(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイおよび画像表示システム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240424BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240424BHJP
B60R 1/23 20220101ALI20240424BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240424BHJP
【FI】
G02B27/01
B60R11/02 C
B60R1/23
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2021546655
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034664
(87)【国際公開番号】W WO2021054277
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2019170539
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由莉
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136420(JP,A)
【文献】特開2006-226682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0109714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、所定の画像を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、
前記所定の画像のうち、前記車両から所定距離だけ離れた位置に第一画像を生成するための第一光と、前記所定距離とは異なる距離だけ前記車両から離れた位置に第二画像を生成するための第二光と、を出射する画像生成部と、
前記画像生成部により出射された前記第一光および前記第二光がウインドシールドまたはコンバイナへ照射されるように、前記第一光および前記第二光を反射させる反射部と、を備え、
前記画像生成部と前記ウインドシールドまたは前記コンバイナとの間において前記第二光が通過する位置に、少なくとも可視光を含む光の透過率
を下げ
る第一光学要素が設けられて
おり、
前記第一光学要素を通過した前記第二光の光量は前記第一光の光量よりも下げられており、
前記第一光学要素は、前記反射部と前記ウインドシールドまたは前記コンバイナとの間において、前記第二光が通過する位置に設けられている、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記第一光学要素は、前記画像生成部と前記反射部との間において、前記第二光が通過する位置に設けられている、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
前記画像生成部と前記反射部とを内部に収容するハウジングをさらに備え、
前記第一光学要素は、前記ハウジングに取り付けられている、請求項
1または2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項4】
前記第一光学要素は、前記画像生成部に取り付けられている、請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項5】
前記第一光学要素は、前記画像生成部に入射する外光の光量を低減可能な光学フィルタである、請求項1から
4のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項6】
前記第二画像が生成される位置は、前記第一画像が生成される位置よりも前記車両から離れている、請求項1から
5のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項7】
前記画像生成部と前記反射部との間には、前記第一画像が表示される位置よりも前記車両から離れた位置に前記第二画像を表示するための第二光学要素が設けられている、請求項
6に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイと、
前記車両の外部に赤外光を照射可能なIRランプと、
前記赤外光により照射された前記車両の外部の画像を撮像可能なIRカメラと、
を備えた、画像表示システムであって、
前記第二画像は、前記IRカメラにより撮像された画像に基づいて生成されるように構成されている、画像表示システム。
【請求項9】
車両に設けられ、所定の画像を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、
前記所定の画像のうち、前記車両から所定距離だけ離れた位置に第一画像を生成するための第一光と、前記所定距離とは異なる距離だけ前記車両から離れた位置に第二画像を生成するための第二光と、を出射する画像生成部と、
前記画像生成部により出射された前記第一光および前記第二光がウインドシールドまたはコンバイナへ照射されるように、前記第一光および前記第二光を反射させる反射部と、を備え、
前記画像生成部と前記ウインドシールドまたは前記コンバイナとの間において前記第二光が通過する位置に、少なくとも可視光を含む光の透過率を下げる第一光学要素が設けられており、
前記第一光学要素を通過した前記第二光の光量は前記第一光の光量よりも下げられており、
前記第二画像が生成される位置は、前記第一画像が生成される位置よりも前記車両から離れている、ヘッドアップディスプレイ。
【請求項10】
前記第一光学要素は、前記画像生成部と前記反射部との間において、前記第二光が通過する位置に設けられている、請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項11】
前記第一光学要素は、前記反射部と前記ウインドシールドまたは前記コンバイナとの間において、前記第二光が通過する位置に設けられている、請求項9に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項12】
前記画像生成部と前記反射部とを内部に収容するハウジングをさらに備え、
前記第一光学要素は、前記ハウジングに取り付けられている、請求項10または11に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項13】
前記第一光学要素は、前記画像生成部に取り付けられている、請求項10に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項14】
前記第一光学要素は、前記画像生成部に入射する外光の光量を低減可能な光学フィルタである、請求項9から13のいずれか一項に記載のヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイおよび画像表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
将来において、公道上では自動運転モードで走行中の車両と手動運転モードで走行中の車両が混在することが予想される。
【0003】
将来の自動運転社会では、車両と人間との間の視覚的コミュニケーションが益々重要になっていくことが予想される。例えば、車両と当該車両の乗員との間の視覚的コミュニケーションが益々重要になっていくことが予想される。この点において、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を用いて車両と乗員との間の視覚的コミュニケーションを実現することができる。ヘッドアップディスプレイは、ウインドシールドやコンバイナに画像や映像を投影させ、その画像をウインドシールドやコンバイナを通して現実空間と重畳させて乗員に視認させることで、いわゆるAR(Augmented Reality)を実現することができる。
【0004】
ヘッドアップディスプレイの一例として、特許文献1には、透明な表示媒体を用いて立体的な虚像を表示するための光学系を備える表示装置が開示されている。当該表示装置は、ウインドシールドまたはコンバイナ上で、運転手の視界内に光を投射する。投射された光の一部はウインドシールドまたはコンバイナを透過するが、他の一部はウインドシールドまたはコンバイナに反射される。この反射光は運転者の目に向かう。運転者は、目に入ったその反射光を、ウインドシールドやコンバイナ越しに見える実在の物体を背景に、ウインドシールドやコンバイナを挟んで反対側(自動車の外側)にある物体の像のように見える虚像として知覚する。
【0005】
また、太陽光などの外光がヘッドアップディスプレイの内部に入り込むと、当該外光が表示器で集光されて局所的な温度上昇を引き起こし、画像表示の乱れや表示器の熱損壊につながる可能性がある。このような問題を防ぐため、表示器の放熱性を高める構成や、表示器から反射部の間に赤外線を反射するプレートを設ける構成が知られている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2では、表示器の温度上昇を抑制するための部品が別途必要であり、高コスト化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開2018-45103号公報
【文献】日本国特開2005-313733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、乗員に対して表示する画像生成の品質を大きく低下させることなく外光による熱害の発生を防止することが可能なヘッドアップディスプレイおよび画像表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係るヘッドアップディスプレイは、
車両に設けられ、所定の画像を前記車両の乗員に向けて表示するように構成されたヘッドアップディスプレイであって、
前記所定の画像のうち、前記車両から所定距離だけ離れた位置に第一画像を生成するための第一光と、前記所定距離とは異なる距離だけ前記車両から離れた位置に第二画像を生成するための第二光と、を出射する画像生成部と、
前記画像生成部により出射された前記第一光および前記第二光がウインドシールドまたはコンバイナへ照射されるように、前記第一光および前記第二光を反射させる反射部と、を備え、
前記画像生成部と前記ウインドシールドまたは前記コンバイナとの間において前記第二光が通過する位置に、少なくとも可視光を含む光の透過率を前記第一光よりも下げるための第一光学要素が設けられている。
【0009】
上記構成によれば、乗員に対して表示する第一画像および第二画像のうち第二画像の品質を大きく低下させることなく、外光による熱害の発生を防止することが可能なヘッドアップディスプレイを提供することができる。
【0010】
また、本発明の一側面に係る画像表示システムは、
上記いずれか一つに記載のヘッドアップディスプレイと、
前記車両の外部に赤外光を照射可能なIRランプと、
前記赤外光により照射された前記車両の外部の画像を撮像可能なIRカメラと、
を備えた、画像表示システムであって、
前記第二画像は、前記IRカメラにより撮像された画像に基づいて生成されるように構成されている。
【0011】
上記構成によれば、第二画像を、車両周囲が暗い状況でも利用することができるため、特にナイトビジョン用画像としても利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、乗員に対して表示する画像生成の品質を大きく低下させることなく外光による熱害の発生を防止することが可能なヘッドアップディスプレイおよび画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る画像表示システムを備えた車両用システムのブロック図である。
【
図2】画像表示システムに含まれる第一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ(HUD)の模式図である。
【
図3】HUDにおけるNDフィルタの機能を説明する模式図である。
【
図4】第二実施形態に係るHUDにおけるNDフィルタの機能を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図2に示すHUD(Head-Up Display)40について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」および「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」および「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」および「後方向」を含む方向である。左右方向は、
図2では示されていないが、上下方向および前後方向に直交する方向である。
【0016】
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係る画像表示システム4を備えた車両システム2について以下に説明する。
図1は、車両システム2のブロック図である。当該車両システム2が搭載された車両1は、自動運転モードで走行可能な車両(自動車)である。
【0017】
図1に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、画像表示システム4と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、記憶装置11とを備える。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備える。
【0018】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、少なくとも一つの電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサおよびメモリを備えるコンピュータシステム(例えば、SoC(System on a Chip)等)と、トランジスタ等のアクティブ素子および抵抗等のパッシブ素子から構成される電子回路とを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、およびTPU(Tensor Processing Unit)のうちの少なくとも一つを含む。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。メモリは、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを含む。ROMには、車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、車両制御プログラムは、自動運転用の人工知能(AI)プログラムを含んでもよい。AIプログラムは、多層のニューラルネットワークを用いた教師有りまたは教師なし機械学習(特に、ディープラーニング)によって構築されたプログラム(学習済みモデル)である。RAMには、車両制御プログラム、車両制御データ及び/又は車両1の周辺環境を示す周辺環境情報が一時的に記憶されてもよい。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。また、コンピュータシステムは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。さらに、コンピュータシステムは、ノイマン型コンピュータと非ノイマン型コンピュータの組み合わせによって構成されてもよい。
【0019】
画像表示システム4は、HUD40によって表示される所定の画像を生成するように構成されている。画像表示システム4は、HUD40と、ヘッドランプ41と、IRランプ42と、IRカメラ43と、表示制御部44とを備える。
【0020】
HUD40は、所定の情報(以下、HUD情報という。)が車両1の外部の現実空間(特に、車両1の前方の周辺環境)と重畳されるように、当該HUD情報を乗員に向け画像として表示するように構成されている。HUD40によって表示されるHUD情報は、例えば、車両1の走行に関連した車両走行情報及び/又は車両1の周辺環境に関連した周辺環境情報(特に、車両1の外部に存在する対象物に関連した情報)等である。HUD40は、車両1と乗員との間の視覚的インターフェースとして機能するARディスプレイである。HUD40は、少なくともHUD40の一部が車両1の内部に位置する。具体的には、HUD40は、車両1の室内の所定箇所に設置されている。例えば、HUD40は、車両1のダッシュボード内に配置されてもよい。
【0021】
ヘッドランプ41は、車両1の前面における左側と右側に配置されており、ロービームを車両1の前方に照射するように構成されたロービームランプと、ハイビームを車両1の前方に照射するように構成されたハイビームランプとを備える。ロービームランプとハイビームランプの各々は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の1以上の発光素子と、レンズおよびリフレクタ等の光学部材を有する。ヘッドランプ41は、表示制御部44に接続されている。
【0022】
IRランプ42は、車両1の例えば前面に配置されており、赤外光を車両1の外部前方に照射するように構成されている。IRランプ42は、表示制御部44に接続されている。
【0023】
IRカメラ43は、IRランプ42と同様に、車両1の例えば前面に配置されている。IRカメラ43は、IRランプ42の赤外光によって照射された周囲の建物、路面上の対象物(歩行者、他車両、標識等)を撮像するように構成されている。IRカメラ43は、表示制御部44に接続されている。IRカメラ43は、外部カメラ6Aの一例として設けられてもよい。
【0024】
表示制御部44は、HUD40、ヘッドランプ41、IRランプ42およびIRカメラ43の動作を制御するように構成されている。例えば、表示制御部44は、IRランプ42から赤外光を照射させるとともに、当該赤外光によって照射された車両1の外部の画像を撮像させるようにIRカメラ43を制御する。表示制御部44は、IRカメラ43によって撮像された赤外画像をHUD40に向けて送信する。表示制御部44は、電子制御ユニット(ECU)により構成されている。電子制御ユニットは、1以上のプロセッサおよびメモリを備えるコンピュータシステム(例えば、SoC等)と、トランジスタ等のアクティブ素子および抵抗等のパッシブ素子から構成される電子回路とを含む。プロセッサは、CPU、MPU、GPUおよびTPUのうちの少なくとも一つを含む。メモリは、ROMと、RAMを含む。また、コンピュータシステムは、ASICやFPGA等の非ノイマン型コンピュータによって構成されてもよい。
【0025】
本実施形態では、車両制御部3と表示制御部44は、別個の構成として設けられているが、車両制御部3と表示制御部44は一体的に構成されてもよい。この点において、表示制御部44と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。また、表示制御部44は、HUD40の動作を制御するように構成された電子制御ユニットと、ヘッドランプ41、IRランプ42およびIRカメラ43の動作を制御するように構成された電子制御ユニットの2つの電子制御ユニットによって構成されてもよい。
【0026】
センサ5は、加速度センサ、速度センサおよびジャイロセンサのうち少なくとも一つを含む。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサおよび車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。
【0027】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6は、外部カメラ6Aと、内部カメラ6Bとを含む。
外部カメラ6Aは、車両1の周辺環境を示す画像データを取得した上で、当該画像データを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された画像データに基づいて、周辺環境情報を取得する。ここで、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物(歩行者、他車両、標識等)に関する情報を含んでもよい。例えば、周辺環境情報は、車両1の外部に存在する対象物の属性に関する情報と、車両1に対する対象物の距離や位置に関する情報とを含んでもよい。外部カメラ6Aは、単眼カメラとして構成されてもよいし、ステレオカメラとして構成されてもよい。
【0028】
内部カメラ6Bは、車両1の内部に配置されると共に、乗員を示す画像データを取得するように構成されている。内部カメラ6Bは、例えば、乗員の視点E(
図2で後述する)をトラッキングするアイトラッキングカメラとして機能する。内部カメラ6Bは、例えば、ルームミラーの近傍、あるいはインストルメントパネルの内部等に設けられている。
【0029】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、およびレーザーレーダ(例えば、LiDARユニット)のうちの少なくとも一つを含む。例えば、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を検出するように構成されている。特に、LiDARユニットは、車両1の周辺環境を示す3Dマッピングデータ(点群データ)を取得した上で、当該3Dマッピングデータを車両制御部3に送信するように構成されている。車両制御部3は、送信された3Dマッピングデータに基づいて、周辺環境情報を特定する。
【0030】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイ(HUDを除く)である。
【0031】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0032】
無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報等)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報等)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。また、無線通信部10は、歩行者が携帯する携帯型電子機器(スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス等)から歩行者に関する情報を受信すると共に、車両1の自車走行情報を携帯型電子機器に送信するように構成されている(歩車間通信)。車両1は、他車両、インフラ設備または携帯型電子機器との間をアドホックモードにより直接通信してもよいし、アクセスポイントを介して通信してもよい。さらに、車両1は、図示しない通信ネットワークを介して他車両、インフラ設備または携帯型電子機器と通信してもよい。通信ネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)および無線アクセスネットワーク(RAN)のうちの少なくとも一つを含む。無線通信規格は、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA、DSRC(登録商標)又はLi-Fiである。また、車両1は、他車両、インフラ設備または携帯型電子機器と第5世代移動通信システム(5G)を用いて通信してもよい。
【0033】
記憶装置11は、ハードディスクドライブ(HDD)やSSD(Solid State Drive)等の外部である。記憶装置11には、2次元または3次元の地図情報及び/又は車両制御プログラムが記憶されてもよい。例えば、3次元の地図情報は、3Dマッピングデータ(点群データ)によって構成されてもよい。記憶装置11は、車両制御部3からの要求に応じて、地図情報や車両制御プログラムを車両制御部3に出力するように構成されている。地図情報や車両制御プログラムは、無線通信部10と通信ネットワークを介して更新されてもよい。
【0034】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号およびブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、車両1の走行を自動的に制御する。つまり、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0035】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダルおよびステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号およびブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号およびブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0036】
上述の通り、運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、例えば、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御およびアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御およびアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御およびアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0037】
(第一実施形態)
図2は、第一実施形態に係るHUD40を車両1の側面側から見た模式図である。
図2に示すように、HUD40は、HUD本体部401を備えている。HUD本体部401は、ハウジング402と、出射窓403とを有する。出射窓403は光を透過させる透明板で構成されている。HUD本体部401は、ハウジング402の内部に収容される、画像生成部(PGU:Picture Generation Unit)404と、レンズ405(第二光学要素の一例)と、凹面鏡406(反射部の一例)と、ND(Neutral Density)フィルタ407(第一光学要素の一例)と、制御基板408とを有する。
【0038】
画像生成部404は、車両1の乗員に向けて表示する所定の画像を生成するための光を出射するように構成されている。画像生成部404は、詳細な図示は省略するが、光源と、光学部品と、表示デバイスとを有する。光源は、例えば、レーザ光源またはLED光源である。レーザ光源は、例えば、赤色レーザ光と、緑光レーザ光と、青色レーザ光をそれぞれ出射するように構成されたRGBレーザ光源である。光学部品は、プリズム、レンズ、拡散板、拡大鏡等を適宜有する。光学部品は、光源から出射された光を透過して表示デバイスに向けて出射する。表示デバイスは、液晶ディスプレイ、DMD(Digital Mirror Device)等である。画像生成部404の描画方式は、ラスタースキャン方式、DLP(Digital Light Processing)方式またはLCOS(Liquid Crystal On Silicon)方式であってもよい。DLP方式またはLCOS方式が採用される場合、HUD40の光源はLED光源であってもよい。なお、液晶ディスプレイ方式が採用される場合、HUD40の光源は白色LED光源であってもよい。
【0039】
レンズ405は、画像生成部404と凹面鏡406との間に配置されている。レンズ405は、画像生成部404の光出射面410から出射された光の焦点距離を変化させるように構成されている。レンズ405は、画像生成部404の光出射面410から出射されて凹面鏡406に向かう光のうちの一部の光が通る位置に設けられている。レンズ405は、例えば、駆動部を含み、制御基板408により生成される制御信号によって画像生成部404との距離を変更できるように構成されていてもよい。レンズ405の移動により、画像生成部404から出射された光の焦点距離(見かけの光路長)が変化し、ウインドシールド18とHUD40によって表示される所定の画像との間の距離が変化する。なお、レンズに代わる光学要素として、例えばミラーを用いてもよい。
【0040】
凹面鏡406は、画像生成部404の光出射面410から出射される光の光路上に配置されている。凹面鏡406は、光出射面410から出射され光をウインドシールド18(例えば、車両1のフロントウィンドウ)に向けて反射するように構成されている。凹面鏡406は、所定の画像を形成するために凹状に湾曲した反射面を有し、光出射面410から出射されて結像された光の像を所定の倍率で反射させる。凹面鏡406は、駆動機構(図示省略)を有している。駆動機構は、制御基板408から送信される制御信号に基づいて凹面鏡406の向きを回転させうる。
【0041】
NDフィルタ407は、画像生成部404と凹面鏡406との間に配置される光学フィルタである。NDフィルタ407は、画像生成部404の光出射面410から出射されて凹面鏡406に向かう光のうちの一部の光が通る位置に設けられている。具体的には、NDフィルタ407は、光出射面410から出射されてレンズ405を通過した光が通る位置に設けられている。NDフィルタ407は、車両1の外部から内部に入射し凹面鏡406で反射されて画像生成部404の光出射面410に向かう外光のうちの一部の外光が通る位置に設けられている。NDフィルタ407は、当該NDフィルタ407を通る光のうち少なくとも可視光を含む光(例えば、太陽光)の透過率を低下させる。例えば、NDフィルタ407は、当該NDフィルタ407を通る光の透過率を1%以上40%以下に低下させることができるように構成されている。NDフィルタ407は、当該NDフィルタ407を通る光の透過率を1.7%以上15%以下、好ましくは、10%以下に低下させることができると最も有効である。NDフィルタ407は、ハウジング402に取り付けられている。光学フィルタとしては、NDフィルタに限定されず、外光の透過率(光量)を低減可能なものであればよい。
【0042】
制御基板408は、画像生成部404の動作を制御するように構成されている。制御基板408は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリが搭載され、メモリから読みだしたコンピュータプログラムをプロセッサが実行して、画像生成部404の動作を制御する。例えば、制御基板408は、表示制御部44を介して車両制御部3から送信されてくる車両走行情報や周辺環境情報等に基づいて、画像生成部404の動作を制御するための制御信号を生成し、当該生成された制御信号を画像生成部404に送信する。また、制御基板408は、表示制御部44から送信されてくる赤外画像に基づいて、画像生成部404の動作を制御するための制御信号を生成し、当該生成された制御信号を画像生成部404に送信する。また、制御基板408は、凹面鏡406の向きを変更するように制御してもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、制御基板408と表示制御部44は別個の構成として設けられているが、制御基板408が表示制御部44の一部として構成されていてもよい。
【0044】
画像生成部404から出射された光は、凹面鏡406で反射されてHUD本体部401の出射窓403から出射される。HUD本体部401の出射窓403から出射された光は、ウインドシールド18に照射される。ウインドシールド18に照射された光の一部は、乗員の視点Eに向けて反射される。この結果、乗員は、HUD本体部401から出射された光をウインドシールド18の前方の所定の距離において形成される虚像(所定の画像の一例)として認識する。このように、HUD40によって表示される画像がウインドシールド18を通して車両1の前方の現実空間に重畳される結果、乗員は、虚像(画像)により形成される虚像オブジェクトIa,Ibが車両外部に位置する道路上に浮いているように視認することができる。
【0045】
例えば、画像生成部404の光出射面410上の点Pa1から出射された光(第一光の一例)は、光路La1を進み、凹面鏡406上の点Pa2で反射された後に光路La2を進んで、HUD本体部401の出射窓403からHUD40の外部に出射する。光路La2を進んだ光は、ウインドシールド18の点Pa3に入射することにより、所定の画像によって形成される虚像オブジェクトIa(第一画像の一例)の一部を形成する。虚像オブジェクトIaは、例えば、ウインドシールド18から比較的短い所定距離(例えば、3m程度)だけ前方に形成される。
【0046】
一方、画像生成部404の光出射面410上の点Pb1から出射された光(第二光の一例)は、レンズ405とNDフィルタ407とを通過した後に光路Lb1を進む。点Pb1から出射された光は、レンズ405を通過することにより焦点距離が変化する。すなわち、点Pb1から出射された光は、レンズ405を通過することにより、見かけの光路長が長く変化される。また、点Pb1から出射された光は、NDフィルタ407を通過することにより光量が低減される。光路Lb1を進んだ光は、凹面鏡406上の点Pb2で反射された後に光路Lb2を進み、HUD本体部401の出射窓403からHUD40の外部に出射する。光路Lb2を進んだ光は、ウインドシールド18の点Pb3に入射することにより、所定の画像によって形成される虚像オブジェクトIb(第二画像の一例)の一部を形成する。虚像オブジェクトIbは、例えば、虚像オブジェクトIaと比較して、より長い距離(例えば、15m程度)だけウインドシールド18から離れた前方に形成される。虚像オブジェクトIbの距離(ウインドシールド18から虚像までの距離)は、レンズ405の位置を調整することによって適宜調整可能である。
【0047】
虚像オブジェクトIbとして表示される画像は、IRカメラ43によって撮像された画像に基づいて生成される画像である。具体的には、虚像オブジェクトIbとして表示される画像は、車両1の周囲が暗い例えば夜間等において表示されるナイトビジョン用の画像である。虚像オブジェクトIbとして表示される画像には、例えば、IRカメラ43によって撮像された歩行者、他車両、標識等の現実空間の対象物を模して生成された生成画像が含まれる。これらの生成画像は、例えば、歩行者、他車両、標識等の現実空間の対象物に重畳するようにして表示される。なお、生成画像は、必ずしも現実空間の対象物に重畳表示されなくてもよく、例えば、対象物が歩行者の場合、歩行者を模した人型マークを対象物の近傍に点滅表示するようにしてもよい。一方、虚像オブジェクトIaとして表示される画像には、例えば、速度、エンジンの回転数等の昼夜通じて常時表示されうる画像が含まれる。
【0048】
虚像オブジェクトIa,Ibとして2D画像(平面画像)を形成する場合には、所定の画像を任意に定めた単一距離の虚像となるように投影する。虚像オブジェクトIa,Ibとして3D画像(立体画像)を形成する場合には、互いに同一または互いに異なる複数の所定の画像をそれぞれ異なる距離の虚像となるように投影する。
【0049】
次に、
図3を参照して、画像生成部404に入射する外光の光量を低減するNDフィルタ407について説明する。
図3は、HUD40におけるNDフィルタ407の機能を説明する模式図である。
【0050】
図3には、車両1の外部からハウジング402内に入射した外光、例えば太陽光が凹面鏡406で反射されて画像生成部404の光出射面410上の点Pa1と点Pb1とに入射する様子が示されている。光出射面410上の点Pa1及びその近傍は、上述したように、ウインドシールド18から比較的短い所定距離(例えば、3m程度)だけ前方に虚像オブジェクトIaを形成するための光を出射する領域である。光出射面410上の点Pb1及びその近傍は、上述したように、虚像オブジェクトIaの位置よりも、ウインドシールド18から長い距離(例えば、15m程度)だけ前方に虚像オブジェクトIbを形成するための光を出射する領域である。
【0051】
光出射面410上の点Pa1に入射する外光は、例えば、光路La2を進み凹面鏡406上の点Pa2で反射された後に光路La1を進んで点Pa1に入射する。これに対して、光出射面410上の点Pb1に入射する外光は、例えば、光路Lb2を進み凹面鏡406上の点Pb2で反射された後に光路Lb1を進んでNDフィルタ407を通過し、レンズ405を通って点Pb1に入射する。このように、光出射面410上の点Pb1に入射する外光は、凹面鏡406で反射された後にNDフィルタ407を通過するため、NDフィルタ407によって、この外光の光量が低減される。
【0052】
ところで、上述の通り、出射窓403は光を透過させる透明板である。そのため、
図3に示すように、車両外部から入射した太陽光等の外光が出射窓403からハウジング402内部に入射すると、外光が凹面鏡406により反射されて集光された状態で画像生成部404の光出射面410に照射される場合がある。このような集光された外光が画像生成部404の光出射面410に照射されると、可視光である外光に含まれる遠赤外線により光出射面410における過度の温度上昇が発生し、画像生成部404が劣化してしまう可能性がある。特に、虚像オブジェクトIbの方が虚像オブジェクトIaよりも車両1から離れた位置に表示されるため、画像生成部404の光出射面410上において虚像オブジェクトIbを生成する第二光を出射する領域は、虚像オブジェクトIaを生成する第一光を出射する領域よりも、光学経路を通って画像生成部404まで到達する外光の集光量が大きくなり、温度上昇が発生しやすい。
【0053】
これに対して、第一実施形態に係るHUD40は、車両1から所定距離(例えば3m程度)だけ離れた位置に虚像オブジェクトIa(第一画像の一例)を生成するための第一光と、所定距離とは異なる距離(例えば15m程度)だけ車両1から離れた位置に虚像オブジェクトIb(第二画像の一例)を生成するための第二光と、を出射する画像生成部404と、画像生成部404により出射された第一光および第二光がウインドシールド18へ照射されるように、第一光および第二光を反射させる凹面鏡406(反射部の一例)とを備えている。そして、画像生成部404と凹面鏡406との間において、第二光が通過する位置に、少なくとも可視光を含む光の透過率を第一光よりも下げるためのNDフィルタ407(第一光学要素の一例)が設けられている。この構成によれば、画像生成部404まで到達する外光の集光量が大きい光学経路、すなわち第二光が通過する経路にNDフィルタ407を設けることにより、画像生成部404の光出射面410における外光の集光量が大きい領域に入射する外光の光量を低減させることができる。これにより、集光された外光が画像生成部404の光出射面410の所定領域に入射することによる熱害の発生、例えば熱による表示デバイスの劣化等の発生を抑制することができる。また、虚像オブジェクトIbとして表示される画像はナイトビジョン用の画像であるので、第二光の通過経路にNDフィルタ407を設けることによって乗員に向かう第二光の光量が第一光の光量よりも低減しても、当該低減された光量によって生成された虚像オブジェクトIbを乗員に対して十分に認識させることができ、虚像オブジェクトIbの品質を低下させることがない。
【0054】
また、HUD40によれば、NDフィルタ407は画像生成部404と凹面鏡406との間においてHUD40のハウジング402に取り付けられている。この構成によれば、簡便な構成でNDフィルタ407をHUD40内の適切な位置に設けることができる。
【0055】
また、HUD40によれば、画像生成部404から出射された第二光の焦点距離(見かけの光路長)を変化させることができるように構成されたレンズ405が画像生成部404と凹面鏡406との間に設けられている。この構成によれば、虚像オブジェクトIbを虚像オブジェクトIaよりも遠くに表示するための構成を簡便に実現することができる。
【0056】
(第二実施形態)
図4は、第二実施形態に係るHUD140におけるNDフィルタ407Aの機能を説明する模式図である。
図4に示すように、第二実施形態のHUD140は、少なくとも可視光を含む光(例えば、太陽光)の透過率を低下させるNDフィルタ407Aが凹面鏡406とウインドシールド18との間に配置されている点で、画像生成部404と凹面鏡406との間にNDフィルタ407が配置されている第一実施形態のHUD40と相違する。NDフィルタ407Aは、HUD本体部401の出射窓403の表面の一部分を覆うような状態でハウジング402に取り付けられている。
【0057】
NDフィルタ407Aは、画像生成部404の光出射面410から出射されレンズ405を通り凹面鏡406で反射されてウインドシールド18に向かう光のうちの一部の光が通る位置に設けられており、NDフィルタ407Aを通る光の透過率を低下させる。また、NDフィルタ407Aは、車両1の外部から内部に入射し凹面鏡406に向かう外光のうちの一部の外光が通る位置に設けられており、NDフィルタ407Aを通る外光の透過率を低下させる。NDフィルタ407Aは、当該NDフィルタ407Aを通る光の透過率を1%以上40%以下に低下させることができるように構成されている。NDフィルタ407Aは、当該NDフィルタ407Aを通る光の透過率を1.7%以上15%以下、好ましくは、10%以下に低下させることができると最も有効である。
【0058】
HUD140において、画像生成部404に入射する外光の光量を低減させるNDフィルタ407Aは以下のように作用する。
画像生成部404の光出射面410上における点Pa1に入射する外光は、例えば、光路La2を進み凹面鏡406上の点Pa2で反射された後に光路La1を進んで点Pa1に入射する。光出射面410上の点Pa1及びその近傍は、ウインドシールド18から比較的短い所定距離(例えば、3m程度)だけ前方に虚像オブジェクトIaを形成するための光を出射する領域である。
これに対して、画像生成部404の光出射面410上における点Pb1に入射する外光は、例えば、光路Lb2を進みハウジング402内に入射する際に出射窓403部分に設けられたNDフィルタ407Aを通り、凹面鏡406上の点Pb2で反射された後に光路Lb1を進みレンズ405を通って点Pb1に入射する。光出射面410上の点Pb1及びその近傍は、虚像オブジェクトIaの位置よりも、ウインドシールド18から長い距離(例えば、15m程度)だけ前方に虚像オブジェクトIbを形成するための光を出射する領域である。このように、虚像オブジェクトIaよりも遠くに虚像オブジェクトIbを形成するための光を出射する領域である光出射面410上の点Pb1に入射する外光は、NDフィルタ407Aを通過することにより、その光量が光出射面410上の点Pa1に入射する外光の光量よりも低減される。
【0059】
以上のように、第二実施形態に係るHUD140によれば、凹面鏡406とウインドシールド18との間に位置するハウジング402に取り付けられたNDフィルタ407Aによって、外光の集光量が大きい領域である光出射面410上の点Pb1に入射する外光の光量を低減させることができる。これにより、高光量の外光が画像生成部404の光出射面410の所定領域に入射することによる熱害の発生を抑制することができる。また、外光を吸収することによってNDフィルタ407A自身の温度が上昇するが、当該NDフィルタ407Aが画像生成部404から離れた出射窓403の部分に設けられているので、NDフィルタ407Aの温度上昇に伴うハウジング402内部の温度上昇を抑制することができる。これにより、画像生成部404における熱害の発生をさらに抑制することができる。
【0060】
図5は、変形例に係るHUD240の構成を示す模式図である。
図5に示すように、変形例に係るHUD240は、HUD本体部401と、コンバイナ19とによって構成されている。コンバイナ19は、ウインドシールド18とは別体の構造物として、ウインドシールド18の内側に設けられている。コンバイナ19は、例えば、透明なプラスチックディスクであって、ウインドシールド18の代わりに、凹面鏡406によって反射された光が照射される。これにより、ウインドシールド18に光を照射した場合と同様に、HUD本体部401からコンバイナ19に照射された光の一部は、乗員の視点Eに向けて反射される。この結果、乗員は、HUD本体部401からの出射光(所定の画像)をコンバイナ19(およびウインドシールド18)の前方の所定の距離において形成された虚像オブジェクトIa,Ibとして認識することができる。なお、
図5では、NDフィルタ407を画像生成部404と凹面鏡406との間に配置しているが、破線(符号407A)で示すように凹面鏡406とコンバイナ19との間に配置してもよい。
このようにコンバイナ19を備えたHUD240の場合も、第一実施形態のHUD40および第二実施形態のHUD140と同様の効果を奏することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0062】
上記実施形態では、便宜上、NDフィルタ407とレンズ405とを別体の構成としているが、この例に限られない。例えば、NDフィルタがレンズ405の表面にコーティングされているなどして、レンズ405がNDフィルタの機能を有していてもよい。また、
図6に示すHUD40Bのように、NDフィルタ407Bは、ハウジング402ではなく、画像生成部404に取り付けられている構成であってもよい。さらに、第二実施形態におけるNDフィルタ407Aは、出射窓403の表面に貼り付けられているが、出射窓403の裏面に貼り付けられている構成であってもよい。これらの構成によっても、NDフィルタをヘッドアップディスプレイに簡便に搭載することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、NDフィルタ407により、光の透過率を下げる構成を採用しているが、この例に限られない。例えば、画像生成部404と凹面鏡406との間、あるいは、凹面鏡406とウインドシールド18またはコンバイナ19との間に光を完全に遮光する開閉式のシャッタを設けてもよい。HUD40の表示制御部44は、当該シャッタの開閉を制御するように構成されてもよい。表示制御部44は、HUD40の動作時には、シャッタを開放し、HUD40の非動作時には、シャッタを閉鎖する。このように、HUD40の動作/非動作に応じて、シャッタを開閉することで、画像生成部404の光出射面410に入射する外光の総量を削減することができる。
【0064】
上記実施形態では、車両の運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードと、手動運転モードとを含むものとして説明したが、車両の運転モードは、これら4つのモードに限定されるべきではない。車両の運転モードは、これら4つのモードの少なくとも1つを含んでいてもよい。例えば、車両の運転モードは、いずれか一つのみを実行可能であってもよい。
【0065】
さらに、車両の運転モードの区分や表示形態は、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って適宜変更されてもよい。同様に、本実施形態の説明で記載された「完全自動運転モード」、「高度運転支援モード」、「運転支援モード」のそれぞれの定義はあくまでも一例であって、各国における自動運転に係る法令又は規則に沿って、これらの定義は適宜変更されてもよい。
【0066】
本出願は、2019年9月19日出願の日本特許出願2019-170539号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。