(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】半導体パッケージ、および、半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240424BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20240424BHJP
H01L 23/04 20060101ALI20240424BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H01L23/06 B
H01L23/04 Z
H01L23/08 C
(21)【出願番号】P 2021074848
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 真悟
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-088024(JP,A)
【文献】特開2009-283898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02-23/10
H01L 21/50-21/52
H01L 33/48-33/64
B23K 1/00- 1/20
B23K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージであって、
第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面側及び前記第2面側に開口部が形成された枠形状の基体と、
半導体が配置される放熱体であって、前記基体よりも熱膨張係数が大きく、前記第1面側の開口部を塞ぎ、前記第1面側の開口部の全周に亘って接合される放熱体と、
前記第2面側の開口部を塞ぐように配置された蓋体と、
前記第2面側の開口部の全周を囲うように前記第2面上に配置され、前記第2面と前記蓋体とを接合する接合部材と、を備え、
前記基体は、内側に凹み部を有する第1基体部と、前記基体の内側に向かって突出する突出部を有する第2基体部と、を有し、
前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第1基体部の断面を含む断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように
、前記積層方向に切断した
前記第2基体部の断面を含む断面を第2断面としたときに、
前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、
前記接合部材によって前記第2面と前記蓋体とが接合されている状態において、前記第1断面における前記接合部材の断面積は、前記第2断面における前記接合部材の断面積よりも大きい、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項2】
半導体パッケージであって、
第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面側及び前記第2面側に開口部が形成された枠形状の基体と、
半導体が配置される放熱体であって、前記基体よりも熱膨張係数が大きく、前記第1面側の開口部を塞ぎ、前記第1面側の開口部の全周に亘って接合される放熱体と、
前記第2面側の開口部を塞ぐように配置された蓋体と、
前記第2面側の開口部の全周を囲うように前記第2面上に配置され、前記第2面と前記蓋体とを接合する接合部材と、を備え、
前記基体は、内側に凹み部を有する第1基体部と、前記基体の内側に向かって突出する突出部を有する第2基体部と、を有し、
前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第1基体部の断面を含む断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第2基体部の断面を含む断面を第2断面としたときに、
前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、
前記接合部材によって前記第2面と前記蓋体とが接合されている状態において、前記第1断面における前記接合部材の最大厚みが、前記第2断面における前記接合部材の最大厚みよりも大きい、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体パッケージであって、
前記接合部材は、前記基体のうち、前記断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の厚みが、前記基体の他の位置と接する部分の厚みよりも大きい、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の半導体パッケージであって
、
前記第1基体部と前記第2基体部とは、一対の壁部を構成しており、
前記接合部材は、前記一対の壁部のうち、前記断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部において、前記一方の壁部の中央に向かって厚みが大きくなる、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体パッケージであって、
前記接合部材は、金と錫を含む、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項6】
半導体パッケージの製造方法であって、
第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、枠形状の基体における前記第1面側の開口部と、前記基体より熱膨張係数が大きい放熱体とを接合する放熱体接合工程と、
前記放熱体接合工程の後に、接合部材を用いて、前記第2面側の開口部と蓋体とを接合する蓋体接合工程と、を備え、
内側に凹み部を有する第1基体部と、前記基体の内側に向かって突出する突出部を有する第2基体部と、を有する前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第1基体部の断面を含む断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第2基体部の断面を含む断面を第2断面としたときに、
前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく
、
前記蓋体接合工程では、前記接合部材のうちの第2接合部を用いて前記第2基体部と前記蓋体とを接合し、前記第2接合部より最大厚みが大きい第1接合部を用いて前記第1基体部と前記蓋体とを接合する、
ことを特徴とする、半導体パッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体パッケージの製造方法であって、
前記蓋体接合工程は、
前記接合部材を前記蓋体に接合する第1工程と、
前記蓋体に接合された前記接合部材と前記基体とを接合する第2工程と、を備え、
前記第1基体部と前記第2基体部とは、一対の壁部を構成しており、
前記第1工程では、前記接合部材は、前記基体の一対の壁部のうち、前記断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部に対向する部分が、前記一方の壁部に向かって突出するように、前記蓋体に接合される、
ことを特徴とする、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ、および、半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体の熱を外部に放出する放熱体を備える半導体パッケージが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-6456号公報
【文献】特開平5-218225公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミック製の枠形状の基体と、基体が有する一対の面のそれぞれに形成される開口部のうちの一方の開口部に接合される放熱体と、他方の開口部に接合される蓋体と、を備える半導体パッケージを製造するとき、基体に放熱体を接合したのち、放熱体とともに基体を加熱して蓋体と基体とを接合する。しかしながら、蓋体と基体とを接合するとき、熱膨張係数が基体より大きい放熱体は、基体に接合されていない側の面が変形するため、放熱体の変形によって基体が変形する。基体が変形すると基体と蓋体との間の隙間が大きくなる場合があり、蓋体と基体との接合が不十分になるおそれがある。
【0005】
本発明は、半導体パッケージにおいて、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体パッケージが提供される。この半導体パッケージは、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面側及び前記第2面側に開口部が形成された枠形状の基体と、半導体が配置される放熱体であって、前記基体よりも熱膨張係数が大きく、前記第1面側の開口部を塞ぎ、前記第1面側の開口部の全周に亘って接合される放熱体と、前記第2面側の開口部を塞ぐように配置された蓋体と、前記第2面側の開口部の全周を囲うように前記第2面上に配置され、前記第2面と前記蓋体とを接合する接合部材と、を備え、前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第2断面としたときに、前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、前記第1断面における前記接合部材の断面積は、前記第2断面における前記接合部材の断面積よりも大きい。
【0008】
この構成によれば、基体と放熱体と蓋体とを積層方向に切断した第1断面と、第1断面と異なる位置の第2断面とでは、第1断面における基体の断面二次極モーメントは、第2断面における基体の断面二次極モーメントより小さく、第1断面における接合部材の断面
積は、第2断面における接合部材の断面積よりも大きい。半導体パッケージを製造するとき、放熱体は、基体の第1面側の開口部に接合される面とは反対側の面が基体の熱膨張と放熱体の熱膨張との差によって外側に突出するように変形するため、放熱体に反りが生じやすい。上述の構成では、第1断面における基体の断面二次極モーメントが第2断面における基体の断面二次極モーメントより小さいため、第1断面の部分は、第2断面の部分に比べ、放熱体の反りを起因とする変形が発生しやすい。これにより、基体の第1断面の部分では、第2断面の部分に比べて蓋体との間に隙間が形成されやすい。上述の構成では、蓋体と基体とを接合する接合部材について、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合する接合部材の断面積を基体の第2断面の部分と蓋体とを接合する接合部材の断面積に比べ大きい。これにより、基体の第1断面の部分が第2断面の部分に比べて大きく変形しても、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合することができるため、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の半導体パッケージにおいて、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、前記第1面側及び前記第2面側に開口部が形成された枠形状の基体と、半導体が配置される放熱体であって、前記基体よりも熱膨張係数が大きく、前記第1面側の開口部を塞ぎ、前記第1面側の開口部の全周に亘って接合される放熱体と、前記第2面側の開口部を塞ぐように配置された蓋体と、前記第2面側の開口部の全周を囲うように前記第2面上に配置され、前記第2面と前記蓋体とを接合する接合部材と、を備え、前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第2断面としたときに、前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、前記第1断面における前記接合部材の最大厚みが、前記第2断面における前記接合部材の最大厚みよりも大きくてもよい。この構成によれば、基体と放熱体と蓋体とを積層方向に切断した第1断面と、第1断面と異なる位置の第2断面とでは、第1断面における基体の断面二次極モーメントは、第2断面における基体の断面二次極モーメントより小さく、第1断面における接合部材の最大厚みが、第2断面における接合部材の最大厚みよりも大きい。半導体パッケージを製造するとき、基体の第1断面の部分では、第2断面の部分に比べて蓋体との間に隙間が形成されやすい。上述の構成では、蓋体と基体とを接合する接合部材について、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合する接合部材の最大厚みを基体の第2断面の部分と蓋体とを接合する接合部材の最大厚みに比べ大きい。これにより、基体の第1断面の部分が第2断面の部分に比べて大きく変形しても、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合することができるため、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(3)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記接合部材は、前記基体のうち、前記断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の厚みが、前記基体の他の位置と接する部分の厚みよりも大きくてもよい。この構成によれば、接合部材は、基体のうち、断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の厚みが、基体の他の位置と接する部分の厚みよりも大きい。これにより、基体で最も変形しやすい部分と蓋体とを接合する接合部材の厚みを基体の他の位置と蓋体とを接合する接合部材の部分の厚みより大きくすることで、基体と蓋体とを確実にすることができる。したがって、基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0011】
(4)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記基体は、前記第1断面を有する第1基体部と、前記第2断面を有する第2基体部と、を有しており、前記第1基体部と前記第2基体部とは、一対の壁部を構成しており、前記接合部材は、前記一対の壁部のうち、前記断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部において、前記一方の壁部の中央に
向かって厚みが大きくてもよい。この構成によれば、基体は、一対の壁部を構成する、第1断面を有する第1基体部と、第2断面を有する第2基体部と、を有している。接合部材は、この一対の壁部のうち、断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部において、一方の壁部の中央に向かって厚みが大きくなるように形成されている。一対の壁部において、断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部では、基体の変形によって壁部の中央の部分と蓋体との間に比較的大きな隙間が形成されやすいため、接合部材の厚みを一方の壁部の中央に向かって大きくすることで、一方の壁部の中央の部分と蓋体とを接合することができる。これにより、基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0012】
(5)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記接合部材は、金と錫を含んでもよい。この構成によれば、接合部材は、金と錫とを含んでいる。これにより、基体と蓋体との接合強度を向上することができる。
【0013】
(6)本発明の別の形態によれば、半導体パッケージの製造方法が提供される。この半導体パッケージの製造方法は、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面と、を有し、枠形状の基体における前記第1面側の開口部と、前記基体より熱膨張係数が大きい放熱体とを接合する放熱体接合工程と、前記放熱体接合工程の後に、接合部材を用いて、前記第2面側の開口部と蓋体とを接合する蓋体接合工程と、を備え、前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第2断面としたときに、前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、前記基体は、前記第1断面を有する第1基体部と、前記第2断面を有する第2基体部と、を有しており、前記蓋体接合工程では、前記接合部材のうちの第2接合部を用いて前記第2基体部と前記蓋体とを接合し、前記第2接合部より最大厚みが大きい第1接合部を用いて前記第1基体部と前記蓋体とを接合する。この構成によれば、放熱体接合工程において、基体より熱膨張係数が大きい放熱体を基体の第1面側の開口部に接合し、蓋体接合工程において、接合部材を用いて、基体の第2面側の開口部に蓋体を接合する。基体では、第1基体部が有する第1断面における断面二次極モーメントより、第2基体部が有する第2断面における基体の断面二次極モーメントのほうが大きいため、蓋体接合工程では、第2基体部と蓋体とを接合する第2接合部より最大厚みが大きい第1接合部を用いて第1基体部と蓋体とを接合する。これにより、放熱体の反りによって基体の第1断面の部分が第2断面の部分に比べて大きく変形しても、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合できる。したがって、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0014】
(7)上記形態の半導体パッケージの製造方法において、前記蓋体接合工程は、前記接合部材を前記蓋体に接合する第1工程と、前記蓋体に接合された前記接合部材と前記基体とを接合する第2工程と、を備え、前記第1基体部と前記第2基体部とは、一対の壁部を構成しており、前記第1工程では、前記接合部材は、前記基体の一対の壁部のうち、前記断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部に対向する部分が、前記一方の壁部に向かって突出するように、前記蓋体に接合されてもよい。この構成によれば、蓋体接合工程において、蓋体に接合部材を接合したのち、蓋体に接合された接合部材を用いて、蓋体と基体とを接合する。この蓋体接合工程において、接合部材は、第1基体部と第2基体部とを有する一対の壁部のうちの断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部に対向する部分が、一方の壁部に向かって突出するように、蓋体に接合される。これにより、断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部において中央の部分が変形しても、一方の壁部と蓋体とを接合することができる。したがって、基体の変形による基体と蓋体との
接合強度の低下を抑制することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、基体と蓋体とを接合する接合部材、この接合部材の製造方法、半導体パッケージの製造装置、半導体パッケージの製造方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の半導体パッケージの上面図である。
【
図4】x軸に関する断面二次モーメントの算出方法を説明する図である。
【
図5】y軸に関する断面二次モーメントの算出方法を説明する図である。
【
図6】
図1の矢視方向Cから見た半導体パッケージの外観図である。
【
図7】アルミナと銅の熱膨張に関する比較を説明する図である。
【
図8】第2実施形態の半導体パッケージにおける第1の断面図である。
【
図9】第2実施形態の半導体パッケージにおける第2の断面図である。
【
図10】
図9の矢視方向Dから見た半導体パッケージの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の半導体パッケージ1の上面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。本実施形態の半導体パッケージ1は、基体10と、放熱体20と、蓋体30と、接合部材40と、を備える。半導体パッケージ1の内部には、半導体パッケージ1の外部の制御装置と電気的に接続される半導体5が収容される。半導体5は、例えば、発光波長が440~460nmのレーザダイオードであり、外部の制御装置によって発光が制御される。なお、半導体パッケージ1に収容される半導体5は、レーザダイオードに限定されず、例えば、パワーMOSFETやダイオードなどから構成されるパワーデバイスであってもよいし、他の機能を有する半導体を含んでもよい。また、半導体パッケージ1には、複数の半導体5が収容されていてもよい。半導体パッケージ1は、半導体5と外部の制御装置とに電気的に接続しつつ、放熱体20を介して半導体5で発生する熱を外部に放出する。なお、
図1から
図3のそれぞれにおいて、基体10と、放熱体20と、蓋体30との積層方向をy軸方向とし、
図1に示すA-A線に沿う方向をx軸方向とし、x軸とy軸とに直交する方向をz軸方向とする。
【0018】
基体10は、枠形状を有する部材である。本実施形態では、基体10は、アルミナから形成されており、y軸方向のマイナス側の第1面11と、第1面11の反対側の面である第2面12と、を有する。基体10では、第1面11側および第2面12のそれぞれに、開口部11a、12aが形成されている。本実施形態では、半導体パッケージ1の接合部材40を通るxz平面に沿った断面図である
図1に示すように、基体10は、4つの基体部13、14、15、16を備える。基体部13と基体部15、基体部13と基体部16、基体部14と基体部15、および、基体部14と基体部16のそれぞれは、xz平面内において、互いに略直交するように配置されている。これにより、基体部13と基体部15、基体部13と基体部16、基体部14と基体部15、および、基体部14と基体部16のそれぞれは、半導体パッケージ1における一対の壁部を構成する。なお、基体10は、AlN、SiCから形成されていてもよい。
【0019】
基体部13は、壁体部13aと、突出部13bと、を有する。壁体部13aは、基体10におけるx軸方向のマイナス側に配置されており、半導体パッケージ1の積層方向(y
軸方向)に垂直な断面形状が矩形形状となるように形成されている。壁体部13aは、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。突出部13bは、壁体部13aから基体10の内側に向かって突出している。突出部13bは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側における内側の角部が開口部11aの一部となる。
【0020】
基体部14は、壁体部14aと、突出部14bと、を有する。壁体部14aは、基体10におけるx軸方向のプラス側に配置されており、半導体パッケージ1の積層方向に垂直な断面形状が矩形形状となるように形成されている。壁体部14aは、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。突出部14bは、壁体部14aから基体10の内側に向かって突出している。突出部14bは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側の内側における角部が開口部11aの一部となる。
【0021】
基体部15は、基体10におけるz軸方向のマイナス側に配置されている。基体部15は、半導体パッケージ1の積層方向に垂直の断面形状が略矩形形状となるように形成されている。基体部15は、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。基体部15には、y軸方向のマイナス側であって基体10の内側に、凹み部15aが形成されている。凹み部15aは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側における内側の角部が開口部11aの一部となる。
【0022】
基体部16は、基体10におけるz軸方向のプラス側に配置されている。基体部16は、半導体パッケージ1の積層方向に垂直の断面形状が略矩形形状となるように形成されている。基体部16は、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。基体部16には、y軸方向のマイナス側であって基体10の内側に、凹み部16aが形成されている。凹み部16aは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側における内側の角部が開口部11aの一部となる。
【0023】
放熱体20は、基体10よりも熱膨張係数が大きい材料、例えば、銅(Cu)から形成されている矩形形状の平板であって、一対の主面21、22を有している。一対の主面21、22のうち、y軸方向のプラス側の一方の主面22には、半導体5が配置される。一方の主面22は、図示しないろう材を介して、基体10の第1面11に接合される(
図2および
図3参照)。これにより、放熱体20は、第1面11側の開口部11aを塞ぎ、第1面11側の開口部11aの全周に亘って基体10に接合される。本実施形態では、他方の主面21には、何も接合されない。放熱体20は、半導体5で発生する熱を外部に放出する。なお、放熱体20を形成する金属は、銅に限定されず、アルミニウム(Al)などであってもよく、基体10に比べ熱伝導性が優れている材料が望ましい。また、形状は平板状に限らず、一方の主面22の半導体5が配置される領域に段差や傾斜が設けられていてもよい。
【0024】
蓋体30は、例えば、透光性を有するガラスから形成されている。蓋体30は、基体10の第2面12に接合部材40を介して接合される。これにより、蓋体30は、基体10の第2面12側の開口部12aを塞ぐように配置され、基体10および放熱体20とともに、半導体5が収容される空間の気密を維持する。なお、本実施形態では、蓋体30を形成する材料は、透光性を有していればよく、ガラスに限定されず、サファイアであってもよい。また、形状は平板でなくてもよく、レンズ形状や表面に微小な凹凸が設けられていてもよい。
【0025】
接合部材40は、
図1に示すように、基体10の第2面12側の開口部12aの全周を囲うように、第2面12上に配置される。接合部材40は、基体10の第2面12と蓋体30とを接合する。本実施形態では、接合部材40は、3種類の金属膜を有する。3種類の金属膜のうち、基体10側の第1金属膜40aは、ニッケル(Ni)と金(Au)とから形成されている。蓋体30側の第2金属膜40bは、クロム(Cr)とニッケルと金とから形成されている。第1金属膜40aと第2金属膜40bとの間に配置される接合膜40cは、金錫はんだ(例えば、Au80wt%Sn)である。
【0026】
本実施形態では、接合部材40は、4つの接合部43、44、45、46から形成されている。接合部43は、基体部13と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜43aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜43bと、接合膜40cの一部の接合膜43cと、を有する(
図2参照)。接合部44は、基体部14と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜44aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜44bと、接合膜40cの一部の接合膜44cと、を有する(
図2参照)。接合部45は、基体部15と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜45aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜45bと、接合膜40cの一部の接合膜45cと、を有する(
図3参照)。接合部46は、基体部16と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜46aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜46bと、接合膜40cの一部の接合膜46cと、を有する(
図3参照)。接合部43と接合部44は、特許請求の範囲の「第2接合部」に相当する。接合部45と接合部46は、特許請求の範囲の「第1接合部」に相当する。
【0027】
次に、本実施形態の半導体パッケージ1の特徴を説明する。半導体パッケージ1において、
図1に示すような、基体10と、放熱体20と、蓋体30との積層方向視で、基体10の第2面12の内周12bと外周12cとを最短で結ぶ直線に沿うように、積層方向に切断した断面を第1断面および第2断面とする(
図1参照)。第1断面と第2断面とは異なる位置において切断した断面であり、例えば、
図1に示す直線L1に沿うように積層方向に切断した断面を第1断面とし、直線L2に沿うように積層方向に切断した断面を第2断面とする。半導体パッケージ1において、このように、第1断面と第2断面とを定義するとき、第1断面における基体10の断面二次極モーメントより、第2断面における基体10の断面二次極モーメントのほうが大きく、第1断面における接合部材40の断面積は、第2断面における接合部材40の断面積よりも大きい。本実施形態では、基体10が有する基体部13、14、15、16において、基体部13、14の断面(
図2に示す断面)が第2断面となり、基体部15、16の断面(
図3に示す断面)が第1断面となる。すなわち、半導体パッケージ1では、基体部15、16における断面二次極モーメントより、基体部13、14における断面二次極モーメントの方が大きく、基体部15、16における接合部材40の断面積S45、S46は、基体部13、14における接合部材40の断面積S43、S44よりも大きい。本実施形態では、接合部材40に含まれる接合膜43cの断面積と接合膜44cの断面積とのそれぞれが、接合膜45cの断面積と接合膜46cの断面積とのそれぞれより大きい。
【0028】
ここで、本実施形態における基体10の断面二次極モーメントの求め方について説明する。基体10の断面二次極モーメントIpは、以下の式(1)で表すことができる。
Ip=Ix+Iy ・・・(1)
ここで、Ixは、基体10におけるx軸に関する断面二次モーメントであり、Iyは、基体10におけるy軸に関する断面二次モーメントである。したがって、基体10の断面二次極モーメントは、式(1)の右辺に含まれる断面二次モーメントIx、Iyのそれぞれを計算することで求めることができる。
【0029】
図4は、x軸に関する断面二次モーメントIxの算出方法を説明する図である。
図4に
は、
図1に示す直線L2に沿うように、基体10の基体部13を積層方向に切断した断面が示されている。本実施形態において、
図4に示す基体部13の断面形状の図心Cg13をxy座標軸の原点として、x軸とy軸とを規定する。x軸に関する断面二次モーメントIxを求める場合、最初に、x軸方向に平行な複数の仮想線Lxa~Lxkを設定する。複数の仮想線Lxa~Lxkは、x軸方向に対して平行に設けられており、複数の仮想線Lxa~Lxkとx軸は、等間隔に配置されている。複数の仮想線Lxa~Lxkとx軸は、隣接する仮想線どうし、または、仮想線Lxeまたは仮想線Lxfとx軸とによって、基体部13の断面が全て含まれるように設定される。次に、2つの仮想線または1つの仮想線とx軸との間に挟まれる複数の領域(部分領域)のそれぞれにおいて、基体部13の断面と重なる部分の面積(部分面積)を算出する。具体的には、
図4に示すように、仮想線Lxdと仮想線Lxeとの間に挟まれる部分領域Axdeのうち、基体部13の断面と重なる部分(ドットでのハッチングで示す部分)の面積を部分面積Sx
13deとして算出する。本実施形態では、2つの仮想線または1つの仮想線とx軸との間に挟まれる部分領域と基体部13の断面とが重なる部分の面積は、隣接する2つの仮想線の間、または、x軸とx軸に隣接する1つの仮想線との間のそれぞれについて算出する。すなわち、
図4に示す基体部13では、11個の部分面積が算出される。
【0030】
次に、2つの仮想線または1つの仮想線とx軸との間に挟まれる部分領域のy座標の二乗と、該部分領域に含まれる部分面積との積を、部分領域ごとに算出する。具体的には、上述した部分領域Axdeについては、部分領域Axdeのy座標y13deの二乗と、算出した部分面積Sx13deとの積を算出する。このとき、部分領域Axdeのy座標y13deは、仮想線Lxeのy座標と仮想線Lxdのy座標との中間の座標とする。それぞれの部分領域について算出した部分領域のy座標の二乗と、該部分領域における部分面積との積を合計した値が、基体部13のx軸に関する断面二次モーメントIxとなる。
【0031】
図5は、y軸に関する断面二次モーメントIyの算出方法を説明する図である。
図5に示す基体部13の断面は、
図4に示す断面と同じ断面である。y軸に関する断面二次モーメントIyの算出方法では、
図5に示す基体部13の断面形状の図心Cg13をxy座標軸の原点とするy軸を規定し、y軸方向に平行な複数の仮想線Lya~Lygを設定する。複数の仮想線Lya~Lygは、y軸方向に対して平行に設けられており、複数の仮想線Lya~Lygとy軸は、等間隔に配置されている。複数の仮想線Lya~Lygとy軸は、隣接する仮想線どうし、または、仮想線Lycまたは仮想線Lydとy軸とによって、基体部13の断面が全て含まれるように設定される。
【0032】
次に、2つの仮想線または1つの仮想線とy軸との間に挟まれる部分領域のそれぞれにおいて、基体部13の断面と重なる部分の部分面積を算出する(例えば、仮想線Lybと仮想線Lycとの間に挟まれる部分領域Aybcのうち、ドットでのハッチングで示す部分の面積Sy
13bc)。
図5に示す基体部13では、7個の部分面積が算出される。
【0033】
次に、2つの仮想線または1つの仮想線とy軸との間に挟まれる部分領域のx座標の二乗と、該部分領域における部分面積との積を、それぞれの部分領域において算出する。例えば、部分領域Aybcのx座標x13bcの二乗と、算出した部分面積Sy13bcとの積を算出する。このとき、部分領域Aybcのx座標x13bcは、仮想線Lybのx座標と仮想線Lycのx座標との中間の座標とする。それぞれの部分領域について算出した部分領域のx座標の二乗と、該部分領域における部分面積との積を合計した値が、基体部13のy軸に関する断面二次モーメントIyとなる。
【0034】
最後に、それぞれ算出された基体部13のx軸に関する断面二次モーメントIxと、基体部13のy軸に関する断面二次モーメントIyとを式(1)にしたがって合計し、基体部13の断面二次極モーメントIpを算出する。ここでは、基体部13の断面二次極モー
メントIpを算出する方法を説明したが、他の基体部14、15、16についても同様である。
【0035】
本実施形態の半導体パッケージ1では、基体部15、16の断面二次極モーメントの大きさは、基体部13、14の断面二次極モーメントの大きさより小さく、基体10においても最も小さい。これにより、接合部材40は、基体10のうち、断面二次極モーメントが最も小さい基体部15、16と接する接合部45、46の断面積S45、S46が、基体10の基体部15、16とは他の位置の基体部13、14と接する接合部43、44の断面積S43、S44よりも大きい(
図2および
図3参照)。
【0036】
図6は、
図1の矢視方向Cから見た半導体パッケージ1の外観図である。本実施形態の半導体パッケージ1では、接合部材40は、基体部13と基体部15、基体部13と基体部16、基体部14と基体部15、または、基体部14と基体部16のそれぞれにおける一対の壁部のうち、断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部において、一方の壁部の中央に向かって厚みが大きくなる。具体的には、
図6に示すように、基体部16に接する接合部材40において、接合膜46cは、基体部16の中央C16に向かって断面積が大きくなっている。
図6では、基体部16について説明したが、基体部15も同様である。
【0037】
次に、半導体パッケージ1の製造方法について説明する。本実施形態では、最初に、基体10は、金型を用いて成型したセラミックからなるグリーンシートを焼成することで作製される。次に、作製した基体10の第1面11側の開口部11aに、銀ろうを用いて放熱体20を接合する(放熱体接合工程)。次に、基体10の第2面12に、ニッケル5μm/金2μmの湿式メッキを施したのち、基体10に接合された放熱体20の一方の主面22に、半導体5や図示しないレンズなどを接合する。
【0038】
次に、基体10の第2面12に、80wt%の金を含む金錫のプリフォームを載せる。このとき、基体部13と基体部14における第2面12上のプリフォームの厚みを20μmとし、基体部15と基体部16における第2面12上のプリフォームの厚みを40μmとする。なお、プリフォームの他に、ペーストの印刷や、湿式めっき、はんだボールなどによって、金と錫からなる金属層を形成してもよい。
【0039】
次に、蓋体30において、蓋体30を基体10上に載せるときにプリフォームと接触する部分に、クロム50nm/ニッケル200nm/金300nmの金属膜を蒸着によって形成する。最後に、基体10のプリフォーム上に、先ほど形成したクロム/ニッケル/金からなる金属膜が接触するように、蓋体30を載せて、窒素(N2)雰囲気において、300℃に加熱し、基体10の第2面12側の開口部12aと蓋体30とを接合する(蓋体接合工程)。これにより、厚みが20μmのプリフォームを含む部分が、接合部材40において相対的に断面積が小さい接合部43、44となり、厚みが40μmのプリフォームを含む部分が、接合部材40において相対的に断面積が大きい接合部45、46となる。
【0040】
本実施形態では、上述した方法によって、半導体パッケージ1を製造する。なお、上述の半導体パッケージ1の製造方法では、金錫のプリフォームを基体10に載せてから、基体10と蓋体30とを接合するとしたが、蓋体30に金錫のプリフォームを載せた(第1工程)のち、基体10と蓋体30とを接合(第2工程)してもよい。蓋体30に金錫のプリフォームを載せてから基体10と蓋体30とを接合する場合、蓋体30に載せられたプリフォームは、断面二次極モーメントが基体部13、14に比べて小さい基体部15、16に対向する部分が、基体部15、16のそれぞれに向かって突出するように、蓋体30に接合される。これにより、
図6に示すように変形する基体部15、16と、蓋体30とを接合することができる。
【0041】
図7は、アルミナと銅の熱膨張に関する比較を説明する図である。
図7には、基体10を形成するアルミナ(BA916)と、放熱体20を形成する銅とのそれぞれにおける熱膨張係数を示している。
図7に示すように、銅の熱膨張係数(1.68×10
-5)は、アルミナの熱膨張係数(7.60×10
-6)の約4.5倍になっている。これにより、アルミナと銅のそれぞれの外形を7mmとして、加熱によって温度を300℃上昇させた場合、アルミナは、熱膨張によって16.0μm大きくなるのに対し、銅は、熱膨張によって35.3μm大きくなる。このため、本実施形態の半導体パッケージ1のように、アルミナで形成されている基体10に、一方の主面22が接合されている放熱体20が銅から形成されている場合、接合部材40によって、放熱体20が接合されている基体10と、蓋体30とを接合するために、これらを加熱すると、放熱体20の他方の主面21が突出するように変形する。この放熱体20の変形によって基体10には、放熱体20の変形方向に応じた力が作用する。この放熱体20の変形方向に応じた力は、基体10全体に作用し、基体10が有する基体部13、14、15、16のうち、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16での変形が大きくなる。そこで、本実施形態では、接合部材40に含まれる接合膜43cの断面積と接合膜44cの断面積とのそれぞれを、接合膜45cの断面積と接合膜46cの断面積とのそれぞれより大きくすることで、基体10と蓋体30との間に隙間が形成されないようにして、基体10と蓋体30とを接合する。
【0042】
以上説明した、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、基体10と放熱体20と蓋体30とを積層方向に切断した基体部15、16の断面と、基体部13、14の断面とでは、基体部15、16の断面における基体10の断面二次極モーメントは、基体部13、14の断面における基体10の断面二次極モーメントより小さく、基体部15、16の断面における接合部材40の断面積S45、S46は、基体部13、14の断面における接合部材40の断面積S43、S44よりも大きい。半導体パッケージ1を製造するとき、放熱体20は、基体10の第1面11側の一方の主面22とは反対側の他方の主面21が基体10の熱膨張と放熱体20の熱膨張との差によって突出するように変形するため、放熱体20に反りが生じやすい。半導体パッケージ1では、基体部15、16の断面における基体10の断面二次極モーメントが基体部13、14の断面における基体の断面二次極モーメントより小さいため、基体部15、16は、基体部13、14に比べ、放熱体20の反りによって変形しやすい。このため、基体部15、16では、基体部13、14に比べて、蓋体30との間に隙間が形成されやすい。本実施形態の半導体パッケージ1では、基体部15、16と蓋体30とを接合する接合部材40の断面積S45、S46を、基体部13、14と蓋体30とを接合する接合部材40の断面積S43、S44に比べ大きい。これにより、基体部15、16が基体部13、14に比べて大きく変形しても、基体部15、16と蓋体30とを接合することができるため、放熱体20の反りを起因とする基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、接合部材40は、断面二次極モーメントが最も小さい基体部15、16と接する接合部45、46の厚みが、基体部13、14と接する接合部43、44の厚みよりも大きい。これにより、半導体パッケージ1の製造時に変形しやすい基体部15、16と蓋体30とを確実に接合できるため、基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、接合部材40では、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16のそれぞれに接する接合部45、46のそれぞれが、基体部15、16の中央に向かって厚みが大きくなるように形成されている。基体部15、16では、放熱体20の反りを起因とする変形によって、中央の部分と蓋体30との間に比較的大きな隙間が形成されやすいため、基体部15、16の中央に向かって厚みが大きくなる接合部材40を用いて、基体部15、16と蓋体30とを接合する。これ
により、基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、接合部45、46は、基体部15、16の中央に向かって厚みが大きくなるように形成されている。これにより、基体部15、16と蓋体30との間に形成される隙間を埋めることができるとともに、基体部15、16の変形を考慮して、接合部材40を過剰に厚くすることを抑制することができる。したがって、過剰な厚みによる接合部材40のはみ出しを防止することができる。
【0046】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、接合部材40は、金と錫を含んでいる。これにより、基体10と蓋体30との接合強度を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態の半導体パッケージの製造方法によれば、基体10より熱膨張係数が大きい放熱体20を基体10の第1面11側の開口部11aに接合したのち、接合部材40を用いて、基体10の第2面12側の開口部12aに蓋体30を接合する。基体10と蓋体30とを接合するとき、接合部材40のうちの接合部43、44を用いて基体部13、14と蓋体30とを接合し、接合部43、44より最大厚みが大きい接合部45、46を用いて基体部15、16と蓋体30とを接合する。これにより、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16が放熱体20の反りによって変形しても、基体部15、16と蓋体30とを接合できる。したがって、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の半導体パッケージの製造方法によれば、基体10と蓋体30とを接合するとき、蓋体30に接合部材40を接合したのち、蓋体30に接合された接合部材40を用いて、蓋体30と基体10とを接合する。このとき、接合部材40は、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16に対向する接合部45、46が、基体部15、16に向かって突出するように、蓋体30に接合される。これにより、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16において、放熱体20の反りによって中央の部分が変形しても、基体部15、16と蓋体30とを接合することができる。したがって、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0049】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の半導体パッケージ2の第1の断面図である。
図9は、第2実施形態の半導体パッケージ2の第2の断面図である。第2実施形態の半導体パッケージ2は、第1実施形態の半導体パッケージ1と比べて、接合部材の形状が異なる。
【0050】
本実施形態の半導体パッケージ2は、基体10と、放熱体20と、蓋体30と、接合部材50と、を備える。半導体パッケージ2には、半導体パッケージ2の外部の制御装置と電気的に接続される半導体5が配置される。
【0051】
接合部材50は、基体10と蓋体30との間に配置されており、基体10の第2面12側の開口部12aの全周を囲う。接合部材50は、基体10の第2面12と蓋体30とを接合する。接合部材50は、基体10側の第1金属膜40aと、蓋体30側の第2金属膜40bと、第1金属膜40aと第2金属膜40bとの間に配置される接合膜50cと、を有する。接合膜50cは、はんだ(例えば、Au80wt%Sn)から形成されている。
【0052】
本実施形態では、半導体パッケージ2において、第1実施形態と同様に、基体10と、放熱体20と、蓋体30との積層方向に切断した断面のうちの第1断面と第2断面とを定義するとき、第1断面における基体10の断面二次極モーメントより、第2断面における基体10の断面二次極モーメントのほうが大きく、第1断面における接合部材40の最大
厚みが、第2断面における接合部材40の最大厚みよりも大きい。具体的には、
図8に示すように、基体部13と蓋体30との間に配置される接合部53の最大厚みを最大厚みD53とし、基体部14と蓋体30との間に配置される接合部54の最大厚みを最大厚みD54とする。
図9に示すように、基体部15と蓋体30との間に配置される接合部55の最大厚みを最大厚みD55とし、基体部16と蓋体30との間に配置される接合部56の最大厚みを最大厚みD56とする。この場合、接合部55の最大厚みD55は、接合部53の最大厚みD53、および、接合部54の最大厚みD54より大きい。また、接合部56の最大厚みD56は、接合部53の最大厚みD53、および、接合部54の最大厚みD54より大きい。
【0053】
図10は、
図9の矢視方向Dから見た半導体パッケージ2の外観図である。本実施形態の半導体パッケージ2では、接合部材50は、基体部13と基体部15、基体部13と基体部16、基体部14と基体部15、または、基体部14と基体部16のそれぞれにおける一対の壁部のうち、断面二次極モーメントが相対的に小さい一方の壁部において、一方の壁部の中央に向かって厚みが大きくなる。具体的には、
図10に示すように、基体部16に接する接合部材50において、接合膜56cは、基体部16の中央C16に向かって厚みが大きくなっている。
図10では、基体部16について説明したが、基体部15も同様である。
【0054】
以上説明した、本実施形態の半導体パッケージ2によれば、基体10と放熱体20と蓋体30とを積層方向に切断した第1断面と、第1断面と異なる位置の第2断面とでは、第1断面における基体10の断面二次極モーメントは、第2断面における基体10の断面二次極モーメントより小さく、第1断面における接合部材50の最大厚みが、第2断面における接合部材50の最大厚みよりも大きい。半導体パッケージ2を製造するとき、基体10の基体部15、16では、基体部13、14に比べて蓋体30との間に隙間が形成されやすい。本実施形態の半導体パッケージ2では、蓋体30と基体10とを接合する接合部材50について、基体部15、16と蓋体30とを接合する接合部材50の最大厚みD55、D56を基体部13、14と蓋体30とを接合する接合部材50の最大厚みD53、D54に比べ大きい。これにより、基体部15、16が基体部13、14に比べて大きく変形しても、基体部15、16と蓋体30とを接合することができるため、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の半導体パッケージ2によれば、接合部材50では、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16のそれぞれに接する接合部55、56のそれぞれが、基体部15、16の中央に向かって厚みが大きくなるように形成されている。基体部15、16では、放熱体20の反りを起因とする変形によって、中央の部分と蓋体30との間に比較的大きな隙間が形成されやすいため、基体部15、16の中央に向かって厚みが大きくなる接合部材50を用いて、基体部15、16と蓋体30とを接合する。これにより、基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態の半導体パッケージ2によれば、接合部55、56は、基体部15、16の中央に向かって厚みが大きくなるように形成されている。これにより、基体部15、16と蓋体30との間に形成される隙間を埋めることができるとともに、基体部15、16の変形を考慮して、接合部材50を過剰に厚くすることを抑制することができる。したがって、過剰な厚みによる接合部材50のはみ出しを防止することができる。
【0057】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0058】
[変形例1]
上述の実施形態では、断面二次極モーメントIpは、基体10におけるx軸に関する断面二次モーメントIxと、基体10におけるy軸に関する断面二次モーメントIyとのそれぞれを、
図4および
図5で示す方法によって求めることで算出するとした。しかしながら、断面二次極モーメントIpの算出方法は、これに限定されない。例えば、基体10の断面を網目状に分割し、分割されたそれぞれの領域ごとに、断面二次モーメントIx、Iyを算出してから合計してもよい。
【0059】
[変形例2]
上述の実施形態では、接合部材は、基体10のうち、断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の厚みが、基体10の他の位置と接する部分の厚みよりも大きいとした。しかしながら、接合部材が接する基体の部分と、接合部材の厚みとの関係は、これに限定されない。
【0060】
[変形例3]
上述の実施形態では、接合部材は、3種類の金属層を有するとした。しかしながら、接合部材の構成は、これに限定されない。また、接合部材は、接合膜となるプリフォームの厚みを変更することで、その厚みを変更するとした。しかしながら、接合部材の厚みを変更する方法は、これに限定されない。基体10側の第1金属膜40aや、蓋体30側の第2金属膜40bの厚みを変更することで、接合部材の厚みを変更してもよい。
【0061】
[変形例4]
上述の実施形態では、断面二次極モーメントが相対的に小さい壁部に接する接合部材は、該壁部の中央に向かって厚みが大きくなるとした。しかしながら、接合部材の厚みの変化は、これに限定されない。
【0062】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,2…半導体パッケージ
5…半導体
10…基体
11…第1面
11a…開口部
12…第2面
12a…開口部
12b…内周
12c…外周
13、14、15、16…基体部
20…放熱体
30…蓋体
40,50…接合部材
Ip…断面二次極モーメント
L1,L2…直線
S43,S44,S45,S46…断面積