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特許7478096長固定子リニアモーターのための移送ユニット、長固定子リニアモーター、及び移送ユニットの向きを決定する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】長固定子リニアモーターのための移送ユニット、長固定子リニアモーター、及び移送ユニットの向きを決定する方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240424BHJP
   B60L 13/03 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H02K41/03 A
B60L13/03 Q
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020540287
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019051247
(87)【国際公開番号】W WO2019145227
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】18153240.9
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518184708
【氏名又は名称】ベーウントエル・インダストリアル・オートメイション・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】フォルトフーバー・フリードリヒ
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-172284(JP,U)
【文献】特開平11-99940(JP,A)
【文献】特表2016-531534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0346379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
B60L 13/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長固定子リニアモーター(2)のための移送ユニット(1)であって、
この移送ユニット(1)が、
第一の案内グループ(FG1)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第一の案内側(FS1)を有し、
第二の案内グループ(FG2)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第二の案内側(FS2)を有し、この第二の案内側(FS2)が第一の案内側(FS1)に対して対向して有り、
長手方向(x)に沿って第一の始端(l1a)から第一の終端(l1e)までの第一の長手方向の延び(l1)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する、外側を向いた第一の磁石側(S1)を有し、
長手方向(x)に沿って第二の始端(l2a)から第二の終端(l2e)までの第二の長手方向の延び(l2)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する、外側を向いた第二の磁石側(S2)を有し、この第一の磁石側(S1)が第二の磁石側(S2)に対して対向して有るとともに、第一の長手方向の延び(l1)の中心と第二の長手方向の延び(l2)の中心が互いに対向して有る、
移送ユニット(1)において、
この移送ユニット(1)が、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の終端(l1e)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で第一の値(w1)の磁気変数を有するとともに、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の始端(l1a)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で、第一の値(w1)と一致する第二の値(w2)の磁気変数を有し、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の終端(l2e)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で第三の値(w3)の磁気変数を有し、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の始端(l2a)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で、第三の値(w3)と一致する第四の値(w4)の磁気変数を有し、これらの第一及び第二の値(w1,w2)が第三及び第四の値(w3,w4)と異なり、
第二の案内グループ(FG2)が第一の案内グループ(FG1)と案内に関して同等であるように構成されていて、
当該案内に関して同等であるこれらの案内グループは、この移送ユニット(1)がこの移送ユニット(1)の長手方向(x)に有るの周りに180度回転した後に互いに交換可能であることを特徴とする移送ユニット。
【請求項2】
第一の検査間隔(a1)の所が第二の検査間隔(a2)の所と一致することを特徴とする請求項1に記載の移送ユニット。
【請求項3】
第一の磁石側(S1)における長手方向(x)に沿った磁気変数の全ての値が第二の磁石側(S2)と異なる値を有することを特徴とする請求項2に記載の移送ユニット。
【請求項4】
第一の磁石側(S1)における磁気変数の値が第一の長手方向の延び(l1)の中心に対して対称的であることと、
第二の磁石側(S2)における磁気変数の値が第二の長手方向の延び(l2)の中心に対して対称的であることと、
を特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
【請求項5】
長固定子リニアモーター(2)のための移送ユニット(1)であって、
この移送ユニット(1)が、
第一の案内グループ(FG1)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第一の案内側(FS1)を有し、
長手方向(x)に沿って第一の始端(l1a)から第一の終端(l1e)までの第一の長手方向の延び(l1)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する第一の磁石側(S1)を有する、
移送ユニット(1)において、
第一の案内グループ(FG1)が、案内に関して対称的であり、当該案内に関して対称的であるこの案内グループは、移送ユニット(1)が横方向(y)に存在する軸の周りに180度回転した後にその都度の長手方向(x)への動きを可能にすることと、
この移送ユニット(1)が、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の終端(l1e)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で第一の値(w1)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の始端(l1a)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で、第一の値(w1)と異なる第二の値(w2)の磁気変数を有することと、
を特徴とする移送ユニット。
【請求項6】
この移送ユニットが、第二の案内グループ(FG2)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第二の案内側(FS1)を有し、
この移送ユニット(1)が、長手方向(x)に沿って第二の始端(l2a)から第二の終端(l2e)までの第二の長手方向の延び(l2)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する第二の磁石側(S2)を有することと、
第二の案内グループ(FG2)が案内に関して対称的であることと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の終端(l2e)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で第三の値(w3)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の始端(l2a)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で、第三の値(w3)と異なる第四の値(w4)の磁気変数を有することと、
を特徴とする請求項5に記載の移送ユニット。
【請求項7】
第一の案内側(FS1)が第二の案内側(FS2)に対して対向して有ることと、
第一の磁石側(S1)が第二の磁石側(FS2)に対して対向して有るとともに、第一の長手方向の延び(l1)の中心と第二の長手方向の延び(l2)の中心が互いに対向して有ることと、
この移送ユニットが、第一の磁石側(S1)において、長手方向(x)に沿った検査位置(a3)の所で第五の値(w5)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S1)において、長手方向(x)に沿った検査位置(a3)の所で、第五の値(w5)と異なる第六の値(w6)の磁気変数を有することと、
を特徴とする請求項6に記載の移送ユニット。
【請求項8】
第一の検査間隔(a1)が第二の検査間隔(a2)及び検査位置(a3)と等しいことを特徴とする請求項7に記載の移送ユニット。
【請求項9】
長手方向(x)に沿った第一の磁石側(S1)における磁気変数の全ての値が第二の磁石側(S2)における磁気変数の値と異なることを特徴とする請求項7又は8に記載の移送ユニット。
【請求項10】
第一の磁石側(S1)における磁気変数の値が第一の長手方向の延び(l1)の中心に対して非対称的であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
【請求項11】
前記の磁気変数が、有利には、第一の磁石側(S1)に取り付けられた第一の磁石板(P1)又は第二の磁石側(S2)に取り付けられた第二の磁石板(P2)の磁気抵抗によって与えられることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
【請求項12】
第一の数kの磁石(M11,...,M1k)が第一の磁石側(S1)に配置されるか、或いは第二の数lの磁石(M21,...,M2l)が第二の磁石側(S2)に配置されて、これらの磁石が、それぞれ横方向(y)に極性(n,s)を付与されており、前記の磁気変数が、これらの第一の数kの磁石(M11,...,M1k)又は第二の数lの磁石(M21,...,M2l)の極性によって与えられることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一つに記載の少なくとも一つの移送ユニット(1)と、この少なくとも一つの移送ユニット(1)を移送区間(20)に沿って移動方向に案内するために、第一の案内グループ(FG1)及び/又は第二の案内グループ(FG2)と協力して動作する第一の区間案内グループ(21)及び/又は第二の区間案内グループ(22)を備えた移送区間(20)とを有する長固定子リニアモーター。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一つに記載の移送ユニット(1)の向きを決定する方法において、
長手方向(x)に関して側方に有る磁石側(S1,S2)における一つの検査点(P)の所で、磁気変数の実際値(w)が検出されて、基準値(w0)と比較されることと、
この実際値(w)が基準値(w0)と一致しない場合に、移送ユニット(1)が誤った向きに有ると推定されることと、
を特徴とする方法。
【請求項15】
磁気変数として、移送ユニット(1)の一つの磁石(M11,...,M1k,M21,...,M2l)の極性(n,s)が検出されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長固定子リニアモーターのための移送ユニットに関し、この移送ユニットは、長手方向に関して側方に有る、案内に関して対称的な第一の案内グループが配置された第一の案内側を有するとともに、この移送ユニットは、長手方向に関して側方に有る、長手方向に沿って第一の始端から第一の終端にまでの第一の長手方向の延びに渡って延びる第一の磁石側を有する。
【0002】
本発明は、更に、長固定子リニアモーターのための移送ユニットに関し、この移送ユニットは、長手方向に関して側方に有る、第一の案内グループが配置された第一の案内側と、長手方向に関して側方に有る、長手方向に沿って第一の始端から第一の終端にまでの第一の長手方向の延びに渡って延びる第一の磁石側とを有し、この移送ユニットは、長手方向に関して側方に有る、第二の案内グループが配置された第二の案内側を有するとともに、この移送ユニットは、長手方向に関して側方に有る、長手方向に沿って第二の始端から第二の終端にまでの第二の長手方向の延びに渡って延びる第二の磁石側を有する。
【0003】
また、本発明は、長固定子リニアモーターのための移送ユニットに関し、この移送ユニットは、長手方向に関して側方に有る、第一の案内グループが配置された第一の案内側と、少なくとも長手方向に関して側方に有る、第二の案内グループが配置された第二の案内側とを有し、この第二の案内側が第一の案内側に対して対向して有り、第二の案内グループが第一の案内グループに対して案内に関して同等であるように構成され、更に、長手方向に関して側方に有る、長手方向に沿って第一の始端から第一の終端にまでの第一の長手方向の延びに渡って延びる第一の磁石側と、長手方向に関して側方に有る、長手方向に沿って第二の始端から第二の終端にまでの第二の長手方向の延びに渡って延びる第二の磁石側とを有し、第一の長手方向の延びの中心と第一の長手方向の延びの中心が互いに対向して有る。
【0004】
更に、本発明は、長固定子リニアモーターの移送ユニットの向きを決定する方法に関し、この移送ユニットは、長手方向において案内に関して対称的であるか、案内に関して同等であるか、或いはその両方である。
【背景技術】
【0005】
長固定子リニアモーター(LLM)では、多数の順番に配置された電気駆動コイルが移送区間に沿って位置を固定して配置されており、それらの駆動コイルが固定子を構成する。移送ユニットには、一定数の磁石が永久磁石、電気コイル又は短絡巻線として配置されている。それらの磁石は、通常移動方向において固定子の駆動コイルと協力して動作するように移送ユニットに配置されている。長固定子リニアモーターは、自励式と他励式の両方により同期機械として実現することができるか、或いは非同期機械として実現することができる。磁石と駆動コイルの(電)磁界の協力動作によって、推進力が移送ユニットの磁石に作用し、それによって、更に、移送ユニットが移動方向に動かされる。それは、推進力の大きさに影響する磁気流量を制御する個々の駆動コイルを駆動することによって行なわれる。最新の柔軟な物流ユニットの要求に応えるために、従来の連続コンベヤー又は回転・直線変換ユニット(例えば、ベルトコンベヤー、ベルト、チェーン等における回転モーター)の代替部品として、長固定子リニアモーターが益々採用されている。
【0006】
一般的に、そのような長固定子リニアモーターは、大抵一つの面内に配置されており、その結果、移送ユニットは、平坦な移送区間に沿って動かされる。その場合、移送区間は、曲がった区画、直線の形の移送区画又は転轍機から構成することができる。当然のことながら、好適な手法で移送ユニットを移送区間に沿って案内して、それに保持しなければならない。そのために、移送ユニットには、移送区間に配備された区間案内グループと協力して動作する、個別の案内部品から成る案内グループが配備されており、これらの区間案内グループは、更に、区間案内部品から構成される。その場合、例えば、ローラー、ホイール、スライド部品、ガイド面などの任意の案内部品及び区間案内部品を採用することができる。特許文献1は、例えば、移送区間の対応するガイド面上を転がるガイドホイールが側方に取り付けられた移送ユニットを備えた長固定子リニアモーターを記載している。移送区間に移送ユニットを保持するために、移送ユニットにおける駆動磁石の磁力が用いられている。特許文献2は、移送区間に沿って移動方向に機械方式により強制的に案内される、即ち、そのような一つの移動方向にしか運搬車両を動かすことができない、移送ユニットを備えた長固定子リニアモーターを記載している。それによって、運搬車両の案内と保持が常に保証されている。特許文献3では、二つの案内側にそれぞれ案内グループが存在することによって、移送区間に沿った運搬車両の確実な案内を保証している。移送区間には、それぞれ移送ユニットの第一又は第二の案内グループの案内部品と協力して動作する第一と第二の区間案内グループが配備されている。それによって、運搬車両が移動方向に常に確実に案内されて、移送区間からの離脱が実質的に不可能となっている。
【0007】
特に、転轍機を介した移送時に、移送区間の構成によって、位置を固定された駆動コイルに対する移送ユニットの向きが、例えば、縦軸又は横軸の周りに180度回転することが起こり得る。基本的には、移送ユニットと移送区間によって構造的に可能である限り、実際に各軸の周りに向きが回転することが考えられる。固定子への移送ユニットの取付時に、移送ユニットが所望の、或いは想定した向きに対して回転した形で誤って設置される可能性も有る。しかし、移送区間での移送ユニットの正しい標準的な向き又は誤った向きの検知はこれまで不可能であった。特許文献4及び5は、転轍機とそれぞれ側面毎に三つの磁石を備えた移送ユニットと備えた長固定子リニアモーターをそれぞれ開示しており、その際、案内グループ毎のそれぞれ二つの案内部品が、それぞれ対応する区間案内グループと協力して動作する。そこでは、駆動磁石の極性を詳しく記載していない。特許文献6は、同じく転轍機を有するが、移送ユニットの各側にそれぞれ6個の駆動磁石を有する長固定子リニアモーターを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許登録第9,428,347号明細書
【文献】国際特許公開第2012/101004号明細書
【文献】国際特許公開第2015/042409号明細書
【文献】国際特許公開第2010/085670号明細書
【文献】国際特許公開第2014/047104号明細書
【文献】欧州特許公開第3044373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、長固定子リニアモーターで動作させて使用した時の向きを簡単に決定できる、長固定子リニアモーターのための移送ユニットを提示するとともに、移送ユニットの向きを決定するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、移送ユニットが、第一の磁石側において第一の長手方向の延びの中心から第一の終端の方向に向かって第一の検査間隔で第一の値の磁気変数を有するとともに、第一の磁石側において第一の長手方向の延びの中心から第一の始端の方向に向かって第一の検査間隔で、第一の値と異なる第二の値の磁気変数を有することによって解決される。第一の案内グループは、第一の案内側に有るが、例えば、移送ユニットの二つ以上の側に渡って延びることもできる。移送ユニットの移動方向を長手方向と称し、それと交差する方向を横方向と称する。右巻きとの意味で長手方向と横方向から得られる方向を高さ方向と見做す。このデカルト座標系の原点は、各移送ユニットの基本物体の中心に置かれ、それによって、この座標系は、それぞれ移送ユニットと一緒に移動するが、回転時には一緒に移動しない。従って、「側方に配置」とは、原点と関連して呼ばれるものであり、横方向及び/又は高さ方向におけるずれが存在することを意味する。そのため、基本的に移送ユニットにおける案内側が原点から見て横方向及び/又は高さ方向に有るのか否かは重要ではない。第一の案内グループが案内に関して対称的であることが重要である。「案内に関して対称的である」とは、一方において、案内グループが、各移動方向における、即ち、ここでは、長手方向に沿った移送ユニットの移動を可能にするために、長固定子リニアモーターの移送区間の第一の区間案内グループと協力して動作するのに適していることを意味する。しかし、他方において、「案内部品が案内に関して対称である」ことは、移送ユニットが横方向に沿って存在する軸の周りを180度回転した後に、案内部品が、引き続き回転した移送ユニットを長手方向に動かすことができるように、移送区間の第一の区間案内グループと協力して動作できることをも意味する。
【0011】
一つの案内グループが、例えば、案内側に取り付けられた一つの案内部品、例えば、レールの形の区間案内グループの区間案内部品と協力して動作する一つの案内部品、例えば、一つのローラーだけから構成される場合、この案内部品は、一つの移動方向に案内することが可能である。しかし、この案内グループは、横方向の周りの180度の回転後に、案内に関して対称的であるように、その時々の長手方向に案内することも可能でなければならない。このことは、基本的に、ローラーを案内グループの単一の案内部品とした場合に、特に、それが移送ユニットにおいて高さ方向に関して中央に配置されている場合に与えられる。しかし、ローラーが高さ方向に関して中央に、即ち、原点の高さに配置されていない場合、横方向の周りを180度回転した後の移送ユニットは、ずれた形で移送区間上を案内される。それによって、移送ユニットが確かに基本的には案内に関して対称的であるが、そのような考え得るずれは、長固定子リニアモーターの構造的な実現形態において考慮しなければならず、望ましくないとすることもできる。
【0012】
案内グループが、移送ユニットの上方の正の高さ方向に向かって第一の間隔の所に取り付けられた第一のローラーの形の一つの案内部品と、負の高さ方向に向かって同じ間隔の所に取り付けられた同様の第二のローラーの形の一つの案内部品とから構成される場合、この案内グループの側方において案内に関して対称的であると規定される。当然のことながら、移送ユニット自体も構造的に横方向の周りに回転することが可能でなければならない。更に、この場合、例えば、正の高さ方向における第一のレールの形の区間案内部品と負の高さ方向における同様の第二のレールの形の区間案内部品から構成される、それに対応する区間案内グループは、移送ユニットが「標準的なむき」である場合及び移送ユニットが長手方向に沿って180度回転した場合に、それぞれローラーと協力して動作することができる。そのことは、当然のことながら、区間案内グループが同じく案内に関して対称的でなければならないことを意味する。これらのローラーとそれに対応する正及び負の高さ方向におけるレールは、それぞれ互換性が無く交換可能でない場合(互換性が有るとは、必ずしもそれらが同じ形で構成されていることを意味しない)、長手方向における案内が可能であるにも関わらず(しかし、移送ユニットが長手方向において180度回転した後では不可能であるので)、それらは案内に関して対称的ではない。
【0013】
本課題は、同じく本発明による方法によって解決され、その方法では、長手方向に関して側方に存在する一つの磁石側における一つの検査点で、磁気検査変数の実際値を検出して、基準値と比較し、この実際値が基準値と一致しない場合に、移送ユニットが誤った向きに有ると推定する。このことは、実際値が基準値と一致する場合に、移送ユニットが正しい標準的な向きに有ると推定することを意味する。誤った向きを検出した場合、例えば、信号を出力することができる。
【0014】
本発明による方法は、簡単な手法で移送区間に対する移送機器の向きを、即ち、移送ユニットが標準的な向きに有るのか、或いは移送ユニットが横方向に存在する軸の周りを180度回転したのかを検査することを可能にする。それに関する前提条件は、当然のことながら、案内に関して対称であることである。標準的な向きから逸脱した向きを検知するためには、その時々の検査点において標準的な向きの場合に期待される検査変数の実際値に等しい磁気検査変数の基準値が、その基準値をその検査点で実際に検出された磁気検査変数の実際値と比較できるように既知でなければならない。磁気検査変数の実際値が基準値と一致しない場合、移送ユニットが横方向に存在する軸の周りを回転していると結論付けることができる。
【0015】
本発明による方法は、本発明による移送ユニットにおいて、検査点が検査間隔の所と一致する場合に使用することができる。即ち、基本的には、検査点が正の長手方向、即ち、移動方向に向かって検査間隔の所に有るのか、或いは負の長手方向、即ち、移動方向と逆方向に向かって検査間隔の所に有るのかを確認する。そのため、例えば、磁気検査変数の基準値は(第一の終端の方向に向かって第一の検査間隔の所の)第一の値に等しい。実際値が基準値と一致する場合、移送ユニットは標準的な向きに有る。実際値が(第一の始端の方向に向かって第一の検査間隔の所の)第二の値と一致する、そのため、第一の値と一致しない場合、移送ユニットは誤った向きに有る。
【0016】
即ち、移送ユニットの向きを決定する場合、移送ユニットが移送区間に有る時に、一つの検査点における磁気検査変数の実際値が検出される。この場合、前述した通り、検査変数を磁気変数に対応付けることができ、それによって、基準値はその値に等しく、標準的な向きにおける実際値とも一致する。しかし、検査変数は、移送ユニットの磁石及び/又は磁気を通す材料(例えば、磁石板)と共に移送区間の駆動コイルから構成される磁気回路によっても生成することができる。それ故、磁気変数に相当する検査変数を検出することもできる。その場合、当然のことながら、検査変数の実際値と磁気変数の値は互いに相関を有さなければならない、即ち、相互に導出可能でなければならない。当然のことながら、実際値の代わりに、推移を観測して、基準値の推移と比較することもできる。
【0017】
この横方向に存在する軸の周りの回転を検出するための磁気検査変数の実際値の検査は、第二の数の磁石が第二の磁石側に存在するのか否かに関係無く実施することができる。
【0018】
また、本課題は、案内に関して対称的であるか、案内に関して互いに同等であるか、或いはその両方である第一の案内グループと第二の案内グループを有する移送ユニットによって解決され、この移送ユニットは、第一の磁石側において、第一の長手方向の延びの中心から第一の終端の方向に向かって第一の検査間隔で第一の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第一の磁石側において、第一の長手方向の延びの中心から第一の始端の方向に向かって第一の検査間隔で、第一の値と異なる第二の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第一の磁石側において、第一の長手方向の延びの中心から第一の終端の方向に向かって第一の検査間隔で、第一の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第一の磁石側において、第一の長手方向の延びの中心から第一の終端の方向に向かって第一の検査間隔で、第一の値と異なる第二の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第二の磁石側において、第二の長手方向の延びの中心から第二の終端の方向に向かって第二の検査間隔で第三の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第二の磁石側において、第二の長手方向の延びの中心から第二の始端の方向に向かって第二の検査間隔で、第三の値と異なる第四の値の磁気変数を有する。
【0019】
両方の案内グループがそれぞれ案内に関して対称的である場合、第一の磁石側に関して上述した本発明による方法追加的に、或いは代替的に同様に使用することで輸送ユニットの向きが、検査点における磁気変数の実際値を検査することによって第二の磁石側に決定され得る。この場合、検査点は、又もや長手方向の延びの中心から検査間隔の所と一致する。実際値と基準値が一致する場合、移送ユニットが標準的な向きに有ると結論付けることができる。それらが一致しない場合、移送ユニットが横方向に存在する軸の周りを180度回転していると結論付けることができる。当然のことながら、常に前提条件は、検査点における磁気変数の基準値が既知であることである。
【0020】
案内グループが互いに案内に関して同等である場合、有利には、第一の案内側が第二の案内側に対して対向して有り、第一の磁石側が第二の磁石側に対して対向して有り、第一の長手方向の延びの中心が第二の長手方向の延びの中心に対して対向して有り、第一の磁石側では、長手方向に沿った検査位置で第五の値の磁気変数を有し、第二の磁石側では、長手方向に沿った検査位置で、第五の値と異なる第六の値の磁気変数を有する。ここで、「逆側」とは、原点又は原点を通る長手方向の軸に関して逆側であることを意味する。二つの磁石側は、同じ長手方向の延びを有することもでき、そのため、長手方向の延びの中心の外に、第一及び第二の磁石側の始端及び終端もそれぞれ互いに対向して有る。
【0021】
案内グループに関して、「案内に関して同等である」とは、それらが互いに交換可能である、即ち、移送ユニットを長手方向に有る軸又は高さ方向に有る軸の周りに180度回転できることを意味する。そのような回転の前に、第一の案内グループの案内部品は第一の区間案内グループの区間案内部品と協力する、例えば、係合し、第二の案内グループの案内部品は第二の区間案内グループの区間案内部品と係合する。第一の案内グループと第二の案内グループは、例えば、長手方向に沿って互いに対称的である場合に、互いに案内に関して同等であることを保証することができる。長手方向に有る軸の周りの期待される回転後には、第一の案内グループの案内部品が第二の区間案内グループの区間案内部品と協力して動作するとともに、第二の案内グループの案内部品が第一の区間案内グループの区間案内部品と協力して動作することとなる。
【0022】
そのような移送ユニットでは、本発明による方法により一つの検査点における磁気検査変数の実際値を検出することによって、長手方向に有る軸の周りの180度の回転も検知することができる。そのためには、検査点が第一又は第二の磁石側における検査位置の所と一致して、検査点での検査変数の実際値とそれに対応する基準値の比較が行われる。検査変数の基準値は、例えば、第五の値に等しく、実際値は、予想される第一の磁石側の第一の検査位置の形の検査点において検出される。磁気検査変数の検出された実際値が基準値と一致する場合、移送ユニットが標準的な向きに有る、即ち、検査点が実際に第一の磁石側に有ると結論付けることができる。しかし、実際の検査変数として、例えば、第六の値が検出され、そのため、基準値と一致しない場合、長手方向に有る軸の周りを回転していると結論付けることができる。即ち、検査点が第二の磁石側に有ることが確認される。
【0023】
第一の検査間隔の所が第二の検査間隔の所及び検査位置と一致するのが極めて特に有利である。それによって、一つの箇所(第二の検査間隔の所と一致するとともに、検査位置の所と一致する第一の検査間隔の所)における磁気変数の値の検査によって、長手方向に存在する軸の周りと横方向に存在する軸の周りの両方の回転を検知することができる。そのことは、長手方向に存在する軸の周りと横方向に存在する軸の周りの両方における移送ユニットの向きを確認するために、移送ユニットの一つの検査箇所における磁気検査変数の実際値だけを決定すればよいことを意味する。従って、この検査箇所は、(非)回転の様態に応じて、第一の検査間隔又は第二の検査間隔の所、或いは検査位置と一致し、そのことは、既に述べた通り、実際値と基準値の比較によって確認される。しかし、この場合、横方向と長手方向の両方の周りの回転は、それにより誤って標準的な向きであると解釈されてるかもしれない。しかし、簡単な回転を検出するのと比べて、そのような二重の回転は非常に稀であり、そのため、そのようなケースを無視することができる。案内グループが案内に関して同等である場合、移送ユニットは、高さ方向の周りにも回転することができる。しかし、そのような回転は、上述した実施形態では検知できない。
【0024】
更に、長手方向に沿って、第一の磁石側での磁気変数の全ての値が、第二の側での磁気変数の値と異なるのが有利である。それによって、当然のことながら、相応の基準値が既知である限り、一つの磁石側に沿った任意の検査箇所における実際値に基づき横方向の周りの回転を検知することができる。
【0025】
この場合、第一の磁石側での磁気変数の値が第一の長手方向の延びの中心の周りに非対称的であるのが特に有利である。それによって、当然のことながら、同じく基準値が既知である限り、第一の磁石側に沿った任意の検査箇所における実際値に基づき、横方向に存在する軸の周りの回転を検知することができる。第二の磁石側が存在して、長手方向の全体に沿って、第一の磁石側における磁気変数の値が第二の側における磁気変数の値と異なる場合、そのことは、当然のことながら、第二の磁石側での磁気変数の値が第二の長手方向の延びの中心の周りに非対称的であることをも意味する。
【0026】
また、本課題は、本発明による移送ユニットによって解決され、この移送ユニットは、第一の磁石側において、第一の長手方向の延びの中心から第一の終端の方向に向かって第一の検査間隔で第一の値の磁気変数を有するとともに、第一の磁石側において、第一の長手方向の延びの中心から第一の始端の方向に向かって第一の検査間隔で、第一の値と一致する第二の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第二の磁石側において、第二の長手方向の延びの中心から第二の終端の方向に向かって第二の検査間隔で第三の値の磁気変数を有し、この移送ユニットは、第二の磁石側において、第二の長手方向の延びの中心から第二の始端の方向に向かって第二の検査間隔で、第三の値と一致する第四の値の磁気変数を有し、これらの第一及び第二の値が第三及び第四の値と異なる。それにより、本発明による方法に基づき、第一及び/又は第二の磁石側での第一の検査間隔の所における磁気検査変数の実際値を検査することによって、移送ユニットが高さ方向の周りに回転しているのかを確認することができる。同様に、第一の検査間隔の所における磁気検査変数の実際値を検査することによって、長手方向に存在する軸の周りの回転を検知できるが、横方向に存在する軸の周りの回転は、この回転が案内に関して同等であることにより可能であったとしても検知できない。高さ方向又は長手方向の周りの回転に関する前提条件は、それぞれ案内グループが互いに案内に関して同等であることである。標準的な向きと一致する向き又は標準的な向きから逸脱した向きの検知は、又もや磁気検査変数のそれぞれ検出された実際値を基準値と比較することによって実施することができる。本方法は、上述した通り適用することができ、ここでは、再度詳しく述べない。
【0027】
第一の磁石側での長手方向に沿った磁気変数の全ての値が第二の磁石側と異なる値を有することができ、その際、有利には、第一の磁石側での磁気変数の値は、第一の長手方向の延びの中心の周りに対称的であり、第二の磁石側での磁気変数の値は、第二の長手方向の延びの中心の周りに対称的である。それにより、第一の磁石側と第二の磁石側の両方で任意の検査箇所における磁気変数の実際値を検出することによって、横方向又は高さ方向の周りの回転が可能であり、その際、当然のことながら、その時々の基準値が既知でなければならない。
【0028】
磁気変数は、有利には、第一の磁石側に取り付けられた第一の磁石板又は第二の磁石側に取り付けられた第二の磁石板の磁気抵抗によって規定することができる。磁石板は、通常磁気を良く通す材料から構成され、そのような磁石板には、例えば、それぞれ第一又は第二の数の磁石が取り付けられる。即ち、例を挙げると、例えば、検査間隔の所又は検査点などの所定の箇所における長手方向に沿った移送ユニット、例えば、移送ユニットの基本物体又はそこに取り付けられた磁石板の磁気抵抗を変えることができる。このことは、厚さ及び/又は材料組成、窪み等の相違によって実現することができる。このアプローチでは、磁気変数が移送ユニットによってのみ規定される。しかし、磁気変数は、磁気抵抗である必要はなく、例えば、周知の通り、磁気抵抗からの直接的な影響を受ける、移送ユニットに配置された磁石が発生する磁極又は磁気流量であるとすることもできる。
【0029】
従って、その時々の検査間隔の所又は検査位置における磁気変数の値は、移送ユニットにおける構造的な措置(磁石の強さ、位置や極性、磁石板の厚さや材料等)によって定義することができる。
【0030】
磁気検査変数は、如何なるセンサーが無くとも、例えば、既に存在するコイル制御部を通るように存在する磁気回路を同定することによって検出することができる。そのために、例えば、移送ユニットが停止している場合でも、高周波電圧信号を駆動コイル内に印加して、発生した電流信号、即ち、電流応答を解析する。電流と電圧の間の関係は、特に、インダクタンスに依存し、そのインダクタンスは、更に、磁気抵抗に依存する。本発明では、異なる検査間隔の所又は検査位置における移送ユニットの磁気抵抗が異なる場合、個々のコイルの電流の推移が移送ユニットの向きに応じて異なる。即ち、電流応答の決定と解析及び検査変数の実際値と基準値の比較によって、移送ユニットの向きを推定することができる。移送ユニットが動いている場合、磁気検査変数の実際値を推定するために、例えば、移送ユニットの動きにより引き起こされる逆起電力電圧を用いることができる。この逆起電力電圧は、磁気回路における磁気流量の時間変化に比例する。磁気変数の異なる値のために磁気流量が変化した場合、そのことは、駆動コイルを用いて確認することができ、そのため、移送ユニットの向きを推定することができる。例えば、磁石側の始端の方向に向かって第一の検査間隔で磁石側の終端の方向よりも小さい磁気抵抗が与えられた場合、より大きな磁気流量のために、駆動コイルを介して、終端よりも大きな電圧が始端に誘導される。
【0031】
第一の磁石側に第一の数の磁石を配置するか、或いは第二の磁石側に第二の数の磁石を配置するのが極めて特に有利であり、それらの磁石は、それぞれ横方向に向かって極性を規定され、磁気変数は、第一の数の磁石又は第二の数の磁石の極性によって与えられる。その時々の検査間隔の所又は検査位置における異なる極性によって、移送ユニットの向きの特に簡単な確認を可能にすることができる。この極性は、当然のことながら、同じく磁気回路内の磁気流量に影響し、それによって、前述したことと同様に、磁気流量から検出することができる。
【0032】
しかし、一つの検査間隔の所又は一つの検査位置における磁気変数は、移送区間に取り付けられた好適なセンサー、例えば、磁界センサーによって検知することもできる。そのような磁界センサーを用いて、磁界の強さ又は極性を測定するとともに、所定の磁界センサーを用いて、磁界の極性を測定することもでき、それによって、移送ユニットの向きを推定することができる。
【0033】
この場合、磁気変数、例えば、磁石の極性の値は、常に一つの磁石側における移送ユニットの中心を基準点として観測される。特に、極性が磁気変数として用いられる場合、磁石の外側を向いた側の極性が比較される。当然のことながら、同じく、きっと横方向に向かって極性を付与されているので、磁石の内側を向いた側の極性を比較することもできる。
【0034】
即ち、例えば、両方の磁石側での長手方向に沿った磁気変数の値が異なる場合、そのことは、磁気変数が磁石の極性によって規定されるケースに関して、長手方向に沿った第一の磁石側の全ての磁石が外側に向かって第二の磁石側の磁石と異なる極性を有することを意味する。そのことは、第一の磁石側の磁石が長手方向に関して第二の磁石側の磁石に対して非対称的な極性を有することを意味し、そのため、長手方向の周りの回転は、各磁石の極性に基づき、即ち、任意の箇所において検知することができる。
【0035】
例えば、これらの磁石側の同じ形態に構成された磁石は、長手方向に交互に正と負の極性を付与することができる。それによって、長手方向の延びの中心の周りに対称的である場合には、磁石側毎に奇数個の磁石となり、非対称である場合には、偶数個の磁石となる。
【0036】
長固定子リニアモーターは、本発明に基づく少なくとも一つの移送ユニットと移送区間を有し、この移送区間は、この少なくとも一つの移送ユニットを移送区間に沿って移動方向に案内するために、第一の案内グループ及び/又は第二の案内グループと協力して動作する第一の区間案内グループ及び/又は第二の区間案内グループを有する。
【0037】
このことは、長固定子リニアモーターが第一の区間案内グループを有する一つの移送区間を備えることができ、この少なくとも一つの移送ユニットは、第一の案内グループを有する。即ち、第一の区間案内グループは、この少なくとも一つの移送ユニットを移送区間に沿って移動方向に案内するために、第一の案内グループと協力して動作する。この移送ユニットは、上述した通り、横方向に存在する軸の周りを回転することができ、それにより、更に、第一の区間案内グループが第一の案内グループと協力して動作するとともに、少なくとも一つの移送ユニットが、「回転した形で」移送区間に沿って移動方向に案内される。
【0038】
長固定子リニアモーターは、第一の区間案内グループと第二の区間案内グループを有する一つの移送区間を備えることもでき、この少なくとも一つの移送ユニットは、第一の案内グループと第二の案内グループを有することができる。この第一の区間案内グループは、第一の案内グループ又は第二の案内グループと協力して動作するとともに、この第二の区間案内グループは、第二の案内グループ又は第一の案内グループと協力して動作する。この少なくとも一つの移送ユニットは、基本的に標準的な向きで移送区間に沿って移動方向に案内される。この移送ユニットは、本発明では、上述した通り、横方向、長手方向又は高さ方向に存在する軸の周りを回転することができ、その際、第一の案内グループと第二の案内グループも場所を入れ換えることができ、それ故、その時々の別の区間案内グループと協力して動作することができる。即ち、移送ユニットは、回転後に「回転した形で」移送区間に沿って移動方向に案内することができる。
【0039】
以下において、例えば、本発明の有利な実施形態を模式的に本発明を限定しない形で図示した図1~6dと関連して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】長固定子リニアモーターの模式図
図2】一つの磁石板を備えた移送ユニットの斜視図
図3a】標準的な向きの状態での一つの磁石板を備えた移送ユニットの側面図
図3b】横方向の周りに回転した状態での一つの磁石板を備えた移送ユニットの側面図
図4】二つの磁石板を備えた移送ユニットの斜視図
図5a】移送ユニットの第一の実施形態の側面図
図5b】標準的な向きの状態での移送ユニットの第一の実施形態の側面図
図5c】横方向に存在する軸の周りに回転した状態での移送ユニットの第一の実施形態の側面図
図5d】長手方向に存在する軸の周りに回転した状態での移送ユニットの第一の実施形態の側面図
図6a】二つの磁石板を備えた移送ユニットの第二の実施形態の側面図
図6b】標準的な向きの状態での移送ユニットの第二の実施形態の側面図
図6c】長手方向に存在する軸の周りに回転した状態での移送ユニットの第二の実施形態の側面図
図6d】高さ方向に存在する軸の周りに回転した状態での移送ユニットの第二の実施形態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、長固定子リニアモーター2の簡単な例を図示している。この場合、長固定子リニアモーター2は閉じた移送区間20として実現されている。この移送区間20には、移動磁界を発生させるために、(幾つかの駆動コイルSmに対してのみ図示された)制御ユニットRの制御の下で、(絶対値と方向を有するベクトルとしての)コイル電流iAを流される多数の駆動コイルSmが配置されている。これらの移動方向に順番に配置された駆動コイルSmは、移送区間20における(図1にだけ表示された)位置を固定された保持構造物3に配置されている。移送ユニット1は、移送区間20に沿って移動方向に動かされ、そのために、それぞれ好適な手法により固定して配置された移送区間20を案内される。
【0042】
移動方向は、移送ユニット1から見て長手方向xと一致する。移送ユニット1は、側方に配置された第一の数kの磁石M11,...,M1kを有し、これらの磁石は、ここでは、長手方向xに関して側方に有る第一の磁石側S1に存在する。図1に図示されている通り、移送ユニット1は、有利には、更に、側方に配置された第二の数lの磁石M21,...,M2lを有し、これらの磁石は、ここでは、長手方向xに関して側方に有る第二の磁石側S2に存在して、第二の磁石側S2は第一の磁石側S1に対して対向して有る。移送ユニット1が二つの側(ここでは、磁石側S1,S2)にそれぞれ第一の数kの磁石M11,...,M1k又は第二の数lの磁石M21,...,M2lを有する場合、それに対応して、(移動方向に見て)移送区間20の両側に、それぞれ、移送ユニット1の動きを引き起こすために、各磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lと協力して動作する駆動コイルSmを配備することができる。そのために、有利には、磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lの領域内の駆動コイルSmにのみ電流が流され、この領域は、移送ユニット1の前及び/又は後に有る駆動コイルSmを包含することもできる。自明のことながら、移送区間20に沿って、二つ以上の移送ユニット1を動かすこともでき、その際、移送ユニット1の領域内の駆動コイルSmに相応の電流を流すことによって、(方向、位置、速度及び加速度に関して)それ以外の移送ユニット1と関係無く、各移送ユニット1を動かすことができる。この場合、移送区間20は、用途及び必要に応じて、任意の形状にすることができ、閉じた区間部分及び/又は開いた区間部分から構成することができる。移送区間20は、一つの面内に存在しなければならないのではなく、空間内に任意に敷設することもできる。長固定子リニアモーター1の基本的な動作原理は、十分に知られており、そのため、ここでは、更にそのことに言及しない。
【0043】
向きを記述するために、三次元デカルト座標系を出発点として、x方向を長手方向xと称し、y方向を横方向yと称し、周知の通り右巻きとの意味においてx方向とy方向から得られるz方向を高さ方向zと称する。デカルト座標系の原点は、各移送ユニット1の基本物体2の中心に位置し、それによって、この座標系は、それぞれ移送ユニット1と共に移動する。x方向とz方向に関する磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lの幾何学的な中点を中心と見做すことができる。二つの磁石側S1,S2が規定された場合、y方向における中心は、二つの磁石側S1,S2の間の中央に有るとすることができる。移送ユニット1が長固定子リニアモーター2の固定子上を長手方向xに動くことを出発点とする。この場合、長手方向xは、常に、ほぼ移送区間20によって規定される、移送ユニット1の移動方向を表す。移送区間20の曲がった区間部分では、当然のことながら、移動方向は、その曲線部分に対する接線である。そのため、移動方向は、基本的に移送区間の実現形態に応じて空間内の任意の方向を向くことができる。
【0044】
しかし、座標系の軸の向きは、当然のことながら、図面の実現形態に制限されるのではなく、基本的に任意である。例えば、駆動コイルSと磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lが側方ではなく、上方及び/又は下方に配置された長固定子リニアモーター1を実現することができる。それによって、例えば、y軸とz軸が符号に適合させた上で場所を入れ換えるかもしれない。
【0045】
正の横方向yに有る、移送ユニット1の少なくとも一つの第一の案内側FS1には、第一の案内グループG1が配置されている。この第一の案内側FS1は、図1に図示されている通り、有利には、第一の磁石側S1と一致することができるが、移送ユニット1の別の側に存在することもできる。この第一の案内グループG1は、図1に表示されている通り、長手方向xにおける基本物体10の前と後の部品から構成することができる。それに代わって、第一の案内グループG1は、図2及び3に表示されている通り、高さ方向zにおいて基本物体10の上方と下方に有る案内部品から構成することもできる。当然のことながら、第一の案内グループG1は、専ら移動方向xに関して前又は後に有る案内部品、高さ方向zに関して上方又は下方に有る案内部品又は正の横方向yに関して基本物体10の傍に有る案内部品から構成するか、或いはそのような案内部品の任意の組合せから構成することもできる。
【0046】
同様に、負の横方向-yに有る、移送ユニット1の第二の案内側FS2にも、第二の案内グループG2を配置することができ、この案内グループは、更に、長手方向xに関して前及び/又は後に有る個別の案内部品か、高さ方向zに関して上方及び/又は下方に有る個別の案内部品か、負の横方向-yに関して基本物体10の傍に有る個別の案内部品か、或いはそれらの組合せから構成することができる。第二の案内グループG2は、第一の案内グループG1と同様に構成することができるが、必ずしも同様に構成する必要はない。
【0047】
移送区間20には、常に、移送ユニット1を移送区間20に沿って移動方向に、即ち、ここでは、長手方向xに案内するために、移送ユニット1の案内側FS1,FS2における案内グループG1,G2の部品と協力して動作する少なくとも一つの区間案内グループ21,22を配備しなければならない。移送ユニット1が二つの案内側に二つの案内グループG1,G2を備えている場合、移送区間20は、少なくとも部分的に二つの側に、それぞれ移送ユニット1の案内グループG1,G2の部品と協力して動作する区間案内グループ21,22を備えることができる。それによって、二つの側の区間部分には、移送ユニット1の二つの側の案内が実現される。そのため、二つの側の区間部分では、運搬車両1が、二つの案内側における案内グループG1,G2と区間案内グループ21,22の協力した動作によって、移動方向xに案内される。当然のことながら、たとえ、移送ユニット1が、図1にも図示されている通り、二つの案内側に二つの案内グループG1,G2を有しても、少なくとも部分的に一つの側で案内すると規定することもできる。ここでは、図1の右側に有る二つの移送区画においてのみ、二つの側での案内が規定されている。一つの側による区間部分では、その逆側の実現形態に関係無く移送ユニット1を移動方向xに案内するために、移送区間20の一つの側にのみ、区間案内グループ21,22が配置されている。
【0048】
案内グループFG1,FG2は、ローラー、ホイール、スライド部品、案内面、スライド面等のような様々な部品を有する。この場合、区間案内部品21,22は、当然のことながら、その中で案内グループG1,G2の各部品を案内できるように構成されなければならない。駆動コイルSmは、有利には、コンパクトな形態を実現するために、区間案内グループ21の領域内に、例えば、同じく保持構造物3に配置される。当然のことながら、駆動コイルSmを区間案内グループ21,22又は区間案内部品と異なる側に置くことも考えられ、それによって、当然のことながら、駆動磁石も案内グループG1,G2の部品の側に存在する必要はない。
【0049】
案内グループG1,G2と区間案内グループ21,22は、当然のことながら、様々な手法により実現することができる。本発明にとって、移送区間20に一つの案内グループG1とそれに対応する第一の区間案内グループ21だけを備えた移送ユニットでは、この案内グループG1が案内に関して対称的であることが決定的に重要である。そのことは、第一の案内グループG1が、移動方向への、即ち、ここでは、長手方向xに沿った移送ユニット1の動きを実現できるように、移送区間20の第一の区間案内グループ21と協力して動作するのに適していることと、移送ユニット1が横方向yに存在する軸の周りを180度回転した後に、第一の案内グループG1が、更に、回転した移送ユニット1の移動方向への動きを可能にするために、移送区間20の第一の区間案内グループ21と協力して動作できることとを意味する。このことは、第一の案内グループG1が「前進」及び「後進」に関して第一の区間案内グループ21と協力して動作できることを意味する。座標系が移送ユニット1と共に回転しないので、回転後の移動方向は、依然として正の長手方向xと一致する。第二の案内グループG2が存在して、それが少なくとも区間部分20において第二の区間案内グループ22と協力して動作する場合、第二の案内グループG2に関しても、案内に関して対称的な移送が成り立つ。
【0050】
即ち、案内に関して対称的であることは、移送ユニット1が横方向yに有る軸の周りを180度回転できることの基本的な前提条件である。例えば、移送区間20上の転轍機又は手動により移送区間20上に置かれた移送ユニット1が回転したために、そのような回転が起こった場合、本発明に基づき誤った向きを検出することが可能である。
【0051】
基本的に第一の磁石側S1に配置された第一の数kの磁石M11,...,M1kを備えた移送ユニット1と、第一の磁石側に対して、有利には逆側であるが、必ずしも逆側ではない第二の磁石側Sに配置された第二の数lの磁石M21,...,M2lを備えた移送ユニット1とを区別する。第一の数kの磁石M11,...,M1k又は第二の数lの磁石M21,...,M2lは、それらが移送ユニット1の移動方向に順番に配置されたLLM固定子の駆動コイルと協力して動作できるように、移送ユニット1に取り付けられている。そのために、第一の数kの磁石M11,...,M1kを第一の磁石板P1に取り付けるとともに、第二の数lの磁石M21,...,M2lを第二の磁石板P2に取り付けることができる。第一の側の第一の数kの磁石M11,...,M1k及び/又は第二の側の第二の数lの磁石M21,...,M2lは、LLM固定子の一つの側のそれに対応する駆動コイルと協力して動作することができる。
【0052】
本発明では、後で図2及び3に基づき詳しく述べる通り、移送ユニット1は、長手方向xに沿って第一の始端l1aから第一の終端l1eにまでの第一の長手方向の延びl1に渡って延びる第一の磁石側S1において、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1で第一の値w1の磁気変数を有し、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の始端l1aの方向に向かって第一の検査間隔a1で、第一の値w1と異なる第二の値w2の磁気変数を有する。
【0053】
この磁気変数が、例えば、第一の磁石板P1又は第二の磁石板P2の磁気抵抗を表す場合、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1での磁気抵抗の値が第一の長手方向の延びl1の中心から第一の始端l1aの方向に向かって第一の検査間隔a1での磁気抵抗の値と異なる値を有するようにすることだけに配慮しなければならない。このことは、例えば、移送機器1の磁石板P1,P2又はそれ以外の磁気を通す部品の厚さ及び/又は材料組成、窪み等の相違によって実現することができる。
【0054】
基本的に、磁気変数の種類は当業者にとって任意に選択可能である。以下では、第一の数kの磁石M11,...,M1k又は第二の数lの磁石M21,...,M2lの極性n,sを磁気変数として、本発明を例示して説明する。ここでは、例えば、第一の磁石板P1に取り付けられた第一の数kの磁石M11,...,M1k、或いは(存在する場合に)、ここでは、例えば、第二の磁石板P2に取り付けられた第二の数lの磁石M21,...,M2lの配置形態と極性を取り上げることとする。
【0055】
図2は、移送ユニット1の斜視図を図示している。長固定子リニアモーターの移送ユニット1は、基本的に簡単化のために直方体形状と仮定した、第一の磁石側S1を有する基本物体10から構成される。この第一の磁石側S1は、長手方向xに第一の長手方向の延びl1に渡って延びるとともに、高さ方向zに第一の高さh1に渡って延びている。例えば、構造部分収容部などの移送ユニット1のそれ以外の考え得る周知の構成部品は、簡単化のためと、それらが本発明の理解にとって重要ではないので図示されていない。この基本物体10の第一の磁石側S1には、正の横方向yに第一の磁石板P1の第一の数kの板形状の磁石M11,...,M1kが配置されている。第一の数kの磁石M11,...,M1kは、それぞれ長手方向xに第一の磁石の長さx1に渡って延びるとともに、高さ方向zに第一の磁石の高さz1で延びて、横方向yに第一の磁石の厚さy1を有する。
【0056】
基本物体10には、第一の案内グループFG1が第一の案内側FS1の正の高さ方向zに取り付けられ、別の第一の案内グループFG1が第二の案内側FS2の負の高さ方向-zに取り付けられている。この場合、第一の案内グループFG1が、一点鎖線で表示された第一の区間案内グループ21と協力して動作して、案内に関して対称的である、即ち、長手方向xへの移送ユニット1の案内が、標準的な向きにおいても、横方向に存在する軸の周りに180度回転した後でも可能である。ここでは、そのことが、負の高さ方向-zに取り付けられた第一の案内グループFG1が正の高さ方向zに取り付けられた第一の案内グループFG1に対して対称的であることによって実現されている。それらに対応する第一の区間案内グループ21は、当然のことながら、同じく案内に関して対称的でなければなら、そのことは、ここでは、同じく区間案内グループ21の対称性によって実現されている。
【0057】
図2に図示された移送ユニット1は、第一の磁石側S1に第一の数、ここでは、k=6個の磁石M11,M12,M13,M14,M15,M16を有し、これらの磁石は、ここでは、第一の磁石板P1に取り付けられている。ここでは、個々のk=6個のM11,...,M16は、一般的ではあるが、必ずしも必要ではない同じ寸法を有し(即ち、第一の磁石の長さx1、第一の磁石の高さz1及び第一の磁石の厚さy1と同じであり)、より簡単に図示するために、高さ方向zに基本物体10の第一の側の縁にまで延びている。更に、k(ここでは、6)個の磁石M11,...,M1kが、有利には、長手方向xに順番に、それぞれ基本物体10の第一の側の縁にまで配置されており、そのことは、第一の数kの磁石M11,...,M1kの磁石の長さx1の合計が、有利には(k個の磁石M11,...,M1kが直に接して置かれている場合に)、基本物体の第一の長手方向の延びl1に等しいことを意味する。この第一の磁石側S1は、図示された実施形態では、有利には、第一の案内側FS1と一致する。
【0058】
k(ここでは、6)個の磁石M11,...,M1kは、横方向yにそれぞれN極nからS極s又はその逆の極性を有し、そのことは、個々のk個の磁石M11,...,M1kの原点、即ち、移送ユニット1の中心の方を向いた側(負の横方向-y)がそれぞれ中心と逆の方を向いた側(正の横方向y)と異なる極性を有することを意味する。それに対して、高さ方向zと長手方向xに関して、第一の数kの磁石M11,...,M1kは、それぞれ揃った極性n,sを有する。図2では、k=6個の磁石M11,...,M1kが交互の極性を有し、それによって、中心の方を向いた側では、長手方向におけるk=6個の磁石M11,...,M1kの極性に関して、n-s-n-s-n-sの極性配列が得られ、それに対応して、中心と逆の方を向いた側では、s-n-s-n-s-nの極性配列が得られている。その結果、中心と逆の方を向いた側の極性n,sが常に比較されることとなる。
【0059】
図3a,bは、中央の基本物体10を備えた移送ユニット1のk=6個の磁石M11,...,M1kのxy平面内における図面を図示している。見易くするとの理由から、第一の案内グループFG1の図が省略されている。基本物体10には、その中心に、デカルト座標系の原点が有り、第一の磁石側S1の正の横方向yには、磁石板P1が固定されている。ここでは、第一の磁石板P1は、第一の磁石側に渡って延びて、第一の長手方向の延びl1と第一の板の厚さb1を有し、基本物体10と逆の方を向いた側に、k=6個の磁石M11,...,M1kを備えている。これらのk=6個の磁石M11,...,M1kは、同じ寸法を有する、即ち、(図3aでは、見易くするために、第一の磁石M11にだけ表示された)磁石の長さx1、磁石の幅y1及び(xy平面に対して直角であるために、表示されていない)磁石の高さz1が同じである。第一の磁石板P1と逆の方を向いた側におけるk=6個の磁石M11,...,M1kの極性配列は、s-n-s-n-s-nである。第一の終端l1eは、原点から見て、標準的には正の長手方向xの側に有り、第一の始端l1aは負の長手方向-xの側に有る。
【0060】
これらのk=6個の磁石M11,...,M1kが第一の磁石板P1上に長手方向xに順番に配置されているので、一つの磁石板P1だけを備えた移送ユニット1は、横方向yの周りを180度回転することもできる。図3bに図示されている通り、横方向yの周りの回転後に、第一の終端l1eは負の長手方向-xの側に有り、第一の始端l1aは正の長手方向xの側に有る。そのことは、k=6個の磁石M11,...,M1kの順列が回転しており、そのため、ここでは、第一の磁石板P1と逆の方を向いた側での極性配列がn-s-n-s-n-sを表すことを意味する。
【0061】
横方向yの周りの回転は、例えば、LLM固定子への移送ユニット1の取付時に起こる可能性が有る。しかし、そのような移送ユニット1を有する長固定子リニアモーターの動作中にも、長固定子リニアモーターの移送区間の形態によって、特に、異なる区間部分が転轍機により互いに接続されている場合に、横方向yの周りの移送ユニット1の回転が起こる可能性が有る。
【0062】
本発明では、k=6個の磁石M11,...,M1kの極性が、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1の所の少なくとも一つの磁石M11,...,M1kが、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の始端l1aの方向に向かって第一の検査間隔a1の所の磁石と異なる極性n,sを有するように規定されており、そのことは、図2又は図3a,bの実施例において、如何なる任意の検査間隔a1に対しても成り立つ。
【0063】
そのため、本発明による方法に基づき、一つの磁石側S1での一つの検査点Pで磁気検査変数の実際値w0を検出して、基準値と比較することによって、簡単な手法で移送ユニット1の向きを推定することができる。
【0064】
図示された実施例では、検査変数Pが検査点Pにおける磁石M11,...,M1kの極性n,sに相当し、その際、検査点Pは、第一の磁石板P1の長手方向の延びl1の中心(ここでは、中心は中央に仮定された横方向yと交差する)から(移送ユニット1が回転しているのか、或いは標準な向きに有るのかに応じて)正の長手方向x又は負の長手方向-xに向かって第一の検査間隔a1の所と一致する。この場合、標準的な向きであることの確認は、当然のことながら任意であり、従って、その逆も可能である。
【0065】
図3aでは、移送ユニット1が標準的な向きに(即ち、始端l1aが「前方」に、終端l1eが「後方」に)有ると見做している。第六の磁石M16は、第一の始端l1aの方向(ここでは、正の長手方向x)に向かって第一の検査間隔a1で横方向yに向かってw1=nの極性の形の第一の値w1を有する。第一の磁石M11は、第一の終端l1eの方向(ここでは、負の長手方向-x)に向かった所で、sの極性の形の第二の値w2を有する(W2=S)。
【0066】
第六の磁石M16の極性nが基準値w0と定められる(w0=n)。標準的な向きに有るので、この検査点Pは、正の長手方向x(第一の終端l1eの方向)に向かって第一の検査間隔a1の所に有る。ここで、実際値w、即ち、第六の磁石M16の極性が検査点Pで検出された場合、この実際値wに関する検査はw=nの極性を生成する。実際値w=nが基準値w0=nと一致する(w=w0)ので、標準的な向きであると、即ち、図3aに図示されている通り、第一の始端l1aが実際に正の長手方向xの側に、即ち、「前方」に有り、第一の終端l1eが負の長手方向-xの側に、即ち、「後方」に有ると結論付けることができる。
【0067】
移送ユニット1が、横方向に有る軸の周りの回転後に、図3bに図示されている通り、逆方向を向いている場合、検査点Pは、第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1の所に有る。第一の終端l1eは、正の長手方向xの側に、即ち、「前方」に有り、それに対して、第一の終端l1eは、負の長手方向-xの側に、即ち、「後方」に有る。ここで、検査点Pでの実際値w(P)、即ち、ここでは、そこに有る第一の磁石M11の極性sが決定された場合、この実際値w(P)に関する検査が、sの極性を生成する(w(P)=s)。この実際値w(P)=sが基準値w0=nと一致しないので、移送ユニット1が誤った向きに有ると推定される。
【0068】
当然のことながら、それに代わって、或いはそれに追加して、同様に、検査点Pを負の長手方向-xに向かって第一の検査間隔a1の所に置くこともでき、その際、当然のことながら、常に基準値w0を適合させなければならない、即ち、ここでは、標準的な向きにおけるsの極性に適合させなければならない。
【0069】
移送ユニット1が、横方向に有る軸の周りの回転後に逆方向を向いている場合、信号を出力して、例えば、移送ユニットを再度横方向に有る軸の周りを180度回転させることができ、その結果、移送ユニットは、再び標準的な向きに向けられる。この回転は、例えば、必要に応じて手動で行なうことができる。当然のことながら、基準値w0を適合させることができる、即ち、前の標準的な向きを逆向きに、並びにその逆に変更することができる。この場合、当然のことながら、全ての更なる関連するプロセスも新しい向きに適合させなければならない。
【0070】
有利には、長手方向xに関して第一の磁石側S1に沿った磁気変数の値は、長手方向の延びl1の中心の周りに非対称的である。それにより、磁気変数、即ち、ここでは、極性n,sの検査は、その時々の基準値w0が既知である限り、如何なる任意の検査点Pにおいても行なうことができる。この非対称な極性n,sは、図2及び図3a,3bに図示されている通り、極性n,sが長手方向において交互に出現する、偶数の第一の数kの磁石M11,...,M1kを使用することによって、簡単な手法で実現することができる。この非対称性は、当然のことながら、本発明を実現するための如何なる任意の検出可能な磁気変数に関しても規定することができる。
【0071】
一つの磁石板P1を備えた移送ユニット1の構造的な構成は、基本的に第一の長手方向の延びl1の中心の周りに関してのみ対称的であるとすることができるので、原理的に長手方向xに沿った回転だけが向きの変化を引き起こすことができる。
【0072】
しかし、移送ユニット1が第二の磁石板P2も有する場合、これらの磁石側S1,S2は、長手方向xに沿った長手方向の延びl1の中心の周りに対称的であり、有利には、長手方向xと高さ方向zにより決まる平面に対しても対称的である。「対称的である」とは、常に原点、即ち、移送ユニット1の中心と関連して呼ばれるものである。
【0073】
図4による実施例は、保持部4を用いて負の横方向-yにおける第二の磁石側S2に第二の磁石板P2を基本物体10に取り付けた移送ユニット1を図示している。従って、この第二の磁石板P2は、第二の磁石側S2において、長手方向xに第二の始端l2aから第二の終端l2eにまでの第二の長手方向の延びl2に渡って延びるとともに、高さ方向zに第二の高さh2に渡って延びている。更に、この第二の磁石板P2は、横方向yに第二の板の厚さb2を有する。有利には、第二の磁石側S2又は磁石板P2のこれらの寸法は、図4に図示されている通り、第一の磁石側S1又は磁石板P1と同じである、即ち、第二の長手方向の延びl2が第一の長手方向の延びl1と一致し、第二の高さh2が第一の高さh1と一致し、第二の板の厚さb2が第一の板の厚さb1と一致する。第二の磁石側では、第二の磁石板P2に第二の数l(ここでは、6個)の板形状の磁石M21,...,M2lが長手方向xに順番に配置されており、これらの磁石は、長手方向xに第二の磁石の長さx2で延びるとともに、高さ方向zに第二の磁石の高さz2で延びて、横方向yに第二の磁石の厚さy2を有する。この第二の数lは、有利には、第一の数kに等しい。これらのl個の磁石M21,...,M2lも、有利には、高さ方向zに(保持部4から見て)第二の磁石板P2の縁にまで延びており、そのことは、第二の磁石の高さz2が第二の高さh2に等しいことを意味する。有利には、第二の数lの磁石M21,...,M2lの寸法は、第一の磁石板P1の第一の数kの磁石M11,...,M1kと同じである、即ち、第二の磁石の長さx2が第一の磁石の長さx1と一致し、第二の磁石の高さz2が第一の磁石の高さz1と一致し、第二の磁石の厚さy2が第一の磁石の厚さy1と一致する。このことから、第二の磁石板P2のl個の全ての磁石に関して、個々の磁石M21,...,M2lの第二の磁石の長さx2、第二の磁石の高さz2及び第二の磁石の厚さy2が同じであることも分かる。
【0074】
基本物体10には、正の高さ方向zにおける第一の案内側FS1に、第一の案内グループFG1が取り付けられ、負の高さ方向-zにおける第一の案内側FS1に、別の第一の案内グループFG1が取り付けられている。この場合、第一の案内グループFG1が一点鎖線で表示された第一の区間案内グループ21と協力して動作し、ここでは、例えば、案内に関して対称的である、即ち、長手方向xへの移送ユニット1の案内は、標準的な向きでも、横方向yに有る軸の周りを180度回転した後でも可能である。ここでは、そのことが、例えば、負の高さ方向-zに取り付けられた第一の案内グループFG1が正の高さ方向zに取り付けられた第一の案内グループFG1と対称的であることによって実現されている。
【0075】
同様に、基本物体10には、ここでは、第一の案内側FS1に対して逆側の第二の案内側FS2における正の高さ方向zに第二の案内グループFG2が取り付けられ、負の高さ方向-zに別の第二の案内グループFG2が取り付けられている。この場合、第二の案内グループFG2は、同様に一点鎖線で表示された第二の区間案内グループ22と協力して動作して、同じく、例えば、案内に関して対称的である。更に、第一の案内グループFG1は、第二の案内側に対して、例えば、案内に関して同等である、即ち、それらは互いに入れ換えることが可能である。それによって、移送ユニット1に関して、長手方向xに有る軸の周りの180度の回転が可能である。そのような回転後には、第一の案内グループFG1の部品が第二の区間案内グループ22の部品と協力して動作して、第二の案内グループFG2の部品は第二の区間案内グループ21の部品と係合する。図示された実施構成では、第一の磁石側S1が、有利には、第一の案内側FS1に相当し、第二の磁石側S2が第二の案内側FS2に相当する。
【0076】
要約すると、有利には、第二の数lの磁石M21,...,M2lは、第一の数kの磁石M11,...,M1kの構造及び配置構成に対して、図4に図示されている通り、xy平面に対して対称的であり、その際、l個の磁石M21,...,M2lも、k個の磁石M11,...,M1kも互いに直に接しているが、(例えば、一部だけでも)互いに間隔を開けて配置することもできる。しかし、「対称的である」とは、第一に、第一の数kの磁石M11,...,M1kと第二の数lの磁石M21,...,M2l、並びに第一の案内グループG1と第二の案内グループG2の基本的な配置構成と関連して呼ばれるものである。
【0077】
第二の数lの磁石M21,...,M2lは、それぞれ横方向yに向かってnからsへの極性又はその逆の極性を有する。そのことは、第二の磁石板P2の第二の数lの磁石M21,...,M2lが長手方向xに沿って第一の磁石板P1の第一の数kの磁石M11,...,M1kと同様の極性を付与されていることを意味する必要はない。図4では、第一の数kの磁石M11,...,M1kと第二の数lの磁石M21,...,M2lの極性は、図5及び図6において、より詳しく取り上げるので、見易くするとの理由から記入されていない。
【0078】
このような第一の数kの磁石M11,...,M1kと第二の数lの磁石M21,...,M2lを備えた移送ユニット1の対称的な構造のために、例えば、第一と第二の区間案内部品21,22、駆動コイル21などの移送区間20の部品の実現形態にも依存して、この移送ユニットは、(案内に関して対称的であるために)横方向yに存在する軸の周りに180度回転させてLLM固定子に取り付けることができるだけでなく、(案内に関して同等であるために)長手方向に存在する軸の周りに180度回転させることも、高さ方向zに有る軸の周りに180度回転させることもできる。
【0079】
また、本発明では、二つの磁石側S1,S2を有する移送ユニット1は、ここでは、第一の磁石側S1において、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1で第一の値w1の磁気変数を有するとともに、第一の磁石側S1において、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の始端l1aの方向に向かって第一の検査間隔a1で、第一の値w1と異なる第二の値w2の磁気変数を有する。即ち、ここでは、第一の数kの磁石M11,...,M1kの磁気変数としての磁性n,sに関して、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の終端l1eに向かって第一の検査間隔a1の所の少なくとも一つの磁石M11,...,M1kが、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の始端l1aに向かって第一の検査間隔a1の所の磁石と異なる極性n,sを有するように、第一の数kの磁石M11,...,M1k(ここでは、6個の磁石)が極性を付与されており、その際、第一の磁石側S1の全ての磁石M11,...,M1kの極性n,sが、図5aに図示されている通り、第一の長手方向の延びl1の中心の周りに非対称的であるのが極めて特に有利である。
【0080】
それによって、図5aの移送ユニット1に対しては、一つの磁石板P1を備えた移送ユニット1に関して図3bに基づき図示したことと同様に、一つの検査点Pでの検査変数、即ち、例えば、(正の横方向yにおける、しかし、選択的に、正の長手方向x又は負の長手方向-xにおける)第一の検査間隔a1の所の極性n,sの実際値w(P)の検査によって、移送ユニット1が横方向yに関して標準的な向きに有るのか、或いは逆向きに有るのかを決定することができる。図5bでは、実際値w(P)=nが(図5aを参照すると、第六の磁石M16の第一の値w1に等しい)基準値w0=nと一致する、即ち、移送ユニット1が標準的な向きに有る。図5cでは、実際値w(P)=sが(図5aを参照すると、又もや第六の磁石M16の第一の値w1に等しい)基準値w0と一致しない、即ち、移送ユニット1は逆向きに有る。
【0081】
有利には、移送ユニット1は、更に、第二の磁石側S2において、第二の長手方向の延びl2の中心から第二の始端l2aの方向に向かって第二の検査間隔a2で、第三の値w3と異なる第四の値w4の磁気変数を有する。即ち、ここでは、磁気変数としての磁性n,sに関して、基本物体2上の第二の磁石側S2におけるl(ここでは、6)個の磁石M21,...,M2lも、第二の長手方向の延びl2の中心から第二の終端l2eに向かって第二の検査間隔a2の所の少なくとも一つの磁石M21,...,M2lが、第二の長手方向の延びl2の中心から第一の始端l2aに向かって第二の検査間隔a2の所の磁石M21,...,M2lと異なる極性n,sを有するように極性を付与されており、その際、長手方向xに沿った第二の磁石側S2の全ての磁石M21,...,M2lの極性n,sが、図5aの場合の通り、第二の長手方向の延びl2の中心の周りに非対称的(即ち、yz平面に対して非対称的)であるのが極めて特に有利である。
【0082】
それによって、第一の磁石側S1と同様に(そのため、第二の磁石側S2に関しては、図面に再度詳しく図示していない)、第二の磁石側S2の一つの検査点Pにおける検査変数の実際値w(P)、即ち、例えば、第二の検査間隔a2の所の一つの磁石M21,...,M2lの極性n,sを検査して、基準値w0と比較することによって、移送ユニット1が長手方向に沿って標準的な向きに有る(図5b)のか、或いは逆向きに有る(図5c)のかを決定することができる。
【0083】
図5aの実施形態では、検査間隔a1,a2の所と検査位置a3は同じである。しかし、当然のことながら、向きの検査のためには、二つの磁石側S1,S2の中の一つに基づき検査を実行すれば、それで十分である。
【0084】
長手方向xに沿って延びる軸の周りの回転も検出可能である。しかし、そのためには、第一の案内側FS1が第二の案内側FS2に対して対向して有って、第一の案内グループG1が第二の案内グループG2と案内に関して同等であるように構成されている(即ち、第一の案内グループG1を第二の案内グループG2と入れ換えることが可能である)ことと、第一の磁石側S1が第二の磁石側S2に対して対向して有るとともに、第一の長手方向の延びl1の中心と第二の長手方向の延びl2の中心が互いに対向して有ることと、移送ユニットが第一の磁石側S1における長手方向xに沿った検査位置a3で第五の値w5の磁気変数を有することと、移送ユニット1が第二の磁石側S2における長手方向xに沿った検査位置a3で、第五の値w5と異なる第六の値w6の磁気変数を有することとが必要である。これらの全ての前提条件は、極性n,sが磁気変数としての役割を果たすので、図3の代わりに図5aに示されている。
【0085】
検査位置a3における第一の磁石側S1の第六の磁石M16の極性は、回転していない標準的な向きではnである(図5a)、即ち、第五の値w5がw5=nに等しい。第二の磁石側S2の第六の磁石M26の極性は、検査位置a3に有り、本発明では、第五の値w5=nと異なる第六の値w6=sを有する。第一の磁石側S1の第六の磁石M16の第五の値w5が検査変数の基準値w0と見做されて、間違った第一の磁石側S1で、検査点Pにおける磁気の実際値w(P)が決定されたことになる。移送ユニット1が標準的な向きに有る場合、(例えば、(間違った、並びに実際の)第一の磁石側S1の検査位置a3に相当する)検査点Pにおける実際値wは基準値w0と一致する。
【0086】
しかし、移送ユニット1が、図5aの状態から長手方向xに延びる軸の周りを180度回転した場合、図5dにおいて明らかな通り、第一の数kの磁石M11,...,M1kと一緒に第一の磁石側S1が、第二の数lの磁石M21,...,M2lと一緒の第二の磁石側S2と場所を入れ換える。即ち、第二の磁石側S2の第六の磁石M26と第一の磁石側S1の第六の磁石M16がその位置を入れ換える。間違った第一の磁石側S1(しかし、実際には第二の磁石側S2)で、検査点Pにおける磁気の実際値w(P)が決定されることになる。従って、(ここでは、第一の磁石側S1での検査位置a3に相当する)検査点Pにおける実際値w(P)=sは基準値w0=w5=nと異なる。それによって、移送ユニット1が長手方向xに延びる軸の周りの回転に関して誤った向きに有ると決定される。
【0087】
有利には、図5aの場合の通り、第一の検査間隔a1の所、第二の検査間隔a2の所及び場所a3は同じであり、そのため、一つの検査点Pを用いて、横方向yに存在する軸の周りと長手方向xに存在する軸の周りの誤った向きを検知することができる。しかし、図5aの実施形態では、高さ方向zに存在する軸の周りの回転の検知はできない。
【0088】
高さ方向zに存在する軸の周りの移送ユニット1の回転を確認できるようにするために、移送ユニットは、第一の磁石側S1において、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1で第一の値w1の磁気変数を有するとともに、第一の磁石側S1において、第一の長手方向の延びl1の中心から第一の始端l1aの方向に向かって第一の検査間隔a1で、第一の値w1と一致する第二の値w2の磁気変数を有し、この移送ユニット1は、第二の磁石側S2において、第二の長手方向の延びl2の中心から第二の終端l2eの方向に向かって第二の検査間隔a2で第三の値w3を有し、移送ユニット1は、第二の磁石側S2において、第二の長手方向の延びl2の中心から第二の始端l2aの方向に向かって第二の検査間隔a2で、第三の値w3と一致する第四の値w4の磁気変数を有し、この場合、第一及び第二の値w1,w2は、第三及び第四の値w3,w4と異なる。このような移送ユニット1が図6aに図示されており、構造的には、磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lの数を除いて、図5aの実施形態と同じであるが、磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lの極性が大きく異なり、横方向yに存在する軸の周りの回転を検知できない。
【0089】
有利には、第一の磁石側S1における長手方向xに沿った磁気変数の値、即ち、ここでは、磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lの極性は、第二の磁石側S2と異なる値を有することができ、ここでは、更に、それらは、それぞれ磁石側S1,S2毎に長手方向の延びl1又はl2の中心の周りに対称的に配置されている。図6aにも図示されている通り、磁石板P1,P2毎に極性n,sが交番する奇数の数k,lの磁石M11,...,M1k,M21,...,M2lを備えた移送ユニット1は特に簡単な解決策である。ここでは、第一の磁石側S1の第五の磁石M15が、第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1で極性sの形の第一の値w1を有する。第一の磁石側S1の第一の磁石M11が、第一の始端l1aの方向に向かって第一の検査間隔a1で、第一の値w1と一致する極性sの形の第二の値w2を有する。第二の磁石側S2の第五の磁石M25が、第二の終端l2eの方向に向かって第二の検査間隔a2で極性nの形の第三の値w3を有する。第二の磁石側S2の第一の磁石M21が、第二の始端l2aの方向に向かって第二の検査間隔a2で、第三の値w3と一致する極性nの形の第四の値w4を有する。有利には、第一の検査間隔a1の所が第二の検査間隔a2の所と一致し、その際、第一又は第二の値が第三又は第四の値と異なる(w1=w2≠w3=w4)。
【0090】
図6bは、標準的な向きの移送ユニット1を図示している。第一の磁石側S1の第一の始端l1aと第二の磁石側S2の第二の始端l2aが正の長手方向xの側に有り、それに対して、第一の磁石側S1の第一の終端l1eと第二の磁石側S2の第二の終端l2eは負の長手方向-xの側に有る。更に、第一の磁石側S1が正の横方向yの側に有り、第二の磁石側S2が負の横方向-yの側に有る。即ち、第一の始端l1aが正の長手方向xかつ正の横方向yの側に有り、第一の終端l1eが負の長手方向-xかつ正の横方向yの側に有り、第二の始端l2aが正の長手方向xかつ負の横方向-yの側に有り、第二の終端l2eが負の長手方向-xかつ負の横方向-yの側に有る。第一の値w1を有する第一の磁石側S1の第五の磁石M15の極性sが基準値w0として確認される(w0=w1=s)。
【0091】
図6bは、図6aによる移送ユニットを図示しており、その際、向きが決定される。この移送ユニットは、図6aの通り、標準的な向きに有る。検査点Pは、正の長手方向xにおいて第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔la1の所に有る。ここで、検査点Pにおける実際値w(P)、即ち、第一の値w1と一致する第五の磁石M15の極性が検出された場合、この実際値wに関する検査がw(P)=sの極性を生成する。実際値w(P)=sが基準値w0=w1=sと一致するので、標準的な向きに有ると結論付けることができる。
【0092】
この実施形態では、高さ方向zの周りの回転だけでなく、長手方向xの周りの回転も検出可能である。図6cでは、長手方向xの周りの回転が起こっており、この回転は、図5cに基づき図示したことと同じ手法で検出することができる。
【0093】
図6dは、高さ方向zの周りに回転した、図6aによる移送ユニットを図示している。ここでは、第一の始端l1aが負の長手方向-xかつ負の横方向-yの側に有り、第一の終端l1eが正の長手方向xかつ負の横方向-yの側に有り、第二の始端l2aが負の長手方向-xかつ正の横方向yの側に有り、第二の終端l2eが正の長手方向xかつ正の横方向yの側に有る。ここで、正の長手方向に沿った検査間隔a1の所において、第一の磁石側S1の第五の磁石M15が極性sを有し、第二の磁石側S2の第五の磁石M25が極性nを有する。
【0094】
従って、検査点Pは、第一の終端l1eの方向に向かって第一の検査間隔a1の所に有る。第一の終端l1eが正の長手方向xの側の「前方」に有り、それに対して、第一の始端l1aが長手方向-xの側に、即ち、「後方」に有る。ここで、検査点Pにおける実際値w(P)、即ち、ここでは、第二の磁石側S2に存在する第一の磁石M21の極性nが決定された場合、この実際値w(P)に関する検査がnの極性を生成する(w=n)。この実際値w=nが基準値w0=sと一致しないので、移送ユニット1が誤った向きに有ると推定される。
【0095】
それによって、一つの磁石側S1,S2における一つの検査点Pで磁気検査変数の実際値を確認して、基準値w0と比較することによって、高さ方向zの周りの誤った向きを確認することができる。
【0096】
しかし、この長手方向の延びl1,l2の中心の周りの磁気変数の対称性に基づく実施形態では、横方向yに延びる軸の周りの回転を確認できないことに留意されたい。更に、この実施形態では、長手方向xに存在する軸の周りの回転と同時の高さ方向zに存在する軸の周りの回転を確認することができず、誤って標準的な向きに有ると見做されるかもしれない。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る:
1.
長固定子リニアモーター(2)のための移送ユニット(1)であって、
この移送ユニット(1)が、
第一の案内グループ(FG1)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第一の案内側(FS1)を有し、
第二の案内グループ(FG2)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第二の案内側(FS2)を有し、この第二の案内側(FS2)が第一の案内側(FS1)に対して対向して有るとともに、第二の案内グループ(FG2)が第一の案内グループ(FG1)と案内に関して同等であるように構成されており、
長手方向(x)に沿って第一の始端(l1a)から第一の終端(l1e)までの第一の長手方向の延び(l1)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する、外側を向いた第一の磁石側(S1)を有し、
長手方向(x)に沿って第二の始端(l2a)から第二の終端(l2e)までの第二の長手方向の延び(l2)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する、外側を向いた第二の磁石側(S2)を有し、この第一の磁石側(S1)が第二の磁石側(S2)に対して対向して有るとともに、第一の長手方向の延び(l1)の中心と第二の長手方向の延び(l2)の中心が互いに対向して有る、
移送ユニット(1)において、
この移送ユニット(1)が、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の終端(l1e)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で第一の値(w1)の磁気変数を有するとともに、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の始端(l1a)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で、第一の値(w1)と一致する第二の値(w2)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の終端(l2e)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で第三の値(w3)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の始端(l2a)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で、第三の値(w3)と一致する第四の値(w4)の磁気変数を有し、これらの第一及び第二の値(w1,w2)が第三及び第四の値(w3,w4)と異なることと、
から成る当該移送ユニット。
2.
第一の検査間隔(a1)の所が第二の検査間隔(a2)の所と一致する上記1に記載の移送ユニット。
3.
第一の磁石側(S1)における長手方向(x)に沿った磁気変数の全ての値が第二の磁石側(S2)と異なる値を有する上記2に記載の移送ユニット。
4.
第一の磁石側(S1)における磁気変数の値が第一の長手方向の延び(l1)の中心に対して対称的であることと、
第二の磁石側(S2)における磁気変数の値が第二の長手方向の延び(l2)の中心に対して対称的であることと、
から成る請求項1から3までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
5.
長固定子リニアモーター(2)のための移送ユニット(1)であって、
この移送ユニット(1)が、
案内に関して対称的である第一の案内グループ(FG1)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第一の案内側(FS1)を有し、
長手方向(x)に沿って第一の始端(l1a)から第一の終端(l1e)までの第一の長手方向の延び(l1)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する第一の磁石側(S1)を有する、
移送ユニット(1)において、
この移送ユニット(1)が、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の終端(l1e)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で第一の値(w1)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第一の磁石側(S1)において、第一の長手方向の延び(l1)の中心から第一の始端(l1a)の方向に向かって第一の検査間隔(a1)の所で、第一の値(w1)と異なる第二の値(w2)の磁気変数を有することと、
から成る当該移送ユニット。
6.
この移送ユニットが、第二の案内グループ(FG2)が配置された、長手方向(x)に関して側方に存在する第二の案内側(FS1)を有し、
この移送ユニット(1)が、長手方向(x)に沿って第二の始端(l2a)から第二の終端(l2e)までの第二の長手方向の延び(l2)に渡って延びる、長手方向(x)に関して側方に存在する第二の磁石側(S2)を有することと、
第二の案内グループ(FG2)が案内に関して対称的であることと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の終端(l2e)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で第三の値(w3)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S2)において、第二の長手方向の延び(l2)の中心から第二の始端(l2a)の方向に向かって第二の検査間隔(a2)の所で、第三の値(w3)と異なる第四の値(w4)の磁気変数を有することと、
から成る上記5に記載の移送ユニット。
7.
第一の案内側(FS1)が第二の案内側(FS2)に対して対向して有ることと、
第一の磁石側(S1)が第二の磁石側(FS2)に対して対向して有るとともに、第一の長手方向の延び(l1)の中心と第二の長手方向の延び(l2)の中心が互いに対向して有ることと、
この移送ユニットが、第一の磁石側(S1)において、長手方向(x)に沿った検査位置(a3)の所で第五の値(w5)の磁気変数を有することと、
この移送ユニット(1)が、第二の磁石側(S1)において、長手方向(x)に沿った検査位置(a3)の所で、第五の値(w5)と異なる第六の値(w6)の磁気変数を有することと、
から成る上記6に記載の移送ユニット。
8.
第一の検査間隔(a1)が第二の検査間隔(a2)及び検査位置(a3)と等しい上記7に記載の移送ユニット。
9.
長手方向(x)に沿った第一の磁石側(S1)における磁気変数の全ての値が第二の磁石側(S2)における磁気変数の値と異なる上記7又は8に記載の移送ユニット。
10.
第一の磁石側(S1)における磁気変数の値が第一の長手方向の延び(l1)の中心に対して非対称的である上記1から9までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
11.
前記の磁気変数が、有利には、第一の磁石側(S1)に取り付けられた第一の磁石板(P1)又は第二の磁石側(S2)に取り付けられた第二の磁石板(P2)の磁気抵抗によって与えられる上記1から10までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
12.
第一の数kの磁石(M11,...,M1k)が第一の磁石側(S1)に配置されるか、或いは第二の数lの磁石(M21,...,M2l)が第二の磁石側(S2)に配置されて、これらの磁石が、それぞれ横方向(y)に極性(n,s)を付与されており、前記の磁気変数が、これらの第一の数kの磁石(M11,...,M1k)又は第二の数lの磁石(M21,...,M2l)の極性によって与えられる上記1から10までのいずれか一つに記載の移送ユニット。
13.
請求項1から12までのいずれか一つに記載の少なくとも一つの移送ユニット(1)と、この少なくとも一つの移送ユニット(1)を移送区間(20)に沿って移動方向に案内するために、第一の案内グループ(FG1)及び/又は第二の案内グループ(FG2)と協力して動作する第一の区間案内グループ(21)及び/又は第二の区間案内グループ(22)を備えた移送区間(20)とを有する長固定子リニアモーター。
14.
請求項1から13までのいずれか一つに記載の移送ユニット(1)の向きを決定する方法において、
長手方向(x)に関して側方に有る磁石側(S1,S2)における一つの検査点(P)の所で、磁気検査変数の実際値(w)が検出されて、基準値(w0)と比較されることと、
この実際値(w)が基準値(w0)と一致しない場合に、移送ユニット(1)が誤った向きに有ると推定されることと、
から成る当該方法。
15.
磁気検査変数として、移送ユニット(1)の一つの磁石(M11,...,M1k,M21,...,M2l)の極性(n,s)が検出される上記14に記載の方法。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d