(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置、電源装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240424BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240424BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240424BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20240424BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240424BHJP
【FI】
H01M50/262 P
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/251
H01M50/262 M
H01M50/262 S
H01M50/264
(21)【出願番号】P 2021511107
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050064
(87)【国際公開番号】W WO2020202663
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019066826
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181970(JP,A)
【文献】特開2015-187911(JP,A)
【文献】特開2011-129509(JP,A)
【文献】特開2016-033909(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
を備える電源装置であって、
前記複数の締結部材の各々は、
前記二次電池セルの積層方向に延長された板状バーと、
前記板状バーの長手方向の両端に固定された係止ブロックと、
を備えており、
前記板状バーと前記係止ブロックは別部材であって、前記係止ブロックは、前記板状バーよりも肉厚に形成されており、
前記係止ブロックが、前記板状バーの端面
に、連続した線状の接合部を介して固定されて、前記板状バーの内側面よりも前記エンドプレートの外周面に向かって突出しており、
前記エンドプレートは、前記係止ブロックが案内される嵌合部を
両側の外周面に有し、さらに、前記嵌合部の前記電池積層体側には、前記係止ブロックと当接するストッパ部を設けており、
前記嵌合部に案内された前記係止ブロックが前記ストッパ部に係止されて、前記エンドプレートを前記締結部材で締結してなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記締結部材の外側表面において、前記係止ブロックと前記板状バーとの接合部分が、同一平面状に形成されてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の電源装置であって、
前記係止ブロックが、複数のボルトを介して前記エンドプレートの外周面に固定されてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記板状バーの内側面に対する前記係止ブロックの突出量(d)が、前記ストッパ部の高さ(h)よりも大きく、
前記ストッパ部の先端面と前記板状バーの内側面との間に隙間が形成されてなる電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記板状バーと前記係止ブロックが、鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金のうちのいずれかである電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記板状バーが、前記電池積層体の側面を被覆する上下幅を有する金属板である電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記板状バーは、上下の端縁部のいずれか一方又は両方が内側に折曲加工されて、前記電池積層体の上下面を覆う折曲片が形成されてなる電源装置。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記係止ブロックは、前記板状バーよりも剛性が高く、
前記板状バーは、前記係止ブロックよりも延伸性が高く構成されてなる電源装置。
【請求項9】
請求項1ないし
8のいずれか一項に記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項10】
請求項1ないし
8のいずれか一項に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可能とすると共に、該二次電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【請求項11】
外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレートと、
前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
を備える電源装置の製造方法であって、
前記二次電池セルの積層方向に延長された板状バーの長手方向の両端に、板状バーよりも肉厚に形成された係止ブロックを線状に接合して前記締結部材を得る工程と、
前記電池積層体の両端面を、前記係止ブロックを係止するためのストッパ部を形成した一対のエンドプレートで覆い、該エンドプレート同士を前記締結部材で締結する工程と、
を含む電源装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の電源装置の製造方法であって、
前記締結部材を得る工程が、前記板状バーの端面に
前記係止ブロックを溶接により接合する工程を含んでなる電源装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電源装置の製造方法であって、
前記締結部材を得る工程において、レーザ溶接またはMIG溶接により前記係止ブロックが前記板状バーに接合される電源装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の二次電池セルを積層している電池積層体の両端に配置してなるエンドプレートを締結部材で連結してなる電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置、電源装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電源装置は、複数の角形電池セルからなる電池積層体と、電池積層体の両端面に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを連結するバインドバー等の締結部材を備えている(特許文献1参照)。この電源装置は、電池積層体をエンドプレートとバインドバーにより拘束することで、複数の角形電池セルからなる電池積層体を集合化できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の電源装置は、バインドバーやエンドプレートを介して複数の角形電池セルからなる電池積層体を集合化させているため、電池積層体を構成する複数の角形電池セルの膨張が抑制されることになる。つまり、バインドバーやエンドプレートを介して、角形電池セルの膨張を抑制することになるため、バインドバーやエンドプレートに大きな力が加わる。
【0005】
一方で、角形電池セルは、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度を高くしようとすると、充放電や劣化に伴う寸法変化が大きくなる傾向がある。バインドバーやエンドプレートにかかる負荷は、角形電池セルの膨張量に起因するため、膨張量に伴う寸法変化の大きい角形電池セルを用いる場合には、上記特許文献1の電源装置の構成では、エンドプレートやバインドバーに対して、角形電池セルの膨張時に強い負荷が印加される。この結果、バインドバーとエンドプレートとの接合部分に強い剪断応力が働き、破断するおそれがある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、複数の二次電池セルを積層した電池積層体を締結する締結部材の変形や破損を防止して、エンドプレートとの連結強度を高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様に係る電源装置は、外装缶1aを角型とした複数の二次電池セル1を積層した電池積層体10と、電池積層体10の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数の締結部材4とを備えている。複数の締結部材4の各々は、二次電池セル1の積層方向に延長された板状バー6と、板状バー6の長手方向の両端に固定された係止ブロック5とを備えている。板状バー6と係止ブロック5は別部材であって、係止ブロック5は、板状バー6よりも肉厚に形成されており、係止ブロック6が、板状バー6の端面に、連続した線状の接合部を介して固定されて、板状バー6の内側面よりもエンドプレート3の外周面に向かって突出している。エンドプレート3は、係止ブロック5が案内される嵌合部3aを両側の外周面に有し、さらに、嵌合部3aの電池積層体10側には、係止ブロック5と当接するストッパ部3bを設けている。電源装置は、嵌合部に案内された係止ブロック5がストッパ部3bに係止されて、エンドプレート3を締結部材4で締結している。
【0008】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。
【0009】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ88と備えて、電源コントローラ88でもって、外部からの電力により二次電池セル1への充電を可能とすると共に、二次電池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【0010】
本発明のある態様に係る電源装置の製造方法は、外装缶1aを角型とした複数の二次電池セル1を積層した電池積層体10と、電池積層体10の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレート3と、電池積層体10の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート3同士を締結する複数の締結部材4とを備える電源装置の製造方法であって、二次電池セル1の積層方向に延長された板状バー6の長手方向の両端面に、板状バー6よりも肉厚に形成され係止ブロック5を線状に接合して締結部材4を得る工程と、電池積層体10の両端面を、係止ブロック5を係止するためのストッパ部3bを形成した一対のエンドプレート3で覆い、エンドプレート3同士を締結部材4で締結する工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によると、締結部材の両端に設けた係止ブロックをエンドプレートのストッパ部に係止することで一対のエンドプレートを確実に締結できる構造としながら、締結部材を構成する板状バーと係止ブロックとを強固に連結して締結部材の変形や破損を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る電源装置を示す斜視図である。
【
図3】
図1の電源装置のIII-III線における水平断面図である。
【
図4】
図3に示すエンドプレートと締結部材の連結構造を示す要部拡大断面図である。
【
図5】エンドプレートの他の一例を示す要部拡大断面図である。
【
図7】
図5の締結部材を背面から見た斜視図である。
【
図8】締結部材を製造する工程を示す模式図である。
【
図9】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図10】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図11】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の一つの着目点について説明する。多数の電池セルを積層している電源装置は、複数の電池セルからなる電池積層体の両端に配置されるエンドプレートをバインドバー等の締結部材で連結することで、複数の電池セルを拘束するように構成されている。複数の電池セルは、高い剛性をもつエンドプレートやバインドバーを介して拘束されることで、充放電や劣化に伴う電池セルの膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などが抑制される。以上の電源装置は、電池セルの積層面の面積を約100平方センチメートルとするもので、電池セルの膨張を抑制することでエンドプレートに1トン以上(たとえば数トン)もの強い力が作用することもある。そのため、エンドプレートに固定されているバインドバーには、エンドプレートを介して極めて強い引張力が作用する。
【0014】
電池積層体の両端をエンドプレートで固定する従来の電源装置は、バインドバーの端部を内側に折曲してなる折曲片をエンドプレートの外側面に固定している。以上の構造は、金属板のバインドバーの端部を折曲加工して折曲片として、この折曲片をエンドプレートの外側表面に固定するので、折曲片はバインドバーと同じ厚さの金属板となる。バインドバーは、電池セルの膨張力によって発生する引張力に耐える引張強度の金属板が使用される。金属板の引張強度は曲げ強度に比較して相当に強く、バインドバーには例えば1mm~2mm程度の金属板が使用される。エンドプレートの外側表面に固定される折曲片は、バインドバーの引張力によって曲げ応力が作用するが、エンドプレートに使用される金属板の曲げ応力は引張応力に比較して相当に弱く、折曲片に作用する曲げ応力によって折曲片の曲げ加工部が耐力、破断強度を超えて変形、破壊する。折曲片の曲げ加工部とエンドプレートとの間に隙間がないと、曲げ加工部の内側面がエンドプレートの隅部に接触し、組み立てができない。
【0015】
以上のように、端部を折曲加工して折曲片を設けたバインドバーにおいては、バインドバーにかかる引張力の増加により、バインドバーの曲げ加工部内側とエンドプレート隅部に、さらに局部的に強大な応力が集中して、バインドバーやエンドプレートを変形し、また損傷する原因となる。
【0016】
そこで、本出願人は、電池積層体の積層方向の両端部に配置された一対のエンドプレートを締結部材で締結する構造として、電池積層体の積層方向に延長された平板状の締結主面と、この締結主面に設けられて、エンドプレートの外周面との対向面に向かって突出する係止ブロックを有する締結部材を使用し、この係止ブロックをエンドプレートの段差部に係止して締結する構造の電源装置を開発した。この構造の電源装置は、係止ブロックをエンドプレートに係止して固定するので、従来の締結部材のL字状部分のように曲げ応力で変形することなく、係止ブロックとエンドプレートの段差部とで締結部材を変形させることなくエンドプレートに固定できる。とくに、係止ブロックをエンドプレートの段差部に係止して位置ずれを阻止するので、締結部材に作用する強い引張力による締結部材とエンドプレートの変形を防止して、エンドプレートの移動を抑制できる。
【0017】
一方において、締結主面と係止ブロックで構成される締結部材では、締結主面と係止ブロックとを固定する必要がある。金属板で構成される締結主面と係止ブロックの接合にはスポット溶接を利用している。ただ、スポット溶接では、締結主面と係止ブロックが局部的に接合されるため、電池セルの膨張時においては、この接合部分に強大な剪断応力が集中してしまう問題点があった。このため、係止ブロックと締結主面との連結強度を高めて、電池セルの膨張力によって発生する引張力に耐える締結部材が求められていた。
【0018】
本発明のある態様の電源装置は、以下の構成により特定されてもよい。電源装置は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体と、電池積層体の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレートと、電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート同士を締結する複数の締結部材とを備え、複数の締結部材の各々は、二次電池セルの積層方向に延長された板状バーと、板状バーの長手方向の両端に固定された係止ブロックとを備え、係止ブロックは、板状バーよりも肉厚に形成されており、板状バーの端面と接合されて、板状バーの内側面よりもエンドプレートの外周面に向かって突出しており、エンドプレートは、係止ブロックが案内される嵌合部を外周面に有し、さらに、嵌合部の電池積層体側には、係止ブロックと当接するストッパ部を設けおり、係止ブロックがストッパ部に係止されて、エンドプレートを締結部材で締結している。
【0019】
上記構成によると、一対のエンドプレートを締結する締結部材を、二次電池セルの積層方向に延長された板状バーと、板状バーの両端に固定された係止ブロックとで構成しており、板状バーよりも肉厚に形成された係止ブロックを板状バーの両端面に接合することで、係止ブロックをエンドプレートの外周面に向かって突出させてエンドプレートに係止できる構造としながら、厚さの異なる板状バーと係止ブロックとを確実に連結して優れた連結強度を実現できる。とくに、この締結部材は、板状バーを肉薄として延伸性を確保して、二次電池セルの膨張に追従させつつ、エンドプレートのストッパ部に係止される係止ブロックを肉厚として剪断応力に対する抗力を高めることが可能となる。
【0020】
本発明の他の態様に係る電源装置は、係止ブロックと板状バーの端面とを連続した線状に接合している。上記構成により、連続した線状に接合することで、スポット溶接のような点状の接合と比べてより高強度で信頼性の高い接合強度が得られる。
【0021】
本発明の他の態様に係る電源装置は、係止ブロックと板状バーの端面とをレーザ溶接またはMIG溶接により接合している。上記構成により、係止ブロックと板状バーの接合部を連続した線状に溶接することで、厚さの異なる金属同士をより高い連結強度に接合できる。
【0022】
本発明の他の態様に係る電源装置は、締結部材の外側表面において、係止ブロックと板状バーとの接合部分を、同一平面状に形成している。上記構成により、締結部材の外側表面において、係止ブロックと板状バーとの接合部分を平面状の美しい外観としながら、締結部材の内側表面において、板状バーに対して係止ブロックを所定の突出量で突出させることができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る電源装置は、係止ブロックを、複数のボルトを介してエンドプレートの外周面に固定している。
【0024】
本発明の他の態様に係る電源装置は、板状バーの内側面に対する係止ブロックの突出量(d)をストッパ部の高さ(h)よりも大きくして、ストッパ部の先端面と板状バーの内側面との間に隙間を形成している。上記構成により、係止ブロックのエンドプレート側の対向面を、エンドプレートの嵌合部の底面である側面に密着させて、係止ブロックをストッパ部に確実に係止できる特徴がある。
【0025】
本発明の他の態様に係る電源装置は、板状バーと係止ブロックを、鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金のうちのいずれかとしている。
【0026】
本発明の他の態様に係る電源装置は、板状バーの上下の端縁部のいずれか一方又は両方を内側に折曲加工して、電池積層体の上下面を覆う折曲片を形成している。
【0027】
本発明の他の態様に係る電源装置は、係止ブロックが板状バーよりも剛性が高く、板状バーが係止ブロックよりも延伸性が高く構成している。
【0028】
さらに、本発明のある態様の電源装置の製造方法は、以下の方法により特定されてもよい。電源装置の製造方法は、外装缶を角型とした複数の二次電池セルを積層した電池積層体と、電池積層体の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレートと、電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、エンドプレート同士を締結する複数の締結部材とを備える電源装置の製造方法であって、二次電池セルの積層方向に延長された板状バーの長手方向の両端に、板状バーよりも肉厚に形成された係止ブロックを線状に接合して締結部材を得る工程と、電池積層体の両端面を、係止ブロックを係止するためのストッパ部を形成した一対のエンドプレートで覆い、エンドプレート同士を締結部材で締結する工程とを含んでいる。
【0029】
これにより、係止ブロックを係止するためのストッパ部を設けた一対のエンドプレート同士を、二次電池セルの積層方向に延長された板状バーの両端に係止ブロックを固定してなる締結部材で確実に締結できる。また、締結部材を得る工程においては、板状バーよりも肉厚に形成された係止ブロックを板状バーの両端に線状に接合することで、厚さの異なる板状バーと係止ブロックとを確実に連結して優れた連結強度を実現できる。とくに、連続した線状に接合することで、スポット溶接のような点状の接合と比べてより高強度で信頼性の高い接合強度が得られる。
【0030】
本発明の他の態様にかかる電源装置の製造方法は、締結部材を得る工程が、板状バーの端面に係止ブロックを溶接により接合する工程を含んでいる。上記構成により、スポット溶接等に比べて高い信頼性でもって厚さの異なる金属同士を接合できる。
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0032】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
【0033】
[実施形態1]
本発明の実施形態1に係る電源装置100の斜視図を
図1に、その分解斜視図を
図2に、
図1の電源装置100のIII-III線における水平断面図を
図3に、
図3の要部拡大図を
図4に、
図2の締結部材4を示す斜視図を
図5に、
図5の締結部材4を背面から見た斜視図を
図6に、
図5の締結部材4の製造工程を示す模式図を
図7に、それぞれ示す。これらの図に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層した電池積層体10と、この電池積層体10の積層方向の両端面を覆う一対のエンドプレート3と、エンドプレート3同士を締結する複数の締結部材4とを備える。
【0034】
電池積層体10は、正負の電極端子2を備える複数の二次電池セル1と、これら複数の二次電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の二次電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー(図示せず)を備える。これらのバスバーを介して複数の二次電池セル1を並列や直列に接続している。二次電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電源装置100は、複数の二次電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の二次電池セル1が並列かつ直列に接続される。
図1~
図3に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート3が配置される。このエンドプレート3同士に、締結部材4の端部を固定して、積層状態の二次電池セル1を加圧状態に固定する。
【0035】
(二次電池セル1)
二次電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とする角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、二次電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただ、本発明は、二次電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。二次電池セルには、充電できる全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池やニッケル水素二次電池セルなども使用できる。
【0036】
二次電池セル1は、
図2に示すように、正負の電極板を積層した電極体を外装缶1aに収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザ光を照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザ溶接して気密に固定している。
【0037】
(電極端子2)
二次電池セル1は、天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0038】
二次電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、二次電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバーで接続することで、隣接する二次電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。
【0039】
(電池積層体10)
複数の二次電池セル1は、各二次電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、
図2においては封口板1bが同一平面となるように、複数の二次電池セル1を積層している。
【0040】
電池積層体10は、隣接して積層される二次電池セル1同士の間に、絶縁スペーサ11を介在させてもよい。絶縁スペーサ11は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。絶縁スペーサ11は、二次電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。この絶縁スペーサ11を互いに隣接する二次電池セル1の間に積層して、隣接する二次電池セル1同士を絶縁できる。なお、隣接する二次電池セル1間に配置されるスペーサとしては、二次電池セル1とスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、二次電池セル1の表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで二次電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。この場合は、絶縁スペーサを省略してもよい。また、複数の二次電池セルを多並列、多直列に接続する電源装置においては、互いに直列に接続される二次電池セル同士の間に絶縁スペーサを介在させて絶縁する一方、互いに並列に接続される二次電池セル同士においては、隣接する外装缶同士に電圧差が生じないので、これらの二次電池セルの間の絶縁スペーサを省略することもできる。
【0041】
さらに、
図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート3を配置している。なおエンドプレート3と電池積層体10の間に端面スペーサ12を介在させて、これらを絶縁してもよい。端面スペーサ12も、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
【0042】
電池積層体10は、隣接する二次電池セル1の正負の電極端子2に金属製のバスバーが接続されて、このバスバーを介して複数の二次電池セル1が並列かつ直列に接続される。電池積層体10は、互いに並列に接続されて並列電池グループを構成する複数の二次電池セル1においては、端子面1Xの両端部に設けた正負の電極端子2が左右同じ向きとなるように積層され、互いに直列に接続される並列電池グループを構成する二次電池セル1同士においては、端子面1Xの両端部に設けた正負の電極端子2が左右逆向きとなるように複数の二次電池セル1が積層されている。ただ、本発明は、電池積層体を構成する二次電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する二次電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
【0043】
実施形態に係る電源装置100は、複数の二次電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の二次電池セル1の電極端子2同士をバスバーで接続して、複数の二次電池セル1を並列かつ直列に接続する。また、電池積層体10とバスバーとの間にバスバーホルダを配置してもよい。バスバーホルダを用いることで、複数のバスバーを互いに絶縁し、かつ二次電池セルの端子面とバスバーとを絶縁しながら、複数のバスバーを電池積層体の上面の定位置に配置できる。
【0044】
(バスバー)
バスバーは、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。バスバーを構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただ、バスバーの金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
【0045】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、
図1~
図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材4を介して締結される。エンドプレート3の外形は、二次電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいはこれよりもわずかに大きく、両側の外周面に締結部材4を固定して、電池積層体10の膨化を抑制する四角形の板材である。このエンドプレート3は、全体をアルミニウムやアルミニウム合金、SUS、鉄等の金属製としている。ただし、エンドプレートは、図示しないが、プラスチックに金属板を積層する構造とし、あるいはまた、全体を補強繊維を埋設している繊維強化樹脂成形板としてもよい。
【0046】
エンドプレート3は、二次電池セル1の表面に、端面スペーサ12を介して面接触状態に密着して、二次電池セル1を保持する。電源装置100は、組み立て工程において、電池積層体10の両端部にエンドプレート3を配置し、両端のエンドプレート3をプレス機(図示せず)で加圧して、二次電池セル1を積層方向に加圧する状態に保持し、この状態でエンドプレート3に締結部材4を固定する。エンドプレート3が締結部材4に固定された後、プレス機の加圧状態は解除される。
【0047】
エンドプレート3は、締結部材4に固定されて電池積層体10の膨化力Pを受け止めて二次電池セル1を保持する。エンドプレート3は、
図4の拡大断面図に示すように、固定される締結部材4に設けている係止ブロック5を確実に連結するために、締結部材4に設けた係止ブロック5を案内する嵌合部3aを両側の外周面に設けている。さらに、エンドプレート3は、嵌合部3aの電池積層体10側に、係止ブロック5と当接するストッパ部3bを設けている。言い換えると、エンドプレート3の両側面には、それぞれ、電池積層体10側の端部から締結部材4に向けて突出するストッパ部3bを設けて、段差形状の嵌合部3aを設けている。また、エンドプレート3は、
図2~
図4に示すように、嵌合部3aの底面3xに、複数の雌ねじ穴3cを設けている。
【0048】
エンドプレート3は、二次電池セル1の膨張によって生じる電池積層方向に拡がろうとする膨化力Pを電池積層体10から受ける。このとき、エンドプレート3に連結される締結部材4の係止ブロック5は、ストッパ部3bとの接触部分において電池積層方向の外側方向に押圧する押圧力Rを受ける。これにより、締結部材4には、係止ブロック5に作用する押圧力Rの反作用として強い引張力Fが作用する。エンドプレート3は、ストッパ部3bと係止ブロック5が接触することにより、締結部材4の引張力Fで係止ブロック5が移動するのを抑制して、二次電池セル1の膨化力Pに耐えながら、締結された状態に保持されている。ストッパ部3bは、係止ブロック5との接触部に作用する締結部材4の引張力Fで変形しない横幅としている。ストッパ部3bの横幅(w)は、締結部材4の引張力Fを考慮して最適値に設定されるが、たとえば、エンドプレート3全体をアルミニウム製として、3mm以上、好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上、最適には8mm以上とする。材料が耐える最大剪断力は最大曲げ力に比較して相当に強く、ストッパ部3bの横幅(w)を以上の範囲とすることで、締結部材4の引張力Fをストッパ部3bの剪断応力で支持して、ストッパ部3bの変形を防止する。
【0049】
さらに、
図4に示すエンドプレート3は、ストッパ部3bの高さ(h)を、係止ブロックの突出量(d)よりも小さくして、ストッパ部3bの先端面と締結部材4の内面との間に隙間14を設けている。この構造は、係止ブロック5の先端面5aを嵌合部3aの底面3xとなるエンドプレート3の側面に密着させて、係止ブロック5の係止面5bを確実にストッパ部3bの支持面3yに当接できる。ただ、エンドプレート3は、
図5に示すように、ストッパ部3bの高さ(h)を、係止ブロック5の突出量(d)と等しくすることもできる。この場合、ストッパ部3bの先端面を締結部材4の内面に接近させて配置できる。なお、
図5に示すエンドプレート3のストッパ部3bは、先端側のコーナー部であって、係止ブロック5と対向するコーナー部を切除して隙間15を設けている。この構造は、係止ブロック5の後端側の隅部と対向する位置に隙間15を設けることで、板状バー6と係止ブロック5の接合部分をストッパ部3bに対して非接触状態に配置できる特徴がある。以上のように、ストッパ部3bの高さ(h)は、係止ブロック5の突出量(d)と、ストッパ部3bの先端面と締結部材4の内面との間にできる隙間の間隔を考慮して特定される。
【0050】
(締結部材4)
締結部材4は、両端を電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート3に固定される。複数の締結部材4でもって一対のエンドプレート3を固定し、もって電池積層体10を積層方向に締結している。締結部材4は、
図6と
図7に示すように、電池積層体10の積層方向に延長された板状バー6と、この板状バー6の長手方向の両端に固定された係止ブロック5とを備えている。板状バー6は電池積層体10の両側面に対向して配置され、係止ブロック5はエンドプレート3の外周面に設けた嵌合部3aに案内されて固定される。
【0051】
(板状バー6)
板状バー6は、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属板である。板状バー6は、強い引張力Fに耐える金属板が使用される。板状バー6は、例えば、厚さを1mm~2mmとして肉薄に形成することで締結部材4に作用する引張力Fに耐える強度を実現しつつ、延伸性を実現できる。
図2の締結部材4は、電池積層体10の片側に配置される板状バー6を、電池積層体10の側面を被覆する上下幅の金属板としている。
【0052】
(係止ブロック5)
係止ブロック5は、
図6と
図7に示すように、所定の厚さを有する板状ないし角柱状の金属製であって、板状バー6の長手方向の両端面に対向して配置されている。係止ブロック5は、板状バー6よりも肉厚に形成されており、板状バー6の端面に接合して固定されている。板状バー6よりも肉厚に形成された係止ブロック5は、板状バー6の両端に固定された状態で、板状バー6の内側面よりもエンドプレート3の外周面に向かって突出するように板状バー6の端面に接合されている。板状バー6の両端に固定される一対の係止ブロック5は、エンドプレート3の外側面に沿って設けられており、エンドプレート3の外側面に設けた嵌合部3aに案内されて、ストッパ部3bに係止される大きさと形状としている。この係止ブロック5は、締結部材4をエンドプレート3に連結する状態では、エンドプレート3に設けた嵌合部3aに案内されてストッパ部3bに係止され、締結部材4を電池積層体10の両側の定位置に配置する。
【0053】
係止ブロック5の厚さ(t2)は、ストッパ部3b側の係止面5bを確実にストッパ部3bに当接させて支持できる厚さとする。締結部材4は、
図4の断面図に示すように、板状バー6の厚さ(t1)に対して係止ブロック5の厚さ(t2)を厚くして、係止ブロック5を板状バー6の内面側に突出させている。とくに、
図4に示す締結部材4は、外側面において、板状バー6と係止ブロック5の接合部分を同一平面状としつつ、内側面においては係止ブロック5bを突出させている。これによってエンドプレート3の嵌合部3aに係止ブロック5bを案内して、ストッパ部3bに係止させて剪断応力に対する耐性を高めている。とくに、係止ブロック5と板状バー6の接合部分を同一平面状とすることで、係止ブロック5bの突出量(d)を係止ブロック5の厚さ(t2)と板状バー6の厚さ(t1)の差として特定している。
【0054】
また、係止ブロック5の電池積層方向の横幅(H)は、板状バー6に作用する引張力Fで変形しない幅、たとえば、10mm以上に設定される。係止ブロック5は横幅(H)を約10mmよりも厚くして、板状バー6に作用する引張力Fを剪断力で支持できる。このことから、係止ブロック5の横幅(H)は、10mm以上として、板状バー6に作用する引張力Fを剪断力で支持して、充分な強度を実現できる。
【0055】
(差厚素材)
以上の締結部材4は、板状バー6と係止ブロック5とを、厚さの異なる差厚素材で構成している。差厚素材とは、部分的に厚さの異なる形状となる素材である。具体的には、板厚の異なる複数の金属部材(ブランク)を接合したものである。接合方法としては、レーザ溶接やMIG溶接等の溶接、摩擦圧接や電磁圧接、超音波接合等の圧接、レーザろう付やMIGろう付等のろう接などの種々の方法が採用できる。これにより、板状バー6と係止ブロック5とを別部材で構成することが可能となり、板状バー6には薄くて延伸性の高い部材を、係止ブロック5には厚くて剛性の高い部材をそれぞれ割り当てて、一体的に接合された締結部材4が得られる。図に示す締結部材4は、板状バー6を係止ブロック5よりも薄い金属板とし、係止ブロック5を板状バー6よりも厚い金属板としている。この構造により、係止ブロック5の剛性を高めてエンドプレート3との連結強度を高めつつ、板状バー6では延伸性を高めて二次電池セル1の膨張時に変形し易くしている。
【0056】
以下、板厚の異なる複数の金属板(ブランク)をレーザ溶接して締結部材4を形成する構成を例に説明する。
図8は、板状バー6と係止ブロック5との接合界面を、レーザ溶接で接合して締結部材4とする工程を示している。締結部材4は、
図8Aに示すように、材厚が一定の金属板(ブランク)、すなわち展開図の状態の板状バー6と係止ブロック5とを、
図8Bに示すように突き合わせた状態で溶接して、
図8Cに示すように締結部材4を得ている。これらの溶接においては、とくに、
図8Bに示すように、連続する線状に溶接することが好ましい。具体的には、板状バー6の端面と係止ブロック5の側面とを突き合わせる状態で接合界面を溶接して、係止ブロック5を板状バー6に接合する。このように、板状バー6の端面に沿って係止ブロック5を溶接して固定する構造は、線状に溶接される接合部4bにより係止ブロック5と板状バー6とが一体構造となるので、接合部分を強い連結強度で接合することができる。
【0057】
また、
図6~
図8に示す締結部材4は、板状バー6の端面と対向する係止ブロック5の1つの側面を長さ方向の全体にわたって板状バー6の端面に溶接して接合している。この構造は、板状バー6の端面と係止ブロック5の側面との接合界面において、連続する線状であって、ほぼ直線上に溶接される。このように、係止ブロック5の側面の全長にわたって、板状バー6の端面を連続する線状に溶接する構造は、係止ブロック5と板状バー6との連結強度をさらに高くして、確実に、しかも均一に接合できる特徴がある。このような溶接により、スポット溶接等に比べて高い信頼性でもって金属同士を接合できる。
【0058】
以上の締結部材4は、板状バー6と係止ブロック5に、鉄などの金属板、好ましくは鋼板や鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金等が使用できる。係止ブロック5と板状バー6は、好ましくは、同種類の金属とする。これによって、係止ブロック5と板状バー6との溶接を容易に行いつつ、連結強度を高めることができる。
【0059】
ただ、締結部材4は、板状バー6と係止ブロック5とを異種金属で形成することもできる。すなわち、締結部材4は、異種金属からなる差厚素材である係止ブロック6と板状バー5とを互いに接合して一体的に連結することもできる。この場合、たとえば、係止ブロックには鉄系の金属を使用して強度を高めつつ、板状バーにはアルミニウム系の金属板を使用して延伸性を高めることもできる。また、異種金属で構成される板状バーと係止ブロックの接合においては、溶接に代わって、摩擦攪拌接合等の熱影響を抑制できる接合方法を採用してもよい。
【0060】
また、締結部材4は、
図4に示すように、板状バー6と係止ブロック5との接合部分において、外側面が同一平面状に形成されることが好ましい。これにより、締結部材4を複数の部材で構成しつつも、厚さの異なる板状バー6と係止ブロック5との接合部分を平面状として凹凸のない綺麗な外観にできる。また、締結部材4の内側面においては、
図4に示すように、板状バー6の内側面に対して、係止ブロック5を所定の突出量となるように突出させることができる。
【0061】
さらに、締結部材4は、
図8Bに示すように、板状バー6と係止ブロック5とを接合する工程で溶接した後、プレス工程において、板状バー6を所定の形状にプレス成型している。具体的には、
図8Cに示す締結部材4は、上下の端縁部を折曲加工して、折曲片4aを形成している。上下の折曲片4aは、電池積層体10の左右の両側面において、電池積層体10の上下面を隅部から覆う形状としている。ただ、締結部材は、板状バーの上下の端縁部を折曲加工して折曲片を形成した後、板状バーの両端面に係止ブロックを接合してもよい。
【0062】
以上の締結部材4は、
図3と
図4に示すように、係止ブロック5がエンドプレート3の嵌合部3aに案内されて、係止ブロック5をストッパ部3bに係止する状態で定位置に固定される。さらに、係止ブロック5はボルト8を介してエンドプレート3に固定されて、一対のエンドプレート3を締結部材4で連結する。
【0063】
係止ブロック5は、ボルト8のネジ部8bを挿通する貫通孔5cを設けている。ボルト8は係止ブロック5を貫通して、エンドプレート3にねじ込まれて、係止ブロック5をエンドプレート3に固定する。この固定構造の電源装置100は、係止ブロック5を確実にエンドプレート3に固定しながら、ボルト8とストッパ部3bとの両方で係止ブロック5の位置ずれを確実に阻止できる。それは、ボルト8が係止ブロック5を嵌合部3aの底面3xに押し付けて固定して、ストッパ部3bで確実に位置ずれを阻止できると共に、ボルト8の軸力によっても位置ずれを阻止できるからである。
【0064】
この係止ブロック5は、ボルト8のネジ部8aを貫通孔5cに挿通して、エンドプレート3に設けた雌ねじ穴3cにねじ込んでエンドプレート3に固定される。図に示す係止ブロック5は、エンドプレート3を締結した状態で、エンドプレート3に設けた雌ねじ穴3cと一致するように、貫通孔5cを開口している。
図6の係止ブロック5は、長手方向であって、図においては上下方向に所定の間隔で複数の貫通孔5cを開口して設けている。これに応じてエンドプレート3の雌ねじ穴3cも、エンドプレート3の側面に沿って複数個が形成されている。係止ブロック5に開口される複数の貫通孔5cは、エンドプレート3の嵌合部3aの底面3xに開口される複数の雌ねじ穴3cに対向して設けられる。以上の係止ブロック5は、
図2に示すように、複数のボルト7を介してエンドプレート3の外周面に固定される。
【0065】
図示しないが、係止ブロック5は、ボルト8の頭部が表面から突出しないように、ボルト8の頭部を案内する凹部を設けてもよい。この凹部は、ボルト8の頭部が係止ブロック5の表面から突出しない深さとすることができ、あるいは、ボルトの頭部が多少突出する深さとすることもできる。
【0066】
以上のように、多数の二次電池セル1を積層している電源装置は、複数の二次電池セル1からなる電池積層体10の両端に配置されるエンドプレート3を締結部材4で連結することで、複数の二次電池セル1を拘束するように構成されている。複数の二次電池セル1を、高い剛性をもつエンドプレート3や締結部材4を介して拘束することで、充放電や劣化に伴う二次電池セル1の膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などを抑制できる。
【0067】
(絶縁シート13)
また、締結部材4と電池積層体10の間には、絶縁シート13が介在される。絶縁シート13は絶縁性を備える材質、例えば樹脂などで構成され、金属製の締結部材4と二次電池セル1との間を絶縁している。
図2等に示す絶縁シート13は、電池積層体10の側面を覆う平板部13aと、この平板部13aの上下にそれぞれ設けられた折曲被覆部13b、13cとで構成される。上端側の折曲被覆部13bは、締結部材4の折曲片4aを覆うように、平板部13aからL字状に折曲した後、さらに折り返している。これにより折曲片4aは、上面から側面及び下面にかけて絶縁性の折曲被覆部13bで覆うことにより、二次電池セル1と締結部材4の意図しない導通を回避することができる。
【0068】
以上の電源装置100は、以下の工程で組み立てられる。
(1)所定の個数の二次電池セル1を、間に絶縁スペーサ11を介在させる状態で、二次電池セル1の厚さ方向に積層して電池積層体10とする。
(2)電池積層体10の両端にエンドプレート3を配置し、一対のエンドプレート3を両側からプレス機(図示せず)で押圧して、エンドプレート3でもって、電池積層体10を所定の圧力で加圧し、二次電池セル1を圧縮して加圧状態に保持する。
(3)電池積層体10をエンドプレート3で加圧する状態で、一対のエンドプレート3に締結部材4を連結して固定する。この締結部材4は、電池積層体10の側面に沿う板状バー6の長手方向の両端面に、板状バー6よりも肉厚に形成され係止ブロック5を線状に接合することにより、締結部材4の内側面において係止ブロック5が板状バー6よりも突出する形状に形成されている。締結部材4は、両端の係止ブロック5が一対のエンドプレート3の嵌合部3aに案内されるように配置されると共に、係止ブロック5を貫通するボルト8をエンドプレート3の雌ねじ穴3cにねじ込んで固定される。固定後、加圧状態は開放される。これにより、締結部材4に作用する引張力により、係止ブロック5はエンドプレート3のストッパ部3bに係止された状態に保持される。
(4)電池積層体10の両側部において、互いに隣接する二次電池セル1の対向する電極端子13同士をバスバー(図示せず)で連結する。バスバーは、電極端子13に固定されて、電池セル1を直列に接続し、あるいは直列と並列に接続する。バスバーは、電極端子2に溶接され、あるいはネジ止めされて電極端子2に固定される。
【0069】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置100を構築した例として説明する。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0070】
図9は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、
図9に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
(電気自動車用電源装置)
【0071】
また、
図10は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0072】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。
図11は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0073】
図11に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0074】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0075】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置、電源装置用締結部材、電源装置の製造方法、電源装置用締結部材の製造方法は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0077】
100…電源装置、1…電池セル、1X…端子面、1a…外装缶、1b…封口板、2…電極端子、3…エンドプレート、3a…嵌合部、3x…底面、3y…支持面、3b…ストッパ部、3c…雌ねじ穴、4…締結部材、4a…折曲片、4b…接合部、5…係止ブロック、5a…先端面、5b…係止面、5c…貫通孔、6…板状バー、8…ボルト、8a…ネジ部、10…電池積層体、11…絶縁スペーサ、12…端面スペーサ、13…絶縁シート、13a…平板部、13b、13c…折曲被覆部、14…隙間、15…隙間、81…建物、82…太陽電池、83…充電回路、84…充電スイッチ、85…DC/ACインバータ、86…負荷、87…放電スイッチ、88…電源コントローラ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、HV、EV…車両。