(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】一部自動化された作動機構を備えたバイポーラ型封止器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2021526367
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2019081482
(87)【国際公開番号】W WO2020099633
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】102018128870.0
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マーザー
(72)【発明者】
【氏名】エウゲン ヘルナー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ヴァルベルク
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0103050(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0209573(US,A1)
【文献】特開2008-220956(JP,A)
【文献】特開2008-073531(JP,A)
【文献】特開2007-229454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ型封止器具であって、
遠位側の器具先端に設けられたツールと、
案内溝を有しており、前記ツールに結合されるハンドル要素であって、少なくとも低負荷作業力範囲において、前記ハンドル要素を操作する手動締め付け作動に応じて、前記ツールに作動力を伝達する前記ハンドル要素を有する第1の作動機構と、
前記低負荷作業力範囲において前記案内溝に嵌合せず、高負荷作業力範囲において前記案内溝に嵌合する案内ピンと、前記ツールに結合されるモータと、を有する第2の作動機構と、
前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構が高負荷作業姿勢/位置に達したことを示す第1の閾値作動力、又は、第1の閾値作動位置を検出するように構成された第1の検出装置と、
前記高負荷作業力範囲に達したことを示す第2の閾値作動力、又は、第2の閾値作動位置を検出するように構成された第2の検出装置と、を備え、
前記第2の作動機構は、前記高負荷作業力範囲における締め付け作動中において、前記案内ピンが前記案内溝に嵌合することによって、前記ハンドル要素に機械的に結合され、前記第1の作動機構を介して、前記ツールに結合され、
前記第2の作動機構の前記モータは、前記第2の検出装置によって前記第2の閾値作動力、又は、前記第2の閾値作動位置が検出されることに応じて、前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構を前記高負荷作業姿勢/位置に移行させるために、自動的に作動し、
前記第1の検出装置によって前記第1の閾値作動力又は前記第1の閾値作動位置が検出されることに応じて、前記バイポーラ型封止器具が有する掛止部に前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構の少なくとも一方が掛止され、前記モータが自動的に停止される、又は、前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構を前記高負荷作業姿勢/位置に保持するように、前記モータを動作させることによって、前記第1の作動機構及び前記第2の作動機構が前記高負荷作業姿勢/位置に保持され、
前記第2の作動機構は、前記モータから前記ツールに伝達される作動力がゼロである静止位置から前記高負荷作業姿勢/位置まで移動可能であり、
前記第2の作動機構は、前記モータによって、又は、前記ハンドル要素に対する手動で、前記高負荷作業姿勢/位置から前記静止位置に移動することができるように構成されている、
バイポーラ型封止器具。
【請求項2】
前記第2の作動機構は、ばね要素を介して、前記ツールに結合されることを特徴とする、請求項
1に記載のバイポーラ型封止器具。
【請求項3】
前記ツールは、組織封止のための電極を有しており、
前記第1の作動機構は、前記ハンドル要素を介して、前記ツールに伝達される作動力がゼロである第1の静止位置から前記高負荷作業姿勢/位置まで移動可能であり、
前記第1の作動機構、及び/又は、前記第2の作動機構は、
前記電極の作動が所定時間持続した後に、前記モータによって
、前記高負荷作業姿勢/位置から、前記第1の静止位置、及び/又は、前記静止位置に移動されることを特徴とする、請求項
1又は2に記載のバイポーラ型封止器具。
【請求項4】
前記第1の作動機構は、前記ハンドル要素を介して、前記ツールに伝達される作動力がゼロである第1の静止位置から前記高負荷作業姿勢/位置まで移動可能であり、
前記第1の作動機構、及び/又は、前記第2の作動機構は、
前記ハンドル要素に対する手動初期作動によって、前記高負荷作業姿勢/位置から
、前記第1の静止位置、及び/又は、前記静止位置に移動されることを特徴とする、請求項
1から3のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具。
【請求項5】
前記ツールは、組織封止のための電極を有しており、
前記第2の作動機構の前記モータは、前記第1の作動機構の
前記案内溝と前記第2の作動機構
の前記案内ピンとが掛止され
ており、かつ、使用者によって、前記電極を作動させるための操作を受け付けたときに、患者組織を締め付けるように自動的に作動することを特徴とする、請求項
1から4のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具。
【請求項6】
前記第2の作動機構は、
前記モータの作動開始、作動持続時間、及び、作動停止を制御することによって、制御可能であることを特徴とする、請求項
5に記載のバイポーラ型封止器具。
【請求項7】
前記ハンドル要素に対する手動で、前記第1の作動機構
の前記案内溝と前記第2の作動機構の
前記案内ピンとの掛止
を解除できることを特徴とする、請求項
1から6のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠位側の器具先端に設けられたツールエフェクタを有する外科用の好ましくはバイポーラ型封止器具(略して器具)に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ型封止器具は、主に低侵襲手術で使用される。バイポーラ型封止器具は、(患者)組織を準備すること、即ち、例えば、組織を引っ張るか、広げるか、又は、押しのけることと、組織を加熱して、必要な場合は、切断も行うことにより単一の作業ステップで組織を締め付けて組織を封止することと、の両方のために使用される。この目的で、器具先端に形成されるツールは、互いに対して移動させることができ、組織を把持するのに好適である分岐部又は顎部を有する。電極は、例えば、直流又は高周波交流を印加することにより、組織を焼灼し、必要な場合は、組織の切開/切断も行うために、分岐部に配置される。代替的又は追加的に、組織を機械的に切離するために、刃等の追加のツールが設けられることがある。
【0003】
既知の外科用バイポーラ型封止器具は、概して、純粋に機械的に作動される鉗子状の組織締め付けエフェクタを有する。組織準備中に封止器具を扱う場合に、僅かな作動力しか必要としないが、使用者側に高感度と高度な技能とが必要となる。その一方で、患者の組織を焼灼/封止して場合により切断するためには、エフェクタ顎部の所要の締め付け力を適用するのに大きな作動力が必要である。これを可能にするために、適切な減速比でエフェクタにおける大きな締め付け力を生成できるように、(単一の)作動レバー又はハンドル要素に大きな作動ストロークを与えなければならない。従って、組織準備は、ハンドル要素が比較的に広く開いた状態で行われ、手の小さな使用者にとって使用をより困難にする。さらに、組織準備に利用可能な作動ストロークの一部が制限され、器具の高精度の作動がより困難になる。一方、組織が焼灼され、場合により切断される作業位置では、ハンドル要素が強く圧縮されるので、使用者は、手を強く曲げることでのみこの作業位置を保持することができる。従って、封止器具及び切断器具の使用は、特に手の大きな使用者にとって、身体的負担の増大につながる。
【0004】
結果として、既知の機械的に操作される封止器具及び切断器具は、人間工学に基づく器具の設計と、組織を締め付ける際のより良い操作性と、組織を準備する際の精密なモータの操作性と、の間で常に妥協を図る。これを最適化するために、既知の解決法は、特に多機能設計(高精度の準備及び強力な締め付け)のために、複雑な操作機構を提供し、この機構は、使用者に高いレベルの理解を要求する。従って、誤操作の可能性が高くなり得る。例えば、締め付け中において、器具に過大な負荷がかかることで器具が壊れたり、組織が非常に弱く締め付けられることで組織が完全に封止されないことによって、患者の組織の過剰な損傷及び出血につながることがある。特に使用者の疲労又は痙攣により生じ得る、さらなる例示的な誤操作の可能性は、準備及び/又は締め付け中において、短すぎるために、不十分な組織封止又は器具の不正確で不安定な案内/取り扱いによるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上記で説明した欠点を回避又は少なくとも軽減するTFT型の好ましくはバイポーラ型封止器具を提供することである。特に、本発明の目的は、人間工学的に設計され、操作が容易であり、かつ、誤操作を回避するバイポーラ型封止器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の問題を解決するための本発明の基本思想は、器具を操作するのに必要な機能が、必要とされる作業力に基づいて区別され、関連する作業力範囲が定められることである。次いで、別の作動機構が種々の機能の各々に対して設けられ、これらの作動機構は、作動機構を切り替えるか又はオンにすることが自動的に行われるように結合される。
【0007】
より具体的には、問題は、遠位側の器具先端に設けられたツールを少なくとも低負荷作業力範囲において手動で作動させるための第1の作動機構を有するバイポーラ型封止器具、特に複合型封止器具及び切断器具により解決される。さらに、器具は、高負荷作業力範囲での本発明による封止器具の作動時に自動的に作動され、次いで、手動作動を支援するか又は手動作動の代わりとなるモータ補助又は全自動方式でツールを高負荷作業姿勢/位置に移すように構成されるモータ、好ましくは、電気モータを備える第2の作動機構を有する。
【0008】
換言すれば、ツールは、低負荷作業力範囲において手動で作動され、患者組織の高精度の組織準備を可能にする。患者組織を封止するのに必要な組織締め付け又は締め付け力の蓄積が行われる高負荷作業力範囲では、(電気)モータが自動的にオンにされ、ツールがモータにより作動されるか、又は、ツールの作動が少なくともモータによって補助される。
【0009】
低負荷作業力範囲は、患者組織を準備するのに必要な小さな力が必要とされる範囲であり、高負荷作業力範囲は、患者組織の組織締め付けが大きな力の下で行われる範囲である。高負荷作業姿勢/位置は、患者組織を封止するのに必要とされる締め付け力が達成されるツール及び作動機構の位置である。
【0010】
低負荷作業力範囲において、ツールを手動で操作することにより、患者組織を、僅かな力で、即ち、実質的に全く疲労なしに準備することができ、使用者は、非常に正確な操作を可能にするための加えられた力に関する直接の触覚フィードバックを受け取る。さらに、締め付け力を手動で蓄積させる必要がないので、この目的で提供される作動ストローク(締め付けストローク)を大幅に低減することができる。結果として、締め付けストロークと組織準備のために提供される作動ストローク(準備ストローク)の両方を含む(単一のハンドル要素の)全作動ストロークも低減される(即ち、締め付けストローク及び準備ストロークは、共通又は単一のハンドル要素により作動/提供される)。従って、より大きな作動ストロークを準備ストロークとして利用可能であり、それにより、ツールのより容易で正確な作動が可能になる。また、ハンドル要素の開始位置と終了位置とを、手動での組織準備のために人間工学的に最適化することができる。
【0011】
また、高負荷作業力範囲において、電気モータがオンにすることにより、大きな作動力、又は、締め付け力を蓄積させることが、器具の案内を阻害することなく可能となる。そのため、力の蓄積は、組織締め付け中に穏やかな制御方式で実行することもできる。これにより、不要な組織損傷が防止される。さらに、使用者の疲労が大幅に防止され、より虚弱な使用者でも器具の操作に問題がなくなる。電動補助又は全自動の組織締め付けは、方法に適した血管封止に必要とされる最小限の組織締め付け/圧迫が行われることを確実にすることができる。さらに、作動機構を第1の作動機構と第2の作動機構とに分割することにより、設計が容易になる。
【0012】
作業力範囲、特に高負荷作業力範囲、及び/又は、高負荷作業姿勢/位置の達成は、センサにより、例えば、圧力センサ、位置センサ又は歪センサにより、直接又は間接的に決定することができる。即ち、対応する作業力/作動力は、直接測定する必要はなく、間接的に検出することができる。例えば、ばね力及び位置又は変位検出などの既知の機械的変量から算出することもできる。この目的で、例えば、歪ゲージ、変位測定用のインクリメンタルエンコーダ、接点、若しくは、接触距離、又は、スイッチを使用することができる。必要に応じて、電気モータの動作を監視するために、ロータリエンコーダ又はトルクセンサを設けることができる。
【0013】
電気モータは、リニアモータ又は回転モータであってもよい。回転モータの場合、トルク及び速度を伝達するため、若しくは低減するため、並びに/又は、回転運動を直線運動に変換するためのギアボックス、例えば、ねじ付きスピンドルとスピンドルナットとを備えたねじギアボックスを備えていてもよい。
【0014】
器具先端に設けられたツール/エフェクタは、好ましくは、組織を把持するために使用できる分岐部であって、鉗子状に互いに向けて移動させることができる分岐部と、患者組織を封止して、必要に応じて、分離/切断するための電極と、を備える。組織を切断するために、追加の刃を設けることもできる。
【0015】
(ハンドル要素のない)第2の作動機構は、好ましくは、高負荷作業力範囲での作動中において、案内溝に嵌合された案内ピンを介して、第1の作動機構のハンドル要素に機械的に結合される。結果として、第2の作動機構の係合は、構造的に簡単な方式で解決することができる。(特に、第2の作動機構は、別個のハンドル要素に結合されない。第2の作動機構の自動係合は、第1の作動機構のハンドル要素の作動により行われる)。例えば、作動レバー、スライダ、又は、ノブをハンドル要素として設けることができる。さらに、第2の作動機構が、例えば第1の作動機構を介して、ばね要素によりツールに結合される場合に有益であることが判明している。ばね要素は、電気モータが、純粋な力制御方式ではなく、例えば経路制御方式で作動され、かつ、ツールが予期しない抵抗を受けた場合に、緊急過負荷保護としての役割を果たすことができる。第1の作動機構を介して結合されたときに、ばね要素は追加的に、高負荷作業姿勢/位置に達したにもかかわらず、使用者がハンドル要素を作動させ続ける場合に、過負荷保護としての役割を果たすことができる。代替的に、第2の作動機構は、第1の作動機構の作動中において、第2の作動機構に力が伝達されないように、少なくともに第1の作動機構の作動中において、第1の作動機構から完全に切り離されてもよい。この場合、第1の作動機構は、任意選択的に、第1の作動機構の作動経路、又は、位置に関する情報を提供してもよい。
【0016】
有利な実施形態によれば、第2の作動機構は、高負荷作業姿勢/位置から、第2の作動機構を全自動で又は電動補助によりリセットできるように構成される。電動補助又はリセットは、特に、さらに有利な実施形態に関連する掛止解除工程であって、後に説明する掛止解除工程中に、高負荷作業姿勢/位置からの正確に制御可能又は調整可能なリセットを可能にする。
【0017】
検出装置は、好ましくは、高負荷作業姿勢/位置に達したことを示す第1の閾値作動力を感知するように構成される。代替的又は追加的に、高負荷作業姿勢/位置に達したことは、(例えば、引張ロッド及び/又は作動レバーの)位置及び/又は(例えば、作動レバーの)角度を検出することにより検出されてもよい。ここでは、第1の閾値作動力に達したときに、第1の作動機構及び第2の作動機構の少なくとも一方が掛止し、かつ、電気モータが自動的に作動停止されるか、又は、電気モータが掛止手段としての役割を果たす。
【0018】
このように、組織を封止するのに必要な締め付け力にいつ達したかを検出することができる。従って、組織が十分に締め付けられないことを回避することができる。また、ツール又は作動機構に過大な負荷がかからないことを確実にし、器具の損傷を回避する。電気モータが掛止手段としての役割を果たす場合、電気モータによって、高負荷作業姿勢/位置が維持される。作動機構の少なくとも一方が掛止した場合、高負荷作業姿勢/位置を、掛止手段により(例えば、ばね又はばね付勢掛止要素により器具ハウジング上に)維持し、かつ、初期手動力により解除することができる。この場合、リセットは、完全に手動によるものとすることができ、かつ、必要に応じて、ばね補助によるものとすることができる。高負荷作業姿勢/位置に達しない限り、組織封止及び必要に応じて組織切断のための電極の作動を防止することが可能である。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、検出装置は、高負荷作業力範囲に達したことを示す第2の閾値作動力を感知するように構成されてもよい。この場合、第2の作動機構の電気モータは、第2の閾値作動力に達したときに自動的に作動される。即ち、第2の閾値作動力に達したか、又は、これを超える力を使用者がハンドル要素に加えたときに、電気モータが自動的に係合される。使用者側のこの作動も共通の作業の流れの一部であり、特にTFT型(熱融着技術)のバイポーラ型封止器具、本発明による器具の正しい操作が、使用者にとって直観的な操作であるか、又は、追加の訓練が、全く若しくはほとんど必要ない。
【0020】
有利には、本発明のこの態様によれば、第1の作動機構及び/又は第2の作動機構は、高負荷作業姿勢/位置で掛止するように構成される。従って、高負荷作業姿勢/位置は、エネルギーを節約する方式で確実に保持することができ、掛止は、使用者のみが解除することができる。換言すれば、組織締め付けの持続時間(締め付け持続時間)、及び、必要に応じて、後続の切断工程の持続時間は、使用者により決定される。この結果、使用者は、例えば、特に組織の厚さ及び/又は種類に応じて組織締め付け及び封止の持続時間を調整することができる。
【0021】
代替的に、本発明は、少なくとも第2の作動機構が、電気モータにより高負荷作業姿勢/位置に保持されるように変更されてもよい。このように、電気モータによる少なくとも第2の作動機構のリセットは、全自動又はモータ補助によるものとすることができる。従って、安全に制御することができる。有利には、作動機構及び/又は器具ハウジングに追加の掛止手段を設ける必要がないので、設計がさらに簡素化され、設置スペース、重量、及び、コストが節約される。
【0022】
また、第1の作動機構及び/又は第2の作動機構は、有利には、工程に依存した方式で、特に所定時間後に、高負荷作業姿勢/位置からモータにより解除可能とすることができる、又は、電動補助は、手動初期作動により、例えば、作動レバーを軽く叩くことにより、開始することができる。代替的に、第1の作動機構及び/又は第2の作動機構は、高負荷作業姿勢/位置から手動で解除可能であってもよい。工程に依存した解除により、使用者による誤操作を回避し、特定値に基づいて組織締め付けを行うことが可能になる。これより、特定値は、必要に応じて、施すべき手術の種類、即ち、治療すべき組織の種類に応じて、及び/又は工程に依存した方式で、調整可能とすることができる。一方、手動解除は、使用者の経験と、例えば現時点の内視鏡画像と、を考慮に入れ、それに応じて個別の調整を行うことを可能にする。
【0023】
本発明の第2の有利な態様によれば、第1の作動機構及び/又は第2の作動機構は、高負荷作業力範囲に達したときに掛止し、掛止は、好ましくは、手動初期作動により発動される電動補助により解除することができる。このように、高負荷作業力範囲に達したときに、使用者は、触覚及び/又は可聴フィードバックを受け取る。さらに、必要に応じて、この触覚及び/又は可聴フィードバックは、高負荷作業力範囲での使用者による器具のさらなる作動を防止することができ、その結果、組織締め付け及び必要に応じて切断の間における使用者側の誤操作を排除することができる。電動支援は、さらに、掛止の円滑な解除、即ち、掛止解除を確実にすることができる。使用者による手動解除は、器具の揺動を伴う。
【0024】
また、本発明の第2の態様によれば、第2の作動機構が電気モータにより高負荷作業姿勢/位置に保持されるように第2の作動機構を構成することが好都合である。同様に、この態様によれば、第2の作動機構、特に電気モータの作動、作動持続時間及び作動停止は、工程に依存した方式で、特に封止及び場合により切断工程に依存して制御することができる。上記で既に説明したように、このように、使用者側の誤操作を排除することができ、組織の締め付け及び封止の持続時間を、過度にではないが、十分に長く設定することができる。好ましくは、第2の作動機構の電気モータは、第1の作動機構及び/又は第2の作動機構が係合され、封止工程が初期化されたときに、患者組織の締め付けを達成するように自動的に作動される。すなわち、使用者によるツールの位置決めが完了し(掛止が確立され)、かつ、使用者が電極を作動させたときにのみ、第2の作動機構の電気モータがオンにされる。締め付けの開始又は第2の作動機構の電気モータの作動を工程に依存した方式で開始することもでき、その結果、患者の組織の締め付けに極端に長い時間がかからない。従って、患者の組織が保護される点が特に有利である。
【0025】
特に、第1の作動機構及び/又は第2の作動機構が掛止解除されている間に封止工程が初期化されたときに、簡単な、組織締め付けなしの凝固/封止を行うことができれば有利である。このように、器具は、封止及び場合により切断機能と簡単な止血の追加機能の両方を有することができる。
【0026】
本開示による封止器具の例であり、この特定の場合にはバイポーラ型封止器具である複合型封止及び切断器具の例示的な実施形態を以下に説明する。この文脈では、同じ要素が同じ参照符号で表される。実施形態は、本発明の単なる例示にすぎず、特許請求の範囲により定義される保護の範囲を制限することを意図するものではない。異なる実施形態を組み合わせてもよく、要素を交換又は省略してもよいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態において、作動ストロークに関する異なる作業力範囲の描写を図示する。
【
図2】静止位置における本発明の複合型封止及び切断器具の第1実施形態を示す。
【
図3】移行位置における第1実施形態の器具を示す。
【
図4】作業位置における第1実施形態の器具を示す。
【
図5】移行位置における第1実施形態の器具の変更バージョンを示す。
【
図6】移行位置における本発明の複合型封止及び切断器具の第2の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態において、歪ゲージに基づいて記録されたハンドル要素又は作動レバー2の作動ストロークに関する図であって、複合型封止/切断器具1における作業力曲線又は作動力曲線を描いた図である。ここで、横軸は、作動ストロークを表す歪ゲージの歪[mm]を示しており、縦軸は、作動力[N]を示している。この図は、患者組織を準備するための準備段階と、封止/切断工程のための締め付け段階と、を有する器具作動の範囲内を横断する低負荷作業力範囲B1及び高負荷作業力範囲B2の描写を図示する役割を果たすことに留意されたい。
図1に描かれている比率及び大きさは、本質的に単なる例示にすぎない。
【0029】
「封止/切断工程」は、原則、例えば、適切に設計された電極によって同時に行われる組織の封止及び切断であってもよく、この好ましい実施形態では、封止は電極により行われ、切断は、封止とは別のステップにおいて、別の機構によって手動操作される機械的切断刃(図示省略)により行われることに留意されたい。器具1自体は、特に単一の締め付け段階において、工程部分又はステップの両方を行うことができる複合型封止/切断器具である。
【0030】
器具の作動は、歪(作動ストローク)と作動力/作業力が両方とも「0」である静止位置における図の左下から開始する。次に、小さな作動ストロークと小さな作動力で、準備段階が開始する。準備段階は、低負荷作業力範囲B1における作動レバー2を有する第1の作動機構3の手動作動に対応する。
【0031】
上記説明によれば、使用者が組織封止を行おうとする場合、以下では、第2の閾値作動力S2と称される閾値作動力に達するまで作動レバー2の作動ストロークを増大させる。この例では、第2の閾値作動力S2に到達したことは、検出装置としての歪ゲージを用いて検出され、作動レバー2の作動ストロークから導出される(間接的検出)。これは、第2の作動機構5の電気モータ4が自動的にオンにされる作動レバー2の移行位置に対応する。この移行位置では、低負荷作業力範囲B1から、器具1のさらなる作動が少なくともモータ補助による作動、又は、特に、全自動の作動である高負荷作業力範囲B2への自動切り替えが実行される。上記で説明した例の代案として、第2の閾値作動力S2に到達したことは、例えば、第1の作動機構3に組み込まれた位置センサ又は力センサにより、又は、接触作動により、検出することができる。ここで、上記で説明した第1の閾値作動力S1に相当する最大締め付け力に達するまで、電気モータ4により補助され、又は、全自動で、作業力/作動力及び作動ストロークが増大される。第1の閾値作動力S1は、例えば、第2の閾値作動力S2と同じ検出装置により検出することができ、又は、予め設定された最大回転速度に基づいて検出し制限することができる。第1の閾値作動力S1に達したときに、封止切断工程を行うことができる。
【0032】
その後、器具1は、手動初期作動により(特に、高負荷作業姿勢/位置での作動機構3、5のうちの一方の機械的掛止の場合)、又は、手動で開始されたモータにより高負荷作業姿勢/位置から解除され、ばね支持されて又はモータにより補助されて手動で又は全自動で高負荷作業力範囲B2から低負荷作業力範囲B1に戻される。
【0033】
図2は、静止位置における本発明の器具1の第1実施形態の断面図を示している。対応する断面が器具1の対称面と一致する。本発明による器具1は、保持部分7を有する器具ハウジング6を備えたピストル状の構造を有する。さらに、使用者が、器具1を作動させるために、保持部分7と作動レバー2の露出した第2の端部とを片手で把持して互いに押し付ける、即ち、保持部分7と第2の端部とを互いに対して枢動させることができるように、作動レバー2は、第1の内端部が軸受中心軸を中心に枢動可能に器具ハウジング6に取り付けられる。戻しばね8は、器具ハウジング6内に取り付けられ、作動レバー2を押圧して、作動レバー2を静止位置に保持するか又は作動レバー2を静止位置に戻す。
【0034】
作動レバー2の第1の端部では、軸受中心軸から距離をおいて、U字状の円弧状ばね9の脚部が連接されている。円弧状ばね9は、第2の脚部により引張要素10に連接され、引張要素10を介して、作動レバー2の枢動運動が引張要素10の軸方向運動に変換される。引張要素10は、ピストル状の器具ハウジング6の口部に現れる器具シャフト11の軸方向運動のために取り付けられ、相互に移動可能な器具分岐部と封止のための電極と患者組織を切断するための機械的切断刃とを備えたツール(図示省略)を作動させるために使用される。作動レバー2と円弧状ばね9と引張要素10とは、第1の作動機構3の一部である。円弧状ばね9は、第1の作動機構3に過大な負荷がかかった場合に圧縮されるので、特に低負荷作業力範囲B1での作動において、例えば、器具の分岐部が既に小さな作動ストロークにおいて妨げとなっている場合に、過負荷保護として機能する。
【0035】
さらに、任意選択的に、作動レバー2及び円弧状ばね9は、終期範囲、特に、高負荷作業力範囲B2での、引張要素10の小さな作動ストロークに対して大きな作業力が達成されるように、作業力と作動ストロークとの比率を最適化するように、即ち、初期に作動のための引張要素10の大きな作動ストロークに対して小さな作業力を可能にし、徐々に作業力と作動ストロークとの比率を変えるように引張要素10を作動させるためのトグルレバーを形成する。
【0036】
図3は、移行位置、即ち、第2の閾値作動力S2又は第2の閾値作動力S2に関連する作動ストロークに達した時点における本発明の器具1を示している。第1の作動機構3、特に作動レバー2には、移行位置において、保持部分7内に係合し、関連するばね式掛止ピン13を押しのける掛止ラグ12が設けられる。掛止ピン13及び掛止ラグ12は、掛止機構を形成する。さらに、第2の閾値作動力S2又は対応する作動ストロークの達成が検出され、保持部分7内に配置される電気モータ4が自動的にオンされる。例えば、第2の閾値作動力S2を検出するために、第1の作動機構と第2の作動機構との間の掛止機構又は接点が、スイッチとしての役割を果たしてもよいし、作業力などを直接測定するための歪みゲージが円弧状ばね9上に設けられてもよい。この実施例によれば、電気モータ4は、リニアモータ、又は、回転モータにより生成された回転運動を直線運動に変換するための伝達ギアを有する回転モータである。
【0037】
電気モータ4は、軸方向に移動可能となるように電気モータ4内に取り付けられる駆動ロッド14であって、器具ハウジング6の保持部分7に対して略平行に延びるか又は僅かに傾斜する駆動ロッド14を有する。電気モータ4によって、駆動ロッド14が前進される。駆動ロッド14は、器具ハウジング6の主要部に面する駆動ロッド14の一端部が、丸みを帯びており、電気モータ4の接触作動のための接点として形成され得るタペット15を形成する。タペット15は、従動部17の第1の端部における案内面16に当接し、電気モータ4により作動されたときに従動部17の案内面16を押圧する。第2の端部では、従動部17は、従動部17の長手方向軸が作動レバー2の長手方向軸と交差するように、軸受中心軸を中心に枢動可能に器具ハウジング6内に取り付けられる。好ましくは、従動部17は、フォーク状又はO字状であり、作動レバー2の両側に延びる2つのアームを有する。案内ピン18は、第2の作動機構5を第1の作動機構3に機械的に結合するため、即ち、力を伝達するために、移行位置に達したときに案内ピン18が作動レバー2の案内溝19に係合するように、従動部17の中央部に配置される。案内ピン18は、この時点よりも前に案内溝19内に配置されることがあり、この場合、案内溝19は、作動レバー2の自由な移動を可能にするような、即ち、案内溝19が案内ピン18に力を伝達せずに、低負荷作業力範囲B1での2つの作動機構の完全な切り離しを確実にするような形状とされる。電気モータ4と駆動ロッド14と従動部17は、第2の作動機構5の一部である。
【0038】
電気モータ4を駆動して高負荷作業力範囲B2で器具1を作動させると、駆動ロッド14が直線的に作動させられ、駆動ロッド14のタペット15により従動部17の案内面16が押圧される。これにより、従動部17が器具ハウジング6に対して従動部17の軸受中心軸を中心に枢動し、タペット15が案内面16に沿って摺動し、案内ピン18が作動レバー2の案内溝19を押圧する。これにより、作動レバー2がさらに移動される。
図4に示すように、従動部17は、器具1を高負荷作業姿勢/位置に移動させるために、電気モータ4により与えられた動力が第1の作動機構3を介してツールに大きな力で伝達されることを可能にする伝達要素としての役割を果たす。高負荷作業姿勢/位置に達したときに、ばね付勢掛止ピン13が掛止ラグ12にスナップ嵌合して、作動レバー2、即ち、第2の作動機構5に機械的に結合される第1の作動機構3を器具ハウジング6と係合させる。作動機構又はツールの過負荷を回避するために、第1の閾値作動力S1に又は第1の閾値作動力S1が導出される作動ストロークに達するまでの間にだけ、電気モータ4をオンにすることができる。第1の閾値作動力に達したことは、上記で説明したように検出装置により検出することができる。例えば、第1の作動機構3及び/又は第2の作動機構5の位置の変化は、インクリメンタルエンコーダ若しくは(例えば、タペット15と従動部17の案内面16との間の)接触距離により検出することができ、又は、第1の閾値作動力S1は、モータ速度の制限により決定若しくは調整することができる。この実施形態では掛止位置でもある高負荷作業位置に達するとすぐに、電気モータ4を作動停止させることができ、必要に応じて、駆動ロッド14を後退させることができる。
【0039】
このように、第2の作動機構5、特に電気モータ4は、高負荷作業姿勢/位置に達したときに第1の作動機構3から切り離される。さらに、2つの作動機構3、5が機械的に結合される高負荷作業力範囲B2(締め付け段階)での電動作動中に第1の作動機構3も移動させるので、高負荷作業姿勢/位置からの解除と静止位置への完全な復帰の両方を使用者が手動で制御することができる。
【0040】
代替的に、例えば作動レバー2を短時間だけ軽くタップすることにより、初期手動作動後に、必要に応じて、電気モータ4を再びオンにするため、及び、2つの作動機構3、5をリセットするための電動補助を提供するために、電気モータ4がオフにされた状態で、駆動ロッド14を高負荷作業姿勢/位置に延出させたままにすることが可能である。この場合、作動レバー2を係合解除又は解除するための作動力は少なくとも係合のための作動力と同程度であるので、特に作動レバー2が再び係合解除又は解除される作動領域において電動補助が提供される。結果として、係合だけでなく係合解除でも使用者を補助することが理にかなっている。ここでは、電動補助がオンにされる係合解除のための閾値作動力(圧力点)は、意図せずに作動レバー2が係合解除されるのを防止するために、小さすぎてはならないことに留意されたい。この場合、封止工程を停止しなければならず、且つ対応するエラーメッセージをジェネレータに出力しなければならない。よって、作動レバー2を係合解除することにより封止工程を意図的に停止できる機能も提供され、確保される。力センサが掛止解除方向における作動力を測定し、特定の閾値作動力を超えたときにのみ、必要に応じて、電動補助をオンにすることができる。設計の観点から、例えば溝とピンとの組み合わせにより、駆動ロッド14が従動部17に引張方向にも結合されるという点で、電動補助を実施することができる。代替的に、駆動ロッド14は、係合解除直前の作動レバー2の位置に対応する作動ストロークにおいて、特に、従動部17から離れる方向に面する駆動ロッド14の第2の端部又は具体的にはこの目的で駆動ロッド14上に形成されたラグ又は凹領域により、掛止ピン13又は掛止ピン13に配置された突起と接触又は係合することができる。後者の選択肢により、作動レバーを係合解除するためだけに電動補助を提供すること、さもなければ、邪魔されない手動案内を可能にすることが可能となる。
【0041】
図5は、本発明による第1実施形態による器具1の変更バージョンを示している。これは、上記で説明した変形例に実質的に相当し、そのため、以下ではそれらの違いのみを説明する。
【0042】
この変更形態によれば、機械的掛止機構、即ち、掛止ラグ12及びばね付勢掛止ピン13が設けられていない。これにより、所要の設置スペースを削減することが可能となる。その代わりに、電気モータ4は、高負荷作業姿勢/位置に達しても作動したままであり、封止/切断工程中に器具を高負荷作業姿勢/位置(締め付け位置)に保持するための電気的掛止手段又は保持手段としての役割を果たす。これにより、特に、高負荷作業力範囲B2での器具の締め付け持続時間及びリセットを、全自動で正確な、特に工程に依存した方式で制御することが可能になる。代替的に、同じくこの変更形態によれば、器具1のリセットは、手動でトリガされることができ、及び/又は、少なくとも部分的に手動で行うことができる。
【0043】
図6は、移行位置にある第2の実施形態における本発明の器具1の断面図を示している。この実施形態の機械的構造は、第1実施形態(未変更の基本的な変形例)に実質的に相当し、そのため、この点について上記説明を参照する。第1実施形態とは対照的に、器具ハウジング6の保持部分7内にばねを用いて取り付けられた掛止ピン13と掛止ラグ12とは、高負荷作業力範囲B2に達したとき、即ち、図示の移行位置では既に掛止しており、従って、使用者が、手動作動段階(準備段階)の終了の触覚及び/又は聴覚フィードバックを受け取るように配置される。また、例えば、掛止機構は、追加的に、掛止が行われたときに作動させるスイッチ(例えば、ボタン又は接点)として使用することができ、それにより、掛止の成功が、第2の作動機構5をオンにするか又は電気モータ4を作動させることを可能にする開始条件としての役割を果たす。
【0044】
即ち、静止位置から、この実施形態でも移行位置に対応する掛止位置への作動レバー2の全作動ストロークは、低負荷作業力範囲B1において手動で行われる。これにより、使用者は、患者組織を準備し、器具1を位置決めし、次いで、器具1を掛止位置又は移行位置に移すことができる。掛止位置に達したときに、開始条件が確認され、例えば、掛止機構自体が、開始条件を確認して電気モータ4の作動を可能にするスイッチ又は接点としての役割を果たす。次に、例えば、電源スイッチ(例えば高周波ボタン)を用いて、ツール又はツールに取り付けられた電極を作動させることにより、患者組織を封止して切断するための封止/切断工程が開始される場合に、電気モータ4が、自動的にオンにされ、封止/切断工程と協働して組織の締め付けを開始する。開始条件が満たされない(即ち、作動レバー2が掛止されない場合)で、それにもかかわらず通電スイッチを作動させた場合には、電気モータ4への通電が行われず、封止/切断工程(血管封止方法)では行うことができない、簡単な組織締め付けなしの凝固が行われる。
【0045】
この第2の実施形態によれば、電気モータ4は、封止切断工程中において、第2の作動機構5が高負荷作業姿勢/位置に保持される追加の掛止手段としての役割を果たす。プリセット工程時間が経過したとき、又は、封止/切断工程が手動で中止されたときに、電気モータ4は静止位置に自動的に移動し、高負荷作業力範囲での作動機構3、5の復帰は全自動で行われる。移行位置に達したときに、作動レバー2を掛止位置から手動で解除しなければならない。
【0046】
換言すれば、高負荷作業力範囲B2での第2の作動機構5の作動は、封止/切断工程に直接関連しており、全自動であり、(封止/切断工程のパラメータに応じて)工程制御される。結果として、本実施形態は、作動レバー2の掛止位置に達することに追加的に連動する封止工程連動制御により特徴付けられる。
【0047】
上記で説明した実施形態の全ては、使用者側での追加の操作又は作動運動を必要とせずに、工程中に生じる一定の標準条件(即ち、電極への電流供給、又は、一定の作動力を手動で及ぼすこと)が満たされたときに、少なくともモータにより補助される封止/切断工程のための組織締め付けが自動的にオンにされることにより特徴付けられる。
【0048】
以下の表は、上記で説明した本発明の実施形態の概要を例として提示しており、第1実施形態に関係する縦列は「1.」で表され、第1実施形態の修正形態は「1.1」で表され、且つ第2の実施形態は「2.」で表されている。表の左側には、作業力曲線が略図の形式(対角線)で示されている。横列は各々、上から下に、作動段階、すなわち、準備段階、締め付け段階、高負荷作業力範囲B2での高負荷作業姿勢/位置からのリセット、及び低負荷作業力範囲B1でのリセットを表している。さらに、これに対応して、縦列区切線は、静止、移行、又は高負荷作業姿勢/位置を表している。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
少なくとも低負荷作業力範囲(B1)において、遠位側の器具先端に設けられたツールの手動締め付け作動のための第1の作動機構(3)を備える、バイポーラ型封止器具(1)であって、
前記手動締め付け作動を支援するか又は前記手動締め付け作動の代わりとなるモータ補助方式又は全自動方式によって、前記ツールを高負荷作業姿勢/位置に移行させるために、高負荷作業力範囲(B2)での締め付け作動時に自動的に作動されるように構成されるモータ、好ましくは電気モータ(4)を備える第2の作動機構(5)を特徴とする、
バイポーラ型封止器具(1)。
(項目2)
前記第2の作動機構(5)は、前記高負荷作業力範囲(B2)における締め付け作動中において、好ましくは案内溝(19)に嵌合された案内ピン(18)を介して、前記第1の作動機構(3)のハンドル要素(2)に機械的に結合されることを特徴とする、項目1に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目3)
前記第2の作動機構(5)は、ばね要素(9)を介して、前記ツールに結合されることを特徴とする、項目1又は2に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目4)
前記第2の作動機構(5)は、全自動で、又は、モータにより補助されて、又は、手動で、前記高負荷作業姿勢/位置からリセットできるように構成されていることを特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目5)
前記高負荷作業姿勢/位置に達したことを示す第1の閾値作動力(S1)、又は、第1の閾値作動位置を検出するように構成された検出装置を特徴とし、
前記第1の閾値作動力(S1)又は前記第1の閾値作動位置に達することに応じて、前記第1の作動機構(3)及び前記第2の作動機構(5)の少なくとも一方が掛止され、前記電気モータ(4)が自動的に停止されるか、又は、前記電気モータ(4)が掛止手段として機能することを特徴とする、項目1~4のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目6)
前記検出装置は、前記高負荷作業力範囲(B2)に達したことを示す第2の閾値作動力(S2)、又は、第2の閾値作動位置を検出するように構成されており、
前記第2の閾値作動力(S2)に達することに応じて、前記第2の作動機構(5)の前記電気モータ(4)が自動的に作動されることを特徴とする、項目5に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目7)
前記第1の作動機構(3)、及び/又は、前記第2の作動機構(5)は、前記高負荷作業姿勢/位置に掛止するように構成されていることを特徴とする、項目1~6のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目8)
少なくとも前記第2の作動機構(5)は、前記電気モータ(4)によって、前記高負荷作業姿勢/位置に保持されるように構成されていることを特徴とする、項目1~6のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目9)
前記第1の作動機構(3)、及び/又は、前記第2の作動機構(5)は、工程に依存した方式、特に所定の工程が持続した後に、前記高負荷作業姿勢/位置から、モータによって解除できることを特徴とする、項目8に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目10)
前記第1の作動機構(3)、及び/又は、前記第2の作動機構(5)は、手動初期作動によって、前記高負荷作業姿勢/位置から解除できることを特徴とする、項目7又は8に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目11)
前記第1の作動機構(3)、及び/又は、前記第2の作動機構(5)は、前記高負荷作業力範囲(B2)に達したときに掛止し、
前記掛止は、好ましくは、手動初期作動によって解除できることを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目12)
少なくとも前記第2の作動機構(5)は、前記電気モータ(4)によって、前記高負荷作業姿勢/位置に保持されるように構成されていることを特徴とする、項目11に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目13)
前記第2の作動機構(5)の前記電気モータ(4)は、前記第1の作動機構(3)及び/又は前記第2の作動機構(5)が掛止され、封止工程が初期化されたときに、患者組織を締め付けるように自動的に作動することを特徴とする、項目11又は12に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目14)
簡単な組織締め付けなしの凝固は、前記第1の作動機構(3)及び/又は前記第2の作動機構(5)が掛止解除されている間に、前記封止工程が初期化されたときに実現可能であることを特徴とする、項目13に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
(項目15)
前記第2の作動機構(5)、特に前記電気モータ(4)の作動、作動持続時間、及び、作動停止は、工程に依存した方式、特に封止切断工程に応じて制御可能であることを特徴とする、項目11~14のいずれか一項に記載のバイポーラ型封止器具(1)。
【0049】
【符号の説明】
【0050】
1 バイポーラ型封止装置
2 ハンドル要素(作動レバー)
3 第1の作動機構
4 モータ
5 第2の作動機構
6 器具ハウジング
7 保持部分
8 戻しばね
9 円弧状ばね
10 引張要素
11 器具シャフト
12 掛止ラグ
13 掛止ピン
14 駆動ロッド
15 タペット
16 案内面
17 従動部
18 案内ピン
19 案内溝
B1 低負荷作業力範囲
B2 高負荷作業力範囲
S1 第1の閾値作動力
S2 第2の閾値作動力