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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】防水試験装置及び防水試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/32 20060101AFI20240424BHJP
   G01M 3/04 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01M3/32 B
G01M3/04 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021000562
(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公開番号】P2021139885
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2020038256
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】中村 享弘
(72)【発明者】
【氏名】久田 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 大亮
(72)【発明者】
【氏名】恩田 直門
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110398321(CN,A)
【文献】実開昭53-003086(JP,U)
【文献】特表2007-510899(JP,A)
【文献】実開昭57-026044(JP,U)
【文献】特開昭63-148142(JP,A)
【文献】特開2005-106469(JP,A)
【文献】特開2013-200204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物が浸漬される液体が貯留された水槽と、
前記水槽が内部に設けられる耐圧容器と、
前記耐圧容器の上面に設けられた棒状部材であって、下端に前記被試験物が取り付けられる棒状部材と、
前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧する圧力調整部と、
前記被試験物の重量を測定する測定部と、
を備え、
前記圧力調整部は、前記被試験物全体が前記液体の内部に設けられ、かつ前記被試験物が前記水槽に当接しない状態で前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧し、
前記測定部は、前記圧力調整部により前記耐圧容器の内部が加圧又は減圧された状態で連続して重量を測定する
ことを特徴とする防水試験装置。
【請求項2】
前記測定部は、秤量器であり、
前記水槽は、前記測定部に載置され、
前記耐圧容器の内部には、前記水槽及び前記測定部が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の防水試験装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記棒状部材に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の防水試験装置。
【請求項4】
前記棒状部材は、回転可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の防水試験装置。
【請求項5】
前記棒状部材は、上下方向に移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防水試験装置。
【請求項6】
前記圧力調整部を制御して前記耐圧容器の内部を段階的に加圧又は減圧する制御部を備えた
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の防水試験装置。
【請求項7】
前記耐圧容器の内部圧力を測定する圧力計を備え、
前記制御部は、前記測定部における測定結果と、前記圧力計における測定結果とを関連付けて出力する
ことを特徴とする請求項6に記載の防水試験装置。
【請求項8】
前記測定部での測定結果を表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記測定部における測定結果を連続して表示する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の防水試験装置。
【請求項9】
耐圧容器の内部に測定部及び液体が貯留された水槽を設け、かつ前記水槽を前記測定部に載置するステップと、
前記耐圧容器の上面に設けられた棒状部材の下端に被試験物を取り付け、当該被試験物全体を前記液体の内部に設け、かつ、前記被試験物が前記水槽に当接しない状態にするステップと、
前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧しながら、前記測定部で重量を測定するステップと、
を含むことを特徴とする防水試験方法。
【請求項10】
耐圧容器の内部に液体が貯留された水槽を設けるステップと、
前記耐圧容器の上面に設けられた棒状部材であって、測定部が設けられた棒状部材の下端に被試験物を取り付け、当該被試験物全体を前記液体の内部に設け、かつ、前記被試験物が前記水槽に当接しない状態にするステップと、
前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧しながら、前記測定部で重量を測定するステップと、
を含むことを特徴とする防水試験方法。
【請求項11】
前記被試験物全体を前記液体の内部に設けた後に、前記棒状部材を回転させて前記被試験物に付着した気泡を除去するステップを含み、
前記被試験物に付着した気泡を除去した後で、前記測定部で重量を測定する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の防水試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水試験装置及び防水試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、時計を気体加圧中に保持して防水性を試験する気体加圧防水試験を行い、この試験で防水不良が無いとの結果が得られた後に、時計を加圧液体中に保持して防水性を試験する液体中加圧防水試験を行う防水試験方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-106469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の防水試験方法は、液体中加圧防水試験を行った後で時計を加圧液体から取り出し、取り出した時計をホットプレート上に載置し、結露により水滴又は曇りが発生したか否かにより浸水の有無を判断する。つまり、特許文献1に記載の防水試験方法は、ホットプレート上に被試験物を載置して結露を確認する過程を経なければならず、液体中加圧防水試験のみで被試験物内への浸水の有無を確認することはできず、簡便ではない。
【0005】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、被試験物内への浸水の有無を簡便に確認することができる防水試験装置及び防水試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる防水試験装置は、被試験物が浸漬される液体が貯留された水槽と、前記水槽が内部に設けられる耐圧容器と、前記耐圧容器の上面に設けられた棒状部材であって、下端に前記被試験物が取り付けられる棒状部材と、前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧する圧力調整部と、前記被試験物の重量を測定する測定部と、を備え、前記圧力調整部は、前記被試験物全体が前記液体の内部に設けられ、かつ前記被試験物が前記水槽に当接しない状態で前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧し、前記測定部は、前記圧力調整部により前記耐圧容器の内部が加圧又は減圧された状態で連続して重量を測定することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、圧力調整部は、被試験物が水槽に当接しない状態で、水槽が内部に設けられた耐圧容器の内部を加圧又は減圧し、測定部は、加圧部により耐圧容器の内部が加圧された状態で連続して重量を測定する。被試験物は棒状部材を介して耐圧容器に設けられているため、被試験物に液体が浸入すると、被試験物の重量が変化する。したがって、測定部で測定された重量変化に基づいて、被試験物への液体の浸入の有無を検知することができる。すなわち、被試験物内への浸水の有無を簡便に確認することができる。
【0008】
前記測定部は、秤量器であり、前記水槽は、前記測定部に載置され、前記耐圧容器の内部には、前記水槽及び前記測定部が設けられてもよい。被試験物に液体が浸入すると、測定部が支える液体の量、すなわち測定部で測定される重量が減少する。したがって、測定部で測定された重量変化に基づいて、被試験物への液体の浸入の有無を検知することができる。
【0009】
前記測定部は、前記棒状部材に設けられていてもよい。被試験物は棒状部材を介して耐圧容器に設けられているため、測定部は被試験物の重量を直接測定できる。したがって、被試験物に液体が浸入すると、測定部が支える液体の量、すなわち測定部で測定される重量が増加し、これにより被試験物への液体の浸入の有無を検知することができる。
【0010】
前記棒状部材は、回転可能に設けられていてもよい。これにより、被試験物に付着した気泡を除去することができる。その結果、気泡の存在による防水試験の精度低下を防ぐことができる。
【0011】
前記棒状部材は、上下方向に移動可能に設けられていてもよい。これにより、被試験物に付着した気泡を除去することができる。また、棒状部材を上下方向に移動させて被試験物を適切な位置に移動させることができる。
【0012】
前記圧力調整部を制御して前記耐圧容器の内部を段階的に加圧又は減圧する制御部を備えていてもよい。これにより、被試験物がどの程度の圧力に耐えられるか定量的な評価が可能となる。
【0013】
前記耐圧容器の内部圧力を測定する圧力計を備え、前記制御部は、前記測定部における測定結果と、前記圧力計における測定結果とを関連付けて出力してもよい。これにより、測定部での測定結果の変化、すなわち被試験物に液体が浸入したときの圧力を定量的に検知し、被試験物の防水性能の程度を知ることができる。
【0014】
前記測定部での測定結果を表示する表示部を備え、前記表示部は、前記測定部における測定結果を連続して表示してもよい。これにより、防水試験中に浸水の有無を確認することができる。
【0015】
本発明にかかる防水試験方法は、耐圧容器の内部に測定部及び液体が貯留された水槽を設け、かつ前記水槽を前記測定部に載置するステップと、前記耐圧容器の上面に設けられた棒状部材の下端に被試験物を取り付け、当該被試験物全体を前記液体の内部に設け、かつ、前記被試験物が前記水槽に当接しない状態にするステップと、前記耐圧容器の内部を加圧しながら、前記測定部で重量を測定するステップと、を含むことを特徴とする。これにより、測定部で測定された重量変化に基づいて、被試験物への液体の浸入の有無を簡便に確認することができる。
【0016】
本発明にかかる防水試験方法は、耐圧容器の内部に液体が貯留された水槽を設けるステップと、前記耐圧容器の上面に設けられた棒状部材であって、測定部が設けられた棒状部材の下端に被試験物を取り付け、当該被試験物全体を前記液体の内部に設け、かつ、前記被試験物が前記水槽に当接しない状態にするステップと、前記耐圧容器の内部を加圧又は減圧しながら、前記測定部で重量を測定するステップと、を含むことを特徴とする。これにより、測定部で測定された重量変化に基づいて、被試験物への液体の浸入の有無を簡便に確認することができる。
【0017】
前記被試験物全体を前記液体の内部に設けた後に、前記棒状部材を回転させて前記被試験物に付着した気泡を除去するステップを含み、前記被試験物に付着した気泡を除去した後で、前記耐圧容器の内部を加圧してもよい。これにより、気泡の存在による防水試験の精度低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被試験物内への浸水の有無を簡便に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】防水試験装置1の概略を示す正面図である。
図2】防水試験装置1の概略を示す平面図である。
図3】防水試験装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
図4】防水試験装置1を用いて防水試験を行う様子を模式的に示す図であり、(A)は試験開始時の様子を示し、(B)は被試験物Xに液体が浸入した状態を示す。
図5】防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に加圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に加圧する場合を示す。
図6】防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に減圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に減圧する場合を示す。
図7】防水試験装置2の概略を示す正面図である。
図8】防水試験装置2の電気的な構成を示すブロック図である。
図9】防水試験装置2を用いて防水試験を行う様子を模式的に示す図であり、(A)は試験開始時の様子を示し、(B)は被試験物Xに液体が浸入した状態を示す。
図10】防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に加圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に加圧する場合を示す。
図11】防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に減圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に減圧する場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる防水試験装置及び防水試験方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
<第1の実施の形態>
図1は、防水試験装置1の概略を示す正面図である。図1では、要部を透視している。図2は、防水試験装置1の概略を示す平面図である。図2では、蓋部12(後に詳述)を外した状態を図示している。また、図1、2では、一部の構成の図示を省略している。なお、図1の上下方向が鉛直方向であり、図2の紙面と平行な方向が水平方向である。
【0022】
防水試験装置1は、耐圧容器10と、棒状部材15と、測定部20と、水槽30と、圧力計40と、圧力調整部60とを有する。
【0023】
耐圧容器10は、大気圧より高い気体や液体を貯留可能な容器である。耐圧容器10は、全体が金属で形成されていてもよいし、一部が透明な樹脂で形成されていてもよい。
【0024】
耐圧容器10は、底面及び上面が板状部材により覆われた略円筒形状の部材である。耐圧容器10は内部が空洞であり、耐圧容器10の内部には、測定部20及び水槽30が設けられている。ただし、耐圧容器10の形状はこれに限られない。
【0025】
耐圧容器10は、主として、本体部11と、蓋部12と、を有する。本体部11は、有底略円筒形状であり、底面11aには台19を介して測定部20が載置されている。
【0026】
本実施の形態では、耐圧容器10の中空部の底面に水を張る場合を考慮し、本体部11の底面11aに台19を載置し、台19の上に測定部20を載置しているが、台19は必須ではなく、台19を用いない場合には底面11aに測定部20を載置すればよい。
【0027】
本体部11には、圧力計40及び圧力調整部60が設けられている。また、本体部11には、一端が測定部20に設けられた電源ケーブル23及び通信ケーブル24を耐圧容器10の外部に引き出す引き出し部11c、11dが設けられている。引き出し部11c、11dは、電源ケーブル23や通信ケーブル24が挿通される孔(図示省略)と、孔を密閉する密閉部材(図示省略)を有する。
【0028】
さらに、本体部11には、エアコンプレッサ51(図3参照、後に詳述)から供給される空気を耐圧容器10の内部空間に供給する空気供給口11eと、耐圧容器10内の空気を耐圧容器10外へ排出する空気排出口11fとが設けられている。空気排出口11fには、減圧部55(図3参照、後に詳述)が接続されている。
【0029】
本体部11には、トグルクランプ13が設けられている。トグルクランプ13は、トグル機構を用いた保持部材であり、蓋部12を本体部11に固定する。
【0030】
蓋部12は、本体部11の上面に形成された開口部を覆う略板状の部材である。蓋部12の裏面に設けられた凸部12aを本体部11の側面11bの内側に挿入し、トグルクランプ13で蓋部12と本体部11とを固定することで、内部が空洞な耐圧容器10が構成される。
【0031】
棒状部材15は、耐圧容器10の上面(ここでは、蓋部12)に設けられた棒状の部材である。棒状部材15は、回転可能、かつ、上下方向に移動可能に設けられている。
【0032】
棒状部材15の下端には、金具16が設けられている。金具16を介して、棒状部材15の下端に被試験物Xが取り付けられる。なお、金具16は棒状部材15に対して着脱可能であり、他の形態の金具に交換可能である。
【0033】
測定部20は、被試験物Xの重量を測定する秤量器であり、上面に載置部21が設けられている。載置部21の上面には、水槽30が載置される。また、測定部20は、測定部20での測定結果を表示する表示部22を有する。表示部22は、測定結果を数字で表示するいわゆるデジタル表示を行ってもよいし(図2参照)、測定結果に応じて針が動くいわゆるアナログ表示(図4参照)を行ってもよい。
【0034】
水槽30は、液体を貯留する容器である。本実施の形態では、液体として、水が水槽30に貯留されている。水槽30に貯留された水Lには、被試験物Xが浸漬される。なお、水槽30に貯留される液体は水Lに限られない。
【0035】
圧力計40は、例えば圧力ゲージであり、耐圧容器10の内部圧力を測定する。
【0036】
図3は、防水試験装置1の電気的な構成を示すブロック図である。防水試験装置1は、CPU(Central Processing Unit)151と、RAM(Random Access Memory)152と、ROM(Read Only Memory)153と、入出力インターフェース(I/F)154と、通信インターフェース(I/F)155と、メディアインターフェース(I/F)156とを有し、これらは測定部20、圧力計40、圧力調整部60等と互いに接続されている。
【0037】
圧力調整部60は、加圧部50と、減圧部55とを有する。加圧部50は、耐圧容器10の内部を加圧する部材であり、主として、空圧供給源であるエアコンプレッサ51と、レギュレータ52と、を有する。エアコンプレッサ51は、図示しない配管により空気供給口11e(図2参照)と接続されている。レギュレータ52は、エアコンプレッサ51から耐圧容器10に供給する空気の圧力を所定の圧力に調整する。その結果、耐圧容器10の圧力が所定の圧力に維持される。
【0038】
減圧部55は、空気排出口11f(図2参照)を介して耐圧容器10から気体を排出し、耐圧容器10の内部を減圧する部材である。減圧部55は、ポンプ(例えば、真空ポンプ)とレギュレータとを有し、レギュレータにより耐圧容器10の圧力を所定の圧力に調整する。
【0039】
RAM152は、揮発性メモリである。ROM153は、不揮発性メモリであり、各種制御プログラム等が記憶されている読み出し専用のROMや書き込み可能なフラッシュメモリを含む。CPU151は、RAM152、ROM153に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。
【0040】
CPU151は、防水試験装置1の各部を制御する制御部151aの機能を有する。制御部151aは、CPU151が読み込んだ所定のプログラムを実行することにより構築される。制御部151aは、測定部20、圧力計40、圧力調整部60等を制御する。具体的には、CPU151は、圧力計40からの出力に基づいて圧力調整部60を制御し、耐圧容器10の圧力を所定の圧力に調整し、維持する。
【0041】
CPU151は、入出力インターフェース154を介して、キーボードやマウス等の入力装置やモニタ等の出力装置を含む入出力装置161を制御する。通信インターフェース155は、ネットワーク162を介して他の機器からデータを受信してCPU151に送信すると共に、CPU151が生成したデータを、ネットワーク162を介して他の機器に送信する。
【0042】
メディアインターフェース156は、記憶媒体163に格納されたプログラムやデータを読み取り、RAM152に格納する。なお、記憶媒体163は、例えば、ICカード、SDカード、DVD等である。なお、各機能を実現するプログラムは、例えば、記憶媒体163から読み出されて、RAM152を介して防水試験装置1にインストールされ、CPU151によって実行される。
【0043】
図3に示す防水試験装置1の構成は、本実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、例えば一般的な情報処理装置が備える構成を排除するものではない。防水試験装置1の構成要素は、処理内容に応じてさらに多くの構成要素に分類されてもよいし、1つの構成要素が複数の構成要素の処理を実行してもよい。
【0044】
次に、防水試験装置1を用いて行う防水試験について説明する。図4は、防水試験装置1を用いて防水試験を行う様子を模式的に示す図であり、(A)は試験開始時の様子を示し、(B)は被試験物Xに液体が浸入した状態を示す。
【0045】
まず、耐圧容器10の内部に測定部20及び液体が貯留された水槽30を設ける。具体的には、耐圧容器10の蓋部12を外し、底面11aに載置された台19に測定部20を載置し、かつ、測定部20に水Lが貯留された水槽30を載置する。
【0046】
次に、蓋部12に設けられた棒状部材15の下端に、金具16を介して被試験物Xを取り付ける。そして、図示しない把持部を用いて蓋部12を持ち上げ、蓋部12を本体部11の上に載置し、トグルクランプ13を用いて蓋部12を本体部11に取り付ける。必要に応じて、棒状部材15を上下方向に移動させ、被試験物Xを液体に浸漬させる。このとき、被試験物X全体を液体の内部に設け、かつ、被試験物Xが水槽30に当接しない状態にする(図4(A)参照)。
【0047】
また、被試験物X全体を液体の内部に設けた状態で、被試験物Xの周囲に気泡が付着している場合には、棒状部材15を回転させて被試験物Xに付着した気泡を除去する。なお、当該ステップは必須ではないが、気泡の存在による防水試験の精度低下を防ぐために被試験物Xに付着した気泡を除去することが望ましい。また、被試験物Xに付着した気泡を除去する方法は、棒状部材15を回転させる方法に限られず、棒状部材15を上下動させてもよい。ただし、水Lを波立たせずに気泡を除去するためには、棒状部材15を回転させて被試験物Xに付着した気泡を除去することが望ましい。
【0048】
制御部151aは、圧力調整部60を制御して耐圧容器10の内部を加圧又は減圧する。
すなわち、制御部151aは、加圧部50を制御して耐圧容器10の内部に空気を供給して、被試験物Xが液体中に保持された状態で耐圧容器10の内部を加圧する。又は、制御部151aは、減圧部55を制御して耐圧容器10の内部から空気を排出して、被試験物Xが液体中に保持された状態で耐圧容器10の内部を減圧する。これにより、被試験物Xが液体中に保持された状態で、液体が加圧又は減圧される。また、耐圧容器10の内部を加圧又は減圧しながら、測定部20で重量を測定する。
【0049】
被試験物Xは棒状部材15を介して耐圧容器10に設けられているため、被試験物Xに液体が浸入すると、測定部20が支える液体の量、すなわち測定部20で測定される重量が減少する。したがって、測定部20で測定された重量変化に基づいて、被試験物Xへの液体の浸入の有無を検知することができる。そのため、防水試験中に被試験物Xへの液体の浸入の有無を検知でき、防水試験後に被試験物Xの分解等により液体の浸入の有無を確認する必要が無い。
【0050】
特に、圧力調整部60により耐圧容器10の内部が加圧又は減圧された状態で、測定部20で連続して重量を測定し、当該測定結果を表示部22で連続して表示することで、どの時点で被試験物Xへの液体の浸入が発生したのかリアルタイムで検知することができる。
【0051】
図5は、防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に加圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に加圧する場合を示す。図6は、防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に減圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に減圧する場合を示す。図5、6において、実線は耐圧容器10の内部圧力を示し、点線は測定部20における重量の測定結果を示す。
【0052】
制御部151aは、図5、6に示すような圧力変化となるように耐圧容器10の内部圧力を制御する。また、制御部151aは、測定部20での測定結果と、圧力計40での測定結果とを関連付けて出力する。結果の出力先は、例えば、入出力装置161(例えば、外部モニタ(図示省略))、記憶部(例えば、ROM153や記憶媒体163)である。
【0053】
測定部20での測定結果と、圧力計40での測定結果とを関連付けた結果が、入出力装置161に出力された場合には、図5、6に示すグラフが入出力装置161に表示される。測定部20での測定結果(重量)と、圧力計40での測定結果(耐圧容器10の内部圧力)とが関連付けられているため、測定部20での測定結果が減少した、すなわち被試験物Xに液体の浸入したときの圧力を定量的に検知することができる。これにより、被試験物Xの防水性能の程度を知ることができる。
【0054】
測定部20での測定結果と、圧力計40での測定結果とを関連付けた結果が、記憶部に出力された場合には、測定部20での測定結果と、圧力計40での測定結果とが関連付けられて記憶部に記憶される。これにより、試験中のみならず、事後的にも検査結果を確認することができる。
【0055】
図5、6(A)に示すように、耐圧容器10の内部を連続的に加圧又は減圧する場合には、最終的な加圧後又は減圧後の圧力における防水性能が確認可能である。また、図5、6(B)に示すように、耐圧容器10の内部を段階的に加圧又は減圧する場合には、被試験物Xがどの程度の圧力に耐えられるか定量的な評価が可能となる。
【0056】
本実施の形態によれば、防水試験中に測定部20での測定結果を確認することで、被試験物内への浸水の有無を確認することができる。したがって、防水試験後に被試験物Xを分解する必要が無く、簡便な防水試験方法を提供することができる。
【0057】
また、本実施の形態によれば、測定部20での測定結果と圧力計40での測定結果とを関連付けることで、被試験物Xに液体が浸入したときの圧力を定量的に検知することができる。例えば、試験後に液体中から被試験物Xを取り出して液体の浸入の有無を確認する場合には、定性的な判断(防水の有無)はできても、定量的な判断(どの圧力で浸水が発生したか)はできない。それに対し、本実施の形態では、液体の浸入の状況が明確であるため、定量的な判断が可能である。
【0058】
なお、本実施の形態では、測定部20に電源ケーブル23を接続して電源を供給したが、電源ケーブル23の接続は必須ではなく、電源ケーブル23を用いない場合には測定部20にバッテリーを設ければよい。また、本実施の形態では、測定部20に通信ケーブル24を接続し、制御部151aが通信ケーブル24を介して測定部20の測定結果を取得して入出力装置161等に出力したが、通信ケーブル24の接続は必須ではなく、制御部151aが無線通信により測定部20の測定結果を取得してもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、被試験物Xを水に浸漬して防水試験を行ったが、被試験物Xを着色された液体や光に反応する液体(例えば、蛍光塗料を含有する液体)に浸漬してもよい。防水試験後に被試験物Xを分解する必要はあるが、浸水箇所の判定も1回の試験で行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態では、防水試験装置1が、CPU151、RAM152、ROM153、入出力I/F154、通信I/F155及びメディアI/F156を有したが、これらの構成は必須ではない。防水試験装置1が、CPU151、RAM152、ROM153、入出力I/F154、通信I/F155及びメディアI/F156を有しない場合には、手動で圧力調整部60を操作すればよい。
【0061】
また、本実施の形態では、圧力調整部60が加圧部50と減圧部55とを有したが、圧力調整部60は加圧部50及び減圧部55の少なくとも1方を有していればよい。
【0062】
<第2の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、測定部20で水槽30の重量を測定することで被試験物Xへの液体の浸入を検知したが、被試験物Xへの液体の浸入を検知する方法はこれに限られない。
【0063】
本発明の第2の実施の形態は、被試験物Xの重量を直接測定する形態である。以下、第2の実施の形態に係る防水試験装置2について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
図7は、防水試験装置2の概略を示す正面図である。図7では、要部を透視しており、また、一部の構成の図示を省略している。なお、図7の上下方向が鉛直方向であり、図7の左右方向が水平方向である。
【0065】
防水試験装置2は、耐圧容器10と、棒状部材15Aと、測定部25と、水槽30と、圧力計40(図7では図示省略)と、圧力調整部60(図7では図示省略)を有する。
【0066】
棒状部材15Aは、耐圧容器10の上面に設けられた棒状の部材である。棒状部材15Aは、回転可能、かつ、上下方向に移動可能に設けられている。棒状部材15Aの下端には、金具16が設けられている。
【0067】
棒状部材15Aは2本の棒状部材15a、15bを有し、2本の棒状部材15a、15bの間に測定部25が設けられている。
【0068】
測定部25は、被試験物Xの重量を測定するためのものであり、例えばロードセルである。測定部25は、被試験物Xの重量及びその変化を連続して測定可能である。
【0069】
測定部25に設けられたケーブルは、蓋部12に設けられた孔(図示省略)を介して耐圧容器10の外部に引き出される。孔は密閉部材(図示省略)により密閉される。
【0070】
図8は、防水試験装置2の電気的な構成を示すブロック図である。防水試験装置2は、CPU(Central Processing Unit)151と、RAM(Random Access Memory)152と、ROM(Read Only Memory)153と、入出力インターフェース(I/F)154と、通信インターフェース(I/F)155と、メディアインターフェース(I/F)156とを有し、これらは測定部25、圧力計40、圧力調整部60等と互いに接続されている。
【0071】
CPU151は、防水試験装置1の各部を制御する制御部151aの機能を有し、測定部25、圧力計40、圧力調整部60等を制御する。
【0072】
図8に示す防水試験装置2の構成は、本実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、例えば一般的な情報処理装置が備える構成を排除するものではない。防水試験装置2の構成要素は、処理内容に応じてさらに多くの構成要素に分類されてもよいし、1つの構成要素が複数の構成要素の処理を実行してもよい。
【0073】
次に、防水試験装置2を用いて行う防水試験について説明する。図9は、防水試験装置2を用いて防水試験を行う様子を模式的に示す図であり、(A)は試験開始時の様子を示し、(B)は被試験物Xに液体が浸入した状態を示す。
【0074】
まず、耐圧容器10の内部に液体が貯留された水槽30を設ける。具体的には、耐圧容器10の蓋部12を外し、底面11a(ここでは、底面11aに載置された台19)に水Lが貯留された水槽30を載置する。そして、蓋部12に設けられた棒状部材15の下端に金具16を介して被試験物Xを取り付け、被試験物Xを液体に浸漬させる。
【0075】
制御部151aは、耐圧容器10の内部を加圧又は減圧して、測定部25で重量を測定する。耐圧容器10の内部を加圧する場合には、加圧の前に、棒状部材15Aを回転、上下動等させて被試験物Xに付着した気泡を除去する。耐圧容器10の内部を減圧する場合には、減圧に伴い被試験物Xに付着した気泡が除去されるため、棒状部材15を回転、上下動等させる必要はない。
【0076】
被試験物Xは棒状部材15Aを介して耐圧容器10に設けられているため、被試験物Xに液体が浸入すると、測定部25で測定される重量が増加する。したがって、測定部25で測定された重量変化に基づいて、被試験物Xへの液体の浸入の有無を検知することができる。そのため、防水試験後に被試験物Xの分解等により液体の浸入の有無を確認する必要が無い。また、測定部25で連続して重量を測定し、当該測定結果を表示部22で連続して表示することで、どの時点で被試験物Xへの液体の浸入が発生したのかリアルタイムで検知することができる。
【0077】
図10は、防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に加圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に加圧する場合を示す。図11は、防水試験結果の一例を示す図であり、(A)は耐圧容器10の内部を連続的に減圧する場合を示し、(B)は耐圧容器10の内部を段階的に減圧する場合を示す。図10、11において、実線は耐圧容器10の内部圧力を示し、点線は測定部25における重量の測定結果を示す。
【0078】
制御部151aは、図10、11に示すような圧力変化となるように耐圧容器10の内部圧力を制御する。また、制御部151aは、測定部25での測定結果と、圧力計40での測定結果とを関連付けて出力する。結果の出力先は、第1の実施の形態と同様、例えば、入出力装置161(例えば、外部モニタ(図示省略))、記憶部(例えば、ROM153や記憶媒体163)である。
【0079】
本実施の形態では、測定部25を用いて被試験物Xの重量を測定するため、被試験物への浸水によって被試験物Xの重量が増加する。図10(A)、11(A)に示すように、耐圧容器10の内部を連続的に加圧又は減圧する場合には、最終的な加圧後又は減圧後の圧力における防水性能が確認可能である。また、図10(B)、11(B)に示すように、耐圧容器10の内部を段階的に加圧又は減圧する場合には、被試験物Xがどの程度の圧力に耐えられるか定量的な評価が可能となる。
【0080】
本実施の形態によれば、防水試験中に測定部25での測定結果を確認することで、被試験物内への浸水の有無を確認することができる。したがって、防水試験後に被試験物Xを分解する必要が無く、簡便な防水試験方法を提供することができる。
【0081】
また、本実施の形態によれば、測定部25を用いて直接被試験物Xの重量を測定するため、環境変化の影響を減らし、浸水の有無を正確に検知し、かつ、浸水量を正確に測定することができる。例えば、第1の実施の形態のように測定部20で水槽30及び水の重量を測定する場合には、測定部20が浸水による重量の変化に加えて、水の蒸発による重量の変化も測定してしまう。水の蒸発量は、耐圧容器10の温度、湿度、容積等の影響を受けるため一定ではなく、浸水の有無の判断を誤るおそれがある。それに対し、測定部25を用いて被試験物Xの重量を測定することで、浸水を正確に検知することができる。
【0082】
なお、本実施の形態では、測定部25としてロードセルを用いたが、測定部25の形態はこれに限られない。また、測定部25を棒状部材15aと棒状部材15bとの間に設けたが、測定部25を設ける位置はこれに限られない。例えば、蓋部12に載置した電子天秤で棒状部材15及び被試験物Xの重量を測定してもよい。
【0083】
また、本実施の形態では、減圧又は加圧しながら被試験物Xへの液体の浸入を検知したが、圧力調整部60が耐圧容器10の内部を調整する方法はこれに限られない。例えば、被試験物Xに、空気を通過させるが液体を通過させない通気弁が設けられている場合には、加圧時に弁を介して被試験物Xに液体が侵入しやすい。ただし、通気弁が設けられている場合であっても、減圧時に、弁と筐体との接合部等から被試験物Xに液体が侵入する可能性もある。したがって、圧力調整部60が耐圧容器10の内部を減圧した後に加圧し、その間、継続して測定部25で測定を行うようにしてもよい。この場合には、圧力調整部60は、図11(A)に示すように耐圧容器10の内部を連続的に減圧した後、図10(A)に示すように耐圧容器10の内部を連続的に加圧してもよいし、図11(B)に示すように耐圧容器10の内部を段階的に減圧した後、図10(B)に示すように耐圧容器10の内部を段階的に加圧してもよい。そして、圧力調整部60は、減圧後の加圧時に、大気圧に戻すまで加圧してもよいし、大気圧より高い任意の圧力となるまで加圧してもよい。
【0084】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0085】
本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略立方体形状とは、厳密に立方体形状の場合に限られない。また、例えば、単に鉛直、一致等と表現する場合において、厳密に鉛直、一致等の場合のみでなく、略鉛直、略一致等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0086】
1、2 :防水試験装置
10 :耐圧容器
11 :本体部
11a :底面
11b :側面
11c、11d:引き出し部
11e :空気供給口
11f :空気排出口
12 :蓋部
12a :凸部
13 :トグルクランプ
15、15A:棒状部材
16 :金具
19 :台
20、25:測定部
21 :載置部
22 :表示部
23 :電源ケーブル
24 :通信ケーブル
30 :水槽
40 :圧力計
50 :加圧部
51 :エアコンプレッサ
52 :レギュレータ
55 :減圧部
60 :圧力調整部
151 :CPU
151a :制御部
152 :RAM
153 :ROM
154 :入出力インターフェース
155 :通信インターフェース
156 :メディアインターフェース
161 :入出力装置
162 :ネットワーク
163 :記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11