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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/12 20060101AFI20240424BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20240424BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20240424BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C25D7/12
C25D17/06 C
H01L21/02 B
H01L21/288 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021027290
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128843
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健之
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0195352(US,A1)
【文献】米国特許第06612915(US,B1)
【文献】国際公開第2015/145688(WO,A1)
【文献】特開2011-071432(JP,A)
【文献】特開2012-238793(JP,A)
【文献】特開2016-192450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00
C25D 7/12
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する内側部と、前記内側部を囲み、前記第1面に対して垂直な方向において前記第1面よりも突出した環状の外縁部と、を含む基板の前記外縁部に、前記基板を挟持する治具の導電部材を接触させずに、前記基板の前記内側部の前記第1面の一部に前記導電部材を接触させて前記内側部に電流を流し、電解めっき法により前記内側部の前記第1面に金属膜を形成するめっき工程を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記めっき工程の前に前記内側部の前記第1面にのみ導電層を形成する電極形成工程をさらに備え、
前記めっき工程は、前記導電層の一部に前記導電部材を接触させて前記導電層に電流を流す請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記めっき工程の後に、前記導電部材が接触した前記内側部の前記第1面の前記一部の位置において、前記基板をカットすることで、前記外縁部を除去するカット工程をさらに備えた請求項またはに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の裏面を研削する際に、機械的強度の低下を抑制するために裏面の外周を研削せずに、内側部分のみを研削する方法がある。また、このような半導体基板の裏面に、治具を用いて電解めっき法により金属膜を形成する方法がある。このような半導体装置の製造方法において、基板割れ又はチッピングなどの製造工程における不良を抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5367930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、製造工程における不良を抑制できる半導体装置製造用治具及び半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、基板に電解めっきを行うための半導体装置製造用治具は、導電部材を含む。前記基板は、第1面を有する内側部と、前記内側部を囲み、前記第1面に対して垂直な方向において前記第1面よりも突出した環状の外縁部と、を含む。前記導電部材は、前記外縁部に接触せずに前記内側部の前記第1面の一部に接触して前記内側部に電流を流す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置製造用治具の導電部材を例示する模式的斜視図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具の導電部材を例示する模式的平面図及び模式的断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具のカバー部材を例示する模式的斜視図及び模式的断面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具を用いた電解めっきの処理対象の基板を例示する模式的斜視図及び模式的断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具を用いためっき工程を例示する模式的平面図及び模式的断面図である。
図6】実施形態に係る半導体装置製造用治具の一部を例示する模式的断面図である。
図7図7(a)~図7(h)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順の模式的断面図である。
図8】実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図10】参考例に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図11図11(a)~図11(g)は、実施形態に係る半導体装置の別の製造方法を例示する工程順の模式的断面図である。
図12図12(a)及び図12(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る半導体装置製造用治具の導電部材を例示する模式的斜視図である。図2(a)及び図2(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具の導電部材を例示する模式的平面図及び模式的断面図である。
半導体装置製造用治具100は、半導体装置の製造において、半導体基板に電解めっきを行い、基板上に金属膜を形成するための治具である。半導体装置製造用治具100は、図1等に表した導電部材10を含む。後述するように、半導体装置製造用治具100は、めっき工程(図5(b)参照)において、導電部材10とカバー部材20とによって、基板30を挟持し、基板30に電流を流すものである。
【0009】
図2(a)は、導電部材10を、図1に表した矢印A1に沿って見た平面図である。図2(b)は、図2(a)のA-A線断面である。
【0010】
導電部材10は、環状の部材である。より具体的には、導電部材10は、図1に示した方向D10から見たときに、環状の第1部分11を含む。さらに、導電部材10は、第1部分11の上に設けられた第2部分12及び第3部分13を含む。第2部分12及び第3部分13は、第1部分11から方向D10に突出した凸部である。第2部分12は、第1部分11の内周に沿って設けられている。第3部分13は、第1部分11の外周に沿って設けられている。第2部分12の平面形状及び第3部分の平面形状は、環状である。第3部分13は、第2部分12の外周を囲むように設けられており、方向D10と垂直な方向D11において第2部分12から離れている。
【0011】
第2部分12の方向D10における先端は、めっき工程において処理対象の基板に接触するコンタクト部12cとなる。コンタクト部12cは、第2部分12に対して方向D10に突出しており、第2部分12の外周に沿って設けられている。コンタクト部12cは、一定の高さと幅を有し、第2部分12の全周にわたって連続する環状である。めっき工程においては、コンタクト部12cを介して、導電部材10から処理対象の基板に電流が流される。図2(b)に表したように、第2部分12の先端において、第2部分12の幅は、狭くなっていても良い。
【0012】
この例では、第3部分13の方向D10における端面には、溝13gが設けられている。溝13gは、第3部分13の全周にわたって連続する。後述するように溝13gは、導電部材10とカバー部材20とを係合させるために設けられている。ただし、実施形態において、溝13gは必ずしも設けられなくてもよい。
【0013】
導電部材10(第1部分11、第2部分12及び第3部分13のそれぞれ)は、例えば、金属により形成される。導電部材10は、例えば鉄、クロム、ニッケル、銅、及びアルミニウムの少なくともいずれかを含む。導電部材10は、例えばステンレス鋼を含んでも良い。第1部分11、第2部分12及び第3部分は、例えば、一体的に成形された金属部材である。
【0014】
図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具のカバー部材を例示する模式的斜視図及び模式的断面図である。
図3(b)は、図3(a)のB-B線断面である。図3(a)及び図3(b)に表したようにカバー部材20は、環状部21と、凸部22と、を含む。
【0015】
環状部21は、方向D20から見たときに環状である。凸部22は、環状部21から方向D20に突出した凸部である。凸部22は、環状部21の全周にわたって連続する環状である。凸部22は、導電部材10の溝13gに対応して設けられている。ただし、実施形態において、凸部22は、必ずしも設けられなくてもよい。カバー部材20の材料には、例えば樹脂などの絶縁体が用いられる。
【0016】
図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具を用いた電解めっきの処理対象の基板を例示する模式的斜視図及び模式的断面図である。
図4(b)は、図4(a)のC-C線断面である。めっき工程の処理対象である基板30は、表面30a(図4(b)において下面)と、裏面30b(図4(b)において上面)と、を有する。裏面30bは、表面30aとは反対側の面である。
【0017】
表面30a側には、半導体素子の一部が形成されている。図4(b)の例では、表面30a上に、半導体素子の一部である半導体パターン35が設けられている。基板30に設けられている半導体素子は、例えば、縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、半導体パターン35は、MOSFETのソース電極またはゲート電極である。半導体パターン35は、半導体素子の保護層を含んでも良い。ただし、実施形態において、基板30に設けられる半導体素子は、必ずしもMOSFETに限らず、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはダイオードなど、任意の半導体素子でよい。
【0018】
表面30aは、例えば平面である。一方、裏面30bは、表面30aよりも大きな凹凸を有する面である。具体的には、基板30は、凹部である内側部31(メンブレン)と、凸部である外縁部32(リム)と、を含む。図4(b)に表したように、内側部31は、方向D30に対して垂直な第1面31fを有する。内側部31は、方向D30から見たときに円形である。外縁部32は、内側部31の周りに設けられている。
【0019】
外縁部32は、内側部31の外周を囲むように設けられた環状である。外縁部32は、方向D30において第1面31fよりも突出している。外縁部32の厚さT32(方向D30に沿った長さ)は、内側部31の厚さT31よりも厚い。
【0020】
言い換えれば、裏面30bは、外縁部32の表面である凸領域30pと、内側部31の表面である凹領域30qと、を有する。また、裏面30bの凸領域30pと凹領域30qとの間には、斜面30sが設けられている。斜面30sは、凸領域30pと凹領域30qとを接続する。例えば、凸領域30pおよび凹領域30qは、方向D30に対して垂直であり、斜面30sは、凸領域30pおよび凹領域30qに対して傾いている。このようにして、内側部31と外縁部32との間に段差(高低差)が形成されている。なお、斜面30sは、凸領域30pに対して略垂直な側面でもよい。
【0021】
図4(b)に表したように、内側部31は、半導体部34と、半導体部34の上に設けられた導電層33と、を含む。第1面31fは、導電層33の表面である。導電層33は、内側部31にのみ設けられており、外縁部32及び斜面30sから離れている。導電層33は、例えば、内側部31の略全体に設けられている。導電層33は、内側部31の外側の端部(斜面30sとの境界部分)には設けられなくてもよい。導電層33は、例えば、めっき工程におけるシード層である。
【0022】
半導体部34及び外縁部32は、例えば半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。例えば、半導体材料にn形不純物およびp形不純物をイオン注入することで、MOSFETなどの半導体素子が形成される。n形不純物としては、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物として、ボロンを用いることができる。半導体素子のゲート電極は、例えば、不純物がドープされたポリシリコンなどの導電材料を含む。半導体素子のソース電極は、例えば、アルミニウム、銅、銀、チタン、またはタングステンなどの金属を含む。半導体素子の保護層は、例えばポリイミドなどの絶縁材料を含む。導電層33は、例えばチタン、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、及びタングステンの少なくともいずれかを含む。
【0023】
図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る半導体装置製造用治具を用いためっき工程を例示する模式的平面図及び模式的断面図である。
図5(a)は、図5(b)に表した半導体装置製造用治具100及び基板30を矢印A2に沿って見た平面図である。図5(b)は、図5(a)に示すD-D線断面に対応する。
図5(a)及び図5(b)に表したように、めっき工程においては、基板30は、導電部材10とカバー部材20とによって挟持される。
【0024】
図6は、実施形態に係る半導体装置製造用治具の一部を例示する模式的断面図である。 図6は、図5(a)に示すE-E線断面を表す。
図6に表したように、めっき工程においては、カバー部材20の凸部22を、導電部材10の溝13gに挿入することで、導電部材10とカバー部材20とを係合する。凸部22と溝13gとによって、導電部材10とカバー部材20との相対的位置が規定される。また、基板30の内側部31が、コンタクト部12cと、カバー部材20(環状部21)と、によって支持される。図6のように、溝13gと凸部22とが係合して基板30を挟持しているときに、基板30の外縁部32は、第2部分12と第3部分13との間に配置された状態である。
【0025】
より具体的には、導電層33は、コンタクト部12cと接する外周部33aと、外周部33aに囲まれた中央部33bと、を含む。外周部33aは、導電層33の端部を含み、中央部33bを囲む環状である。言い換えれば、コンタクト部12cは、導電層33の外周部33aに接触する環状である。めっき工程において、コンタクト部12cは、導電層33の外周部33aの表面(すなわち第1面31fの一部)に接触して、導電層33に電流を流す。
【0026】
めっき工程において、導電部材10のうちコンタクト部12cのみが基板30に接触する。導電部材10は、外縁部32(斜面30s及び凸領域30p)には、接触しない。
【0027】
基板30の表面30a上には、保護テープ43が貼り付けられる。カバー部材20は、保護テープ43に接し、保護テープ43を介して基板30の表面30a側を支持する。カバー部材20(環状部21)は、コンタクト部12cと、方向D30において重なって基板30の内側部31を挟持する。
【0028】
第2部分12の幅W12(方向D30に対して垂直な方向D31における長さ)は、例えば、1.0mm以上3.0mm以下である。第2部分12と第3部分13との間の方向D31における長さW14は、外縁部32の幅W32(方向D31に沿った長さ)よりも長い。長さW14は、例えば2.5mm以上4.5mm以下である。第2部分12の高さH12(第1部分11から突出した長さ)は、外縁部32の厚さと内側部31の厚さとの差H32よりも長い。高さH12は、例えば0.7mm以上1.0mm以下である。第2部分12の高さと第3部分13の高さとの差H14は、内側部31の厚さと保護テープ43の厚さとの和と略同じである。
【0029】
導電部材10の内径10D(図2(a)参照)は、基板30の外径30D(図4(a)参照)よりも小さい。導電部材10の第3部分13の内径13D(図2(a)参照)は、基板30の外径30Dよりも大きい。導電部材10の第2部分の外径12D(図2(a)参照)は、外縁部32の内径32D(図4(a)参照)よりも小さい。第2部分12の外径12Dは、内側部31の外径31D(図4(a)参照)よりも小さい。カバー部材20の外径20Dは、基板30の外径30Dよりも大きい。カバー部材20の内径21D(図3(b)参照)は、外縁部32の内径32Dよりも小さい。
【0030】
導電部材10とカバー部材20とは、基板30を挟持した状態で、例えば樹脂製のクリップ44で挟まれて固定される。
【0031】
導電部材10とカバー部材20とに挟持された基板30は、図5(b)に表したように、めっき液41の中に、アノード電極42と共に浸される。アノード電極42と基板30の裏面30bとが、めっき液41を介して対向するように配置される。そして、導電部材10とアノード電極42との間に電圧を印加すると、コンタクト部12cを介して内側部31の導電層33に電流が流れる。これにより、図6に表したように、導電層33の中央部33b上に金属膜50が形成される。めっき工程において、金属膜50は、内側部31の第1面31fに形成される。めっき工程において、導電層33は、例えば、カソード電極として機能する。金属膜50は、例えば、銀、銅、ニッケル、及びスズの少なくともいずれかを含む。
【0032】
図7(a)~図7(h)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する工程順の模式的断面図である。
図7(a)に表したように、半導体パターン35が形成された基板30の表面30aに裏面研削用テープ61を貼り付ける。
【0033】
図7(b)に表したように、基板30の裏面側の中央部分(基板30の外周部を除く部分)を研削して薄くし、裏面側にウェットエッチングを行う(薄化工程)。これにより、外縁部32が形成される。裏面側のウェットエッチングにより、研削で生じた破砕層が除去される。
【0034】
図7(c)に表したように、裏面研削用テープ61を剥離する。その後、裏面側の薄化工程によって薄くなった中央部分(基板30の裏面側の外周部を除くほぼ全面)に、例えばスパッタによって導電層33を形成する(電極形成工程)。これにより、基板30の内側部31が形成される。この電極形成工程においては、図6に示した凸領域30pや斜面30sには、導電層33を形成しなくてよい。
【0035】
図7(d)に表したように、基板30の導電層33上に、金属膜50を形成する(めっき工程)。めっき工程には、図5(a)、図5(b)及び図6に関して説明した方法が用いられる。
【0036】
図7(e)に表したように、表面30a側にダイシングテープ62を貼り付ける(テープ貼付工程)。
図7(f)に表したように、ダイシングブレードを用いて、基板30の外縁部32を含む外周部を除去する(カット工程)。
【0037】
図7(g)に表したように、裏面30b側において、金属膜50にテープ63を貼り付け、ダイシングテープ62を剥離する(テープ転写工程)。
図7(h)に表したように、基板30をダイシングして個片化する(ダイシング工程)。これにより、半導体装置200が形成される。
【0038】
図8は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図8は、図7(c)に関して説明した電極形成工程を表す。電極形成工程には、例えばエッジクランプタイプのスパッタ装置を用いることができる。スパッタ装置のクランプ65は、外縁部32に接し、外縁部32及び斜面30sを覆う。この状態で、基板30の裏面30b側にスパッタを行う。これにより、内側部31にのみ導電層33が形成される。
【0039】
図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図9(a)及び図9(b)は、図7(f)に関して説明したカット工程を表す。図9(b)は、図9(a)に示したカット位置P1近傍を拡大して示す。カット工程においては、チャックテーブル70上に載せた基板30を、ダイシングブレード71により、カット位置P1において、厚み方向にカットする。
【0040】
方向D30に対して垂直な平面内において、カット位置P1は、めっき工程において導電部材10のコンタクト部12cが接触した内側部31の一部(すなわち外周部33a)の位置である。方向D30に沿ってみたときに、カット位置P1は円状である。
【0041】
実施形態の効果について説明する。
図10は、参考例に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図10は、メンブレン31rと、メンブレン31rを囲むリム32rと、を有する基板30rに電解めっきを行うめっき工程を示す。参考例においては、シード層となる導電層33rがメンブレン31r及びリム32rの上に形成されている。また、治具の導電性のコンタクト部12rは、リム32r上の導電層33rに接触している。めっき工程においては、治具のコンタクト部12rから、リム32r及びメンブレン31rに設けられた導電層33rに電流が流される。この場合、めっきによる金属膜50rは、メンブレン31rの上だけでなく、リム32r及びリム端部34r(リム32rのメンブレン31rとの境界)にも形成される。参考例においては、金属膜50rの応力がリム端部34rに集中して、基板が割れやすくなる恐れがある。
【0042】
これに対して、実施形態においては、図6に関して説明したように、導電部材10のコンタクト部12cは、内側部31の第1面31fの一部に接触して内側部に電流を流す。これにより、外縁部32及び外縁部32の端部(外縁部32の内側部31との境界)に、電流が流れることを抑制することができる。したがって、外縁部32及び外縁部32の端部に金属膜50が形成されることを抑制することができる。外縁部32の端部における金属膜50による応力集中を抑制できるため、基板割れを抑制することができる。
【0043】
めっき工程において、導電部材10は、外縁部32と接触しないようになっている。これにより、外縁部32及び外縁部32の端部に電流が流れて、外縁部32及び外縁部32の端部に金属膜50が形成されることが抑制される。
【0044】
導電層33は、内側部31にのみ設けられている。また、コンタクト部12cは、導電層33の外周部33aに接触する環状である。これにより、例えば、金属膜50は、導電層33の中央部33b上(導電層33の外周部33aを除く部分)にのみ形成され、外周部33a及びその外側に金属膜50が形成されることを抑制できる。すなわち、外縁部32及び外縁部32の端部に金属膜50が形成されることを抑制することができる。
【0045】
また、めっき工程において、カバー部材20は、方向D30においてコンタクト部12cと重なって基板30を挟持する。このようなカバー部材20と導電部材10とをクリップ44で挟み固定することによって、基板30を安定して支持し、コンタクト部12cと第1面31fとを密着させ、安定して金属膜50を形成することができる。
【0046】
また、図9(a)及び図9(b)に関して説明したように、カット工程におけるカット位置P1は、めっき工程においてコンタクト部12cが接触した内側部31の部分である。そのため、カット位置P1には、例えば金属膜50が形成されていないため、カットしやすい。例えば、金属膜をカットすることによりダイシングブレード71に目詰まりが生じることを抑制し、チッピングの発生を抑制することができる。
【0047】
例えば、基板30に設けられる半導体素子が、縦型MOSFETである場合、金属膜50は、ドレイン電極としての役割を有する。例えば、半導体装置がドレイン電極共通のMOSFETの場合、ドレイン電極(金属膜50)を介して、2つのMOSFET間に電流が流れる。このような場合、金属膜50を厚くすることが望ましい。これにより、ドレイン電極の抵抗を小さくして、半導体素子のオン抵抗を小さくすることができる。一方、金属膜50を厚くすると、金属膜50が基板30に加える応力が大きくなることがある。このような場合でも、実施形態によれば、外縁部32及び外縁部32の端部に金属膜50が形成されることを抑制することができるため、基板割れを抑制することができる。
【0048】
また、ダイシングブレードがカットする金属膜が厚くなると、ダイシングブレードの目詰まりが生じやすくなり、チッピングが発生しやすくなる恐れがある。これに対して、実施形態によれば、金属膜50を厚くしても、カット工程におけるカット位置P1には、例えば金属膜50が形成されていないため、チッピングを抑制することができる。
【0049】
例えば、基板30に設けられる半導体素子が、縦型MOSFETである場合、内側部31を薄くすることで、オン抵抗を小さくすることができる。一方、内側部31を薄くすると、基板の強度が低下する恐れがある。これに対して、実施形態によれば、上述したようにカット工程におけるチッピングを抑制することができるため、内側部31を薄くしやすい。
以上説明したように、実施形態によれば、基板割れ又はチッピングなどの製造工程における不良を抑制することができる。
【0050】
図11(a)~図11(g)は、実施形態に係る半導体装置の別の製造方法を例示する工程順の模式的断面図である。
図11(a)~図11(d)及び図11(g)は、それぞれ、図7(a)~図7(d)及び図7(h)に関する説明と同様である。
【0051】
この例では、図11(e)に表したように、裏面30b及び金属膜50にダイシングテープ64を貼り付ける(テープ貼付工程)。その後、図11(f)に表したように、基板30の外縁部32を含む外周部を除去する(カット工程)。
【0052】
図12(a)及び図12(b)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式的断面図である。
図12(a)及び図12(b)は、図11(f)に関して説明したカット工程を表す。図12(b)は、図12(a)に示したカット位置P2近傍を拡大して示す。なお、図12(a)では、導電層33の図示を省略している。カット工程においては、チャックテーブル73上に載せた基板30をダイシングブレード75により、カット位置P2において、厚み方向にカットする。
【0053】
図12(b)に表したように、チャックテーブル73の基板30が載置される載置部74には、内側部31と外縁部32との高低差に応じた段差が設けられている。載置部74は、外縁部32の下方に位置する領域74aと、内側部31の下方に位置する領域74bと、を有する。領域74bは領域74aより、内側部31に向かって突出している。
【0054】
方向D30に対して垂直な平面内において、カット位置P2は、めっき工程において導電部材10のコンタクト部12cが接触した内側部31の一部(すなわち外周部33a)の位置である。方向D30に沿ってみたときに、カット位置P2は円状である。
【0055】
このように、基板30の裏面30b側にダイシングテープを貼り付け、表面30a側から基板30をカットしてもよい。この場合には、図7(g)に関して説明したようなテープ転写工程が不要となる。
【0056】
一方、図9(b)に関して説明したように、基板30の表面30a側にダイシングテープを貼り付け、裏面30bから基板30をカットする場合には、内側部31と外縁部32との高低差の影響を抑制することができる。例えば、図9(b)に表したチャックテーブル70の基板30が載置される載置面72は、ほぼ平坦である。例えば、製造ばらつきによって内側部31と外縁部32との高低差が変化しても、基板30をカットしやすい。
【0057】
実施形態によれば、製造工程における不良を抑制できる半導体装置製造用治具及び半導体装置の製造方法が提供できる。
【0058】
本願明細書において、「垂直」は、厳密な垂直だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直であれば良い。
【0059】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置製造用治具に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0060】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0061】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置製造用治具及び半導体装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置製造用治具及び半導体装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0062】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10…導電部材
10D…内径
11…第1部分
12…第2部分
12D…外径
12c、12r…コンタクト部
13…第3部分
13D…内径
13g…溝
20…カバー部材
20D…外径
21…環状部
21D…内径
22…凸部
30…基板
30D…外径
30a…表面
30b…裏面
30p…凸領域
30q…凹領域
30r…基板
30s…斜面
31…内側部
31D…外径
31f…第1面
31r…メンブレン
32…外縁部
32D…内径
32r…リム
33、33r…導電層
33a…外周部
33b…中央部
34…半導体部
34r…リム端部
35…半導体パターン
41…めっき液
42…アノード電極
43…保護テープ
44…クリップ
50、50r…金属膜
61…裏面研削用テープ
62…ダイシングテープ
63…テープ
64…ダイシングテープ
65…クランプ
70…チャックテーブル
71…ダイシングブレード
72…載置面
73…チャックテーブル
74…載置部
75…ダイシングブレード
100…半導体装置製造用治具
200…半導体装置
P1、P2…カット位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12