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  • 特許-SARM1阻害剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】SARM1阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20240424BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20240424BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240424BHJP
   C07D 471/04 20060101ALN20240424BHJP
   C07D 487/04 20060101ALN20240424BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20240424BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20240424BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K31/5025
A61P25/00 ZNA
C07D471/04 101
C07D471/04 104Z
C07D471/04 106Z
C07D471/04 107Z
C07D487/04 140
C07D487/04 142
C07D487/04 145
C12N9/99
C12N15/55
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021518046
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019035839
(87)【国際公開番号】W WO2019236884
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】62/682,045
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519102288
【氏名又は名称】ディスアーム セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・オーエン・ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェシュ・デブラジ
(72)【発明者】
【氏名】トッド・ボサナック
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・アンドリュー・ジャージェス-パイク
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・サイモン・ブリアリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ベントリー
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/071794(WO,A1)
【文献】特表2011-530500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0153828(US,A1)
【文献】特開昭60-105685(JP,A)
【文献】国際公開第2012/106343(WO,A2)
【文献】特表2014-509313(JP,A)
【文献】国際公開第2009/041567(WO,A1)
【文献】特表2013-519681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/011628(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/198848(WO,A2)
【文献】REGISTRY[online],2009.10.27-2012.7.23, [Retrieved on 2023.5.19], Retrieved from:STN, CAS登録番号 1190318-02-5、1384079-12-2
【文献】Gallou, Fet al.,Practical regioselective bromination of azaindoles and diazaindoles,Synlett,2007年,No.2,pp.211-214
【文献】Fisher, M. H. et al.,Azaindole anthelmintic agents,Journal of Medicinal Chemistry,1972年,Vol.15, No.11,pp.1168-1171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/437
A61K 31/5025
A61P 25/00
C07D 471/04
C07D 487/04
C12N 9/99
C12N 15/55
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸索変性の治療または予防に使用される医薬組成物であって、
式II-b:
【化1】

[式中、
は、NおよびC-Ry2から選択され;
は、NおよびC-Rz2から選択され;
は、NおよびC-Rz4から選択され;
は、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;
y1、Ry2、Rz1、Rz2、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択され;
あるいは-C(O)N(R) および-N(R) の「(R) 」として示される2つのRは、それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項2】
化学療法剤誘発末梢神経障害、糖尿病性神経障害、HIV神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、および筋萎縮性側索硬化症から選択される疾患の治療に使用される医薬組成物であって、
式II-b:
【化2】

[式中、
は、NおよびC-Ry2から選択され;
は、NおよびC-Rz2から選択され;
は、NおよびC-Rz4から選択され;
は、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;
y1、Ry2、Rz1、Rz2、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択され;
あるいは-C(O)N(R) および-N(R) の「(R) 」として示される2つのRは、それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項3】
(i)軸索変性によって特徴付けられる病気に罹っているか、または(ii)軸索変性によって特徴付けられる病気を発症するリスクを有する対象に投与される、医薬組成物であって、
式II-b:
【化3】

[式中、
は、NおよびC-Ry2から選択され;
は、NおよびC-Rz2から選択され;
は、NおよびC-Rz4から選択され;
は、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;
y1、Ry2、Rz1、Rz2、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択され;
あるいは-C(O)N(R) および-N(R) の「(R) 」として示される2つのRは、それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物またはその医薬的に許容される塩は、下記式:
【化4】

【化5】

で表される化合物、またはこれらの薬学的に許容される塩から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる2018年6月7日提出の米国仮出願番号第62/682,045号の利益を請求する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる配列表を含む。このASCIIコピーは、2019年6月6日に作成され、2012800-0023_SL.txtと命名され、13,851バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
軸索変性は、末梢神経障害、外傷性脳障害、および神経変性疾患を含むいくつかの神経障害の特徴である(参照によりその全体が本明細書に取り込まれる、Gerdts et al., SARM1 activation triggers axon degeneration locally via NAD(+) destruction. Science 348 2016, pp. 453-457)。神経変性疾患および傷害は、患者と医療提供者の両方に大きな打撃を与えている。これらの疾患に関連するコストは、現在、米国のみで年間数千億ドルを超えている。これらの疾患および障害の多くの発生率は年齢とともに増加するため、それらの発生率は、人口統計の変化として急速に増加している。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示は、特に、神経変性を治療し、および/または予防するために(例えば、軸索変性を減少させるために)有用な技術を提供する。ある実施態様において、ARM1を阻害する技術が提供される。
【0005】
ある実施態様において、本開示は、医薬において、特に、神経変性を治療するために(例えば、軸索変性を減少させるために)有用である特定の化合物および/または組成物を提供する。
【0006】
ある実施態様において、本開示は、式I:
【化1】

[式中、
およびXのうちの1つは、CおよびNから選択され、もう一方は、Cであり;
は、N、N-R、およびC-Ry1から選択され;
は、NおよびC-Ry2から選択され;
は、N、N-R、O、S、およびS(O)から選択され;
は、NおよびC-Rz2から選択され;
は、NおよびC-Rz3から選択され;
は、NおよびC-Rz4から選択され;
各Rは、独立して、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)、または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;
y1、Ry2、Rz1、Rz2、Rz3、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択され;
あるいはRが2つの場合,それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される構造を有する化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0007】
ある実施態様において、下記で説明されるような、式II、II-a、II-b、II-c、II-d、II-e、III、III-a、III-b、IV、IV-a、またはIV-bで示される構造を有する化合物が提供される。
【0008】
ある実施態様において、1つまたはそれ以上の式Iの化合物は、固体形態(例えば、結晶形態またはアモルファス形態)で供されるか、および/または用いられる。
【0009】
ある実施態様において、本開示は、(例えば、本明細書に記載される形態の)式Iの化合物、そのプロドラッグまたは活性代謝物を含むか、および/または送達する組成物を提供する。
【0010】
ある実施態様において、本開示は、式Iの化合物を含むか、および/または送達する組成物を提供する。ある実施態様において、かかる組成物は、医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物である。
【0011】
ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、SARM1によるNAD+の結合を減少させるか、または阻害する。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、1つまたはそれ以上の触媒残基を含むポケット(例えば、SARM1の触媒溝)内のSARM1に結合する。
【0012】
ある実施態様において、ARM1の活性を阻害する化合物および/または組成物が提供される。あるいは、または加えて、ある実施態様において、提供される化合物は、神経変性の1つまたはそれ以上の特質を軽減する。ある実施態様において、本開示は、軸索変性に関連する神経変性疾患または障害の治療方法を提供する。
【0013】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、医療活動において有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索変性(例えば、その1つまたはそれ以上の特徴または性質)を治療し、予防し、または軽減するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索変性(NAD+の減少または欠乏から生じる軸索変性を含む)を阻害するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索傷害に対して末梢側の軸索を変性から防ぐために有用である。
【0014】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、神経障害または軸索障害からなる群から選択される1つまたはそれ以上の神経変性疾患、障害または病気を治療するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索変性に関連する神経障害または軸索障害を治療するために有用である。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害は、遺伝性もしくは先天性神経障害または軸索障害である。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害は、新たに発生した変異または体細胞変異から生じる。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害は、本明細書に含まれる記載から選択される。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害または軸索障害には、以下に限定されないが、パーキンソン病、非パーキンソン病、アルツハイマー病、ヘルペス感染、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脱髄疾患、虚血もしくは脳卒中、化学的傷害、熱傷、およびAIDSが含まれる。
【0015】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物または組成物が投与される対象は、神経変性疾患、障害または病気に罹っているか、または罹りやすい対象でありうるか、または含みうる。ある実施態様において、神経変性疾患、障害または病気は、外傷性神経傷害でありうるか、または含みうる。ある実施態様において、外傷性神経傷害は、鈍器損傷、非開放性頭部損傷、開放性頭部損傷、震盪性および/または爆発性外力への曝露、脳内または体の神経支配領域への貫通性傷害である。ある実施態様において、外傷性神経傷害は、軸索に変形、伸展、挫滅または歪み(sheer)を生じる力による。
【0016】
ある実施態様において、提供される方法は、式Iの化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。あるこのような実施態様において、前記患者は、軸索変性によって特徴付けられる病気を発症するリスクを有する。ある実施態様において、前記患者は、軸索変性によって特徴付けられる病気に罹っている。ある実施態様において、前記患者は、軸索変性によって特徴付けられる病気と診断されている。
【0017】
ある実施態様において、提供される方法は、本明細書に記載される組成物を、それを必要とする患者集団に投与することを含む。ある実施態様において、前記集団は、外傷性神経傷の可能性が高い活動に従事する個体から集められる。ある実施態様において、前記集団は、スポーツまたは他の高リスク活動に従事するアスリートから集められる。
【0018】
ある実施態様において、前記患者は、神経変性障害を発症するリスクを有する。ある実施態様において、前記患者は、高齢である。ある実施態様において、前記患者は、神経変性について遺伝学的リスク因子を有することが公知である。
【0019】
ある実施態様において、本開示は、例えば、解析ツールとして、生物学的アッセイのプローブとして、または本開示による治療剤として有用である化合物を提供する。本開示によって提供される化合物はまた、生物学的および病理学的現象におけるSARM1 NADアーゼ機能の研究、ならびに新規のSARM1活性阻害剤のインビトロまたはインビボにおける比較評価のために有用である。
【0020】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、対象に由来する神経の変性を阻害するための方法として有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、インビトロで培養された神経またはその部分の変性を阻害するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、インビトロで神経の生存を促進するための安定化剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、SARM1タンパク質の構造を示す。
図2図2は、NRを加えたNRK1-HEK293T安定株が、SARM1-TIR発現による高いNAD+レベルを維持することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
脂肪族:用語「脂肪族」は、分子の残りに対して1つの結合点を有する、完全に飽和されているか、または1つもしくはそれ以上の不飽和単位を含む、直鎖(すなわち、分岐していない)もしくは分岐、置換または無置換の炭化水素鎖、あるいは完全に飽和されているか、または1つもしくはそれ以上の不飽和単位を含むが、芳香族ではない単環式炭化水素または二環式炭化水素(本明細書では、「炭素環」または「シクロ脂肪族」ともいう)を意味する。特に断りがなければ、脂肪族基は、1~6個の脂肪族炭素原子を含む。ある実施態様において、脂肪族基は、は、1~5個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施態様において、脂肪族基は、1~4個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施態様において、脂肪族基は、1~3個の脂肪族炭素原子を含み、なお他の実施態様において、脂肪族基は、1~2個の脂肪族炭素原子を含む。ある実施態様において、「シクロ脂肪族」(または「炭素環」)は、分子の残りに対して1つの結合点を有する、完全に飽和されているか、または1つまたはそれ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではない、単環式C~C炭化水素または二環式C-C10炭化水素を意味する。適する脂肪族基には、以下に限定されないが、直鎖もしくは分岐、置換または無置換のアルキル、アルケニル、アルキニル基、これらのハイブリッドが含まれる。
【0023】
アルキル:用語「アルキル」は、単独で、または大きい部分の一部として用いられ、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、1~4個、1~3個、または1~2個の炭素原子を有する飽和された置換されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素基を意味する。用語「シクロアルキル」は、約3~約10個の環炭素原子の適宜置換されていてもよい飽和環基を意味する。典型的な単環式シクロアルキル環には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが含まれる。
【0024】
アルキレン:用語「アルキレン」は、二価アルキル基を意味する。ある実施態様において、「アルキレン」は、二価の直鎖または分岐鎖アルキル基である。ある実施態様において、「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、-(CH-であって、式中、nは、正の整数、例えば、1~6個、1~4個、1~3個、1~2個、または2~3個である。適宜置換されていてもよいアルキレン鎖は、1つまたはそれ以上のメチレン水素原子が置換基で適宜置換されていてもよいポリメチレン基である。適する置換基には、置換された脂肪族基について下記に記載されたものが含まれ、本明細書に記載されたものも含まれる。アルキレン基の2つの置換基は、一緒になって環基を形成していもよいものと理解される。ある実施態様において、2つの置換基は、一緒になって3~7員環を形成しうる。前記置換基は、同一または異なる原子上にあってもよい。
【0025】
アルケニル:用語「アルケニル」は、単独で、または大きい部分の一部として用いられ、少なくとも1個の二重結合を有し、2~12個、2~10個、2~8個、2~6個、2~4個、または2~3個の炭素原子を有する適宜置換されていてもよい直鎖もしくは分岐鎖または環状炭化水素基を意味する。用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素炭素二重結合を含み、約3~約10個の炭素原子を有する適宜置換されていてもよい非芳香族単環式または多環状環基を意味する。典型的な単環式シクロアルケニル環には、シクロペンチル、シクロヘキセニル、およびシクロヘプテニルが含まれる。
【0026】
アルキニル:用語「アルキニル」は、単独で、または大きい部分の一部として用いられ、少なくとも1個の三重結合を有し、2~12個、2~10個、2~8個、2~6個、2~4個、または2~3個の炭素原子を有する適宜置換されていてもよい直鎖または分岐鎖の炭化水素基を意味する。
【0027】
結合:本明細書で用いられる用語「結合」は、典型的に2つまたはそれ以上の物質の間の非共有結合を意味するものと理解される。「直接的」結合は、物質または部分間の物理的接触に関し;間接的結合は、1つまたはそれ以上の中間物質との物理的接触を介在した物理的相互作用に関する。2つまたはそれ以上の物質の間の結合は、典型的に、物質または部分の相互作用が、単独またはより複雑な系において(例えば、共有結合であるか、または担体物質とともに、および/または生物学的系または細胞において)実験される場合を含む、様々な場面のいずれにおいても評価することができる。
【0028】
生物学的試料:本明細書で用いられるように、用語「生物学的試料」は、典型的に、本明細書に記載されるように、目的の生物学的供給源から取得されるか、または目的の生物学的供給源に由来する試料(例えば、組織または生物または細胞培養物)を意味する。ある実施態様において、目的の供給源には、生物、例えば、動物またはヒトが含まれる。ある実施態様において、生物学的試料は、生物学的組織または液体であるか、これらを含む。ある実施態様において、生物学的試料は、骨髄;血液;血液細胞;腹水;組織もしくは細針生検試料;細胞を含む体液;遊離浮遊核酸;痰;唾液;尿;脳脊髄液、腹水;胸水;糞便;リンパ液;婦人科液(gynecological fluid);皮膚スワブ;膣スワブ;口腔スワブ;鼻腔スワブ;洗浄物もしくは灌流物(例えば、管灌流物もしくは気管支肺胞上皮灌流物);吸引物;擦過物;骨髄検体;組織生検標本;外科検体;糞便、他の体液、分泌物、および/または排泄物;ならびに/あるいはこれらに由来する細胞等であってもよく、またはこれらを含んでいてもよい。ある実施態様において、生物学的試料は、個体から取得された細胞であるか、これを含む。ある実施態様において、得られた細胞は、取得される試料に由来する個体からの細胞であるか、これを含む。ある実施態様において、試料は、いずれかの適切な方法により目的の供給源から直接取得された「一次試料」である。例えば、ある実施態様において、一次生物学的試料は、生検(例えば、細針アスピレーションもしくは組織生検)、外科手術、体液(例えば、血液、リンパ液、糞便等)の採取等からなる群から選択される方法によって得られる。ある実施態様において、文脈から明らかであるように、用語「試料」は、一次試料を処理することによって(例えば、一次試料のうちの1つまたはそれ以上の構成物を除去し、および/または一次試料に1つまたはそれ以上の薬剤を加えることによって)得られる調製物を意味する。例えば、半透過性膜を用いて濾過することである。このような「処理された試料」は、例えば、試料から抽出し、または一次試料をmRNAの増幅または逆転写、単離および/または一定の構成物の精製等の技術に付することによって得られる核酸またはタンパク質を含んでいてもよい。
【0029】
バイオマーカー:用語「バイオマーカー」は、本明細書では、その存在、レベル、程度、タイプ、および/または形態が、その事象または状態の「マーカー」であると考えられる特定の目的の生物学的事象もしくは状態と関連する物質、事象、または性質を意味するために用いられる。いくつかの例として、ある実施態様において、バイオマーカーは、特定の疾患状態のためのマーカー、あるいは特定の疾患、障害または病気が進行し、発症し、再発しうる可能性のためのマーカーでありうるか、または前記マーカーを含みうる。ある実施態様において、バイオマーカーは、特定の疾患もしくは治療結果またはこれらの可能性のためのマーカーでありうるか、または前記マーカーを含みうる。よって、ある実施態様において、バイオマーカーは、関連する目的の生物学的事象もしくは状態の予測用であり、ある実施態様において、バイオマーカーは、関連する目的の生物学的事象もしくは状態の予後用であり、ある実施態様において、バイオマーカーは、関連する目的の生物学的事象もしくは状態の診断用である。バイオマーカーは、いずれの化学クラスの物質でありうるか、またはこれを含みうるものであり、物質の組み合わせであってもよく、またはこれを含んでいてもよい。例えば、ある実施態様において、バイオマーカーは、核酸、ポリぺプチド、脂質、炭水化物、小分子、無機薬剤(例えば、金属またはイオン)、またはこれらの組み合わせでありうるか、またはこれを含みうる。ある実施態様において、バイオマーカーは、細胞表面マーカーである。ある実施態様において、バイオマーカーは、細胞内である。ある実施態様において、バイオマーカーは、細胞外で検出される(例えば、血液、尿、涙、唾液、脳脊髄液等の体液において、例えば、細胞外に分泌されるか、あるいは細胞外で生成され、または細胞外に存在する)。ある実施態様において、バイオマーカーは、遺伝子またはエピジェネティックシグネチャーであってもよく、またはこれらを含んでいてもよい。ある実施態様において、バイオマーカーは、遺伝子発現シグネチャーでありうるか、またはこれを含みうる。
【0030】
ある実施態様において、バイオマーカーは、神経変性のため、あるいは神経変性疾患、障害または病気が進行し、発症し、または再発しうる可能性のためのマーカーでありうるか、前記マーカーを含みうる。ある実施態様において、バイオマーカーは、治療結果の神経変性またはその可能性のためのマーカーであってもよく、または前記マーカーを含んでいてもよい。よって、ある実施態様において、バイオマーカーは、神経変性疾患、障害または病気の予測用であり、ある実施態様において、バイオマーカーは、神経変性疾患、障害または病気の予後用であり、ある実施態様において、バイオマーカーは、神経変性疾患、障害または病気の診断用である。ある実施態様において、バイオマーカーレベルの変化は、脳脊髄液(CSF)、血漿および/または血清により検出することができる。
【0031】
ある実施態様において、神経変性は、例えば、対象の脳脊髄液に含まれるニューロフィラメントタンパク質軽鎖(NF-L)および/またはニューロフィラメントタンパク質重鎖(NF-H)の濃度の増加および/または減少を検出することによって評価されうる。ある実施態様において、神経変性の発生および/または進行は、シナプス小胞糖タンパク質2a(SV2A)リガンドを用いて陽電子放出断層撮影法(PET)により評価しうる。ある実施態様において、神経における構成的NADおよび/またはcADPRレベルの検出可能な変化は、神経変性を評価するために用いることができる。
【0032】
ある実施態様において、対象における1つまたはそれ以上の神経変性に関連するタンパク質の健全な参照集団と比較した検出可能な変化は、神経変性のバイオマーカーとして用いることができる。このようなタンパク質には、以下に限定されないが、アルブミン、アミロイド-β(Aβ)38、Aβ40、Aβ42、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、心臓型脂肪酸結合タンパク質(hFABP)、単球走化性タンパク質(MCP)-1、ニューログラニン、神経特異的エノラーゼ(NSE)、可溶型アミロイド前駆体タンパク質(sAPP)α、sAPPβ、可溶型ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体(sTREM)2、リン酸化タウ、および/または総タウが含まれる。ある実施態様において、以下に限定されないが、Ccl2、Ccl7、Ccl12、Csf1、および/またはIl6を含むサイトカインおよび/またはケモカインの増加は、神経変性のバイオマーカーとして用いることができる。
【0033】
担体:本明細書で用いられるように、用語「担体」は、組成物とともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはベヒクルを意味する。ある例示的な実施態様において、担体には、例えば、水および油(石油、動物、植物または合成由来の油を含む)、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等のような無菌液体が含まれうる。ある実施態様において、担体は、1つまたはそれ以上の固形成分であるか、またはこれを含む。
【0034】
組み合わせ療法:本明細書で用いられるように、用語「組み合わせ療法」は、対象が2つまたはそれ以上の治療計画(例えば、2つまたはそれ以上の治療剤)に同時に曝される状況を意味する。ある実施態様において、2つまたはそれ以上の治療計画は、同時に投与されてもよく;ある実施態様において、このような治療計画は、連続して投与されてもよく(例えば、最初の治療計画の全ての「用量」が2番目の治療計画のいずれかの用量の投与前に投与される);ある実施態様において、このような薬剤は、重複する投薬計画で投与される。ある実施態様において、組み合わせ療法の「投与」は、1つまたはそれ以上の薬剤または方法を他の薬剤または方法を受けている対象に対して組み合わせて投与することに関連しうる。明確にするために、組み合わせ療法は、ある実施態様において、2つまたはそれ以上の薬剤またはこれらの活性部分が、組み合わせる組成物または組み合わせる化合物において一緒に(例えば、単一の化学複合体または共有結合物の一部として)投与されてもよいが、各薬剤が単一の組成物において一緒に(またはさらに必要なこととして同時に)投与されることを要しない。
【0035】
組成物:当業者は、用語「組成物」が1つまたはそれ以上の特定された構成成分を含む別個の物理的物質を意味するために用いられうることを理解する。一般に、特に断りがなければ、組成物は、例えば、ガス、ゲル、液体、固体等のいずれかの形態のものであってもよい。
【0036】
ドメイン:本明細書で用いられる用語「ドメイン」は、物質の区分または部分を意味する。ある実施態様において、「ドメイン」は、その親の物質の残りから物理的に分離される場合、特定の構造的および/または機能的特徴を実質的または全体的に保持するような、物質の特定の構造的および/または機能的特徴を付随する。あるいは、または加えて、ドメインは、その(親の)物質から分離され、異なる(受容する)物質と結合した場合、親の物質において特徴付けられる受容する物質の1つまたはそれ以上の構造的および/または機能的特徴を実質的に保持し、および/または付与する物質の部分でありうるか、または含みうる。ある実施態様において、ドメインは、分子の区分または部分(例えば、小分子、炭水化物、脂質、核酸、またはポリぺプチド)である。ある実施態様において、ドメインは、ポリぺプチドの区分であり;あるこのような実施態様において、ドメインは、特定の構造的要素(例えば、特定のアミノ酸配列または配列モチーフ、α-ヘリックス構造、β-シート構造、コイルドコイル構造、ランダムコイル構造等)によって、および/または特定の機能的特徴(例えば、結合活性、酵素活性、折り畳み活性、シグナル伝達活性等)によって特徴付けられる。
【0037】
製剤または単位製剤:当業者は、用語「製剤」が、対象への投与のための活性薬剤の物理的に別々の単位(例えば、治療薬または診断薬)を意味するために用いられうることを理解する。典型的には、このような単位の各々には、所定量の活性薬剤が含まれる。ある実施態様において、このような量は、関連する集団に投与される場合に所望される結果または利益的な結果と相関関係を有するように決定される投与計画(すなわち、治療投薬計画)による投与に適する単位投与量(またはその全体の割合)である。当業者は、特定の対象に投与される治療上の組成物または薬剤の総量が、1人またはそれ以上の担当医師によって決定され、複数の製剤の投与に関連しうることを理解する。
【0038】
投薬計画または治療計画:当業者は、用語「投薬計画」および「治療計画」が、典型的には、時期を分割して、対象に個々に投与される一組の単位用量(典型的には、1回以上)を意味するために用いられうることを理解する。ある実施態様において、一定の治療剤は、1つまたはそれ以上の用量に関しうる推奨される投薬計画を有する。ある実施態様において、投薬計画には、複数の用量が含まれ、これらの各々は、他の用量から時期が離される。ある実施態様において、各用量は、同一間隔で時期が相互に離され;ある実施態様において、投薬計画には、複数の用量が含まれ、各用量が少なくとも2つの異なる時期に離される。ある実施態様において、投薬計画内の全ての用量は、同一の単位用量である。ある実施態様において、投薬計画内の異なる用量は、異なる量のものである。ある実施態様において、投薬計画には、最初の投薬における用量、続いて最初の用量とは異なる第2の投薬における1つまたはそれ以上のさらなる用量が含まれる。ある実施態様において、投薬計画には、最初の投薬における用量、続いて最初の用量と同一の第2の投薬における1つまたはそれ以上のさらなる用量が含まれる。ある実施態様において、投薬計画は、(すなわち、治療投薬計画である)関連する集団にわたり投与される場合に所望されるか、または利益的な結果と相関する。
【0039】
賦形剤:本明細書で用いられるように、例えば、所望される一貫性または安定化効果を供するか、または付与するために、医薬組成物中に含まれうる治療剤ではない薬剤を意味する。適する医薬賦形剤には、例えば、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が含まれる。
【0040】
ヘテロ環:本明細書で用いられるように、用語「ヘテロサイクル」、「ヘテロサイクリル」、「ヘテロ環基」、および「ヘテロ環」は、交換可能に使用され、飽和または部分不飽和であり、炭素原子に加え、1個またはそれ以上、例えば、1~4個の上記で定義されるヘテロ原子を有する安定な3~8員単環式または7~10員二環式ヘテロ環部分を意味する。ヘテロ環の環原子に関して用いられる場合、用語「窒素」には、置換された窒素が含まれる。一例として、酸素、硫黄、または窒素から選択される0~3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環において、前記窒素は、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリル等の場合)、NH(ピロリジニル等の場合)、またはNR(N置換ピロリジニル等の場合)でありうる。ヘテロ環は、いずれかのヘテロ原子または炭素原子においてそのペンダント基に結合して、安定な構造を形成することができ、前記環原子のいずれかが適宜置換されていてもよい。このような飽和または部分不飽和ヘテロ環基の例には、下記に限定されないが、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびチアモルホリニルが含まれる。ヘテロサイクリル基は、単環、二環、三環、または多環式、好ましくは、単環、二環、または三環式、より好ましくは、単環または二環式でありうる。用語「ヘテロサイクリルアルキル」は、ヘテロサイクリルによって置換されたアルキル基を意味し、前記アルキルおよびヘテロサイクリル部分は、独立して、適宜置換されていてもよい。また、ヘテロ環には、ヘテロ環が1つまたはそれ以上のアリール環に縮合されている基が含まれる。
【0041】
阻害剤:本明細書で用いられるように、用語「阻害剤」は、その存在、レベルまたは程度が標的のレベルまたは活性の減少と相関関係にある物質、条件または事象を意味する。ある実施態様において、阻害剤は、直接作用してもよく(例えば、標的に結合することによってその標的に直接影響する場合);ある実施態様において、阻害剤は、間接的に作用してもよい(標的のレベルおよび/または活性が減少するように標的の調節因子と相互作用し、および/または前記調節因子を変化させることによって影響する場合)。ある実施態様において、阻害剤は、存在またはレベルが、(例えば、公知の阻害剤の存在または対象の阻害剤の非存在のような適当な対照条件下で観察される)特定の対照レベルまたは活性と比較して減少する目的のレベルまたは活性と相関関係にあるものである。
【0042】
神経変性:本明細書で用いられるように、用語「神経変性」は、神経または神経組織の1つまたはそれ以上の特徴、構造、または性質の減少を意味する。ある実施態様において、神経変性は、生体における病的減少として観察される。当業者は、神経変性が一定の疾患、障害、および状態(ヒトに影響を与えるものを含む)に関連するものと理解する。ある実施態様において、神経変性は、(例えば、一定の感染および/または化学的もしくは機械的破壊に付随して生じるような)一時的なものであってもよく;ある実施態様において、神経変性は、(例えば、一定の疾患、障害、状態、例えば、以下に限定されないが、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、ハンチントン病、またはアルツハイマー病等に付随するような)慢性および/または進行性でありうる。ある実施態様において、神経変性は、例えば、対象における神経変性に関連するバイオマーカーの増加を検出することによって評価されてもよい。ある実施態様において、神経変性は、例えば、対象における神経変性に関連するバイオマーカーの減少を検出することによって評価されてもよい。あるいは、または加えて、ある実施態様において、神経変性は、磁気共鳴画像法(MRI)、脳脊髄液を含むバイオマーカー、または患者で観察される他のバイオマーカーによって評価されうる。ある実施態様において、神経変性は、ミニメンタルステート検査における24未満のスコアとして定義される。ある実施態様において、神経変性は、シナプスの喪失を意味する。ある実施態様において、神経変性は、外傷(例えば、神経組織の統合性を破壊する外力へさらされること)に関する神経組織の減少を意味する。ある実施態様において、神経変性は、末梢神経組織の減少を意味する。ある実施態様において、神経変性は、中枢神経組織の減少を意味する。
【0043】
経口:本明細書で用いられる用語「経口投与」および「経口で投与される」は、化合物または組成物の口による投与を示すものと当該技術分野で理解される意味を有する。
【0044】
非経口:本明細書で用いられる用語「非経口投与」および「非経口で投与される」は、腸内投与および局所投与を除く、通常注射による投与様式を示すものと当該技術分野で理解される意味を有し、下記に限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、および胸骨内注射および注入を含む。
【0045】
部分不飽和:本明細書で用いられるように、用語「部分不飽和」は、環原子間に少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分を意味する。用語「部分不飽和」は、不飽和の複数部位を有する環を含むものとされるが、本明細書で定義されるように、芳香族(例えば、アリールまたはヘテロアリール)部分を含むことは意図されていない。
【0046】
患者:本明細書で用いられるように、用語「患者」は、提供される組成物が、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療目的のために、投与され、または投与されうるいずれかの生物を意味する。典型的な患者には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒトのような哺乳類)が含まれる。ある実施態様において、患者は、ヒトである。ある実施態様において、患者は、1つまたはそれ以上の障害または病気に罹っているか、または罹りやすい。ある実施態様において、患者は、障害または病気の1つまたはそれ以上の症状を示す。ある実施態様において、患者は、1つまたはそれ以上の障害または病気と診断されている。ある実施態様において、前記患者は、疾患、障害または病気を診断し、および/または治療するために一定の療法を受けているか、または受けていた。
【0047】
医薬組成物:本明細書で用いられるように、用語「医薬組成物」は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される担体と一緒に製剤化された活性薬剤を意味する。ある実施態様において、前記活性薬剤は、関連する集団に投与される場合、所定の治療効果を達成する統計学的に有意な確率を示す治療または投薬計画における投与に適する単位用量で存在する。ある実施態様において、医薬組成物は、下記のために適用されるものを含む固形または液体形態における投与のために具体的に製剤化されてもよい:経口投与(例えば、水薬(水性もしくは非水性溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、バッカル、舌下、および全身吸収を目的としたもの、ボーラス、舌への適用のための散剤、顆粒剤、ペースト);非経口投与(例えば、無菌溶液もしくは懸濁液、または徐放製剤として、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による);局所適用(例えば、皮膚、肺、または口腔に適用されるクリーム、軟膏剤、または制御放出パッチもしくはスプレーとして);膣内または直腸内投与(例えば、ペッサリー、クリーム、または泡として);舌下投与;眼内投与;経皮投与;あるいは経鼻、肺、および他の粘膜投与。
【0048】
医薬的に許容される:本明細書で用いられるように、用語「医薬的に許容される」は、妥当な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー性反応、またはその他の問題もしくは合併症なくヒトおよび動物の組織との接触において使用することに適し、合理的な利益/リスクの割合に見合う化合物、物質、組成物、および/または製剤を意味する。
【0049】
医薬的に許容される担体:本明細書で用いられるように、用語「医薬的に許容される担体」は、対象の化合物を、1つの器官または体の一部から別の器官または体の一部に保有し、または運搬することに関する、医薬的に許容される物質、組成物またはベヒクル、例えば、液体または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒をカプセル化する物質を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に有害ではないという意味において「許容可能」でなければならない。医薬的に許容される担体として供することができる物質のいくつかの例として、糖、例えば、乳糖、グルコース、およびショ糖;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末トラガント;麦芽;ゼラチン;滑石;賦形剤、例えば、ココアバターおよび座薬用ワックス;油、例えば、落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油、および大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱性物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;pH緩衝溶液;ポリエステル、ポリカルボネート、および/またはポリ無水物;ならびに医薬製剤で用いられる他の非毒性適合物質が含まれる。
【0050】
医薬的に許容される塩:用語「医薬的に許容される塩」は、本明細書で用いられるように、医薬上の用途に適当である化合物の塩、すなわち、妥当な医学的判断の範囲において、過剰な毒性、刺激、アレルギー性反応等なくヒトおよび低級動物の組織との接触における使用に適し、合理的な利益/リスクの割合に見合う塩を意味する。医薬的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergerらは、医薬的に許容される塩をJ. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)に詳細に記載している。ある実施態様において、医薬的に許容される塩には、以下に限定されないが、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸、または有機酸、例えば、酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸と形成されるか、あるいはイオン交換法などの当該技術分野で用いられる他の方法を用いることによって形成されるアミノ基の塩である、非毒性の酸付加塩が含まれる。ある実施態様において、医薬的に許容される塩には、以下に限定されないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩(camphorate)、樟脳スルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が含まれる。ある実施態様において、医薬的に許容される塩として、適宜、非毒性アンモニウム塩、第四級アンモニウム塩、ならびに対イオンを用いて形成されるアミンカチオン塩、例えば、ハロゲン化物塩、水酸化物塩、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1~6個の炭素原子を有するアルキル塩、スルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩が含まれる。
【0051】
「予防する」または「予防」:本明細書で用いられるように、用語「予防する」または「予防」は、疾患、障害、および/または病気の記載と合わせて用いられる場合、その疾患、障害、および/または病気を発症するリスクを減少させることおよび/またはその疾患、障害または病気の1つまたはそれ以上の特徴または症状の発症を遅らせることを意味する。予防は、疾患、障害または病気の発症が一定期間遅らせる場合に達成されるものと考慮されうる。
【0052】
特異的:用語「特異的」は、活性を有する薬剤に関して本明細書で用いられる場合、その薬剤が可能性のある標的の物質または状態間を区別するを意味することと当業者により理解される。例えば、ある実施態様において、薬剤は、1つまたはそれ以上の競合する別の標的の存在下で標的と選択的に結合する場合、その標的に対して「特異的に」結合するものとされる。多くの実施態様において、特異的な相互作用は、標的物質(例えば、エピトープ、溝、結合部位)の特定の構造的特徴の存在に依存するものである。特異性は、絶対的なものである必要はないことが理解されるべきである。ある実施態様において、特異性は、1つまたはそれ以上の他の可能性のある標的物質(例えば、競合因子)について結合する薬剤と比較して評価されてもよい。ある実施態様において、特異性は、対照の特異的結合薬剤と比較して評価される。ある実施態様において、特異性は、対照の非特異的結合薬剤と比較して評価される。ある実施態様において、前記薬剤または物質は、その標的物質に結合する条件下において競合する別の標的に検出可能な範囲で結合しない。ある実施態様において、結合薬剤は、競合する別の標的と比較して、その標的物質に対して、高い会合速度、低い解離速度、高い親和性、減少した解離、および/または高い安定性で結合する。
【0053】
対象:本明細書で用いられるように、用語「対象」は、生物、典型的には、哺乳類(例えば、ヒト、ある実施態様において、出生前のヒト形態を含む)を意味する。ある実施態様において、対象は、関連する疾患、障害または病気に罹っている。ある実施態様において、対象は、疾患、障害または病気に罹りやすい。ある実施態様において、対象は、疾患、障害または病気の1つまたはそれ以上の症状または特徴を示す。ある実施態様において、対象は、疾患、障害または病気のいずれの症状または特徴も示さない。ある実施態様において、対象は、疾患、障害または病気に罹りやすいか、または罹るリスクを有する1つまたはそれ以上の特徴を有するものである。ある実施態様において、対象は、患者である。ある実施態様において、対象は、診断および/または治療が行われているか、および/または行われていた個体である。
【0054】
治療剤:本明細書で用いられるように、用語「治療剤」は、一般に、生物に投与された場合に所望される薬理効果を生じる薬剤を意味する。ある実施態様において、薬剤は、適当な集団に対して統計学的に有意な効果を示す場合、治療剤として考慮される。ある実施態様において、適当な集団は、モデル生物の集団であってもよい。ある実施態様において、適当な集団は、例えば、一定の年齢群、性別、遺伝学的バックグランド、過去の臨床状態等の様々な基準によって定義されてもよい。ある実施態様において、治療剤は、疾患、障害、および/または病気の1つまたはそれ以上の症状または特徴を軽減し、改善し、緩和し、抑制し、予防し、前記症状または特徴の発症を遅延させ、前記症状または特徴の重症度を軽減し、および/または前記症状または特徴の発症を減少させるために用いることができる物質である。ある実施態様において、「治療剤」は、ヒトへの投与のために販売可能となる前に政府当局によって承認されているか、または承認されることが必要とされる薬剤である。ある実施態様において、「治療剤」は、薬の処方箋がヒトへの投与のために必要とされる薬剤である。
【0055】
治療する:本明細書で用いられるように、用語「治療する」、「治療」、または「治療している」は、部分的または完全に、疾患、障害、および/または病気の1つまたはそれ以上の症状または特徴を軽減し、改善し、緩和し、抑制し、予防し、前記症状または特徴の発症を遅延させ、前記症状または特徴の重症度を軽減し、および/または前記症状または特徴の発症を減少させるために用いられる方法を意味する。治療は、疾患、障害、および/または病気の症状を示さない対象に適用されてもよい。ある実施態様において、治療は、例えば、疾患、障害、および/または病気に関連する病態を進行するリスクを減少させるために、疾患、障害、および/または病気の初期症状のみしか示さない対象に投与されてもよい。
【0056】
ある実施態様の詳細な説明
プログラム化された軸索変性およびSARM1
軸索変性は、例えば、以下に限定されないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、多発性硬化症、糖尿病性末梢神経障害、化学療法剤誘発末梢神経障害、遺伝性神経障害、外傷性脳障害、および/または緑内障等の神経疾患の主な病理学的特徴である。損傷されるか、または病的な軸索は、ウォラー変性として知られる、アポトーシスのような従来の細胞死経路とは異なる内在的な自己破壊プログラムを介して排除される(Gerdts, J., et al., Neuron, 2016, 89, 449-460;Whitmore, A.V. et al., Cell Death Differ., 2003, 10, 260-261)。ウォラー変性において、末梢神経は、傷害に対して末梢側の軸索部分の選択的な分解を経る一方で、傷害に近接する側の軸索部分および細胞体は、無傷のまま残る。この変性は、傷害の約8~24時間後に、まず、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ(NMNAT)の枯渇、続いてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の喪失、アデノシン三リン酸(ATP)の喪失、ニューロフィラメントタンパク質の分解、最終的に軸索変性を生じることによって特徴付けられる(Gerdts, J., et al., Neuron, 2016, 89, 449-460)。
【0057】
NAD+は、エネルギー代謝と細胞シグナル伝達において不可欠な役割を果たす偏在性代謝物である(Belenkey et al., Trends Biochem., 2007, 32, 12-19;Chiarugi et al., Nat. Rev. Cancer, 2012, 12, 741-752)。NAD+レベルのホメオスタシス調節はまた、軸索の安定性および統合性を維持することに関連する。よって、NMNAT1の軸索の局在を増加させる操作は、軸索の保護を生じる(Babetto et al., Cell Rep., 2010, 3, 1422-1429;Sasaki et al., J. Neurosci., 2009)。
【0058】
初代マウス神経におけるゲノムワイドRNAiスクリーンにおいて、ステライルアルファおよびTIRモチーフ含有1(Sterile Alpha and TIR motif-containing 1)(SARM1)が同定され、当該スクリーンでは、SARM1のノックダウンが傷害で誘発される軸索変性に対する感覚神経の長期持続する保護を引き起こした(Gerdts et al., J Neurosci, 2013, 33, 13569-13580)。SARM1は、細胞質アダプタータンパク質のファミリーに属するが、最も進化的に古いアダプターであるため、そのメンバー間ではユニークであり、矛盾したことにTLRシグナル伝達を阻害し、傷害で誘発される軸索死経路の中心的な実行因子として同定された(O'Neill, L.A. & Bowie, A.G., Nat. Rev. Immunol., 2007, 7, 353-364;Osterloh, J.M., et al., Science, 2012, 337, 481-484;Gerdts, J., et al., J. Neurosci. 33, 2013, 13569-13580)。軸索傷害によるSARM1の活性化またはSARM1-TIRドメインの強制された二量体化は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の急速で甚大な枯渇、その直後の軸索変性を促進し、それにより軸索の統合性におけるNAD+ホメオスタシスの中心的な役割が強調される(Gerdts, J., et al., Science, 2015, 348, 453-457)。SARM1は、インビトロおよびインビボの両方におけるこの傷害で誘発されたNAD+の枯渇に必要とされ、SARM1活性化は、NAD(+)破壊を介した局所的な軸索変性の引き金となる(Gerdts et al., et al., Science, 2015 348, 452-457;Sasaki et al., J. Biol. Chem. 2015, 290, 17228-17238;これら両方とも参照により全体が本明細書に取り込まれる)。
【0059】
遺伝学的な機能喪失実験より、傷害後の軸索変性経路の中心的な実行因子として機能することは明らかである。SARM1の遺伝子ノックアウトは、神経切断後14日までの間の軸索の保存を可能にし(Osterloh, J.M., et al., Science, 2012, 337, 481-484;Gerdts, J., et al.. J. Neurosci., 2013, 33, 13569-13580)、また、外傷性脳障害後のマウスにおける機能転帰が改善される(Henninger, N. et al., Brain 139, 2016, 1094-1105)。直接的な軸索傷害におけるSARM1の役割に加え、SARM1はまた、化学療法で誘発された末梢神経障害で見られる軸索変性に必要とされる。SARM1の喪失は、化学療法剤誘発末梢神経障害を妨げ、化学療法のビンクリスチン治療後に進行する軸索変性および疼痛感受性の亢進を阻害する(Geisler et al, Brain, 2016, 139, 3092-3108)。
【0060】
SARM1は、オリゴマー化およびタンパク質-タンパク質相互作用を介在するSAMドメイン、ARM/HEATモチーフおよびTIRドメインを含む複数の保存されたモチーフ(図1)を含有する(O'Neill, L.A. & Bowie, A.G., Nat. Rev. Immunol., 2007, 7, 353-364; Tewari, R., et al., Trends Cell Biol., 2010, 20, 470-481; Qiao, F. & Bowie, J.U., Sci. STKE 2005, re7, 2005)。TIRドメインは、一般に、タンパク質複合体の骨格として機能する自然免疫経路において機能するシグナル伝達タンパク質として見出されている(O'Neill, L.A. & Bowie, A.G., Nat. Rev. Immunol., 2007, 7, 353-364)。興味深いことに、SARM1-TIRドメインの二量体化は、NAD+切断酵素として作用することによって、軸索変性を誘導し、NAD+分解を急速に開始するために十分である(Milbrandt et al., WO 2018/057989; Gerdts, J., et al., Science, 2015, 348, 453-457)。軸索変性経路およびその同定されたNADアーゼ活性におけるSARM1の中心的な役割を考慮し、SARM1を調節し、例えば、末梢神経障害、外傷性脳障害、および/または神経変性疾患を含む神経変性疾患から保護するために有用な治療剤として潜在的に作用することができる薬剤を同定するための試みが行われている。
【0061】
特に、本開示は、SARM1阻害剤として(例えば、SARM1阻害剤として)作用する特定の化合物および/または組成物、ならびにこれらに関連する技術を提供する。
【0062】
化合物
ある実施態様において、本開示は、式I:
【化2】

[式中、
およびXのうちの1つは、CおよびNから選択され、もう一方は、Cであり;
は、N、N-R、およびC-Ry1から選択され;
は、NおよびC-Ry2から選択され;
は、N、N-R、O、S、およびS(O)から選択され;
は、NおよびC-Rz2から選択され;
は、NおよびC-Rz3から選択され;
は、NおよびC-Rz4から選択され;
各Rは、独立して、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)、または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;
y1、Ry2、Rz1、Rz2、Rz3、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択され;
あるいはRが2つの場合,それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0063】
上記で一般的に定義されるように、XおよびXのうちの1つは、CおよびNから選択され、もう一方は、Cである。ある実施態様において、Xは、Nであり、Xは、Cである。ある実施態様において、Xは、Cであり、Xは、Nである。
【0064】
およびXのうちの1つが、Nである化合物は、構造:
【化3】
を有することが理解される。
【0065】
それゆえ、このような化合物におけるYおよびYの原子価により、(i)Yは、NおよびC-Ry1から選択され、(ii)Yは、Nであることが理解される。
【0066】
上記で一般的に定義されるように、各Rは、独立して、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択される。ある実施態様において、Rは、水素である。ある実施態様において、Rは、-OR、-C(O)N(R)または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rは、C1-6脂肪族である。あるかかる実施態様において、Rは、C1-6アルキルである。ある実施態様において、Rは、-CHである。ある実施態様において、Rは、-CHCHである。ある実施態様において、Rは、-CH(CHである。
【0067】
ある実施態様において、Rは、-ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rは、-ORで適宜置換されていてもよいC1-6アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-ORで適宜置換されていてもよいC1-4アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-ORで適宜置換されていてもよいC1-3アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-ORで適宜置換されていてもよいC1-2アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-(CH1-3ORである。ある実施態様において、Rは、-(CH2-3ORである。ある実施態様において、Rは、-(CHORである。ある実施態様において、Rは、-(CHORである。
【0068】
ある実施態様において、Rは、-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rは、-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-4アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-3アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-2アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-(CH1-3C(O)ORである。ある実施態様において、Rは、-(CH2-3C(O)ORである。ある実施態様において、Rは、-CHC(O)ORである。ある実施態様において、Rは、-(CHC(O)ORである。
【0069】
ある実施態様において、Rは、-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rは、-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-4アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-3アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-2アルキレンである。ある実施態様において、Rは、-(CH1-3C(O)N(R)である。ある実施態様において、Rは、-(CH2-3C(O)N(R)である。ある実施態様において、Rは、-CHC(O)N(R)である。ある実施態様において、Rは、-(CHC(O)N(R)である。
【0070】
上記で一般的に定義されるように、Ry1、Ry2、Rz1、Rz2、Rz3、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択される。ある実施態様において、Ry1は、水素である。ある実施態様において、Ry1は、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、あるいはハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Ry1は、水素、ハロゲン、または-ORである。ある実施態様において、Ry1は、ハロゲンである。あるかかる実施態様において、Ry1は、クロロである。ある実施態様において、Ry1は、ブロモである。ある実施態様において、Ry1は、ヨードである。ある実施態様において、Ry1は、-ORである。ある実施態様において、Ry1は、-CNまたは-C(O)ORである。
【0071】
ある実施態様において、Ry2は、水素である。ある実施態様において、Ry2は、is ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、あるいはハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Ry2は、水素、-CN、-C(O)OR、またはC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Ry2は、C1-6脂肪族である。あるかかる実施態様において、Ry2は、C1-6アルキルである。ある実施態様において、Ry2は、-CHである。ある実施態様において、Ry2は、-CNである。ある実施態様において、Ry2は、-C(O)ORである。ある実施態様において、Ry2は、-ORである。
【0072】
ある実施態様において、Rz1は、水素である。ある実施態様において、Rz1は、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、あるいはハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)OR、または-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz1は、水素またはハロゲンである。ある実施態様において、Rz1は、ハロゲンである。あるかかる実施態様において、Rz1は、ブロモである。ある実施態様において、Rz1は、-ORである。ある実施態様において、Rz1は、-CNまたは-C(O)ORである。
【0073】
ある実施態様において、Rz2は、水素である。ある実施態様において、Rz2は、is ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、あるいはハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz2は、ハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)OR、または-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz2は、水素またはC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz2は、C1-6脂肪族である。あるかかる実施態様において、Rz2は、C1-6アルキルである。ある実施態様において、Rz2は、-CHである。ある実施態様において、Rz2は、-ORである。ある実施態様において、Rz2は、-CNまたは-C(O)ORである。
【0074】
ある実施態様において、Rz3は、水素である。ある実施態様において、Rz3は、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、あるいはハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz3は、-ORである。ある実施態様において、Rz3は、-CNまたは-C(O)ORである。ある実施態様において、Rz3は、ハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)OR、または-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。
【0075】
ある実施態様において、Rz4は、水素である。ある実施態様において、Rz4は、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、あるいはハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz4は、ハロゲンである。あるかかる実施態様において、Rz4は、クロロである。ある実施態様において、Rz4は、-ORである。ある実施態様において、Rz4は、ハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である。ある実施態様において、Rz4は、-C(O)ORである。ある実施態様において、Rz4は、-CNである。
【0076】
上記で一般的に定義されるように、Yは、N、N-R、およびC-Ry1から選択される。ある実施態様において、Yは、Nである。ある実施態様において、Yは、N-Rである。ある実施態様において、Yは、C-Ry1である。
【0077】
上記で一般的に定義されるように、Yは、NおよびC-Ry2から選択される。ある実施態様において、Yは、Nである。ある実施態様において、Yは、C-Ry2である。
【0078】
上記で一般的に定義されるように、Yは、N、N-R、O、S、およびS(O)から選択される。ある実施態様において、Yは、N-R、O、S、およびS(O)から選択される。ある実施態様において、Yは、N-R、O、およびSから選択される。ある実施態様において、Yは、Nである。ある実施態様において、Yは、N-Rである。ある実施態様において、Yは、Oである。ある実施態様において、Yは、Sである。ある実施態様において、Yは、S(O)である。
【0079】
上記で一般的に定義されるように、Zは、NおよびC-Rz2から選択される。ある実施態様において、Zは、Nである。ある実施態様において、Zは、C-Rz2である。
【0080】
上記で一般的に定義されるように、Zは、NおよびC-Rz3から選択される。ある実施態様において、Zは、Nである。ある実施態様において、Zは、C-Rz3である。
【0081】
上記で一般的に定義されるように、Zは、NおよびC-Rz4から選択される。ある実施態様において、Zは、Nである。ある実施態様において、Zは、C-Rz4である。
【0082】
上記で一般的に定義されるように、各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択されるか、あるいはRが2つの場合、それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分飽和ヘテロ環を形成する。ある実施態様において、Rは、水素である。ある実施態様において、Rは、C1-6脂肪族である。あるかかる実施態様において、Rは、C1-6アルキルである。ある実施態様において、Rは、-CHである。ある実施態様において、Rは、水素および-CHから選択される。
【0083】
式Iのある実施態様において、Zは、Nである。よって、本開示は、式II:
【化4】
II
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0084】
式Iのある実施態様において、Xは、Nであり、Xは、Cである。よって、ある実施態様において、本開示は、式III:
【化5】
III
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0085】
式Iのある実施態様において、Xは、Cであり、Xは、Nである。よって、ある実施態様において、本開示は、式IV:
【化6】
IV
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0086】
ある実施態様において、本開示は、式II-a、II-b、II-c、II-d、II-e、III-a、III-b、IV-a、またはIV-b:
【化7】
[式中、X、X、Y、Y、Y、Z、Z、Ry1、Rz1,およびR†の各々は、上記で定義され、本明細書に記載されるとおりである]
のいずれか1つの化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0087】
ある実施態様において、本開示は、
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
から選択される化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0088】
ある態様において、本開示は、下記の実施態様に記載される化合物を提供する:
【0089】
実施態様1.
式I:
【化8】

[式中、
およびXのうちの1つは、CおよびNから選択され、もう一方は、Cであり;
は、N、N-R、およびC-Ry1から選択され;
は、NおよびC-Ry2から選択され;
は、N、N-R、O、S、およびS(O)から選択され;
は、NおよびC-Rz2から選択され;
は、NおよびC-Rz3から選択され;
は、NおよびC-Rz4から選択され;
各Rは、独立して、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R)または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;
y1、Ry2、Rz1、Rz2、Rz3、およびRz4の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R)、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC1-6脂肪族から選択され;
あるいはRが2つの場合,それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩。
【0090】
実施態様2.
式II:
【化9】
II
で示される構造を有する、実施態様1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【0091】
実施態様3.
式III:
【化10】
III
で示される構造を有する、実施態様1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【0092】
実施態様4.
式IV:
【化11】
IV
で示される構造を有する、実施態様1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【0093】
実施態様5.
が、Nである、実施態様3または実施態様4に記載の化合物。
【0094】
実施態様6.
が、Nである、実施態様3または実施態様4に記載の化合物。
【0095】
実施態様7.
が、Nである、実施態様1~6のいずれか1つに記載の化合物。
【0096】
実施態様8.
が、C-Ry1である、実施態様1~6のいずれか1つに記載の化合物。
【0097】
実施態様9.
が、Nである、実施態様1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0098】
実施態様10.
が、C-Ry2である、実施態様1~6のいずれか1つに記載の化合物。
【0099】
実施態様11.
が、Nである、実施態様1~10のいずれか1つに記載の化合物。
【0100】
実施態様12.
が、N-Rである、実施態様1または実施態様2に記載の化合物。
【0101】
実施態様13.
が、N-Rである、実施態様1または実施態様2に記載の化合物。
【0102】
実施態様14.
が、Oである、実施態様1または実施態様2に記載の化合物。
【0103】
実施態様15.
が、Sである、実施態様1または実施態様2に記載の化合物。
【0104】
実施態様16.
が、S(O)である、実施態様1または実施態様2に記載の化合物。
【0105】
実施態様17.
が、Nである、実施態様13~16のいずれか1つに記載の化合物。
【0106】
実施態様18.
が、C-Ry1である、実施態様13~16のいずれか1つに記載の化合物。
【0107】
実施態様19.
が、N-Rである、実施態様13~16のいずれか1つに記載の化合物。
【0108】
実施態様20.
が、Nである、実施態様12~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0109】
実施態様21.
が、C-Ry2である、実施態様12~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0110】
実施態様22.
が、水素である、実施態様1、2、12、13、および19のいずれか1つに記載の化合物。
【0111】
実施態様23.
が、C1-6脂肪族である、実施態様1、2、12、13、および19のいずれか1つに記載の化合物。
【0112】
実施態様24.
が、C1-6アルキルである、実施態様23に記載の化合物。
【0113】
実施態様25.
が、-CHである、実施態様24に記載の化合物。
【0114】
実施態様26.
が、-CHCHである、実施態様24に記載の化合物。
【0115】
実施態様27.
が、-CH(CHである、実施態様24に記載の化合物。
【0116】
実施態様28.
が、-C(O)ORまたは-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である、実施態様1、2、12、13、および19のいずれか1つに記載の化合物。
【0117】
実施態様29.
が、-ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である、実施態様28に記載の化合物。
【0118】
実施態様30.
が、-C(O)N(R)で適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である、実施態様28に記載の化合物。
【0119】
実施態様31.
が、-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC1-6脂肪族である、実施態様28に記載の化合物。
【0120】
実施態様32.
y1が、水素である、実施態様8または実施態様18に記載の化合物。
【0121】
実施態様33.
y1が、ハロゲンである、実施態様8または実施態様18に記載の化合物。
【0122】
実施態様34.
y1が、-ORである、実施態様8または実施態様18に記載の化合物。
【0123】
実施態様35.
y2が、水素である、実施態様10または実施態様21に記載の化合物。
【0124】
実施態様36.
y2が、C1-6脂肪族である、実施態様10または実施態様21に記載の化合物。
【0125】
実施態様37.
y2が、C1-6アルキルである、実施態様36に記載の化合物。
【0126】
実施態様38.
y2が、-CHである、実施態様37に記載の化合物。
【0127】
実施態様39.
y2が、-CNである、実施態様10または実施態様21に記載の化合物。
【0128】
実施態様40.
y2が、-C(O)ORである、実施態様10または実施態様21に記載の化合物。
【0129】
実施態様41.
z1が、水素である、実施態様1~40のいずれか1つに記載の化合物。
【0130】
実施態様42.
z1が、ハロゲンである、実施態様1~40のいずれか1つに記載の化合物。
【0131】
実施態様43.
が、Nである、実施態様1~42のいずれか1つに記載の化合物。
【0132】
実施態様44.
が、C-Rz2である、実施態様1~42のいずれか1つに記載の化合物。
【0133】
実施態様45.
z2が、水素である、実施態様44に記載の化合物。
【0134】
実施態様46.
z2が、C1-6脂肪族である、実施態様44に記載の化合物。
【0135】
実施態様47.
z2が、C1-6アルキルである、実施態様46に記載の化合物。
【0136】
実施態様48.
z2が、-CHである、実施態様47に記載の化合物。
【0137】
実施態様49.
が、Nである、実施態様1~48のいずれか1つに記載の化合物。
【0138】
実施態様50.
が、C-Rz4である、実施態様1~48のいずれか1つに記載の化合物。
【0139】
実施態様51.
z4が、水素である、実施態様50に記載の化合物。
【0140】
実施態様52.
z4が、ハロゲンである、実施態様50に記載の化合物。
【0141】
実施態様53.
Rが、水素である、実施態様28~31、34、および40のいずれか1つに記載の化合物。
【0142】
実施態様54.
Rが、C1-6脂肪族である、実施態様28~31、34、および40のいずれか1つに記載の化合物。
【0143】
実施態様55.
Rが、C1-6アルキルである、実施態様54に記載の化合物。
【0144】
実施態様56.
Rが、-CHである、実施態様55に記載の化合物。
【0145】
実施態様57.
Rが、-CHCHである、実施態様55に記載の化合物。
【0146】
実施態様58.
式II-a、II-b、II-c、II-d、II-e、III-a、III-b、IV-a、およびIV-b:
【化12】
から選択される、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【0147】
組成物
ある実施態様において、式Iの化合物は、1つまたはそれ以上の他の構成成分と、例えば、組み合わせた(例えば、混合した)組成物中で提供されてもよい。
【0148】
ある実施態様において、本開示は、例えば、系または環境、例えば、SARM1のNADアーゼ活性を含みうる系または環境と接触させるか、または投与される場合、式Iの化合物またはその活性代謝物を含むか、および/または送達する組成物を提供し;ある実施態様において、このような組成物の前記系または環境への投与は、本明細書に記載されるようにSARM1活性の阻害を可能にする。
【0149】
ある実施態様において、提供される本明細書に記載の組成物は、活性薬剤および1つまたはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物であってもよく;あるこのような実施態様において、提供される医薬組成物は、本明細書に記載されるような関連する系または環境(例えば、それを必要とする対象)に投与するために、式Iの化合物またはその活性代謝物を含むか、および/または送達する。
【0150】
ある実施態様において、1つまたはそれ以上の式Iの化合物は、医薬的に許容される塩形態で提供されるか、および/または使用される。
【0151】
特に、本開示は、式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは誘導体、および医薬的に許容される担体、補助剤、またはベヒクルを含む組成物を提供する。提供される組成物中の化合物の量は、生物学的試料または患者における軸索変性を測定可能に阻害するのに有効である。ある実施態様において、提供される化合物または組成物は、このような組成物を必要とする患者への投与のために製剤化される。本開示の方法による化合物および組成物は、本明細書に記載のいずれかの疾患または障害を治療し、またはその重症度を減少させるために有効な投与のいずれかの量と経路を用いて投与されてもよい。提供される化合物は、好ましくは、投与の簡易性と用量の均一性のために用量単位形態で製剤化される。本明細書で用いられる用語「用量単位形態」は、治療されるべき患者に適する薬剤の物理的に別々の単位を意味する。しかしながら、提供される化合物および組成物の合計の1日の用量は、妥当な医学的判断の範囲内において担当医によって決定されることが理解される。特定の患者または生物のための具体的に有効な用量レベルは、治療される疾患および疾患の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる具体的な組成物およびその投与経路;患者の人種、年齢、体重、性別および食事;対象の総体的な状態;投与時間;用いられる特定の化合物の排泄速度;治療期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて、または同時に用いられる薬物等を含む様々な因子に応じて対象ごとに変動する。
【0152】
提供される組成物は、治療される疾患の重症度に応じて、経口、非経口、吸入もしくは経鼻スプレー、局所(例えば、散剤、軟膏剤、または点滴)、直腸、バッカル、膣内、腹腔内、大槽内、または埋め込み型リザーバーにより投与されてもよい。好ましくは、前記組成物は、経口、腹腔内、または静脈内で投与される。ある実施態様において、提供される化合物は、所望される治療効果を得るために、1日1回またはそれ以上において、1日あたり対象の体重の約0.01mg/kg~約50mg/kgの用量で経口または非経口で投与される。
【0153】
用語「非経口」には、本明細書で用いられるように、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内、および脳内注射または注入技術が含まれる。提供される組成物の適する注射用形態は、水性または油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適する分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を用いて当該技術分野で公知の技術に従って製剤化されうる。無菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口で許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール溶液として)であってもよい。用いられうる許容可能なベヒクルおよび溶媒として、水、リンガー溶液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の固定油は、通常、溶媒または懸濁媒体として用いられる。
【0154】
本目的のため、合成モノもしくはジグリセリドを含む無菌の固定油が用いられうる。脂肪酸、例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、特に、それらのポリオキシエチル化型における天然の医薬的に許容される油(例えば、オリーブオイルまたはヒマシ油)のように、注射可能なものの製造に有用である。これらの油溶液もしくは懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、あるいは乳濁液および懸濁液を含む医薬的に許容される製剤の製剤化で一般に用いられる類似する分散剤を含みうる。他の一般に用いられる界面活性剤(例えば、Tween、Span)、ならびに医薬的に許容される固体、液体、または他の製剤の製造で一般に用いられる他の乳化剤またはバイオアベイラビリティ亢進剤もまた、製剤化のために用いられうる。
【0155】
注射用製剤は、例えば、細菌捕集フィルターに通す濾過により、あるいは無菌化した薬剤を、使用前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解させ、または分散させることができる無菌固形組成物の形態中に含ませることにより無菌化することができる。
【0156】
提供される化合物の効果を持続させるために、化合物の皮下または筋肉内注射からの吸収を遅延させることが望まれることが多い。これは、水溶解度が低い結晶またはアモルファス物質の液体懸濁液を使用することによって達成されてもよい。前記化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、それゆえ、結晶の大きさおよび結晶形に依存しうる。あるいは、非経口投与される化合物の形態の吸収の遅延は、前記化合物を油性ベヒクル中に溶解し、または懸濁することによって達成される。注射用デポ形態は、生物分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸-ポリグリコール酸)中の前記化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成させることによって調製される。化合物のポリマーに対する割合と用いられる具体的なポリマーの性質に応じて、化合物の放出速度を制御することができる。他の生物分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポ注射用製剤はまた、前記化合物を体の組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に取り込むことによって調製される。
【0157】
本明細書に記載される医薬的に許容される組成物は、以下に限定されないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液または水溶液を含む、経口で許容可能な製剤で経口投与されてもよい。このような固形製剤において、活性化合物は、少なくとも1つの不活希釈剤、例えば、ショ糖、乳糖、またはデンプンと混合されうる。このような製剤はまた、通常行われるように、不活希釈剤以外のさらなる物質、例えば、滑沢剤および他の錠剤化補助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロース)を含んでいてもよい。水性懸濁液が経口使用で必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と組み合わされる。所望される場合、一定の甘味料、芳香剤、または着色剤もまた加えられてもよい。
【0158】
経口投与のための固形製剤には、カプセル剤、錠剤、ピル、散剤、および顆粒剤が含まれる。このような固形製剤において、活性化合物は、少なくとも1つの不活の医薬的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸水素カルシウム、ならびに/あるいはa)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、およびアカシア、c)保湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤(solution retarding agent)、例えば、パラフィン、f)吸収促進剤(absorption accelerator)、例えば、第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ、ならびに/あるいはi)滑沢剤、例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤、およびピルの場合、製剤はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。活性化合物はまた、上記に記載されるように、1つまたはそれ以上の賦形剤とマイクロカプセル化された形態中で存在しうる。
【0159】
同様のタイプの固形組成物もまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を用いて、軟質および硬質充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられうる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ピル、および顆粒剤の固形製剤は、コーティング剤および殻(shell)、例えば、腸溶性コーティング剤(すなわち、緩衝剤)ならびに医薬製剤分野で周知の他のコーティング剤を用いて調製することができる。それらは、必要に応じて、不透明化剤(opacifying agent)を含んでいてもよく、好ましくは、胃腸管の特定の部分において、適宜、遅延する方法で、活性成分のみを放出する組成物のものであってもよい。用いることができる含まれる組成物の例として、ポリマー性物質およびワックスが含まれる。
【0160】
経口投与のための液体製剤には、以下に限定されないが、医薬的に許容される乳濁液、ミクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤が含まれる。活性化合物に加え、液体製剤には、当該技術分野で一般に用いられる不活性な希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブオイル、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物が含まれうる。不活性な希釈剤の他に、経口組成物にはまた、補助剤、例えば、湿潤剤、乳化剤、および懸濁化剤、甘味料、芳香剤、および香料が含まれうる。
【0161】
あるいは、本明細書に記載の医薬的に許容される組成物は、直腸または膣投与のための座薬の形態で投与されてもよい。これらは、本開示の化合物を、室温で固形であるが、体内(例えば、直腸または膣)温度で液体である適する非刺激性賦形剤または担体と混合させることによって調製することができ、それゆえ、直腸または膣腔内で融解して、活性化合物を放出する。このような物質には、ココアバター、座薬用ワックス(例えば、蜜蝋)、およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0162】
本明細書に記載の医薬的に許容される組成物はまた、特に、治療の標的が、眼、皮膚、または下部胃腸管の疾患を含む局所適用によって容易に送達可能な領域または臓器を含む場合、局所に投与されてもよい。下部胃腸管に対する局所適用は、直腸座薬製剤(上記を参照のこと)または適するかん腸製剤で効果を生じうる。
【0163】
提供される化合物の局所または経皮投与のための製剤には、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレー、吸入薬、またはパッチが含まれる。活性成分は、無菌条件下において、適宜、医薬的に許容される担体および必要とされる保存剤または緩衝液と混合される。点眼製剤、点耳薬、および点眼薬もまた、本開示の範囲として意図される。また、本開示は、化合物の体への制御された送達を供する上でさらなる利点を有する経皮パッチの使用を包含する。このような製剤は、化合物を適切な媒体に溶解させるか、または分散させることによって調製することができる。吸収促進剤(absorption enhancer)はまた、化合物の皮膚への流入を高めるために用いることができる。速度は、速度調節メンブレン(rate controlling membrane)を供することによるか、または化合物をポリマーマトリックスまたはゲル中に分散することによって制御することができる。
【0164】
局所適用について、提供される医薬的に許容される組成物は、1つまたはそれ以上の担体中に懸濁され、または溶解された活性成分を含む適する軟膏剤中に製剤化されうる。本開示の化合物の局所投与のための担体としては、以下に限定されないが、鉱油、液体ペトロラタム、ホワイトペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が含まれる。あるいは、提供される医薬的に許容される組成物は、1つまたはそれ以上の医薬的に許容される担体に懸濁され、または溶解された活性成分を含む適するローションまたはクリーム中に製剤化することができる。適する担体として、以下に限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が含まれる。
【0165】
眼の適用について、提供される医薬的に許容される組成物は、等張性pH調整無菌生理食塩水中の微粒化懸濁液として、あるいは、好ましくは、塩化ベンジルコニウム等の保存剤を含むか、または含まない等張性pH調整無菌生理食塩水中の溶液として製剤化されてもよい。あるいは、眼の適用について、前記医薬的に許容される組成物は、ペトロラタム等の軟膏剤中に製剤化されてもよい。
【0166】
本開示の医薬的に許容される組成物はまた、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与されうる。このような組成物は、医薬製剤分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適する保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤(absorption promoter)、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製されうる。
【0167】
最も好ましくは、本開示の医薬的に許容される組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0168】
化合物および/または組成物の同定および/または特徴付け
特に、本開示は、本明細書に記載される化合物および/または組成物の同定および/または特徴付けのための様々な技術を提供する。例えば、本開示は、SARM1阻害活性、特に、SARM1阻害活性を評価するための様々なアッセイを提供する。
【0169】
ある実施態様において、本明細書に記載されるアッセイにおける1つまたはそれ以上の目的の化合物または組成物の機能は、適当な対照のものと比較される。例えば、ある実施態様において、対照は、関連する化合物または組成物に存在していなくてもよい。あるいは、または加えて、ある実施態様において、対照は、別の化合物または組成物(例えば、その別の化合物または組成物が、関連するアッセイにおいて(例えば、当該技術分野で理解されるようなポジティブコントロールまたはネガティブコントロールとして)公知の機能を有する)に存在しうる。ある実施態様において、対照は、別の比較可能な条件セット(例えば、温度、pH、塩濃度等)であってもよい。ある実施態様において、対照は、SARM1変異体に関する化合物または組成物の機能でありうる。さらにあるいは、または加えて、ある実施態様において、本明細書に記載されるアッセイにおける1つまたはそれ以上の目的の化合物または組成物の機能は、例えば、対照と競合する化合物または組成物の能力が調べられるように、適当な対照化合物または組成物の存在下で評価されうる。
【0170】
ある実施態様において、多くの目的の化合物または組成物は、特定のアッセイで分析され、および/または同一の対照と比較されうる。ある実施態様において、このような多くの化合物または組成物は、複数のメンバーが1つまたはそれ以上の特徴(例えば、構造的要素、供給源の同一性、合成の類似性等)を共有するため、「ライブラリー」として考慮される一組の化合物または組成物でありうるか、または含みうる。
【0171】
本開示の実施に有用でありうる典型的なアッセイは、下記の実施例で例示される。本開示を読んだ当業者は、本開示による化合物および/または組成物を同定するか、および/または特徴付けするための有用であるか、または関連する系が、実施例に含まれ、または下記に記載されるものに限定されないことを理解する。
【0172】
ある実施態様において、化合物および/または組成物は、例えば:軸索の統合、細胞骨格の安定性、および/または神経の生存を促進すること等の1つまたはそれ以上の活性または特徴に基づいて同定されるか、および/または特徴付けられうる。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、SARM1によるNAD+異化反応を阻害する。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、NAD+異化反応の速度を遅延させる。
【0173】
ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、SARM1によるNAD+の結合を減少し、または阻害する。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、1つまたはそれ以上の触媒残基を含むポケット(例えば、SARM1の触媒溝)内でSARM1に結合する。このような触媒残基の例には、642位のグルタミン酸(E642)が含まれる。
【0174】
ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、SARM1のTIR1ドメインの多量体化を妨害し、および/または阻止する。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、SAMドメインの多量体化を妨害する。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、NAD+の枯渇を引き起こす軸索シグナル伝達カスケードを妨害する。
【0175】
ある実施態様において、本開示は、目的の化合物および/または組成物の1つまたはそれ以上のこのような活性および/または特徴を同定し、および/または特徴付けするためのに有用なアッセイを提供する。例えば、ある実施態様において、本開示は、1つまたはそれ以上のこのような活性および/または特徴を評価するためのインビトロ、細胞、および/またはインビボ系を提供する。
【0176】
SARM1活性アッセイ
ある実施態様において、ARM1阻害剤を同定する方法は、a)i)SARM1の変異体または断片、ii)NAD+、およびiii)候補阻害剤を含む混合物を供し(前記変異体または断片は、構成的活性を有する);b)前記混合物をインキュベートし;c)前記インキュベートさせた後に前記混合物中のNAD+を定量化し;次いでd)NAD+量が、前記候補阻害剤を含まないコントロール混合物のものより高い場合、候補阻害剤化合物を阻害剤として同定することを含む。
【0177】
ある実施態様において、ARM1阻害剤を同定する方法であって、a)i)全長SARM1、ii)NAD+、およびiii)候補阻害剤を含む混合物を供し(前記全長SARM1は、構成的活性を有する);b)前記混合物をインキュベートし;c)前記インキュベートさせた後に前記混合物中のNAD+およびADPR(またはcADPR)を定量化し;d)NAD+:ADPR(またはcADPR)のモル比を調べ;次いでe)前記モル比が、前記候補阻害剤を含まないコントロール混合物のものより高い場合、候補阻害剤化合物を阻害剤として同定することを含む方法が提供される。
【0178】
ある実施態様において、ARM1阻害剤を同定する方法であって、a)i)全長SARM1および少なくとも1つのタグ、ii)NAD+、およびiii)候補阻害剤に結合している固体担体を含む混合物を供し;b)前記混合物をインキュベートし;c)前記インキュベートさせた後にNAD+を定量化し;次いでd)NAD+量が、コントロールのものより高い場合、候補阻害剤化合物をSARM1阻害剤として同定することを含む方法が提供される。
【0179】
SARM1結合アッセイ
ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤の有効性は、例えば、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる2018年3月29日に公開されたWO2018/057989に記載のアッセイに従って決定することができる。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、SARM1またはその断片を含む溶液で用いることができる。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、インビトロ系で用いることができる。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、インビボで用いることができる。ある実施態様において、提供されるSARM1阻害剤は、患者に用いることができる。ある実施態様において、ARM1阻害剤は、エピトープタグで標識されたSARM1またはその断片と混合することができる。ある実施態様において、結合したSARM1阻害剤の量は、結合していないSARM1阻害剤の量と比較して、SARM1阻害剤に対する親和性を生じることができる。
【0180】
ある実施態様において、ARM1の変異体または断片は、構成的活性を有するSAM-TIR断片である。構成的活性を有するSARM1の断片には、例えば、以下に限定されないが、自己阻害ドメインが欠如したSARM1;自己阻害ドメインを不活性化させるSARM1の少なくとも1つの点変異;TIRドメインを含むSARM1の断片;あるいはSAMおよびTIRドメインからなるSARM1の断片が含まれる。ある実施態様において、ARM1ポリぺプチドには、タグ、例えば、Hisタグ、ストレプトアビジンタグ、またはこれらの組み合わせとして作用することができる1つまたはそれ以上のさらなるアミノ酸配列が含まれうる。ある実施態様において、ARM1ポリぺプチドには、タグが、アミノ末端、カルボキシル末端、またはこれらの組み合わせにおいて含まれうる。ある実施態様において、エピトープタグで標識されたSARM1またはその断片は、提供されるSARM1阻害剤の結合効果を測定するために用いることができる。
【0181】
SARM1-TIRドメインの精製
ある実施態様において、ARM1-TIRドメインは、例えば、精製において有用でありうる様々なタンパク質、またはエピトープ、タグを用いて操作することができる。ある実施態様において、本開示はまた、ニコチンアミドリボシドキナーゼ1(NRK1)で形質転換させたHEK293T細胞を含むNRK1-HEK293T細胞株を提供する。ある実施態様において、HEK293T細胞は、ニコチンアミドリボシドキナーゼ1(NRK1)をコードするDNA配列で形質転換されるか、またはトランスフェクトされる。ある実施態様において、NRK1をコードするDNAは、ゲノムまたはcDNAでありうる。ある実施態様において、HEK293T細胞は、宿主細胞に外因性である供給源に由来するNRK1をコードするDNAで安定的または一過的にトランスフェクトされる。ある実施態様において、HEK293T細胞は、NRK1をコードするDNAで安定的に、または一過的にトランスフェクトされ、前記細胞は、コントロール細胞と比較してNRK1を高いレベルで発現する。ある実施態様において、NRK1をコードするDNAは、1つまたはそれ以上の外因性調節DNA配列、例えば、プロモーター、エンハンサーまたはそれらの組み合わせ等の制御下にある。ある実施態様において、NRK1をコードするDNA配列および調節配列の組み合わせは、天然に存在しない組み合わせである。ある実施態様において、NRK1をコードするDNA(ゲノムまたはcDNAのいずれか)には、FCIV発現ベクター等の発現ベクターが含まれる。ある実施態様において、NRK1をコードするDNAは、脊椎動物または無脊椎動物、例えば、以下に限定されないが、ヒト、マウス、ゼブラフィッシュまたはショウジョウバエからのゲノムDNAまたはcDNAに由来する。ある態様において、前記NRK1 DNAは、ヒトNRK1 DNAである。
【0182】
適用と用途
本開示は、例えば、本明細書に記載される活性および/または特徴により、本明細書に記載される化合物および/または組成物の様々な用途と適用を提供する。ある実施態様において、このような用途には、治療および/または診断用途が含まれうる。あるいは、ある実施態様において、このような用途には、研究、製造、および/または他の技術的用途が含まれうる。
【0183】
ある態様において、本開示は、例えば、軸索変性によって特徴付けられる1つまたはそれ以上の病気を治療し、予防し、または前記病気を発症するリスクを減少させるために、1つまたはそれ以上の式Iの化合物を対象に投与することを特徴とする方法を提供する。あるこのような実施態様において、前記式Iの化合物は、SARM1阻害剤である。
【0184】
本開示の別の実施態様は、患者におけるSARM1活性を阻害するための方法であって、提供される化合物または前記化合物を含む組成物を前記患者に投与する工程を含む方法に関する。
【0185】
生物学的試料における酵素の阻害は、当業者に公知の様々な目的に有用である。このような目的の例として、以下に限定されないが、生物学的アッセイ、遺伝子発現実験、および生物学的標的の同定が含まれる。
【0186】
ある実施態様において、本開示は、生物学的試料における軸索変性を治療するための方法であって、前記生物学的試料を式Iの化合物または組成物と接触させる工程を含む方法に関する。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、対象に由来する神経の変性を阻害するための方法として有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、インビトロで培養した神経またはその部分の変性を阻害するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、インビトロで神経の生存を促進するための安定化剤として有用である。
【0187】
ある実施態様において、提供される化合物および/または組成物は、SARM1のNADアーゼ活性を阻害する。あるいは、または加えて、ある実施態様において、提供される化合物は、神経変性の1つまたはそれ以上の性質を軽減する。ある実施態様において、本開示は、軸索変性に関連する神経変性疾患または障害を治療するための方法を提供する。
【0188】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、医療活動において有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索変性(例えば、その1つまたはそれ以上の特徴または性質)を治療し、予防し、または軽減するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、NAD+の減少または枯渇から生じる軸索変性を含む軸索変性を阻害するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索傷害に対して末梢側の軸索を変性から防ぐために有用である。
【0189】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、末梢神経系神経またはその部分の分解を阻害するための方法として有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、中枢神経系(神経)またはその部分の変性を阻害し、または予防するための方法として有用である。ある実施態様において、1つまたはそれ以上の本明細書に記載される化合物または組成物は、対象の集団に投与されると、神経変性の1つまたはそれ以上の症状または特徴を減少させることが特徴付けられる。例えば、ある実施態様において、関連する症状または特徴は、神経破壊の程度、割合、および/または時期からなる群から選択されうる。
【0190】
ある実施態様において、本開示は、例えば、解析ツールとして、生物学的アッセイのプローブとして、または本開示による治療剤として有用である化合物を提供する。本開示によって提供される化合物はまた、生物学的および病理学的現象におけるSARM1機能の研究、ならびに新規のSARM1活性阻害剤のインビトロまたはインビボにおける比較評価のために有用である。ある実施態様において、本開示は、本明細書で提供される化合物および/または組成物を同定し、および/または特徴付けするためのアッセイを提供する。ある実施態様において、提供されるアッセイは、SARM1活性をアッセイする際に有用である特定の試薬および/または系(例えば、特定のベクター構築物および/またはポリぺプチド)を使用する。例えば、ある実施態様において、提供されるアッセイは、例えば、SARM1のN末端自己阻害ドメインが欠如したSAM-TIR、および/またはTIRドメインの1つまたはそれ以上のタグ化された型を使用してもよい。
【0191】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、対象に由来する神経の分解を阻害するための方法として有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、インビトロで培養された神経またはその部分の変性を阻害するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、インビトロで神経の生存を促進するための安定化剤として有用である。
【0192】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、神経変性に関連するバイオマーカーに影響を与える場合に有用である。ある実施態様において、バイオマーカーの変化は、全身において、あるいは対象に由来する脳脊髄液(CSF)、血漿、血清、および/または組織の試料を用いて検出することができる。ある実施態様において、1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、対象の脳脊髄液に含まれるニューロフィラメントタンパク質軽鎖(NF-L)および/またはニューロフィラメントタンパク質重鎖(NF-H)の濃度における変化に影響を及ぼすために用いることができる。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、神経および/または軸索における構成的NADおよび/またはcADPRレベルに影響を及ぼしうる。
【0193】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、対象における1つまたはそれ以上の神経変性関連タンパク質レベルの検出可能な変化に影響を及ぼしうる。このようなタンパク質には、以下に限定されないが、アルブミン、アミロイド-β(Aβ)38、Aβ40、Aβ42、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、心臓型脂肪酸結合タンパク質(hFABP)、単球走化性タンパク質(MCP)-1、ニューログラニン、神経特異的エノラーゼ(NSE)、可溶性アミロイド前駆タンパク質(sAPP)α、sAPPβ、可溶性ミエロイド細胞発現トリガー受容体(sTREM)2、リン酸化タウ、および/または総タウが含まれる。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、以下に限定されないが、Ccl2、Ccl7、Ccl12、Csf1、および/またはIl6を含む、サイトカインおよび/またはケモカインにおける変化に影響を及ぼしうる。
【0194】
疾患、障害、および状態
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物および/または組成物は、1つまたはそれ以上の疾患、障害または病気に罹っている対象に投与されうる。
【0195】
ある実施態様において、前記疾患は、急性疾患である。ある実施態様において、前記状態は、慢性状態である。
【0196】
ある実施態様において、前記疾患は、中枢神経系、末梢神経系、視神経、脳神経、またはこれらの組み合わせにおける軸索変性によって特徴付けられる。
【0197】
ある実施態様において、前記疾患は、中枢神経系に対する急性傷害、例えば、脊髄に対する傷害および/または外傷性脳障害であるか、またはこれらを含む。ある実施態様において、前記疾患は、中枢神経系に対する慢性傷害、例えば、脊髄、外傷性脳障害、および/または外傷性軸索傷害に対する傷害であるか、またはこれらを含む。ある実施態様において、前記状態は、慢性外傷性脳障害(CTE)であるか、またはこれらを含む。
【0198】
ある実施態様において、前記疾患は、中枢神経系に影響を及ぼす慢性疾患、例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、またはハンチントン病、アルツハイマー病である。
【0199】
ある実施態様において、前記疾患は、急性末梢神経障害である。化学療法剤誘発末梢神経障害(CIPN)は、急性末梢神経障害の一例である。CIPNは、様々な薬剤、例えば、以下に限定されないが、サリドマイド、エポシロン(例えば、イクサベピロン)、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、およびビンデシン)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、白金を基にした薬物(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン)に関連しうる。
【0200】
ある実施態様において、前記疾患は、末梢神経系に影響を及ぼす慢性疾患、例えば、糖尿病性神経障害、HIV神経障害、シャルコー・マリー・トゥース病、または筋萎縮性側索硬化症である。
【0201】
ある実施態様において、前記疾患は、視神経に影響を及ぼす急性疾患、例えば、急性視神経症(AON)、または急性閉塞隅角緑内障である。
【0202】
ある実施態様において、前記疾患は、視神経に影響を及ぼす慢性疾患、例えば、レーバー先天黒内障、レーベル遺伝性視神経症、原発性閉塞隅角緑内障、および常染色体優性視神経萎縮症である。
【0203】
ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、神経障害または軸索障害からなる群から選択される1つまたはそれ以上の神経変性疾患、障害または病気を治療するために有用である。ある実施態様において、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の化合物および/または組成物は、例えば、軸索変性に関連する神経障害または軸索障害を治療するために有用である。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害は、遺伝性または先天性神経障害または軸索障害である。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害は、新たに発生した変異または体細胞変異から生じる。ある実施態様において、軸索変性に関連する神経障害は、本明細書に含まれる記載から選択される。ある実施態様において、神経障害または軸索障害は、以下に限定されないが、パーキンソン病、非パーキンソン病、アルツハイマー病、ヘルペス感染、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、脱髄疾患、虚血もしくは脳卒中、化学的傷害、熱傷、およびAIDSを含む軸索変性に関連する。
【0204】
ある実施態様において、1つまたはそれ以上の本明細書に記載される化合物または組成物は、対象の集団に投与されると、神経変性の1つまたはそれ以上の症状または特徴を軽減させることによって特徴付けられる。例えば、ある実施態様において、関連する症状または特徴は、神経破壊の程度、割合、および/または時期からなる群から選択されうる。ある実施態様において、神経破壊は、軸索の分解、シナプスの喪失、樹状突起の喪失、シナプス密度の喪失、樹状突起分枝の喪失、軸索側枝の喪失、神経密度の喪失、ミエリン形成の喪失、神経細胞体の喪失、シナプス増強の喪失、活動電位増強の喪失、細胞骨格安定性の喪失、軸索輸送の喪失、イオンチャネル合成および代謝回転の喪失、神経伝達物質の合成の喪失、神経伝達物質の放出および再取り込み能力の喪失、軸索増強伝搬の喪失、神経興奮性亢進、および/または神経興奮性低下でありうるか、これらを含みうる。ある実施態様において、神経破壊は、神経膜電位の適切な静止を維持するための不能によって特徴付けられる。ある実施態様において、神経破壊は、封入体の出現、プラーク、および/または神経原線維変化によって特徴付けられる。ある実施態様において、神経破壊は、ストレス顆粒の出現によって特徴付けられる。ある実施態様において、神経破壊は、システイン-アスパラギン酸プロテアーゼ(カスパーゼ)ファミリーの1つまたはそれ以上のメンバーの細胞内活性によって特徴付けられる。ある実施態様において、神経破壊は、プログラム化された細胞死(例えば、アポトーシス、ピロトーシス、フェロトーシス(ferroapoptosis)、および/またはネクローシス)および/または炎症を生じる神経によって特徴付けられる。
【0205】
ある実施態様において、前記神経変性または神経疾患または障害は、軸索変性、軸索傷害、軸索障害、脱髄疾患、橋中心髄鞘崩壊症、神経傷害疾患または障害、代謝性疾患、ミトコンドリア病、代謝性軸索変性、白質脳症または白質ジストロフィーから生じる軸索傷害に関連する。ある実施態様において、前記神経変性または神経疾患または障害は、脊髄傷害、脳卒中、多発性硬化症、進行性多巣性白質脳症、先天性ミエリン形成不全、脳脊髄炎、急性播種性脳脊髄炎、橋中心髄鞘崩壊症、浸透圧低ナトリウム血症、低酸素性脱髄、虚血性脱髄、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ニーマン・ピック病、ペリツェウス・メルツバッハ病、脳室周囲白質軟化症、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、ウォラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルー・ゲーリック病)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、テイ・サックス病、ゴーシェ病、ハーラー症候群、外傷性脳障害、照射後傷害、化学療法剤の神経学的合併症(化学療法剤誘発神経障害;CIPN)、神経障害、急性虚血性視神経症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンE単独欠乏症候群、バッセン・コーンツヴァイク症候群、緑内障、レーベル遺伝性視神経症(神経障害)、レーバー先天黒内障、視神経脊髄炎、異染性白質ジストロフィー、急性出血性白質脳炎、三叉神経痛、ベル麻痺、脳虚血、多系統萎縮症、外傷性緑内障、熱帯性痙性不全対麻痺症、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)関連脊髄症、ウエストナイルウイルス脳炎、ラクロスウイルス脳炎、ブニヤウイルス脳炎、小児ウイルス脳炎、本態性振戦、シャルコー・マリー・トゥース病、運動ニューロン疾患、脊髄性筋萎縮症(SMA)、遺伝性感覚性自律神経性神経障害(HSAN)、副腎脊髄神経障害、進行性核上性麻痺(PSP)、フリードライヒ運動失調症、遺伝性運動失調症、騒音性難聴、先天性難聴、レビー小体認知症、前頭側頭葉型認知症、アミロイドーシス、糖尿病性神経障害、HIV神経障害、腸神経障害および軸索障害、ギランバレー症候群、重症急性運動性軸索型神経障害(AMAN)、クロイツフェルト・ヤコブ病、伝達性海綿状脳症、脊髄小脳変性症、妊娠高血圧腎症、遺伝性痙性対麻痺、痙性対麻痺、家族性痙性対麻痺、フランス植民地病(French settlement disease)、ストランペル-ロレイン病、および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群から選択される。
【0206】
ある実施態様において、本開示は、軸索変性または軸索障害に関連する神経変性または神経疾患または障害の治療のためのSARM1活性の阻害剤を提供する。本開示はまた、軸索変性、軸索障害、および軸索変性に関連する神経変性または神経疾患または障害を治療し、予防し、または軽減するために、SARM1活性の阻害剤を使用するための方法を提供する。
【0207】
ある実施態様において、本開示は、軸索変性に関連する神経変性または神経疾患または障害、軸索傷害、軸索障害、脱髄疾患、橋中心髄鞘崩壊症、神経傷害疾患または障害、代謝性疾患、ミトコンドリア病、代謝性軸索変性、白質脳症または白質ジストロフィーから生じる軸索傷害を治療するための方法を提供する。
【0208】
ある実施態様において、神経障害および軸索障害には、神経および/または支持する細胞(例えば、グリア、筋肉細胞、または線維芽細胞)に関連する疾患または病気、特に、軸索障害に関連する疾患または病気が含まれる。軸索傷害は、疾患、病気、または毒性分子または薬物への曝露による外傷性傷害または非機械的傷害によって引き起こされうる。このような傷害の結果は、軸索の変性または機能不全および機能的な神経活性の喪失でありうる。このような軸索傷害を生じるか、または関連する疾患および病気には、多くの神経障害の疾患および病気が存在する。このような神経障害には、末梢神経障害、中枢神経障害、およびこれらの組み合わせが含まれうる。さらに、末梢神経障害の徴候は、一次的に中枢神経系に着目した疾患によって生じ、中枢神経系の徴候は、必須として末梢または全身疾患によって生じうる。
【0209】
ある実施態様において、末梢神経障害は、末梢神経に対する傷害に付随し、ならびに/あるいは神経の疾患により、または全身疾病の結果として引き起こされうる。このような疾患には、糖尿病、尿毒症、感染症(例えば、AIDSまたはハンセン病)、栄養障害、血管病または膠原病(例えば、アテローム性動脈硬化症)、および自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス、強皮症、サルコイドーシス、関節リウマチ、および結節性多発動脈炎)が含まれる。ある実施態様において、末梢神経の変性は、神経への外傷性(機械的)傷害および神経への化学的または熱傷害から生じる。末梢神経を損傷するこのような疾患には、圧迫または絞扼傷害、例えば、緑内障、手根管症候群、直接的外傷、穿通性外傷、挫傷、骨折、または脱臼した骨;股の長期使用または一ヶ所に長期滞在、あるいは腫瘍から生じうる表在神経(尺骨、橈骨、または腓骨)に関連する圧力;神経内出血;虚血;低温、放射能、一定の薬物、または除草剤もしくは殺虫剤等の毒性物質への曝露が含まれる。特に、前記神経傷害は、細胞毒性抗癌剤、例えば、タキソール、シスプラチン、プロテアソーム阻害剤、またはビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン)による化学的傷害から生じうる。このような末梢神経障害の典型的な症状には、脱力、知覚麻痺、異常知覚(異常な感覚、例えば、灼熱感、くすぐり感、刺痛感、またはピリピリ感)、ならびに腕、手、脚、および/または足の疼痛が含まれる。ある実施態様において、神経障害は、ミトコンドリアの機能不全に関連する。このような神経障害は、エネルギーレベルの減少、すなわち、NADおよびATPレベルの減少を示しうる。
【0210】
ある実施態様において、末梢神経障害は、代謝起因の全身疾患に関連する広範囲の末梢神経障害を含む代謝性および内分泌性神経障害である。これらの疾患には、例えば、糖尿病、低血糖症、尿毒症、甲状腺機能低下症、肝不全、赤血球増加症、アミロイドーシス、先端巨大症、ポルフィリン症、脂質/糖脂質代謝の障害、栄養/ビタミン欠乏障害、およびミトコンドリア病等が含まれる。これらの疾患の共通する顕著な特徴は、代謝経路調節異常に起因するミエリンおよび軸索の構造または機能の変化による末梢神経の関与である。
【0211】
ある実施態様において、神経障害には、視神経症(例えば、緑内障);網膜神経節変性(例えば、網膜色素変性症および網膜外神経障害に関連するもの);視神経の神経炎および/または変性(例えば、多発性硬化症に関連するものを含む);視神経に対する外傷性傷害(例えば、腫瘍除去中の傷害を含みうる);遺伝性視神経症(例えば、Kjer病およびレーベル遺伝性視神経症);虚血性視神経症(例えば、巨細胞動脈炎に続発するもの);代謝性視神経症(例えば、神経変性疾患(前記のレーベル神経障害を含む)、栄養障害(例えば、ビタミンB12または葉酸の欠乏)、および毒性(例えば、エタンブトールまたはシアン化物による);有害薬物反応によって引き起こされる神経障害およびビタミン欠乏によって引き起こされる神経障害が含まれる。虚血性視神経症にはまた、非動脈炎性前部虚血性視神経症が含まれる。
【0212】
ある実施態様において、中枢神経系における神経障害または軸索障害に関連する神経変性疾患には、様々な疾患が含まれる。このような疾患には、進行性認知症(例えば、アルツハイマー病、老年認知症、ピック病、およびハンチントン病);筋肉機能に影響を及ぼす中枢神経系疾患(例えば、パーキンソン病、運動ニューロン疾患)および進行性運動失調症(例えば、筋萎縮性側索硬化症);脱髄疾患(例えば、多発性硬化症);ウイルス性脳炎(例えば、エンテロウイルス、アルボウイルス、および単純ヘルペスウイルスによって引き起こされるもの);ならびにプリオン病に関連するものが含まれる。機械的傷害、例えば、緑内障または頭部および脊椎への外傷性傷害もまた、脳および脊髄における神経傷害および変性を引き起こしうる。さらに、虚血および脳卒中、ならびに栄養欠乏等の状態および化学療法剤等による化学的毒性は、中枢神経系神経障害を引き起こしうる。
【0213】
ある実施態様において、本開示は、軸索変性に関連する神経障害または軸索障害を治療するための方法を提供する。あるこのような実施態様において、軸索変性に関連する神経障害または軸索障害は、多くの神経障害または軸索障害、例えば、遺伝性もしくは先天性であるか、ありはパーキンソン病、アルツハイマー病、ヘルペス感染、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、脱髄疾患、虚血もしくは脳卒中、化学的傷害、熱傷、およびAIDSであるものでありうる。さらに、上記の疾患のサブセットとして上記に記載されていない神経変性疾患もまた、本開示の方法で治療することができる。このような疾患のサブセットには、パーキンソン病もしくは非パーキンソン病、またはアルツハイマー病が含まれうる。
【0214】
対象
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物および/または組成物は、本明細書に記載される疾患、障害または病気に罹っているか、または罹りやすい対象に投与され、ある実施態様において、このような疾患、障害または病気は、軸索変性に特徴付けられるもの、例えば、本明細書に記載の疾患の1つである。
【0215】
ある実施態様において、化合物または組成物が本明細書に記載されるように投与される対象は、軸索変性に関連する1つまたはそれ以上の徴候または症状を示し、ある実施態様において、前記対象は、神経変性の徴候または症状を一切示さない。
【0216】
ある実施態様において、提供される方法は、式Iの化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。あるこのような実施態様において、前記患者は、軸索変性によって特徴付けられる病気を発症するリスクを有する。ある実施態様において、前記患者は、軸索変性によって特徴付けられる病気に罹っている。ある実施態様において、前記患者は、軸索変性によって特徴付けられる病気と診断されている。
【0217】
ある実施態様において、提供される方法は、本明細書に記載される組成物を、それを必要とする患者集団に投与することを含む。ある実施態様において、前記集団は、外傷性神経傷害の可能性が高い活動に従事する個体から集められる。ある実施態様において、前記集団は、接触するスポーツまたは他の高リスクの活動に従事するアスリートから集められる。
【0218】
ある実施態様において、前記対象は、軸索変性によって特徴付けられる病気を発症するリスクを有する。ある実施態様において、前記対象は、例えば、対象の遺伝型、軸索変性に関連する病気の診断、ならびに/あるいは軸索変性を引き起こす薬剤および/または条件への曝露に基づいて軸索変性のリスクを有すると同定される。
【0219】
ある実施態様において、前記患者は、神経変性障害を発症するリスクを有する。ある実施態様において、前記患者は、高齢である。ある実施態様において、前記患者は、神経変性の遺伝学的リスク因子を有することが公知である。ある実施態様において、ある実施態様において、前記患者は、神経変性疾患の家族歴を有する。ある実施態様において、前記患者は、神経変性の公知の遺伝学的リスクファクターの1つまたはそれ以上のコピーを発現する。ある実施態様において、前記患者は、神経変性の高い発症率を有する集団から選択される。ある実施態様において、前記患者は、染色体第9番のオープンリーディングフレーム72においてヘキサヌクレオチドリピート伸長を有する。ある実施態様において、前記患者は、ApoE4アレルの1つまたはそれ以上のコピーを有する。
【0220】
ある実施態様において、本明細書に記載される化合物または組成物が投与される対象は、神経変性疾患、障害または病気に罹っているか、または罹りやすい対象でありうるか、または前記対象を含みうる。ある実施態様において、神経変性疾患、障害または病気は、外傷性神経傷害であってもよいか、または含みうる。ある実施態様において、外傷性神経傷害は、鈍器損傷、非開放性頭部損傷、開放性頭部損傷、震盪性および/または爆発性外力への曝露、脳内または体の神経支配領域への貫通性傷害である。ある実施態様において、外傷性神経傷害は、軸索に変形、伸展、挫滅または歪み(sheer)を生じる力による。
【0221】
ある実施態様において、前記対象は、神経分解のリスク因子として同定される活動に従事し、例えば、外傷性神経傷害の機会が高い接触するスポーツまたは職業に従事している対象である。
【0222】
例えば、前記対象は、末梢神経障害に関連する化学療法を受けているか、または処方されている患者でありうる。化学療法剤の例として、以下に限定されないが、サリドマイド、エポシロン(例えば、イクサベピロン)、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンクリスチン、およびビンデシン)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、白金を基にした薬物(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン)が含まれる。
【0223】
ある実施態様において、提供される方法は、1つまたはそれ以上のバイオマーカーの存在または非存在に基づいて、本明細書に記載される組成物を患者または患者集団に投与することを含む。ある実施態様において、提供される方法は、患者または患者集団におけるバイオマーカーのレベルをモニターし、次いでそれに従って投薬計画を調整することをさらに含む。
【0224】
投薬
当業者は、ある実施態様において、本明細書に記載される医薬組成物または計画の投与に含まれるか、および/または前記投与によって送達される特定の化合物の正確な量が、医療従事者によって選択され得るものであり、異なる対象、例えば、対象の種、年齢、および総体的な状態、および/または特定の化合物または組成物の同定、その投与様式等のうちの1つまたはそれ以上を考慮することによって、異なりうることを理解する。あるいは、ある実施態様において、本明細書に記載される医薬組成物または計画の投与に含まれるか、および/または前記投与によって送達される特定の化合物の量は、関連する患者集団(例えば、全ての患者、特定の年齢もしくは疾患ステージまたは特定のバイオマーカーを発現する全ての患者等)に対して標準化されてもよい。
【0225】
本開示で提供される化合物または組成物は、好ましくは、投与の簡易性と用量の均一性のために用量単位形態で製剤化される。本明細書で用いられる用語「用量単位形態」は、治療されるべき患者に適する薬剤の物理的に別々の単位を意味する。しかしながら、本開示で提供される化合物および組成物の合計の1日の用量は、妥当な医学的判断の範囲内において担当医によって決定されることが理解される。特定の患者または生物のための具体的に有効な用量レベルは、治療される疾患および疾患の重症度;各患者の臨床状態;疾患の病因;用いられる特定の化合物の活性;用いられる具体的な組成;患者の年齢、体重、総体的な健康、性別および食事;用いられる特定の化合物の投与時間、薬物の送達部位、投与経路、および排泄速度;治療期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて、または同時に用いられる薬物、および医薬分野で周知の因子等を含む様々な因子に応じて対象ごとに変動する。投与されるべき化合物の有効な量は、このような考慮事項によって規定され、望ましくない疾患または障害、例えば、神経変性または外傷性神経傷害を予防し、または治療するために必要とされるSARM1活性を阻害することが必要とされる最小量である。
【0226】
本開示の医薬的に許容される組成物は、治療される疾患、障害、または感染の重症度に応じて、経口、直腸、静脈内、非経口、嚢内、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏剤、または点滴として)、バッカルにおいて、口腔もしくは経鼻スプレー等としてのヒトおよび他の動物動物に投与することができる。1日の用量は、ある実施態様において、単一1日用量または1日2~6回の分割用量、あるいは持続放出形態で付与される。この投薬計画は、最適な治療応答を提供するように調整されうる。化合物は、1日あたり1~4回、好ましくは、1日あたり1回または2回の計画で投与されうる。
【0227】
ある実施態様において、本開示の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、バッカル、膣、または埋め込み型リザーバーにより投与されてもよい。本明細書で用いられる用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、皮内、眼内、病巣内、および脳内注射または注入技術が含まれる。好ましくは、前記組成物は、経口、腹腔内、または静脈内で投与される。
【0228】
ある実施態様において、本開示の医薬的に許容される組成物はまた、特に、治療の標的が局所適用(眼、皮膚、または下部胃腸管の疾患を含む)によって容易に送達できる領域または器官を含む場合、局所に投与されうる。適する局所用製剤は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0229】
最も好ましくは、本開示の医薬的に許容される組成物は、経口投与のために製剤化される。このような製剤は、食物と一緒に、または食物なしで投与されてもよい。ある実施態様において、本開示の医薬的に許容される組成物は、食物なしで投与される。他の実施態様において、本開示の医薬的に許容される組成物は、食物と一緒に投与される。
【0230】
これらのさらなる薬剤は、複数の投薬計画の一部として、提供される化合物またはその組成物とは別に投与されうる。あるいは、これらの薬剤は、単一の組成物中に提供される化合物と一緒に混合された単一製剤の一部であってもよい。複数の投薬計画の一部として投与される場合、その2つの活性薬剤は、同時に、連続して、または相互に一定期間内に、通常、相互に5時間以内に投与されうる。
【0231】
いずれか特定の患者のための特定の用量および治療計画は、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、相対的な健康、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、ならびに治療する医師の判断および治療される具体的な疾患の重症度を含む様々な因子に依存しうるものとも理解されるべきである。ある実施態様において、組成物中の本開示の化合物の量は、組成物中の特定の化合物による。
【0232】
ある実施態様において、本明細書に記載されるSARM1阻害は、関連する疾患、障害または病気を治療するための1つまたはそれ以上の他の治療と組み合わせて用いられうる。ある実施態様において、ARM1阻害剤の用量は、単剤療法として投与される場合と比較して組み合わせ療法で用いられる場合に変化され;あるいは、または加えて、ある実施態様において、本明細書に記載されるようなSARM1阻害剤と組み合わせて投与される療法は、単独で、またはSARM1阻害剤以外の1つまたはそれ以上の療法と組み合わせて投与される場合、その計画またはプロトコールとは異なる計画またはプロトコールに従って投与される。ある実施態様において、さらなる治療剤および提供される化合物が相乗的に作用しうるさらなる治療剤を含む組成物である。ある実施態様において、組み合わせ投薬計画で用いられる1つまたは両方の療法は、単独療法として用いられる場合より低いレベルまたは低い頻度で投与される。
【0233】
ある実施態様において、本明細書に記載の化合物および/または組成物は、以下に限定されないが、アルキル化剤、アントラサイクリン、タキサン、エポシロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体、ペプチド抗生物質、白金を基にした薬剤、レチノイド、ビンカアルカロイドおよび誘導体を含む化学療法剤とともに投与される。ある実施態様において、本明細書に記載の化合物および/または組成物は、PARP阻害剤と組み合わせて投与される。
【実施例
【0234】
例示
実施例で供される記載を含む本教示は、特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。特に過去形で示されていない限り、実施例の記載は、実験が実際に行われたことを示すことを意図していない。下記の非限定的な例は、本教示をさらに示すために提供される。当業者は、本開示を考慮して、多くの変更が開示される具体的な実施態様でなすことができ、本教示の精神と範囲から逸脱することなく類似または同様の結果をさらに得ることができる。
【0235】
方法
本明細書に記載の方法および組成物は、当業者に周知の研究室の技術を用い、研究室マニュアル、例えば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2001; Methods In Molecular Biology, ed. Richard, Humana Press, NJ, 1995; Spector, D. L. et al., Cells: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1998; and Harlow, E., Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1999において見出すことができる。薬および投薬計画の投与方法は、標準的な参考教科書、例えば、Remington: the Science and Practice of Pharmacy (Alfonso R. Gennaro ed. 19th ed. 1995);Hardman, J.G., et al., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition, McGraw-Hill, 1996;およびRowe, R.C., et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients, Fourth Edition, Pharmaceutical Press, 2003によって供される方法を用いて、薬理学の標準的な原理に従って決定することができる。
【0236】
実施例1:実施例14の合成
【化13】
DMF(3mL)中のアザインドール1(150mg,0.615mmol)の混合物に、0℃でNaH(油中で60%,37mg,0.92mmol)をゆっくり加え、次いで0℃で0.5時間攪拌する。ヨードエタン(144mg,0.92mmol)をゆっくり加え、周囲温度で2時間攪拌させる。水(30ml)をゆっくり加えて反応物をクエンチし、次にEtOAcで抽出する(50mlx3)。EtOAcを合わせ、食塩水で洗浄し、減圧濃縮する。該残渣をprep-HPLCにより精製して、実施例14(32mg,収率=18.5%)を得る。
【0237】
実施例13~16および26は、同様の方法で合成する。
【0238】
実施例2:実施例25の合成
【化14】
DMF(3mL)中のアザインドール1(150mg,0.615mmol)および2-ブロモエタノール(115mg,0.923mmol)の混合物に、KCO(170mg,1.23mmol)を加える。該混合物を40℃で2時間攪拌し、続いて水(30mL)に注ぎ入れ、EtOAcで抽出する(50mLx3)。EtOAcを合わせて、食塩水で洗浄し、減圧濃縮する。該残渣をprep-HPLCにより精製して、実施例25(18mg,収率=6%)を得る。
【0239】
実施例10~12および17~25は、同様の方法で合成した。
【0240】
実施例3:実施例36の合成
【化15】
DMF(1mL)中の実施例37(40mg,0.27mmol)の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(57mg,0.32mmol)を加える。該混合物を周囲温度で2時間攪拌し、続いて水(1mL)で希釈し、prep-HPLCにより直接精製して、実施例36(13mg,収率=21%)を得る。
【0241】
実施例4:実施例40の合成
【化16】
実施例30(100mg,0.47mmol)を、H溶液(50重量%,1mL)中に溶解し、周囲温度で19時間攪拌する。この混合物に、トリフルオロ酢酸無水物(0.35mL,2.5mmol)を加え、4日間攪拌する。該混合物をEtOAcで抽出し(3x2mL)、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗生成物を得て、フラッシュクロマトグラフィーにより精製して(SiO,CHCl中で0~10% MeOH)、表題化合物の実施例40(11mg,9%)を得る。
【0242】
実施例5:実施例41の合成
【化17】
チエノピリジジン(Thienopyridizine)2(30mg,0.22mmol)を濃HSO(2mL)中に溶解し、N-ヨードスクシンイミド(0.03mL,0.26mmol)で処理する。該混合物を周囲温度で2時間攪拌し、次いで水(5mL)で希釈し、pHを水酸化アンモニウム水溶液でpH=8に調整する。該混合物をEtOAcで抽出し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮し、粗生成物を得て、prep-HPLCにより精製して、表題化合物の実施例41(5mg,9%)を得る。
【0243】
実施例6:実施例42の合成
【化18】
ピロロピリジジン(Pyrrolopyridizine)3(50mg,0.42mmol)を濃HSO(2mL)中に溶解し、N-ヨードスクシンイミド(0.05mL,0.5mmol)で処理する。該混合物を周囲温度で2時間攪拌し、次いで水(5mL)で希釈し、pHを水酸化アンモニウム水溶液でpH=8に調整する。該混合物をEtOAcで抽出し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、表題化合物の実施例42(35mg,33%)を得る。
【0244】
実施例44は、ピロロピリジジン(pyrrolopyridizine)3およびN-ブロモスクシンイミドからの方法と同様の方法で合成する。
【0245】
実施例7:化合物の特徴付け
LCMS法:
【0246】
LC/MS分析方法A:
ESI+/-イオンモード100~1000Da
カラム:XBridge C18、50x4.6mm、3.5um
温度:40℃
グラジエント:
【表5】


【0247】
LC/MS分析方法B:
ESI+/-イオンモード150~850Da
カラム:Phenomenex Kinetix-XB C18、パート番号00D-4498-AN、2.1x100mm、1.7um
温度:40℃
グラジエント:
【表6】


【0248】
分取HPLC方法:
【0249】
UV照射高pH分取方法
【表7】

【0250】
UV照射低pH分取方法
【表8】

【0251】
結果を表1に示す:
表1.
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0252】
実施例8:SAM-TIR SARM1 IC50アッセイ
この実施例は、SARM1が介在するNAD+切断を阻害する式Iの化合物の効果を測定するために、SAM-TIR NADアーゼ活性のアッセイおよびこのアッセイの使用を記載する。このアッセイは、SARM1活性を阻害する式Iの化合物の効果を特徴付けし、各化合物のIC50値を算出するために最適化する。このアッセイは、SAMおよびTIRドメインを含むSARM1分子の断片を利用する。本明細書で示されるように、自己阻害N末端ドメインのないこの断片の発現がNAD+を切断する常時活性型酵素を作り出す。
【0253】
SARM1 SAM-TIR溶解物(STL)の調製
NRK1-HEK293T細胞は、NAD+生合成前駆体ニコチンアミドリボシド(NR)をNAD+の即時前駆体NMNに変換する酵素であるヒトニコチンアミドリボシドキナーゼ1(NRK1)を発現するFCIV発現ベクターを用いて安定的にトランスフェクトさせた細胞株を意味する。NRが供されると、この細胞株は、SARM1 SAM-TIRを発現する場合、細胞内NAD+レベルを増加し、細胞生存率を維持する。図2は、NRが供給されたNRK1-HEK293T安定株が、SARM1-TIR発現により高いNAD+レベルを維持することを示す。データは、3回の独立したトランスフェクション実験からの3回の独立したNAD+測定から作成し、同時にトランスフェクトしていない実験からのデータで標準化した。データは、平均±SEM;エラーバー:SEM;***P<0.001 両側スチューデントt検定として示す。
【0254】
NRK1-HEK293T細胞は、NAD+生合成前駆体ニコチンアミドリボシド(NR)をNAD+の即時前駆体NMNに変換する酵素であるヒトニコチンアミドリボシドキナーゼ1(NRK1)を発現するFCIV発現ベクターを用いて安定的にトランスフェクトさせた細胞株を意味する。
【0255】
NRK1-HEK293T細胞を、150cmプレートに1プレートあたり20x106細胞で撒種した。翌日、前記細胞を、X-TREMEGENE(登録商標)9DNAトランスフェクション試薬(Roche製品#06365787001)を用いて15μgのFCIV-SST(SAM-TIR発現プラスミド,配列番号1)でトランスフェクトした。

gtcgacggatcgggagatctcccgatcccctatggtgcactctcagtacaatctgctctgatgccgcatagttaagccagtatctgctccctgcttgtgtgttggaggtcgctgagtagtgcgcgagcaaaatttaagctacaacaaggcaaggcttgaccgacaattgcatgaagaatctgcttagggttaggcgttttgcgctgcttcgcgatgtacgggccagatatacgcgttgacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagcgcgttttgcctgtactgggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagcagtggcgcccgaacagggacttgaaagcgaaagggaaaccagaggagctctctcgacgcaggactcggcttgctgaagcgcgcacggcaagaggcgaggggcggcgactggtgagtacgccaaaaattttgactagcggaggctagaaggagagagatgggtgcgagagcgtcagtattaagcgggggagaattagatcgcgatgggaaaaaattcggttaaggccagggggaaagaaaaaatataaattaaaacatatagtatgggcaagcagggagctagaacgattcgcagttaatcctggcctgttagaaacatcagaaggctgtagacaaatactgggacagctacaaccatcccttcagacaggatcagaagaacttagatcattatataatacagtagcaaccctctattgtgtgcatcaaaggatagagataaaagacaccaaggaagctttagacaagatagaggaagagcaaaacaaaagtaagaccaccgcacagcaagcggccgctgatcttcagacctggaggaggagatatgagggacaattggagaagtgaattatataaatataaagtagtaaaaattgaaccattaggagtagcacccaccaaggcaaagagaagagtggtgcagagagaaaaaagagcagtgggaataggagctttgttccttgggttcttgggagcagcaggaagcactatgggcgcagcgtcaatgacgctgacggtacaggccagacaattattgtctggtatagtgcagcagcagaacaatttgctgagggctattgaggcgcaacagcatctgttgcaactcacagtctggggcatcaagcagctccaggcaagaatcctggctgtggaaagatacctaaaggatcaacagctcctggggatttggggttgctctggaaaactcatttgcaccactgctgtgccttggaatgctagttggagtaataaatctctggaacagatttggaatcacacgacctggatggagtgggacagagaaattaacaattacacaagcttaatacactccttaattgaagaatcgcaaaaccagcaagaaaagaatgaacaagaattattggaattagataaatgggcaagtttgtggaattggtttaacataacaaattggctgtggtatataaaattattcataatgatagtaggaggcttggtaggtttaagaatagtttttgctgtactttctatagtgaatagagttaggcagggatattcaccattatcgtttcagacccacctcccaaccccgaggggacccgacaggcccgaaggaatagaagaagaaggtggagagagagacagagacagatccattcgattagtgaacggatcggcactgcgtgcgccaattctgcagacaaatggcagtattcatccacaattttaaaagaaaaggggggattggggggtacagtgcaggggaaagaatagtagacataatagcaacagacatacaaactaaagaattacaaaaacaaattacaaaaattcaaaattttcgggtttattacagggacagcagagatccagtttggttaattaagggtgcagcggcctccgcgccgggttttggcgcctcccgcgggcgcccccctcctcacggcgagcgctgccacgtcagacgaagggcgcaggagcgttcctgatccttccgcccggacgctcaggacagcggcccgctgctcataagactcggccttagaaccccagtatcagcagaaggacattttaggacgggacttgggtgactctagggcactggttttctttccagagagcggaacaggcgaggaaaagtagtcccttctcggcgattctgcggagggatctccgtggggcggtgaacgccgatgattatataaggacgcgccgggtgtggcacagctagttccgtcgcagccgggatttgggtcgcggttcttgtttgtggatcgctgtgatcgtcacttggtgagttgcgggctgctgggctggccggggctttcgtggccgccgggccgctcggtgggacggaagcgtgtggagagaccgccaagggctgtagtctgggtccgcgagcaaggttgccctgaactgggggttggggggagcgcacaaaatggcggctgttcccgagtcttgaatggaagacgcttgtaaggcgggctgtgaggtcgttgaaacaaggtggggggcatggtgggcggcaagaacccaaggtcttgaggccttcgctaatgcgggaaagctcttattcgggtgagatgggctggggcaccatctggggaccctgacgtgaagtttgtcactgactggagaactcgggtttgtcgtctggttgcgggggcggcagttatgcggtgccgttgggcagtgcacccgtacctttgggagcgcgcgcctcgtcgtgtcgtgacgtcacccgttctgttggcttataatgcagggtggggccacctgccggtaggtgtgcggtaggcttttctccgtcgcaggacgcagggttcgggcctagggtaggctctcctgaatcgacaggcgccggacctctggtgaggggagggataagtgaggcgtcagtttctttggtcggttttatgtacctatcttcttaagtagctgaagctccggttttgaactatgcgctcggggttggcgagtgtgttttgtgaagttttttaggcaccttttgaaatgtaatcatttgggtcaatatgtaattttcagtgttagactagtaaagcttctgcaggtcgactctagaaaattgtccgctaaattctggccgtttttggcttttttgttagacgaagcttgggctgcaggtcgactctagaggatccGGATCCGCCACCATGTCAgctTGGAGCCACCCACAATTCGAAAAAGGCGGTGGCTCAGGCGGTGGCTCAGGTGGCTCAGCTTGGAGCCACCCACAATTCGAAAAAGGCGGTGGCTCATCTGGCGGAGGTGGCGGTGGCTCATCTGGCGGAGGTGCTAGCgtgcccagctggaaggaggccgaggttcagacgtggctgcagcagatcggtttctccaagtactgcgagagcttccgggagcagcaggtggatggcgacctgcttctgcggctcacggaggaggaactccagaccgacctgggcatgaaatcgggcatcacccgcaagaggttctttagggagctcacggagctcaagaccttcgccaactattctacgtgcgaccgcagcaacctggcggactggctgggcagcctggacccgcgcttccgccagtacacctacggcctggtcagctgcggcctggaccgctccctgctgcaccgcgtgtctgagcagcagctgctggaagactgcggcatccacctgggcgtgcaccgcgcccgcatcctcacggcggccagagaaatgctacactccccgctgccctgtactggtggcaaacccagtggggacactccagatgtcttcatcagctaccgccggaactcaggttcccagctggccagtctcctgaaggtgcacctgcagctgcatggcttcagtgtcttcattgatgtggagaagctggaagcaggcaagttcgaggacaaactcatccagagtgtcatgggtgcccgcaactttgtgttggtgctatcacctggagcactggacaagtgcatgcaagaccatgactgcaaggattgggtgcataaggagattgtgactgctttaagctgcggcaagaacattgtgcccatcattgatggcttcgagtggcctgagccccaggtcctgcctgaggacatgcaggctgtgcttactttcaacggtatcaagtggtcccacgaataccaggaggccaccattgagaagatcatccgcttcctgcagggccgctcctcccgggactcatctgcaggctctgacaccagtttggagggtgctgcacccatgggtccaacctaaactctagaat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ttggaaaacgttcttcggggcgaaaactctcaaggatcttaccgctgttgagatccagttcgatgtaacccactcgtgcacccaactgatcttcagcatcttttactttcaccagcgtttctgggtgagcaaaaacaggaaggcaaaatgccgcaaaaaagggaataagggcgacacggaaatgttgaatactcatactcttcctttttcaatattattgaagcatttatcagggttattg
tctcatgagcggatacatatttgaatgtatttagaaaaataaacaaataggggttccgcgcacatttccccgaaaagtgccacctgac (配列番号1)
【0256】
前記培養物に、SAM-TIR過剰発現からの毒性を最小にするために、トランスフェクション時に1mMのNRを加えた。トランスフェクション48時間後に、細胞を収集し、1,000rpmにおける遠心分離(Sorvall ST 16R遠心分離機,Thermo Fisher)により沈殿させ、冷PBS(0.01M リン酸緩衝生理食塩水NaCl 0.138M;KCl 0.0027M;pH7.4)で1回洗浄した。該細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含むPBS(cOmplete(登録商標)プロテアーゼ阻害剤混合液,Roche製品#11873580001)中で再懸濁させ、細胞溶解物を超音波処理(Branson Sonifer 450、アウトプット=3、20のストロークエピソード(episodes of stroke))により調製した。前記溶解物を遠心分離して(4℃において12,000×gで10分間)、細胞残屑を除去し、(SARM1 SAM-TIRタンパク質を含有する)上澄み液を、インビトロSARM1 SAM-TIR NADアーゼアッセイ(下記を参照)の後の使用のために-80℃で保存した。タンパク質濃度は、ビシンコニン酸(BCA)法によって決定し、溶解物の濃度を標準化するために用いた。
【0257】
式Iの化合物のSAM-TIR IC50アッセイ
酵素アッセイは、20μLの最終アッセイ体積でダルベッコPBS緩衝液中において384ウェルのポリプロピレンプレートで行った。5μg/mLの最終濃度を有するSAM-TIR溶解物を、各化合物の1% DMSO最終アッセイ濃度で室温において2時間にわたり予めインキュベートした。該反応は、NAD+の5μMの最終アッセイ濃度を基質として加えることにより開始した。室温で2時間インキュベーション後、該反応を、アセトニトリル中の7.5% トリクロロ酢酸の40μLの停止溶液で停止させた。前記NAD+およびADPR濃度を、API4000トリプル四重極質量分光計(AB Sciex,マサチューセッツ州、フラミンガム)を用いてRapidFireハイスループット質量分析システム(Agilent Technologies,カリフォルニア州、サンタクララ)により分析した。
【0258】
結果を下記の表2に示す。「A」と表記された活性を有する化合物は、IC50<10μMを供し;「B」と表記された活性を有する化合物は、IC50 10~30μMを供し;「C」と表記された活性を有する化合物は、IC50 30.01~50μMを供し;「D」と表記された活性を有する化合物は、IC50>50μMを供し;NM:調べていない。
表2
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0259】
実施例9:軸索変性の指標
この実施例は、式Iの化合物を特徴付けるために用いたインビトロ軸索変性アッセイを示す。このアッセイは、マウス後根神経節(DRG)の小滴培養(drop culture)において軸索変性を阻害する式Iまたは式IIの化合物の効果を試験するために用いる。
【0260】
マウスDRG小滴培養:マウス後根神経節(DRG)をE12.5のCD1マウスから解剖して取り出し(1胚あたり50個の神経節)、37℃において0.5% トリプシン溶液(0.02% EDTA(Gibco)を含む)で15分間インキュベートした。次いで、細胞を、軽くピペッティングすることによりトリチュレートし、DRG増殖培地(Neurobasal培地(Gibco)(2% B27(インビトロジェン)、100ng/ml 2.5S NGF(Harland Bioproducts)、1mM 5-フルオロ-2’デオキシウリジン(Sigma)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含有))で3回洗浄した。細胞をDRG増殖培地で懸濁した。DRG小滴培養を、5000細胞/ウェルを、ポリD-リジン(0.1mg/ml;Sigma)およびラミニン(3mg/ml;インビトロジェン)でコーティングした96ウェルの組織培養プレートの各ウェルの中心に並べることによって行った。細胞を、加湿した組織培養インキュベーター内(5% CO)で前記プレートに15分間接着させ、DRG増殖培地を静かに加えた(100mLウェル)。
【0261】
軸索変性アッセイ:軸索変性は、外科用メスの刃を用いる手作業による軸索の切断または化学毒性処理により行った。適当な実験期間後、DRG培養物を1% PFA(およびショ糖)中に固定し、イメージング前まで冷蔵庫に保管した。DRG軸索および細胞体の明視野画像は、20x水浸レンズのPhenix自動共焦点顕微鏡(PerkinElmer)を用いて収集し、軸索の定量化は、自社で開発したスクリプト(Acapella,PerkinElmer)を用いて行った。
【0262】
結果を下記の表3に示す。本明細書に記載の化合物は、細胞アッセイにおける軸索断片化の保護を示し、IC50 10~30μM(B)、<10μM(A)によってグループ化した。
表3
【表17】
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]式I:
【化19-1】
[式中、
およびX のうちの1つは、CおよびNから選択され、もう一方は、Cであり;
は、N、N-R 、およびC-R y1 から選択され;
は、NおよびC-R y2 から選択され;
は、N、N-R 、O、S、およびS(O) から選択され;
は、NおよびC-R z2 から選択され;
は、NおよびC-R z3 から選択され;
は、NおよびC-R z4 から選択され;
各R は、独立して、水素、ならびに-OR、-C(O)N(R) または-C(O)ORで適宜置換されていてもよいC 1-6 脂肪族から選択され;
y1 、R y2 、R z1 、R z2 、R z3 、およびR z4 の各々は、独立して、水素、ハロゲン、-CN、-OR、-C(O)OR、ならびにハロゲン、-CN、-OR、-N(R) 、-C(O)ORまたは-C(O)N(R) で適宜置換されていてもよいC 1-6 脂肪族から選択され;ならびに
各Rは、独立して、水素およびC 1-6 脂肪族から選択され;
あるいはRが2つの場合,それらが結合している原子と一緒になって、3~6員飽和または部分不飽和ヘテロ環を形成する]
で示される化合物またはその医薬的に許容される塩。
[2]式II:
【化19-2】
で示される構造を有する、上記[1]に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
[3]式III:
【化19-3】
で示される構造を有する、上記[1]に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
[4]式IV:
【化19-4】
で示される構造を有する、上記[1]に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
[5]
【化19-5】
から選択される、上記[1]に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の化合物を、(i)軸索変性によって特徴付けられる病気に罹っているか、または(ii)軸索変性によって特徴付けられる病気を発症するリスクを有する対象に投与する工程を含む、方法。
[7]軸索変性を治療し、または予防するための方法であって、上記[1]~[5]のいずれかに記載の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
図1
図2
【配列表】
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