(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240424BHJP
H01L 23/06 20060101ALI20240424BHJP
H01L 23/04 20060101ALI20240424BHJP
H01L 23/08 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H01L23/06 B
H01L23/04 Z
H01L23/08 C
(21)【出願番号】P 2021074849
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100227732
【氏名又は名称】小澤 祥二
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 真悟
(72)【発明者】
【氏名】倉内 貴司
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-088024(JP,A)
【文献】特開2009-283898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02-23/10
H01L 21/50-21/52
H01L 33/48-33/64
B23K 1/00- 1/20
B23K 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージであって、
第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面を有し、前記第1面側及び前記第2面側に開口部が形成された枠形状の基体と、
半導体が配置される放熱体であって、前記基体よりも熱膨張係数が大きく、前記第1面側の開口部を塞ぎ、前記第1面側の開口部の全周に亘って接合される放熱体と、
前記第2面側の開口部を塞ぐように配置された蓋体と、
前記第2面側の開口部の全周を囲うように前記第2面上に配置され、前記第2面と前記蓋体とを接合する接合部材と、を備え、
前記基体は、内側に凹み部を有する第1基体部と、前記基体の内側に向かって突出する突出部を有する第2基体部と、を有し、
前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第1基体部の断面を含む断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した
前記第2基体部の断面を含む断面を第2断面としたときに、
前記第1断面における基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、
前記接合部材によって前記第2面と前記蓋体とが接合されている状態において、前記第1断面における前記接合部材のうちの前記第2面に接する部分の幅は、前記第2断面における前記接合部材のうちの前記第2面に接する部分の幅よりも大きい、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体パッケージであって、
前記接合部材は、前記基体のうち、前記断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の前記幅が、前記基体の他の位置と接する部分の前記幅よりも大きい、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体パッケージであって、
前記接合部材は、前記積層方向に沿って積層されている複数の金属膜を有しており、
前記接合部材によって前記第2面と前記蓋体とが接合されている状態において、前記第1断面における前記接合部材のうちの前記基体側の
金属膜の断面積は、前記第2断面における前記接合部材のうちの前記基体側の
金属膜の断面積より大きい、
ことを特徴とする、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体の熱を外部に放出する放熱体を備える半導体パッケージが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-6456号公報
【文献】特開平5-218225公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミック製の枠形状の基体と、基体が有する一対の面のそれぞれに形成される開口部のうちの一方の開口部に接合される放熱体と、他方の開口部に接合される蓋体と、を備える半導体パッケージを製造するとき、基体に放熱体を接合したのち、放熱体とともに基体を加熱して蓋体と基体とを接合する。しかしながら、蓋体と基体とを接合するとき、熱膨張係数が基体より大きい放熱体は、基体に接合されていない側の面が熱膨張によって突出し変形するため、熱膨張の変形によって基体も変形する。基体が変形すると、基体と蓋体とを接合するとき、基体と蓋体との位置がずれる場合があり、基体と蓋体との接合が不十分になるおそれがある。
【0005】
本発明は、半導体パッケージにおいて、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体パッケージが提供される。この半導体パッケージは、第1面と、前記第1面の反対側の面である第2面を有し、前記第1面側及び前記第2面側に開口部が形成された枠形状の基体と、半導体が配置される放熱体であって、前記基体よりも熱膨張係数が大きく、前記第1面側の開口部を塞ぎ、前記第1面側の開口部の全周に亘って接合される放熱体と、前記第2面側の開口部を塞ぐように配置された蓋体と、前記第2面側の開口部の全周を囲うように前記第2面上に配置され、前記第2面と前記蓋体とを接合する接合部材と、を備え、前記基体と、前記放熱体と、前記蓋体との積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第1断面とし、前記第1断面と異なる位置において前記積層方向視で前記基体の前記第2面の内周と外周とを最短で結ぶ直線に沿うように、前記積層方向に切断した断面を第2断面としたときに、前記第1断面における前記基体の断面二次極モーメントより、前記第2断面における前記基体の断面二次極モーメントのほうが大きく、前記第1断面における前記接合部材のうちの前記第2面に接する部分の幅は、前記第2断面における前記接合部材のうちの前記第2面に接する部分の幅よりも大きい。
【0008】
この構成によれば、基体と放熱体と蓋体とを積層方向に切断した第1断面と、第1断面と異なる位置の第2断面とでは、第1断面における基体の断面二次極モーメントは、第2
断面における基体の断面二次極モーメントより小さく、第1断面における接合部材のうちの第2面に接する部分の幅は、第2断面における接合部材のうちの第2面に接する部分の幅よりも大きい。半導体パッケージを製造するとき、放熱体は、基体の熱膨張と放熱体の熱膨張との差によって、基体の第1面側の開口部に接合される面とは反対側の面が外側に突出するように変形する。このため、基体の断面二次極モーメントが相対的に小さい第1断面の部分は、基体の断面二次極モーメントが相対的に大きい第2断面の部分に比べ、放熱体の熱膨張を起因とする変形が発生しやすい。上述の構成では、基体の第1断面の部分の接合部材の幅は、基体の第2断面の部分の接合部材の幅に比べ大きいため、基体の第1断面の部分には、基体の熱膨張と接合部材の熱膨張との差によって、放熱体の熱膨張による変形を打ち消す方向に力が作用する。これにより、放熱体の熱膨張を起因とする基体の変形が抑制されるため、基体の第1断面の部分と蓋体との位置がずれにくくなり、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合することができる。したがって、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0009】
(2)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記接合部材は、前記基体のうち、前記断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の前記幅が、前記基体の他の位置と接する部分の前記幅よりも大きくてもよい。基体において、断面二次極モーメントが最も小さい位置は、放熱体の変形によって最も変形しやすい。上述の構成によれば、基体において最も変形しやすい部分と接する接合部材の幅は、基体の他の部分と蓋体とを接合する接合部材の部分の幅より大きいため、基体の最も変形しやすい部分は、放熱体による変形が最も抑制される。これにより、基体の最も変形しやすい部分と蓋体との位置がさらにずれにくくなるため、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(3)上記形態の半導体パッケージにおいて、前記第1断面における前記接合部材のうちの前記基体側の断面積は、前記第2断面における前記接合部材のうちの前記基体側の断面積より大きくてもよい。この構成によれば、第1断面における接合部材の基体側の断面積は、第2断面における接合部材の基体側の断面積より大きいため、基体の第1断面の部分に作用する、基体の熱膨張と接合部材の熱膨張との差による力が相対的に大きくなる。これにより、基体の第1断面の部分での放熱体による変形が抑制されるため、基体の第1断面の部分と蓋体とを接合することができる。したがって、基体の変形による基体と蓋体との接合強度の低下を抑制することができる。
【0011】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、基体と蓋体とを接合する接合部材、この接合部材の製造方法、半導体パッケージの製造装置、半導体パッケージの製造方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、コンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の半導体パッケージの上面図である。
【
図4】x軸に関する断面二次モーメントの算出方法を説明する図である。
【
図5】y軸に関する断面二次モーメントの算出方法を説明する図である。
【
図6】アルミナと銅の熱膨張に関する比較を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の半導体パッケージ1の上面図である。
図2は、
図1のA-A線
断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。本実施形態の半導体パッケージ1は、基体10と、放熱体20と、蓋体30と、接合部材40と、を備える。半導体パッケージ1の内部には、半導体パッケージ1の外部の制御装置と電気的に接続される半導体5が収容される。半導体5は、例えば、発光波長が440~460nmのレーザダイオードであり、外部の制御装置によって発光が制御される。なお、半導体パッケージ1に収容される半導体5は、レーザダイオードに限定されず、例えば、パワーMOSFETやダイオードなどから構成されるパワーデバイスであってもよいし、他の機能を有する半導体を含んでもよい。また、半導体パッケージ1には、複数の半導体5が収容されていてもよい。本実施形態の半導体パッケージ1は、半導体5と外部の制御装置とに電気的に接続しつつ、放熱体20を介して半導体5で発生する熱を外部に放出する。なお、
図1から
図3のそれぞれにおいて、基体10と、放熱体20と、蓋体30との積層方向をy軸方向とし、
図1に示すA-A線に沿う方向をx軸方向とし、x軸とy軸とに直交する方向をz軸方向とする。
【0014】
基体10は、枠形状を有する部材である。本実施形態では、基体10は、アルミナから形成されており、y軸方向のマイナス側の第1面11と、第1面11の反対側の面である第2面12と、を有する。基体10では、第1面11側および第2面12側のそれぞれに、開口部11a、12aが形成されている。本実施形態では、半導体パッケージ1の接合部材40を通るxz平面に沿った断面図である
図1に示すように、基体10は、4つの基体部13、14、15、16を備える。基体部13と基体部15、基体部13と基体部16、基体部14と基体部15、および、基体部14と基体部16のそれぞれは、xz平面内において、互いに略直交するように配置されている。なお、基体10は、AlN、SiCから形成されていてもよい。
【0015】
基体部13は、壁体部13aと、突出部13bと、を有する。壁体部13aは、基体10におけるx軸方向のマイナス側に配置されており、半導体パッケージ1の積層方向(y軸方向)に垂直な断面形状が矩形形状となるように形成されている。壁体部13aは、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。突出部13bは、壁体部13aから基体10の内側に向かって突出している。突出部13bは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側における内側の角部が開口部11aの一部となる。
【0016】
基体部14は、壁体部14aと、突出部14bと、を有する。壁体部14aは、基体10におけるx軸方向のプラス側に配置されており、半導体パッケージ1の積層方向に垂直な断面形状が矩形形状となるように形成されている。壁体部14aは、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。突出部14bは、壁体部14aから基体10の内側に向かって突出している。突出部14bは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側の内側における角部が開口部11aの一部となる。
【0017】
基体部15は、基体10におけるz軸方向のマイナス側に配置されている。基体部15は、半導体パッケージ1の積層方向に垂直の断面形状が略矩形形状となるように形成されている。基体部15は、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。基体部15には、y軸方向のマイナス側であって基体10の内側に、凹み部15aが形成されている。凹み部15aは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側における内側の角部が開口部11aの一部となる。
【0018】
基体部16は、基体10におけるz軸方向のプラス側に配置されている。基体部16は、半導体パッケージ1の積層方向に垂直の断面形状が略矩形形状となるように形成されて
いる。基体部16は、y軸方向のプラス側に第2面12を有しており、y軸方向のプラス側における内側の角部が開口部12aの一部となる。基体部16には、y軸方向のマイナス側であって基体10の内側に、凹み部16aが形成されている。凹み部16aは、y軸方向のマイナス側に第1面11を有しており、y軸方向のマイナス側における内側の角部が開口部11aの一部となる。
【0019】
放熱体20は、基体10よりも熱膨張係数が大きい材料、例えば、銅(Cu)から形成されている矩形形状の平板であって、一対の主面21、22を有している。一対の主面21、22のうち、y軸方向のプラス側の一方の主面22には、半導体5が配置される。一方の主面22は、図示しない銀からなるろう材を介して、基体10の第1面11に接合される(
図2および
図3参照)。これにより、放熱体20は、第1面11側の開口部11aを塞ぎ、第1面11側の開口部11aの全周に亘って基体10に接合される。本実施形態では、他方の主面21には、何も接合されない。放熱体20は、半導体5で発生する熱を外部に放出する。なお、放熱体20を形成する金属は、銅に限定されず、アルミニウム(Al)などであってもよく、基体10に比べ熱伝導性が優れている材料が望ましい。また、形状は平板状に限らず、一方の主面22の半導体5が配置される領域に段差や傾斜が設けられていてもよい。
【0020】
蓋体30は、平板形状の部材であって、例えば、透光性を有するガラスから形成されている。蓋体30は、基体10の第2面12に接合部材40を介して接合される。これにより、蓋体30は、基体10の第2面12側の開口部12aを塞ぐように配置され、基体10および放熱体20とともに、半導体5が収容される空間の気密を維持する。なお、本実施形態では、蓋体30を形成する材料は、透光性を有していればよく、ガラスに限定されず、サファイアであってもよい。また、形状は平板でなくてもよく、レンズ形状や表面に微小な凹凸が設けられていてもよい。
【0021】
接合部材40は、
図1に示すように、基体10の第2面12側の開口部12aの全周を囲うように、第2面12上に配置される。接合部材40は、基体10の第2面12と蓋体30とを接合する。本実施形態では、接合部材40は、3種類の金属膜を有する。3種類の金属膜のうち、基体10側の第1金属膜40aは、タングステン(W)とニッケル(Ni)と金(Au)とから形成されている。蓋体30側の第2金属膜40bは、クロム(Cr)とニッケルと金とから形成されている。第1金属膜40aと第2金属膜40bとの間に配置される接合膜40cは、金錫はんだ(例えば、Au80wt%Sn)から形成されている。
【0022】
本実施形態では、接合部材40は、4つの接合部43、44、45、46から形成されている。接合部43は、基体部13と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜43aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜43bと、接合膜40cの一部の接合膜43cと、を有する(
図2参照)。接合部44は、基体部14と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜44aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜44bと、接合膜40cの一部の接合膜44cと、を有する(
図2参照)。接合部45は、基体部15と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜45aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜45bと、接合膜40cの一部の接合膜45cと、を有する(
図3参照)。接合部46は、基体部16と蓋体30との間に配置されており、第1金属膜40aの一部の第1金属膜46aと、第2金属膜40bの一部の第2金属膜46bと、接合膜40cの一部の接合膜46cと、を有する(
図3参照)。
【0023】
次に、本実施形態の半導体パッケージ1の特徴を説明する。半導体パッケージ1において、
図1に示すような、基体10と、放熱体20と、蓋体30との積層方向視で、基体1
0の第2面12の内周12bと外周12cとを最短で結ぶ直線に沿うように、積層方向に切断した断面を第1断面および第2断面とする。第1断面と第2断面とは異なる位置において切断した断面であり、例えば、
図1に示す直線L1に沿うように積層方向に切断した断面を第1断面とし、直線L2に沿うように積層方向に切断した断面を第2断面とする。半導体パッケージ1において、このように、第1断面と第2断面とを定義するとき、第1断面における基体10の断面二次極モーメントより、第2断面における基体10の断面二次極モーメントのほうが大きく、第1断面における接合部材40のうちの第2面12に接する部分の幅は、第2断面における接合部材40のうちの第2面12に接する部分の幅よりも大きい。本実施形態では、基体10が有する基体部13、14、15、16のそれぞれにおいて、基体部13、14の断面(
図2に示す断面)が第2断面となり、基体部15、16の断面(
図3に示す断面)が第1断面となる。すなわち、半導体パッケージ1では、基体部15、16における断面二次極モーメントより、基体部13、14における断面二次極モーメントの方が大きく、基体部15、16における接合部材40の第1金属膜45a、46aの幅W45、W46は、基体部13、14における接合部材40の第1金属膜43a、44aの幅W43、W43よりも大きい。
【0024】
また、本実施形態の半導体パッケージ1では、基体部15、16の断面二次極モーメントの大きさは、基体部13、14の断面二次極モーメントの大きさより小さく、基体10においても最も小さい。具体的には、接合部材40において、基体10のうち、断面二次極モーメントが最も小さい基体部15、16と接する第1金属膜45a、46aの幅W45、W46は、基体10の基体部15、16とは他の位置と接する第1金属膜40aの幅よりも大きい。
【0025】
さらに、本実施形態の半導体パッケージ1では、第1断面における接合部材40のうちの基体10側の断面積は、第2断面における接合部材40のうちの基体10側の断面積より大きい。具体的には、基体部15、16における接合部材40の第1金属膜45a、46aの断面積S45、S46は、基体部13、14における接合部材40の第1金属膜43a、44aの断面積S43、S44より大きい。
【0026】
ここで、本実施形態における基体10の断面二次極モーメントの求め方について説明する。基体10の断面二次極モーメントIpは、以下の式(1)で表すことができる。
Ip=Ix+Iy ・・・(1)
ここで、Ixは、基体10におけるx軸に関する断面二次モーメントであり、Iyは、基体10におけるy軸に関する断面二次モーメントである。したがって、基体10の断面二次極モーメントは、式(1)の右辺に含まれる断面二次モーメントIx、Iyのそれぞれを計算することで求めることができる。
【0027】
図4は、x軸に関する断面二次モーメントIxの算出方法を説明する図である。
図4には、
図1に示す直線L2に沿うように、基体10の基体部13を積層方向に切断した断面が示されている。本実施形態において、
図4に示す基体部13の断面形状の図心Cg13をxy座標軸の原点として、x軸とy軸とを規定する。x軸に関する断面二次モーメントIxを求める場合、最初に、x軸方向に平行な複数の仮想線Lxa~Lxkを設定する。複数の仮想線Lxa~Lxkは、x軸方向に対して平行に設けられており、複数の仮想線Lxa~Lxkとx軸は、等間隔に配置されている。複数の仮想線Lxa~Lxkとx軸は、隣接する仮想線どうし、または、仮想線Lxeまたは仮想線Lxfとx軸とによって、基体部13の断面が全て含まれるように設定される。次に、2つの仮想線または1つの仮想線とx軸との間に挟まれる複数の領域(部分領域)のそれぞれにおいて、基体部13の断面と重なる部分の面積(部分面積)を算出する。具体的には、
図4に示すように、仮想線Lxdと仮想線Lxeとの間に挟まれる部分領域Axdeのうち、基体部13の断面と重なる部分(ドットでのハッチングで示す部分)の面積を部分面積Sx
13deとして算出
する。本実施形態では、2つの仮想線または1つの仮想線とx軸との間に挟まれる部分領域と基体部13の断面とが重なる部分の面積は、隣接する2つの仮想線の間、または、x軸とx軸に隣接する1つの仮想線との間のそれぞれについて算出する。すなわち、
図4に示す基体部13では、11個の部分面積が算出される。
【0028】
次に、2つの仮想線または1つの仮想線とx軸との間に挟まれる部分領域のy座標の二乗と、該部分領域に含まれる部分面積との積を、部分領域ごとに算出する。具体的には、上述した部分領域Axdeについては、部分領域Axdeのy座標y13deの二乗と、算出した部分面積Sx13deとの積を算出する。このとき、部分領域Axdeのy座標y13deは、仮想線Lxeのy座標と仮想線Lxdのy座標との中間の座標とする。それぞれの部分領域について算出した部分領域のy座標の二乗と、該部分領域における部分面積との積を合計した値が、基体部13のx軸に関する断面二次モーメントIxとなる。
【0029】
図5は、y軸に関する断面二次モーメントIyの算出方法を説明する図である。
図5に示す基体部13の断面は、
図4に示す断面と同じ断面である。y軸に関する断面二次モーメントIyの算出方法では、
図5に示す基体部13の断面形状の図心Cg13をxy座標軸の原点とするy軸を規定し、y軸方向に平行な複数の仮想線Lya~Lygを設定する。複数の仮想線Lya~Lygは、y軸方向に対して平行に設けられており、複数の仮想線Lya~Lygとy軸は、等間隔に配置されている。複数の仮想線Lya~Lygとy軸は、隣接する仮想線どうし、または、仮想線Lycまたは仮想線Lydとy軸とによって、基体部13の断面が全て含まれるように設定される。
【0030】
次に、2つの仮想線または1つの仮想線とy軸との間に挟まれる部分領域のそれぞれにおいて、基体部13の断面と重なる部分の部分面積を算出する(例えば、仮想線Lybと仮想線Lycとの間に挟まれる部分領域Aybcのうち、ドットでのハッチングで示す部分の面積Sy
13bc)。
図5に示す基体部13では、7個の部分面積が算出される。
【0031】
次に、2つの仮想線または1つの仮想線とy軸との間に挟まれる部分領域のx座標の二乗と、該部分領域における部分面積との積を、それぞれの部分領域において算出する。例えば、部分領域Aybcのx座標x13bcの二乗と、算出した部分面積Sy13bcとの積を算出する。このとき、部分領域Aybcのx座標x13bcは、仮想線Lybのx座標と仮想線Lycのx座標との中間の座標とする。それぞれの部分領域について算出した部分領域のx座標の二乗と、該部分領域における部分面積との積を合計した値が、基体部13のy軸に関する断面二次モーメントIyとなる。
【0032】
最後に、それぞれ算出された基体部13のx軸に関する断面二次モーメントIxと、基体部13のy軸に関する断面二次モーメントIyとを式(1)にしたがって合計し、基体部13の断面二次極モーメントIpを算出する。ここでは、基体部13の断面二次極モーメントIpを算出する方法を説明したが、他の基体部14、15、16についても同様である。
【0033】
次に、半導体パッケージ1の製造方法について説明する。本実施形態では、最初に、H型の基体10を構成するアルミナシート上の基体10の第2面12となる位置に、タングステンペーストを印刷によって塗布し、第1金属膜40aを成形する。本実施形態では、基体10のうちの基体部15と基体部16のそれぞれの第2面12となる位置のタングステンペーストの幅を、基体部13と基体部14のそれぞれの第2面12となる位置のタングステンペーストの幅よりも大きくなるように塗布する。なお、ペースト状の原料を塗布する代わりに、フォトリソや蒸着などによって、第1金属膜40aを形成してもよい。
【0034】
次に、第1金属膜40aが形成されたアルミナシートをパンチングし、パンチングした
アルミナシートを貼り合わせることによって、基体10を作製する。作製された基体10の第1面11側の開口部11aに、銀ろうを用いて放熱体20を接合したのち、基体10の第1面11に塗布された第1金属膜40a上と、放熱体20の一方の主面22上とのそれぞれに、電界めっきを施し、ニッケル金膜を形成する。
【0035】
ニッケル金膜の電気めっきを施したのち、ニッケル金膜が形成された放熱体20の一方の主面22に、金錫はんだを用いて、半導体5や図示しないレンズなどを接合する。次に、基体10に形成された第1金属膜40a上に、80wt%の金を含む金錫のプリフォームを載せる。この金錫のプリフォームは、半導体パッケージ1における接合膜40cとなる。なお、プリフォームの他に、ペーストの印刷や、湿式めっき、はんだボールなどによって、金と錫からなる金属層を形成してもよい。
【0036】
次に、蓋体30において、蓋体30を基体10上に載せるときにプリフォームと接触する部分に、クロム50nm/ニッケル200nm/金300nmの金属膜を蒸着によって形成する。この金属膜は、半導体パッケージ1における第2金属膜40bとなる。
【0037】
最後に、蓋体30に形成したクロム50nm/ニッケル200nm/金300nmの金属膜が、基体10上の金錫のプリフォームに接触するように基体10と蓋体30とを組み合わせてから、窒素(N2)雰囲気において、300℃に加熱する。これにより、放熱体20が接合されている基体10と蓋体30とが接合されて、半導体パッケージ1が製造される。
【0038】
本実施形態では、半導体パッケージ1の製造工程において、基体10と蓋体30とを接合するとき、第1面11に放熱体20が接合されており、第2面12に第1金属膜40aが成形されている基体10を加熱する。この加熱によって、基体10には、基体10と、放熱体20と、第1金属膜40aのそれぞれの熱膨張の違いによって力が作用する。
【0039】
図6は、アルミナと銅の熱膨張に関する比較を説明する図である。
図6には、基体10を形成するアルミナ(BA916)と、放熱体20を形成する銅とのそれぞれにおける熱膨張係数を示している。
図6に示すように、銅の熱膨張係数(1.68×10
-5)は、アルミナの熱膨張係数(7.60×10
-6)の約4.5倍になっている。例えば、アルミナと銅のそれぞれの外形を7mmとして、加熱によって温度を300℃上昇させた場合、アルミナは、熱膨張によって16.0μm大きくなるのに対し、銅は、熱膨張によって35.3μm大きくなる。このように、基体10と放熱体20では、熱膨張係数の違いによって、温度変化に対する大きさの変化量が異なっている。
【0040】
本実施形態の半導体パッケージ1では、アルミナで形成されている基体10の第1面11に、銅から形成されている放熱体20が接合されている。放熱体20は、一方の主面22が基体10に接合されている一方、他方の主面21には、何も接合されないため、加熱された放熱体20は、熱膨張によって、他方の主面21が突出するように変形する。放熱体20が熱膨張によって変形すると、基体部13と基体部14との間の開口部12a側の距離L21(
図2参照)と、基体部15と基体部16との間の開口部12a側の距離L22(
図3参照)とが小さくなるように、基体10が変形するおそれがある。すなわち、基体10は、基体部13、14、15、16のそれぞれが開口部12aを狭めるように変形するおそれがある。本実施形態の基体10では、基体部13、14、15、16のそれぞれの断面二次極モーメントが異なっており、特に、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16は、放熱体20の変形による力が作用することで変形しやすい。具体的には、放熱体20の変形によって、基体部15と基体部16との間の距離L22の変化が、基体部13と基体部14との間の距離L21の変化に比べ大きくなるように、基体10が変形するおそれがある(
図2および
図3参照)。
【0041】
本実施形態の半導体パッケージ1では、基体10の第2面12に、接合部材40の第1金属膜40aが接合されている。これにより、基体10と蓋体30とを接合するときに、基体10を加熱すると、第1金属膜40aの熱膨張による力が基体10に作用する。具体的には、第1金属膜40aは、xz平面に沿って大きくなるように膨張するため、基体10には、基体部13と基体部14との間の距離L21と、基体部15と基体部16との間の距離L22とが大きくなる方向に、力が作用する。本実施形態では、第1金属膜45a、46aのそれぞれの幅W45、W46が第1金属膜43a、44aのそれぞれの幅W43、W43よりも大きいため、第1金属膜40aの熱膨張による力は、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16に比較的多く作用する。これにより、基体10の第2面12側において、基体部15と基体部16との間の距離L22の変化が、基体部13と基体部14との間の距離L21の変化に比べ大きくなるように、第1金属膜40aの熱膨張による力が作用し、放熱体20の変形による基体10の変形が抑制される。したがって、基体10と蓋体30とを接合するときに、基体10と蓋体30との位置がずれにくくなり、基体部15、16と蓋体30とを接合することができる。
【0042】
以上説明した、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、基体10と放熱体20と蓋体30とを積層方向に切断した第1断面と、第1断面と異なる位置の第2断面とでは、第1断面における基体10の断面二次極モーメントは、第2断面における基体10の断面二次極モーメントより小さく、第1断面における接合部材40のうちの第1金属膜40aの幅は、第2断面における接合部材40のうちの第1金属膜40aの幅よりも大きい。半導体パッケージ1を製造するとき、放熱体20は、基体10の熱膨張と放熱体20の熱膨張との差によって、基体10の第1面11側の開口部11aに接合される一方の主面22とは反対側の主面21が外側に突出するように変形する。このため、基体10の断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16は、基体10の断面二次極モーメントが相対的に大きい基体部13、14に比べ、放熱体20の熱膨張を起因とする変形が発生しやすい。半導体パッケージ1では、基体部15、16の第1金属膜45a、46aの幅W45、W46が、基体部13、14の第1金属膜43a、44aの幅W43、W44に比べ大きいため、基体部15、16には、基体10の熱膨張と第1金属膜45a、46aの熱膨張との差によって、放熱体20の熱膨張による変形を打ち消す方向に力が作用する。これにより、放熱体20の熱膨張を起因とする基体10の変形が抑制されるため、基体部15、16と蓋体30との位置がずれにくくなり、基体部15、16と蓋体30とを接合することができる。したがって、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、基体部15、16の断面二次極モーメントの大きさは、基体部13、14の断面二次極モーメントの大きさより小さく、基体10においても最も小さい。基体10において、基体部15、16は、断面二次極モーメントが最も小さい位置であり、放熱体20の変形によって最も変形しやすい。半導体パッケージ1では、基体部15、16と接する第1金属膜45a、46aの幅W45、W46は、基体部15、16の他の部分と蓋体30とを接合する接合部材40の第1金属膜40aの幅より大きいため、基体10の最も変形しやすい部分は、放熱体20による変形が最も抑制される。これにより、基体部15、16と蓋体30との位置がさらにずれにくくなるため、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、基体部15、16と接する第1金属膜45a、46aの断面積S45、S46は、基体部13、14と接する第1金属膜43a、44aの断面積S43、S44より大きい。これにより、基体部15、16に作用する、基体10の熱膨張と接合部材40の熱膨張との差による力が相対的に大きくなる。こ
れにより、断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16での放熱体20による変形が抑制されるため、基体部15、16と蓋体30とを接合することができる。したがって、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の半導体パッケージ1によれば、第1金属膜45a、46aの断面積S45、S46は、第1金属膜43a、44aの断面積S43、S44より大きい。これにより、放熱体20の変形によって基体部15、16と蓋体30との間に比較的大きな隙間が形成されても、断面積が大きい第1金属膜45a、46aによって埋めることができる。これにより、基体部15、16と蓋体30とを接合することができるため、基体10の変形による基体10と蓋体30との接合強度の低下を抑制することができる。
【0046】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
[変形例1]
上述の実施形態では、断面二次極モーメントIpは、基体10におけるx軸に関する断面二次モーメントIxと、基体10におけるy軸に関する断面二次モーメントIyとのそれぞれを、
図4および
図5で示す方法によって求めることで算出するとした。しかしながら、断面二次極モーメントIpの算出方法は、これに限定されない。例えば、基体10の断面を網目状に分割し、分割されたそれぞれの領域ごとに、断面二次モーメントIx、Iyを算出してから合計してもよい。
【0048】
[変形例2]
上述の実施形態では、接合部材は、基体10のうち、断面二次極モーメントが最も小さい位置と接する部分の幅が、基体10の他の位置と接する部分の幅よりも大きいとした。しかしながら、接合部材が接する基体の部分と、接合部材の幅との関係は、これに限定されない。
【0049】
[変形例3]
上述の実施形態では、接合部材は、3種類の金属層を有するとした。しかしながら、接合部材の構成は、これに限定されない。また、接合部材は、第1金属膜の幅のみを変更することで、接合部材の基体側の幅を変更するとした。しかしながら、接合部材の基体側の幅を変更する方法は、これに限定されない。基体10側の第1金属膜40aとともに、接合膜40cの幅や、第2金属膜40bを変更してもよい。
【0050】
[変形例4]
上述の実施形態では、第1金属膜45a、46aの断面積S45、S46は、第1金属膜43a、44aの断面積S43、S44より大きいとした。しかしながら、第1金属膜40aにおける断面積の関係は、これに限定されない。断面二次極モーメントが相対的に小さい基体部15、16の第1金属膜45a、46aの幅W45、W46が、断面二次極モーメントが相対的に大きい基体部13、14の第1金属膜43a、44aの幅W43、W44に比べ大きければよい。
【0051】
[変形例5]
上述の実施形態では、第1金属膜40aは、タングステンから形成されるとした。モリブデンでもよく、熱膨張率が基体10を形成する材料(アルミナ)より大きい材料が望ましい。
【0052】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…半導体パッケージ
5…半導体
10…基体
11…第1面
11a,12a…開口部
12…第2面
12b…内周
12c…外周
13、14、15、16…基体部
20…放熱体
30…蓋体
40…接合部材
Ip…断面二次極モーメント
W43,W44、W45、W46…幅
S43,S44,S45,S46…断面積