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  • 特許-弁駆動診断装置及びその弁駆動診断方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】弁駆動診断装置及びその弁駆動診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/003 20190101AFI20240424BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01M13/003
F16K51/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022022991
(22)【出願日】2022-02-17
(65)【公開番号】P2023119881
(43)【公開日】2023-08-29
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森 正和
(72)【発明者】
【氏名】丸山 武志
(72)【発明者】
【氏名】岡 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】森 真幸
(72)【発明者】
【氏名】河野 友輝
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173789(JP,A)
【文献】特開2000-065246(JP,A)
【文献】特開2021-179981(JP,A)
【文献】特開2003-194671(JP,A)
【文献】特開平02-307033(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1554459(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/003
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムに螺合したステムブッシュを交流電流の通電によるモータの作動によって回転させて、弁体を前記ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の弁駆動を診断する装置において、
前記モータに与えられる電流値を連続的又は間欠的に計測する電流検出手段と、
前記電流検出手段が所定の時間長内に計測した電流値の絶対値の平均値又は該絶対値に対応する値の平均値の時間軸に対する変化を表す平均値推移線を微分演算して診断線を導出し、該診断線の増減を基に前記モータの作動開始から前記弁体及び前記ステムが移動を始めるまでのギャップ時間を導出する演算手段とを備えることを特徴とする弁駆動診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の弁駆動診断装置において、前記時間長は、前記モータに通電される交流電流の周期の自然数倍であることを特徴とする弁駆動診断装置。
【請求項3】
ステムに螺合したステムブッシュを交流電流の通電によるモータの作動によって回転させて、弁体を前記ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の弁駆動を診断する方法において、
前記モータに与えられる電流値を連続的又は間欠的に計測する工程と、
所定の時間長内に計測した電流値の絶対値の平均値又は該絶対値に対応する値の平均値の時間軸に対する変化を表す平均値推移線を微分演算して診断線を導出する工程と、
前記診断線の増減を基に前記モータの作動開始から前記弁体及び前記ステムが移動を始めるまでのギャップ時間を導出する工程とを有することを特徴とする弁駆動診断方法。
【請求項4】
請求項3記載の弁駆動診断方法において、前記時間長は、前記モータに通電される交流電流の周期の自然数倍であることを特徴とする弁駆動診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁駆動診断装置及びその弁駆動診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仕切り弁や球型弁等の弁体がステムと共に進退する弁駆動装置は、ステムに噛み合ったステムブッシュがモータの回転力を与えられて回転し、ステム及び弁体を進退させる。ステムがステンレス鋼等の硬質金属により形成されるのに対し、ステムブッシュは真鍮等の軟質金属により形成されることから、摩耗は実質的にステムではなくステムブッシュに生じる。ステムブッシュの摩耗が進むと、モータの作動開始から弁体が移動を開始するまでの時間が長くなるだけではなく、ステムブッシュからステムが脱落する等の問題が招来するため、ステムブッシュの摩耗量は定期的に計測される。
【0003】
ステムブッシュの摩耗量の計測には、螺子ゲージを用いる方法がある。螺子ゲージは、ステムブッシュに対応した設計になっている必要があり、ステムブッシュの機種(規格)ごとに対応する螺子ゲージを用意しなければならない。
螺子ゲージを用いない方法として、特許文献1には、ステムブッシュ(ステムナット)と共に回転するドライブスリーブの回転角度、ドライブスリーブの軸方向のガタ成分、及び、ステムの動きだしをそれぞれ検出して、ステムブッシュの摩耗量を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-261587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法は、ドライブスリーブの軸方向のガタ成分の検出のために螺旋状の特殊な治具を必要とし、しかも、その治具を弁駆動装置の機種ごとに設計しなければならないという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、弁駆動装置のステムブッシュの摩耗量を求めることができる値を、特殊な治具を用いることなく導出可能な弁駆動診断装置及びその弁駆動診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る弁駆動診断装置は、ステムに螺合したステムブッシュを交流電流の通電によるモータの作動によって回転させて、弁体を前記ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の弁駆動を診断する装置において、前記モータに与えられる電流値を連続的又は間欠的に計測する電流検出手段と、前記電流検出手段が所定の時間長内に計測した電流値の絶対値の平均値又は該絶対値に対応する値の平均値の時間軸に対する変化を表す平均値推移線を微分演算して診断線を導出し、該診断線の増減を基に前記モータの作動開始から前記弁体及び前記ステムが移動を始めるまでのギャップ時間を導出する演算手段とを備える。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る弁駆動診断方法は、ステムに螺合したステムブッシュを交流電流の通電によるモータの作動によって回転させて、弁体を前記ステムと共に該ステムの軸方向に移動させる弁駆動装置の弁駆動を診断する方法において、前記モータに与えられる電流値を連続的又は間欠的に計測する工程と、所定の時間長内に計測した電流値の絶対値の平均値又は該絶対値に対応する値の平均値の時間軸に対する変化を表す平均値推移線を微分演算して診断線を導出する工程と、前記診断線の増減を基に前記モータの作動開始から前記弁体及び前記ステムが移動を始めるまでのギャップ時間を導出する工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る弁駆動診断装置及び第2の発明に係る弁駆動診断方法は、モータに与えられる交流電流の電流値を連続的又は間欠的に計測し、所定の時間長内に計測した電流値の絶対値の平均値又は絶対値に対応する値の平均値の時間軸に対する変化を表す平均値推移線を微分演算して診断線を導出し、診断線の増減を基に増減を基にモータの作動開始から弁体及びステムが移動を始めるまでのギャップ時間を導出するので、ギャップ時間の導出に特殊な治具を要さない。また、ギャップ時間はステムブッシュの摩耗量の増加に伴って長くなることから、ギャップ時間を基に弁駆動装置のステムブッシュの摩耗量を求めることができる。従って、第1の発明に係る弁駆動診断装置及び第2の発明に係る弁駆動診断方法によれば、ステムブッシュの摩耗量を求めることができるギャップ時間を、特殊な治具を用いることなく導出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係る弁駆動診断装置が使用される弁駆動装置の説明図である。
図2】モータに通電される電流、ギャップ時間、及び、ステムブッシュの摩耗の関係を示す説明図である。
図3】(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ、モータに通電される交流電流、波形信号、電流値推移線、及び、診断線の説明図である。
図4】調整波形信号を基にした平均電流値の算出の説明図である。
図5】調整波形信号を基に電流推移線を導出する様子を示す説明図である。
図6】ギャップ時間の導出可否の実験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る弁駆動診断装置10は、ステム11に螺合したステムブッシュ12を交流電流の通電によるモータ13の作動によって回転させて、弁体14をステム11と共にステム11の軸方向(軸心方向)に移動させる弁駆動装置15におけるステムブッシュ12の摩耗量を求めるための装置である。以下、詳細に説明する。
【0011】
弁駆動診断装置10が適用される弁駆動装置15は、図1に示すように、モータ13と、ケーシング16内に収容されたウォーム17と、ウォーム17に噛み合ったウォームホイル18と、ウォームホイル18が取り付けられた筒状のスリーブ19と、スリーブ19内に固定されたステムブッシュ12とを有している。ウォームホイル18、スリーブ19及びステムブッシュ12もケーシング16内に収められている。
【0012】
ステムブッシュ12は、円筒状の部材であり、内側に雌螺子構造が形成され、軸心を中心に回転する。棒状のステム11は、雄螺子領域を具備し、ステムブッシュ12の軸心と軸心が一致した状態で、雄螺子領域がステムブッシュ12の雌螺子構造に噛み合って、鉛直に配置されている。ケーシング16には、ステム11が挿通した貫通孔20が下部に形成され、上部にスピンドルカバー21によって閉じられた貫通孔22が形成されている。ステム11の上端部は貫通孔22より低い位置にあって、貫通孔22はステム11の延長線上に設けられている。
【0013】
スピンドルカバー21は、複数の螺子部材24によって、ケーシング16の上部に固定されている。
弁駆動装置15は、外部電源25からの交流電圧の印加により作動するモータ13の回転力が、ギア等を介してウォーム17に伝えられてウォーム17を回転させる。ウォーム17の回転によって、ウォームホイル18、スリーブ19及びステムブッシュ12は一体的に回転して、ステム11の下端部に連結された弁体14及びステム11を上昇あるいは下降させる。
本実施の形態では、ステムブッシュ12が真鍮を素材として形成され、ステム11がステンレス鋼によって形成されている。
【0014】
モータ13は、図2に示すように、モータ13への交流電流の通電により作動を開始する。モータ13からモータ13の回転力がステム11まで伝わる経路上に設けられたギア等の部材にはバックラッシュがあることから、モータ13が作動を開始してからステム11が弁体14と共に移動を開始するまでにはタイムラグがある。以下、モータ13の作動開始から弁体14及びステム11が移動を始めるまでの時間を、「ギャップ時間」とする。
【0015】
ギャップ時間は、弁駆動装置15の使用によるステムブッシュ12の雌螺子構造の螺子山の摩耗(以下、単に「ステムブッシュ12の摩耗」と言う)が進むほど長くなる。そのため、未使用(新品)の弁駆動装置15のギャップ時間に対する弁駆動装置15の使用により長くなったギャップ時間の差分(以下、この差分を「使用による延長時間」と言う)は、ステムブッシュ12の摩耗量に応じた長さとなる。よって、使用による延長時間を変数とした演算式により(使用による延長時間を基にして)ステムブッシュ12の摩耗量を算出できる。
【0016】
弁駆動診断装置10は、モータ13に与えられる電流値を連続的又は間欠的に計測する電流検出手段26と、電流検出手段26の計測値を用いて、ギャップ時間を導出する演算手段27を備えている。
本実施の形態において、電流検出手段26は、図1に示すように、外部電源25とモータ13を接続する電源供給回路28を流れる電流の値を計測するクランプメータである。
【0017】
演算手段27は、電流検出手段26の計測値が入力される整流ユニット29及び整流ユニット29から出力される信号を基にしてギャップ時間を求める算出機30を備えている。
モータ13には外部電源25から交流電流が通電されることから、電流検出手段26により計測されるのは、図3(A)に示すように、交流波信号W1となる。ここで、モータ13へ通電を開始したタイミングをT0とし、T0直後の交流電流の振幅が最大となるタイミングをT1とし、弁体14及びステム11が移動を開始するタイミングをT2として、交流電流の振幅は、T1の直後からT2まで大きく増減せず、T2となっても、T2を過ぎても大きく増減しないことを実験的検証によって確認している。
【0018】
従って、交流波信号W1から直接的にT2を検知してギャップ時間を検出することは実質的にできない。
また、電流検出手段26が計測する交流電流の実効値からT2を安定的に検出できないことも実験的検証により確認している。
そこで、本実施の形態では、交流電流の実効値を用いない以下に示す1)から6)までの処理によりギャップ時間を導出するようにしている。
【0019】
1)電流検出手段26に接続されている整流ユニット29は、電流検出手段26が計測している電流値を電流検出手段26から取得して、図3(A)に示す、周波数が一定の交流波信号W1を得る。なお、図3(A)において、横軸は時間軸であり(図3(B)、(C)、(D)、図4図5についても同じ)、縦軸は電流検出手段26が計測した電流値である(図3(B)、図4についても同じ)。
【0020】
2)そして、整流ユニット29は、交流波信号W1を全波整流して、交流波信号W1を絶対値化した(負の成分を正の成分にした)図3(B)に示す正波形信号W2に変換し、次に、正波形信号W2全体を縦に拡大して図4に示す調整波形信号W3を得、調整波形信号W3を電圧信号として出力し算出機30に入力する。なお、本実施の形態では、算出機30に、入力信号が電圧信号のメモリハイコーダを採用しているため、算出機30に電圧信号を入力するように設計しているが、算出機への入力信号は採用する算出機に応じて調整される。
【0021】
3)調整波形信号W3が入力された算出機30は、図4に示すように、調整波形信号W3において時間長Lの領域Rを対象に時間間隔tごとの縦の値(以下、この値をPnとする)を選択し、選択した合計L/t個のPnの平均を算出して平均値Qを求める。但し、nは1からL/tまでの自然数である(以下同様)。なお、図4では、P1からP10までの10個のPnのみを記載し、P11以降のPnの記載を省略している。本実施の形態では、時間長Lが、モータ13に通電される交流電流の周期の自然数倍で、100ms以上500ms以下であり、時間間隔tは10μs以上100μsである。
【0022】
ここで、調整波形信号W3のPnは、電流検出手段26が計測した電流値の絶対値M(正波形信号W2の値)に対応することから、平均値Qは、電流検出手段26が所定の時間長L内に計測した電流値の絶対値Mに対応する値の平均である。
算出機30は、図5に示すように、一の平均値Qを求めた後、領域R(調整波形信号W3において平均値Qを算出する領域)を時間軸に沿って時間が経過する方向にt移動させ、移動後の領域Rを対象に新たに平均値Qを求めるという処理を繰り返して、多数の平均値Qを得る。
【0023】
4)その後、算出機30は、得られた多数の平均値Qから平均値Qの時間軸に対する変化を表す平均値推移線S1(図3(C)参照)を導出する。なお、本実施の形態では、モータ13への通電開始時点に対応する平均値推移線S1の値を、モータ13への通電開始時点を基準に時間長L分遡った時点からモータ13への通電開始時点までの範囲を領域Rとして、P1(1番目のPn)を求めるようにしている。
【0024】
5)次に、算出機30は、平均値推移線S1を微分演算して、平均値推移線S1の時間軸に対する増減を表す診断線S2(図3(D)参照)を得る。
【0025】
6)ここで、(a)診断線S2には、図3(D)に示すように、時間軸に沿って、最初に大きな山(以下、「第1の山」と言う)が出現した後、間隔を空けて、一定以上の大きさの山(以下、「第2の山」と言う)が出現すること、(b)第1の山の立ち上り時点がモータ13への通電の開始時点に対応し、第2の山の出現が弁体14及びステム11の移動開始に対応することが種々の検証によって確認された。
【0026】
よって、診断線S2における第1の山の立ち上り時点から第2の山の出現までの時間間隔が、T0からT2までの時間、即ち、ギャップ時間に等しいと言える。
そこで、診断線S2を得た算出機30は、診断線S2における第1の山の立ち上り時点から第2の山の出現までの時間間隔をギャップ時間として導出する。従って、算出機30は、電流検出手段26が時間長L内に計測した電流値の絶対値Mの平均値Qの時間軸に対する増減を基にギャップ時間を導出することとなる。
【0027】
本実施の形態では、算出機30が調整波形信号W3から平均値Qを求めるようにしているが、調整波形信号W3からではなく、正波形信号W2から平均値Q’を求めるように算出機30を設計してもよい。算出機30が正波形信号W2から平均値Q’を求める場合、算出機30は、電流検出手段26が時間長L内に計測した電流値の絶対値Mの平均値Q’の時間軸に対する増減を基にギャップ時間を導出する。
【0028】
本実施の形態において、時間長Lをモータ13に通電される交流電流の周期の自然数倍としているのは、正確なギャップ時間を導出するための第1、第2の山を診断線S2に安定的に出現させるためである。時間長Lの長さや時間間隔tの大きさ等によっては、時間長Lをモータ13に通電される交流電流の周期の自然数倍にせずとも、正確なギャップ時間を導出することができる。
【0029】
ここまでの説明から、弁駆動装置15の弁駆動を診断する方法(弁駆動診断方法)は、モータ13に与えられる電流値を連続的又は間欠的に計測する工程と、所定の時間長L内に計測した電流値の絶対値Mの平均値Q又は絶対値Mに対応する値の平均値Q’の時間軸に対する増減である平均値経時変化を検出する工程と、平均値経時変化を基にギャップ時間を導出する工程とを有すると言える。
【0030】
また、算出機30には、ギャップ時間からステムブッシュ12の摩耗量を算出可能な摩耗量算出式、及び、ステムブッシュ12を新しいステムブッシュに取り替えるべきステムブッシュ12の摩耗量(以下、「交換摩耗量」と言う)が記憶されている。算出機30は、ギャップ時間を導出した後、記憶している摩耗量算出式及び交換摩耗量を基にして、ギャップ時間が予め定めた長さ未満であれば、ステムブッシュ12を取り替える必要はなしと判定し、ギャップ時間が予め定めた長さ以上であれば、ステムブッシュ12を新しいステムブッシュに取り替えるべきと判定し、その判定結果を算出機30に接続された図示しないデバイス(例えば、モニタ)に出力する。
【実施例
【0031】
次に、弁駆動診断装置を用いて導出した診断線からギャップ時間を検出可能かを検証するために行った実験について説明する。
本実験では、時間長Lを200msとし、t=0.05msとした。モータに通電される交流電流の周期は20msであった。実験結果を図6に示す。
【0032】
図6において、(F)はモータに通電された交流電流を全波整流した正波形信号であり、(J)は平均値推移線であり、(K)は診断線であり、(α)はモータに通電された交流電流の実効値であり、(β)はリニアセンサにより計測したステムの変位である。
ステムの変位から約1.6s時点でステム及び弁体が移動し始めていたことから、モータへの通電からステム及び弁体が移動するまでのギャップ時間は約1.6sであった。
【0033】
この点、診断線の第2の山は、約1.55s時点から2s時点までの1.6s時点を含む時間帯に出現したことから、第2の山の出現からギャップ時間を導出できる(例えば、第2の山の立ち上り時点の50ms後をギャップ時間に対応する時点と設定することによって、ギャップ時間を導出できる)ことが確認できた。これに対し、モータに通電された交流電流の実効値には約1.7s時点で極僅かな上昇が表れたものの、1.6s時点の近傍で明確な上昇は存在せず、当該実効値からギャップ時間の算出はできないことも確認できた。
なお、第1の山の立ち上り時点から第2の山のどの時点までをギャップ時間とするかは、弁駆動装置の設計や時間長L等の弁駆動診断装置の設定内容に応じて適宜決められる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、演算手段は、ギャップ時間からステムブッシュの取り替えを判定しなくてもよい。ギャップ時間を基にステムブッシュの摩耗量を算出するように演算手段を設計してもよい。あるいは、ギャップ時間の導出までを演算手段が行い、利用者がギャップ時間からステムブッシュを取り替えるべきか否かを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10:弁駆動診断装置、11:ステム、12:ステムブッシュ、13:モータ、14:弁体、15:弁駆動装置、16:ケーシング、17:ウォーム、18:ウォームホイル、19:スリーブ、20:貫通孔、21:スピンドルカバー、22:貫通孔、24:螺子部材、25:外部電源、26:電流検出手段、27:演算手段、28:電源供給回路、29:整流ユニット、30:算出機、L:時間長、R:領域、S1:平均値推移線、S2:診断線、W1:交流波信号、W2:正波形信号、W3:調整波形信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6