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特許7478131圧電材料組成物、これを製造する方法、圧電素子、および表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】圧電材料組成物、これを製造する方法、圧電素子、および表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/853 20230101AFI20240424BHJP
   H10N 30/097 20230101ALI20240424BHJP
   C04B 35/495 20060101ALI20240424BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H10N30/853
H10N30/097
C04B35/495
C01G33/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021204763
(22)【出願日】2021-12-17
(65)【公開番号】P2022100269
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0182220
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】314000442
【氏名又は名称】高麗大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145, Anam-ro Seongbuk-gu Seoul 02841, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】李 用 雨
(72)【発明者】
【氏名】金 治 完
(72)【発明者】
【氏名】咸 龍 洙
(72)【発明者】
【氏名】高 有 善
(72)【発明者】
【氏名】成 升 鉉
(72)【発明者】
【氏名】南 山
(72)【発明者】
【氏名】金 大 洙
(72)【発明者】
【氏名】高 秀 丸
(72)【発明者】
【氏名】嚴 載 民
(72)【発明者】
【氏名】辛 昊 城
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-035746(JP,A)
【文献】特開2010-180121(JP,A)
【文献】特開2020-167360(JP,A)
【文献】Ku-Tak Lee, et al.,Pseudocubic-based polymorphic phase boundary structures and their effect on the piezoelectric properties of (Li,Na,K)(Nb,Sb)O3-SrZrO3 lead-free ceramics,Journal of Alloys and Compounds,2019年,Volume 784,Pages 1334-1343
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/853
H10N 30/097
C04B 35/495
C01G 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物質
前記第1物質により囲まれた第2物質、および
下記化学式1で表される圧電材料を含む圧電材料組成物であって、前記第2物質が、ニオブ酸ナトリウムNaNbOを含み、ロットゲーリング係数が、60%から70%である圧電材料組成物:
[化学式1]
(1-y)(NaaK1-a)(Nb1-x,Sbx)-ySrZrO3+n mol% CuO+z mol% NaNbO3
yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦n≦1.5であり、zは3≦z≦7である。
【請求項2】
前記xが、0.04~0.055である、請求項1に記載の圧電材料組成物。
【請求項3】
前記第1物質が、単一方向に結晶配向した複数の結晶粒を含み、
前記第2物質が前記複数の結晶粒の内部に配置され、
前記複数の結晶粒は、前記第2物質から反応して成長した、請求項1に記載の圧電材料組成物。
【請求項4】
母体材料およびシード材料を秤量する工程、
前記母体材料および前記シード材料を混合してスラリーを準備する工程、
前記スラリーを成形して成形体を準備する工程、および
前記成形体を焼結して焼結体を準備する工程を含み、
前記秤量した母体材料が化学式1で表され、前記シード材料はニオブ酸ナトリウムNaNbOを有し、前記母体材料に対してzmol%だけ添加される、組成物の製造方法であって、前記zは3≦z≦7であり、ロットゲーリング係数が、60%から70%である、組成物の製造方法:
[化学式1]
(1-y)(NaaK1-a)(Nb1-x,Sbx)-ySrZrO3+n mol% CuO
yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦n≦1.5である。
【請求項5】
前記xが、0.04~0.055である、請求項4に記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
前記シード材料が、前記ニオブ酸ナトリウムNaNbO単結晶である、請求項4に記載の組成物の製造方法。
【請求項7】
前記焼結体を準備する工程が、
第1温度で行われる第1焼結工程、および
第2温度で行われる第2焼結工程を含み、
前記第1温度は、1160℃であり、前記第2温度は、1030~1070℃であり、
前記第1焼結工程は前記第1温度まで温度を上昇させる工程を含み、前記第2焼結工程は前記第2温度で6時間維持する工程を含む、請求項4に記載の組成物の製造方法。
【請求項8】
前記母体材料および前記シード材料を秤量する工程の前に前記シード材料の準備工程が行われ、
前記シード材料の準備工程は、
1次シード材料を提供する工程、
前記1次シード材料から1次シードを準備する工程、
前記1次シードおよび2次シード材料を混合する工程、および、
前記1次シードおよび前記2次シード材料から2次シードを準備し、それによって前記シード材料を準備する工程を備え、
前記1次シード材料は、ニオブ酸ビスマスナトリウム((Bi2.5Na3.5)NbO18)であり、
前記2次シード材料は、ニオブ酸ナトリウムNaNbOである、請求項4に記載の組成物の製造方法。
【請求項9】
前記2次シードを準備する工程が、
前記1次シードおよび炭酸ナトリウム(NaCO)および塩化ナトリウム(NaCl)の混合物を975℃で6時間の間、熱処理することをさらに含む、請求項8に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1の組成物を含む圧電素子層を含み、前記第1および第2物質が層状に形成された圧電素子層、
前記圧電素子層の第1面に配置された第1電極部、および
前記第1面に対向する第2面に配置された第2電極部を含む、圧電素子。
【請求項11】
前記xが、0.04~0.055である、請求項10に記載の圧電素子。
【請求項12】
前記第2物質が、シード材料を含み、
前記シード材料が10~20μmの大きさを有する、または前記シード材料の縦横比が10~20の範囲である、請求項10に記載の圧電素子。
【請求項13】
前記第1物質が、単一方向に結晶配向した複数の結晶粒を含み、
前記第2物質が、前記複数の結晶粒の内部に配置され、
前記第1物質の前記複数の結晶粒は、前記第2物質から反応して成長した、請求項10に記載の圧電素子。
【請求項14】
画像を表示する表示パネル、および
前記表示パネルの背面に配置され、請求項10に記載の圧電素子を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、圧電材料組成物、これを製造する方法、圧電素子、および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電材料は、超音波機器、映像機器、音響機器、通信機器、およびセンサー等の広範な分野に用いられる超音波振動子、電気機械トランスデューサー(transducer)、およびアクチュエータ(actuator)部品等の材料として広く使用されている。
【0003】
Pb(Zr,Ti)O(以下;PZT)系列の材料が、高い圧電特性により、大部分の圧電部品材料として活用されている。しかし、鉛(Pb)は毒性の強い物質であり、焼結過程に揮発性が強いため深刻な環境汚染を起こしている。
【0004】
したがって、圧電材料の大半を占めるPZT圧電材料は、環境汚染の問題から、非鉛系圧電材料としての開発要求があり、併せて高い圧電特性が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書の実施例に係る課題は、鉛を含まずに、高圧電特性を有する圧電材料組成物を提供することである。
【0006】
本明細書の実施例に係る課題は、高圧電特性を有する圧電材料組成物を提供するために、テンプレートを用いて結晶を配向させることにより、圧電特性を向上させることができる圧電材料組成物の製造方法を提供することである。
【0007】
本明細書の実施例に係る解決課題は、高圧電特性を有する圧電素子とこれを含む表示装置を提供することである。
【0008】
本明細書の実施例に係る解決課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及されていない他の課題は、以下の記載からこの技術分野において通常の知識を有する者に明確に理解され得るだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の実施例に係る圧電材料組成物は、(1-y)(Na1-a)(Nb1-x,Sb)-ySrZrO+n mol% CuO(yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5である)で表される。
【0010】
本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法は、母体材料およびシード材料を秤量する工程、母体材料およびシード材料を混合してスラリーを準備する工程、スラリーを成形して成形体を準備する工程、および成形体を焼結して焼結体を準備する工程を含み、秤量された母体材料およびシード材料は、(1-y)(Na1-a)(Nb1-x,Sb)-ySrZrO+n mol% CuO(yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5である)で表される。
【0011】
本明細書の実施例に係る圧電素子は、第1物質層および第1物質層によって囲まれる第2物質層を含む圧電素子層、および圧電素子層の第1面に配置された第1電極部、および第1面に対向する第2面に配置された第2電極部を含み、圧電素子層は、(1-y)(Na1-a)(Nb1-x,Sb)-ySrZrO+n mol% CuO(yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a?0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5である)の組成を満足する。
【0012】
本明細書の実施例に係る表示装置は、画面を表示する表示パネル、および表示パネルの背面に配置され、第1物質層および第1物質層によって囲まれた第2物質層を含む圧電素子層、および圧電素子層の第1面に配置された第1電極部、および第1面に対向する第2面に配置された第2電極部を含む圧電素子を含む。
【0013】
上述した課題の解決手段以外の本明細書の様々な例に係る具体的な事項は、以下の記載内容および図に含まれている。
【発明の効果】
【0014】
本明細書の実施例によると、圧電材料組成物は、鉛を含まなくても高い圧電特性を有するため、これを含む圧電素子および表示装置は、低い駆動電圧によって駆動して圧電特性が向上する効果がある。
【0015】
また、本明細書の実施例によると、圧電材料組成物の製造方法は、単結晶製造方法と比較して、時間および費用が大きく減少し、生産性が大きく向上する効果がある。
【0016】
本明細書の効果は、以上に述べた効果に限定されるものではなく、言及されていないまた他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法の順序図である。
図2A】本明細書の実施例に係る圧電素子を示した断面図である。
図2B】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の走査電子顕微鏡の写真である。
図3】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体の製造方法の順序図である。
図4】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の結晶構造を示す図である。
図5A】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の斜方晶(Orthorhombic)の極方向(polardirection)を示した図である。
図5B】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の菱面体(Rhombohe dral)の極方向(polardirection)を示した図である。
図6】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体のアンチモン(Sb)含有量と温度による誘電定数値の変化を示したグラフである。
図7】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体のアンチモン(Sb)含有量変化による相対密度、誘電率(εT 33ε0, dielectric constant)、圧電電荷定数(d33, Piezoelectric Charge Constant)、電気機械結合係数(kρ,Electromechanical Coupling Factor)、および機械的品質係数(Qm, Mechanical quality factor)を示した図である。
図8】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体のアンチモン含有量変化と温度による圧電特性を示したグラフである。
図9】本明細書の実施例に係る圧電材料組成物のシードの製造方法の順序図である。
図10】2次シードを準備する工程で発生する結晶の変化を示した図である。
図11図9の1次シードを準備する工程で相合成温度条件を変化させて製造した1次シードを走査電子顕微鏡で撮影した写真である。
図12図11の(a)、(b)および(c)シードに対して測定したXRDデータを示したグラフである。
図13図9の2次シード準備工程で、洗浄条件によって撮影した走査電子顕微鏡写真である。
図14図9によって準備された2次シードを洗浄した後、測定したXRDデータを示したグラフである。
図15A図15Aは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定されたXRDデータを示したグラフである。
図15B図15Bは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定されたXRDデータを示したグラフである。
図15C図15Cは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定されたXRDデータを示したグラフである。
図15D図15Dは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定されたXRDデータを示したグラフである。
図16A図16Aは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定された相対密度、最大圧電電荷定数およびロットゲーリング係数を示したグラフである。
図16B図16Bは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定された相対密度、最大圧電電荷定数およびロットゲーリング係数を示したグラフである。
図16C図16Cは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定された相対密度、最大圧電電荷定数およびロットゲーリング係数を示したグラフである。
図17】本明細書の実施例に係る表示装置の斜視図である。
図18図17の切断線I-I’に沿って示した断面図である。
図19図18の圧電素子を詳細に表した図である。
図20A図20Aは、本明細書の実施例に係る圧電素子の音圧特性を測定するための実験条件を示した図である。
図20B図20Bは、本明細書の実施例に係る圧電素子の音圧特性を測定するための実験条件を示した図である。
図20C図20Cは、本明細書の実施例に係る圧電素子の音圧特性を測定するための実験条件を示した図である。
図21】本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層のアンチモン含有量による周波数-音圧特性を示したグラフである。
図22】本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層のアンチモン含有量による音圧特性を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書の利点と特徴、そしてそれらを達成する方法は添付の図と共に詳細には後述されている実施例を参照すると明確になるだろう。しかし、本明細書は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、異なる多様な形態で実現されるものであり、単に本実施例は、本明細書の開示を完全にし、本明細書が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本明細書は、請求項の範疇によってのみ定義される。
【0019】
本明細書の実施例を説明するため、図に示した形状、大きさ、比率、角度、個数などは、例示的なものであって、本明細書が図に示した事項に限定されるものではない。明細書全体にわたって同一参照符号は同一の構成要素を指す。また、本明細書を説明するにおいて、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に曖昧にすると判断された場合、その詳細な説明は省略する。本明細書で言及した「含む」、「有する」、「からなる」などが使用されている場合、「~だけ」が使用されていない限り、他の部分を追加することができる。構成要素を単数で表現した場合に特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む場合を含む。
【0020】
構成要素を解釈するに当たり、別途の明示的な記載がなくても誤差範囲または許容範囲を含むものと解釈する。
【0021】
位置関係についての説明である場合、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~横に」などで2つの部分の位置関係が説明されている場合、「すぐに」または「直接」が使用されていない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することもできる。
【0022】
第1、第2などが多様な構成要素を記述するために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって制限されない。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用されるものである。したがって、以下で言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であることもあり得る。
【0023】
本明細書の複数の実施例のそれぞれの特徴が、部分的に又は全体的に互いに結合又は組合せ可能であり、技術的に多様な連動および駆動が可能であり、各実施例が互いに対して独立的に実施可能であり得、関連関係で一緒に実施することもできる。
【0024】
図1は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法の順序図である。
【0025】
図1を参照すると、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法は、圧電材料組成物の原材料を秤量する工程(S101)、秤量した原材料を混合する工程(S102)、混合した原材料を成形または形成する工程(S103)、成形または形成した圧電材料組成物を焼結する工程(S104)、および焼結した圧電材料組成物に電極を形成する工程(S105)を含む。
【0026】
まず、圧電材料組成物の原材料を秤量(weighing)する工程(S101)は、母体材料を準備する方法(S10)およびシード材料を準備する方法(S20)を通じ、下記の化学式1のモル比を満足するように、それぞれ準備した材料を秤量する工程である。
【0027】
母体材料は、下記の化学式1を満足するように準備され得る。
【0028】
[化学式1]
(1-y)(NaaK1-a)(Nb1-x,Sbx)-ySrZrO3+n mol% CuO
ここで、yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5であり得る。
【0029】
例えば、母体材料は化学式1を満足し、図3で後述する母体材料を準備する方法(S10)によって準備され得、図9で後述するシード材料を準備する工程によって準備されるNaNbOに対応するNaおよびNbの当量比が調節された組成であり得る。
【0030】
シード材料は、NaNbO組成を有するが、10μm以上の大きさであり得、シードの縦横比(aspect ratio)は10~20の範囲であり、後述する図9で説明するシードの製法(S20)によって準備され得る。
【0031】
シード材料は、化学式1の圧電材料組成物に対して1~7mol%だけ添加され得、例えば3~7mol%だけ添加され得る。
【0032】
次に、秤量された原材料を混合する工程(S102)は、以前の工程で秤量した母体材料およびシード材料を混合する工程である。
【0033】
秤量された原材料を混合する工程は、母体材料で構成されたスラリーを準備する工程と母体材料を含んだスラリーにシード材料を混合する工程を含むことができる。
【0034】
例えば、母体材料で構成されたスラリーを準備する工程は、化学式1の組成を有する母体材料に、適切な量の分散剤および溶媒を添加することができる。例えば、溶媒はエタノール、メタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン(MEK;methyl ethyl ketone)、トルエン、および蒸留水の中の少なくとも一つ以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。母体材料に適切な量の分散剤(dispersant)および溶媒を添加することで、母体材料が溶媒に良く分散したスラリーを準備することができる。本明細書の実施例によると、分散剤は、母体材料を含むスラリーの粘度を減少させるために使用され得る。
【0035】
また、先で準備した母体材料のスラリーに適切な量のバインダー(binder)および可塑剤(plasticiser)をさらに追加して、ボールミーリングを行うこともできる。バインダーは、成形体(green tape)の強度、柔軟性、軟性、耐久性、靭性、および柔らかさを提供することができる。バインダーは、圧電材料組成物分野の公知物質を使用することができる。可塑剤は、成形体形成の弾性およびプラスチック特性を提供するために添加され得、可塑剤は、圧電材料組成物分野の公知物質が使用され得る。
【0036】
母体材料にシード材料を混合する工程は、前の工程で準備した母体材料を含むスラリーに、シード材料を混合する工程で、撹拌工程を通じて行なうことができ、ビーカーにマグネチックバーを投入して、低速(40rpm)で他の混合工程より相対的に短い時間、行なうことができる。
【0037】
また、母体材料を含むスラリーに、シード材料を添加および混合した後、気泡およびガスを除去する脱泡工程(de-gassing)およびエイジング(aging)工程をさらに含むことができる。
【0038】
脱泡工程は、後述する圧電材料を成形する工程で、スラリーが成形工程のための適切な粘度を合わせるための工程である。例えば、脱泡工程は、常温で撹拌機を利用して1700~2400cPsの粘度を有するように調節することができる。
【0039】
エイジング工程は、前の脱泡工程で溶媒が揮発する際、スラリーが冷却され得るので、再び常温の温度に合わせるための工程である。例えば、エイジング工程は、攪拌機を利用して、約40rpmの低速で短い時間攪拌を行なうことができる。
【0040】
次に、圧電材料を成形する工程(S103)は、前工程(S102)で準備した母体材料およびシード材料を混合したスラリーを、所定の体積と形態を有する成形体を製造する工程である。
【0041】
例えば、圧電材料を成形する工程は、テープキャスティング(tape casting)する工程、テープキャスティングした圧電材料を1次成形する工程および1次成形した圧電材料を2次成形する工程を含むことができる。
【0042】
テープキャスティングする工程は、テープキャスティング装置を利用して、前工程で準備した母体材料およびシード材料を混合したスラリーをテープキャスティングする工程で、1700~2400cPs粘度のスラリーでテープキャスティングする場合、約30μmの厚さでキャスティングされ得る。
【0043】
テープキャスティングした圧電材料を1次成形する工程は、温間等方圧プレス(WIP;warm isostatic press)で行なうことができ、テープキャスティングした圧電材料を2次成形する工程は、冷間等方圧プレス(CIP;cold isostatic press)で行なうことができ、後述する焼結工程で、焼結体の密度を高める目的で使用され得る。また、温間等方圧プレスの場合、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の場合、テープキャスティングのようなスタックおよびラミネーションの基で、成形体が準備される場合に行われ得る。
【0044】
また、圧電材料を成形する工程(S103)は、1次成形する工程後、脱脂(degreasing)工程をさらに含むことができ、脱脂工程は、溶媒または有機物を除去する工程である。脱脂工程は炉(furnace)で300~600℃の温度範囲で概ね10時間維持した後、常温まで炉冷することができる。
【0045】
次に、成形体を焼結する工程(S104)を説明する。
【0046】
焼結する工程は、二つの温度区間で進行する焼結方法で進行され得る。第1の焼結温度は、第1温度に設定した後、第1温度に温度が到達すると、第1温度より低い第2温度に冷却した後、所定の時間維持して進行され得る。例えば、第1温度は1160℃であり、第2温度は1000~1070℃であり得る。例えば、第2温度で維持する時間は、6時間であり得る。
【0047】
次に、焼結体に電極を形成する工程(S105)を説明する.
【0048】
前工程で準備した圧電材料焼結体の第1面および第1面に対向する第2面に、電極を形成することができる。例えば、電極は、銀(Ag)を塗布して形成し得るが、これに制限されるのではなく、公知の通常の電極は、制限なしに使用することができる。
【0049】
図2Aは、本明細書の実施例に係る圧電材料を示した断面図であり、図2Bは、本明細書の実施例に係る圧電材料の走査電子顕微鏡写真である。
【0050】
図2Aを参照すると、本明細書の実施例に係る圧電材料10は、第1物質11および第2物質12からなる複数の結晶粒(grain)を含むことができ、第1物質11および第2物質12からなる結晶粒は、結晶粒系(GB;grain boundary)によって区分され得る。
【0051】
第2物質12は、第1物質11の内部に形成され得、第1物質11は、第2物質12の結晶方向を基準に結晶粒が成長され、複数の第1物質11は、同一の結晶方向を有することができ、例えば、第1物質11は、(001)結晶方向を有することができる。したがって、第1物質11は、第2物質12を囲むように配置され得る。
【0052】
第2物質12は、第1物質11の中央部に位置し得る。ここで、中央部とは所定の体積を有する第1物質11において、数値的に正確に半分のものではなく、所定の体積を有する第1物質11の中心を含む所定の領域であり得るが、第1物質11の中心を外れる位置に、第2物質12が位置していても本明細書の発明の範囲に含まれ得る。例えば、第2物質12は、第1物質11内に配置されながら結晶方向成長において、複数の第1物質11の境界である結晶粒界(GB)に隣接するように偏って配置されても良い。
【0053】
また、圧電材料10は、所定の厚さで形成された第1物質11および第2物質12の焼結体の第1面と第1面に対向する第2面のそれぞれに形成された電極部13をさらに含むことができる。圧電材料10は、電極部13をさらに含む場合、圧電素子として機能することができる。
【0054】
第1物質11は、母体材料であり得る。第1物質11は、後述する母体材料の準備する方法(S10)によって準備され得る。
【0055】
第2物質12は、シード材料であり得る。第2物質12は、後述するシード材料を準備する方法(例えば、図9のS20)によって準備され得る。
【0056】
第2物質12は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法(S100)の焼結工程(S104)で、第1物質11が第2物質12の結晶方向に沿って成長できるよう、テンプレート(template)と類似する作用することができる。例えば、第1物質11は、第2物質12の結晶方向に依存し、焼結されながら結晶方向が同一な方向に配向するように成長し得る。
【0057】
図2Bを参照すると、第1物質11は、2次相のない圧電材料で、(001)方向によく配向していることが分かる。
【0058】
ここで、第1物質11は、第2物質12を基準に、配向結晶成長(template grain growth)し、第1物質11の結晶方向は、単結晶のように一方向に整列され得る。例えば、第1物質11の結晶方向は、(001)方向に整列され得、第1物質11および第2物質12を含む圧電材料10の結晶方向は、単結晶のように一方向に整列され、圧電特性が極大化され得る。
【0059】
図3は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体の製造方法の順序図である。
【0060】
図3を参照すると、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体の製造方法は、母体材料を秤量する工程(S11)、母体材料を1次混合する工程(S12)、1次混合した材料を2次混合する工程(S13)、2次混合した材料を成形または形成する工程(S14)、母体成形体を焼結する工程(S15)、および母体焼結体に電極を形成する工程(S16)を含む。
【0061】
例えば、図1の圧電材料組成物の原材料を秤量する工程(S101)に投入するために準備される母体材料は、1次混合した材料を2次混合する工程(S13)を終えた後、成形または形成、焼結、および電極形成工程は省略して投入され得る。
【0062】
まず、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体の製造方法は、母体材料を秤量する工程(S11)は、母体材料をモル比に合わせて秤量し、適切な量の溶媒を入れる工程であり得る。
【0063】
ここで、組成のモル比は、化学式1からCuOを除いたモル比であり得る。
【0064】
例えば、母体材料を秤量する工程で炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化アンチモン(Sb)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、および/または酸化ジルコニウム(ZrO)を合成しようとする組成のモル比に合わせて秤量し、ナイロン定規(jar)に入れ、適切な量の溶媒(エタノール)が添加され得る。
【0065】
次に、母体材料を1次混合する工程(S12)は、秤量した母体材料とエタノールをボールミル(ball mill)工程を利用して24時間混合および粉砕する工程である。また、1次混合する工程は、1次混合する工程後、溶媒と混合したパウダーを分離するための乾燥の工程をさらに含むことができる。ここで、乾燥する工程は、ディッシュに1次混合した母体材料を入れて100℃の温度で十分に乾燥して行なうことができる。
【0066】
また、本明細書の実施例によると、母体材料を1次混合する工程(S12)は、1次混合した材料を相合成する工程をさらに含むことができる。
【0067】
相合成する工程は、1次混合が完了した後、乾燥した混合物を乳鉢で細かく砕き、アルミナるつぼに入れて電気炉で5℃/分の昇温速度で昇温後、850℃で3時間の間、か焼(calcination)した後、常温で自然冷却する工程であり得る。
【0068】
次に、1次混合した材料を2次混合する工程(S13)は、1次混合物に酸化銅(CuO)1mol%を混ぜ、溶媒(エタノール)を一緒に入れてボールミル(ball mill)工程を利用して72時間混合および粉砕する工程であり得る。
【0069】
また、2次混合の工程は、2次混合の工程後、溶媒と混合したパウダーを分離するための乾燥する工程をさらに含むことができる。ここで、乾燥する工程は、ディッシュに2次混合した母体材料を入れて100℃の温度で十分に乾燥させて行なうことができ、例えば、3時間の間、乾燥を進行することができる。
【0070】
また、本明細書の実施例によると、1次混合した材料を2次混合する工程(S13)は、2次混合した材料を選別(sieving)する工程をさらに含むことができる。
【0071】
選別する工程は、40メッシュ(mesh)の篩を用いて、乳鉢で細かく砕いた乾燥したパウダーを篩にかけ、一定の大きさ以下の粒子で構成されたパウダーを作る工程である。40メッシュの篩を通過したパウダーは、400μm以下の大きさを有することができる。
【0072】
次に、2次混合した材料を成形する工程(S14)は、選別したパウダーを加圧成形または加圧形成する工程であり得る。
【0073】
例えば、2次混合した材料を成形または形成する工程は、円形の成形モールドに入れて一軸加圧成形または加圧形成する工程であり得、一軸加圧成形の圧力は、100kg/fであり得るが、これに限定されるものではない。
【0074】
次に、母体成形体を焼結する工程(S15)は、設定された焼結温度で焼結する工程であり得る。
【0075】
例えば、焼結温度は、1050~1070℃の範囲で行うことができ、焼結時間は6時間の間、維持することができる。
【0076】
次に、母体焼結体に電極を形成する工程(S16)は、焼結体の一面および一面に対向する他面に電極を塗布する工程であり得る。
【0077】
例えば、焼結体に塗布される電極は、銀(Ag)電極であり得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
また、電極を塗布した後、電極が塗布された焼結体をポーリングする工程をさらに含むことができ、ポーリング工程は、例えば65℃の温度に設定されたシリコンオイルの中で、4kV/mmの電場を約30分間印加して分極を整列させることができる。
【0079】
図4は、本明細書の実施例に係る圧電材料の結晶構造を示すものである。
【0080】
図4を参照すると、本明細書の化学式1の組成による圧電材料は、通常のABXの構造を有することができる。ここで、Aは第1陽イオン、Bは第2陽イオン、Xはこれらと結合する陰イオンである。第1陽イオンは、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)であり得、第2陽イオンは、ニオビウム(Nb)、アンチモン(Sb)、およびジルコニウム(Zr)であり得、陰イオンは、酸素(O)であり得る。第1陽イオンと陰イオンは、AX12の立方八面体構造を形成し、第2陽イオンは、BXで、八面体構造で結合する構造である。
【0081】
図5Aは、本明細書の実施例に係る圧電材料の斜方晶(Orthorhombic)の極方向(polar direction)を示したものであり、図5Bは、本明細書の実施例に係る圧電材料の菱面体(Rhombohedral)の極方向(polar direction)を示したものである。
【0082】
図5Aおよび図5Bを参照すると、化学式1の組成を有する圧電材料は、斜方晶(Orthorhombic)構造の場合、[001]方向に高いフィールドの電場が印加された場合、印加された電場(E)の方向と4つの極方向(polar direction)は、それぞれ54.7°の角を有することができ、化学式1の組成を有する圧電材料は、菱面体(Rhombohedral)構造の場合、[001]方向に高いフィールドの電場が印加された場合、印加された電場(E)の方向と4つの極方向(polar direction)は、それぞれ45°の角を有することができる。また、正方晶(Tetragonal)構造は、印加された電場(E)の方向と極方向(polar direction)が同一の一つの方向を有することができる。
【0083】
[001]方向に配向した圧電材料の圧電性能は、結晶成長方向に対して結晶学の方位の数が多いほど高くなり得る。したがって、正方晶(Tetragonal)構造の存在は、(001)方向に配向した圧電材料の性能を低下させ得るので、斜方晶および菱面体が共存する結晶構造を有した材料を準備することが、圧電特性をより向上させることができる。
【0084】
図6は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体のアンチモン(Sb)含有量と温度による誘電定数の値の変化を示したグラフである。
【0085】
図6(A)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0のときの相転移温度を表したグラフである。図6(B)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.01のときの相転移温度を表したグラフである。図6(C)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.03のときの相転移温度を表したグラフである。図6(D)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.04のときの相転移温度を表したグラフである。図6(E)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.05のときの相転移温度を表したグラフである。図6(F)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.055のときの相転移温度を表したグラフである。図6(G)は、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.06のときの相転移温度を表したグラフである。
【0086】
図6(A)のグラフを参照すると、アンチモン(Sb)が添加されていないときの転移温度(Tc)は、約310℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(O,orthorhombic)構造から正方晶(T,tetragonal)構造に変化する温度は、約150℃であることが分かる。
【0087】
次に、図6(B)のグラフを参照すると、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.01のとき転移温度(Tc)は、約280℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(O,orthorhombic)構造から正方晶(T,tetragonal)構造に変化する温度は、約140℃であることが分かる。
【0088】
次に、図6(C)のグラフを参照すると、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.03のとき転移温度(Tc)は、約230℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(orthorhombic)構造から正方晶(tetragonal)構造に変化する温度は、約120℃であることが分かる。
【0089】
次に、図6(D)のグラフを参照すると、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.04のとき転移温度(Tc)は、約180℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(orthorhombic)構造から擬似立方晶(P,pseudocubic)構造に変化する温度は、約115℃であることが分かる。
【0090】
次に、図6(E)のグラフを参照すると、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.05のとき転移温度(Tc)は、約170℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(orthorhombic)構造から擬似立方晶(P,pseudocubic)構造に変化する温度は、約110℃であることが分かる。
【0091】
次に、図6(F)のグラフを参照すると、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.055のとき転移温度(Tc)は、約160℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(orthorhombic)構造から擬似立方晶(P,pseudocubic)構造に変化する温度は、約90℃であることが分かる。
【0092】
次に、図6(G)のグラフを参照すると、化学式1の母体粉末組成においてxの値が0.06のとき転移温度(Tc)は、約125℃であることが分かり、母体の結晶構造が斜方晶(orthorhombic)構造から擬似立方晶(P,pseudocubic)構造に変化する温度は、約60℃であることが分かる。
【0093】
図6でアンチモン組成に伴う結晶構造の変化を参照すると、化学式1の圧電材料組成物においてアンチモンの量が増加することにより、ニオビウム(Nb)の位置にアンチモン(Sb)が固溶することにより、転移温度および斜方晶(orthorhombic)構造から正方晶(T,tetragonal)構造の転移温度(To-T)、および斜方晶(orthorhombic)構造から擬似立方晶(P,pseudocubic)構造の転移温度(To-P)が低くなることが分かる。
【0094】
例えば、化学式1の母体粉末組成でxの値が0.04以上固溶すると、斜方晶構造から正方晶構造に変更されるのではなく、斜方晶構造から立方晶構造が立方晶構造に類似した擬似立方晶構造に変更されることが分かる。
【0095】
したがって、圧電材料組成物の母体は、化学式1でxの値が0.03以下の場合には、常温で斜方晶構造を有することができ、xの値が0.04以上の場合は、常温で斜方晶と擬似立方晶が共存する構造を有することができる。
【0096】
図7は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体のアンチモン(Sb)の含有量変化による相対密度、誘電率(εT 330,dielectric constant)、圧電電荷定数(d33,Piezoelectric Charge Constant)、電気機械結合係数(kρ,Electromechanical Coupling factor)、および機械的品質係数(Qm, Mechanical quality factor)を示す図である。
【0097】
図7を参照すると、アンチモン(Sb)の含有量によって、相対密度94~96%の範囲の値を有することが分かり、これによりアンチモン(Sb)の含有量に関係なく、全ての条件で理論密度である94%を超える高い相対密度を有することが分かる。
【0098】
誘電率(εT 330,dielectric constant)は、アンチモン(Sb)の含有量が増えるほど上昇することが分かる。例えば、アンチモン(Sb)が添加されていないときは、誘電率の値は約516であり、xの値が0.04を超える場合、誘電率の値が大きく増加することが分かる。誘電率の上昇は、図6でみたように、常温で斜方晶と擬似立方晶が共存する構造に係るものと説明することができる。
【0099】
圧電電荷定数(d33,Piezoelectric Charge Constant)は、xの値が0のとき約165pC/Nの低い値を示し、xの値が0.03以上の区間で大きく増加し、xの値が0.055まで上昇し、0.055で約325pC/Nの最大値を有し、0.06では減少することが分かる。xの値が0.03以上の区間で、圧電電荷定数が増加するのは、図6で詳しく見たように常温において斜方晶と擬似立方晶が共存する構造に係るものと説明することができ、xの値が0.06で圧電電荷定数が再び減少することは、擬似立方晶構造の占める割合が増加することであり得る。
【0100】
電気機械結合係数(kρ,Electromechanical Coupling Factor)は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物が、アクチュエータ又はエキサイタに適用される場合、効率と大きな関連性を示す係数であり得る。例えば、電気機械結合係数(kρ)は、xの値に関わらず似たような数値を示し、xの値が0.055のときに最大値を有することが分かる。
【0101】
機械的品質係数(Qm, Mechanical quality factor)は、アンチモン(Sb)の含有量が増加するにつれて減少し、例えば、xの値が0.04のときに大きく減少することが分かる。機械的品質係数の減少は、先に、図6で詳しく見たように常温で斜方晶と擬似立方晶が共存する構造によるものと説明することができる。
【0102】
したがって、圧電材料組成物の母体のアンチモン(Sb)含有量変化による相対密度、誘電率(εT 330,dielectric constant)、圧電電荷定数(d33,Piezoelectric Charge Constant)、電気機械結合係数(kρ,Electromechanical Coupling factor)、および機械的品質係数(Qm, Mechanical quality factor)の結果を参照すると、斜方晶と擬似立方晶が共存する構造によって圧電特性が向上することが分かる。
【0103】
図8は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の母体のアンチモン含有量変化と温度による圧電特性を示したグラフである。図8において、化学式1で表わされる圧電材料組成物の母体組成物において、アンチモンを0、4、5.5、および6mol%に調節し、温度を常温から約200℃まで昇温しながら変化する圧電電荷定数を測定したものである。
【0104】
図8で、細い実線はアンチモン(Sb)が0mol%、点線はアンチモン(Sb)が4mol%、一点鎖線はアンチモン(Sb)が5.5mol%、太い実線はアンチモン(Sb)が6mol%を示す。
【0105】
図8を参照すると、圧電材料組成物の母体組成物にアンチモンが添加されていない場合、圧電電荷定数は約160pC/Nの低い値を示すが、常温で約200度まで大きな変化がないことが分かる。
【0106】
次に、圧電材料組成物の母体組成物にアンチモンが4mol%添加された場合、圧電電荷定数が常温で約225pC/Nの値を示した後、130℃まで徐々に上昇した後、150℃を超える場合に大きく減少することが分かる。
【0107】
次に、圧電材料組成物の母体組成物にアンチモンが5.5mol%添加された場合、圧電電荷定数が常温で約325pC/Nの値を示した後、110℃まで維持した後、130℃を超える区間で大きく減少することが分かる。
【0108】
次に、圧電材料組成物の母体組成物にアンチモンが6mol%添加された場合、圧電電荷定数が常温で約260pC/Nの値を示した後、70℃まで維持した後、90℃を超える区間で大きく減少することが分かる。
【0109】
したがって、図8を参照すると、圧電材料組成物の母体組成物において、アンチモン(Sb)が5.5mol%添加された場合、最も高い圧電電荷定数を有しながら、約110~120℃の温度区間まで圧電特性が維持されることが分かる。
【0110】
図9は、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物のシードの製造方法の順序図である。
【0111】
図9を参照すると、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物のシードの製造方法(S20)は、シード材料を1次秤量する工程(S21)、1次シードを準備する工程(S22)、2次秤量する工程(S23)、および2次シードを準備する工程(S24)を含む。
【0112】
まず、シード材料を1次秤量する工程(S21)は、1次シード材料をモル比に合わせて秤量し、適切な量の溶媒を入れる工程である。
【0113】
ここで、1次シードで合成しようとする組成のモル比は、(Bi2.5Na3.5)Nb18であり得る。したがって、以下では1次シードは、「BNNシード」とすることができる。
【0114】
例えば、シード材料を1次秤量する工程で、炭酸ナトリウム(NaCO)、酸化ニオビウム(Nb)、酸化ビスマス(Bi)および塩化ナトリウム(NaCl)を合成しようとする組成のモル比に合わせて秤量して、ナイロンジャー(jar)に入れ、適切な量の溶媒を添加することができる。例えば、溶媒は、エタノールであり得るが、これに限定されるものではない。
【0115】
また、1次秤量する工程において、酸化ニオビウム(Nb)および酸化ビスマス(Bi)と塩化ナトリウム(NaCl)の割合は、調節できる。例えば、酸化ニオビウム(Nb)および酸化ビスマス(Bi)を含む酸化物対塩化ナトリウムの割合は、1:1.5であり得るが、これに限定されるものではない。
【0116】
1次シードを準備する工程(S22)は、前の工程で秤量した材料を混合する工程と、混合した1次シード材料を相合成する工程をさらに含むことができる。
【0117】
例えば、混合した1次シード材料は、溶媒に混合され、ボールミル工程を利用して12時間の間、混合および粉砕され得る。また、1次シードを混合する工程は、混合および粉砕工程が完了した後、溶媒と混合したパウダーを分離するための乾燥工程をさらに含むことができる。ここで、乾燥する工程は、ディッシュに1次混合した母体材料を入れて100℃の温度で十分に乾燥して行なうことができる。
【0118】
例えば、相合成する工程は、1次シード材料を混合および乾燥した後、混合物を乳鉢で細かく砕き、アルミナるつぼに入れて電気炉で5℃/分の昇温速度で昇温した後、1100-1175℃で6時間の間、か焼(calcination)した後、常温で自然冷却する工程であり得る。図11で後述するように、か焼が完了したBNNシードは、所定の板状の粒子を有することができる。ここで、1次シード材料を相合成する工程は、1次か焼と言うことができる。
【0119】
1次シードを準備する工程(S22)は、か焼が完了した1次シードを洗浄する工程をさらに含むことができる。
【0120】
例えば、1次シードを洗浄する工程は、1次シードパウダーに付着した塩化ナトリウム(NaCl)を除去するために、80℃以上の水を用いて5~10回洗浄した後、フィルタリングし得る。
【0121】
次に、2次秤量する工程(S23)は、1次シードパウダーと1次シードパウダーのビスマス(Bi)を置換するためのナトリウムを含む物質と、適切な量の溶媒を入れて組成のモル比に合うように秤量する工程であり得る。
【0122】
ここで、2次シードの組成のモル比は、NaNbOであり得る。したがって、以下では、2次シードは、「NNシード」ということができる。
【0123】
例えば、2次秤量する工程で、炭酸ナトリウム(NaCO)および塩化ナトリウム(NaCl)を合成しようとする組成のモル比に合わせて秤量して、ビーカーに入れ、適切な量の溶媒を添加することができる。例えば、溶媒はエタノールであり得るが、これに限定されるものではない。
【0124】
次に、2次シードを準備する工程(S24)は、2次秤量した物質を混合し、トポケミカル反応を行なう工程を含むことができる。
【0125】
例えば、2次秤量した物質を混合する工程は、攪拌工程を通じて行なうことができ、ビーカーにマグネチックバーを投入して、80rpmで6時間の間、行なうことができる。
【0126】
また、2次シードを準備する工程は、混合した第2秤量した物質を乾燥させるための乾燥工程をさらに含むことができる。ここで、乾燥する工程は、ディッシュに混合物を入れて100℃の温度で3時間の間、乾燥を行うことができる。
【0127】
例えば、トポケミカル反応を行なう工程は、乾燥した2次シード材料をるつぼに入れて、975℃で6時間の間、行い得る。トポケミカル反応を行なうことで、1次シードに含まれていたビスマス(Bi)は、ナトリウム(Na)に交換され得る。トポケミカル反応については、図10を参照し、詳細に後述することにする。
【0128】
ここで、トポケミカル反応を進める工程は、2次か焼ということができる。
【0129】
2次シードを準備する工程(S24)は、トポケミカル反応が完了した2次シードを洗浄する工程をさらに含むことができる。
【0130】
例えば、2次シードを洗浄する工程は、NNシードに付着した塩化ナトリウム(NaCl)を除去するために、80℃以上の水を用いて5~10回洗浄した後、フィルタリングし得る。
【0131】
また、洗浄およびフィルタリング後にもNNシードに残存するビスマス(Bi)を除去するために、硝酸を利用して数回酸処理後に、水で中和洗浄することができる。例えば、ビーカーに硝酸を注いだ後、NNシードを入れて10分ごとに振り、これを1時間~2時間繰り返して行なうことができる。
【0132】
図10は、2次シードを準備する工程で発生する結晶の変化を図に示したものである。図10で左に示したBi[(Bi0.5Na3.5)Nb16]の組成を有する結晶構造は、1次シードを示したものであり、以下では、BNNシードということができる。次に、右に示したNaNbO組成を有する結晶構造は、2次シードを示したものであり、以下では、NNシードということができ。
【0133】
図10を参照すると、Bi[(Bi0.5Na3.5)Nb16]の組成を有する1次シードの結晶構造は、上部からNbO八面体とNbO八面体の間にナトリウム(Na)およびビスマス(Bi)が混在する層、(Bi+層、擬似-ペロブスカイト(Pse)層、(Bi+層およびNbO八面体とNbO八面体の間にナトリウム(Na)およびビスマス(Bi)が混在する層が反復する構造であり得る。次に、NaNbO組成を有する2次シードの結晶構造は、NbO八面体を中心において、ナトリウム(Na)が囲む構造を有することができる。
【0134】
図9の2次シードを準備する工程(S24)によって、1次シードは、トポケミカル反応(topochemical reaction)によって、2次シードに変換され得る。ここで、トポケミカルとは、固相化学反応において、母結晶の方位と生成物の結晶方位がそれぞれ異なる方位関係を有する反面、結晶粒子の形態が保存される化学反応を意味する。
【0135】
したがって、図10で示したように、1次シードのBi元素がNa元素に置き換わる過程で、NbO八面体とNbO八面体の間に、ナトリウム(Na)およびビスマス(Bi)が混在した層、(Bi2+層、擬似-ペロブスカイト(Pseudo-perovskite)層は、すべてNaNbO組成を有する単一構造に置換され得る。
【0136】
図11は、図9の1次シードを準備する工程で、相合成温度条件を変化して製造された1次シードを、走査電子顕微鏡で撮影した写真である。図11の(a)~(d)の走査電子顕微鏡撮影写真は、図9で説明したように、1次シードを準備する工程の相合成温度をそれぞれ1100℃、1125℃、1150℃および1175℃に変更したものである。
【0137】
図11を参照すると、1次シードを準備する工程の相合成温度を1100℃に設定した場合、1次シードの大きさは、約5~10μmの大きさであることが分かる。
【0138】
次に、相合成温度を1125℃に設定した場合、1次シードの大きさが大きく増加することが分かり、相合成温度を1150℃に設定した場合、1次シードの大きさがさらに増加することが分かる。
【0139】
次に、相合成温度を1175℃に設定した場合、1次シードの大きさが20μm以上の巨大な板状の形態に成長しながら、シードが一塊になっていて、シードの使用が困難であることが分かる。
【0140】
図12は、図11の(a)、(b)、および(c)シードに対して測定したXRDデータを示したグラフである。図12で、(a)、(b)、および(c)に示したXRD回折ピークは、それぞれ1次シードを製造する工程で相合成温度を、1100℃、1125℃、および1150℃に設定して得られた1次シードを測定したものである。
【0141】
図12を参照すると、1次シードを準備する工程で、相合成温度が増加することによって、(00l)関連回折面である(004)、(006)、および(008)回折面のピーク値が、はっきりしていることが分かる。これにより、1次シードを準備する工程で、相合成温度が高くなるほど、層状構造を有する板状形態のBNNシードの生成が容易であることが分かる。ここで、(00l)は、ミラー指数(miller indices)の面指数を表す(hkl)で、「l」であり得る。
【0142】
また、22°近くで板状型回折面である(0012)回折面のピーク値と、シードの厚さを代弁する(101)回折面のピーク値の割合が、図12の(c)のXRDピークが最も優れていることが分かる。ここで、(0012)回折面のピーク値と(101)回折面のピーク値の割合は、1次シードの縦横比(Aspect ratio)の尺度として考慮され得る。
【0143】
図13は、図9の2次シード準備工程で洗浄条件によって撮影した、走査電子顕微鏡写真である。図13の(a)の走査電子顕微鏡写真は、2次シードを準備する工程でトポケミカル反応後、60%濃度の硝酸溶液で1時間洗浄した後、乾燥して撮影した写真である。図13の(b)の走査電子顕微鏡写真は、2次シードを準備する工程でトポケミカル反応後、30%濃度の硝酸溶液で2時間洗浄した後、乾燥して撮影した写真である。図13の(c)の走査電子顕微鏡写真は、2次シードを準備する工程でトポケミカル反応後、60%濃度の硝酸溶液で30分洗浄した後、再び10%濃度の硝酸溶液で1時間洗浄した後、乾燥して撮影した写真である。
【0144】
図13の(a)の走査電子顕微鏡写真を参照すると、60%の濃度の硝酸溶液で1時間の酸化処理を進めた場合、2次シードの表面に剥離が発生し、また2次シードの板状形態が崩れることが分かる。(図13(a)の円領域を参照)
【0145】
図13の(b)の走査電子顕微鏡写真を参照すると、30%濃度の硝酸溶液で2時間の間、酸化処理を行った場合、2次シードの板状形態が崩れることはなかったが、表面剥離が発生し、一部のNNシードで固まる現象が発生することが分かる。(図13(b)の円領域を参照)
【0146】
図13の(c)の走査電子顕微鏡写真を参照すると、60%濃度の硝酸溶液で30分洗浄した後、再び10%濃度の硝酸溶液で1時間の間、酸化処理を進めた場合、表面状態が優秀なNNシードが得られることが分かる。
【0147】
図14は、図9によって準備した2次シードを洗浄した後、測定したXRDデータを示したグラフである。図14で得られたXRDピークは、図10で説明したトポケミカル反応後に製造された2次シードを硝酸ベースの溶液で洗浄した後、乾燥した2次シードで測定したものである。
【0148】
図14を参照すると、NN2次シードは、2次相のないペロブスカイト相で形成されたことが分かり、特に(100)方向のピーク強度が最も大きいことを参照すると、2次シードは(00l)方向によく成長したことが分かる。
【0149】
図15A図15Dは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で、1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定したXRDデータを示したグラフである。図15A図15Dで、圧電材料組成物に対してNNシードは、1、3、5および7mol%に調節して投入して成形体を準備し、それぞれ準備した成形体は、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1000℃、1030℃、および1070℃に変更して6時間の間、維持して焼結した後、それぞれの試片に対してXRD回折データを測定した。
【0150】
図15Aは、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1000℃に変更し、6時間維持して焼結した後、それぞれの試片に対するXRD回折データである。図15Bは、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1030℃に変更し、6時間維持して焼結した後、それぞれの試片に対するXRD回折データである。図15Cは、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1060℃に変更し、6時間維持して焼結した後、それぞれの試片に対するXRD回折データである。図15Dは、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1070℃に変更し、6時間維持して焼結した後、それぞれの試片に対するXRD回折データである。
【0151】
図15A図15Dで、一方向への配向を示す(00l)で表現される(001)および(002)の回折ピークの積分面積と、(00l)で表現されない(110)、(111)、(210)、および(211)の回折ピークの積分面積の相対的な分率を通じて、焼結工程を完了した本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の配向程度を確認することができる。
【0152】
まず、配向精度(p)は、下記の数式1で計算され得る。
【0153】
【数1】
【0154】
ここで、I(00l)は、(00l)で表現される(001)および(002)の回折ピーク(peak)であり、Inon-(00l)は、(00l)で表されない、(110)、(111)、(210)、および(211)の回折ピーク(peak)を意味する。
【0155】
次に、ロットゲーリング係数(lotgering factor,Lf (%))は、次の数式2で計算され得る。
【0156】
【数2】
【0157】
ここで、pは先に数式1によって計算される配向程度であり、pは無作為配向した同一組成の圧電材料組成物でI00lの分率である。
【0158】
図15A図15Dを参照すると、2次シードが1mol%添加された試片の場合、1030℃まで低い配向程度を示し、1060℃で急激な配向程度を示し、1070℃で再び配向程度が減少することが分かる。例えば、図15Aおよび図15Bのグラフを参照すると、2次シードが1mol%添加された試片の場合、1030℃まで(00l)で表現される(001)および(002)の回折ピーク以外に、(110)、(210)、および(211)の回折ピークが、ある程度観察されることが分かる。図15Cのグラフを参照すると、2次シードが1mol%添加された試片の場合、2次焼結温度が1060℃に上昇した場合、(001)および(002)の回折ピーク対比(110)、(210)、および(211)の回折ピークが減少したことが分かる。図15Dのグラフを参照すると、2次シードが1mol%添加された試片の場合、2次焼結温度が1070℃に上昇した場合、(00l)で表現される(001)および(002)の回折ピークが減少し、配向程度が再び減少することが分かる。
【0159】
次に、2次シードが3、5および7mol%添加された試片の場合、焼結温度と関係なく安定的な配向特性が観察された。
【0160】
図15A図15Dに示した回折データを基に計算したロットゲーリング係数は、後述の図16Cに示した。
【0161】
図16A図16Cは、本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法において、秤量する工程で、1次シードに対する2次シードの混合割合を調節し、焼結する工程で焼結温度を調節して測定した相対密度、最大圧電電荷定数およびロットゲーリング係数を示したグラフである。
【0162】
図16A図16Cで、太い実線は、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1000℃以下に変更して6時間維持して焼結した場合で、1点鎖線は、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1030℃以下に変更して6時間維持して焼結した場合である。点線は、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1060℃以下に変更して6時間維持して焼結した場合であり、細い実線は、1次焼結温度である1160℃まで昇温した後、2次焼結温度である1070℃以下に変更して6時間維持して焼結した場合である。
【0163】
図16Aを参照すると、2次焼結温度を1030℃以下の条件で設定した場合、相対密度は約88~91%の焼結密度を示し、1060℃以上の条件で設定した場合、相対密度は約89~92%の焼結密度を示した。したがって、2次焼結温度を増加させることにより、相対密度が小幅に上昇することが分かる。
【0164】
図16Bを参照すると、最大圧電電荷定数は、2次焼結温度が1000℃~1060℃区間では、2次焼結温度が上昇するにつれて向上し、1070℃では1060℃より減少することが分かる。
【0165】
また、最大圧電電荷定数は、2次シードの添加比率が3mol%までは増加する傾向を示し、5mol%以上添加される場合は、減少傾向を示すことが分かる。
【0166】
2次焼結温度が1060℃の条件で、2次シードを添加しない場合の圧電材料組成物の最大圧電電荷定数は322pC/Nであり、2次焼結温度が1060℃の条件で、2次シードが3mol%添加された場合の圧電材料組成物の最大圧電電荷定数は、400pC/Nであり、約21%特性が向上した。
【0167】
図16Cを参照すると、配向程度を示すロットゲーリング係数は、2次シードの含有量が増えるほど増加する傾向を示したが、2次シードが3mol%以上の条件で、約60~70%の範囲に飽和することが分かる。
【0168】
したがって、図16A図16Cを参照すると、圧電材料組成物に2次シードであるNNシードの添加量は、3mol%を超えて添加される場合、配向効果が大きく向上せず、圧電特性は低下することが分かる。
【0169】
図17は、本明細書の実施例に係る表示装置の斜視図であり、図18は、図17の切断線I-I’に沿って示した断面図である。
【0170】
図17および図18を参照すると、本明細書の実施例に係る表示装置は、映像を表示する表示パネル100および表示パネル100の裏面(又は背面)で表示パネル100を振動させる圧電素子200を含むことができる。本明細書のすべての実施形態による各表示装置のすべての構成要素は、動作可能に結合され、構成される。
【0171】
表示パネル100は、映像、例えば、電子映像(electronic image)またはデジタル映像(digital image)を表示することができる。例えば、表示パネル100は、光を出力し、映像を表示することができる。表示パネル100は、液晶表示パネル、有機発光表示パネル、量子ドット発光表示パネル、マイクロ発光ダイオード表示パネル、および電気泳動表示パネル等のあらゆる形態の表示パネル、又は曲面形表示パネルであり得る。表示パネル100は、フレキシブル表示パネルであり得る。例えば、表示パネル100は、フレキシブル発光表示パネル、フレキシブル電気泳動表示パネル、フレキシブル電子湿潤表示パネル、フレキシブルマイクロ発光ダイオード表示パネル、又はフレキシブル量子ドット発光表示パネルであり得、これに限定されるものではない。
【0172】
本明細書の実施例に係る表示パネル100は、複数の画素の駆動によって映像を表示する表示領域(AA)を含むことができる。また、表示パネル100は、表示領域(AA)を囲む非表示領域(IA)をさらに含むことができるが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0173】
圧電素子200は、表示パネル100の背面で表示パネル100を振動させることにより、表示パネル100の振動を基に音響および/またはハプティックフィードバックを使用者に提供することができる。圧電素子200は、表示パネル100を直接振動させることができるよう、表示パネル100の背面に具現され得る。
【0174】
本明細書の実施例として、圧電素子200は、表示パネル100に表示される映像と同期する振動駆動信号によって振動し、表示パネル100を振動させることができる。他の実施例として、圧電素子200は、表示パネル100上に配置するか、表示パネル100に内蔵したタッチパネル(又はタッチセンサー層)に対する使用者のタッチに同期するハプティックフィードバック信号(又は触覚フィードバック信号)によって振動し、表示パネル100を振動させることができる。これにより、表示パネル100は圧電素子200の振動によって振動し、音響およびハプティックフィードバックの中の少なくとも一つを使用者(又は視聴者)に提供することができる。
【0175】
本明細書の実施例に係る圧電素子200は、表示パネル100の表示領域(AA)と対応する大きさで具現され得る。圧電素子200の大きさは、表示領域(AA)の大きさに対して0.9倍~1.1倍であり得、これに限定されるものではない。例えば、圧電素子200の大きさは、表示領域(AA)の大きさと同一又は小さくても良い。例えば、圧電素子200の大きさは、表示パネル100の表示領域(AA)の大きさと同じか、ほぼ同一の大きさを有することができるので、表示パネル100の大部分の領域をカバーでき、圧電素子200で発生する振動が表示パネル100の全体を振動させることができるため、音響の定位感が高く、使用者の満足度を改善し得る。また、表示パネル100と圧電素子200の間の接触面積(又はパネルカバレッジ)が増加し、表示パネル100の振動領域が増加し得るので、表示パネル100の振動に伴い発生する中低音域音響が改善され得る。そして、大型表示装置に適用される圧電素子200は、大型(又は大面積)の表示パネル100全体を振動させることができるので、表示パネル100の振動に伴う音響の定位感がさらに向上し、向上した音響効果を実現することができる。したがって、本明細書の実施例に係る圧電素子200は、表示パネル100の背面に配置され、表示パネル100を上下(又は前後)方向に十分に振動させることができるので、装置又は表示装置の前方に音響を出力することができる。
【0176】
本明細書の実施例に係る圧電素子200は、フィルム形態で具現化され得る。圧電素子200がフィルム形態で具現されるため、表示パネル100より薄い厚みを有することができるので、圧電素子200の配置に係る表示装置の厚み増加が最小限に抑えられる。例えば、圧電素子200は、表示パネル100を音響振動板として使用する音響発生モジュール、音響発生装置、フィルムアクチュエータ、フィルム型圧電複合体アクチュエータ、フィルムスピーカー、フィルム型圧電スピーカー又はフィルム型圧電複合体スピーカー等で表現され得、この用語に限定されるものではない。他の実施例としては、圧電素子200が、表示パネル100の背面に配置されず、表示パネルではない振動対象物(vibration object)に適用され得る。例えば、振動対象物は、非表示パネル、木、プラスチック、ガラス、布、自動車の内装材、自動車のガラス窓、建物の室内天井、建物のガラス窓、航空機の内装材、および航空機のガラス窓などであり得、これに限定されるものではない。例えば、非表示パネルは、発光ダイオード照明パネル(又は装置)、有機発光照明パネル(又は装置)又は、無機発光照明パネル(又は装置)等であり得、これに限定されるものではない。この場合には、振動板に振動対象物が適用され得、圧電素子200は、振動対象物を振動させて音響を出力することができる。
【0177】
本明細書の実施例に係る圧電素子200は、振動構造物230、振動構造物230および表示パネル100の間に配置された連結部材210をさらに含むことができる。
【0178】
本明細書の実施例によると、連結部材210は、少なくとも一つの基材を含み、基材の一面又は両面に付着した接着層を含む、又は単一層の接着層で構成され得る。
【0179】
例えば、連結部材210は、フォームパッド、両面テープ、又は接着剤等を含むことができ、これに限定されるものではない。例えば、連結部材210の接着層は、エポキシ(epoxy)、アクリル(acryl)、シリコン(silicone)、ウレタン(urethane)を含むことができ、これに限定されるわけではない。
【0180】
本明細書の実施例に係る装置は、表示パネル100の背面に配置された支持部材300をさらに含むことができる。
【0181】
支持部材300は、表示パネル100の背面を覆うことができる。例えば、支持部材300は、ギャップ空間(GS)を挟んで表示パネル100の背面全体を覆うことができる。例えば、支持部材300は、グラス材質と、金属材質およびプラスチック材質の中の少なくとも一つ以上の材質を含むことができる。例えば、支持部材300は、背面構造物又はセット構造物であり得る。例えば、支持部材300は、カバーボトム(Cover Bottom)、プレートボトム(Plate Bottom)、バックカバー(Back Cover)、ベースフレーム(Base Frame)、メタルフレーム(Metal Frame)、メタルシャーシ(Metal Chassis)、シャーシベース(Chassis Base)、またはm-シャーシなどの他の用語で表現され得る。したがって、支持部材300は、表示パネル100の背面に配置されるあらゆる形態のフレーム又は板状構造物等で具現化され得る。
【0182】
本明細書の実施例に係る装置は、ミドルフレーム400をさらに含むことができる。
【0183】
ミドルフレーム400は、表示パネル100の背面端と支持部材300の前面端部分の間に配置され得る。ミドルフレーム400は、表示パネル100の端部分と支持部材300の端部分の中の一つ以上をそれぞれ支持し、表示パネル100と支持部材300それぞれの側面の中の一つ以上を囲むことができる。ミドルフレーム400は、表示パネル100と支持部材300の間にギャップ空間(GS)を構成することができる。ミドルフレーム400は、ミドルキャビネット、ミドルカバー、またはミドルシャーシなどと表現され得、用語に限定されるものではない。
【0184】
本明細書の実施例に係るミドルフレーム400は、第1支持部分410と第2支持部分430を含むことができる。
【0185】
第1支持部分410は、表示パネル100の背面端と支持部材300の前面端の間に配置されることで、表示パネル100と支持部材300の間にギャップ空間(GS)を構成することができる。第1支持部分410の前面は、第1フレーム連結部材401を介して表示パネル100の背面端の部分と結合、又は連結され得る。第1支持部分410の背面は、第2フレーム連結部材403を介して支持部材300の前面端の部分と結合、又は連結し得る。例えば、第1支持部分410は、四角形態の単一額構造を有する、又は複数の分割バー形態を有する額縁構造を含むことができる。
【0186】
第2支持部分430は、装置の厚さ方向(Z)と平行に第1支持部分410の外側面に垂直に結合し得る。第2支持部分430は、表示パネル100の外側面と支持部材300の外側面の中の一つ以上を囲むことにより、表示パネル100と支持部材300それぞれの外側面を保護することができる。第1支持部分410は、第2支持部分430の内側面から表示パネル100と支持部材300の間のギャップ空間(GS)側に突出し得る。
【0187】
図19図18の圧電素子を詳細に表した図である。
【0188】
図19を参照すると、本明細書の実施例に係る圧電素子200は、振動構造物230を含むことができ、振動構造物230は、圧電素子層231および圧電素子層231の第1面に配置された第1電極部233および第1面に対向する第2面に配置された第2電極部235を含むことができる。
【0189】
圧電素子層231は、第1物質層231aおよび第1物質層231aによって囲まれた第2物質層231bを含む。本明細書の実施例によると、一つの第1物質層231aおよび第2物質層231bは、同一の結晶方向を有する一つの結晶粒(grain)を形成することができ、隣り合う他の一つの結晶粒(grain)を成す他の一つの第1物質層231aおよび第2物質層231bと接する部分で、結晶粒系(GB;grainboundary)が形成され得る。
【0190】
本明細書の実施例によると、第1物質層231aは、第2物質層231bの結晶方向を基に結晶粒が成長し、複数の第1物質層231aは、同一の結晶方向を有することができ、例えば、(001)結晶方向を有することができる。
【0191】
第1電極部233および第2電極部235は、圧電素子分野に使用される通常の金属電極が使用され得、例えば銀電極が使用され得る。
【0192】
また、図19で、振動構造物230は、単一層で示されているが、求められる圧電素子の性能値によって、さらに積層されるよう構成し得る。
【0193】
図20A図20Cは、本明細書の実施例に係る圧電素子の音圧特性を測定するための実験条件を示した図である。
【0194】
図20Aおよび図20Bを参照すると、表示パネル100の一面に縦横60mmの幅を有する正方形の圧電素子200をタイル形態で2つの行および2つの列で、4つのアレイで並列連結した。ここで、圧電素子200の圧電素子層231は、0.5mmの厚さで形成され、圧電素子層231の横および縦は、圧電素子200と同一に60mmの幅で形成した。なお、圧電素子層231の上部・下部の第1電極部233および第2電極部235は、銀(Silver)電極で構成し、第1電極部233および第2電極部235のそれぞれの一面に駆動電圧印加のための第1電極部連結線270および第2電極部連結線250を連結した。
【0195】
図20Cを参照すると、音圧測定は、常用装備のAudio Precision社のAPX525装置を利用し、入力電圧を5Vrmsに設定しながら、サインスイープ(sine sweep)を100Hz~20kHzの範囲で、圧電素子200にアンプ(AMP;amplifier)を通じて信号を増幅して印加し、表示パネルから30cm離隔した位置でマイクを利用して音圧を測定し、Audio Precision社のAPX525装置を用いて、測定した音圧を記録した。ここで、測定された音圧は1/3オクターブ平滑化(octave smoothing)で補正した。サインスイープは、短時間でスイープする方式であり得、この方式に限定されるものではない。
【0196】
図21は、本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層のアンチモン含有量による周波数-音圧特性を示したグラフであり、図22は、本明細書の実施例による圧電素子の圧電層のアンチモン含有量による音圧特性を示したグラフである。図21で、横軸は周波数(Frequency,Hz)を表し、縦軸は音圧(Sound Pressure Level,dB)を表す。
【0197】
表1は、図21で測定された周波数による音圧測定値を低音域帯、中音域帯、および高音域帯に区分して平均音圧を抽出したものである。
【0198】
[表1]
【0199】
図21図22、および表2を参照すると、本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層231に含まれるアンチモン(Sb)が4.0mol%添加された場合の100Hz~20kHz周波数範囲の全帯域平均音圧は60.9dBであり、100Hz~1kHz周波数範囲の低音域帯の平均音圧は53.7dBであり、1kHz~10kHz周波数範囲の中音域帯の平均音圧は63.6dBであり、10kHz~20kHz周波数範囲の高音域帯の平均音圧は75.8dBであった。
【0200】
次に、本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層231に含まれるアンチモン(Sb)が5.5mol%添加された場合の100Hz~20kHz周波数範囲の全帯域平均音圧は65.2dBであり、100Hz~1kHz周波数範囲の低音域帯の平均音圧は57.6dBであり、1k~10kHz周波数範囲の中音域帯の平均音圧は68.7dBであり、10kHz~20kHz周波数範囲の高音域帯の平均音圧は78.7dBであった。
【0201】
次に、本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層231に含まれるアンチモンが6.0mol%添加された場合の100Hz~20kHz周波数範囲の全帯域平均音圧は51.2dBであり、100Hz~1kHz周波数範囲の低音域の平均音圧は43.6dBであり、1k~10kHz周波数範囲の中音域帯の平均音圧は54.8dBであり、10kHz~20kHz周波数範囲の高音域帯の平均音圧は64.6dBであった。
【0202】
したがって、図21図22、および表2を参照すると、本明細書の実施例に係る圧電素子の圧電層231に含まれるアンチモン(Sb)が5.5mol%添加された場合、平均音圧は約65.2dBであり、これはアンチモン(Sb)含有量が4.0mol%の圧電素子対比約4.3db高く、アンチモン(Sb)含有量が6.0mol%の圧電素子対比約14.0db高い音圧特性を示すことが分かる。また、低音域帯、中音域帯、および高音域帯の全ての音域帯において、圧電素子の圧電層231に含まれるアンチモン(Sb)含有量が5.5mol%の音圧特性が、向上することが分かる。
【0203】
本明細書の実施例に係る圧電材料組成物、これを製造する方法、圧電素子、および圧電素子を含む表示装置は、次のように説明され得る。
【0204】
本明細書のいくつかの実施例に係ると、圧電材料組成物は、化学式1で表わされる。
【0205】
[化学式1]
(1-y)(NaaK1-a)(Nb1-x,Sbx)-ySrZrO3+n mol% CuO
(yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5である。)
【0206】
本明細書のいくつかの実施例に係ると、xは0.04~0.055であり得る。
【0207】
本明細書のいくつかの実施例によると、圧電材料組成物は、第1物質および第1物質によって囲まれた第2物質を含むことができる。
【0208】
本明細書のいくつかの実施例によると、第2物質は、NaNbOであり得る。
【0209】
本明細書のいくつかの実施例によると、第2物質は、化学式1の圧電材料組成物に対して3~7mol%添加され得る。
【0210】
本明細書のいくつかの実施例によると、第1物質は、化学式1で添加された第2物質の含有量分だけ調節され得る。
【0211】
本明細書のいくつかの実施例によると、第1物質は、(001)単一方向に結晶配向した複数の結晶粒を含み、複数の結晶粒の内部には、第2物質が配置され、複数の結晶粒は第2物質から反応して成長し得る。
【0212】
本明細書の実施例に係る圧電材料組成物の製造方法は、母体材料およびシード材料を秤量する工程、母体材料およびシード材料を混合してスラリーを準備する工程、スラリーを成形して成形体を準備する工程、および成形体を焼結して焼結体を準備する工程を含み、秤量された母体材料およびシード材料は、化学式1で表わされる。
【0213】
[化学式1]
(1-y)(NaaK1-a)(Nb1-x,Sbx)-ySrZrO3+n mol% CuO
(yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5である。)
【0214】
本明細書のいくつかの実施例によると、xは0.04~0.055であり得る。
【0215】
本明細書のいくつかの実施例によると、シード材料はNaNbO単結晶であり得る。
【0216】
本明細書のいくつかの実施例によると、シード材料は、化学式1の圧電材料組成物に対して3~7mol%添加され得る。
【0217】
本明細書のいくつかの実施例によると、焼結体を準備する工程は、第1温度において行われる第1焼結工程、および第2温度において行われる第2焼結工程を含み、第1温度は1160℃であり、第2温度は1030~1070℃であり、第1焼結工程の第1温度は0時間維持され、第2焼結工程の第2温度は6時間維持され得る。本明細書のいくつかの実施例によると、母体材料およびシード材料を秤量する工程を行う前に、母体材料は、母体材料を秤量する工程、および母体材料を混合する工程によって準備され得る。
【0218】
本明細書のいくつかの実施例によると、母体材料およびシード材料を秤量する行われる前に、シード材料は、シード材料を1次秤量する工程、1次シードを準備する工程、1次シードを含み2次秤量する工程、および2次シードを準備する工程によって準備され、1次シードは(Bi0.5Na0.5)NbOであり、2次シードはNaNbOであり得る。
【0219】
本明細書のいくつかの実施例によると、2次シードを準備する工程は、1次シードおよび炭酸ナトリウム(NaCO)および塩化ナトリウム(NaCl)が秤量された混合物を975℃で6時間の間、熱処理が行われ得る。
【0220】
本明細書の実施例に係る圧電素子は、第1物質層および第1物質層によって囲まれた第2物質層を含む圧電素子層、および圧電素子層の第1面に配置された第1電極部、および第1面に対向する第2面に配置された第2電極部を含み、圧電素子層は、化学式1の組成を満足する、圧電素子を含む。
【0221】
[化学式1]
(1-y)(NaaK1-a)(Nb1-x,Sbx)-ySrZrO3+n mol% CuO
(yは0.01≦y≦0.10であり、aは0.4≦a≦0.6であり、xは0≦x≦0.06であり、nは0.5≦x≦1.5である。)
【0222】
本明細書のいくつかの実施例によると、xは0.04~0.055であり得る。
【0223】
本明細書のいくつかの実施例によると、第2物質層は、NaNbOであり得る。
【0224】
本明細書のいくつかの実施例によると、第2物質層は、化学式1の圧電素子層に対して3~7mol%添加され得る。
【0225】
本明細書のいくつかの実施例によると、第1物質層は、化学式1で添加された第2物質の含有量分だけ調節され得る。
【0226】
本明細書のいくつかの実施例によると、第2物質層は、10~20μmの大きさを有することができる。
【0227】
本明細書のいくつかの実施例によると、第2物質層の縦横比は、10~20の範囲を有することができる。
【0228】
本明細書のいくつかの実施例によると、第1物質層は、(001)単一方向に結晶配向した複数の結晶粒を含み、複数の結晶粒の内部には第2物質層が配置され、複数の結晶粒は第2物質層から反応して成長し得る。
【0229】
本明細書のいくつかの実施例に係る表示装置は、画像を表示する表示パネル、および表示パネルの背面に配置される圧電素子を含む。
【0230】
以上添付した図面を参照し、本明細書の実施例をさらに詳しく説明したが、本明細書は必ずしもこのような実施例に極限されるものではなく、本明細書の技術思想から逸脱しない範囲内で様々に変形実施され得る。したがって、本明細書に開示された実施例は、本明細書の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例によって本明細書の技術思想の範囲が限定されるものではない。したがって、以上に記述した実施例はあらゆる面で例示的であり、限定的でないものと理解されなければならない。本明細書の保護範囲は、請求範囲によって解釈されなければならず、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本明細書の権利範囲に含まれるものと解されなければならない。
【符号の説明】
【0231】
10:圧電材料組成物
11:第1物質
12:第2物質
13:電極部
100:表示パネル
200:圧電素子
210:連結部材
230:振動部
231:圧電素子層
231a:第1物質層
231b:第2物質層
233:第1電極部
235:第2電極部
300:支持部材
400:ミドルフレーム
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
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図15A
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