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特許7478155成形部品の電磁溶接方法で使用するための工具、及びその工具の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】成形部品の電磁溶接方法で使用するための工具、及びその工具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/04 20060101AFI20240424BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
B29C65/04
B29C70/54
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021534919
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 NL2019050820
(87)【国際公開番号】W WO2020130806
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】2022271
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520471519
【氏名又は名称】コーク・アンド・ファン・エンゲレン・コンポジット・ストラクチャーズ・ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】KOK & VAN ENGELEN COMPOSITE STRUCTURES B.V.
【住所又は居所原語表記】Laan van Ypenburg 56,2497 GB Den Haag,The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マールテン・ラボルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】トム・ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒル・ブラウケルス
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-079729(JP,A)
【文献】特開平02-103125(JP,A)
【文献】国際公開第2013/122083(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0206469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 13/00-13/08
B23K 37/04-37/053
B29C 65/00-65/82
H05B 6/02-6/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部品の2つの接触面の電磁溶接方法に使用するための工具であって、
ゴム体と、前記ゴム体を加圧し、前記接触面に圧力を加える加圧手段とを含み、
前記ゴム体は、それに埋め込まれた剛性体を含み、前記剛性体は、埋め込まれた前記ゴム体の形状に対して、異なる方向に異なるゴム体の厚さを定義するような形状であり、これにより、前記異なる方向に異なる圧力上昇を発生させ、
前記加圧手段は、前記剛性体に設けられたチャネルを含み、前記チャネルの一端は圧力源に接続され、他端は前記ゴム体に接続されている
工具。
【請求項2】
前記ゴム体の厚みが薄いほど圧力上昇が大きくなる、請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記ゴム体が、前記埋め込まれた剛性体に接着する、請求項1又は2に記載の工具。
【請求項4】
前記接触面を加圧することを目的とする前記ゴム体の部分が、前記ゴム体の他の一部よりも薄い、請求項1~3のいずれか1項に記載の工具。
【請求項5】
前記接触面を加圧することを目的とする前記ゴム体の部分が、前記ゴム体の他のどの部分よりも薄い、請求項4に記載の工具。
【請求項6】
前記剛性体が、上面と下面、これらの面の間に延在する壁、及びこれらの面の間に延在し、前記ゴム体の一部で満たされたキャビティとを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の工具。
【請求項7】
前記圧力源が加圧空気源を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の工具。
【請求項8】
前記剛性体が高分子材料から作られている、請求項1~7のいずれか1項に記載の工具。
【請求項9】
前記剛性体が、圧力センサー又は温度センサーのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の工具。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の工具の製造方法であって、前記剛性体を形成し、前記工具の形状を有するホルダーを提供し、前記ホルダー内に前記剛性体を配置し、液体ゴムを前記ホルダーに注ぎ、及び前記ゴムを固化させて前記ゴム体を提供することを含む、方法。
【請求項11】
前記剛性体が機械加工により形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記剛性体は、3Dプリントによって形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
圧力センサー又は温度センサーの少なくとも1つが前記剛性体に設けられる、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
成形部品の2つの接触面の電磁溶接方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の工具を提供し、前記工具の前記ゴム体を加圧して前記接触面に圧力を加え、前記成形部品の加圧された前記接触面に沿って接合インダクタを移動させ、前記成形部品の誘導感応部材に電磁場を発生させて、前記成形部品の熱活性化結合手段を前記結合手段の溶融温度以上に加熱し、及び溶融された前記結合手段により前記接触面で前記成形部品を互いに接合することを含む、方法。
【請求項15】
前記熱活性化結合手段が熱可塑性プラスチックを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁溶接により成形部品を接合する方法に関する。本発明は、特に、成形部品の2つの接触面を電磁溶接するそのような方法に使用するための工具に関する。本発明はまた、その工具を使用した電磁溶接方法、及びその工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成形部品の接合には、繊維強化熱可塑性部品や熱硬化性複合部品など、多くの技術が存在する。成形部品の2つの接触面を結合するには、従来、機械的固定と接着剤による接着が使用されている。
【0003】
ただし、機械的固定と接着剤による結合は、どちらもコストと時間が掛かる。例えば、機械的固定には高価な穴位置決め、穴あけ、シミング、留め具の取り付けが必要であり、接着剤による結合には化学物質を含む複雑な表面前処理が必要である。
【0004】
電磁溶接により、別個の留め具の使用が不要になり、成形された複合部品の接触面を比較的高速で接合できる可能性があり、前処理がほとんど必要ない。電磁溶接は、成形部品の1つ以上の誘導感応部材に電磁場を発生させて、成形部品の熱活性化結合手段を結合手段の溶融温度以上に加熱する。成形部品の接触面は、溶融された結合手段によって互いに接合される。結合手段は、例えば、接合すべき1つ以上の部品の熱可塑性樹脂であってもよく、別個に塗布された熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性成形部品と熱硬化成形部品を一緒に溶接する場合、誘導感応部材として溶融する熱可塑性樹脂は、例えばホットメルト接着剤として機能する。
【0005】
繊維強化複合成形部品などの成形部品間の溶接接続を作成するには、多くの溶接方法を使用できる。振動溶接では移動により強化繊維が損傷する可能性があり、超音波溶接は連続溶接などには不向きである。電磁溶接の既知の方法では、特に航空産業など、溶接接続の比較的高い機械的強度と耐荷重能力が要求されるハイグレード用途において、品質の低い接合製品を生成することになる可能性がある。
【0006】
電磁溶接で十分な品質の溶接を実現するためには、一般に、溶接によって接続する必要のある成形部品の接触面に十分な圧力を加える必要がある。接触面に圧力を加える最新の方法は、一般には、部材に圧力を伝達する膨張式要素の使用に基づく。ただし、膨張可能な要素は、等方性の全周圧力を提供する。したがって、膨張可能な要素は、圧力がかかる側だけが開いている金型キャビティ内に封入する必要がある。そのため、堅牢で剛性が高く、強力な金型を適用する必要があるが、スペースの制約により、常に適用できるとは限らない。これは、例えば、動翼、フラップ、及びその他の類似製品などの製品に当てはまる。誘導溶接では、誘導場で金型が熱くなりやすいため、強度の高い金型の使用は好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最新の膨張体は、膨張時に半径方向に拡張するシリコーンホースを備えている。ホースの端よりも中央に圧力がかかるため、平らなラミネートに均一な圧力をかけることはできない。また、幅の狭い製品の場合、小径部にホースを配置し、十分な圧力を発生させるための十分なスペースがない場合がある。また、最新の方法における全周の圧力上昇は、工具が横方向に押し出されるような高い力を工具に与えることもある。
【0008】
本発明の1つの目的は、電磁溶接により成形部品を接合する方法に使用するための改善された工具、特に、最新技術の上述の問題の少なくとも一部を克服するための工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、請求項1に記載の電磁溶接により成形部品を接合する方法に使用するための工具を提供する。この工具は、成形部品の2つの接触面の電磁溶接方法に使用するためのものであり、ゴム体と、前記ゴム体を加圧し、前記接触面に圧力を加える加圧手段とを含み、前記ゴム体は、異なる方向に異なるゴム体の厚さを定義するような形状の埋め込まれた剛性体を含み、これにより、前記異なる方向に異なる圧力上昇を発生させる。これにより、ゴム体の一部が溶接される接触面にかなりの圧力を加える一方で、ゴム体の他の部分は、実質的な圧力を加えることが想定されていないように、剛性体の形状を適合させることができる。例えば、ゴム体が金型表面を覆う部分は、その表面にのみ適度な圧力を加えるか、実質的に圧力をまったく加えない。言い換えれば、本発明の工具は、使用される環境の異なる部分に異なる圧力を加えることを可能にするが、1つの供給源のみによって加圧される。
【0010】
本発明による剛性体の剛性は、剛性体の内部及び周囲に設けられたゴム体の剛性よりも高くなければならない。剛性体は、典型的には、少なくとも3MPa、より好ましくは少なくとも3.5MPa、最も好ましくは少なくとも4MPaの弾性率を有する熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーから製造される。剛性体は、その剛性に影響を与えるために、ガラス繊維などの強化繊維を含んでもよい。
【0011】
ゴム体は、1つの同じタイプのゴムを含んでもよい。しかしながら、他の実施形態では、ゴム体は、異なる特性、好ましくは異なる硬度を有する異なるゴムを含んでもよい。このような複合ゴム体は、例えば、異なるゴムを相互に上に注ぐことによって、又は他の方法によって得ることができる。異なる硬度値は、ゴム体による圧力上昇に影響を及ぼし得る。別の有用な実施形態では、ゴム体のゴムは、ガラス繊維などの強化繊維を特定の方向に含んでもよく、これは、同様に前記方向の圧力上昇に影響を及ぼし得る。
【0012】
本発明の一実施形態では、厚さが薄いほど圧力上昇が大きい工具が提供される。特定の方向に実質的な圧力を発生させるべきでない工具の部分(領域)には、その方向にゴム体のより大きな厚さが提供される。
【0013】
ゴム体及びその中に埋め込まれた剛性体は、互いに実質的に独立して自由に動くことができる。別の好ましい実施形態では、工具は、ゴム体が埋め込まれた剛性体に接着していることを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態による工具は、接触面を加圧することを目的とするゴム体の部分がゴム体の他の一部よりも薄いという点で有利である。この実施形態では、接触面は、成形製品の他の部分及び/又は金型部品などのセットアップで使用される他の部材よりも大きく加圧される。
【0015】
特に好ましい実施形態は、ゴム体の接触面を加圧することを目的とする部分がゴム体の他のどの部分よりも薄い工具を提供する。この実施形態は、必要とされる場所、すなわち、一緒に溶接するために相互に接触する表面において、最高の圧力を提供する。
【0016】
状況に応じて、工具の形状を選択することができる。これは、電磁溶接によって接合される成形部品の一方の形状に適合するか、又は一致することもできる。本発明の一実施形態では、剛性体が、上面と下面、これらの面の間に延在する壁、及びこれらの面の間に延在し、ゴム体の一部で満たされたキャビティとを有する工具が提供される。このような工具は、壁と接触する表面に比較的大きな圧力を与え、充填されたキャビティの上面及び下面と接触する表面に比較的小さな圧力を与える。これは、キャビティ内のゴム体の厚さが、少なくとも壁を覆うゴム体の厚さに比べて、上面及び下面にまたがる方向に比較的大きいためである。
【0017】
本発明によれば、工具は、ゴム体を加圧し、接触面に圧力を加える加圧手段を備える。有用な実施形態は、加圧手段が剛性体に設けられたチャネルを含み、チャネルの一端が圧力源に接続され、他端がゴム体に接続する工具を提供する。
【0018】
加圧媒体は任意であるが、液体又は気体が好ましい。一実施形態では、圧力源が加圧空気源を含む工具が提供される。
【0019】
電磁溶接は、インダクタとその誘導電磁場の範囲内にある金属部品を加熱する。これは、いくつかの実施形態では好ましくない場合があり、剛性体が高分子材料から作られる工具の実施形態が好ましい。任意の高分子材料を使用できるが、150~300℃の範囲の高温に対して比較的良好な耐性を備えた高分子材料が好ましい。このような材料の例は、PEEK及びPEKKであるが、エポキシド、ビスマレイミド樹脂などの熱硬化性材料を使用することもできる。
【0020】
溶接中に接触面及び意図する溶接接続に加えられる圧力は、とりわけ溶接の強度に影響を与える可能性がある。最新の方法では、圧力は通常、金型と工具の外側の加圧パイプシステムで測定される。この圧力測定システムは、加圧パイプシステムの下流、例えば金型内や接触面の近くで発生する漏れの影響を比較的受けにくい。このような場合、接触面にかかる有効圧力は、実際には測定値よりも低くなる可能性がある。
【0021】
したがって、本発明における好ましい実施形態は、剛性体が少なくとも1つの圧力センサーをさらに含む工具を提供する。剛性体に圧力センサー又はゲージを組み込むことにより、圧力を加圧体、すなわち工具自体で直接測定できる。また、成型部品が電磁溶接されるたびに、同じ場所で圧力が測定される。これにより、さまざまな溶接プロセスを比較し、特定のプロセスが圧力許容範囲外にあるかどうかを評価できる。
【0022】
圧力センサーは、光学的、電気的、機械的などの物理的原理に基づくことができる。適切な実施形態は、発生した圧力に起因する変形を測定するひずみゲージを圧力センサーが含む工具を提供する。公知技術に従って、ひずみの読み取り値を絶対圧力値に変換することができる。
【0023】
もう1つの重要なパラメータは、溶接領域内の温度である。溶接部での測定は複雑な場合があるため、最新の方法では、溶接接続部の外側の温度を測定する傾向がある。はんだ付けに熱電対を組み込むことも1つの可能性である。本発明の一実施形態は、剛性体が少なくとも1つの温度センサーをさらに含む工具を提供する。そのような実施形態は、剛性体内に圧力センサーを備える実施形態と同じ利点を示し得る。
【0024】
この任意的な圧力センサー及び/又は温度センサーは、溶接中に生成される電磁場によってそれらの読み取りが実質的に影響されないように配置及び/又は設計されることが好ましい。
【0025】
本発明の別の態様は、本発明による工具を製造する方法に関する。この方法は、前記剛性体を形成し、前記工具の形状を有するホルダーを提供し、前記ホルダー内に前記剛性体を配置し、液体ゴムを前記ホルダーに注ぎ、及び前記ゴムを固化させて前記ゴム体を提供することを含む。液状ゴムを注入する過程で、剛性体に存在する任意のキャビティが液状ゴムで充填される。液体ゴムの固化後、充填されたキャビティは工具のゴム体の一部になる。
【0026】
本発明の一実施形態では、剛性体が機械加工によって形成される方法が提供される。この実施形態によれば、剛性体材料のブロックは、溶接される成形部品の形状などの必要に応じて成形され得る。機械加工は、フライス加工、チッピング、パンチング、タッピング、ねじ切り、穴あけ、ブローチ、旋削などの当技術分野で知られている任意の方法によって実行することができる。フライス加工は好ましい加工方法でる。
【0027】
この方法の別の実施形態では、剛性体は3Dプリントによって形成される。これにより、材料を削りすぎることなく、剛性体の形状を構築できる。流し込みや注型など、他の方法も適している場合がある。
【0028】
剛性体の製造中に物体を剛性体に組み込むことが可能であり得る。例えば、剛性体の一部を機械加工して、そのような物体を挿入するためのスペースを空けることができる。3Dプリントでは、剛性体の残りの3Dプリントを続行する前に、部分的に3Dプリントされた剛性体上に物体を配置することができる。有用な実施形態において、この方法は、少なくとも1つの圧力センサー又は少なくとも1つの温度センサーが剛性体に提供されることを特徴とする。
【0029】
この工具は、成形部品の2つの接触面を電磁溶接する方法に有利に使用することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、成形部品の電磁溶接方法が提供され、この方法は、前記工具の前記ゴム体を加圧して前記接触面に圧力を加え、前記成形部品の加圧された前記接触面に沿って接合インダクタを移動させ、前記成形部品の誘導感応部材に電磁場を発生させて、前記成形部品の熱活性化結合手段を前記結合手段の溶融温度以上に加熱し、及び溶融された前記結合手段により前記接触面で前記成形部品を互いに接合することを含む。本発明の工具の利点は、圧力を加える方法にある。圧力は、接触面全体で実質的に均一であるだけでなく、成形部品の他の部分では圧力上昇が制限されるか、ゼロになることさえある。そうでなければ、そのような圧力上昇により、溶接される成形部品から工具を押しのける可能性がある力が発生してしまう。多くの実際の溶接作業では、工具は片側しか保持できない。スペースが限られているため、工具は非常に細く、剛性にも限界がある。このような場合、望ましくない表面での圧力上昇により、工具が傾く可能性もある。本発明による工具は、この問題及び他の問題を解決する。
【0030】
本発明の圧力工具は、あらゆる種類の電磁溶接プロセスで使用することができる。成形部品の電磁溶接の適切な方法は、金型を用意し、金型に結合するための少なくとも2つの成形部品を配置し(成形部品間で互いに接触する面(接触面)は、熱的に活性化される結合手段と誘導感応部材を含む)、インダクタによって誘導感応部材を加熱することによって結合手段を活性化させ(インダクタは金型の外側にある場合がある)、及び工具を使用しながら、金型によって定義された構成で成形部品を一緒にプレスすること(成形部品は、熱的に活性化された結合手段によって結合される)を含む。
【0031】
インダクタは通常、交流電圧の下で電磁場を生成する導電体を含む。電磁場の形状は、コイル状、又は溶接方向に実質的に円筒形などの任意の既知の形状とすることができる。溶接方向に実質的に円筒形の電磁場を使用することにより、非常に制御され、均一で目標を定めた加熱が可能になり、過熱が可能な限り防止される。過熱すると、材料が劣化し、構造の望ましくない弱体化を引き起こす可能性がある。他のインダクタは複数の巻線を含み、トーラス形の電磁場を生成する。インダクタに対して直角の方向を誘導方向とするこのような既知のインダクタを使用することにより、比較的低温なゾーンが中央に生じる加熱パターンが作り出される。一方、円筒形の電磁場は、均一な加熱を可能にするはるかに良好な加熱プロファイルを生成する。さらに、円筒形の電磁場は、幅10~20mmまでと非常に狭くすることができる。トーラス形の場では、そのような幅は、必要な熱誘導力及び浸透力の組み合わせを実現することはできない。
【0032】
インダクタの電磁場は、成形部品間の接触面に直接、成形部品のセクションを介して、及び/又は金型の壁を介して到達することがある。本発明の方法と工具により、頑丈で重い工具を使用する必要なく、成形部品間の高品質の溶接接続又は接合を迅速かつ効率的に実現することができる。得られた接合製品は、特に優れた機械的耐荷重性を有する。
【0033】
熱活性化結合手段として、熱可塑性材料又は熱活性化接着剤を成形部品間の接触面のみに配置することも考えられるが、1つ又は複数の成形部品は、溶融により溶接できる熱可塑性材料から製造されることが好ましい。
【0034】
誘導感応部材は、一般に、金属及び/又は炭素繊維などの導電性部材を含む。加熱する必要のないインダクタの近くの金型及び他の部材は、誘導感応部材が実質的にないか、又は適切なシールド材料で誘導フィールドからシールドされていることが好ましい。
【0035】
この方法では、好ましくは熱可塑性成形部品に、一般に導電性部品、例えば金属ガーゼを設けるか、この部品を成形部品の間に配置する。フーコー電流又は渦電流は、発電機によって交流電流が供給されたインダクタによって生成される変動電磁場によって、導電性部品に誘導される。ジュール効果、ファイバージャンクション加熱、誘電ヒステリシスなどのいくつかの加熱メカニズムにより、これらのフーコー電流は、熱可塑性材料の溶融及び/又は結合手段の活性化に必要な熱を生成する。接触面に沿ってインダクタを移動させることにより、熱可塑性成形部品が接触面上で相互に接続される。インダクタは、接続を実現するために、例えばロボットアーム若しくはリニアガイド、又はその他の移動手段によって、接触面上にガイドすることができる。
【0036】
加熱するために、誘導感応部材は、熱活性化結合手段と熱的に接触していなければならない。これは、例えば誘導感応部材と結合手段と混合することにより可能である。
【0037】
接合インダクタが金型の外側にあり、インダクタの電磁場が金型の壁を介して成形部品間の接触面に到達する実施形態は、溶接中に金型による圧力下で成形部品を併合することを可能にする。他の実施形態は、結合のための成形部品の誘導加熱が行われた後に圧力を加えてもよい。
【0038】
使用する材料、特に誘導感応部材と、この部材からのインダクタの距離に応じて、検出インダクタの応答の結果として、適切な電力と周波数を決定することができる。周波数は、特に電磁場の浸透力を決定する。インダクタの電力は、変動する電磁場の強さを決定し、それによって誘導感応部材で発生する熱の程度を決定する。
【0039】
熱活性化結合手段が熱可塑性プラスチックを含むと有利である。熱可塑性プラスチックは、融合によって簡単に結合できる。さらに、熱可塑性プラスチックは、金属ガーゼや炭素繊維などの誘導感応部材と簡単に混合できる。特に適切な熱可塑性プラスチックの例は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)であるが、この方法は原則としてあらゆる熱可塑性プラスチックに適している。
【0040】
誘導により加熱可能な部材は、炭素繊維及び/又は金属を含むことが好ましい。これらの材料は、誘導によって容易に加熱でき、電気伝導に加えて熱伝導も良好であるため、発生した熱は十分に分散される。炭素繊維は材料強度も向上させるため、熱可塑性プラスチックに組み込まれた炭素繊維が推奨される。本方法の別の好ましい実施形態において、誘導により加熱可能な部材は、強磁性粒子又は炭素ナノ粒子を含む。
【0041】
金型とインダクタの両方が静止していてもよい。これは、例えば、成形部品の接触面の比較的小さな部分の結合に適している場合がある。好ましい実施形態では、結合手段が接触面の所定の部分で活性化するように、インダクタは接触面に対して経路に沿って移動する。インダクタを固定したまま、成形部品とともに金型を移動することもできる。
【0042】
本発明による方法に適用するために、インダクタは交流発電機に接続され、交流発電機はインダクタの電気接続手段に電気的に接続される。使用可能な周波数は、一般的に0.1~10MHzである。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、誘導部には、冷却媒体の通過に適した少なくとも1つの供給チャネルが設けられている。これにより、使用中に誘導部分の温度を一定に保つことができ、これはインダクタの電気抵抗にも有利である。冷却媒体は、水などの高熱容量の液体であることが好ましい。誘導部分は、例えば、所望の形状に曲げられた金属管であることができ、冷却媒体は、交流電圧によって管自体の金属を通して電磁場が引き起こされる間、そこを通ってポンピングされる。
【0044】
この特許出願に記載された発明の実施形態は、これらの実施形態の任意の可能な組み合わせで組み合わせることができ、各実施形態は個別に分割特許出願の主題を形成することができる。
【0045】
本発明は、以下の図を参照して説明されるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、本発明による方法によって結合される2つの成形部品を概略的に示す。
図2図2は、本発明の一実施形態による溶接装置を概略的に示す。
図3図3は、本発明の一実施形態による工具の斜視図を概略的に示す。
図4図4は、図3に示される工具に含まれる剛性体の斜視図を概略的に示す。
図5A図5Aは、異なる高さレベルにおける水平面における図4の工具の断面図を概略的に示す。
図5B図5Bは、異なる高さレベルにおける水平面における図4の工具の断面図を概略的に示す。
図5C図5Cは、異なる高さレベルにおける水平面における図4の工具の断面図を概略的に示す。
図5D図5Dは、異なる高さレベルにおける水平面における図4の工具の断面図を概略的に示す。
図5E図5Eは、異なる高さレベルにおける水平面における図4の工具の断面図を概略的に示す。
図5F図5Fは、異なる高さレベルにおける水平面における図4の工具の断面図を概略的に示す。
図6図6は、垂直面における工具の断面側面図を概略的に示す。
図7図7は、工具に接続された加圧手段を通る垂直面における工具の断面側面図を概略的に示す。
図8図8は、工具に接続された加圧手段を通る垂直面における工具の断面側面図を概略的に示す。
図9図9は、本発明の一実施形態による工具を組み込んだ工具アセンブリを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、電磁溶接で接続する必要のある2つの成形部品(40、41)を示す。両方の成形部品(40、41)は、炭素繊維で強化された熱可塑性ポリマーから製造することができ、炭素繊維は、溶接のために熱可塑性ポリマーを加熱するための誘導感応部材としても機能する。第1の成形部品40は平坦な部品であり、第2の成形部品41は、成形部品40、41間の結合のために意図的に接触面を形成する折り曲げられた縁部42を有する。明らかに、成形部品の他の形状を使用することができ、本発明は特定の成形部品形状に限定されない。接触面(42、42’)は互いに接触し、線形インダクタ43が実質的な円筒形の電磁場を提供して、成形部品(40、41)、特に接触面(42、42’)を、熱可塑性ポリマー(又は任意的に、接触面(42、42’)に塗布された熱活性化接着剤)を熱的に活性化するのに十分高い温度まで加熱する。インダクタは、部品(40、41)と物理的に接触することなく、接触面(42、42’)上をB方向に移動することができる。加熱中及び/又は任意的にその後の短い時間、熱的に活性化された接触面(42、42’)は、適切な工具(図1には示されていない)によって方向Aに一緒に押し付けられ、成形部品(40、41)間の十分に発達した強力な結合を得なければならない。
【0048】
図2は、接合インダクタ43を備えた例示的な溶接装置30を示す。インダクタ43は、所望の溶接を達成するために、産業用6軸ロボット32又は他の適切な移動手段によって事前にプログラムされた経路である溶接線に沿って案内され得る。この場合、溶接用の成形部品は、この目的のために製造された金型33内で固定及びプレスされてもよい。金型33には、インダクタ43を溶接のために成形部品に近づけることができる凹部34を設けることができる。インダクタ43は、電磁場を発生させるためにロボット32に配置された交流発生器35に接続されてもよい。金型33の内側には、接触面(42、42’)と接触して接触面(42、42’)上に圧力を発生させる工具が設けられている。この圧力は、金型33の内面に対して工具を膨張させることによって発生する。
【0049】
本発明の一実施形態による、例示的な金型33に挿入される工具1が図3に示されている。工具1は、ゴム体10と、その中に埋め込まれた剛性体11を含む。図4にも示されるように、剛性体11はくさび形であり、軸方向21に延在する。剛性体11は、上面13aと下面13bとによって垂直方向20に区切られ、その間に壁14が垂直方向20に延在する。剛性体11はさらに、前記表面(13a、13b)間に延在するキャビティ12a及び12bを備える。キャビティ側壁14は、横方向22において比較的薄い。剛性体11には、加圧手段の接続部15が設けられている。接続部15は、例えば加圧空気などの加圧液体の入口を提供する。図示のように、2つの側壁14に加圧空気の出口16を設けることができる。
【0050】
工具1は、例えばPEEKなどの耐熱性ポリマーの3Dプリントにより、剛性体11を最初に形成することにより製造することができる。次に、工具1の外形に適合する形状の内部キャビティを有するホルダー(図示せず)が提供される。ホルダーの中に剛性体11を入れ、ホルダーに液状ゴムを流し込む。この液状ゴムは剛性体11のキャビティ(12a、12b)にも充填され、液状ゴムの固化後、剛性体11が埋め込まれたゴム体10を形成する。
【0051】
図3に示すように、剛性体11は、ゴム体10の異なる厚さが異なる方向に規定されるように形作られている。例えば、ゴム体10は、剛性体のキャビティ12a内において、垂直方向20においてより厚い厚さ10bを有する。一方、ゴム体11は、例えば図5Bから明らかなように、横方向22において比較的薄い厚さ10aを有する。異なるゴム体10の厚さ(10a、10b、…)は、異なる方向(20、22)において異なる圧力上昇を引き起こすことが分かる。実際、垂直方向20における圧力上昇は、横方向22、すなわち側壁14に実質的に垂直な方向における圧力上昇と比較して比較的低い。したがって、本発明による工具1は、そのような圧力上昇を必要としない方向での圧力発生を制限しながら、溶接される成形部品に圧力を発生させることができる。異方性圧力を生成する機能は、溶接金型の剛性と強度の要件を下げるのに役立つ。
【0052】
図5A~5Fは、異なる高さレベルX1~X6における工具の異なる断面を示しており、図3に示すように、レベルX1は低い高さレベルを表し、レベルX6は高い高さレベルを表している。
【0053】
図5Aは、ゴム体10のレベルX1で取った断面を示している。
【0054】
図5Bは、キャビティ10a及び10b内にゴム体10が充填された剛性体10の下部をレベルX2で切り取った断面を示す。
【0055】
図5Cは、圧縮空気の出口16の高さで剛性体10の中間部分をレベルX3で切り取った断面を示す。
【0056】
図5Dは、加圧空気用の分岐した入口ダクト17(17a、17b)(図7にも示される)の高さで剛性体10のより高い部分をレベルX4で取った断面を示す。加圧空気用のダクト17は、ロッド18内に設けられ、ロッド18は、接続部15を介して剛性体11に接続され、ゴム体10の一部のゴムでコーティングされる。ダクト17は、コネクタ19を介して加圧空気源(図示せず)に流体接続されている。
【0057】
図5Eは、圧縮空気用の入口ダクト17の分岐部より上の高さで剛性体10のさらに高い部分をレベルX5で切り取った断面を示す。
【0058】
最後に、図5Fは、工具1の頂部(加圧空気用の入口ダクト17の分岐部より上の高さでの剛性体10のさらに高い部分)にあるゴム体10のレベルX6で取られた断面を示す。
【0059】
図6を参照すると、垂直面における工具1の断面側面図が概略的に示されている。加圧空気用のダクト17を含むロッド18を通る垂直面での工具1の断面側面図が図7に概略的に示され、一方、図8は、垂直面における工具1の断面側面図を概略的に示している。図8に示すように、工具1は、圧力が必要な場所で、すなわち、矢印25で示すように、剛性体11の側壁14に対して実質的に垂直に、圧力上昇が本質的に発生するように構成される。
【0060】
今度は図9を参照すると、本発明の実施形態による工具1を組み込んだ工具アセンブリ50が概略的に示されている。工具アセンブリ50は、一緒にボルト締めされ、熱シールド53を保持する2つのフレーム部品51及び52と、電磁溶接によって接合される成形部品54a及び54bとを含む。工具アセンブリ50内に工具1が挿入され、溶接される成形部品(54a、54b)の接触面を加圧する。図9では、ロッド又はホース18を通して工具1が部分的にしか見えない。高圧フェストコネクタ55がホース18に、任意選択でアダプタ56を使用して取り付けられている。工具1及び接触面(42、42')を加圧するための加圧空気源は、フェストコネクタ55に接続されてホース18に入る。
【0061】
工具1に圧力を加えると、図8に示すように、剛性体11の側壁14に対して垂直に圧力上昇が本質的に発生する。フレーム部品51及び52は、前記方向に発生する圧力に抵抗する必要があるだけであり、工具アセンブリ50を他の方向に補強する必要性が低いか、又は補強する必要がない。工具1は、比較的小さな表面を加圧できる、及び/又は比較的小さな曲率半径に対応できるという点でも有利である。
【0062】
本発明は、上記の与えられた例に限定されず、添付の特許請求の範囲内でそれらの変形が考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8
図9