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特許7478130導波管接続構造、その決定方法、その製造方法、及びそれを用いた導波管スイッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】導波管接続構造、その決定方法、その製造方法、及びそれを用いた導波管スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/04 20060101AFI20240424BHJP
   H01P 1/12 20060101ALI20240424BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H01P1/04
H01P1/12
H01P11/00 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021202418
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023087885
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武元 佑紗
(72)【発明者】
【氏名】待鳥 誠範
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-336299(JP,A)
【文献】特開2016-116015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/04
H01P 1/12
H01P 5/00- 5/22
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導波路(11,21)がそれぞれ形成された2つの導波管(10,20)の端面(10b,20a)が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管接続構造(1)であって、
前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記少なくとも1つの導波路の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域(R)内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝(25)が設けられ、
前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、
前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、
前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、
前記チョーク溝は、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部(25a,25b)と、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部(25c,25d)と、を含み、
4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部(27a,27b,27c,27d)で互いに分離されていることを特徴とする導波管接続構造。
【請求項2】
少なくとも1つの導波路(11,21)がそれぞれ形成された2つの導波管(10,20)の端面(10b,20a)が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管接続構造(1)であって、
前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記少なくとも1つの導波路の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域(R)内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝(25)が設けられ、
前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、
前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、
前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、
前記チョーク溝は、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部(25a,25b)と、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部(25c,25d)と、を含み、
4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部(27a,27b,27c,27d)で互いに分離されていることを特徴とする導波管接続構造の決定方法であって、
前記導波路と同一の形状の導波路をそれぞれ有し、チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の端面が、前記所定の隙間を開けて平行に対向する解析用導波管接続構造を解析モデルとして、前記チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の一方から他方に前記漏出防止対象周波数の電磁波が伝搬する際に、前記所定の隙間から漏出する電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得する電磁界解析ステップ(S1)と、
前記電磁界解析ステップで取得された等位相面のうち、前記長方形の中心から前記長方形の長辺に垂直な方向に前記管内波長の1/4に相当する距離だけ離れた等位相面の短半径及び長半径を取得する楕円形状取得ステップ(S2)と、
前記楕円形状取得ステップにより取得された前記等位相面の短半径及び長半径を前記内周楕円の短半径及び長半径として決定する内周楕円形状決定ステップ(S3)と、
前記内周楕円形状決定ステップにより決定された前記内周楕円の短半径及び長半径にそれぞれ前記管内波長の1/4に相当する距離を加えた値を前記外周楕円の短半径及び長半径として決定する外周楕円形状決定ステップ(S4)と、を含む導波管接続構造の決定方法。
【請求項3】
少なくとも1つの導波路(11,21)がそれぞれ形成された2つの導波管(10,20)の端面(10b,20a)が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管接続構造(1)であって、
前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記少なくとも1つの導波路の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域(R)内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝(25)が設けられ、
前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、
前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、
前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、
前記チョーク溝は、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部(25a,25b)と、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部(25c,25d)と、を含み、
4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部(27a,27b,27c,27d)で互いに分離されていることを特徴とする導波管接続構造の製造方法であって、
前記導波路と同一の形状の導波路をそれぞれ有し、チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の端面が、前記所定の隙間を開けて平行に対向する解析用導波管接続構造を解析モデルとして、前記チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の一方から他方に前記漏出防止対象周波数の電磁波が伝搬する際に、前記所定の隙間から漏出する電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得する電磁界解析ステップ(S1)と、
前記電磁界解析ステップで取得された等位相面のうち、前記長方形の中心から前記長方形の長辺に垂直な方向に前記管内波長の1/4に相当する距離だけ離れた等位相面の短半径及び長半径を取得する楕円形状取得ステップ(S2)と、
前記楕円形状取得ステップにより取得された前記等位相面の短半径及び長半径を前記内周楕円の短半径及び長半径として決定する内周楕円形状決定ステップ(S3)と、
前記内周楕円形状決定ステップにより決定された前記内周楕円の短半径及び長半径にそれぞれ前記管内波長の1/4に相当する距離を加えた値を前記外周楕円の短半径及び長半径として決定する外周楕円形状決定ステップ(S4)と、
前記内周楕円形状決定ステップ及び前記外周楕円形状決定ステップにより決定された前記内周楕円及び前記外周楕円の短半径及び長半径によって規定される前記帯状領域内に前記チョーク溝を形成するチョーク溝形成ステップ(S5)と、
前記2つの導波管の前記端面が前記所定の隙間を開けて平行に対向するように、前記2つの導波管を配置する導波管配置ステップ(S6)と、を含む導波管接続構造の製造方法。
【請求項4】
ベース部(31)と、
前記ベース部に固定され、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路(41,42,43)が第1の端面(40a)から第2の端面(40b)まで貫通して形成された第1の固定導波管ブロック(40)と、
前記ベース部に固定され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に平行な第3の端面(50a)を有し、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路(51)が前記第3の端面から第4の端面(50b)まで貫通して形成された第2の固定導波管ブロック(50)と、
前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第5の端面(60a)と、第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第6の端面(60b)とを有し、金属壁で囲まれた複数の導波路(61,62,63)が、前記第5の端面から前記第6の端面まで貫通して形成され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面及び第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に対して平行にスライド移動可能な状態で前記ベース部に支持された可動導波管ブロック(60)と、
前記ベース部に設けられ、前記可動導波管ブロックをスライド移動させる駆動装置(70)と、を有し、
前記可動導波管ブロックは、前記第1の固定導波管ブロック及び前記第2の固定導波管ブロックに対してスライド移動し、異なる複数の位置で、前記可動導波管ブロックの前記複数の導波路のいずれかが、前記第1の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかと前記第2の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかとの間を選択的に接続し、
前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面側における前記少なくとも1つの導波路の開口、前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面側における前記少なくとも1つの導波路の開口、前記可動導波管ブロックの前記第5の端面側及び第6の端面側における前記複数の導波路の開口のうちの、少なくとも1つの長方形の開口の周囲を囲む帯状領域(R)内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝(25)が設けられ、
前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、
前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、
前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、
前記チョーク溝は、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部(25a,25b)と、
前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部(25c,25d)と、を含み、
4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部(27a,27b,27c,27d)で互いに分離されていることを特徴とする導波管スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管接続構造、その決定方法、その製造方法、及びそれを用いた導波管スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
今後更なる増大が予想されるモバイルトラフィックに対応するため、数十Gbps級の伝送速度を実現することが可能なミリ波・テラヘルツ波帯を無線通信に利用することが強く求められており、例えばIEEE802.15.3dでは、252~325GHzの使用が検討されている。
【0003】
例えば、WR-3帯域(220~325GHz)の電磁波を伝搬させる伝搬経路としては、内寸が0.864mm×0.432mmの方形導波管が用いられる。このような方形導波管同士を結合するためのチョークフランジとしては、導波管開口からの電磁波の漏れを防ぐために、長方形のチョーク溝が形成された構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図13は、フランジ面において導波路91の開口の周囲に長方形のチョーク溝92-1~92-3が形成されたWR-3帯域用の導波管90を、フランジ面が平坦な導波管80に所定の隙間gを設けて結合する従来の導波管接続構造を示している。
【0005】
図14は、図13に示した3重のチョーク溝92-1~92-3の拡大図である。各チョーク溝92-1~92-3は、所定幅と所定深さを有する矩形枠状に連続した溝であり、導波路91の開口の中心位置に対して互いに同心に設けられている。各チョーク溝92-1~92-3の深さと、導波路91の開口の端から最も近いチョーク溝92-1の内側までの距離は、管内波長をλgとすると、それぞれλg/4に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6185455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15(a)は、チョーク溝が形成されていない2つの方形の導波管80',90'を、所定の隙間gを開けて平行に対向させた従来の導波管接続構造を示す斜視図である。導波管80'には導波路81'が形成され、導波管90'には導波路91'が形成されている。導波管80',90'は、WR-3帯域を透過帯域とするWR-3導波管に相当する。
【0008】
図15(b)は、図15(a)の構造において、使用周波数を280GHzとし、隙間gを300μmとした場合の電界の面内分布のシミュレーション結果を示している。なお、図15(b)では、シミュレーション結果の画像に、導波路91'の位置を示す長方形と、電磁波の等位相面(波面)の位置を示す楕円及び円を重ね合わせている。
【0009】
図15(b)のシミュレーション結果によれば、導波路91'から放射されて隙間gの空隙へ漏れ出る電磁波の等位相面は、導波路91'の中心から1波長以上離れるとほぼ円形(例えば、図中のwf1)となるが、導波路91'の中心付近では楕円に近い形状(例えば、図中のwf2)となる。また、隙間gの空隙へ漏れ出る電磁波の電界は、扇状に広がっており、導波路91'の長方形の開口の長辺に垂直な方向が最も強いことが分かる。
【0010】
しかしながら、図13及び図14に示したような従来のチョークフランジは、チョーク溝92-1~92-3の形状が、扇状に広がる電界に対応したものではなかったため、WR-3帯域において、不要な共振モードの存在により、電磁波の漏出を実用上の許容範囲内に抑えることができないという問題があった。このチョークフランジにおける不要な共振モードは、直線的なチョーク溝92-1~92-3により反射された電磁波が、チョーク溝92-1~92-3への入射波と打ち消し合うことなく、導波路91'とチョーク溝92-1~92-3の間で互いに干渉することで生じるものと考えられる。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、対向する2つの導波管の接続箇所からの電磁波の漏出を効果的に抑えることができる導波管接続構造、その決定方法、その製造方法、及びそれを用いた導波管スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る導波管接続構造は、少なくとも1つの導波路がそれぞれ形成された2つの導波管の端面が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管接続構造であって、前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記少なくとも1つの導波路の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝が設けられ、前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、前記チョーク溝は、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部と、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部と、を含み、4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部で互いに分離されている構成である。
【0013】
つまり、本発明に係る導波管接続構造は、2つの導波管の間の所定の隙間に漏れる電磁波の電界の強い領域をカバーする形状のチョーク溝が、2つの導波管の少なくとも一方の端面に形成された構造である。この構成により、本発明に係る導波管接続構造は、対向する2つの導波管の接続箇所からの電磁波の漏出を効果的に抑えることができる。
【0015】
この構成により、本発明に係る導波管接続構造は、管内波長の1/10波長程度までの所定の隙間に対して、例えばWR-3導波管の動作周波数範囲全体(比帯域約40%)にわたり、電磁波の漏出を-25dB未満に抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る導波管接続構造の決定方法は、少なくとも1つの導波路がそれぞれ形成された2つの導波管の端面が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管接続構造であって、前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記少なくとも1つの導波路の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝が設けられ、前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、前記チョーク溝は、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部と、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部と、を含み、4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部で互いに分離されていることを特徴とする導波管接続構造の決定方法であって、前記導波路と同一の形状の導波路をそれぞれ有し、チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の端面が、前記所定の隙間を開けて平行に対向する解析用導波管接続構造を解析モデルとして、前記チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の一方から他方に前記漏出防止対象周波数の電磁波が伝搬する際に、前記所定の隙間から漏出する電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得する電磁界解析ステップと、前記電磁界解析ステップで取得された等位相面のうち、前記長方形の中心から前記長方形の長辺に垂直な方向に前記管内波長の1/4に相当する距離だけ離れた等位相面の短半径及び長半径を取得する楕円形状取得ステップと、前記楕円形状取得ステップにより取得された前記等位相面の短半径及び長半径を前記内周楕円の短半径及び長半径として決定する内周楕円形状決定ステップと、前記内周楕円形状決定ステップにより決定された前記内周楕円の短半径及び長半径にそれぞれ前記管内波長の1/4に相当する距離を加えた値を前記外周楕円の短半径及び長半径として決定する外周楕円形状決定ステップと、を含む構成である。
【0017】
この構成により、本発明に係る導波管接続構造の決定方法は、2つの解析用導波管の一方から他方に伝搬する漏出防止対象周波数の電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得することにより、2つの導波管の少なくとも一方の端面における帯状領域Rの範囲を決定することができる。
【0018】
また、本発明に係る導波管接続構造の製造方法は、少なくとも1つの導波路がそれぞれ形成された2つの導波管の端面が、所定の隙間を開けて平行に対向する導波管接続構造であって、前記2つの導波管の少なくとも一方の前記端面において、前記少なくとも1つの導波路の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝が設けられ、前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、前記チョーク溝は、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部と、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部と、を含み、4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部で互いに分離されていることを特徴とする導波管接続構造の製造方法であって、前記導波路と同一の形状の導波路をそれぞれ有し、チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の端面が、前記所定の隙間を開けて平行に対向する解析用導波管接続構造を解析モデルとして、前記チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の一方から他方に前記漏出防止対象周波数の電磁波が伝搬する際に、前記所定の隙間から漏出する電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得する電磁界解析ステップと、前記電磁界解析ステップで取得された等位相面のうち、前記長方形の中心から前記長方形の長辺に垂直な方向に前記管内波長の1/4に相当する距離だけ離れた等位相面の短半径及び長半径を取得する楕円形状取得ステップと、前記楕円形状取得ステップにより取得された前記等位相面の短半径及び長半径を前記内周楕円の短半径及び長半径として決定する内周楕円形状決定ステップと、前記内周楕円形状決定ステップにより決定された前記内周楕円の短半径及び長半径にそれぞれ前記管内波長の1/4に相当する距離を加えた値を前記外周楕円の短半径及び長半径として決定する外周楕円形状決定ステップと、前記内周楕円形状決定ステップ及び前記外周楕円形状決定ステップにより決定された前記内周楕円及び前記外周楕円の短半径及び長半径によって規定される前記帯状領域内に前記チョーク溝を形成するチョーク溝形成ステップと、前記2つの導波管の前記端面が前記所定の隙間を開けて平行に対向するように、前記2つの導波管を配置する導波管配置ステップと、を含む構成である。
【0019】
つまり、本発明に係る導波管接続構造の製造方法は、上記の決定方法により決定された2つの導波管の少なくとも一方の端面の帯状領域内にチョーク溝を形成し、2つの導波管の端面が所定の隙間を開けて平行に対向するように、2つの導波管を配置するようになっている。この構成により、本発明に係る導波管接続構造の製造方法は、対向する2つの導波管の接続箇所からの電磁波の漏出を効果的に抑えた導波管接続構造を製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る導波管スイッチは、ベース部と、前記ベース部に固定され、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路が第1の端面から第2の端面まで貫通して形成された第1の固定導波管ブロックと、前記ベース部に固定され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に平行な第3の端面を有し、金属壁で囲まれた少なくとも1つの導波路が前記第3の端面から第4の端面まで貫通して形成された第2の固定導波管ブロックと、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第5の端面と、第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に所定の隙間を開けて平行に対向する第6の端面とを有し、金属壁で囲まれた複数の導波路が、前記第5の端面から前記第6の端面まで貫通して形成され、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面及び第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面に対して平行にスライド移動可能な状態で前記ベース部に支持された可動導波管ブロックと、前記ベース部に設けられ、前記可動導波管ブロックをスライド移動させる駆動装置と、を有し、前記可動導波管ブロックは、前記第1の固定導波管ブロック及び前記第2の固定導波管ブロックに対してスライド移動し、異なる複数の位置で、前記可動導波管ブロックの前記複数の導波路のいずれかが、前記第1の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかと前記第2の固定導波管ブロックの少なくとも1つの導波路のいずれかとの間を選択的に接続し、前記第1の固定導波管ブロックの前記第2の端面側における前記少なくとも1つの導波路の開口、前記第2の固定導波管ブロックの前記第3の端面側における前記少なくとも1つの導波路の開口、前記可動導波管ブロックの前記第5の端面側及び第6の端面側における前記複数の導波路の開口のうちの、少なくとも1つの長方形の開口の周囲を囲む帯状領域内に、漏出防止対象周波数に対応する管内波長の1/4に相当する深さのチョーク溝が設けられ、前記帯状領域は、前記長方形の中心を中心とするとともに、長軸方向が前記長方形の長辺に平行な内周楕円及び外周楕円を境界とする領域であり、前記内周楕円の短半径は、前記管内波長の1/4に相当し、前記外周楕円の短半径は、前記内周楕円の短半径よりも前記管内波長の1/4に相当する長さだけ長く、前記チョーク溝は、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の長辺側に位置する2つの溝部と、前記帯状領域内において、前記内周楕円及び前記外周楕円に接するとともに、前記長方形の短辺側に位置する2つの溝部と、を含み、4つの前記溝部は、前記帯状領域内において、前記長方形の対角線方向に沿った4つの非溝部で互いに分離されている構成である。
【0021】
この構成により、本発明に係る導波管スイッチは、上記の導波管接続構造を可動導波管ブロックに用いることで、スイッチの反射損失及び挿入損失を広帯域にわたって改善し、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間における意図しない電磁波の漏出を抑えることができる。
【0022】
また、本発明に係る導波管スイッチは、上記の導波管接続構造を可動導波管ブロックに用いることで、第1の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間と、第2の固定導波管ブロックと可動導波管ブロックの間の隙間を従来よりも広く取れるため、機械加工精度が緩和され、経年変化への耐性も高くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、対向する2つの導波管の接続箇所からの電磁波の漏出を効果的に抑えることができる導波管接続構造、その決定方法、その製造方法、及びそれを用いた導波管スイッチを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る導波管接続構造を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る導波管接続構造における帯状領域を説明するための図である。
図3】帯状領域に形成されるチョーク溝の溝部の配置例を示す図であって、(a)はチョーク溝が2つの溝部を含む例を示し、(b)はチョーク溝が4つの溝部を含む例を示し、(c)はチョーク溝が帯状領域全体に形成される例を示している。
図4図3(b)のチョーク溝の寸法の一例と、導波管接続構造の導波路の開口の中心を含む断面を示す図である。
図5】(a)は導波管接続構造の反射損失及び挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフであり、(b)は(a)の0dB付近を拡大したグラフであり、(c)は導波管接続構造の隙間からの電磁波の漏出を示している。
図6】導波管接続構造の対向する両端面にチョーク溝を設けた構造の反射損失及び挿入損失のシミュレーション結果を示すグラフであって、(a)は反射損失を示し、(b)は挿入損失を示している。
図7】導波管接続構造の決定方法及び製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係る導波管接続構造を備える導波管スイッチの分解斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る導波管接続構造を備える導波管スイッチの側面図である。
図10】本発明の実施形態に係る導波管接続構造を備える導波管スイッチの平面図である。
図11】本発明の実施形態に係る導波管スイッチの動作説明図(その1)である。
図12】本発明の実施形態に係る導波管スイッチの動作説明図(その2)である。
図13】従来の導波管接続構造を示す斜視図である。
図14】従来の導波管接続構造におけるチョーク構造を示す拡大正面図である。
図15】(a)は従来の導波管接続構造の他の例を示す斜視図であり、(b)は(a)の導波管接続構造の隙間における電界の面内分布のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る導波管接続構造、その決定方法、その製造方法、及びそれを用いた導波管スイッチの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の導波管接続構造1は、2つの導波管10,20の端面10b,20aが、所定の隙間gを開けて平行に対向する構造である。導波管10には導波路11が形成され、導波管20には導波路21が形成されている。例えば、導波管10と導波管20は、内寸が0.864mm×0.432mmであり、WR-3帯域(220~325GHz)を透過帯域とするWR-3導波管に相当する。なお、後述する第1の固定導波管ブロック40や可動導波管ブロック60のように、導波管10,20には複数の導波路が形成されていてもよい。
【0027】
導波管10の端面10b又は導波管20の端面20aのいずれか一方又は両方には、導波路21の長方形の開口の周囲を囲む帯状領域R内に、端面10b,20a間の隙間gからの電磁波漏出を防止するためのチョーク溝25が設けられている。以下では、主に、導波管20の端面20aに設けられたチョーク溝25について説明する。帯状領域Rとは、図2において斜線で示すように、長軸方向が導波路21の長方形の開口の長辺に平行な内周楕円e1及び外周楕円e2を境界とする領域である。内周楕円e1及び外周楕円e2の中心は、導波路21の長方形の開口の中心に等しい。
【0028】
チョーク溝25を構成する溝部25a~25dの内壁面は、端面20aに対して垂直である。また、溝部25a~25dの深さは、漏出防止対象周波数に対応する管内波長λgの1/4に相当する。本実施形態においては、漏出防止対象周波数は、WR-3帯域(220~325GHz)の中心周波数である272.5GHzとする。このとき、管内波長λgは、約1.43mmである。ここで、管内波長λgの1/4に相当する深さとは、管内波長λgの1/4の±20%の範囲の深さを指すものとする。なお、漏出防止対象周波数は、上記の値に限定されるものではなく、導波管10及び導波管20のサイズに応じたWR-3帯域又はそれ以外の所望の周波数帯域内の任意の周波数であってもよい。
【0029】
内周楕円e1の短半径rs1は、管内波長λgの1/4に相当する長さである。また、外周楕円e2の短半径rs2は、内周楕円e1の短半径rs1よりも管内波長λgの1/4に相当する長さだけ長い。ここで、管内波長λgの1/4に相当する長さとは、管内波長λgの1/4の±20%の範囲の長さを指すものとする。
【0030】
図3は、帯状領域Rに形成されるチョーク溝25の配置例を示す図である。幾何光学的には、電磁波の等位相面に沿った曲面鏡を電磁波の伝搬経路上に置けば、曲面鏡で反射された電磁波の反射波は、曲面鏡に入射した電磁波の入射波の進行方向を逆向きにたどる。このため、導波路21の開口の中心から位相推移がπ/2(1/4波長)となる位置に、導波路21から空隙に漏れて導波路11に直接入射しない放射波の等位相面に沿った楕円形状の曲面鏡(チョーク溝25)を形成すれば、チョーク溝25での放射波の反射波は、放射波の入射波と逆相になり打ち消し合う。つまり、チョーク溝25により不要な放射波を抑圧できると推測される。
【0031】
図3(a)は、チョーク溝25が、2つの溝部25a,25bを含む例を示している。2つの溝部25a,25bは、帯状領域R内において、内周楕円e1及び外周楕円e2に接するとともに、導波路21の長方形の開口の長辺側に位置する。これら2つの溝部25a,25bは、帯状領域R内において、導波路21の長方形の開口の短辺側に位置する2つの非溝部26a,26bで互いに分離されている。つまり、図3(a)に示したチョーク溝25は、図15(b)のシミュレーション結果で示した、扇状に広がる電界の強い領域をカバーした形状となっている。図3(a)に示した構成は、図3(b)及び(c)に示す構成と比較して、チョーク溝25を掘る面積が少ないため、製造コストや製造工数を抑えることができる。
【0032】
図3(b)は、チョーク溝25が、4つの溝部25a,25b,25c,25dを含む例を示している。これは、図1に示したチョーク溝25の構成に等しい。2つの溝部25a,25bは、図3(a)に示したものと同様に、帯状領域R内において、内周楕円e1及び外周楕円e2に接するとともに、導波路21の長方形の開口の長辺側に位置する。また、2つの溝部25c,25dは、帯状領域R内において、内周楕円e1及び外周楕円e2に接するとともに、導波路21の長方形の開口の短辺側に位置する。これら4つの溝部25a~25dは、帯状領域R内において、導波路21の長方形の開口の対角線方向に沿った4つの非溝部27a,27b,27c,27dで互いに分離されている。
【0033】
図3(c)は、チョーク溝25が、帯状領域R全体に形成される例を示している。チョーク溝25が帯状領域R全体に形成される構成では、チョーク溝25が帯状領域Rの一部のみに形成される図3(a)又は(b)の構成と比較して、より狭い周波数範囲でより良好な周波数特性(反射損失S11や挿入損失S21)を得ることができる。
【0034】
図4の上段は、図3(b)に示したチョーク溝25の寸法の一例を示している。図4の下段は、導波管接続構造1の導波路11,21の開口の中心を含む断面を示している。
【0035】
内周楕円e1の短半径rs1は0.4mmであり、これはWR-3帯域の管内波長λgの1/4に相当する距離である。内周楕円e1の長半径は0.6mmである。外周楕円e2の短半径rs2は、0.76(=0.4+λg/4)mmである。外周楕円e2の長半径は0.96(=0.6+λg/4)mmである。4つの非溝部27a,27b,27c,27dの延伸方向が内周楕円e1及び外周楕円e2の長軸に対して成す角度は、いずれも26.5°である。4つの非溝部27a,27b,27c,27dの幅は0.1mmである。4つの溝部25a~25dの深さは、いずれも0.36(=λg/4)mmである。端面10b,20a間の隙間gは、0.1mmである。
【0036】
図5(a)及び(b)は、図4の構造における導波路11と導波路21の間の反射損失S11と挿入損失S21のシミュレーション結果を示している。図5(b)は図5(a)の0dB付近を拡大したグラフである。このシミュレーションでは、図4(b)に示すポートP1側の導波管10から、ポートP2側の導波管20に向かって電磁波が入射するとしている。
【0037】
図5(a)に示すように、反射損失S11が-15dB未満となる周波数範囲は、200.0~336.4GHzであり、WR-3帯域(220~325GHz、比帯域約40%)を含む広い周波数範囲にわたって、反射損失S11が-15dB未満に抑えられることが確認できた。また、図5(b)に示すように、挿入損失S21については、WR-3帯域にわたって、-0.5dBよりも高い(0dBに近い)良好な値を示すことが確認できた。さらには図5(c)に示すように、図4の構造における導波路11と導波路21の間からの電磁波の漏出については、WR-3帯域にわたって、-25dB未満に抑えられることが確認できた。
【0038】
なお、ポートP1側を導波管20とし、ポートP2側を導波管10とした場合も、導波路11と導波路21の間の反射損失S11と挿入損失S21に変化はなかった。
【0039】
上記のシミュレーションでは、端面10b,20a間の隙間gを0.1mmであるとしたが、WR-3帯域の中心周波数である272.5GHzでの管内波長λg(=1.43mm)の1/10波長程度に相当する0.15mmの隙間gであっても、WR-3帯域を含む周波数範囲での反射損失S11を-15dB未満に抑えられることを確認している。
【0040】
図6(a)及び(b)は、導波管20の端面20aだけでなく導波管10の端面10bにも同様のチョーク溝を設けた構造における、導波路11と導波路21の間の反射損失S11と挿入損失S21のシミュレーション結果を示している。なお、図6(a)及び(b)には、比較のために、導波管20の端面20aのみにチョーク溝25を設けた構造の反射損失S11と挿入損失S21を破線で再掲している。
【0041】
導波管10の端面10bと導波管20の端面20aの両方にチョーク溝を設けた構成については、導波管20の端面20aのみにチョーク溝を設けた構成よりも、更に広い周波数範囲で、反射損失S11が-15dB未満に抑えられるとともに、挿入損失S21が-0.5dBよりも高い良好な値を示すことが確認できた。
【0042】
以下、図7を参照しながら、導波管接続構造の決定方法(以下のステップS1~S4)及び製造方法(以下のステップS1~S6)の一例を説明する。なお、本実施形態の決定方法は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等の制御装置で実行される。
【0043】
まず、2つの導波管10,20の導波路11,21と同一の形状の導波路をそれぞれ有し、チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の端面が、所定の隙間gを開けて平行に対向する解析用導波管接続構造を解析モデルとして、チョーク溝が形成されていない2つの解析用導波管の一方から他方に漏出防止対象周波数の電磁波が伝搬する際に、所定の隙間gから漏出する電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得する(電磁界解析ステップS1)。例えば、2つの解析用導波管は、図15(a)に示した導波管80',90'に相当する。以下では、導波管90'がチョーク溝が形成される前の導波管20であり、その導波路91'は導波路21と同一の形状であるとして説明する。
【0044】
次に、電磁界解析ステップS1で取得された等位相面のうち、導波管90'の導波路91'の長方形の開口の中心から長方形の長辺に垂直な方向に管内波長λgの1/4に相当する距離だけ離れた等位相面の短半径及び長半径を取得する(楕円形状取得ステップS2)。
【0045】
次に、楕円形状取得ステップS2により取得された等位相面の短半径及び長半径を内周楕円e1の短半径及び長半径として決定する(内周楕円形状決定ステップS3)。
【0046】
次に、内周楕円形状決定ステップS3により決定された内周楕円e1の短半径及び長半径にそれぞれ管内波長λgの1/4に相当する距離を加えた値を外周楕円e2の短半径及び長半径として決定する(外周楕円形状決定ステップS4)。
【0047】
次に、内周楕円形状決定ステップS3及び外周楕円形状決定ステップS4により決定された内周楕円e1及び外周楕円e2の短半径及び長半径によって規定される導波管90'の帯状領域R内にチョーク溝25を形成して、導波管20が完成する(チョーク溝形成ステップS5)。
【0048】
次に、導波管10の端面10bと導波管20の端面20aが所定の隙間gを開けて平行に対向するように、2つの導波管10,20を配置する(導波管配置ステップS6)。これにより、導波管接続構造が完成する。
【0049】
以下、本発明の実施形態の導波管接続構造1を備える導波管スイッチ100の構成について説明する。一般に、導波管スイッチなどの可動部の周りには隙間が必要であるが、機械加工精度の制約から、許容される隙間の大きさには下限がある。また、可動部を支持している機構の摺動部の摩耗などによって隙間が広がることもある。使用周波数が高い(波長が短い)ほど、同じ大きさの隙間でも波長に対して実質的に広くなるため、電磁波の漏出が増加することになる。本実施形態の導波管スイッチ100は、このような可動部の周りの隙間における電磁波の漏出を抑制するものである。
【0050】
図8は、本発明の実施形態の導波管接続構造1を備える導波管スイッチ100の分解斜視図、図9は側面図、図10は平面図である。なお、これらの図には各部の方向が分かりやすいように、X、Y、Zの直交軸を示している。
【0051】
これらの図に示しているように、導波管スイッチ100は、ベース部31、第1の固定導波管ブロック40、第2の固定導波管ブロック50、可動導波管ブロック60、及び駆動装置70を有している。第1の固定導波管ブロック40、第2の固定導波管ブロック50、及び可動導波管ブロック60は、図1等に示したWR-3帯域を透過帯域とする導波管10又は導波管20に相当する。
【0052】
ベース部31は外形が矩形の板状に形成され、その上面31aの一端側には第1の固定導波管ブロック40が固定され、他端側には第2の固定導波管ブロック50が固定されている。
【0053】
第1の固定導波管ブロック40は直方体状に形成され、金属壁で囲まれた所定口径の少なくとも1つ(この例では3つ)の導波路41,42,43が、第1の端面40aからその反対側の第2の端面40bまで貫通するように形成されている。ここで、導波路41~43は、ベース部31の上面31aから同一の高さで、第1の端面40a及び第2の端面40bに直交する向きで、所定間隔をあけて平行に形成されている。
【0054】
これらの導波路41~43の口径及び高さは、後述する第2の固定導波管ブロック50の導波路51と同一である。導波路42は、導波路51の中心を通過する線上に形成されている。また、他の2つの導波路41,43は、それらの開口の中心位置を通る延長線が導波路51の開口の中心位置を通る延長線を対称に挟むように配置される。
【0055】
一方、第2の固定導波管ブロック50は、第1の固定導波管ブロック40と外形が同等の直方体状に形成され、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bに、第3の端面50aを所定距離開けて平行に対向させた状態でベース部31に固定されており、金属壁で囲まれた少なくとも1つ(この例では1つ)の導波路51が第3の端面50aからその反対側の第4の端面50bまで貫通するように形成されている。この導波路51の口径及び高さは、第1の固定導波管ブロック40の導波路41~43と同一である。また、導波路51は、第3の端面50a及び第4の端面50bに直交する向きで、導波路42の中心を通過する線上に形成されている。
【0056】
ベース部31の上面31aで、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bと第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aの間には、第2の端面40b及び第3の端面50aに対して平行にスライド移動可能な状態で可動導波管ブロック60が支持されている。可動導波管ブロック60は、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bと第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aとの距離より僅か(例えば200μm)に短い長さと、第1及び第2の固定導波管ブロック40,50の高さとほぼ同じ高さの直方体状に形成され、金属壁で囲まれた複数(この例では、第1の固定導波管ブロック40に形成された導波路41~43の数に対応した3つ)の導波路61,62,63が、第5の端面60aから第6の端面60bまで貫通するように形成されている。ここで、第5の端面60aは、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40bに対して隙間g(例えばg=100μm)を開けて平行に対向し、第6の端面60bは、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50aに対して隙間g(例えばg=100μm)を開けて平行に対向している。
【0057】
可動導波管ブロック60の導波路61~63の口径及び高さは、第1の固定導波管ブロック40の導波路41~43及び第2の固定導波管ブロック50の導波路51と同一である。導波路62は、第5の端面60a及び第6の端面60bに直交する向きで形成されている。また、他の2つの導波路61,63は、第5の端面60a及び第6の端面60bに対して斜めに形成されている。金属壁で囲まれたこれら複数の導波路61~63は、内部に共振板や誘電体共振器を配置するなどの公知の方法で、ミリ波帯内で異なる通過帯域特性が付与されている。
【0058】
図10に示した位置(以下、「中立位置」という)において、中央の導波路62の第5の端面60a側の開口は、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の第2の端面40b側の開口と同心に並び、中央の導波路62の第6の端面60b側の開口は、第2の固定導波管ブロック50の導波路51の第3の端面50a側の開口と同心に並ぶ。したがって、図10の中立位置では、第1の固定導波管ブロック40の導波路42と第2の固定導波管ブロック50の導波路51の間が、可動導波管ブロック60の導波路62を介して接続される。
【0059】
また、中立位置において、第5の端面60a側の導波路61~63の開口位置は、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の開口位置からそれぞれ外側にLだけ離間し、第6の端面60b側の導波路61~63の開口位置は、第2の固定導波管ブロック50の導波路51の開口位置から両側にそれぞれLだけ離間するように設けられている。
【0060】
したがって、図11に示すように、中立位置から可動導波管ブロック60を幅方向(X方向)に-Lだけスライド移動させた第1の位置では、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40b側の導波路41の開口位置と可動導波管ブロック60の第5の端面60a側の一方の導波路61の開口位置とが一致し、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50a側の導波路51の開口位置と可動導波管ブロック60の第6の端面60b側の導波路61の開口位置とが一致して、第1の固定導波管ブロック40の導波路41と第2の固定導波管ブロック50の導波路51の間が、導波路61を介して接続される。
【0061】
また、図12に示すように、中立位置から可動導波管ブロック60を幅方向にLだけスライド移動させた第2の位置では、第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40b側の導波路43の開口位置と可動導波管ブロック60の第5の端面60a側の導波路63の開口位置とが一致し、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50a側の導波路51の開口位置と可動導波管ブロック60の第6の端面60b側の導波路63の開口位置とが一致して、第1の固定導波管ブロック40の導波路43と、第2の固定導波管ブロック50の導波路51の間が、導波路63を介して接続される。
【0062】
このようにして、可動導波管ブロック60は、第1の固定導波管ブロック40及び第2の固定導波管ブロック50に対してスライド移動し、異なる複数の位置(中立位置、第1の位置、及び第2の位置)で、導波路61~63のいずれかが、第1の固定導波管ブロック40の導波路41~43のいずれかと、第2の固定導波管ブロック50の導波路51とを選択的に接続させる。
【0063】
なお、この例では、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の中心を通る線の延長線上に第2の固定導波管ブロック50の導波路51が位置し、中立位置において可動導波管ブロック60の3つの導波路61~63もその延長線に対して線対称となる構造となっている。一方、第2の固定導波管ブロック50の導波路51が、第1の固定導波管ブロック40の導波路42の中心を通る線の延長線上にない非対称な構造も可能であり、その場合、可動導波管ブロック60の3つの導波路61~63も非対称な配置となる。
【0064】
可動導波管ブロック60は、ベース部31に設けられた駆動装置70によってスライド移動可能に支持されている。この駆動装置70の構造は任意であるが、例えば、ベース部31の下面側から可動導波管ブロック60を支持する支持部材に対し、ステッピングモータの回転運動を直進運動に変換して伝達する構造になっている。この場合、可動導波管ブロック60の位置と移動距離をセンサやエンコーダ等で検出して、少なくとも図10の中立位置、図11の第1の位置、及び図12の第2の位置に選択的に移動できるように制御すればよい。
【0065】
第1の固定導波管ブロック40の第2の端面40b側における導波路41~43の開口、第2の固定導波管ブロック50の第3の端面50a側における導波路51の開口、可動導波管ブロック60の第5の端面60a側及び第6の端面60b側における複数の導波路61~63の開口のうちの、少なくとも1つの開口の周囲を囲む帯状領域R内には、図3(a)~(c)のいずれかに示したようなチョーク溝25が設けられている。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る導波管接続構造1は、導波管10と導波管20の間の所定の隙間gに漏出する電磁波の電界の強い領域をカバーする形状のチョーク溝25が、端面10b及び端面20aのいずれか一方又は両方に形成された構造である。この構成により、本実施形態に係る導波管接続構造1は、対向する2つの導波管10,20の接続箇所からの電磁波の漏出を効果的に抑えることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る導波管接続構造1は、チョーク溝25を構成する4つの溝部25a~25dが、帯状領域R内において、導波路11又は導波路21の長方形の開口の対角線方向に沿った4つの非溝部27a~27dで互いに分離された構造であってもよい。この構成により、本実施形態に係る導波管接続構造1は、管内波長λgの1/10波長程度までの所定の隙間gに対して、例えばWR-3導波管の動作周波数範囲全体(比帯域約40%)にわたり、反射損失S11を-15dB未満に抑えることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る導波管接続構造1の決定方法は、2つの解析用導波管の一方から他方に伝搬する漏出防止対象周波数の電磁波の等位相面の形状を電磁界解析で取得することにより、2つの導波管10,20の端面10b及び端面20aのいずれか一方又は両方における帯状領域Rの範囲を決定することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る導波管接続構造1の製造方法は、上記の決定方法により決定された端面10b及び端面20aのいずれか一方又は両方の帯状領域R内にチョーク溝25を形成し、端面10b,20aが所定の隙間gを開けて平行に対向するように、2つの導波管10,20を配置するようになっている。この構成により、本実施形態に係る導波管接続構造1の製造方法は、対向する2つの導波管10,20の接続箇所からの電磁波の漏出を効果的に抑えた導波管接続構造1を製造することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ100は、上記の導波管接続構造1を可動部(可動導波管ブロック60)に用いることで、スイッチの反射損失及び挿入損失を広帯域にわたって改善し、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間における意図しない電磁波の漏出を抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る導波管スイッチ100は、上記の導波管接続構造1を可動部(可動導波管ブロック60)に用いることで、第1の固定導波管ブロック40と可動導波管ブロック60の間の隙間と、第2の固定導波管ブロック50と可動導波管ブロック60の間の隙間を従来よりも広く取れるため、機械加工精度が緩和され、経年変化への耐性も高くなる。
【符号の説明】
【0072】
1 導波管接続構造
10,20 導波管
10b,20a 端面
11,21 導波路
25 チョーク溝
25a,25b,25c,25d 溝部
26a,26b,27a,27b,27c,27d 非溝部
31 ベース部
31a 上面
40 第1の固定導波管ブロック
40a 第1の端面
40b 第2の端面
41,42,43 導波路
50 第2の固定導波管ブロック
50a 第3の端面
50b 第4の端面
51 導波路
60 可動導波管ブロック
60a 第5の端面
60b 第6の端面
61,62,63 導波路
70 駆動装置
100 導波管スイッチ
R 帯状領域
λg 管内波長
図1
図2
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