗体を使用する。その他の例示的な蛍光分子として、量子ドットが挙げられ、特許明細書[例えば、米国特許出願第6,207,299号明細書、第6,322,901号明細書、第6,576,291号明細書、第6,649,138号明細書(混合された疎水性/親水性ポリマー移動剤が量子ドットの表面に結合される表面改質方法)、米国特許出願第6,682,596号明細書、第6,815,064号明細書(合金又は混合シェルについて)が挙げられ、特許のそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる)]、技術文献[例えば、「Alternative Routes toward High Quality CdSe Nanocrystals」、(Qu等、Nano Lett、1(6):333-337(2001)」]が挙げられる。様々な表面化学及び蛍光特徴を有する量子ドットは、とりわけ、Invitrogen Corporation、Eugene、Oreg、Evident Technologies(Troy、N.Y.)及びQuantum Dot Corporation(Hayward、Calif.)から市販されている。量子ドットは、合金量子ドット、ZnSSe、ZnSeTe、ZnSTe、CdSSe、CdSeTe、ScSTe、HgSSe、HgSeTe、HgSTe、ZnCdS、ZnCdSe、ZnCdTe、ZnHgS、ZnHgSe、ZnHgTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、ZnCdSSe、ZnHgSSe、ZnCdSeTe、ZnHgSeTe、CdHgSSe、CdHgSeTe、InGaAs、GaAlAs及びInGaN等を含む。合金量子ドット及びその作製方法は、例えば、米国特許出願第2005/0012182号明細書及び国際出願PCT国際公開2005/001889号に開示される。
【0078】
本発明の方法で使用される細胞を標識化することに続いて、好ましくは、単層の形態で、この方法は、さらに、検出可能な標識のシグナルを検出することを含む。検出可能な標識によって放出されるシグナルの種類に依存して、検出方法は、適切に適合することができる。蛍光放出標識を検出するのに適した検出方法を使用することが好まれる。検出方法は、また、技術分野で知られている標準的な方法に従って自動化することもできる。例えば、当業者が細胞の顕微鏡画像を分析し、解釈する、又はこれらの分析について自動プロトコルを確立することができる様々な計算法が存在する。一次画像の分析について、顕微鏡画像における照明のバイアス、顕微鏡画像から個別の細胞の同定、及びマーカー及びテキスチャー並びに核及び細胞サイズの測定、並びに形態及び位置パラメーターを修正することを含み、オープンソースソフトウェアCellProfiler(例えば、version2.1.1)を使用することができる。マーカー陽性細胞(CD34+前駆体細胞又は生存能染料陽性細胞)は、オープンソースソフトウェアCellProfiler Analyst(例えば、バージョン2.0)を使用したマシーンラーニングによって実施することができ、連続ゲート戦略によって二重又は三重陽性細胞を同定することができる。さらなる分析及びヒット選択についてのプレートの概要は、同様にCellProfiler Analystを使用して作製することができる。
【0079】
Bioconductor(例えば、バージョン2.14)、又はPipeline Pilot(例えば、バージョン9.0;Accelrys)のcellHTSパッケージは、両者ともにデータ分析、続く一次画像分析に使用することができ、プレート効果正規化、コントロールベース正規化及びヒット選択を含む。
【0080】
市販の自動顕微鏡システムも本発明の実施に使用することができ、例えば、PerkinElmer Operetta自動顕微鏡(PerkinElmer Technologies GmbH&Co.KG、Walluf、ドイツ)があり、このシステムは、対応する画像分析ソフトウェア、例えば、PerkinElmer’s Harmonyソフトウェア(例えば、バージョン3.1.1)を含み得る。このような自動及び/又は市販のシステムを使用して、本発明の方法に従って、顕微鏡画像から一次画像分析、陽性細胞の選択、及びヒット選択を実施することができる。
【0081】
この一次画像分析に続いて、本発明の方法は、細胞の少なくとも2つの区別することができるサブ集団を含む試料に含まれる特定の表現型を有する細胞集団に対する試験化合物の選択性を決定し、又は疾患、特に癌を罹患している対象が試験化合物による治療に応答する、又は応答性があるのかどうかを決定するために実施され、この方法は、前述の表現型、特に細胞生存能を誘導する能力に基づく試験化合物の選択性を決定することを示す。
【0082】
癌を罹患している対象が本発明の試験化合物による治療に応答する又は応答性があるのかどうかを決定する方法に基づいて、治療決定がなされ得、すなわち、対象が試験化合物による治療に応答する又は応答性があるのかどうかについて最も有利な結果を有することが決定された試験化合物を対象の治療に選択することができる。
【0083】
本発明の方法における数の「平均」(「mean」又は「average」)を計算する場合、これは、算術的方法、幾何学的方法、及び/又はランダムエラーに関連する反復される測定値に基づいて変数の真の値を推測する目的を有する関連の統計学的方法を指すことが理解される。さらに、いくつかの場合において、平均値の代わりに中央値を使用することが有利な場合がある(例えば、異常値は存在するが、根底のランダム変数が通常に分布される場合において)ことが当業者には理解される。好ましい実施形態において、算術的方法は、本発明の方法が「平均」を指す場合はいつでも使用される。
【0084】
試験化合物が1つ以上の化学物質を含む場合、試験化合物の濃度は、異なる濃度の化学物質の特定の組み合わせを指し、試験化合物の異なる濃度は、異なる濃度を有する試験化合物を含む少なくとも1つの化学物質を指す。特定の濃度を有する1つ以上の化学物質を含む試験化合物は、試験化合物を含む全ての化学物質は1つの特定の濃度を有するが、同じ濃度を有する必要はないことを意味する。
【0085】
「治療」又は「治療すること」は、治療的治療及び予防的(「prophylactic」又は「preventative」)手段の両方を指し、この目的は、標的とされる病態若しくは障害、又はそれに関連する1つ以上の症状を予防、軽減又は遅延(少なくする)ことである。同様に、「応答性のある」又は「応答する」及び類似の用語は、標的とされる病態又はそれに関連する1つ以上の症状が予防、軽減、少なくするという効能を指す。この用語は、また、疾患、特に骨髄増殖性疾患の発症を遅延し、抑制し(例えば、その増殖を減少、又は静止する)、影響を軽減する、又は疾患を罹患している患者の寿命を延長する、又はこのようなマーカーが達成される効能を示す。治療を必要とする対象として、障害があると診断された対象、障害を有すると思われる対象、障害に罹患しやすい並びに障害が予防される対象が挙げられる。したがって、本明細書で治療を受ける哺乳動物は、障害を有すると診断され得、又は障害を罹患しやすい、又は罹患していると思われ得る。
【0086】
「応答」又は「応答性のある」は、治療後の少なくとも1つの変化した特徴を示す対象を指す。対象の変化した特徴は、標的とされる病態又は障害の軽減又は遅延であってもよい。
【0087】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」及び「予防」は、対象の癌疾患の1つ以上の症状の発生及び/又は再発又は発症の予防を指し、予防又は治療薬の投与から生じる。
【0088】
本明細書で提供される手段及び方法は、一次造血細胞又は全ての単球細胞について多くが記載される。当業者に理解されるように、一次造血細胞は、特にPBMC及び骨髄細胞を含む。したがって、PBMCについて記載される本明細書で提供される手段及び方法は、また、骨髄細胞及び任意のその他の単核性細胞について記載される。
【0089】
本発明の方法で使用される試験化合物(複数可)は、疾患、特に癌の治療について承認された治療で使用される治療薬(複数可)であってもよい。この点に関して、本発明の意味の範囲における「試験化合物」として、限定されないが、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、核酸、合成及び天然薬剤、ペプトイド、ポリエン、マクロサイクル、グリコシド、テルペン、テルペノイド、脂肪族及び芳香族化合物及びそれらの誘導体が挙げられる。好ましい実施形態において、試験化合物は、合成及び天然薬剤等の化学化合物である。別の好ましい実施形態において、試験化合物は、疾患、障害、病理、及び/又はそれに関連する症状の軽減及び/又は治癒に影響する。ポリマーは、本発明の方法に使用される1つ以上の試験化合物を含み得る。
【0090】
直ぐ前に詳述したように、試験化合物は、知られている治療薬から選択することもできる。この点に関して、適切な治療薬として、限定されないが、Goodman and Oilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(例えば、第9版)又はThe Merck Index(例えば、第12版)に示される治療薬が挙げられる。治療薬の属として、限定されないが、炎症応答に影響する薬剤、体液の組成に影響する薬剤、電解質代謝に影響する薬剤、化学療法薬(例えば、過剰増殖性疾患、特に癌、寄生虫感染症、及び微生物病のための)、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、血液及び造血臓器に影響する薬剤、ホルモン薬及びホルモンアンタゴニスト、ビタミン及び栄養剤、ワクチン、オリゴヌクレオチド及び遺伝子治療薬が挙げられる。組み合わせ、例えば、2剤等の2つ以上の薬剤の混合物又はブレンドを含む組成物が、また、本発明によっても含まれることが理解される。
【0091】
一実施形態において、治療薬は、薬剤、又はプロドラッグ、抗体又はワクチンであってもよい。本発明の方法を使用して、治療薬の患者への投与が、治療薬、又は治療薬と共に投与される送達ビヒクルの成分、担体等に対する応答を誘引するかどうかを評価することができる。
【0092】
治療薬の正確な性質は、本発明に限定しない。非限定的な実施形態において、本発明の方法は、任意に賦形剤、担体又は送達ビヒクルを組み合わせて、合成小分子、天然物質、天然又は合成して製造された生物学的製剤、又は前述の2つ以上の任意の組み合わせに対する応答を評価するために使用することができる。
【0093】
特に単層における分析される試料に含まれる細胞の生存率は、技術分野で知られている方法を使用して、決定/評価/検証することができる。すなわち、当業者は、例えば、細胞は生存可能、生きている、死んでいる又はその期を変化する工程を経ている、例えば、アポトーシス又は壊死において死んでいるかどうかについて、細胞の期を決定/評価/検証する方法を良く知っている。したがって、細胞を特異的に認識/標識することが知られているマーカー/染料が特定の期におり、本発明の方法に使用することができる。後期の細胞死又は初期アポトーシスについて選択的な無傷ではない膜又は染料/標識を有する細胞に選択的である染料/標識を含む。例えば、固定することができる、生きている/死んでいるグリーンを使用することができ(ThermoFisher、カタログ番号L-23101)、チトクロムCに対する抗体は、染料の使用によってDNAターンオーバー又は細胞増殖を決定する。特に、当業者に知られている単層の形態において、本発明で使用される細胞試料に含まれる細胞の生存率を決定/評価/検証するさらなる手段及び方法は当業者に知られている。
【0094】
細胞試料特に単層、特にPBMC単層又は骨髄細胞単層に含まれる2つ以上の区別することができるサブ集団(複数可)の生存率の変化及び/又は細胞間相互作用を決定/追跡/評価/検証は、技術分野で知られている方法を使用して行うことができる。例えば、顕微鏡を使用して、変化は、光学的知覚によって決定/追跡/評価/検証することができる。しかしながら、ハイスループット適用について、単層に含まれる個別のサブ集団の生存率及び/又は細胞間相互作用の変化を決定/追跡/評価/検証する自動化された方法が使用されることが好まれる。このような方法は、細胞試料、好ましくは単層に含まれるサブ集団を、例えば、検出可能な標識によって識別することを備える。その後、標識された/検出されたサブ集団が細胞間相互作用を示すかどうかを決定することができ、細胞間相互作用は、(前述のように)血漿膜を介した直接的接触又は間接的接触を含み得る。したがって、距離パラメーター、すなわち、標識された細胞間の前に定義された閾値が導入され、相互作用の全体数、すなわち、どれくらいの数の細胞間相互作用が標識された細胞間で観察されるのかを決定する。この手順において、区別することができるサブグループの標識された細胞は、第2の区別することができるサブグループの1つ以上の細胞と相互作用し得、それぞれの相互作用が数えられる。得られる数は、ランダム分布機能、すなわち、ランダム細胞間相互作用によって予想されるものと比較される。相互作用の傾向は、その後、本発明の方法、すなわち、相互作用スコアを使用して計算することができ、相互作用がランダム又は方向性を有するものなのかを決定する。1つ以上の試験物質(複数可)が本発明の細胞試料に加えられた前後にこのようなプロトコルに従うことによって、1つ以上の試験化合物(複数可)による細胞間相互作用の変化を決定/追跡/評価/検証することができる。
【0095】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する。本明細書の記載と同様又は等価な方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用することができるが、適切な方法及び材料が以下に記載される。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が管理する。さらに、材料、方法及び実施例は、例示するためにあり、限定することを意図しない。
【0096】
本明細書に記載の一般的な方法及び技術は、技術分野で知られる通常の方法、他に指示されない限り、本明細書全体で記載され、検討される様々な一般的及びより詳細な参考文献に記載されるように、実施することができる。例えば、Sambrook等、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)及びAusubel等、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)を参照されたい。
【0097】
本発明の態様は図及び以下の記述に詳細に説明及び記載されるが、このような図及び記述は、説明又は例示であると考えられ、制限するものではない。変化及び修正は、以下の請求項の範囲及び趣旨の範囲で当業者によってなされ得ることが理解される。特に、本発明は、前述及び以下に記載の異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせでさらなる実施形態を網羅する。
【0098】
本発明は、また、個別に図に示される全てのさらなる特徴を全て網羅するが、これらの特徴は以前の又は以下の記述に記載されていない場合がある。また、図及び記述に記載される実施形態及びその特徴の1つの代替例は、本発明のその他の態様の主題から否定することができる。
【0099】
さらに、請求項において、「含む」という用語は、その他の要素又は工程を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数のものを除外しない。1つの単位は、請求項に記載されるいくつかの特徴の機能を満たすことができる。属性又は値と共に「本質的に」、「約」、「大体」等のという用語は、特に、個別に属性を厳密に規定し、又は値を厳密に規定もする。請求項における任意の符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0100】
特許又は出願書類は、色で作成される少なくとも1つの図を含む。色付きの図(複数可)を有するこの特許又は特許出願公開のコピーは、要望及び必要費用の支払いによって、特許庁によって提供される。
【0101】
本発明はまた、以下の図によるいくつかの態様でも説明される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1図1Aは、細胞毒性試験化合物の薬剤濃度を関数として、癌性A細胞及び非癌性B細胞の生存率を示す2つの仮説の用量反応曲線である。図1Bは、試験化合物の濃度を関数として、合計の生存細胞の生存A細胞の合計細胞生存率及び画分を示す。ここで、合計細胞生存率が開始値の5%以下である場合、細胞の少数を定量化することが大きなエラーに関連するという事実により、生存A細胞の画分は0.8に設定された(すなわち、ゼロの試験化合物の濃度の画分)。この方法に従って、1の選択性は、本発明の方法の工程に従う場合、確実に、試験化合物を強い全体の細胞毒性に割り当てる。
図2図2Aは、3つの濃度点で測定する癌A細胞及び非癌性B細胞に対する試験化合物のlogEC50の差を関数として、本発明に記載されるように決定された癌細胞を殺傷する細胞毒性試験化合物の選択性/値である(図1Bを参照されたい)。図2Bは、400の濃度点で測定する癌細胞及び非癌性細胞に対する試験化合物のlogEC50の差を関数として、本発明に記載されるように決定される選択性/値である。3つの濃度点で既に測定された値は、本発明を使用して選択性の情報を得るのに充分である。しかしながら、濃度点が多いほど、選択性/値がlogEC50の差をより正確に反映する。
図3】ダウノルビシンの濃度を関数として示される本発明を使用して、個別のダウノルビシンの濃度について決定されるCD34+、CD117+又はCD34+/CD117+のいずれかとして規定されるAML芽細胞を殺傷するダウノルビシンの選択性/値である。ダウノルビシン含有治療に応答する患者は、異なるダウノルビシンの濃度にわたるダウノルビシンベースの3+5+7導入療法に応答しない患者よりも、本発明を使用して決定された低い選択性/値を有した。
図4】上パネル:3つの前述の薬から成る「3+5+7」導入療法に対する応答者及び非応答者について、本発明に従って決定されるAML患者の骨髄細胞における癌細胞(ここではCD34又はCD117発現細胞として規定される)ダウノルビシン+シタラビン+エトポシドの選択性/値である。0.92のカットオフ値は、0.85の合計分類精度で、患者を応答者及び非応答者に分類することができる。中央パネル:全ての薬剤濃度及び組み合わせで平均されたゼロの薬剤濃度における癌性細胞の数に対する癌性細胞の数である。この計量のみが、0.65の合計分類精度で、患者を応答者及び非応答者に分類することができる。下パネル:中央パネルと同様であるが、合計細胞数に基づく。この計量の使用では、正確な分類はできない。
図5】本発明に従って、及び下流データ処理について実施例4に記載される方法を使用して決定されるAML芽細胞を殺傷するダウノルビシンの選択性に基づく、3+5+7誘導療法を含むダウノルビシンに対するAML患者の応答性を予測する場合、受診者動作曲線下の面積が最も高かった(AUROC=0.97)。これは、本発明に従って殺傷選択性/値を測定することが、例えば、応答の予測を癌性細胞の数に基づくよりも有利であることを実証する(AUROC=0.91)。AML芽細胞はここでは図2に規定される。
図6】左:血液癌の患者は、2つ以上のFDA承認薬の組み合わせで治療を受けた。各患者について、複合の選択性は、本発明に従って決定されるように、1-患者に与えられる薬剤の個別の選択性の和として計算された。複合の選択性は、応答に対してプロットされ(PD=進行性疾患、SD=安定した疾患、PR=部分寛解、CR=完全寛解)、応答に相関する。統合された選択性に基づいて、患者は、応答者(CR及びPR)及び非応答者(PD及びSD)に、92%の精度及び0.84のAUROCに分類することができた。
図7】本発明に従って決定されるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者のCD20-細胞を上回るCD20+細胞を殺傷するFDA承認薬の選択性/値である。患者は、イブルチニブによる治療に応答した。
図8】本発明に従って決定されるB細胞リンパ芽球性リンパ腫の患者のCD20-細胞を上回るCD20+細胞を殺傷するFDA承認薬の選択性/値である。患者は、ボルテゾミブ及び6-メルカプトプリンの組み合わせによる治療に応答した。
図9】本発明に従って決定されるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の患者のCD79a-細胞を上回るCD79a+細胞を殺傷するFDA承認薬の選択性/値である。患者は、ボルテゾミブ、クラドリビン及びデキサメタゾンの組み合わせによる治療に応答した。
図10】異なる濃度での化合物X[X](任意濃度スケールにおいて、Aに対するlogEC50=-2及びBに対するlogEC50=3)による治療後の集団A及び集団Bの細胞の生存率が計算された。したがって、合計の生存細胞(集団A+B)の画分として、集団Aの生存細胞の数は、A生存細胞/(A生存細胞+B生存細胞)として決定された。ロジスティック用量反応曲線は、濃度[X](黒い線)及び屈曲点として決定されるlogEC50の関数として、A生存細胞/(A生存細胞+B生存細胞)から生じるS字状曲線に適合された。logEC50AもlogEC50Bも、曲線適合(すなわち、黒い線のS字状曲線logEC50)から得られるlogEC50に対応し、これは、EC50A又はEC50Bの生存率がA生存細胞/(A生存細胞+B生存細胞)に対するロジスティック曲線を適合することから得ることができなかったことを実証する。
【実施例
【0103】
実施例1
細胞毒性薬剤Xに対する細胞集団A及びBから成る細胞の混合物の応答をシミュレートする合成データが提供された。Xは、任意濃度スケールにおいて、EC50AのlogEC50(例えば、図1Aの2.5)及びlogEC50B(例えば、図1Bの3)を有するBで影響された。これらのパラメーターに基づいて、生存細胞の数及びA及びB細胞の混合物の各種の細胞の合計数は、標準4パラメータロジスティック(すなわちS字状)用量反応曲線を想定して計算することができた。[X]の濃度=0である場合、A:Bの比=0.8:0.2である場合、10,000個の細胞の合計数が想定された。たった3つの薬剤濃度の合計数のBを上回るAを殺傷するXの選択性の測定値がシミュレートされた。
【0104】
薬剤の選択性は、本発明を使用して計算された。特に、それぞれの測定された薬剤濃度について、生存A細胞の数及び生存B細胞の数が計算された。本発明の方法の工程(d)に従って、(i)Rx=Ax/(Ax+Bx)として3つの異なる濃度のXの存在下で同じ表現型を示す細胞の合計集団の細胞数(ここではviableA+viableB)に対する区別することができる表現型(ここでは生存率)を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける生存細胞の数、Ax及びBxは、3つの異なる濃度[X]の生存A及びB細胞の数を示す、並びに(ii)[X]の濃度=0について、R0=A0/(A0+B0)が決定された。その後、Sx=Rx/R0として[X]の各濃度における選択性が決定され、全てのSxについて平均化されて、Sfinal=(S1+S2+S3)/3の最終選択性を得た。
【0105】
本発明を使用して異なる対のEC50A及びEC50Bの薬剤選択性を決定する場合、驚くべきことに、Aに対するXのlogEC50及びBに対するXのlogEC50の差に線形に比例した(図2)。
【0106】
実施例2
Ficoll密度勾配遠心分離を使用して急性骨髄性白血病(AML)であると新たに診断された治療が初めての患者の20個の骨髄細胞の試料から単核細胞が抽出された。骨髄試料を採取した後に、20名の全患者は、「3+5+7」スケジュールに従ってダウノルビシン、エトポシド及びシタラビンによる治療を受け、それによって10名の患者が応答し、10名の患者は応答しなかった。
【0107】
単核細胞は、RPMI+10%のFCS+ペニシリン/ストレプトマイシンに懸濁され、Perkin Elmer Cell Carrier384ウェル細胞培養プレートに、ウェルあたり50μLの培地に、20,000個の細胞の濃度で蒔かれ、それによって以前に、異なる濃度でシタラビン、ダウノルビシン及びエトポシドの組み合わせで充填された。全ての可能な薬剤及び濃度の組み合わせが0、1、3、10及び20μMの濃度のシタラビン、0、0.1、1、3及び10μMの濃度のダウノルビシン及び0、1、3、10及び20μMの濃度のエトポシドを有するプレートに示され、3次元薬剤滴定マトリックスを提供する。細胞は、国際公開第2016/046346号に記載の単層を形成し、単層は、18時間インキュベートされ、0.5%のTritox X114を含有するPBS中、15μLの4%のホルムアルデヒド溶液を加えることによって固定され、フリックされ、DAPIで染色され、並びに抗体を蛍光標識して、CD34及びCD117陽性細胞をマークした。インキュベーションから1時間後、各ウェルの画像がOpera Phenix自動共焦点顕微鏡(Perkin Elmer)を使用して撮影された。
【0108】
マーカー陽性細胞は、癌性細胞と考えられ、マーカー陰性細胞は非癌性細胞として考えられた。生存細胞の合計数は、CellProfiler計算画像分析ソフトウェアを使用してインタクトなDAPI染色された核を数えることによって定量化され、断片化された核は、死んだ又は死んでいるものとして処分された。同様に、生きている癌性細胞の数は、インタクトなDAPI染色された核を有する抗体染色された細胞として決定された。
【0109】
癌性集団を殺傷する各薬剤の選択性は、異なる濃度のダウノルビシンのみについて、コントロールのウェル(薬剤なし、DMSOのみ)の生きている全ての細胞の生きている癌性細胞の画分に対して、生きている合計の細胞の生きている癌性細胞の画分を取ることによって、本発明に従って決定された(図3)。驚くべきことに、この尺度は単独で応答者及び非応答者を分けることができた。
【0110】
全ての薬剤の分布を考慮するために、癌性集団を殺傷する各薬剤の選択性は、コントロールのウェル(薬剤なし、DMSOのみ)の生きている全ての細胞の生きている癌性細胞の画分に対して、それぞれの薬剤の組み合わせ及び濃度で、生きている合計の細胞の生きている癌性細胞の画分を取ることによって、並びに薬剤の全ての濃度及び組み合わせを平均することによって、本発明に従って決定された。0.92のカットオフ値を使用して、薬剤の組み合わせに臨床的に応答した患者は、0.85の合計の分類精度で応答しなかった(図4、上パネル)患者と区別することができた。
【0111】
実施例3
実施例2と同様に、薬剤応答が癌細胞(ここではCD34又はCD117陽性細胞)の感受性又は合計細胞集団の感受性に基づいてのみ決定される場合、0.65以下の分類精度が得られた(図4、それぞれ中央及び下パネル)。
【0112】
実施例4
実施例2及び3と同様に、この例は、本発明に従って決定された選択性がどのようにして、下流分析に使用されて、さらにより正確に患者を応答者及び非応答者に分類することができる薬剤応答スコアを得ることができるのかを示す。各患者の試料及び異なる濃度の薬剤の組み合わせについて、選択性は、本発明に従って計算され、応答者及び非応答者にわたる各濃度で平均化された。得られるデータ点は、応答者についての1つの表面及び非応答者についての1つの表面を与える4次元用量反応空間における用量反応表面に及ぶ。2つの用量反応表面を最適に分ける表面は、特定の薬剤用量の組み合わせにおいて、応答者及び非応答者に最適に分類することを可能にした用量反応空間の各点で、カットオフ点を決定することによって決定された。反応スコアは、用量反応空間の各点に対して1を割り当てることによって、各患者について計算され、1は、分離表面の応答者側にあり、-1は反対側にあった。濃度空間における各点で、合計の分類精度によって重み付けされたこれらのインジケーターの和が最終的な薬剤応答スコアとなった。例えば、この応答スコアは、3+5+7導入治療を受けているAML患者を90%より高い分類精度で応答者及び非応答者に分けることができ(図5)、0.97の受診者動作曲線下の面積は、同モデルを、ゼロの薬剤濃度のみで癌性細胞の数に正規化される癌性細胞の数に基づく場合、たった0.91のAUROCを提供し、同モデルを細胞数に基づく場合は0.86のAUROCを提供した。
【0113】
実施例5
PBMC又は骨髄に通常見られる骨髄液、末梢血、胸水、腹水又は切除されたリンパ節の試料は、Ficoll勾配(骨髄、末梢血、供水、腹水)(GE healthcare)によって精製され、又は均質化及びろ過され(リンパ組織)、RPMI+10%のFCS及びペニシリン/ストレプトマイシンに再懸濁された。通常PBMCに見つけられる単核細胞の得られる単一の細胞懸濁液は、国際公開第2016/046346号にしたがって、ウェルプレートあたり50μLの培地中の20,000個の細胞の濃度で、384ウェルPerkin Elmer Cell Carrierイメージングプレートに蒔かれて、非接着性細胞単層を形成した。50nLのDMSO又はコントロールとしての50nLのDMSOに140個の異なる臨床的に使用される抗癌剤がプレートに以前に充填され、50μLの培地及び細胞を加えた後の各薬剤が、薬剤につき少なくとも3つの技術的複製物において1又は10μMの最終濃度で存在し、並びに濃度及びDMSO濃度は、0.1%v/vになった。
【0114】
単層は一晩(18時間)インキュベートされた。研究に使用される生検は、全て新鮮な状態で獲得され、凍結保存はされていなかった。免疫蛍光染色、自動顕微鏡によるイメージング(Opera Phenix、Perkin Elmer)、イメージ分析(CellProfiler)及びデータ分析(Matlab)は、Vladimer等、Nat Chem Biol2017に以前に記載されたように実施された。標的癌性細胞集団を識別するために使用される抗体は、臨床病理学のレポート及び抗体反応性評価に基づいて選択され、eBiosciencesからのCD3(HIT3a)、CD19(HIB19)、CD20(2H7)、CD79a(HM47)、CD34(4H11)、CD117(104ED2)及びCD138(DL-101)を含んだ。非染色細胞は、非癌性細胞と考えられた。
【0115】
非癌性細胞よりも癌細胞を殺傷する薬剤の選択性は、コントロールのウェル(薬剤なし、DMSOのみ)の生きている全ての細胞の生きている癌性細胞の平均の画分に対して、各薬剤及び濃度について、生きている合計の細胞の生きている癌性細胞の平均の画分を取ることによって、本発明に従って決定された。各薬剤について、2つの濃度の平均の画分のこれらの商が決定された。
【0116】
本発明に従って決定されるように、1未満の値/選択性を示した薬剤で治療を受けた患者は、本発明に従って決定される値を考慮せずに選択された薬剤又は本発明に従って決定されるように1より大きい値/選択性を有した薬剤で治療を受けた患者よりも高い応答機会(すなわち、完全寛解又は部分寛解の達成)を有した。
【0117】
さらに、薬剤の組み合わせが患者に与えられた場合、1-患者に与えられる薬剤の個別の値(図6)の和が大きいほど、患者が応答する機会が高いものと思われる。
【0118】
実施例6
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する69歳男性は、これまでに7つのラインの治療の後、再発した。試料のリンパ腫細胞は、1より大きい薬剤の選択性によって示されるように、試験を行った104個の薬剤の大部分に抵抗性があって、本発明に従って決定されるように、非癌性細胞よりも癌性細胞を殺傷し、6つの化合物だけが重要なex vivoのオンターゲット効果を示した(図7)。患者の病歴、年齢及び併存症からシスプラチン及びオキサリプラチンは実行可能であるとは考えられなかったが、BTK阻害剤のイブルチニブは、2番目に強力なex vivo有効性(本発明に記載の値/選択性=0.61、P<0.00048;図7)を示した。イブルチニブ治療の49日目に実施されたPET-CTは、患者について完全寛解を確認した。
【0119】
実施例7
前駆体B細胞リンパ芽球性リンパ腫(B-LBL)を有する51歳女性は、これまでに3つのラインの治療を受けたことがあり、二重特異的CD3-CD19抗体ブリナツモマブによる免疫療法の後、進行した。PBMCに通常見つけられる細胞を含む細胞混合物が、女性の胸水から単離された。細胞混合物に含まれる癌性対非癌性細胞を選択的に殺傷する266個の化合物の能力は、本発明を使用して決定された。プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブが、癌細胞を選択的に殺傷することができ(本発明に従って決定された選択性=0.50、P<0.001;図8)及びチオプリン6-メルカプトプリン、6-MP(本発明に従って決定された値/選択性0.58、P<0.001;図8)であることが明らかとなった。6-MP及びボルテゾミブは、抗CD20オビヌツズマブと併用された。28日後、PET-CTは、部分緩解を確認した。
【0120】
実施例8
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者の切除されたリンパ節は、1つの細胞に分離され、PBMCに通常見つけられる細胞を含む複雑な細胞混合物を与えた。細胞混合物に含まれる癌性対非癌性細胞を選択的に殺傷する266個の化合物の能力は、本発明に従って決定された。患者は、1つの最も強力なex vivo作用薬ボルテゾミブ(選択性=0.59、P<0.0001)、クラドリビン(選択性=0.73;P<0.0003)及びデキサメタゾン(値/選択性=0.87;P<0.05;図9)との組み合わせに完全寛解を達成した(図9)。
【0121】
実施例9
本実施例は、請求項(1)以降、特に請求項(1)及び(2)に記載される方法の実用的適用を記載する。40,000個の細胞から成る血液癌患者の組織試料が提供される。20,000個の細胞は、癌性細胞であり、細胞表面マーカーCD19に陽性に染色する。残りの細胞は、CD3、4、8、11c、14、56及びその他を含むその他の細胞表面マーカーに陽性に染色する。試料は、それぞれ20,000個の細胞の2つの部分に分けられる。第1試料は、DMSO(0.1%の最終DMSO濃度)の10μMのボルテゾミブの存在下でRPMI+10%のFCSにインキュベートされ、第2試料は、RPMI+10%のFCS+0.1%のDMSOでインキュベートされる。24時間のインキュベーションの後、各試料の各細胞の生存率が決定され、それによって、本明細書における生存率は、請求項1及び従属する請求項の工程(d)に参照される「区別することができる表現型」である。ボルテゾミブで処理された試料において、CD19について5,000個の生細胞の染色が見つけられ、CD19染色に陰性の10,000個の生細胞が見つけられる。DMSOで処理された試料において、CD19に陽性の10,000個の生細胞染色及びCD19に陰性の染色がそれぞれ見つけられる。本発明に従って、CD19陽性細胞の生存率を減少するボルテゾミブの選択性が計算される。
【0122】
以下の工程(d)に従って、(i)試験化合物としてボルテゾミブの存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分(本明細書では5,000/15,000=0.33)及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分(本明細書では10,000/20,000=0.5)において、同じ表現型を示す(すなわち、生存率)細胞の合計集団(CD19陽性+CD19陰性細胞)の細胞の数に対して、区別することができる表現型(本明細書では生存率)を示す少なくとも2つのサブ集団の1つにおける細胞数が計算される。
【0123】
工程(e)に従って、全てのその他のサブ集団にわたって、工程(d)(本明細書ではCD19陽性細胞)において参照される表現型を誘導する試験化合物(本明細書ではボルテゾミブ)の選択性は、(i)(本明細書では0.33)を(ii)(本明細書では0.50)によって割ることによって決定される。0.33/0.50=0.66は、すなわち、1未満であるため、試験化合物(本明細書ではボルテゾミブ)は、工程(d)(本明細書ではCD19陽性細胞)に明示的に参照される1つの集団において、工程(d)(本明細書では生存率)の表現型を選択的に阻害する。そのため、本発明に従って、我々は、所与の例におけるCD19陽性細胞の生存率を選択的に減少したと結論付けることができる。
【0124】
実施例10
本実施例は、本発明の方法のさらに実用的適用を記載する。60,000個の細胞から成る血液癌患者の組織試料が提供される。30,000個の細胞は、癌性細胞であり、細胞表面マーカーCD79aに陽性に染色する。残りの細胞は、CD3、4、8、11c、14、56及びその他を含むその他の細胞表面マーカーに陽性に染色する。適切に標識された抗体は、染色試薬として使用される。この試料は、40,000個の細胞及び20,000個の細胞の2つの部分に分けられる。40,000個の細胞の第一部分は、さらに、本明細書ではそれぞれ[1a]及び[1b]と記載される20,000個の細胞の2つの部分に分けられる。部分[1a]及び[1b]は、それぞれ、DMSO(0.1%の最終DMSO濃度)の10μM及び1μMのボルテゾミブの存在下でRPMI+10%のFCSにインキュベートされ、第2試料は、RPMI+10%のFCS+0.1%のDMSOでインキュベートされる。本明細書におけるCD79aは、明白にするために、仮説の例として選択されるだけで、任意のその他の表面マーカーに置き換えることができる。
【0125】
24時間のインキュベーションの後、各試料の各細胞の生存率が決定され、それによって、本明細書における生存率は、本発明で使用される「区別することができる表現型」である。ボルテゾミブで処理された試料[1a]において、CD79aについて5,000個の生細胞の染色が見つけられ、CD79a染色に陰性の10,000個の生細胞が見つけられる。ボルテゾミブで処理された試料[1b]において、CD79aについて8,000個の生細胞の染色が見つけられ、CD79a染色に陰性の10,000個の生細胞が見つけられる。DMSOで処理された試料において、CD79aに陽性の10,000個の生細胞染色及びCD79aに陰性の染色がそれぞれ見つけられる。CD79a陽性細胞の生存率を減少するボルテゾミブの選択性が本発明の方法に従って計算される。
【0126】
工程[1a]及び[1b]の両方について、(i)試験化合物としてそれぞれの濃度で、ボルテゾミブの存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分(本明細書では、[1a]について5,000/15,000=0.33、及び[1b]について8,000/18,000=0.44)及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされた少なくとも1つの部分(本明細書では、10,000/20,000=0.5)において、同じ表現型(すなわち、生存率)を示す細胞の合計集団の細胞(CD79a陽性+CD79a陰性細胞)の数に対して、区別することができる表現型(本明細書では、生存率)を示す少なくとも2つのサブ集団(本明細書では、CD79a陽性細胞)の1つにおける細胞数が計算される。
【0127】
以下の工程(e)に従って、全てのその他のサブ集団にわたって、工程(d)(本明細書ではCD79a陽性細胞)において参照される表現型を誘導する試験化合物(本明細書ではボルテゾミブ)の選択性は、(i)(本明細書:[1a]については0.33、[1b]については0.44)を(ii)(本明細書0.50)によって割ることによって決定され、平均選択性は、(0.33/0.50+0.44/0.50)/ 2=0.77として最終値/選択性として計算される。0.77は1未満であるため、試験化合物(本明細書ではボルテゾミブ)は、工程(d)(本明細書ではCD79a陽性細胞)に明示的に参照される1つの集団において、工程(d)の表現型(本明細書では生存率)を選択的に阻害する。そのため、本発明に従って、所与の例におけるCD79a陽性細胞の生存率を選択的に減少したと結論付けることができる。
【0128】
試料の由来とされる患者は、ボルテゾミブによる治療に応答したと思われる。本明細書におけるCD79aは、明白にするために、仮説の例として選択されるだけで、任意のその他の表面マーカーに置き換えることができる。また、細胞数は、例示の目的で恣意的に選択されるだけである。
【0129】
実施例11
60,000個の細胞から成る血液癌患者の組織試料が提供される。30,000個の細胞は、癌性細胞であり、細胞表面マーカーCD20に陽性に染色する。残りの細胞は、CD3、4、8、11c、14、56及びその他を含むその他の細胞表面マーカーに陽性に染色する。適切に標識された抗体は、染色試薬として使用される。試料は、それぞれ20,000個の細胞の3つの部分に分けられる。20,000の2つの部分は、それぞれ、DMSO(0.1%の最終DMSO濃度)の10μMのボルテゾミブの存在下でそれぞれRPMI+10%のFCSにインキュベートされ、第3部分は、RPMI+10%のFCS+0.1%のDMSOでインキュベートされる。本明細書におけるCD20aは、明白にするために、仮説の例として選択されるだけで、任意のその他の表面マーカーに置き換えることができる。
【0130】
24時間のインキュベーションの後、各試料の各細胞の生存率が決定され、それによって、本明細書における生存率は、「区別することができる表現型」である。10μMのボルテゾミブで処理された2つの試料において、CD20aについて5,000個の生細胞の染色が見つけられ、CD20a染色に陰性の10,000個の生細胞がそれぞれ見つけられる。DMSOで処理された試料において、CD20に陽性の10,000個の生細胞染色及びCD20に陰性の染色がそれぞれ見つけられる。CD79a陽性細胞の生存率を減少するボルテゾミブの選択性が決定される。
【0131】
10μMのボルテゾミブの存在下でインキュベートされた両方の部分について、(i)ボルテゾミブの存在下でインキュベートされたそれぞれの部分(すなわち、5,000/15,000=0.33及び5,000/15,000=0.33)及び(ii)試験化合物の非存在下でインキュベートされたそれぞれの部分(本明細書では、10,000/20,000=0.5)において、同じ表現型を示す(すなわち、生存率)細胞の合計集団の細胞(CD20陽性+CD20陰性細胞)の数に対して、区別することができる表現型(本明細書では、生存率)を示す少なくとも2つのサブ集団(本明細書では、CD20陽性)の1つにおける細胞数が独立して決定される。その後、(i)及び(ii)の平均が形成され、(i)については0.33及び(ii)については0.5が与えられ、さらなる工程のために使用され、すなわち、工程(e)において、値/選択性は、(i)の平均を(ii)の平均で割って、最終の値/選択性として0.33/0.5=0.66が得られる。
【0132】
実施例12
本実施例は、正確なEC50値が同じ表現型を示す合計の細胞の表現型を示す細胞の画分に対する用量反応曲線を適合することから得ることができないことを説明する。A:B=0.2:0.8の比のタイプA及びBの細胞の混合物が推定された。細胞混合物は、細胞毒性化合物Xで処理された。恣意的な濃度スケールにおいて、化合物XのA細胞を殺傷する能力は、3のlogEC50で定量化され、化合物XのB細胞を殺傷する能力は、-2のlogEC50で定量化された。生細胞の合計数(すなわち、生細胞A+生細胞B)の生細胞のAの数の画分を計算して、図10に示されるS字状曲線が得られた。この曲線(実線)の屈曲点は、AのX活性の用量反応曲線のEC50、BのX活性の用量反応曲線のEC50のどちらも情報価値がないことが明白に分かるであろう。
【0133】
実施例13
本実施例は、試験化合物XのB細胞よりもA細胞を殺傷する選択性を決定するために、A及びB細胞の細胞混合物をマイクロタイタープレートに導入する場合、合計細胞数の10%の標準偏差の効果を説明する。濃度[X]の関数として、A及びB細胞の合計数を測定する古典的な方法を使用して選択性を決定して、S字状用量反応曲線を適合し、A及びBに対するXのEC50を測定する場合、それぞれの測定点は、10%の標準偏差を有する。本発明を使用して、合計細胞数の10%の変化は、生細胞の合計数のA生細胞の画分に影響しない。本発明は、したがって、細胞をアッセイプレートに蒔く場合の変化、又は操作の間の細胞の喪失に対してより強固である選択性の決定を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10