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  • 特許-オープンシールド工法用プレスバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】オープンシールド工法用プレスバー
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
E21D9/06 311C
E21D9/06 331
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022120122
(22)【出願日】2022-07-28
(65)【公開番号】P2024017473
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】村澤 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】近田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-026691(JP,A)
【文献】実開昭61-032295(JP,U)
【文献】特開平06-246722(JP,A)
【文献】特開平04-302618(JP,A)
【文献】実開昭51-151406(JP,U)
【文献】特開2022-049699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部横材と上部横材と左右の縦材とを組合せて矩形枠体としたオープンシールド工法用プレスバーにおいて、下部横材を伸縮構造とし、上部横材は左右の縦材の上部とはフランジ片同士をヒンジ結合をして屈折可能なものとし、このヒンジ結合は中央部と縦材から張出す左右部とをピン接合するのに、斜め下方中央へ向けて形成した可動用長孔を接続用ピンで接続してなり、上方向の力に対しては接続用ピンが可動用長孔内を移動して、屈折を行い、横方向の力に対しては接続用ピンは可動用長孔内での移動が制限され、屈折が阻止され、上部横材又は縦材上部に吊り輪を設け、左右の縦材の中頃から下部横材または上部横材をバー状又はワイヤー、チェーンによる吊り材をかけ渡したことを特徴とするオープンシールド工法用プレスバー。
【請求項2】
矩形枠体のセット時に、左右の縦材間に突っ張り棒を架け渡す請求項1記載のオープンシールド工法用プレスバー。
【請求項3】
吊り輪は上部横材中央に設け、この上部横材は、上方への吊り上げで伸縮と共に屈曲する構造とした請求項1または請求項2に記載のオープンシールド工法用プレスバー。
【請求項4】
吊り輪は縦材上端に設ける請求項1または請求項2に記載のオープンシールド工法用プレスバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地に上下水道、地下道等の地下構造物を施工するオープンシールド工法で用いるプレスバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オープンシールド工法では、オープンシールド機推進時には、推推進ジャッキの推進反力を均等に敷設済み函体に伝達させるために、推進ジャッキと反力函体の間にプレスバーを設置する。
【0003】
プレスバーの基本構成として、左右側部の縦材と下部の横材の3分割構造が標準形状となっていて、縦材はジャッキ推進反力を受ける押圧受部材、下部の横材はグラウト材の止水バーである。また、止水バーに加えて縦材の上部を連結する横材もって□型の一体型構造のプレスバーとする場合もある。
【0004】
下記特許文献は出願人が先に提案したもので、左右の縦材と左右の縦材のそれぞれ内側の上端及び下端に伸縮構造の横材を連結した矩形枠を成し、各該伸縮構造の横材に押し圧ジャッキを設置して矩形枠を拡巾し、また、矩形枠の横巾を縮小する場合は左右縦材をレバーブロック(登録商標)を引っ掛け金具に連結して、横幅を縮小させる。
【文献】特開2022-26691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プレスバー、止水バーを分割した3分割構造とした場合、プレスバー部材の設置撤去作業に3回分の荷役作業を必要とし、手間を要する。
【0006】
□型一体型構造とし、分割部を剛結合とした場合には、プレスバー部材を側部に伸縮させることは困難であり、プレスバー側部からの裏込注入材の漏れ防止構造が困難となる。
【0007】
□型一体構造とし、分割部を伸縮構造とした場合には、押し広げ時は水圧ジャッキによりプレスバー部材を押し広げることが可能で、撤去時の引き寄せにはレバーブロック等を用いることにより、プレスバー部材を引き寄せ、シールド機テール部と干渉せず、引上げ、撤去が可能であるが、レバーブロックを設置し、引き寄せ作業を行う分手間が生じる。
【0008】
前記特許文献1のプレスバーの拡巾を行う場合、油圧式の押し圧ジャッキを操作して拡巾するものでは、その作業に迅速性を欠く。前記押し圧ジャッキは上下のプレスバー横材に設置してプレスバー縦材を拡巾するので、上下の押し圧ジャッキを同時に同じスピードで押し出さないと、プレスバーの変形等が生じる恐れがある。
【0009】
また、プレスバーの横幅の縮小は、レバーブロックでプレスバー(縦材)を人力で引き寄せるので、その作業に迅速性を欠くとともに、プレスバー(横材)は重量物であるので引き寄せ作業を慎重かつ安全に行わないと危険を伴う恐れがある。
【0010】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、安全かつ迅速に横幅の縮小ができるオープンシールド工法用プレスバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため本発明は、第1に、下部横材と上部横材と左右の縦材とを組合せて矩形枠体としたオープンシールド工法用プレスバーにおいて、下部横材を伸縮構造とし、上部横材は左右の縦材の上部とはフランジ片同士をヒンジ結合をして屈折可能なものとし、このヒンジ結合は中央部と縦材から張出す左右部とをピン接合するのに、斜め下方中央へ向けて形成した可動用長孔を接続用ピンで接続してなり、上方向の力に対しては接続用ピンが可動用長孔内を移動して、屈折を行い、横方向の力に対しては接続用ピンは可動用長孔内での移動が制限され、屈折が阻止され、上部横材又は縦材上部に吊り輪を設け、左右の縦材の中頃から下部横材または上部横材をバー状又はワイヤー、チェーンによる吊り材をかけ渡したこと、第2に、矩形枠体のセット時に、左右の縦材間に突っ張り棒を架け渡すこと、第3に、吊り輪は上部横材中央に設け、この上部横材は、上方への吊り上げで伸縮と共に屈曲する構造としたこと、もしくは、吊り輪は縦材上端に設けることを要旨とするものである。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、プレスバーとしてのセット時には左右の縦材に対して下部横材が止水バー、上部横材が梁材として矩形枠体を維持する。
【0013】
吊り上げ時には吊り輪を介して左右の縦材は吊り材で中央に引き寄せられて相互間隔が狭まり、プレスバー全体を幅縮小のものとして、安全に吊り上げることができる。
【0014】
請求項2記載の本発明によれば、矩形枠体のセット時に、左右の縦材間に突っ張り棒を架け渡すことにより、矩形枠体の保持が確実ものとなる。
【0015】
請求項3記載の本発明によれば、上部横材の中央部を吊り上げることで上部横材と縦材との結合部において屈折するとともにプレスバー上部の幅縮小し、左右の縦材は吊り材で中央に引き寄せられて相互間隔が狭まるとともに、下部横材も縮小する。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、吊り上げ時には吊り輪を介して左右の縦材を引上げることにより、上部横材は縦材との結合部において縮小するとともに左右縦材はハの字に傾斜した後、下部横材も縮小し相互間隔が狭まる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように本発明のオープンシールド工法用プレスバーは、安全かつ迅速に横巾の拡巾縮小を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第1実施形態を示す正面図である。
図2】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの使用状態を示す平面図である。
図3】本発明のオープンシールド工法用プレスバーの第2実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面をついて本発明の実施の形態を詳細に説明ずる。図1は工法用プレスバーの第1実施形態を示す正面図で、本発明のプレスバー11も前記従来例と同じく下部横材13と上部横材22と左右の縦材12とを組合せて矩形枠体とした。
【0020】
下部横材13を伸縮構造とし、上部横材22は縦材12と伸縮を許容するヒンジ結合構造とした。
【0021】
縦材12はジャッキ推進反力を受ける押圧受部材としてくH型鋼材やボックス鋼材等による。
【0022】
下部横材13は止水バーとなるもので、H型鋼材やボックス鋼材等によるバー本体16とその両端を縮径した差込み縮径部15から成り、差込み縮径部15を左右の縦材12下端より内側へ張り出した差込み部14に篏合することにより伸縮構造となる。
【0023】
一方、上部横材22は梁となるもので、左右の縦材12の上部とはフランジ片同士をヒンジ結合をして屈折可能なものとする。一例としてこのヒンジ結合は中央部22aと縦材12から張出す左右部22bとをピン接合するのに、斜め下方中央へ向けて形成した可動用長孔24を接続用ピン23で接続してなり、上方向の力に対しては接続用ピン23が可動用長孔24内を移動して、屈折を行い、横方向の力に対しては接続用ピン23は可動用長孔24内での移動が制限され、屈折が阻止される。
【0024】
中央部にはワイヤーでの吊下ろしを行うための吊り輪27を上部中央に設置した。
【0025】
上部横材22の中央部22aの中央から左右の縦材12の中央または下部へかけてバー状の吊り材25を端部をヒンジ結合として掛け渡す。
【0026】
また、左右の縦材12の内側に支圧板18とジャッキ棚19を設け、このジャッキ棚19に水圧ジャッキ17がその両端部が前記支圧板18に当接するように設置され、矩形枠体のセット時に、左右の縦材12間に突っ張り棒としての水圧ジャッキ17を架け渡すようにした。
【0027】
次に使用法について説明する。オープンシールド機1のテール部1b内部にプレスバー11を拡巾して設置するには水圧ジャッキ17を伸長することにより左右の縦材12はテール部1bの内側側面に押し圧され密着された状態になる。
【0028】
このとき、上部横材22の中央部22aの両端部の斜め下方に向けて設けた長孔に挿入されてある接続用ピン23は、プレスバー11が拡巾されているため、可動用長孔24の上端に位置している。
【0029】
この状態から先に水圧ジャッキ17を取り外し、プレスバー11をクレーン等で玉掛けして吊り上げると、前記可動用長孔24に挿入された接続用ピン23は、可動用長孔24の下方に移動するため上部横材22は屈折し、左右の縦材12の上部は内側へ引き寄せられる。
【0030】
また、吊り斜材25には吊り上げによる軸方向の力が作用し、下側のヒンジ接合部には内側に向かって軸方向力の分力が働き、前記左右の縦材12の下部も内側へ引き寄せられ、プレスバー11は横幅が縮小され、スムーズに吊り上げられることが可能となる。
【0031】
図2中1はオープンシールド機で、これは左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0032】
前記オープンシールド機1は、機体を前後方向で複数に分割し、フロント部1aとしての前方の機体の後端にテール部1bとしての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で中折れ部2を形成して屈曲可能としている。
【0033】
フロント部1aは主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ(図示せず)を左右によせて、また上下複数段に配設した。
【0034】
これに対してテール部1bはコンクリート函体4を設置する場所で、底板5を有し、機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ(シールドジャッキ)3を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0035】
図中6はフロント部1aの前端に設けたスライド土留板、11は本発明のプレスバー(押角)である。
【0036】
図示は省略するが、発進立坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ3を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4をクレーン等の揚重機により上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール1b部内で縮めた推進ジャッキ3の後方にセットする。
【0037】
ショベル等の掘削機7でオープンシールド機1の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ3を伸長してオープンシールド機1を前進させる。
【0038】
そして前記第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1b内に吊り降す。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻しを施す。
【0039】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1b内に吊り降す際には、コンクリートブロック等による高さ調整材をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1b内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙に瞬結性グラウト材を用いた裏込注入材を充填して一次注入を行い、さらに、オープンシールド機1の前進後、二次注入として、コンクリート函体4の内側からグラウトホールにより、外側に裏込注入材を注入する。
【0040】
オープンシールド機1を前進させる前にプレスバー11を推進ジャッキ3とコンクリート函体4の前端との間に吊降ろした後、水圧ジャッキ17により巾を広げて前記プレスバー11の外周がオープンシールド機1の内周に、図示は省略するが板状シール材を介して水密に当接するように配設する。
【0041】
推進ジャッキ3をプレスバー11の縦材12に当て、これに押圧力をわずかに加えるようにすれば、プレスバー11はその状態で固定される。
【0042】
プレスバー11を配置後、コンクリート函体4の周囲隙間を裏込注入材9で充填するが、プレスバー11はこの裏込注入材がオープンシールド機1前部へ流出しないように妻型枠の機能も果たしている。
【0043】
推進ジャッキ3を伸長しながら、オープンシールド機1はコンクリート函体4を反力に用いて前進させる。
【0044】
オープンシールド機1が1函体分推進終了して、推進ジャッキ3を縮めた後にプレスバー11を上方に引き上げるが、プレスバー11の拡巾した横巾を縮小するには水圧ジャッキ17は取り外しておき、レバーブロックにより左右の縦材12をテール部1b内部の中央に引き寄せる。
【0045】
本発明の第2実施形態として図3に示すように、バー状の固定した吊り斜材25に替えて、吊り斜材としてワイヤーロープまたはチェーンによる可撓性のある索条26を用いた。
【0046】
索条26は前記左右の縦材12内側下方より、下部横材13のバー本体16の両端部付近に掛渡す。
【0047】
また、下部横材13を伸縮構造するのは前記実施態様と同じであるが、吊り上げ部を左右の縦材12の上端としてここに吊り輪27を設けた。
【0048】
また、上部横材22は端部を縦材12と伸縮を許容するヒンジ結合とさせた。
【0049】
この第2実施形態では、揚重機から縦材12の上端部の吊り輪27に取り付けられたワイヤーロープ等の吊具28はハの字形となり、縦材12の自重により吊具28に作用する軸方向の力により吊り輪27箇所において、内側に向かって働く分力が作用し、左右の縦材12上部が内側へ引き寄せられ、左右の縦材12がハの字形となる。
【0050】
この時、索条26には下部横材13のバー本体16の自重による軸方向の力が作用し、索条26の上側の接合部には軸方向力の分力が内側に向かって働き、前記左右の縦材12の下部も内側へ引き寄せられる。
【0051】
このようにして、プレスバー11は横幅が縮小され、スムーズに吊り上げられる。
【符号の説明】
【0052】
1…オープンシールド機 1a…フロント部
1b…テール部 2…中折れ部
3…推進ジャッキ 4…コンクリート函体
6…スライド土留板 7…掘削機
8…中折ジャッキ 9…裏込注入材
11…プレスバー 12…縦材
13…下部横材 14…差込み部
15…差込み縮径部 16…バー本体
17…水圧ジャッキ 18…支圧板
19…ジャッキ棚 22…上部横材
22a…中央部 22b…左右部
23…接続用ピン 24…可動用長孔
25…吊り材 26…索条
27…吊り輪 28…吊具
図1
図2
図3