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特許7478156弱いゲルを形成する材料を使用する付加製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】弱いゲルを形成する材料を使用する付加製造
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20240424BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240424BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240424BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240424BHJP
【FI】
B29C64/40
B33Y70/00
B33Y10/00
B29C64/112
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021536707
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 IL2019051441
(87)【国際公開番号】W WO2020141521
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】62/786,809
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディコフスキー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド、ニシム
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078123(JP,A)
【文献】特開2018-036524(JP,A)
【文献】特表2018-525473(JP,A)
【文献】特開2018-127007(JP,A)
【文献】特表2018-526481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体の付加製造に使用可能な配合物であって、
総量が前記配合物の総重量の1~10重量%の範囲である少なくとも1種類の単官能性硬化性材料、
少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料、及び
少なくとも1種類の水混和性非硬化性材料
を含み、
硬化性材料の総量が前記配合物の総重量の20重量%以下であり、且つ、前記少なくとも1種類の単官能性硬化性材料の総重量と前記少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料の総重量との重量比が1:1~10:1の範囲である、
前記配合物。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料の総量が前記配合物の総重量の1~5重量%の範囲である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料は単独で硬化された場合に、水不溶性の材料を提供する、請求項1又は請求項2に記載の配合物。
【請求項4】
前記単官能性硬化性材料のうちの少なくとも1種類が親水性単官能性硬化性材料を含む、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項5】
前記単官能性硬化性材料のうちの少なくとも1種類がヒドロキシアルキル部分及び/又はアルキレングリコール部分を含む、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項6】
前記親水性多官能性硬化性材料のうちの少なくとも1種類が1又は複数のアルキレングリコール部分を含む、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の非硬化性材料が水溶性材料又は水混和性材料である、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の非硬化性材料がポリマー材料を含む、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
前記少なくとも1種類の非硬化性材料が非ポリマー性材料をさらに含む、請求項に記載の配合物。
【請求項10】
前記少なくとも1種類のポリマー性非硬化性材料の総重量と前記少なくとも1種類の非ポリマー性非硬化性材料の総重量との重量比が、2:1~1:2の範囲である、請求項に記載の配合物。
【請求項11】
3~10重量%の量の前記少なくとも1種類の単官能性硬化性材料、
3~5重量%の量の前記少なくとも1種類の多官能性硬化性材料、
30~60重量%の量の少なくとも1種類のポリマー非硬化性材料、及び
30~60重量%の量の少なくとも1種類の非ポリマー性非硬化性材料
を含み、
前記ポリマー非硬化性材料及び前記非ポリマー性非硬化性材料の総量が少なくとも80重量%である、
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項12】
水を含まない、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項13】
75℃で8~40センチポアズの粘度を有することを特徴とする、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項14】
前記付加製造が3Dインクジェット印刷である、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項15】
硬化された場合に10~100kPaのヤング率を有することを特徴とする、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項16】
硬化された場合に、陽圧の印加時に流動可能であるゲル材料を与えることを特徴とする、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項17】
前記陽圧が0.1~1.5バールの範囲である、請求項16に記載の配合物。
【請求項18】
前記硬化性材料の各々がUV硬化性材料である、請求項1~請求項17のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項19】
前記硬化性材料の各々がアクリル材料である、請求項18に記載の配合物。
【請求項20】
光開始剤をさらに含む、請求項18又は請求項19に記載の配合物。
【請求項21】
前記光開始剤の量が前記配合物の総重量の2重量%以下である、請求項20に記載の配合物。
【請求項22】
物体の形状に対応する構成されたパターンに沿って複数の層を順次形成し、それにより前記物体を形成することを含む、三次元物体の付加製造方法であって、
前記層のうちの少なくともいくつかの層の形成が、少なくとも2種類の造形材料配合物を吐出(dispense)することを含み、前記少なくとも2種類の造形材料配合物が、硬化条件にさらされた場合に硬化したモデリング材料Mを形成するモデリング材料配合物M、及び前記硬化条件にさらされた場合に硬化した支持体材料FGを形成する請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の配合物を含む、
前記方法。
【請求項23】
前記吐出が、前記硬化したモデリング材料Mが少なくとも1つの中空構造を形成し、前記材料FGが少なくとも部分的には前記中空構造内に配置(enclose)されるように行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記中空構造が、管状構造、分岐管状構造、及び互いに絡み合った複数の管状構造から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記管状構造のうちの少なくとも1つの直径が1cm未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記材料FGが前記中空構造内に完全に配置されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
空洞を有する三次元物体の付加製造方法であって、
前記物体と犠牲物体とが結合した形状に対応する構成パターンに沿って複数の層を、前記犠牲物体が犠牲シェルによって囲まれ、前記犠牲シェルが前記空洞の中に配置(enclose)されるように、順次形成すること、及び、
前記犠牲物体及び前記犠牲シェルを前記空洞から除去すること
を含み、
前記犠牲物体がモデリング材料Mを含み、前記犠牲シェルが請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の配合物で形成された支持体材料FGで作製される、
前記方法。
【請求項28】
前記犠牲物体が前記材料FGをも含み、前記材料FGが前記モデリング材料Mによって補強されている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記モデリング材料Mが前記犠牲物体の体積の20%~40%を占める、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年12月31日に出願された米国仮特許出願第62/786,809号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態では、付加製造に関し、より具体的には、限定するものではないが、硬化された場合に弱いゲルの特性を有することを特徴とする材料を提供する硬化性配合物、及び硬化性配合物を使用する三次元物体の付加製造に関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、一般に、物体のコンピュータモデルを利用して三次元(3D)物体を製造するプロセスである。このようなプロセスは、様々な分野、例えば、視覚化、実証、及び機械的プロトタイピングのための設計関連分野において、並びに迅速生産(RM)のために使用されている。任意のAMシステムの基本的な動作は、三次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスすること、その結果を二次元位置データに変換すること、及び、三次元構造を積層方式で製造する制御装置に前記データを供給することからなる。
【0004】
AMの1つの類型は、三次元インクジェット印刷プロセスである。このプロセスでは、支持体構造上に層を堆積させるためのノズル群を有する吐出ヘッドから造形材料が吐出される。その後、その造形材料に応じて、適切な装置を使用して前記層を硬化又は固化させてもよい。
【0005】
様々な三次元インクジェット印刷技術が存在しており、例えば、米国特許第6,259,962号、同第6,569,373号、同第6,658,314号、同第6,850,334号、同第7,183,335号、同第7,209,797号、同第7,225,045号、同第7,300,619号、同第7,479,510号、同第7,500,846号、同第7,962,237号に開示されている。
【0006】
いくつかのAMプロセスは、2種類以上のモデリング材料を用いた物体の付加形成を可能にする。例えば、本譲受人の米国特許第9,031,680号は、複数の吐出ヘッドを有する固体自由形状造形装置、複数の造形材料を前記造形装置に供給するように構成された造形材料供給装置、及び前記造形装置及び前記供給装置を制御するように構成された制御ユニットを含むシステムを開示している。このシステムはいくつかの動作モードを有する。あるモードでは、すべての吐出ヘッドが造形装置の同じ造形走査サイクルの間に動作する。別のモードでは、吐出ヘッドのうちの1又は複数が、同じ造形走査サイクルの間又はその一部の間に動作しない。
【0007】
造形材料は、モデリング材料及び支持体材料を含むことができ、モデリング材料及び支持体材料は、それぞれ、物体及び物体が造形されている際に物体を支持する一時的な支持体構造を形成する。
【0008】
本明細書で「モデル材料」とも呼ばれるモデリング材料(1種類又は複数種類の配合物に含まれる、1種類又は複数種類の材料を含んでいてもよい)が堆積されて所望の物体を生成する。
【0009】
当技術分野で「支持材料」としても知られている支持体材料(1種類又は複数種類の材料を含み得る)は、場合によりモデリング材料要素と共に使用され、造形中に物体の特定の領域を支持し、後続の物体層が垂直方向に適切に配置されることを保証するために使用される。例えば、物体が張り出した特徴又は形状(例えば、湾曲した形状、負角、及び空隙など)を含む場合、通常、物体は、隣接する支持体構造を使用して構築され、前記支持体構造は印刷工程にわたって使用される。
【0010】
すべての場合において、支持体材料は、モデリング材料の近傍に堆積され、複雑な物体形状の形成及び物体の空隙の充填を可能にする。
【0011】
現在実施されている技術のすべてにおいて、堆積された支持体材料及びモデリング材料は、通常、硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされた場合に硬化し、所望の層形状を形成する。印刷が完了した後、支持体構造は除去され、造形された3D物体の最終形状が現れる。
【0012】
インクジェット印刷ヘッドなどの現在入手可能な市販の印刷ヘッドを使用する場合、支持体材料は、吐出され得るように作業時(すなわち吐出時)の温度で比較的低い粘度(約10~20cPs)を有しているべきである。さらに、支持体材料は、後続の層の造形を可能にするために急速に硬化するべきである。加えて、硬化した支持体材料は、モデル材料を所定の位置に保持するのに十分な機械的強度有しているべきであり、幾何学的欠陥を回避するために小さい歪みを有しているべきである。
【0013】
支持体材料を除去するための既知の方法としては、機械的衝撃(工具又は水噴射によって加えられる)、並びに、(場合によっては、加熱して)溶媒に溶解することなどの化学的方法が挙げられる。機械的方法は労働集約的であり、小さく複雑な部品には適さないことが多い。
【0014】
支持体材料を溶解するために、造形された物体は、多くの場合、水中又は支持体材料を溶解することができる溶媒中に浸漬される。支持体材料を溶解するために利用される溶液はまた、本明細書及び当該技術分野において「洗浄液」と称される。しかしながら、多くの場合、支持体除去プロセスは、訓練された人員、防護服、及び費用のかかる廃棄物処理を要する有害物質、手作業、及び/又は特別な機器が必要となり得る。加えて、溶解プロセスは、通常、拡散速度論によって制限され、特に支持体構造が大きくてかさばる場合に、非常に長い時間を要し得る。さらに、物体表面上の「混合層」の痕跡を除去するために後処理が必要な場合がある。「混合層」という用語は、モデル材料と支持体材料がその間の界面で互いに混ざり合うことによって、造形中の物体の表面上の2種類の材料間の界面に形成される、硬化したモデル材料と硬化した支持体材料とが混ざり合った残留層を指す。
【0015】
さらに、ワックスや特定の可撓性材料など、温度に敏感なモデル材料が存在するため、支持体除去中に高温を要する方法は問題となり得る。支持体材料を除去するための機械的方法及び溶解方法は、いずれも、使いやすさ、清潔さ、及び環境安全性が重要な懸案事項となるオフィス環境での使用において、特に問題がある。
【0016】
3D造形用の水溶性材料は、例えば、米国特許第6,228,923号に記載されており、水溶性熱可塑性ポリマーであるポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)が、選択された材料のリボンのプレート上への高圧高温押出を含む3D造形プロセスにおける支持体材料として教示されている。
【0017】
可溶性結晶水和物を含む水含有支持体材料は、米国特許第7,255,825号に記載されている。
【0018】
3D物体を造形する際に硬化した支持体材料を形成するのに適した配合物は、例えば、米国特許第7,479,510号、同第7,183,335号、及び同第6,569,373号に記載されており、これらすべてが本譲受人に譲渡されている。一般に、これらの特許に開示される組成物は、少なくとも1種類のUV硬化性(反応性)成分(例えば、アクリル成分)、少なくとも1種類の非UV硬化性成分(例えば、ポリオール成分又はグリコール成分)、及び光開始剤を含む。照射後、これらの組成物は、水、又はアルカリ溶液若しくは酸性溶液、又は水洗浄剤溶液にさらされると溶解又は膨潤し得る半固体材料又はゲル状材料を提供する。
【0019】
膨潤に加えて、そのような支持体材料の別の特徴は、支持体材料が親水性成分で形成されているため、水、又はアルカリ溶液若しくは酸性溶液、又は水洗浄剤溶液にさらしている間に分解される能力であり得る。膨潤プロセスの間、内力は、硬化した支持体の粉砕及び破壊を引き起こす。さらに、支持体材料は、水にさらされると気泡を遊離させる物質、例えば、酸性溶液と接触するとCOに変換する重炭酸ナトリウムを含むことができる。気泡は、モデルから支持体を除去するプロセスを補助する。
【0020】
いくつかの付加製造プロセスは、2種類以上のモデリング材料を使用して物体の付加形成を可能にする。例えば、本譲受人の米国特許出願公開第2010/0191360号は、複数の吐出ヘッドを有する固体自由形状造形装置、複数の造形材料を前記造形装置に供給するように構成された造形材料供給装置、及び前記造形装置及び前記供給装置を制御するように構成された制御ユニットを備えるシステムを開示している。このシステムはいくつかの動作モードを有する。あるモードでは、すべての吐出ヘッドが造形装置の同じ造形走査サイクルの間に動作する。別のモードでは、吐出ヘッドのうちの1又は複数が、同じ造形走査サイクルの間又はその一部の間に動作しない。
【0021】
Polyjet(商標)(Stratasys Ltd.、イスラエル)などの3Dインクジェット印刷プロセスでは、造形材料は、1又は複数の印刷ヘッドから選択的に吐出され、ソフトウェアファイルによって定義された所定の構成に従って、造形トレイ上に連続する層の形で堆積される。
【0022】
本譲受人による米国特許第9,227,365号は、複数の層、並びに、コア領域を構成する層状コア及びエンベロープ領域を構成する層状シェルから構築されるシェル状物体の固体自由形状造形のための方法及びシステムを開示している。
【0023】
ゴム状材料を形成するために、付加製造プロセスが使用されてきた。例えば、ゴム状材料は、本明細書に記載のPolyJet(商標)システムにおいて用いられる。これらの材料は、例えば、インクジェットによる吐出を可能にする比較的低い粘度を有し、室温よりも低い(例えば、-10℃以下の)Tgを発現するように配合される。後者は、比較的低い架橋度を有する製品を配合し、固有の柔軟な分子構造を有するモノマー及びオリゴマー(例えば、アクリルエラストマー)を使用することによって得られる。
【0024】
PolyJet(商標)システム(「Tango(商標)」ファミリーという商品名で販売されている)で使用可能なゴム状材料の例示的なファミリーは、得られる硬化材料について、ショアA硬度、破断伸び、引裂抵抗、及び引張強度を含む様々なエラストマー特性を提供する。
【0025】
PolyJet(商標)システム(商品名「Agilus(商標)」ファミリーとして市販されている)で使用可能なゴム状材料の別のファミリーは、本譲受人による国際出願番号IL 2017/050604(国際公開第2017/208238号として公開されている)に記載されており、エラストマー硬化性材料及びシリカ粒子を含む硬化性エラストマー配合物を利用する。
【0026】
国際公開第2019/021291号、同第2019/021292号、及び同第2019/021295号は、いずれも本譲受人によるものであり、三次元物体の付加製造に使用可能であり、硬化条件にさらされると液体材料又は液体状材料を提供する配合物を記載している。
【発明の概要】
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書においてFG配合物とも称される、三次元物体の付加製造に使用可能な配合物であって、
少なくとも1種類の単官能性硬化性材料、
少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料、及び
少なくとも1種類の水混和性非硬化性材料
を含み、
前記硬化性材料の総量が前記配合物の総重量の20重量%以下であり、且つ、前記少なくとも1種類の単官能性硬化性材料の総重量と前記少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料の総重量との重量比が1:1~10:1の範囲である、
前記配合物が提供される。
【0028】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記少なくとも1種類の単官能性硬化性材料の総量は、前記配合物の総重量の1~10重量%、3~10重量%、又は5~10重量%の範囲である。
【0029】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料の総量は、前記配合物の総重量の1~5重量%の範囲である。
【0030】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記少なくとも1種類の親水性多官能性硬化性材料は、単独で硬化された場合に、水不溶性の材料を提供する。
【0031】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記単官能性硬化性材料のうちの少なくとも1種類は、親水性単官能性硬化性材料を含む。
【0032】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記単官能性硬化性材料のうちの少なくとも1種類は、ヒドロキシアルキル部分及び/又はアルキレングリコール部分を含む。
【0033】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記親水性多官能性硬化性材料のうちの少なくとも1種類は、1又は複数のアルキレングリコール部分を含む。
【0034】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記少なくとも1種類の非硬化性材料は、水溶性材料又は水混和性材料である。
【0035】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記少なくとも1種類の非硬化性材料はポリマー材料を含む。
【0036】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、少なくとも1種類の非硬化性材料は非ポリマー性材料をさらに含む。
【0037】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記少なくとも1種類のポリマー性非硬化性材料の総重量と少なくとも1種類の非ポリマー性非硬化性材料の総重量との重量比は、2:1~1:2の範囲である。
【0038】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、3~10重量%の量の前記少なくとも1種類の単官能性硬化性材料、3~5重量%の量の前記少なくとも1種類の多官能性硬化性材料、30~60重量%の量の少なくとも1種類のポリマー非硬化性材料、及び30~60重量%の量の少なくとも1種類の非ポリマー性非硬化性材料を含み、前記量非硬化性材料の総量が少なくとも80重量%である。
【0039】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、水を含まない。
【0040】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、ブルックフィールド粘度計を使用して測定された場合、75℃で8~40センチポアズの粘度を有することを特徴とする。
【0041】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、付加製造は、3Dインクジェット印刷である。
【0042】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、硬化された場合に10~100kPa又は10~80kPaのヤング率を有することを特徴とする。
【0043】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、硬化された場合に、陽圧の印加時に流動可能であるゲル材料を与えることを特徴とする。
【0044】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、上記圧力は、0.1~1.5バール、又は0.2~1.2バール、又は0.2~1バールの範囲である。
【0045】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記硬化性材料の各々はUV硬化性材料である。
【0046】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、前記硬化性材料の各々はアクリル材料である。
【0047】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は光開始剤をさらに含む。
【0048】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、光開始剤の量は配合物の総重量の2重量%以下である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、物体の形状に対応する構成されたパターンに沿って複数の層を順次形成し、それにより前記物体を形成することを含む、三次元物体の付加製造方法であって、
前記層のうちの少なくともいくつかの層の形成が、少なくとも2種類の造形材料配合物を吐出(dispense)することを含み、前記少なくとも2種類の造形材料配合物が、硬化条件にさらされた場合に硬化したモデリング材料Mを形成するモデリング材料配合物M、及び前記硬化条件にさらされた場合に硬化した支持体材料FGを形成する本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかのFG配合物を含む、前記方法が提供される。
【0050】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、吐出は、硬化したモデリング材料Mが少なくとも1つの中空構造を形成し、材料FGが少なくとも部分的には前記中空構造内に配置(enclose)されるように行われる。
【0051】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、中空構造は、管状構造、分岐管状構造、及び互いに絡み合った複数の管状構造から選択される。
【0052】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、管状構造のうちの少なくとも1つの直径は1cm未満である。
【0053】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、材料FGは中空構造内に完全に配置されている。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、空洞を有する三次元物体の付加製造方法であって、
前記物体と犠牲物体とが結合した形状に対応する構成パターンに沿って複数の層を、前記犠牲物体が犠牲シェルによって囲まれ、前記犠牲シェルが前記空洞の中に配置(enclose)されるように、順次形成すること、及び、
前記犠牲物体及び前記犠牲シェルを前記空洞から除去すること、を含み、
前記犠牲物体がモデリング材料Mを含み、前記犠牲シェルがそれぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載のFG配合物で形成された支持体材料FGで作製される、前記方法が提供される。
【0055】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、犠牲物体は前記材料FGをも含み、前記材料FGはモデリング材料Mによって補強される。
【0056】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、モデリング材料Mは、犠牲物体の体積の約60%~約80%を占める。
【0057】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、以下では、例示的な方法及び/又は材料について説明する。矛盾する場合には、本特許明細書(定義を含む)が優先する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0058】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動的に、又はそれらの組合せで実行又は完了することを含み得る。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、若しくはファームウェアによって実施することができ、又は、オペレーティングシステムを使用したそれらの組合せによって実施することができる。
【0059】
例えば、本発明の実施形態の選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装することができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態の選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的な実施形態の1又は複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。所望により、データプロセッサは、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば、磁気ハードディスク及び/又はリムーバブルメディアを含む。所望により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及び/又はキーボード又はマウスなどのユーザ入力装置もまた、所望により提供される。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として、本明細書に記載されている。ここで、具体的に図面の詳細を参照するにあって、示されている詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであることを強調しておく。この点に関して、図面を用いてなされた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1A】本発明のいくつかの実施形態の付加製造システムの概略図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態の付加製造システムの概略図である。
図1C】本発明のいくつかの実施形態の付加製造システムの概略図である。
図1D】本発明のいくつかの実施形態の付加製造システムの概略図である。
図2A】本発明のいくつかの実施形態の印刷ヘッドの概略図である。
図2B】本発明のいくつかの実施形態の印刷ヘッドの概略図である。
図2C】本発明のいくつかの実施形態の印刷ヘッドの概略図である。
図3A】本発明のいくつかの実施形態の座標変換を示す概略図である。
図3B】本発明のいくつかの実施形態の座標変換を示す概略図である
図4】本発明の様々な例示的な実施形態の三次元物体のAMに適した方法のフローチャート図である。
図5A】例示的なFG配合物で作製されたDMコアと、Agilus(商標)モデリング配合物Mのグリッドと、材料MとしてのAgilus(商標)で作製されたコーティング(約1mm)とを有する印刷された物体の写真を示す。
図5B図5Aと同じ物体を2%NaOH溶液に浸漬した写真を示す。
図5C】硬化した材料FGが完全に溶解された写真を示す。
図6A】本発明の実施形態のいくつかの例示的な配合物を使用する付加製造法において実施することができるデジタル材料モードの概略図を示す。
図6B】本発明の実施形態のいくつかの例示的な配合物を使用する付加製造法において実施することができるデジタル材料モードの概略図を示す。
図7A】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験で造形された「犬の骨」モデルの概略図を示す。
図7B】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験で造形された「犬の骨」モデルの概略図を示す。
図7C】本発明のいくつかの実施形態に従って行われた実験で造形された「犬の骨」モデルの概略図を示す。
図8】モデルリング配合物MとしてAgilus(商標)配合物を用い、支持体材料配合物として、本実施形態の例示的FG配合物、SUP706、又は液体配合物Lを用いて調製した犬の骨のモデルの引裂抵抗性を示す比較プロットを示す。
図9】中空構造を有するモデルからの本実施形態のいくつかのFG材料の除去を示す一連の写真を示す。
図10】中空構造を有するモデルからの本実施形態のいくつかのFG材料の除去を示す一連の写真を示す。
図11】中空構造を有するモデルからの本実施形態のいくつかのFG材料の除去を示す一連の写真を示す。
図12A】本発明のいくつかの実施形態の管状構造の概略図である。
図12B】本発明のいくつかの実施形態の管状構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、いくつかの実施形態では、付加製造に関し、より具体的には、限定するものではないが、硬化された場合に弱いゲルの特性を有することを特徴とする材料を提供する硬化性配合物、及び硬化性配合物を使用する三次元物体の付加製造に関する。
【0063】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される構成要素及び/又は方法の構成及び配置の詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0064】
本発明者らは、三次元物体を造形するための現在知られている付加製造プロセスを実施する間に、入り組んだ幾何学的形状、例えば、空洞、囲まれた容積(enclosed volume)、薄い及び/又は絡み合った及び/又は分岐した中空管状構造(例えば、パイプ、トンネル)、並びに、狭い開口部を特徴とするか又は完全に囲まれたスポンジ状構造などの中空構造を含む幾何学的形状を有する部分の形成及び洗浄において問題が見受けられることに気付いた。このような複雑な形状を特徴とする非限定的な例示的物体は、血管、骨の内側部分、及び心臓などの身体器官の構造を特徴とする物体である。
【0065】
より具体的には、発明者らは、例えば、3Dインクジェット印刷を使用してこのような物体を造形する場合、空洞、囲まれた容積、絡み合った及び分岐した管、パイプ及び/又はトンネルシステムなどの物体の複雑な部分に、通常は支持体材料(通常、ゲルの特性を特徴とする材料)が充填され、それによって、物体造形時における従来の機械的及び/又は化学的技術による支持体材料の除去は、その実行が困難となり、非効率的で時間がかかり、加えて、支持体材料の除去が、複雑な部分及び/又は物体全体に損傷を与えることに気付いた。
【0066】
水ジェット及び圧縮空気などの支持体材料除去のための機械的技術は、支持体材料に対するジェットの物理的到達可能性が限定的であり、支持体材料の完全な除去に必要な印加圧力が物体を損傷する可能性があるため、囲まれた又は部分的に囲まれた中空構造の場合には非効率的である。洗浄溶液との接触時の支持体材料の溶解を含む支持体材料除去のための化学的技術は、囲まれた又は部分的に囲まれた中空構造の場合には、洗浄溶液を物体のこれらの部分に拡散させる必要があるため、非効率的である。
【0067】
本明細書の上記で論じられるように、現在実施されている支持体材料配合物は、通常、硬化された場合にゲル材料又はゲル様材料を形成する硬化性材料及び非硬化性材料を含む。
【0068】
本明細書及び当技術分野において、「ゲル」という用語は、通常、それらの間が化学的又は物理的に連結された繊維状構造からなる三次元固体ネットワーク、及びこのネットワーク内に封入された液相を含む、半固体材料としばしば見なされる材料を表す。ゲルは、通常、固体の稠度を有すること(例えば、非流体であること)を特徴とし、比較的低い引張強度、比較的低いせん断弾性率(例えば、100kPa未満)、及び1未満のせん断損失弾性率対せん断貯蔵弾性率(tanデルタ、G’’/G’)値を特徴とする。ゲルは、0.5バール以上、好ましくは1バール以上、又はそれ以上の陽圧にさらされた場合に流動可能であり、あるいは、1バール未満若しくは0.5バール未満、又は0.3バール以下の圧力にさらされた場合に非流動性であると特徴付けられ得る。
【0069】
本実施形態のゲル状材料は、通常、軟質材料であり、これはゲル又は固体であってもよく、本明細書に記載されるように、ゲルの機械的特性及びレオロジー特性を有することを特徴とする。
【0070】
現在実施されている支持体材料配合物は、通常、硬化性材料と非硬化性材料との混合物を含み、硬化された場合に、本明細書でゲル状支持体材料又はゲル支持体材料(例えば、材料S)とも呼ばれる、硬化した支持体材料を形成する。
【0071】
現在実施されている硬化した支持体材料のほとんどは、通常、本明細書で定義されるように、水混和性、又は水分散性若しくは水溶性である。
【0072】
国際特許出願公開第2019/021291号、同第2019/021292号、及び同第2019/021295号は、いずれも本譲受人によるものであり、三次元物体の付加製造において使用可能であり、硬化条件にさらされると、液体材料又は液体状材料を提供する配合物を記載している。
【0073】
本発明者らは、硬化条件にさらされると弱いゲル材料を形成する硬化性配合物を利用することに想到した。
【0074】
本明細書及び当技術分野において、「ゲル」という用語は、通常、それらの間が化学的又は物理的に連結された繊維状構造からなる三次元固体ネットワーク、及びこのネットワーク内に封入された液相を含む、半固体材料としばしば見なされる材料を表す。ゲルは、通常、固体の稠度を有すること(例えば、非流体であること)を特徴とし、比較的低い引張強度、比較的低いせん断弾性率(例えば、100kPa未満)、及び1未満のせん断損失弾性率対せん断貯蔵弾性率(tanデルタ、G’’/G’)値を特徴とする。ゲルは、通常、0.5バール以上、好ましくは少なくとも1バール以上、又はそれ以上の陽圧にさらされた場合に流動可能であり、1バール未満若しくは0.5バール未満、又は0.3バール以下の圧力にさらされた場合に非流動性であると特徴付けられる。
【0075】
ゲル状材料は、通常、軟質材料であり、ゲル又は固体であってもよく、ゲルの機械的特性及びレオロジー特性を有することを特徴とする。「弱いゲル」とは、室温でのゲルの稠度を有すること、及びゲルの中間から下の範囲のせん断弾性率、すなわち、80kPa未満、又は50kPa未満若しくはそれ以下のせん断弾性率を有することを特徴とする材料を意味する。
【0076】
本発明者らは、このような弱いゲルを提供する配合物であって、さらに、比較的低い圧力、例えば、0.1bar~1.5bar、0.2bar~1.5bar、0.1bar~1.2bar、0.2bar~1.2bar、0.2bar~1bar、0.5bar~1.5bar、0.5bar~1bar、0.1bar~0.8bar、0.2bar~0.8bar、0.5bar~0.8bar、0.1bar~0.5bar、又は0.2bar~0.5barの範囲内(これらの間の任意の中間値及び部分範囲を含む)にさらされた場合に流動性を示す配合物を考案した。このような配合物は、本明細書では、FG配合物若しくは配合物FG、又は流動ゲル配合物とも呼ばれる。これらの配合物が硬化された場合に形成される材料は、本明細書では、材料FG若しくはFG材料、又は流動ゲル材料若しくは流動ゲル硬化材料と呼ばれる。
【0077】
本明細書全体を通して、「印刷された物体」又は「造形された物体」という用語は、付加製造プロセスの生成物を表す。この用語は、支持体材料(例えば、所望により支持体材料Sと組み合わせたFG材料)の除去前に、本明細書に記載される方法によって得られる生成物を示す。したがって、印刷された物体は、硬化された(例えば、キュアされた)モデリング材料及び硬化された(例えば、キュアされた)支持体材料で作製される。
【0078】
本明細書全体を通して使用される「印刷された物体」という用語は、印刷された物体全体又はその一部を指す。
【0079】
本明細書で使用される「モデル物体」、「最終物体」、「物体」、及び「モデル」という用語は、製造プロセスの最終生成物を表す。この用語は、支持体材料の除去後に、本明細書に記載される方法によって得られる生成物を示す。したがって、モデルは、特に明記しない限り、硬化した(固化した、キュアした)モデリング材料から本質的になる。
【0080】
本明細書全体を通して使用される「モデル」、「モデル物体」、「最終物体」、及び「物体」という用語は、物体全体又はその一部を指す。
【0081】
物体における「中空構造」とは、物体が、内部に空洞(非中実部分)を有する1又は複数の部分を含むことを意味する。空洞は、固体材料によって完全に又は部分的に囲まれ得る。部分的に囲まれている場合、空洞は、物体の最外面への狭い開口部(例えば、直径10mm未満)を有することを特徴とし得る。空洞は、例えば、管状、球形、円筒形、直方体、角錐形などの任意の形状であってもよく、より複雑な形状、例えば、限定するものではないが、例えば、絡み合った及び/又は分岐した形状(例えば、絡み合った及び/又は分岐したトンネル及び/又はパイプ)を含む、単連結でない形状であってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、空洞は、ミリメートルスケール、すなわち、0.1mm~10mm、0.1mm~8mm、0.1mm~5mm、又は1mm~5mmのうちの少なくとも1つの寸法を有する。
【0083】
例示的な中空構造としては、本明細書で定義されるように、分岐した及び/又は絡み合った構造であり得、その少なくとも一部にミリメートルスケールの直径を有する、チューブ、パイプ、及びトンネルなどの細い管状構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態では、空洞は、完全に囲まれており、すなわち、それは、物体を取り囲む環境にさらされない物体内の内部中空構造である。このような内部中空構造は、本明細書に記載されるように、任意の形状/幾何学的形状とすることができ、その寸法は、本明細書で定義されるように、ミリメートルスケールから、数センチメートルの範囲(例えば、1~20cm、1~10cm、又は1~5cm)とすることができ、30cm以下、40cm以下、50cm以下、及びそれ以上の寸法以下の範囲までとすることができる。
【0085】
例示的な前記物体としては、密封ボトル、密封カップ、及び任意の他の密封容器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の実施形態は、本明細書で定義されるような流動ゲル(FG)材料を提供する新規な配合物に関し、本明細書に記載される三次元物体の付加製造においてこれらの配合物を使用するシステム及び方法に関する。本実施形態の方法及びシステムは、積層方式のコンピュータオブジェクトデータに基づいて、物体の形状に対応する構成されたパターンに沿って複数の層を形成することによって三次元物体を製造する。コンピュータオブジェクトデータは、限定するものではないが、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットを含む、任意の既知のフォーマットとすることができる。
【0087】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化する付加製造装置によって形成される。走査中、上記装置は、二次元の層又は表面上の複数の目標位置を巡回し、各目標位置又は目標位置のグループについて、目標位置又は目標位置のグループが造形材料配合物によって占められるべきかどうか、及び、どのタイプの造形材料配合物がそこに供給されるべきかを決定する。上記決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、三次元印刷を含み、より好ましくは、三次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態において、造形材料配合物は、1又は複数のノズルアレイを有する吐出ヘッドから吐出され、支持体構造上に層状に造形材料配合物を堆積させる。すなわち、AM装置は、占められるべき目標位置に造形材料配合物を吐出し、他の目標位置を空にする。上記装置は、通常、複数の吐出ヘッドを含み、その各々は、ノズルアレイから又は異なるノズルアレイから異なる造形材料配合物を吐出するように構成することができる。したがって、異なる目標位置は、異なる造形材料配合物によって占められ得る。
【0089】
本明細書全体を通して、本発明のいくつかの実施形態は、付加製造が3Dインクジェット印刷であるという文脈で説明される。しかしながら、以下でさらに詳細に説明するように、SLA及びDLPなどの他の付加製造プロセスが考えられるが、これらに限定されない。
【0090】
未硬化の造形材料は、1種類又は複数種類のモデリング材料配合物を含むことができ、硬化時に物体の異なる部分が、異なる硬化したモデリング配合物又はそれらの異なる組合せで作製され、したがって、異なる硬化したモデリング材料又は硬化したモデリング材料の異なる混合物で作製されるように吐出することができる。
【0091】
造形材料を形成する配合物(モデリング材料配合物及び所望により支持材配合物)は、硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされると硬化した(例えば、キュアした、固化した)材料を形成する1種類又は複数種類の硬化性材料を含む。
【0092】
本明細書全体を通して、「硬化性材料」は、本明細書に記載される硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされると、固化又は硬化して硬化材料を形成する化合物(通常、モノマー又はオリゴマー化合物、さらには所望により、ポリマー材料)である。硬化性材料は、通常、適切な硬化条件、通常、エネルギー源にさらされた場合に重合及び/又は架橋する重合性材料である。
【0093】
本実施形態の硬化性材料は、硬化エネルギーであり得る硬化条件、及び/又は化学試薬との接触又は環境への曝露などの別の硬化条件にさらされている間に、硬化又は固化(キュア)することができる。
【0094】
本明細書で使用される「硬化性」及び「固化可能な」という用語は互換的である。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の硬化性材料は、重合すると硬化し、本明細書では重合性材料とも呼ばれる。
【0096】
重合は、例えば、フリーラジカル重合、カチオン重合、又はアニオン重合であってもよく、いずれも、例えば、本明細書に記載されるような放射線や熱などの硬化エネルギー、又は硬化エネルギー以外の硬化条件にさらされた場合に誘導され得る。
【0097】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかでは、硬化性材料は、本明細書に記載されるように放射線への曝露時に重合及び/又は架橋する光重合性材料であり、いくつかの実施形態では、硬化性材料は、本明細書に記載されるようにUV放射線又はUV-vis放射線への曝露時に重合及び/又は架橋するUV硬化性材料である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される硬化性材料は、光誘起フリーラジカル重合を介して重合する光重合性材料である。あるいは、硬化性材料は、光誘起カチオン重合を介して重合する光重合性材料である。
【0099】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかでは、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー又は短鎖ポリマーであり得、いずれも本明細書に記載されるように重合性及び/又は架橋性である。
【0100】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかでは、硬化性材料が硬化条件(例えば、放射線)にさらされると、鎖伸長及び架橋のいずれか1つ又はその組合せによって硬化(固化、キュア)する。
【0101】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされた場合に、重合反応時にポリマー材料を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書ではモノマー硬化性材料とも呼ばれる。
【0102】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件(例えば、硬化エネルギー)にさらされた場合に、重合反応時にポリマー材料を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。このような硬化性材料は、本明細書ではオリゴマー硬化性材料とも呼ばれる。
【0103】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、硬化性材料は、モノマーであろうとオリゴマーであろうと、単官能性の硬化性材料又は多官能性の硬化性材料であり得る。
【0104】
本明細書において、単官能性硬化性材料は、硬化エネルギー(例えば、放射線)などの硬化条件にさらされた場合に重合し得る1つの官能基を含む。
【0105】
多官能性硬化性材料は、硬化エネルギーにさらされた場合に重合することができる2個以上の官能基、例えば、2個、3個、4個、又はそれ以上の官能基を含む。多官能性硬化性材料は、例えば、それぞれに重合することができる2個、3個、4個の基を含む二官能性、三官能性、又は四官能性の硬化性材料であり得る。多官能性硬化性材料中の2つ以上の官能基は、通常、本明細書で定義されるように、連結部分によって互いに連結されている。連結部分がオリゴマー又はポリマー部分である場合、多官能基はオリゴマー又はポリマー多官能性硬化性材料である。多官能性硬化性材料は、硬化エネルギーにさらされた場合に重合することができ、及び/又は架橋剤として作用することができる。
【0106】
最終的な三次元物体は、モデリング材料配合物、又はモデリング材料配合物の組合せ若しくはモデリング材料配合物及び支持体材料配合物の組合せ、又はそれらの改変物(例えば、硬化後)で作製される。これらの操作はすべて、固体自由形状造形の当業者に周知である。
【0107】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、物体は、2種類以上の異なる造形材料配合物を吐出することによって製造され、各配合物は、AMの異なる吐出ヘッドからのものである。造形材料配合物は、所望により、好ましくは、印刷ヘッドの同じパス中に層状に堆積される。層内の配合物及び配合物の組合せは、物体の所望の特性に従って選択される。
【0108】
本明細書全体を通して、「未硬化の造形材料」又は「造形材料配合物」という語句は、共に、本明細書に記載されるように、層を順次形成するように造形プロセス中に吐出される材料を表す。この語句は、印刷された物体を形成するように吐出される未硬化材料(本明細書では、造形材料配合物とも呼ばれる)、すなわち、1種類又は複数種類の未硬化のモデリング材料配合物、及び、支持体を形成するように吐出される未硬化材料、すなわち、未硬化の支持体材料配合物を包含する。
【0109】
造形材料配合物の種類は、モデリング材料配合物及び支持体材料配合物という2つの主要なカテゴリーに分類することができる。支持体材料配合物は、造形プロセスの間に物体又は物体の部分を支持するため、及び/又は他の目的、例えば、中空又は多孔性の物体を形成するための支持マトリックス又は構造として機能し得る。支持体構造は、さらに、例えば、さらなる支持強度のために、モデリング材料配合要素を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態によれば、硬化条件へさらされた場合に液体材料若しくは液体状材料を提供する造形材料配合物もまた、支持体材料配合物として分類することができる。
【0110】
本明細書全体を通して、互換的に用いられる「キュアしたモデリング材料」及び「硬化したモデリング材料」又は単に「モデリング材料」という語句は、吐出された造形材料を硬化させ、支持体材料を除去した後に、本明細書で定義されるように、モデル物体を形成する造形材料の要素を表す。キュアした又は硬化したモデリング材料は、本明細書に記載の方法で使用されるモデリング材料配合物に応じて、単一の硬化材料又は2種類以上の硬化材料の混合物であり得る。本発明のいくつかの実施形態によれば、硬化条件にさらされた場合に液体材料若しくは液体状材料を提供する造形材料配合物もまた、モデリング材料配合物として分類することができる。
【0111】
本明細書全体を通して、本明細書において互換的に「モデリング配合物」とも呼ばれる「モデリング材料配合物」という語句は、本明細書に記載されるように、モデル物体を形成するように吐出される未硬化の造形材料の一部を表す。モデリング配合物は、未硬化のモデリング配合物であり、硬化条件にさらされると、最終物体又はその一部を形成する。
【0112】
未硬化の造形材料は、1種類又は複数種類のモデリング配合物を含むことができ、モデル物体の異なる部分が、異なるモデリング配合物を硬化させた場合に作製され、したがって、異なる硬化したモデリング材料又は硬化したモデリング材料の異なる混合物で作製されるように吐出することができる。
【0113】
本明細書全体を通して、「硬化した支持体材料」という語句は、本明細書ではまた、互換的に「硬化した支持体材料」又は単に「支持体材料」と呼ばれ、造形プロセス中に造形された最終物体を支持することを意図し、プロセスが完了して硬化したモデリング材料が得られると除去される造形材料の一部を表す。
【0114】
本明細書全体を通して、本明細書では互換的に「支持体配合物」又は単に「配合物」とも呼ばれる「支持体材料配合物」という語句は、本明細書に記載されるように、支持体材料を形成するように吐出される未硬化の造形材料の一部を表す。支持体材料配合物は未硬化配合物である。支持体材料配合物が硬化性配合物である場合、それは、硬化条件にさらされると、硬化した支持体材料を形成する。
【0115】
支持体材料は、液体材料若しくは液体状材料、あるいは、硬化した材料、通常、ゲル材料若しくはゲル様材料のいずれかであってもよく、本明細書では犠牲材料とも呼ばれ、それは、層が吐出され硬化エネルギーにさらされた後に除去することができ、それによって最終物体の形状があらわになる。
【0116】
現在実施されている支持体材料は、通常、硬化性材料と非硬化性材料との混合物を含み、本明細書ではゲル状支持体材料又はゲル支持体材料とも呼ばれる。
【0117】
現在実施されている支持体材料は、通常、水混和性、又は水分散性若しくは水溶性である。
【0118】
本明細書全体を通して、「水混和性」という用語は、少なくとも部分的に水に溶解可能又は分散可能である材料、すなわち、分子の少なくとも50%が室温での混合時に水中に移動する材料を表す。この用語は、「水溶性」及び「水分散性」という用語を包含する。
【0119】
本明細書全体を通して、「水溶性」という用語は、室温で等しい体積又は重量の水と混合した場合に、均一な溶液が形成される材料を表す。
【0120】
本明細書全体を通して、「水分散性」という用語は、室温で等しい体積又は重量の水と混合した場合に、均一な分散物を形成する材料を表す。
【0121】
本明細書全体を通して、「溶解速度」という語句は、物質が液体媒体に溶解する速度を表す。溶解速度は、本実施形態の文脈において、一定量の支持体材料を溶解するのに必要な時間によって決定することができる。測定された時間は、本明細書では「溶解時間」と呼ばれる。
【0122】
本明細書全体を通して、語句「重量パーセント」が配合物(例えば、造形材料配合物)の実施形態の文脈において示される場合は常に、それはそれぞれの配合物の総重量の重量パーセントを意味する。
【0123】
「重量パーセント」という語句は、本明細書では「重量%」又は「wt%」とも呼ばれる。
【0124】
流動ゲル配合物:
本発明のいくつかの実施形態のうちの1つの態様によれば、三次元物体の付加製造における支持体材料配合物として用いることができる配合物が提供される。本発明のいくつかの実施形態によれば、本配合物は、硬化条件にさらされると、本明細書で定義されるように、弱いゲルの特性を有することを特徴とする材料を提供する。本発明のいくつかの実施形態によれば、本配合物は、硬化条件にさらされると、本明細書で定義されるように、流動ゲル又は流動性ゲルの特性を有することを特徴とする材料を提供する。本配合物は、本明細書では「流動ゲル配合物」又は「FG配合物」又は「FLG配合物」又は「配合物FG」とも呼ばれる。
【0125】
本発明の実施形態によれば、本配合物は、少なくとも1種類の単官能性硬化性材料、少なくとも1種類の多官能性硬化性材料、及び少なくとも1種類の水混和性非硬化性材料を含む。
【0126】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、水を含まない。
【0127】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいては、支持体材料配合物は、シリコンポリエーテルを含まない。
【0128】
「~を含まない」とは、示された材料(例えば、水)の量が、重量で2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満、又は0.01%未満であり、さらに少ないか又はゼロであり得ることを意味する。
【0129】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、硬化性材料の総量は、本配合物の総重量の20重量%以下であり、例えば、配合物の総重量の20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下であり得る。
【0130】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、単官能性硬化性材料の総重量と多官能性硬化性材料の総重量との重量比は、1:1~10:1の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含み、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:9、1:9、又は1:10であり得る。
【0131】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、1種類又は複数種類の単官能性硬化性材料の総量は、本配合物の総重量の1~10重量%、3~10重量%、又は5~10重量%の範囲であり、その間の任意の中間値及び部分範囲を含む。
【0132】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、1種類又は複数種類の多官能性硬化性材料の総量は、本配合物の総重量の1~5重量%の範囲である。
【0133】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、単官能性硬化性材料のうちの1種類又は複数種類、又はそのそれぞれが、本明細書で定義されるように、親水性材料である。
【0134】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、単官能性硬化性材料のうちの1種類又は複数種類、又はそのそれぞれが、本明細書で定義されるように、水混和性材料又は水溶性材料である。
【0135】
本明細書全体を通して、「親水性」という用語は、通常、水素結合による水分子との一時的な結合の形成の主要因である化合物又は化合物の一部(例えば、化合物中の化学基)の物理的特性を表す。
【0136】
親水性の化合物又は化合物の一部(例えば、化合物中の化学基)は、通常、電荷分極しており、水素結合が可能なものである。
【0137】
親水性の化合物又は基は、通常、水分子と強い水素結合を形成する1又は複数の電子供与性ヘテロ原子を含む。このようなヘテロ原子としては、酸素及び窒素が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、親水性の化合物又は基における炭素原子の数とヘテロ原子の数との比は10:1以下であり、例えば、8:1、より好ましくは、7:1、6:1、5:1、又は4:1以下であり得る。化合物及び基の親水性は、化合物又は化学基における疎水性部分と親水性部分との間の比に起因することもあり、上記の比のみに依存するものではないことに留意されたい。
【0138】
親水性化合物は、油又は他の疎水性溶媒よりも水に容易に溶解する。親水性化合物は、例えば、LogPがオクタノール層及び水相で決定される場合に、50℃未満、40℃未満、35℃未満、又は30℃未満の温度(例えば、25℃)で、0.5未満のLogPを有するものとして決定することができる。
【0139】
あるいは、親水性化合物は、例えば、ハンセンパラメータによって、溶媒である水との相互作用について計算した場合に、50℃未満、40℃未満、35℃未満、又は30℃未満の温度(例えば、25℃)で、1より高い相対エネルギー距離(RED)を有するものとして決定することができる。
【0140】
親水性化合物は、化合物を親水性にする1又は複数の親水性基を有することができる。このような基は、通常、酸素及び窒素などの1又は複数の電子供与性ヘテロ原子を含む極性基である。親水性基は、例えば、モノマー単官能性硬化性材料の1又は複数の置換基、又はオリゴマー単官能性硬化性材料の2つ以上の置換基又は遮断基であり得る。親水性基は、例えば、モノマー多官能性硬化性材料の1又は複数の置換基、又はモノマー多官能性硬化性部分の連結部分の1又は複数の置換基又は遮断基であり得る。親水性基は、例えば、オリゴマー多官能性硬化性材料中のオリゴマー連結部分の2つ以上の置換基又は遮断基であり得る。
【0141】
例示的な親水性基としては、電子供与性ヘテロ原子、カルボキシレート、チオカルボキシレート、オキソ(=O)、直鎖アミド、ヒドロキシ、(C1~4)アルコキシ、(C1~4)アルコール、(例えば、本明細書で定義されるように、ヘテロ原子に対する炭素原子の比を有する)ヘテロアリサイクリック、ラクトンなどの環状カルボキシレート、ラクタムなどの環状アミド、カルバメート、チオカルバメート、シアヌレート、イソシアヌレート、チオシアヌレート、尿素、チオ尿素、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)、及び親水性ポリマー部分又は親水性オリゴマー部分(これらの用語は、本明細書において以下で定義される)、並びにこれらの組合せ(例えば、示された親水性基のうちの2つ以上を含む親水性基)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
いくつかの実施形態では、親水性基は、電子供与性ヘテロ原子、カルボキシレート、ヘテロアリサイクリック、アルキレングリコール、及び/又は親水性オリゴマー部分であるか、又はそれを含む。
【0143】
本明細書で使用される親水性ポリマー部分又は親水性オリゴマー部分は、本明細書で定義されるように、親水性基を含むポリマー鎖を含む。親水性基は、例えば、ポリ(アルキレングリコール)又は親水性ペンダント基のように、ポリマー部分の主鎖内のヘテロ原子であり得る。本発明のいくつかの実施形態によれば、ポリマー部分又はオリゴマー部分は、好ましくは、10~40個の反復骨格単位を有し、より好ましくは、10~20個の反復骨格単位を有する。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態の親水性単官能性硬化性材料は、式Iで表されるビニル含有化合物であり得る。
【0145】
【化1】
【0146】
式中、R及びRの少なくとも1つは、本明細書で定義されるように、親水性基であり、及び/又は親水性基を含む。
【0147】
式I中の(=CH)基は、重合性基を表し、通常、材料がUV硬化性材料であるように、UV硬化性基である。
【0148】
例えば、Rは、本明細書で定義されるように、親水性基であり、Rは、非親水性基、例えば、水素、C(1~4)アルキル、C(1~4)アルコキシ、又は本化合物が本明細書で定義されるように親水性である限り、任意の他の置換基である。
【0149】
いくつかの実施形態では、Rは、カルボキシレート、-C(=O)-OR’基であり、Rは、水素であり、本化合物は、単官能性アクリレートモノマーである。これらの実施形態のいくつかにおいて、Rは、メチルであり、本化合物は、単官能性メタクリレートモノマーである。他の実施形態では、Rは、親水性置換基、すなわち、本明細書に記載されるように、親水性基であるか、本明細書に記載されるように、親水性基を含む置換基である。
【0150】
これらの実施形態のいずれかの一部において、カルボキシレート基-C(=O)-OR’は、親水性基であるR’を含む。例示的なR’基には、本明細書に記載されるように、(モルホリン、テトラヒドロフラン、及びオキサリジンなどの電子供与性ヘテロ原子に対する炭素原子の比が5:1以下である)ヘテロアリサイクリック基、ヒドロキシル、C(1~4)アルコキシ、チオール、アルキレングリコール、又はポリマー部分若しくはオリゴマー部分が含まれるが、これらに限定されない。例示的なモノマー単官能性アクリレートは、アクリロイルモルホリン(ACMO)である。
【0151】
いくつかの実施形態では、Rはアミドであり、いくつかの実施形態では、ラクタムなどの環状アミドであり、本化合物はビニルラクタムである。いくつかの実施形態では、Rはラクトンなどの環状カルボキシレートであり、本化合物はビニルラクトンである。
【0152】
及びRの一方又は両方が、ポリマー部分又はオリゴマー部分、例えば、本明細書で定義されるように、親水性オリゴマー部分を含む場合、式Iの単官能性硬化性化合物は、例示的なオリゴマー単官能性硬化性材料である。それ以外の場合は、それは例示的なモノマー単官能性硬化性材料である。
【0153】
例示的なオリゴマー型単官能性硬化性材料としては、ポリエチレングリコールのモノ-(メタ)アクリル化ウレタンオリゴマー誘導体、モノ-(メタ)アクリル化ポリオールオリゴマー、親水性置換基を有するモノ-(メタ)アクリル化オリゴマー、及びモノ-(メタ)アクリル化ポリエチレングリコール(例えば、メトキシポリエチレングリコール)が挙げられるが、これに限定されない。(メタ)アクリレート化は、オリゴマー又はポリマーがアクリレート官能基又はメタクリレート官能基を含むことを意味する。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義されるように、Rはカルボキシレートであり、R’はポリ(アルキレングリコール)である。例示的な親水性単官能性硬化性材料は、ヘキサ(エチレングリコール)アクリレート(6-PEA)である。
【0155】
いくつかの実施形態では、Rは、本明細書で定義されるように、親水性ヘテロアリサイクリック基である。例示的な親水性単官能性硬化性材料は、ACMOである。
【0156】
いくつかの実施形態では、2種類以上の単官能性硬化性材料が存在する場合、単官能性硬化性材料のすべてが親水性材料及び/又は水溶性材料又は水混和性材料であり、いくつかの実施形態では、これらの材料のうちの1つのみが親水性材料及び/又は水溶性材料又は水混和性材料である。
【0157】
いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類の単官能性硬化性材料は、単独で硬化された場合に、水溶性の材料を提供する。例示的な材料は、ACMOである。
【0158】
いくつかの実施形態では、単官能性硬化性材料のそれぞれは、単独で硬化された場合に、水溶性の材料を提供する。
【0159】
いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類の単官能性硬化性材料は、単独で硬化された場合に、水不溶性の材料を提供する。例示的な材料としては、PEA6及びHEAAが挙げられる。
【0160】
いくつかの実施形態では、単官能性硬化性材料のそれぞれは、単独で硬化された場合に、水不溶性の材料を提供する。
【0161】
いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類の単官能性硬化性材料は、単独で硬化された場合に水溶性の材料をもたらし、1種類又は複数種類の単官能性硬化性材料は、単独で硬化された場合に水不溶性の材料を提供する。
【0162】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかでは、単官能性硬化性材料の少なくとも1種類は、ヒドロキシアルキル(例えば、HEAA)及び/又はアルキレングリコール部分(例えば、PEA6などのポリアルキレングリコールアクリレート)を含む硬化性材料である。
【0163】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、1種類又は複数種類の多官能性硬化性材料は、いずれも親水性材料である。
【0164】
本発明のいくつかの実施形態の親水性多官能性硬化性材料は、式IIによって表され得る。
【0165】
【化2】
【0166】
式中、
、R、及びRはそれぞれ独立に、水素、C(1~4)アルキル、又は本明細書で定義されるように、親水性基であり、
、L、及びLはそれぞれ独立に、連結部分であるか、又は存在せず、
及びPはそれぞれ独立に、本明細書で定義されるような親水性基であるか、又は存在せず、
、X、及びXはそれぞれ独立に、C(1~4)アルキル、又は本明細書で定義されるように、親水性基であるか、又は存在せず、
n、m、及びkはそれぞれ、0、1、2、3、又は4であり、
ただし、n+m+kは少なくとも2であり、R、R、R、X、X、X、P、及びPのうちの少なくとも1つは、本明細書で定義されるように、親水性基である。
【0167】
存在する場合に、X、X、及びXのうちの1つ、2つ、又はすべてがオキソである式IIの多官能性硬化性材料は、本明細書の上記で記載されるように、親水性基によってさらに置換され得る多官能性アクリレートである。存在する場合に、R、R、及びRのうちの1つ又は複数がメチルである場合、硬化性材料は多官能性メタクリレートである。
【0168】
存在する場合に、X、X、及びXのうちの1つ、2つ、又はすべてがオキソである多官能性硬化性材料は、アクリレート官能性部分及びメタクリレート官能性部分の組合せを含むことができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、アクリレート多官能性硬化性材料又はメタクリレート多官能性硬化性材料はモノマーであり、したがって、P及びPはいずれもポリマー部分又はオリゴマー部分ではない。これらの実施形態のいくつかでは、P及びPの一方又は両方は、本明細書に記載されるような親水性基、例えば、アルキレングリコール、又は任意の他の親水性連結基、又は本明細書で定義されるように、短鎖(例えば、1~6個の炭素原子)の置換若しくは非置換の炭化水素部分である。
【0170】
いくつかの実施形態では、P及びPの一方又は両方は、本明細書で定義されるようなポリマー部分又はオリゴマー部分であり、硬化性化合物は、オリゴマー多官能性硬化性材料、例えば、X、X、及び/又はXについて本明細書に記載されるように、オリゴマー多官能性アクリレート又はオリゴマー多官能性メタクリレートである。P及びPの両方が存在する場合、Lは、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びそれらの任意の組合せを含む炭化水素などの連結部分であり得る。例示的な硬化性材料としては、エトキシ化リエチレングリコールジアクリレート又はメトキシ化ポリエチレングリコールジアクリレート、及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートが挙げられる。
【0171】
他の非限定的な例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、及び部分的にアクリル化されたポリオールオリゴマーが挙げられる。
【0172】
いくつかの実施形態では、P及びPのうちの1又は複数は、本明細書で定義されるポリ(アルキレングリコール)部分であるか、又はそれを含む。
【0173】
式IIのアクリレート多官能性硬化性材料又はメタクリレート多官能性硬化性材料のいずれかの実施形態のいくつかにおいて、R、R、及びRのうちの1又は複数は、例えば、本明細書の式IにおけるR及びRについて記載されるような親水性基である。これらの実施形態では、P及び/又はPは、存在しても存在しなくてもよく、本明細書で定義されるように、材料が親水性である限り、親水性基であってもよいし、親水性基を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0174】
あるいは、存在する場合、X、X、及びXの1つ、2つ、又はすべては、-O-であり得、したがって、多官能性硬化性材料中の少なくとも1つの官能性部分はビニルエーテルであり得る。
【0175】
いくつかの実施形態では、n及びmはそれぞれ1であり、kは0であり、XはOであり、Xは存在せず、本化合物は、置換されていてもいなくてもよいビニルエーテルである。これらの実施形態のいくつかでは、L、L、L、P、及びPは存在せず、本化合物は単量体ビニルエーテルである。単量体ビニルエーテルの例としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、及びシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
【0176】
いくつかの実施形態において、P及びPは存在せず、L及びLの一方は、1又は複数の親水性基によって置換されたアルキレン鎖である。例示的な硬化性化合物は、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルである。
【0177】
いくつかの実施形態では、P及びPのうちの1又は複数は、本明細書で定義されるように、親水性ポリマー部分又は親水性オリゴマー部分である。いくつかの実施形態では、P及びPのうちの1又は複数は、本明細書で定義されるように、ポリ(アルキレングリコール)部分であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態では、ポリマー部分は、1又は複数のビニルエーテル置換基によって置換される。
【0178】
式IIに関連するいずれかの実施形態のいくつかにおいて、重合性基の置換基であるR、R、及びRのうちの1又は複数は、本明細書の式IにR及びRとして記載される親水性基であり得る。
【0179】
式IIに関するいずれかの実施形態のいくつかでは、P1及びP2がポリマー部分又はオリゴマー部分である場合、この部分は、主鎖内に本明細書で定義される親水性ヘテロ原子を含むことができ、又は主鎖は本明細書に記載されるように、親水性基で置換され得る。
【0180】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料のうちの1又は複数又はすべてが、本明細書で定義される親水性材料である。
【0181】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料のうちの1又は複数又はすべてが、本明細書で定義される水溶性又は水混和性の材料である。
【0182】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料のうちの1又は複数又はすべてが、硬化された場合に、水不溶性である材料を提供する。
【0183】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料のうちの1種類又は複数種類又はすべての種類が、1又は複数のアルキレングリコール部分を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料は、ポリ(アルキレングリコール)部分を含む。
【0184】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料のうちの1又は複数、又はすべてが、二官能性材料である。
【0185】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、多官能性硬化性材料は、ポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートを含むか、又はポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートである。ポリ(アルキレングリコール)ジアクリレートは、20~1000(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)のアルキレングリコール単位を有し得る。
【0186】
例示的な実施形態では、多官能性硬化性材料は、20~1000、100~1000、200~1000、100~800、200~800、又は400~800(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)のエチレングリコール単位を有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含むか、又はそのようなポリ(エチレングリコール)ジアクリレートである。
【0187】
本明細書に記載の本配合物は、非硬化性材料をさらに含む。いくつかの実施形態において、非硬化性材料の総量は、本配合物の総重量の70重量%以下、75.5重量%以下、80重量%以下、又は85重量%以下である。
【0188】
「非硬化性」という用語は、任意の条件下で非重合性である材料、又は、本明細書に記載の単官能性及び多官能性の硬化性材料が硬化し得る条件下、若しくは、本実施形態の物体の造形に使用される任意の条件下で、非硬化性である材料を包含する。このような材料は、通常、重合性基又はUV光重合性基を含まない。いくつかの実施形態では、上記材料は、本明細書に記載の硬化性材料に対して非反応性であり、すなわち、硬化条件を含む造形条件下で、硬化性材料と反応せず、硬化性材料の硬化を妨げることができない。
【0189】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、非硬化性材料は、本明細書で定義されるように、水溶性又は水分散性若しくは水混和性の材料である。
【0190】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、非硬化性材料のうちの1又は複数又はすべてが、水混和性又は水溶性材料である。
【0191】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、1種類又は複数種類の非硬化性材料は、ポリマー材料、例えば、水混和性又は水溶性のポリマー材料である。
【0192】
いくつかの実施形態では、非硬化性材料は、ポリマーの主鎖内に、又はペンダント基として、本明細書で定義される複数の親水性基を含むポリマー材料である。例示的なポリマー材料はポリオールである。いくつかの代表的な例としては、ポリオール3165、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール、ポリグリム、これらのポリマーのエトキシル化形態、及びパラフィン油など、並びにこれらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
例示的な実施形態において、非硬化性ポリマー材料は、ポリ(エチレングリコール)及び/又はポリオール3165を含む。前記ポリマー材料は、任意の分子量を有することができる。
【0194】
いくつかの実施形態では、1種類又は複数種類のポリマー材料及びその量は、本配合物が本明細書に記載されるように、付加製造法に適した粘度を有することを特徴とするように選択される。
【0195】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、ポリマー材料は、500グラム/mol以下、又は600グラム/mol以下のMWを有する。
【0196】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、ポリマー材料は、3000グラム/mol未満、2500グラム/mol未満、2000グラム/mol未満、又は1500グラム/mol未満のMWを有する。
【0197】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、ポリマー材料は、約500グラム/mol~約2500グラム/mol(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)のMWを有する。
【0198】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、1種類又は複数種類の非硬化性材料は、非ポリマー材料、例えば、水溶性又は水混和性の非ポリマー材料を含む。
【0199】
例示的な非硬化性非ポリマー材料としては、プロパンジオール(例えば、本明細書及び当技術分野でプロピレングリコールとも呼ばれる1,2-プロパンジオール)、プロパントリオール、グリセロール、ブチルジグリム(ブチルジグリコールアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、(EDGAc)ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAc;DGMEA)、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(DEGEE)、トリ(プロピレングリコール)メチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGME)、ジ(プロピレングリコール)メチルエーテルアセテート(DPGMEA)、プロピレンカーボネート(1,2-プロパンジオール環状カーボネート、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン)、ジエチレングリコールメチルエーテル(DGME)、ジエチレングリコールメチルエーテル(TGMME)、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME/PM;プロピレングリコールモノメチルエーテル)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、本配合物は、2種類以上の本明細書に記載されるポリマー性水混和性非硬化性材料及び非ポリマー性水混和性非硬化性材料の混合物を含む水混和性非硬化性材料を含む。例示的な混合物は、ポリ(エチレングリコール)、プロパンジオール、グリセロール、及びポリオール3165のようなポリオールのうちの2種類以上を含み得る。
【0201】
これらの実施形態のいくつかにおいて、1種類又は複数種類のポリマー性非硬化性材料の総重量と1種類又は複数種類の非ポリマー性非硬化性材料の総重量との重量比は、2:1~1:2の範囲(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)である。
【0202】
本実施形態の例示的で非限定的な配合物は、
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載される、3~10重量%の量の1種類又は複数種類の単官能性硬化性材料、
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載される、3~5重量%の量の1種類又は複数種類の親水性多官能性(例えば、二官能性)硬化性材料、
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載される、30~60重量%の量の1種類又は複数種類のポリマー非硬化性材料、及び
本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載される、30~60重量%の量の1種類又は複数種類の非ポリマー性非硬化性材料
を含み、
前記両非硬化性材料の総量は、本配合物の総重量の少なくとも80重量%である。
【0203】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、本配合物は、3Dインクジェット印刷などの付加製造において使用することができる。
【0204】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、本配合物は、本明細書に記載されるように、3Dインクジェット印刷などの付加製造に適した特性(例えば、粘度、表面張力、吐出性)を特徴とする。
【0205】
いくつかの実施形態では、本配合物は、吐出温度(例えば、75℃)で8~40センチポアズ、又は8~30センチポアズ、又は8~25センチポアズの粘度を有することを特徴とする。
【0206】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいては、本明細書の上記で論じられるように、本配合物は、硬化された場合に、弱いゲルの特性を有することを特徴とする材料を提供する。
【0207】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいては、本明細書の上記で論じられるように、本配合物は、硬化させた場合に、10~100kPa、10~80kPa、20~80kPa、10~50kPa、20~50kPa、10~70kPa、20~70kPa、30~80kPa、30~70kPa、30~100kPa、20~90kPa、10~90kPa、30~90kPa、40~90kPa、40~100kPa、40~80kPa、40~70kPa、20~60kPa、10~60kPa、30~60kPa、40~60kPa、50~100kPa、50~90kPa、50~80kPa、50~70kPa、又は50~60kPa(これらの間の中間値及び部分範囲を含む)の弾性率(例えば、ヤング率)を有することを特徴とする材料を提供する。
【0208】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかによれば、本配合物は、硬化された場合に、本明細書に記載されるように、陽圧の印加時に流動可能であるゲル材料を与える。
【0209】
これらの実施形態のいくつかによれば、陽圧とは、本配合物を人手でプレスすることによって印加されるようなものである。
【0210】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかでは、単官能性硬化性材料及び多官能性硬化性材料のうちの1又は複数、好ましくは、そのすべてがUV硬化性材料である。
【0211】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、単官能性硬化性材料及び多官能性硬化性材料のうちの1又は複数、好ましくは、そのすべてが、本明細書で定義されるように、アクリル系材料である。
【0212】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、本配合物は、1種類又は複数種類の光開始剤をさらに含む。
【0213】
これらの実施形態のいくつかにおいて、光開始剤の総量は、配合物の総重量の2重量%未満であり、例えば、0.1~2重量%、0.1~1.5重量%、又は0.5~1.5重量%の範囲内(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)であり得る。
【0214】
光開始剤は、フリーラジカル光開始剤、カチオン性光開始剤、又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0215】
フリーラジカル光開始剤は、紫外線又は可視放射線などの放射線への曝露時にフリーラジカルを生成し、それによって重合反応を開始する任意の化合物であり得る。好適な光開始剤の非限定的な例としては、フェニルケトン(例えば、アルキル/シクロアルキルフェニルケトンなど)、ベンゾフェノン(芳香族ケトン)(例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、及びキサントンなど);アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤(例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(TMPO)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルフォスフィンオキサイド(TEPO)、及びビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO));ベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテル(例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、及びベンゾインイソプロピルエーテル)などが挙げられる。光開始剤の例は、α-アミノケトン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、Irgacure(登録商標)184として市販されている)である。
【0216】
フリーラジカル光開始剤は、単独で、又は共開始剤と組み合わせて使用することができる。共開始剤は、UV系において活性なラジカルを生成するために第2の分子を必要とする開始剤とともに使用される。ベンゾフェノンは、硬化性ラジカルを生成するためにアミンなどの第2の分子を必要とする光開始剤の一例である。放射線を吸収した後、ベンゾフェノンは水素引き抜きによって三元アミンと反応し、アクリレートの重合を開始するアルファ-アミノラジカルを生成する。共開始剤群の非限定的な例は、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンなどのアルカノールアミンである。
【0217】
好適なカチオン性光開始剤としては、例えば、重合を開始するのに十分な紫外線及び/又は可視光に曝露すると非プロトン酸又はブレンステッド酸を形成する化合物が挙げられる。使用される光開始剤は、単一の化合物、2種類以上の活性化合物の混合物、又は2種類以上の異なる化合物の組合せ、すなわち共開始剤であり得る。好適なカチオン性光開始剤の非限定的な例としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、及びトリアリールセレノニウム塩などが挙げられる。例示的なカチオン性光開始剤は、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩の混合物である。
【0218】
本明細書に記載されるいずれかの実施形態のいくつかにおいて、本配合物は、造形プロセスにおいて有益に使用される1種類又は複数種類のさらなる薬剤をさらに含む場合がある。このような薬剤としては、例えば、界面活性剤、阻害剤、及び安定剤が挙げられる。
【0219】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される支持体材料配合物は、界面活性剤を含む。界面活性剤を使用して、本配合物の表面張力を、吐出又は他の印刷プロセスに必要な値(通常、約30ダイン/cm)まで低下させることができる。例示的な薬剤は、BYKファミリーとして市販されている界面活性剤などのシリコーン表面添加剤であるが、これらに限定されない。
【0220】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される支持体材料配合物は、造形プロセスの間及びそれを硬化条件にさらす前に、硬化性材料のプレポリマー形成を阻害する阻害剤をさらに含む。例示的な安定剤(阻害剤)は、トリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩(NPAL)(例えば、FirstCure(登録商標)NPALで販売されている場合)である。
【0221】
好適な安定剤としては、例えば、高温で本配合物を安定化する熱安定剤が挙げられる。
【0222】
モデル作製:
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、支持体材料配合物として本明細書に記載される配合物を利用する、三次元モデル物体を製造する方法が提供される。本方法は、本明細書では造形プロセス又はモデル造形プロセスとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、本方法は、物体の形状に対応する構成されたパターンに沿って複数の層を順次形成するように未硬化の造形材料を吐出することを含む。いくつかの実施形態において、(未硬化の)造形材料は、1種類又は複数種類のモデリング材料配合物及び1種類又は複数種類の支持体材料配合物を含み、1種類又は複数種類の支持体材料配合物は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される配合物である。
【0223】
モデリング材料配合物は、3Dインクジェット印刷などの付加製造に使用可能な任意のモデリング材料配合物であり得、好ましくは、支持体材料配合物が硬化可能である同じ条件下で硬化可能である。
【0224】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本造形方法は、三次元モデル物体の付加製造である。
【0225】
この態様のいくつかの実施形態によれば、各層の形成は、少なくとも1種類の未硬化の造形材料を吐出し、吐出された造形材料を硬化エネルギー又は硬化条件にさらすことによって行われ、それによって硬化したモデリング材料及び硬化した支持体材料から構成される、硬化した造形材料を形成する。
【0226】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかによれば、付加製造は、好ましくは三次元インクジェット印刷によるものである。
【0227】
本実施形態の方法により、物体の形状に対応する構成されたパターンに沿って複数の層を形成し、それにより積層方式で三次元物体が製造される。
【0228】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化する付加製造装置によって形成される。走査の間、装置は、二次元層又は表面上の複数の目標位置を巡回し、各目標位置又は目標位置のグループについて、目標位置又は目標位置のグループが造形材料によって占められるべきか否か、及び、どの種類の造形材料(例えば、モデリング材料配合物又は支持体材料配合物)がそこに供給されるべきかを決定する。上記決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0229】
AMが三次元印刷によるものである場合、本明細書で定義されるように、未硬化の造形材料は、ノズル群を有する吐出ヘッドから吐出され、支持体構造上に層状に造形材料を堆積させる。したがって、AM装置は、占められるべき目標位置に造形材料を吐出し、他の目標位置を空にする。装置は、通常、各々が異なる造形材料を吐出するように構成することができる複数の吐出ヘッドを含む。したがって、異なる目標位置は、異なる造形材料(例えば、本明細書で定義されるように、モデリング配合物及び/又は支持体配合物)によって占められ得る。
【0230】
本発明のいくつかの実施形態の物体112のAMに適したシステム110の代表的で非限定的な例を図1Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを備える吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、好ましくは、後述する図2A図2Cに示すように、ノズル122の1又は複数のアレイを備え、それを通して液体造形材料124が吐出される。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態によれば、装置114は、35℃を超えない温度で動作する。
【0232】
好ましくは、必須ではないが、装置114は、三次元インクジェット印刷装置であり、この場合、吐出ヘッドは印刷ヘッドであり、造形材料は、ノズルの1又は複数のアレイを有する印刷ヘッドからインクジェット技術によって吐出され、支持体構造上に層状に造形材料配合物を堆積させる。一部の用途では、付加製造装置が三次元印刷技術を使用する必要がない場合があるため、これは必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な例示的な実施形態で考えられる付加製造装置の代表的な例としては、溶融堆積モデリング装置及び溶融材料堆積装置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
本明細書で使用される「印字ヘッド」とは、3Dインクジェット印刷などの3D印刷において使用可能な吐出ヘッドを意味する。
【0234】
「吐出ヘッド」という用語は、3Dインクジェット印刷に関する実施形態の文脈における「印刷ヘッド」という用語を包含する。
【0235】
各吐出ヘッドは、所望により、好ましくは、温度制御ユニット(例えば、温度センサ及び/又は加熱装置)及び材料配合物レベルセンサを所望により含み得る1又は複数の造形材料配合物リザーバを介して供給される。造形材料配合物を吐出するために、例えば、圧電インクジェット印刷技術におけるように、電圧信号が吐出ヘッドに印加されて、吐出ヘッドノズルを介して、選択された配合物又は2種類以上の配合物の選択された組合せの液滴を選択的に堆積される。別の例としては、サーマルインクジェット印刷ヘッドが挙げられる。これらのタイプのヘッドには、電圧信号によるヒータ要素の作動時に、造形材料配合物を加熱してその中に気泡を形成するための、造形材料配合物と熱接触するヒータ要素がある。気泡は、造形材料配合物中に圧力を発生させ、造形材料配合物の液滴をノズルから放出させる。圧電サーマル印刷ヘッドは、固体自由形状造形の当業者に知られている。任意のタイプのインクジェット吐出ヘッドについて、ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルのタイプ、及び印加電圧信号速度(周波数)に依存する。
【0236】
好ましくは、必須ではないが、吐出ノズル又はノズルアレイの全体数は、吐出ノズルの半分は支持体材料を吐出するように指定され、吐出ノズルの半分はモデリング材料を吐出するように指定されるよう、すなわち、モデリング材料を吐出するノズルの数が支持体材料を吐出するノズルの数と同じになるように選択される。図1Aの代表的な例では、4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、及び16dが示されている。ヘッド16a、16b、16c、16dのそれぞれは、ノズルアレイを有している。この例では、ヘッド16a及び16bをモデリング材料用に指定することができ、ヘッド16c及び16dを支持材用に指定することができる。例えば、ヘッド16aは第一のモデリング材料を吐出することができ、ヘッド16bは第二のモデリング材料を吐出することができ、ヘッド16c及び16dは共に支持体材料を吐出することができる。別の実施形態では、ヘッド16c及び16dは、例えば、支持体材料を堆積させるためのノズルアレイを2つ有する単一のヘッドに組み合わされてもよい。さらなる別の実施形態では、任意の1又は複数の印刷ヘッドは、2種類以上の材料配合物、例えば、2種類の異なるモデリング材料配合物、又はモデリング材料配合物と支持体材料配合物を、それぞれの配合物を異なるアレイ又は異なる数のノズルを介して堆積させるための2つ以上のノズルアレイを有していてもよい。
【0237】
しかし、これは、本発明の範囲を限定するものではなく、モデリング材料用印刷ヘッド(モデリングヘッド)の数と、支持体材料用印刷ヘッド(支持体ヘッド)の数とは、異なっていてもよいことを理解されたい。一般に、モデリング材料配合物を吐出するノズルのアレイの数、支持体材料配合物を吐出するノズルのアレイの数、及びそれぞれのアレイにおけるノズルの数は、支持体材料配合物の最大吐出速度とモデリング材料配合物の最大吐出速度の所定の比aを与えるように選択される。所定の比aの値は、好ましくは、形成された各層においてモデリング材料の高さが支持体材料の高さに等しくなるように選択される。aの典型的な値は、約0.6~約1.5である。
【0238】
例えば、a=1の場合、支持体材料の全体的な吐出速度は、通常、すべてのノズルのアレイが動作する場合、モデリング材料の全体的な吐出速度と同じである。
【0239】
例えば、装置114は、M×m×p=S×s×qとなるように、各々がp個のノズルからなるm個のアレイを有するM個のモデリングヘッドと、各々がq個のノズルからなるs個のアレイを有するS個の支持体ヘッドとを備えることができる。M×m個のモデリングアレイ及びS×s個の支持体アレイの各々は、アレイのグループから組み立て及び分解することができる別個の物理的ユニットとして製造することができる。この実施形態では、このような各アレイは、所望により、好ましくは、固有の温度制御ユニット及び材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0240】
いくつかの実施形態では、アレイの少なくともいくつかの温度制御ユニットは、45℃、又は40℃、又は35℃を超えないように構成される。
【0241】
装置114は、堆積された材料を硬化させることができる光又は熱などを発するように構成された任意の装置を含み得る硬化装置324をさらに含むことができる。例えば、硬化装置324は、1又は複数の放射線源を含むことができ、放射線源は、例えば、使用されるモデリング材料に応じて、紫外線若ランプ、可視光線ランプ、若しくは赤外線ランプ、他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、硬化装置324は、モデリング材料を硬化又は固化する働きをする。
【0242】
本願明細書において使用される場合、用語「吐出ヘッド」又は「堆積ヘッド」は、3Dインクジェット印刷などの3D印刷において使用可能な吐出ヘッドである印刷ヘッドを包含する。
【0243】
吐出ヘッド及び放射線源は、好ましくは、作業面として機能するトレイ360上を、好ましくは往復移動するように動作するフレーム又はブロック128に取り付けられる。本発明のいくつかの実施形態では、放射線源は、吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料を少なくとも部分的に硬化又は凝固させるために、吐出ヘッドの後を追うようにブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置される。一般的な慣例によれば、X-Y平面がトレイ360に平行になるように、X-Y-Z直交座標系が選択される。トレイ360は、好ましくは、垂直に(Z方向に沿って)、通常、下方に移動するように構成される。本発明の様々な例示的な実施形態では、装置114は、1又は複数の平滑化装置132(例えば、ローラ326)をさらに備える。平滑化装置326は、その上に次の層が形成される前に、新たに形成された層を整え(straighten)、平滑化し、及び/又はその厚さを決定する働きをする。平滑化装置326は、好ましくは、平滑化中に生成された余分な材料を収集するための廃棄物収集装置136を備える。廃棄物収集装置136は、材料を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに運ぶ任意の機構を備えることができる。
【0244】
使用中、ユニット16の吐出ヘッドは、本明細書ではX方向と呼ばれる走査方向に移動し、トレイ360上を通過する過程で所定の構成で造形材料を選択的に吐出する。造形材料は、通常、1種類又は複数種類の支持体材料、及び1種類又は複数種類のモデリング材料を含む。ユニット16の吐出ヘッドが通過した後に、放射源126によるモデリング材料の硬化が続く。堆積したばかりの層の開始点に戻るヘッドの逆方向の通過において、所定の構成に従って造形材料の追加の吐出を実行してもよい。吐出ヘッドの順方向及び/又は逆方向の通過において、このように形成された層は、好ましくは、吐出ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動において吐出ヘッドの経路をたどる平滑化装置326によって整えられてもよい。吐出ヘッドがX方向に沿って開始点に戻ると、吐出ヘッドは、本明細書ではY方向と呼ばれるインデックス方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復移動によって引き続き同じ層を構築してもよい。あるいは、吐出ヘッドは、順方向の移動と逆方向の移動との間にY方向に移動してもよく、又は2回以上の順方向-逆方向の移動の後にY方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本明細書では単一の走査サイクルと呼ばれる。
【0245】
層が完成すると、トレイ360は、続いて印刷される層の所望の厚さに応じて、所定のZレベルまでZ方向に下げられる。この手順が繰り返されることにより、三次元物体112が積層方式で形成される。
【0246】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の吐出ヘッドの順方向通過と逆方向通過との間にZ方向に移動させてもよい。このようなZ移動は、平滑化装置が表面の一方向に接触し、かつ、別の方向に接触しないようにするために行われる。
【0247】
システム110は、所望により、好ましくは、造形材料の容器又はカートリッジを備え、複数の造形材料を製造装置114に供給する造形材料供給システム330を備える。
【0248】
制御ユニット152は、製造(例えば、印刷)装置114を制御し、所望により、好ましくは、供給システム330も制御する。制御ユニット152は、通常、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット152は、好ましくは、例えば、標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ可読媒体上に表されるCAD構成などのコンピュータオブジェクトデータに基づく造形命令に関するデジタルデータを送信する、データプロセッサ154と通信する。通常、制御ユニット152は、本明細書に記載されるように、吐出ヘッド又はノズルアレイのそれぞれに印加される電圧、及びそれぞれの印刷ヘッド又はそれぞれのノズルアレイにおける造形材料の温度を制御する。
【0249】
本発明のいくつかの実施形態によれば、制御ユニット152は、造形材料(未硬化)の温度が40℃又は35℃を超えないように操作される。
【0250】
製造データが制御ユニット152にロードされると、制御ユニット152は、ユーザの介入なしに動作することができる。いくつかの実施形態では、制御ユニット152は、例えば、データプロセッサ154を用いて、又はユニット152と通信するユーザインターフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインターフェース116は、当技術分野で既知の任意の種類のもの、例えば、キーボード、タッチスクリーンなどであってもよいができるが、これらに限定されない。例えば、制御ユニット152は、1種類又は複数種類の造形材料の種類及び/又は属性、例えば、色、特徴的なゆがみ、及び/又は転移温度、粘度、電気的特性、磁気特性などを追加の入力として受け取ることができるが、これらに限定されない。他の属性及び属性群も考えられる。
【0251】
本発明のいくつかの実施形態の物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的な例を図1B図1Dに示す。図1B図1Dは、システム10の上面図(図1B)、側面図(図1C)及び等角図(図1D)を示す。
【0252】
本実施形態において、システム10は、トレイ12と、複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備え、インクジェット印刷ヘッド16のそれぞれが1又は複数のノズルアレイを有し、各ノズルアレイが1又は複数の分離したノズルを有する。トレイ12は、ディスクの形状を有することができ、又は環状であってもよい。垂直軸を中心に回転させることができる限り、非円形形状も考えられる。印刷ヘッド16は、システム110に関して上述した印刷ヘッドのいずれかとすることができる。
【0253】
トレイ12及びヘッド16は、所望により、好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的な回転運動が可能となるように取り付けられる。これは、(i)ヘッド16に対して垂直な軸14を中心に回転するようにトレイ12を構成すること、(ii)トレイ12に対して垂直な軸14を中心に回転するようにヘッド16を構成すること、又は、(iii)トレイ12及びヘッド16の両方を、垂直軸14を中心に異なる回転速度(例えば、反対方向の回転)で回転するように構成すること、によって実現し得る。以下の実施形態は、トレイがヘッド16に対して垂直な軸14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)に特に重点を置いて説明しているが、本出願は、構成(ii)及び(iii)も意図していることを理解されたい。本明細書に記載の実施形態のいずれかは、構成(ii)及び(iii)のいずれかに適用できるように調整することができ、本明細書に記載の詳細を提示された当業者であれば、そのような調整を行う方法を知っているであろう。
【0254】
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外側を向く方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向を本明細書では方位角方向φと呼び、トレイ12に垂直な方向を本明細書では垂直方向zと呼ぶ。
【0255】
システム10における半径方向rは、システム110におけるインデックス方向yを規定し、方位角方向φは、システム110における走査方向xを規定する。したがって、半径方向は本明細書では互換的にインデックス方向とも呼ばれ、方位角方向は本明細書では互換的に走査方向とも呼ばれる。
【0256】
本明細書で使用される「半径方向位置」という用語は、軸14から特定の距離にあるトレイ12の上又は上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、その半径が軸14からの特定の距離であり、且つ、その中心が軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0257】
本明細書で使用される「方位角位置」という用語は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12の上又は上方の位置を指す。したがって、半径位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線である点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0258】
本明細書で使用される「垂直位置」という用語は、特定の点で垂直軸14と交差する平面上の位置を指す。
【0259】
トレイ12は、三次元印刷のための支持体構造として機能する。1又は複数の物体が印刷される作業領域は、必ずしもそうである必要はないが、通常、トレイ12の総面積よりも小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は26で示されている。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体を形成する間中ずっと同じ方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも一回(例えば、振動的な方法で)回転方向を反転させる。トレイ12は、所望により、好ましくは、取り外し可能である。トレイ12は、システム10のメンテナンスのために取り外す場合があり、又は必要に応じて、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために取り外す場合がある。本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、1又は複数の異なる交換トレイ(例えば、交換トレイのキット)を備え、異なる種類の物体(例えば、異なる重み)や異なる動作モード(例えば、異なる回転速度)などに対して2つ以上のトレイが指定される。トレイ12の交換は、必要に応じて手動又は自動で行うことができる。自動交換が採用される場合、システム10は、ヘッド16の下方のその位置からトレイ12を取り外し、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を備える。図1Bの代表的な図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を有する駆動装置38として示されているが、他のタイプのトレイ交換装置も考えられる。
【0260】
印刷ヘッド16の例示的な実施形態を図2A図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110及びシステム10を含むがこれらに限定されない、上述のAMシステムのいずれかに使用することができる。
【0261】
図2A図2Bは、1つのノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16(図2A)及び2つのノズルアレイ22を有する印刷ヘッド16(図2B)を示す。アレイ内のノズルは、好ましくは、直線に沿って直線的に整列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の線形ノズルアレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、所望により、好ましくは、互いに平行であり得る。印刷ヘッドがノズルの2つ以上のアレイを有する場合(例えば、図2B)、ヘッドのすべてのアレイに同じ造形材料配合物を供給することができ、又は同じヘッドの少なくとも2つのアレイに異なる造形材料配合物を供給することができる。
【0262】
システム110と同様のシステムが採用される場合、すべての印刷ヘッド16は、所望により、好ましくは、走査方向に沿った位置が互いにオフセットされた状態でインデックス方向に沿って配向される。
【0263】
システム10と同様のシステムが採用される場合、すべての印刷ヘッド16は、所望により、好ましくは、それらの方位角位置が互いにオフセットされた状態で半径方向(半径方向に平行)に配向される。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いにある角度を持ち、その角度は、それぞれのヘッド間の方位角オフセットにほぼ等しい。例えば、あるヘッドを半径方向に配向して方位角位置φに配置することができ、別のヘッドを半径方向に配向して方位角位置φに配置することができる。この例では、これら2つのヘッド間の方位角オフセットはφ-φであり、2つのヘッドの直線状ノズルアレイ間の角度もφ-φである。
【0264】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを印刷ヘッドのブロックに組み立てることができ、この場合、ブロックの印刷ヘッドは、通常互いに平行である。数個のインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックを図2Cに示す。
【0265】
いくつかの実施形態では、システム10は、支持構造30を含み、支持構造30は、トレイ12が支持構造30とヘッド16との間にくるようにヘッド16の下に配置される。支持構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が動作している間に起こり得るトレイ12の振動を防止又は低減する働きをし得る。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、支持構造30はまた、好ましくは、支持構造30が、常にヘッド16(ヘッド16間のトレイ12及びトレイ12と共に)の真下にくるように回転する。
【0266】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、所望により、好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変化させるように、垂直軸14に平行な垂直方向zに沿って移動するべく構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直方向の距離を変化させる構成においては、支持構造30もまた、トレイ12とともに垂直方向に移動することが好ましい。ヘッド16によって垂直方向に沿って垂直距離を変化させる構成では、トレイ12の垂直方向の位置を固定した状態で、支持構造30も垂直方向の位置を固定したまま維持される。
【0267】
垂直運動は、垂直駆動装置28によって実現することができる。層が完成すると、続いて印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を所定の垂直ステップだけ増加させる(例えば、トレイ12はヘッド16に対して下降される)ことができる。この手順が繰り返されることにより、三次元物体が積層方式で形成される。
【0268】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、及び、所望により、好ましくは、システム10の1又は複数の他の構成要素の動作(例えば、トレイ12の動き)もまた、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路、及び回路によって読み取り可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は、回路によって読み取られると、以下でさらに詳細に説明するように回路に制御動作を実行させるプログラム命令を格納する。
【0269】
コントローラ20はまた、例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットの形式で、コンピュータオブジェクトデータに基づく造形命令に関するデジタルデータを送信する、ホストコンピュータ24と通信することができる。オブジェクトデータのフォーマットは、通常、デカルト座標系に従って構築される。この場合、コンピュータ24は、好ましくは、コンピュータオブジェクトデータ内の各断面(slice)の座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、所望により、好ましくは、変換された座標系に関して造形命令を送信する。あるいは、コンピュータ24は、コンピュータオブジェクトデータによって提供される元の座標系に関して造形命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0270】
座標の変換は、回転トレイ上の三次元印刷を可能にする。固定トレイを備える非回転システムでは、印刷ヘッドは、通常、直線に沿って固定トレイの上方を往復移動する。このようなシステムでは、ヘッドの吐出速度が均一であれば、印刷解像度はトレイ上の任意の点で同じである。システム10では、非回転システムとは異なり、ヘッド位置のすべてのノズルが同じ時間の間にトレイ12上で同じ距離をカバーするわけではない。座標の変換は、所望により、好ましくは、異なる半径方向位置で過剰な材料が等量となることを保証するように実行される。本発明のいくつかの実施形態の座標変換の代表的な例は、物体の3つの断面(各断面は物体の異なる層の造形命令に対応する)を示す図3A図3Bに示されており、図3Aはデカルト座標系における断面を示し、図3Bは座標変換手順をそれぞれの断面に適用した後の同じ断面を示す。
【0271】
通常、コントローラ20は、造形命令に基づいて、且つ、以下に説明するように記憶されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成要素に印加される電圧を制御する。
【0272】
一般に、コントローラ20は、トレイ12上に三次元物体を印刷するように、トレイ12の回転中に層状に造形材料の液滴を吐出するよう印刷ヘッド16を制御する。
【0273】
システム10は、所望により、好ましくは、1又は複数の放射線源18を含み、放射線源18は、使用されるモデリング材料に応じて、例えば、紫外線ランプ、可視光線ランプ、若しくは赤外線ランプ、他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であってもよい。放射線源は、任意の種類の放射線発光装置を含むことができ、発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、及び抵抗ランプなどが挙げられるが、これらに限定されない。放射線源18は、モデリング材料を硬化又は固化する働きをする。本発明の様々な例示的な実施形態では、放射線源18の動作は、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は、放射線源18を作動及び停止させることができ、所望により、放射線源18によって生成される放射線の量も制御することができる。
【0274】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラ又はブレードとして製造することができる1又は複数の平滑化装置32をさらに備える。平滑化装置32は、その上に次の層を形成する前に、新たに形成された層を整える働きをする。いくつかの実施形態では、平滑化装置32は、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、その表面がトレイの表面に平行になるように配置された円錐ローラの形状を有する。この実施形態は、システム10の側面図(図2C)に示されている。
【0275】
円錐ローラは、円錐又は円錐台の形状を有することができる。
【0276】
円錐形ローラの開口角度は、好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14の間の距離との間に一定の比が存在するように選択される。この実施形態は、ローラが回転する間、ローラの表面上の任意の点pが、点pの垂直下方向の点におけるトレイの線速度に比例する(例えば、同じ)線速度を有するので、ローラ32が層を効率的に平滑化することを可能にする。いくつかの実施形態では、ローラは、高さh、軸14から最も近い距離における半径R、及び軸14から最も遠い距離における半径Rを有する円錐台形状を備え、パラメータh、R、及びRは、関係式R/R=(R-h)/hを満たし、式中、Rは、軸14からのローラの最も遠い距離である(例えば、Rはトレイ12の半径とすることができる)。
【0277】
平滑化装置32の動作は、所望により、好ましくは、コントローラ20によって制御され、コントローラ20は、平滑化装置32を作動及び停止させることができ、所望により、垂直方向(軸14に平行)及び/又は半径方向(トレイ12に平行であり、軸14に向かって又は軸14から離れる方向を指す)に沿ってその位置を制御することもできる。
【0278】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復移動するように構成されている。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅よりも短い場合に有用である。半径方向に沿ったヘッド16の動きは、所望により、好ましくは、コントローラ20によって制御される。
【0279】
いくつかの実施形態は、(同じ又は異なる印刷ヘッドに属する)ノズルの異なるアレイから異なる材料を吐出することによって物体を造形することを意図している。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料から材料を選択し、選択された材料及びそれらの特性の所望の組合せを決定する能力を提供する。本実施形態によれば、層内の材料の堆積後の空間的組合せを可能とするべく、層における各材料の堆積の空間的位置が、異なる三次元空間的位置が異なる材料によって占められるように、あるいは、実質的に同じ三次元位置又は隣接する三次元位置が2種類以上の異なる材料によって占められるように定義され、それによって、それぞれの位置又は複数の位置に複合材料を形成する。
【0280】
任意の堆積後の組合せ又はモデリング材料の混合が考えられる。例えば、ある材料が吐出された場合、それが元の特性を維持する場合がある。しかしながら、その材料が、別のモデリング材料、又は同じ位置又は近くの位置に吐出される他の吐出された材料と同時に吐出されると、吐出された材料とは異なる特性を有する複合材料が形成される。
【0281】
本実施形態に適したAMシステムの原理及び動作のさらなる詳細は、米国特許第9,031,680号及び国際公開第2016/009426号に見出され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0282】
このように、本実施形態では、幅広い材料の組合せを堆積することができ、物体の各部分を特徴付けるために必要な特性に応じて、物体の異なる部分に、材料の複数の異なる材料の組合せから構成され得る物体を造形することができる。
【0283】
図4は、本発明のいくつかの実施形態の、血管の特性を有することを特徴とする少なくとも1つの管状構造の付加製造方法のフローチャート図である。本方法は、200で開始し、所望により、好ましくは、201に進み、そこで前述のコンピュータオブジェクトデータフォーマットのいずれかの3D印刷データが取得される。
【0284】
本方法は、202に進むことができ、そこで、1種類又は複数種類の未硬化の造形材料配合物の液滴が吐出されて層を形成する。造形材料配合物は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるように硬化条件にさらされた場合に硬化材料Mを与える配合物Mなどのモデリング材料配合物、及び/又は、これらに限定されないが、本明細書に記載されるように硬化条件にさらされた場合に硬化材料FGを与える配合物FG、及び/又は、本明細書に記載の本明細書されるように記載の硬化条件にさらされた場合に硬化材料Sを与える配合物S、及び/又は、本明細書に記載されるように硬化条件にさらされた場合に硬化材料Lを与える配合物Lであってもよい。
【0285】
モデリング材料配合物は、好ましくは、物体の形状に対応する構成パターンに沿って、コンピュータオブジェクトデータに従って吐出される。他の造形材料配合物は、コンピュータオブジェクトデータに従って吐出されることが好ましいが、これらの造形材料配合物は、通常、犠牲的であるので、必ずしも物体の形状に従って吐出されるとは限らない。
【0286】
所望により、吐出前に、未硬化の造形材料又はその一部(例えば、1種類又は複数種類の造形材料の配合物)は、吐出される前に加熱される。これらの実施形態は、3Dインクジェット印刷システムの作業チャンバの動作温度で比較的高い粘度を有する未硬化の造形材料配合物に特に有用である。本配合物は、好ましくは、3Dインクジェット印刷システムの印刷ヘッドのノズルを通してそれぞれの配合物を吐出することを可能にする温度まで加熱する。本発明のいくつかの実施形態では、それぞれの配合物がXセンチポアズ未満の粘度を示す温度まで加熱し、ここで、Xは約30センチポアズ、好ましくは約25センチポアズ、より好ましくは約20センチポアズ、18センチポアズ、16センチポアズ、14センチポアズ、12センチポアズ、10センチポアズ、又はそれ以下である。
【0287】
加熱は、AM(例えば、3Dインクジェット印刷)システムの印刷ヘッドにそれぞれの配合物を装填する前、本配合物が印刷ヘッド内にある間、又は本組成物が印刷ヘッドのノズルを通過する間に実行することができる。
【0288】
いくつかの実施形態では、加熱は、本配合物の粘度が高すぎる場合に配合物による吐出(例えば、インクジェット印刷)ヘッドの目詰まりを回避するために、それぞれの配合物を吐出(例えば、インクジェット印刷)ヘッドに装填する前に実行される。
【0289】
いくつかの実施形態では、加熱は、少なくともモデリング材料配合物を吐出(例えば、インクジェット印刷)ヘッドのノズルに通しながら、吐出(例えば、インクジェット印刷)ヘッドを加熱することによって実行される。
【0290】
いくつかの実施形態では、配合物FG及び配合物Lのうちの少なくとも1つの吐出中において、静止空気環境を維持するために、以下に説明する冷却システムの動作が一時的に停止される。
【0291】
本明細書で使用される場合、「静止空気環境」は、空気流がない、又は空気が3m/s未満の速度で流れる環境を指す。
【0292】
203において、新たに吐出された層は、例えば、所望により、好ましくは、回転可能である平滑化装置32又は132を使用して整えられる。新たに吐出された層が配合物FG及び/又は配合物Lを含む場合、平滑化装置の回転速度は、他の層を整えるときの速度に対して、好ましくは、変更され、通常、減速される。平滑化装置の回転速度の制御は、コントローラ(例えば、コントローラ20又はコントローラ340)によって行うことができる。
【0293】
本方法は、所望により、好ましくは、204に進み、ここでは、堆積層が、例えば、硬化装置(例えば、本明細書に記載の放射線源)によって硬化条件にさらされる(例えば、硬化エネルギーが印加される)。好ましくは、層の堆積後及び前の層の堆積前に、個々の層のそれぞれに対して硬化が適用される。所望により、堆積(吐出)された層は、限定するものではないが、化学試薬との接触又は環境への曝露など、硬化エネルギー以外の硬化条件にさらされる。
【0294】
動作202~204、及びいくつかの実施形態では、201はまた、好ましくは、複数の層が順次吐出され固化されるように、複数回連続して実行される。これは、動作204から動作201及び動作202を指すループバック矢印として図4に示されている。層は、吐出されて、モデリング材料配合物からなるモデル層の積層及び犠牲構造を形成し、モデル層の積層と犠牲構造は、モデル層の積層の形状及びサイズを変形させずに維持する形で、互いを分離することができる。本発明の様々な例示的な実施形態では、動作202~204は、層が細長いコア、及びコアをカプセル化するシェルを形成するように実行され、コアは、以下でさらに詳述するように、所望により、好ましくは、犠牲構造である。本発明のいくつかの実施形態では、これらの操作は、以下でさらに詳述するように、コアとシェルとの間に中間シェルを形成するためにも実行される。コア、シェル、及び(形成される場合は)中間シェルの各々は、所望により、好ましくは、異なる造形材料配合物、又は造形材料配合物の異なる組合せを吐出することによって形成される。コア及び(形成される場合は)中間シェルは、所望により、好ましくは、物体が完成した後に除去することが可能な造形材料を吐出することによって形成され、したがって、それらは本明細書に記載されるように犠牲的である。
【0295】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つの層についてデジタル材料配合物を吐出する。
【0296】
「デジタル材料配合物」という語句は、本明細書及び当技術分野で使用される場合、特定の材料配合物の印刷領域が、別の材料配合物の1つのボクセル若しくは少数のボクセル、又はボクセルブロックによって少なくとも部分的に囲まれた、1つのボクセル若しくは少数のボクセル、又はボクセルブロックを占めるように、それぞれにインターレースされた2種類以上の材料配合物の組合せを表す。このようなデジタル材料配合物は、材料配合物の種類の選択、及び/又は2種類以上の材料配合物の比及び相対的な空間分布によって影響を受ける、新しい特性を示す場合がある。
【0297】
例示的なデジタル材料配合物では、硬化時に得られる各ボクセル又はボクセルブロックのモデリング材料配合物又は支持体材料配合物は、硬化時に得られる隣接するボクセル又はボクセルブロックのモデリング材料配合物又は支持体材料配合物から独立しており、したがって、各ボクセル又はボクセルブロックは、異なるモデリング材料配合物又は支持体材料配合物をもたらし得、複数の異なるモデル材料配合物のボクセルレベルでの空間的な組合せによって、物体全体に新しい特性をもたらす。本発明の様々な例示的な実施形態では、動作202~204が実行されることにより、層の少なくとも一部について、インターレースされた位置に異なる造形材料配合物を含むボクセル要素が形成される。
【0298】
本明細書で使用される場合、層の「ボクセル」は、層を記述するビットマップの単一のピクセルに対応する層内の物理的三次元基本体積(elementary volume)を指す。ボクセルのサイズは、造形材料がそれぞれのピクセルに対応する位置に吐出され、平滑化され、固化された時点で、造形材料によって形成される領域のサイズにほぼ等しい。
【0299】
本明細書全体を通して、「ボクセルレベルで」という表現が異なる材料及び/又は特性の文脈で使用される場合は常に、ボクセルブロック間の違い、及び複数のボクセル間の違い又は少数のボクセルからなるグループ間の違いを含むことを意味する。好ましい実施形態では、要素全体の特性は、いくつかの異なるモデル材料のボクセルブロックレベルでの空間的組合せの結果である。
【0300】
いくつかの実施形態では、層のうちの少なくとも1つの層、又は少なくともいくつか(例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、又はそれ以上)の層は、2種類以上の造形材料配合物の液滴をインターレースされた位置に各造形材料配合物を異なるノズルアレイから吐出することによって形成される。これらの造形材料配合物は、(i)本明細書においてそれぞれの実施形態のいずれかに記載される2種類以上のモデリング材料配合物、(ii)本明細書においてそれぞれの実施形態のいずれかに記載される少なくとも1種類のモデリング材料配合物及び少なくとも1種類の支持体材料配合物、又は(iii)本明細書においてそれぞれの実施形態のいずれかに記載される2種類以上の支持体材料配合物を含み得る。
【0301】
いくつかの実施形態では、本方法は205に続き、硬化材料FG及び/又は硬化材料L、又は1種類若しくは複数種類の硬化材料を含むデジタル材料が印刷物体から除去され、それによって最終物体が現れる。除去205は、複数の方法で行うことができる。
【0302】
本発明のいくつかの実施形態では、除去205は、これらの硬化材料で充填された1又は複数の空洞に圧力を印加することによる。圧力は、所望により、好ましくは、空洞を囲む1又は複数のシェルに圧力による損傷を引き起こすことなく、空洞から硬化材料FG又は硬化材料Lを流出させるのに十分なものである。所望により、好ましくは、液体材料若しくは液体状材料が熱減粘挙動を特徴とする場合、物体は、液体材料若しくは液体状材料を除去する前に、例えば、約40℃~約95℃の温度に加熱される。
【0303】
除去205が圧力の印加によるものである場合、その圧力は、例えば、空気圧、又は、例えば、水溶液(例えば、水)のジェット形態の液圧であり得る。
【0304】
上記圧力は、好ましくは、1バール未満、0.5バール未満、又は0.3バール未満であり、例えば、0.1バール、0.2バール、又は0.3バールであり得る。
【0305】
あるいは、所望により、上記に加えて、特に除去される材料が周囲条件で十分に流動性でない場合、除去205に先行して前記材料を流動性にする条件を適用する。このような条件としては、例えば、せん断力の印加(例えば、除去される材料がせん断減粘性材料である場合)、及び/又は、熱の印加(例えば、除去される材料が熱減粘性材料である場合)が挙げられる。
【0306】
所望により、好ましくは、硬化した支持体構造(例えば、硬化材料Sから作製される)も205で除去される。硬化した支持体構造が中間シェルを形成する場合、その除去は、所望により、好ましくは、硬化した支持体構造を除去することができる溶液を中間シェルが占める空洞内で循環させることによって行われる。例えば、硬化材料Sは、水溶性又は水混和性であり得、この場合、硬化材料Sは、それを溶解可能又は分散可能な水溶液(例えば、溶液の約1重量%~約3重量%の量でアルカリ性物質を含む水溶液である洗浄液)と接触させることによって除去することができる。
【0307】
本発明のいくつかの実施形態では、硬化した支持体構造は、流動可能な材料(例えば、硬化材料FG又は硬化材料L)で作製され、それ自体は流動可能でないシェルに囲まれている中間シェルに囲まれた引抜き可能なコアを形成する。これらの実施形態では、除去205は、シェルの開放端部を通して引抜き可能なコアを引き抜くことによって行うことができる。
【0308】
本方法は206で終了する。
【0309】
図12A及び図12Bは、本発明のいくつかの実施形態の管状構造300の概略図である。管状構造300は、好ましくは、AMによって(例えば、AMシステム10及び110のうちの一方を動作させることによって)、例えば、方法200の選択された動作を実行することにより、造形材料配合物から製造される。本発明の様々な例示的な実施形態では、管状構造300は、血管の形状を有し、所望により、好ましくは、血管の機械的特性をも有する。管状構造300は、細長いコア302、及びコア302をカプセル化する中実シェル308を含み得る。
【0310】
いくつかの実施形態では、シェル308の最小寸法(例えば、その外径)は、約0.1mm~約5cm、又は約1mm~約3cmである。いくつかの実施形態では、シェル308の壁厚は、約0.1mm~約5mm、又は約0.1mm~約3mmである。他の寸法も考えられる。
【0311】
コア302は、場合により、好ましくは、犠牲的である。いくつかの所望の好ましい実施形態では、管状構造300はまた、コア302とシェル308との間に中間シェル304を含む。いくつかの所望の好ましい実施形態では、管状構造300はまた、コア302とシェル308との間に複数の中間シェルを含む。管状構造300が単一の中間シェルを含む実施形態が図12Aに示されており、管状構造300が複数の中間シェルを含む実施形態が図12Bに示されている(この例示的な図では、2つのそのような中間シェル304及び306が示されているが、任意の数の中間シェルを含めることができる)。中間シェルは、所望により、好ましくは、犠牲的でもある。
【0312】
コア302、シェル308、及び中間シェル304、306はそれぞれ、所望により、好ましくは、異なる材料、又は異なる材料の組合せで作製される。
【0313】
本発明のいくつかの実施形態では、シェル308は、本明細書で定義される硬化材料Mを含む。中間シェル304は、材料FGを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、シェル304は、材料FGのみを含み、他の材料を含まない。シェル306は、いくつかの実施形態では、硬化材料Sを含むことができる。
【0314】
コア302は、複数の方法で作製することができる。本発明のいくつかの実施形態では、コア302は、互いにインターレースされた材料FG及び材料Mを含むデジタル材料で作製される。これらの実施形態は、その長さに沿って不均一な直径を有する管状構造を造形したい場合に特に有用である。いくつかの実施形態では、コア302は、追加の材料とインターレースすることなく、材料Mから形成される。これらの実施形態では、コア302は引抜き可能であり、それらは、ほぼ均一な直径(例えば、10%未満の公差で)を有する管状構造を造形したい場合に特に有用である。後者の実施形態は、管状構造300の形状が低半径の曲線で入り組んでいる場合にも有用である。
【0315】
構造300には、材料の他の組合せを使用することができることを理解されたい。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、コア302は硬化材料FGから作製され、中間シェル304は、本明細書で説明するように、硬化材料S、又は硬化材料Sを含むデジタル材料から作製することができる。本発明者らは、このような中間シェルが内側の崩壊の可能性を著しく低下させることを見出した。コア302が本明細書で定義される硬化材料FGで作製され、中間シェル304が本明細書で定義される材料Lで作製される構成も考えられる。これらの実施形態の利点は、非中実の中間シェル204が摩擦を低減することにより、管状構造300からのコア302の容易な取り外しを促進することである。
【0316】
本発明者らは、造形された三次元物体の品質が、トレイと吐出ヘッドとの間の相対運動の方向に対する物体の部分(parts)の向きによって影響を受け得ることを見出した。したがって、本発明者らは、物体の部分の向きと、この部分を造形するために使用される配合物又は配合物の組合せとを互いに基づいて選択する手順を考案した。具体的には、物体の部分の向きに基づいて1種類又は複数種類の配合物を慎重に選択することにより、物体を造形した後の支持体材料の除去がより容易になることが見出された。
【0317】
物体の部分がインデックス方向(y又はr)にほぼ沿って整列している場合、FG配合物及びモデリング材料配合物Mを含むデジタル材料配合物を使用してコアを製造することが好ましく、その場合、M配合物は、FG配合物を補強する働きをする。
【0318】
物体の部分が走査方向(x又はφ)にほぼ沿って整列している場合、FG配合物を使用するか、又はFG配合物及びモデリング材料配合物Mを含むデジタル材料配合物を使用してコアを製造することが好ましく、その場合、M配合物は、FG配合物を補強する働きをする。
【0319】
M配合物の代表的な例としては、Agilus(商標)ファミリー又はVero(商標)ファミリーの商品名でイスラエルのStratasys社により販売されているモデリング材料のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0320】
コアがFG配合物及びモデリング材料配合物Mを含むデジタル材料配合物を使用して造形される場合、配合物FGのボクセル数pと配合物Mのボクセル数qの好ましいボクセルレベル比p:qは、約60:40~約80:20であり、例えば、約70:30である。
【0321】
本発明者はまた、物体の部分がデジタル材料配合物を使用して造形される場合、デジタル材料配合物内の基本単位が物体の造形された部分の機械的特性に影響を及ぼし得ることを発見した。例えば、デジタル材料配合物が第1の配合物(例えば、M配合物)及び第2の配合物(例えば、FG配合物)を含むと仮定すると、その場合、本配合物は、第1の配合物が第2の配合物内に分散する複数の立方体構造を形成するように、第1の配合物のその立方体構造のうちの1又は複数(例えば、すべて)が第2の配合物によって取り囲まれるように吐出される。本発明者らは、部分の機械的特性を、走査方向に対する立方体構造の向きを慎重に選択することによって調整できることを見出した。具体的には、第1の配合物の立方体構造が走査方向に対して鋭角(例えば、約20°~約70°、又は約30°~約60°、例えば、約45°)にある場合、内側の犠牲的な部分をより容易に除去できることを見出した。
【0322】
好ましい実施形態では、物体は、コア(例えば、コア302)、シェル(例えば、シェル308)、及び1又は複数の中間シェル(例えば、中間シェル304及び396)を含むように形成され、物体のコアは、FG配合物及びモデリング材料配合物Mを含むデジタル材料配合物を使用して造形され、M配合物は、走査方向(x又はφ)に対して約45°の角度で配向された立方体構造を形成するように吐出され、中間シェルは支持体配合物Sから形成される。この実施形態は、コアの容易な除去を可能にし、物体が血管を模倣する場合に特に有用である。立方体構造の好ましいサイズは、主対角線に沿って約0.5~約1.5mmである。中間シェルの好ましい厚さは、約0.01mm~約0.5mmである。コア中の配合物FGのボクセル数pとコア中の配合物Mのボクセル数qとの好ましいボクセルレベル比p:qは、約60:40~約80:20であり、例えば、約70:30である。
【0323】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載されるような方法、その実施形態のいずれか、及びそれらの任意の組合せによって調製される三次元モデル物体が提供される。
【0324】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載されるような3Dモデル物体が提供される。
【0325】
システム及び方法の上記の説明は、層が造形材料配合物(例えば、本明細書に記載の1種類又は複数種類のモデリング材料配合物、及び、所望により、支持体材料配合物)の選択的な吐出及び硬化によって形成される実施形態に特に重点を置いているが、このような技術へのより詳細な言及は、いかなる形であれ、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。例えば、当該分野の当業者は、これらに限定されるものではないが、ステレオリソグラフィ及びDLP(この目的のために、例えば、上記の米国特許第4,575,330号明細書及び同第9211678号明細書を参照されたい)などのバットベースの技術によって層を形成する。
【0326】
したがって、システムがバットベースのシステム又は装置、例えば、ステレオリソグラフィ又はDLPシステム又は装置を含む実施形態もまた意図される。先に示したように、バットベースの技術は、硬化性材料の薄層を順に重ねて形成することにより固体物体を形成するために、物体の断面の形状に対応する構成されたパターンに沿って、硬化条件にさらされる、通常は、硬化放射線に照射される材料を含むバットを含む。
【0327】
付加製造法がステレオリソグラフィを利用する場合、硬化放射線のプログラムされた可動スポットビームが、硬化性流体媒体(1種類又は複数種類のモデリング材料配合物、及び、所望により、支持体材料配合物)の表面又は層に向けられて、その表面に物体の固体層を形成する。通常、本配合物はUV硬化性配合物であり、硬化放射線はUV放射線である。物体の固体層が形成されると、前記層は、プログラムされた方法で、1つの層の厚さの分だけ流体表面から離れるように移動され、次いで、次の断面が形成され、物体を規定する直前の層に接着される。このプロセスは、物体全体が形成されるまで継続される。
【0328】
付加製造がDLPを利用する場合、デジタル光プロセッサは、物体の断面のデジタル画像を構成する硬化放射線を、好ましくは下方から投射して、硬化性配合物の吐出された層の表面に物体の固体層を形成する。通常、硬化性配合物はUV硬化性配合物であり、硬化放射線はUV放射線である。物体の固体層が形成されると、前記層は、プログラムされた方法で、1つの層の厚さ分だけデジタル光プロセッサの画像平面から離れるように移動され、次いで、次の断面が形成され、物体を規定する直前の層に接着される。このプロセスは、物体全体が形成されるまで継続される。本出願から特許が満了するまでの存続期間中に、多くの関連する硬化性及び非硬化性が開発されることが予想され、本明細書において記載され、特許請求される材料の範囲は、このようなすべての新しい技術を先験的に含むことが意図される。
【0329】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%又は±5%を指す。
【0330】
用語「~を備える」、「~を備えている」、「~を含む」、「~を含んでいる」、「~を有する」及びそれらの活用形は、「~を含むが、それに限定されない」を意味する。
【0331】
用語「~からなる」は、「~を含み、それに限定される」を意味する。
【0332】
「~から本質的になる」という用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は要素を含み得るが、追加の成分、工程、及び/又は要素が特許請求される組成物、方法、又は構造の基本的特徴及び新規特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0333】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数への言及を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物(それらの混合物を含む)を含み得る。
【0334】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲の形式で提示され得る。範囲の形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに関係なく当てはまる。
【0335】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲」、及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数、並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0336】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術、及び手順を指し、例えば、これらに限定するものではないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に既知であるか、又は既知の様式、手段、技術、及び手順から当業者によって容易に開発される様式、手段、技術、及び手順を指す。
【0337】
本明細書において、「アクリル材料」という語句は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、アクリルアミド化合物、及びメタクリルアミド化合物を包含する。
【0338】
本明細書全体を通して、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル化合物及びメタクリル化合物を包含する。
【0339】
本明細書において、液体材料Lとは、液体材料又は液体状材料を表す。
【0340】
本明細書全体を通して及び当該技術分野において、「液体」という用語は、応力に応答してその体積を変化させない流体を表す。液体材料は、流動性、すなわち、分子が次々に通過することで移動するように流動する能力;粘度、すなわちせん断応力に対する耐性;非常に低い又はゼロのせん断弾性率(G);1より高い、通常、10より高いせん断損失弾性率対せん断貯蔵弾性率比(G’’/G’、又はtanデルタ)を特徴とする。
【0341】
本明細書では、「液体状材料」は、例えば、低いせん断弾性率(例えば、100kPa未満、50kPa未満、又は10kPa未満)を有することを特徴とすることによって、及び/又は、本明細書に記載されているような1より高い、所望により、5より高い又は10より高いせん断損失弾性率対せん断貯蔵弾性率比(tanデルタ)と、それゆえに、液体のそれに似ている流動性、粘度、及び流動性によって、液体の特性と同様の特性を有することを特徴とする材料を表す。
【0342】
液体状材料は、せん断力の印加時における液体の上述の特性を有することを特徴とし得る。液体状材料は、せん断減粘材料又はチキソトロピー材料であり得、すなわち、それぞれせん断減粘挙動又はチキソトロピーを特徴とする材料とすることができる。
【0343】
液体状材料は、熱エネルギーの印加時における液体の上述の特性を有することを特徴とすることができる。液体状材料は、熱減粘性材料、すなわち、熱減粘挙動を特徴とする材料とすることができる。
【0344】
液体状材料は、ゲル又はペーストの稠度及び/又はレオロジー特性を有することができる。
【0345】
液体材料及び液体状材料は、以下の特性、すなわち、10000センチポアズ以下の粘度;及び/又は1を超えるせん断損失弾性率対せん断貯蔵弾性率比(tanデルタ);及び/又はせん断減粘挙動及び/又はチキソトロピー挙動;及び/又は熱減粘性挙動;及び/又は20kPa未満のせん断貯蔵弾性率;及び/又は1bar未満若しくは0.5bar未満の陽圧にさらされたときの流動性のうちの1又は複数を特徴とすることができる。
【0346】
せん断貯蔵弾性率G’は、本明細書では互換的に「貯蔵せん断弾性率」とも呼ばれ、材料の弾性挙動を反映する。液体材料は、通常は非弾性であり、したがって、低いせん断貯蔵弾性率を特徴とする。
【0347】
せん断損失弾性率G’’は、本明細書では互換的に「損失せん断弾性率」とも呼ばれ、材料の粘性挙動を反映する。
【0348】
貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率は、所望により、(例えば、当技術分野で周知の手順を用いて)示された温度及び周波数で、せん断レオメータ、例えば、歪み制御回転レオメータを用いて決定してもよい。
【0349】
「tanデルタ」としても知られるせん断損失弾性率対せん断貯蔵弾性率比G’’/G’は、材料の粘弾性挙動を反映する。液体材料は、通常、より粘性で非弾性であり、したがって、液体材料若しくは液体状材料の場合、この比は1よりも大きい。ゲルは、通常、弾性であり、したがって、ゲル材料又はゲル様材料のこの比は1未満である。
【0350】
本明細書全体を通して、「せん断減粘性」という用語は、(せん断ひずみ下の)せん断力の印加時にその粘度の低下(その流動性の増加)によって反映される流体化合物又は材料の特性を表す。本実施形態のいくつかでは、せん断減粘性材料は、せん断ひずみを約1%から50%超まで増加させると、そのせん断弾性率の有意な、例えば、少なくとも100%の低下を示すようなものである。
【0351】
本明細書全体を通して、「チキソトロピー」という用語は、時間依存性せん断減粘性によって反映される流体化合物又は流体材料の特性、すなわち、せん断力が印加された時間と相関してその粘度が低下し、せん断力の印加が止むと元の粘度の値に戻る特性を表す。本実施形態のいくつかにおいて、チキソトロピー材料は、50%ひずみ下でそのせん断弾性率の有意な、例えば、少なくとも100%の低下を示すようなものである。
【0352】
本明細書全体を通して、「熱減粘性」という用語は、熱エネルギーの印加(温度の上昇)時にその粘度の低下(その流動性の上昇)によって反映される流体化合物又は流体材料の特性を表す。本実施形態のいくつかにおいて、熱減粘性材料は、40℃~95℃(その間の任意の中間値及び部分範囲を含む)の温度まで加熱されると、粘度又はせん断弾性率が、少なくとも20%、少なくとも50%、又は100%低下することを特徴とする。
【0353】
本明細書全体を通して、「連結部分」又は「連結基」という語句は、化合物中の2つ以上の部分又は基を連結する基を表す。連結部分は、通常、二官能性化合物又は三官能性化合物から誘導され、それぞれその2個又は3個の原子を介して2個又は3個の他の部分に接続するビラジカル部分又はトリラジカル部分と見なすことができる。
【0354】
例示的な連結部分としては炭化水素部分又は炭化水素鎖が挙げられ、これは、本明細書で定義されるように、1又は複数のヘテロ原子によって、及び/又は、連結基として定義される場合は、以下に列挙される化学基のいずれかによって割り込まれてもよい。
【0355】
化学基が本明細書で「末端基」と呼ばれる場合、それは、その1つの原子を介して別の基に結合している置換基として解釈されるべきである。
【0356】
本明細書全体を通して、「炭化水素」という用語は、主に炭素原子及び水素原子で構成される化学基をまとめて表す。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルから構成されてもよく、それぞれが置換されていてもよく、又は非置換であってもよく、1又は複数のヘテロ原子によって割り込まれてもよい。炭素原子の数は、2~20の範囲であってもよく、好ましくは、より少なく、例えば、1~10、1~6、又は1~4である。炭化水素は、連結基又は末端基であってもよい。
【0357】
ビスフェノールAは、2つのアリール基及び1つのアルキル基から構成される炭化水素の例である。
【0358】
本明細書で使用される場合、「アミン」という用語は-NR’R’’基と-NR’-基の両方を表し、R’及びR’’は、それぞれ独立に、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下に定義される。
【0359】
したがって、アミン基は、R’及びR’’の両方が水素である第一級アミン、R’が水素であり、R’’がアルキル、シクロアルキル、若しくはアリールである第二級アミン、又はR’及びR’’がそれぞれ独立に、アルキル、シクロアルキル、若しくはアリールである第三級アミンであり得る。
【0360】
あるいは、R’及びR’’は、それぞれ独立に、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。
【0361】
「アミン」という用語は、アミンが本明細書で以下に定義されるように末端基である場合には、-NR’R’’基を表するために本明細書で使用され、アミンが連結基であるか、又は連結部分であるか若しくは連結部分の一部である場合には、-NR’-基を表すために本明細書で使用される。
【0362】
「アルキル」という用語は、直鎖及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好ましくは、アルキル基は、1~30個、又は1~20個の炭素原子を有する。例えば、「1~20」という数値範囲が本明細書で言及される場合、それは、常に、基、この場合は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個以下の炭素原子を含み得ることを意味する。アルキル基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。置換アルキルは、1又は複数の置換基を有していてもよく、置換基はそれぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。
【0363】
アルキル基は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、隣接する単一の原子に結合している末端基、又は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、鎖中の少なくとも2つの炭素を介して2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。アルキルが連結基である場合、それは本明細書では「アルキレン」又は「アルキレン鎖」とも呼ばれる。
【0364】
本明細書において、本明細書で定義されるような親水性基で置換されたC(1~4)アルキルは、本明細書では「親水性基」という語句に含まれる。
【0365】
本明細書で使用されるアルケン及びアルキンは、本明細書で定義されるようなアルキルであり、それぞれ、1又は複数の二重結合又は三重結合を含む。
【0366】
「シクロアルキル」という用語は、1又は複数の環が完全に共役したパイ電子系を有さない、全炭素単環式環又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。例としては、シクロヘキサン、アダマンチン、ノルボルニル、及びイソボルニルなどが挙げられるが、これに限定されない。シクロアルキル基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。置換シクロアルキルは、1又は複数の置換基を有してもよく、置換基はそれぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。シクロアルキル基は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、隣接する単一の原子に結合している末端基、又は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0367】
本明細書で定義されるような親水性基の2つ以上で置換された1~6個の炭素原子のシクロアルキルは、本明細書では「親水性基」という語句に含まれる。
【0368】
「ヘテロアリサイクリック」という用語は、1又は複数の窒素、酸素、及び硫黄などの原子を環内に有する単環式基又は縮合環基を表す。環はまた、1又は複数の二重結合を有し得る。しかしながら、環は完全に共役したパイ電子系を有さない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、及びオキサリジンなどである。
【0369】
ヘテロアリサイクリック基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。置換ヘテロアリサイクリック基は1又は複数の置換基を有していてもよく、置換基はそれぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。ヘテロアリサイクリック基は、本明細書の上記でこの語句が定義されるているように、隣接する単一の原子に結合している末端基、又は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0370】
1又は複数の窒素及び酸素などの電子供与性原子を含み、ヘテロ原子に対する炭素原子の数の比が5:1以下であるヘテロアリサイクリック基は、本明細書では「親水性基」という語句に含まれる。
【0371】
「アリール」という用語は、完全に共役したパイ電子系を有する全炭素単環式又は縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。アリール基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。置換アリールは、1又は複数の置換基を有してもよく、置換基はそれぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。アリール基は、本明細書の上記でこの用語が定義されるように、隣接する単一の原子に結合している末端基、又は、本明細書の上記でこの用語が定義されるように、2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。
【0372】
「ヘテロアリール」という用語は、1又は複数の原子、例えば、窒素、酸素、及び硫黄を環内に有し、さらに完全に共役したパイ電子系を有する単環式基又は縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を表す。ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、及びプリンが挙げられるが、これに限定されない。ヘテロアリール基は、置換されていてもよく、又は非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは1又は複数の置換基を有してもよく、置換基はそれぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってもよい。ヘテロアリール基は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、隣接する単一の原子に結合している末端基、又は、本明細書の上記でこの語句が定義されているように、2つ以上の位置で2つ以上の部分を連結する連結基であり得る。代表的な例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、及びプリンなどである。
【0373】
「ハロゲン化物」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を表す。
【0374】
「ハロアルキル」という用語は、1又は複数のハロゲン化物でさらに置換された、上記で定義されるようなアルキル基を表す。
【0375】
「硫酸塩」という用語は、本明細書の上記でこの用語が定義されているように、-O-S(=O)-OR’末端基、又は、本明細書の上記で語句が定義されているように、-O-S(=O)-O-連結基を表し、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0376】
「チオ硫酸塩」という用語は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基又は-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0377】
「亜硫酸塩」という用語は、-O-S(=O)-O-R’末端基又は-O-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0378】
「チオ亜硫酸塩」という用語は、-O-S(=S)-O-R’末端基又は-O-S(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0379】
「スルフィネート」という用語は、-S(=O)-OR’末端基又は-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0380】
「スルホキシド」又は「スルフィニル」という用語は、-S(=O)R’末端基又は-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0381】
「スルホネート」という用語は、-S(=O)-R’末端基又は-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0382】
「S-スルホンアミド」という用語は、-S(=O)-NR’R’’末端基又は-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0383】
「N-スルホンアミド」という用語は、R’S(=O)-NR’’-末端基又は-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0384】
「ジスルフィド」という用語は、-S-SR’末端基又は-S-S-連結基を指し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0385】
「ホスホネート」という用語は、-P(=O)(OR’)(OR’’)末端基又は-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0386】
「チオホスホネート」という用語は、-P(=S)(OR’)(OR’’)末端基又は-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0387】
「ホスフィニル」という用語は、-PR’R’’末端基又は-PR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0388】
「ホスフィンオキシド」という用語は、-P(=O)(R’)(R’’)末端基又は-P(=O)(R’)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0389】
「ホスフィンスルフィド」という用語は、-P(=S)(R’)(R’’)末端基又は-P(=S)(R’)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0390】
「ホスファイト」という用語は、-O-PR’(=O)(OR’’)末端基又は-O-PH(=O)(O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0391】
本明細書で使用される「カルボニル」又は「炭酸塩」という用語は、-C(=O)-R’末端基又は-C(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0392】
本明細書で使用される「チオカルボニル」という用語は、-C(=S)-R’末端基又は-C(=S)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0393】
本明細書で使用される「オキソ」という用語は(=O)基を表し、酸素原子は、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結されている。
【0394】
本明細書で使用される「チオオキソ」という用語は(=S)基を表し、硫黄原子は、示された位置で原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結されている。
【0395】
「オキシム」という用語は、=N-OH末端基又は=N-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義されている。
【0396】
「ヒドロキシル」という用語は-OH基を表す。
【0397】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を表す。
【0398】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0399】
「チオヒドロキシ」という用語は-SH基を表す。
【0400】
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-S-アルキル基及び-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0401】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0402】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書では「アルコール」とも呼ばれ、ヒドロキシ基で置換された、本明細書で定義されるようなアルキルを表す。
【0403】
「シアノ」という用語は、-C≡N基を表す。
【0404】
「イソシアネート」という用語は、-N=C=O基を表す。
【0405】
「イソチオシアネート」という用語は、-N=C=S基を表す。
【0406】
「ニトロ」という用語は-NO基を表す。
【0407】
用語「ハロゲン化アシル」は、-(C=O)R’’’’基を表し、ここで、R’’’’は、本明細書の上記で定義されるようなハロゲン化物である。
【0408】
「アゾ」又は「ジアゾ」という用語は、-N=NR’末端基又は-N=N-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0409】
「ペルオキソ」という用語は、-O-OR’末端基又は-O-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書の上記で定義される通りである。
【0410】
本明細書で使用される「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレート及びO-カルボキシレートを包含する。
【0411】
「C-カルボキシレート」という用語は、-C(=O)-OR’末端基又は-C(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書で定義される通りである。
【0412】
「O-カルボキシレート」という用語は、-OC(=O)R’末端基又は-OC(=O)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書で定義される通りである。
【0413】
カルボキシレートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-カルボキシレートにおいてはR’と炭素原子が結合して環を形成し、この基はラクトンとも呼ばれる。あるいは、O-カルボキシレートにおいてはR’とOが結合して環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能し得る。
【0414】
本明細書で使用される「チオカルボキシレート」という用語は、C-チオカルボキシレート及びO-チオカルボキシレートを包含する。
【0415】
「C-チオカルボキシレート」という用語は、-C(=S)-OR’末端基又は-C(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書で定義される通りである。
【0416】
「O-チオカルボキシレート」という用語は、-OC(=S)R’末端基又は-OC(=S)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’は本明細書で定義される通りである。
【0417】
チオカルボキシレートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-チオカルボキシレートにおいてはR’と炭素原子が結合して環を形成し、この基はチオラクトンとも呼ばれる。あるいは、O-チオカルボキシレートにおいてはR’とOが結合して環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能し得る。
【0418】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0419】
「N-カルバメート」という用語は、R’’OC(=O)-NR’-末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0420】
「O-カルバメート」という用語は、-OC(=O)-NR’R’’末端基又は-OC(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0421】
カルバメートは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、O-カルバメートにおいてはR’と炭素原子が結合して環を形成する。あるいは、N-カルバメートにおいてはR’とOが結合して環を形成する。環状カルバメートは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能し得る。
【0422】
本明細書で使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを包含する。
【0423】
本明細書で使用される「チオカルバメート」という用語は、N-チオカルバメート及びO-チオカルバメートを包含する。
【0424】
「O-チオカルバメート」という用語は、-OC(=S)-NR’R’’末端基又は-OC(=S)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0425】
「N-チオカルバメート」という用語は、R’’OC(=S)NR’-末端基又は-OC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0426】
チオカルバメートは、カルバメートについて本明細書に記載されるように、直鎖状又は環状であり得る。
【0427】
本明細書で使用される「ジチオカルバメート」という用語は、S-ジチオカルバメート及びN-ジチオカルバメートを包含する。
【0428】
「S-ジチオカルバメート」という用語は、-SC(=S)-NR’R’’末端基又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0429】
「N-ジチオカルバメート」という用語は、R’’SC(=S)NR’-末端基又は-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0430】
本明細書で「ウレイド」とも呼ばれる「尿素」という用語は、-NR’C(=O)-NR’’R’’’末端基又は-NR’C(=O)-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りであり、R’’’はR’及びR’’について本明細書で定義される通りである。
【0431】
本明細書で「チオウレイド」とも呼ばれる「チオウレア」という用語は、-NR’-C(=S)-NR’’R’’末端基又は-NR’-C(=S)-NR’’-連結基を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書で定義される通りである。
【0432】
本明細書で使用される「アミド」という用語は、C-アミド及びN-アミドを包含する。
【0433】
「C-アミド」という用語は、-C(=O)-NR’R’’末端基又は-C(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0434】
「N-アミド」という用語は、R’C(=O)-NR’’-末端基又はR’C(=O)-N-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0435】
アミドは、直鎖状又は環状であり得る。環状である場合、C-アミドにおいてはR’と炭素原子が結合して環を形成し、この基はラクタムとも呼ばれる。環状アミドは、例えば、形成された環内の原子が別の基に連結されている場合、連結基として機能し得る。
【0436】
「グアニル」という用語は、R’R’’NC(=N)-末端基又は-R’NC(=N)-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’及びR’’は本明細書で定義される通りである。
【0437】
「グアニジン」という用語は、-R’NC(=N)-NR’’R’’’末端基又は-R’NC(=N)-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’、R’’、及びR’’’は本明細書で定義される通りである。
【0438】
「ヒドラジン」という用語は、-NR’-NR’’R’’’末端基又は-NR’-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’、R’’、及びR’’’は本明細書で定義される通りである。
【0439】
本明細書で使用される場合、「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=O)-NR’-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’、R’’、及びR’’’は本明細書で定義される通りである。
【0440】
本明細書で使用される場合、「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=S)-NR’-NR’’-連結基を表し、これらの語句は本明細書の上記で定義され、R’、R’’、及びR’’’は本明細書で定義される通りである。
【0441】
本明細書で使用される場合、「アルキレングリコール」という用語は、-O-[(CR’R’’)-O]-R’’’末端基又は-O-[(CR’R’’)-O]-連結基を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書で定義される通りであり、zは、1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2又は3の整数であり、yは1以上の整数である。好ましくは、R’及びR’’は両方とも水素である。zが2であり、且つ、yが1である場合、この基はエチレングリコールである。zが3であり、且つ、yが1である場合、この基はプロピレングリコールである。yが2~4である場合、このアルキレングリコールは、本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)と呼ばれる。
【0442】
yが4より大きい場合、このアルキレングリコールは、本明細書ではポリ(アルキレングリコール)と呼ばれる。本発明のいくつかの実施形態において、ポリ(アルキレングリコール)基又は部分は、zが10~200、好ましくは10~100、より好ましくは10~50であるような、10~200個の繰り返しアルキレングリコール単位を有し得る。
【0443】
「シラノール」という用語は、-Si(OH)R’R’’基、-Si(OH)R’基、又は-Si(OH)基を表し、R’及びR’’は本明細書に記載される通りである。
【0444】
「シリル」という用語は、-SiR’R’’R’’’基を表し、R’、R’’、及びR’’’は、本明細書に記載の通りである。
【0445】
本明細書で使用される場合、「ウレタン」、「ウレタン部分」、又は「ウレタン基」という用語は、Rx-O-C(=O)-NR’R’’末端基又は-Rx-O-C(=O)-NR’-連結基を表し、R’及びR’’は本明細書で定義される通りであり、Rxは、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキレングリコール、又はそれらの任意の組合せである。好ましくは、R’及びR’’は両方とも水素である。
【0446】
「ポリウレタン」又は「オリゴウレタン」という用語は、その繰り返し骨格単位中に本明細書に記載されるようなウレタン基を少なくとも1つ含む部分、又はその繰り返し骨格単位中にウレタン結合である-O-C(=O)-NR’-を少なくとも1つ含む部分を表す。
【0447】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、組み合わせてひとつの実施形態として提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするためにひとつの実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別個に提供されてもよく、又は任意の適切な部分的組合せとして提供されてもよく、又は他に記載された任意の本発明の実施形態として適切な形で提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしでは機能しないということでない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0448】
本明細書の上記で説明され、以下の特許請求の範囲で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様の実験的裏付けが以下の実施例に見出される。
【実施例
【0449】
ここで、上記の説明とともに本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0450】
実施例1
フローゲル配合物
以下の表1は、UV照射に曝露されると、本明細書で定義されるフローゲル配合物を与える例示的な配合物の化学組成を示す。
【0451】
【表1】
【0452】
すべての試験した配合物は、75℃で10~30(例えば、10~15)センチポアズの粘度を有することを特徴とし、25℃で20~50(例えば、30~40)mN/mの表面張力を特徴とする。本配合物を使用した3Dインクジェット印刷は成功し(本配合物は吐出可能であり)、印刷された物体はカールしなかった。
【0453】
本配合物の貯蔵寿命安定性を、65℃で14日間貯蔵した後の粘度及び表面張力を測定することによって評価した。粘度及び表面張力の変化は観察されなかった。これらの試験で測定された本配合物の14日間の安定性は、室温で8ヶ月間保存した場合の本配合物の安定性を示唆するものである。
【0454】
これらの配合物を使用して印刷されたモデルは、例えばASTM E111によって決定された場合に、0.1MPa未満、通常は、約0.05MPa±20%のヤング率値を示した。
【0455】
10~15重量%の量の単官能性硬化性材料を含むが、多官能性硬化性材料を欠く配合物は、いくつかのインクジェットAMシステムの吐出性必要条件を満たさない材料をもたらし、例えば、粘着性の高すぎる(データは示さず)硬化材料を生成したことに留意されたい。
【0456】
表1に示され、本明細書に記載される配合物は、FLGとも呼ばれる。
【0457】
本配合物を使用して印刷し硬化させてなる40×20×10mmの立方体を2%NaOH水溶液中に浸漬することによって、本配合物の溶解度を調べた。
【0458】
溶解度は、単一の配合物eから作製された物体(S)、又は、FG配合物で作製されたコアがもう一方の配合物の1mmの層でコーティングされるように、2種類の配合物(2種類の支持体配合物、又は、支持体配合物とAgilus(商標)又はVero(商標)などのモデル配合物と)の混合物から作製された物体(DM)のいずれかについて測定した。コーティングされた物体を、(例えば、図5に示すように)コアを露出させるために、40×10mmの側壁を切断して試験した。

【0459】
市販のSUP706配合物を単一の支持体配合物(S)として参照のために使用した。
【0460】
以下の表2A及び表2Bは、試験物体のぞれぞれについて、撹拌あり(表2A)及び撹拌なし(表2B)で観察された溶解時間を示す。
【0461】
【表2A】
【0462】
【表2B】
【0463】
追加の物体である40×20×10mmの立方体をDMモードで印刷し、ここでは、モデル配合物(例えば、Agilus(商標))で作製されたグリッドをその中に有するFG配合物でDMコアが作製され、モデル配合物(Agilus(商標))で約1mmの厚さのコーティングが作製された。
【0464】
図5A~Cは、このような印刷された物体(図5A)、及び2%NaOH溶液中でコアを溶解中の物体(図5B)、及びコアを溶解した後の物体(図5C)を示す写真である。溶解を行う前に、物体の側壁を切断した。

【0465】
実施例2
3Dインクジェット印刷物体
物体が概ねx方向に沿って整列している場合、FG配合物で作製されたコアを印刷することによって、又は、本明細書に記載されるようなモデリング材料配合物M(例えば、Agilus、Vero)で作製されたグリッドで補強されたFG配合物で作製されたDMコアを印刷することによって、良好な結果が得られた。物体が概ねy方向に沿って整列している場合、本明細書に記載されるようなモデリング材料配合物Mで作製されたグリッドで補強されたFG配合物で作製されたDMコアを印刷することによって良好な結果が得られた。DM構造は、約30%の材料Mのグリッドと、約70%の材料FGとから構成した。血管模倣物の内側の空間内に印刷するための1つの好ましいDM構造(洗浄が容易)は、トレイに対して約45°の角度で配向された直径0.5~1.5mmのAgilusの立方体で作製され予めセットされたグリッドを有するFG材料と、SUP706の薄い(≦0.5mm)輪郭とで作製されている。材料FGの最適な吐出温度は65~75℃である。
【0466】
本発明者らは、印刷中にモデリング材料配合物が埋め込み材料内に埋め込まれた場合、埋め込み材料が除去された後においてでさえ、モデリング材料配合物の機械的特性が埋め込み材料によって改変されることを見出した。この現象をさらに調査するために、4種類の埋め込み材料がAgilus(商標)の機械的特性を改変する能力を試験した。試験した埋め込み材料は、単独で硬化された場合に水不溶性材料を提供する親水性硬化性材料を含む、本実施形態の第1の例示的FG配合物(FLG334Aと呼ぶ)、単独で硬化された場合に水溶性材料を提供する親水性硬化性材料を含む、本実施形態の第2の例示的FG配合物(FLG-PA4と呼ぶ)、支持体配合物SUP706、又は、硬化条件にさらされると液体材料若しくは液体状材料を提供する液体配合物であった。
【0467】
この目的のために、モデル材料としてAgilus(商標)を用いて作製した「犬の骨」モデルを、骨の腕が支持体材料SUP706によって支持され、骨のヒンジが試験対象の埋め込み材料内に埋め込まれるように、J750(Stratasys社、イスラエル)のHigh Mixモードで印刷した。このことを、図7Aに概略的に示す。Agilus(商標)モデル材料を710で示し、支持体材料を712で示し、埋め込み材料を714で示す。図7Bは、支持体材料を除去した後の造形された犬の骨モデルを示す図である。埋め込み材料714によって一旦改変されたAgilus(商標)モデル材料を716に示す。図7Cは、埋め込み材料を除去した後の造形された犬の骨モデルを示す図である。未改変材料(710)及び改変Agilus(商標)モデル材料(716)を、異なる線パターンを使用して図7B及び図7Cに示す。改変されたAgilusの応力-歪み曲線を測定し、試験した4つのタイプの埋め込み材料についての結果を図8に示す。図8に示されるように、FLG334Aにより、参照配合物であるSUP706配合物、液体配合物、及びPA4配合物よりも良好な機械的特性を有するモデルが得られた。
【0468】
図6A及び図6Bは、本実施形態のFG支持体材料配合物を利用する2種類のDM印刷モードを示す。図6A及び図6Bはいずれも、管状のコア602、及びコア602を取り囲む1又は複数のシェル604、606、608を有する構造600を示す。好ましくは、構造600は、コア602、及びシェル604と608を含む。所望により、構造600はまた、シェル604と608との間にシェル606を含む。シェル608は、最も外側のシェルであり、通常、Agilus(商標)などの材料Mを含む。シェル604は、コア602に隣接し、通常、材料FGのみを含む。所望により、シェル606は、通常、SUP706などの支持体材料Sを含む。図6Aは、本明細書では形状1と呼ばれる実施形態を示し、コア602は、材料M(例えば、Agilus(商標))によって補強された材料FGから形成される。材料FG及び材料Mは、通常、インターレース方式で吐出されて本明細書に記載されるようなデジタル材料を形成する。図6Bは、本明細書では形状2と呼ばれる実施形態を示し、コア602は材料Mで形成される。この実施形態では、以下に示すように、引抜き可能なコア602が形成されている(図10及び図11を参照されたい)。
【0469】
図6Aに示す実施形態の印刷は、長さに沿って不均一な直径を有する中空管状構造を造形したい場合に特に有用である。図6Bに示す実施形態の印刷は、概ね均一な直径を特徴とする中空管状構造を造形したい場合に特に有用であり、低半径曲線を有する複雑な管状形状にも使用することができる。
【0470】
図9は、本実施形態のFG組成物を使用して図6Aに示す形状1モードに従って作製された物体からの支持体材料の除去を示す写真である。図9に示されているように、小さな圧力を加えることによって、硬化した支持体材料が容易に除去され、それによって中空管状構造が現れる。
【0471】
図6Bに示す形状2による印刷は、複雑な形状(例えば、ねじれた細いトンネル)の中空構造を有するモデルを印刷する場合に用いることができる。
【0472】
図10は、本実施形態のFG組成物を使用して形状2モードに従って作製された物体からの支持体材料の除去を示す写真である。図9に示されているように、小さな圧力を加えることによって、硬化した支持体材料が容易に除去され、それによって中空管状構造が現れる。
【0473】
図11は、本実施形態の図6Bに従って作製された物体からの支持体材料の除去を示す写真である。
【0474】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態、及び変形形態が当業者に自明であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨及び広い範囲に含まれるすべてのこのような代替形態、修正形態、及び変形形態を包含することが意図されている。
【0475】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、個々の刊行物、特許、又は特許出願のそれぞれが参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別的に示されているかのような程度で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクション見出しが使用される限りにおいて、それらは必ずしも限定的に解釈されるべきではない。
【0476】
さらに、本出願のあらゆる優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B