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  • 特許-セルロース複合粉体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】セルロース複合粉体
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240424BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240424BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240424BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240424BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240424BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240424BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240424BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q19/00
C08L1/02
C08K5/17
C08K3/36
C08K5/09
C08J3/16 CEP
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022154356
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2018209473の分割
【原出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2023002552
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
(72)【発明者】
【氏名】三木 勝志
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211128(JP,A)
【文献】特開2011-127124(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105535(WO,A1)
【文献】特開2003-146829(JP,A)
【文献】特開2018-039897(JP,A)
【文献】特開平08-134102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
A61K 9/00 - 9/72
A61K 47/00 - 47/69
A61K 31/33 - 33/44
A61P 1/00 - 43/00
A23L 21/00 - 21/25
A23L 29/20 - 29/206
A23L 29/231- 29/30
A24D 1/00 - 3/18
C08J 3/00 - 3/28
C08J 99/00
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
C08B 1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系物質と粉体化合物を含む、セルロース複合粉体であって、
前記セルロース系物質がセルロースを含み、前記セルロース系物質に占める前記セルロースの含有量が50~100重量%であり、
前記粉体化合物が炭素数2~30のアルキル基及び/又は2つ以上のメチル基と、官能基を有し、前記官能基がヒドロキシル基、1~3級アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホリルコリン基、スルホン酸塩基及びシリル基より選ばれる少なくとも1つであり、
前記セルロース複合粉体の平均粒子径が1~100μmであり、
画像解析法により測定される前記セルロース複合粉体の円形度が0.4~1.0であり、
JIS-Z8835に基づくせん断試験において、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30が0kPa超5kPa以下であり、
かつ、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30を、前記せん断試験において、垂直圧力10MPaにおける粉体層のせん断付着力C10で除した値(C30/C10)が0超4以下であり、
前記セルロース複合粉体の水に対する浮上性が下記条件1を満たす、
セルロース複合粉体。
条件1:前記セルロース複合粉体の5%水分散液を振とう後、25℃で12時間静置した後に、水と空気の界面に浮上した浮上物の割合が、前記5%水分散液に含まれるセルロース複合粉体100重量%に対して、50~100重量%である。
【請求項2】
吸油量が20~200ml/100gである、請求項1に記載のセルロース複合粉体。
【請求項3】
前記粉体化合物が、疎水性シリカ、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸系物質及び複合脂質より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のセルロース複合粉体。
【請求項4】
前記セルロース複合粉体に占める、前記粉体化合物の重量割合が、0.1~20重量%である、請求項1~3のいずれかに記載のセルロース複合粉体。
【請求項5】
前記セルロース系物質の表面に前記粉体化合物が付着してなる、請求項1~4のいずれかに記載のセルロース複合粉体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のセルロース複合粉体の製造方法であって、
セルロース系物質と、粉体化合物とを含む粉体をドライブレンドする工程と、メカノケミカル処理する工程とを含み、
前記セルロース系物質がセルロースを含み、前記セルロース系物質に占める前記セルロースの含有量が50~100重量%であり、
前記粉体化合物が炭素数2~30のアルキル基及び/又は2つ以上のメチル基と、官能基を有し、前記官能基がヒドロキシル基、1~3級アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホリルコリン基、スルホン酸塩基及びシリル基より選ばれる少なくとも1つである、セルロース複合粉体の製造方法。
【請求項7】
前記粉体化合物を機械的に粉砕する工程をさらに含む、請求項6に記載のセルロース複合粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚感覚に優れたセルロース複合粉体に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース粉体は、自然由来原料であり、安全性が高く、ソフトな感触から、化粧用配合剤として使用されている。しかし、セルロース粉体は木材パルプ等の繊維状物を機械的に粉砕したものが多く、形状として繊維状、又はいびつな形状をしており、肌上でのすべり性に劣るものであった。
形状として球状であるセルロース粒子については、例えば特許文献1など各種の製法で製造され、使用されているが、皮膚感覚において満足なものといえるものではなかった。
また、例えば特許文献2には、金属石鹸または水添レシチンの水溶液中にセルロースを添加し、表面処理したことを特徴とする微結晶セルロース粉体が記載されているが、撥水、撥油性は改善されているものの、皮膚感覚において満足なものといえるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-181147号公報
【文献】特開2003-146829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、皮膚感覚良好なセルロース複合粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の物性を示すセルロース複合粉体であれば、皮膚感覚良好なセルロース粉体が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明のセルロース複合粉体は、セルロース系物質を含む、セルロース複合粉体であって、平均粒子径が1~100μmであり、JIS-Z8835に基づくせん断試験において、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30が0kPa超5kPa以下であり、かつ、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30を、前記せん断試験において、垂直圧力10MPaにおける粉体層のせん断付着力C10で除した値(C30/C10)が0超4以下である、セルロース複合粉体である。
【0007】
本発明のセルロース複合粉体は、円形度が0.4~1.0であると好ましい。
【0008】
本発明のセルロース複合粉体は、吸油量が20~200ml/100gであると好ましい。
【0009】
本発明のセルロース複合粉体は、前記セルロース系物質の表面に粉体化合物が付着してなると好ましい。
【0010】
本発明のセルロース複合粉体は、前記粉体化合物が、炭素数2~30のアルキル基及び/又は2つ以上のメチル基を有すると好ましい。
【0011】
本発明のセルロース複合粉体は、前記粉体化合物が、ヒドロキシル基、1~3級アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホリルコリン基、スルホン酸基、及びシリル基より選ばれる少なくとも1つの官能基を有すると好ましい。
【0012】
本発明のセルロース複合粉体は、前記セルロース複合粉体に占める、前記粉体化合物の重量割合が、0.1~20重量%であると好ましい。
【0013】
本発明のセルロース複合粉体の製造方法は、上記セルロース複合粉体の製造方法であって、セルロース系物質と、粉体化合物とを含む粉体をドライブレンドする工程と、メカノケミカル処理する工程とを含む、セルロース複合粉体の製造方法である。
【0014】
セルロース複合粉体の製造方法は、前記粉体化合物を機械的に粉砕する工程をさらに含むと、好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセルロース複合粉体は、皮膚感覚が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1で得られるセルロース複合粉体1の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔セルロース複合粉体〕
本発明のセルロース複合粉体は、セルロース系物質を含む、セルロース複合粉体であって、平均粒子径が1~100μmであり、JIS-Z8835に基づくせん断試験において、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30(以下、単にC30ということがある)が、0kPa超5kPa以下であり、かつ、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30を垂直圧力10MPaにおける粉体層のせん断付着力C10(以下、単にC10ということがある)で除した値(C30/C10)(以下、単にC30/C10ということがある)が0超4以下である、セルロース複合粉体である。
【0018】
セルロース複合粉体の平均粒子径が1μm未満であると、滑り性に劣り、滑らかさに劣る。一方、100μm超であると、ざらつきを感じ、滑らかさに劣る。セルロース複合粉体の平均粒子径は、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~40μm、さらに好ましくは1~30μm、特に好ましくは1~20μmである。なお、セルロース複合粉体の平均粒子径の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0019】
せん断付着力は粉体同士の付着性を示し、せん断付着力の値が大きいと付着性が強いことを意味する。C30は粉体層に30MPaかけて圧縮した時の粉体同士の付着性を示す。
30が、5kPa超であると、圧力下において付着性が強く、滑り性に劣る。C30は、好ましくは0kPa超4kPa以下、より好ましくは0kPa超3kPa以下、さらに好ましくは0kPa超2kPa以下である。
【0020】
10は粉体層に10MPaかけて圧縮した時の粉体同士の付着性を示す。C30との差が大きいと、圧力による影響が大きい粉体であることを意味する。
30/C10が4超であると、きしみ感を感じ、肌触りに劣る。C30/C10は、好ましくは0超3以下、より好ましくは0超2.5以下、さらに好ましくは0超2以下、特に好ましくは0超1.5以下である。なお、C30及びC10の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
上記の平均粒子径を有し、C30が0kPa超5kPa以下で、かつ、C30/C10が0超4以下であるセルロース複合粉体は、肌上に粉体を塗布した際に、肌上で適度なしっとり感、すべり性、柔らかさを感じ、きしみ感が少なく、皮膚感覚に優れたものである。
【0021】
本発明のセルロース複合粉体の円形度は、特に限定はないが、0.4~1.0であると好ましい。円形度が0.4未満であると、形状がいびつであることがあり、また、偏平度が高くなりすぎることがあり、肌上でのすべり性が劣ることがある。セルロース複合粉体の円形度は、より好ましくは0.5~1.0、さらに好ましくは0.55~1.0、特に好ましくは0.6~1.0である。なお、セルロース複合粉体の円形度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
セルロース複合粉体の形状は、特に限定はないが、たとえば、粒状、球状、楕円状、丸み状、塊状、鱗片状、板状、繊維状、扁平状、おわん状、凸又は凹レンズ状、などが挙げられ、なかでも、すべり性に優れる点で、球状、楕円状、丸み状、凸レンズ状であると好ましい。
【0022】
本発明のセルロース複合粉体の吸油量は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、20~200ml/100gであると好ましい。吸油量が、上記範囲外であると、皮膚感覚に劣ることがある。セルロース複合粉体の吸油量の下限は、より好ましくは30ml/100g、さらに好ましくは40ml/100g、特に好ましくは50ml/100g、最も好ましくは60ml/100gである。一方、セルロース複合粉体の吸油量の上限は、より好ましくは180ml/100g、さらに好ましくは160ml/100g、特に好ましくは140ml/100g、最も好ましくは120ml/100gである。なお、セルロース複合粉体の吸油量の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0023】
本発明のセルロース複合粉体は、セルロース系物質を必須に含み、上記物性を示すものである。
セルロース系物質は、セルロースを必須に含む物質であり、セルロースを50~100重量%含有すると好ましい。セルロース系物質に占めるセルロースの含有量は、より好ましくは60~100重量%、さらに好ましくは70~100重量%、特に好ましくは80~100重量%、最も好ましくは90~100重量%である。
セルロースは木材、綿花、麻、竹等由来の天然セルロースや、再生あるいは精製セルロースを挙げることができる。これらセルロース原料は、粉砕や切断することで、微粉末化することができる。粉砕には、例えば、ボールミル、振動ミル、カッターミル、ハンマーミル、ウイレーミル、ジェットミル、押出機、臼式粉砕機等が用いられる。上記セルロースの中でも、木材由来の木材パルプを精製した繊維状または粉末状のセルロースが好ましい。
また、クラフトパルプの水スラリーをダイノーミル等で更に微細繊維化したセルロースや、市販のナノセルロースを噴霧乾燥等により造粒したものでもよい。
さらに、セルロース原料を溶解処理して得られる再生セルロースでもよく、例えば、ビスコースを凝固再生浴中に粒状で落下させて凝固再生を行い、セルロース粒子を得る方法などが挙げられる。
上記セルロースは、カルボキシル基、燐酸基、アミノ基等により変性されていてもよい。
【0024】
セルロース系物質は、セルロース以外に、界面活性剤、有機物、及び無機物から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0025】
界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、高級脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、長鎖スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩類等のアニオン活性剤;第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩等のカチオン活性剤;ポリオキシアルキレンオキサイド付加アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、PEG-水添ひまし油、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、高級脂肪酸PEGグリセリル類、高級脂肪酸ソルビタン類、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリンエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート類等のノニオン活性剤;アミノ酸系、ベタイン型、水添レシチン、レシチン等の両性界面活性剤;ジメチコン等のシリコーン系活性剤等が挙げられる。上記界面活性剤は、1種または2種以上併用してもよい。
【0026】
有機物としては、特に限定はないが、カルナバワックス、キャンデリラワックス、高級アルコール、高級脂肪酸類、合成ワックス、パラフィン等のワックス;アーモンド油、オリーブ油、コメヌカ油、スクワラン、シリコーンオイル、ミネラルオイル、安息香酸アルキル等のオイル等が挙げられる。上記有機物は、1種または2種以上併用してもよい。
【0027】
無機物としては、特に限定はないが、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化珪素、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト等が挙げられる。上記無機物は、1種または2種以上併用してもよい。
【0028】
セルロース系物質が、界面活性剤、有機物、及び無機物から選ばれる少なくとも1種を含む場合、セルロースを粉砕及び/又は造粒する際に、界面活性剤、有機物、及び無機物から選ばれる少なくとも1種を混合して、セルロース系物質に含ませることができる。
【0029】
本発明のセルロース複合粉体は、上記セルロース系物質と、粉体化合物を含むと、本願効果を奏する点で好ましい。さらに、セルロース複合粉体は、セルロース系物質の表面に粉体化合物が付着していると好ましい。
【0030】
粉体化合物は、本願効果を奏する点で、炭素数2~30のアルキル基及び/又は2つ以上のメチル基を有すると好ましい。炭素数2~30のアルキル基は、直鎖状の構造を有していてもよく、分枝鎖状の構造を有していてもよい。
アルキル基の炭素数としては、好ましくは炭素数2~25、より好ましくは炭素数2~20、さらに好ましくは2~15である。
【0031】
粉体化合物としては、特に限定されないが、ジメチルシリル化シリカ、トリメチルシリル化シリカ、オクチルシリル化シリカ、ジメチルポリシロキサン化シリカ等の疎水性シリカ;ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セロチン酸等の脂肪酸;ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カリウム、ミスチリン酸亜鉛、ミスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩;パルミチン酸グリセリド、セロチン酸ミリシル、パルミチン酸ミリシル、パルミチン酸セチル等のワックス;N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、N-ステアロイル-L-グルタミン酸、N-ラウロイル-L-アルギニン、N-ラウロイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-オレイルイル-L-リジン、N-パルミトイル-L-リジン、N-ステアノイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-ミリストノイル-L-リジン、N-カプリロイル-L-リジン、N-デカノイル-L-リジン等のアミノ酸系物質;リン脂質、糖脂質等の複合脂質等が挙げられる。上記粉体化合物は、1種又は2種以上併用してもよい。
【0032】
粉体化合物は、ヒドロキシル基、1~3級アミノ基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基、ホスホリルコリン基、スルホン酸塩基、及びシリル基より選ばれる少なくとも1つの官能基を有すると好ましく、上記官能基より選ばれる2つ以上の官能基を有するとさらに好ましい。
【0033】
粉体化合物は、炭素数2~30のアルキル基及び/又は2つ以上のメチル基を有し、さらに上記官能基を有する粉体化合物であると、本発明の効果を奏する点で、好ましい。
上記粉体化合物の中では、例えば、アミノ酸系物質が好ましく、N-ラウロイル-L-リジン、N-カプリロイル-L-リジンがより好ましく、特にN-ラウロイル-L-リジンが好ましい。
【0034】
セルロース複合粉体に占める、粉体化合物の含有量は、特に限定されないが、0.1~20重量%であると好ましい。粉体化合物の含有量が上記範囲外であると、本願効果が十分に得られないことがある。セルロース複合粉体に占める粉体化合物の含有量の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは3重量%、特に好ましくは4重量%である。一方、セルロース複合粉体に占める粉体化合物の含有量の上限は、より好ましくは15重量%、更に好ましくは12重量%、特に好ましくは10重量%である。
【0035】
セルロース複合粉体が、水に対する浮上性が下記条件1を満たすと、粉体同士のすべり性が向上することがあるため、好ましい。
【0036】
条件1:セルロース複合粉体の5%水分散液を振とう後、25℃で12時間静置した後に、水と空気の界面に浮上した浮上物の割合が、前記5%水分散液に含まれるセルロース複合粉体100重量%に対して、50~100重量%である。
【0037】
浮上物の量は、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは80~100質量%である。なお、浮上物の割合は、実施例に記載の方法により求めたものである。
【0038】
〔セルロース複合粉体の製造方法〕
本発明のセルロース複合粉体の製造方法は、上記のセルロース複合粉体を製造できれば、従来公知の方法を用いてもよく、たとえば、溶媒を用いた湿式方法、気相中で処理する乾式方法、機械的な混合粉砕処理やせん断処理を伴うメカノケミカル処理する方法等が挙げられる。なかでも、本願効果を奏する点で、気相中で処理する乾式法、混合粉砕やせん断を伴うメカノケミカル法等により、ドライブレンドにより製造する方法が好ましく、セルロース系物質と、粉体化合物とを含む粉体を、ドライブレンドする工程と、メカノケミカル処理する工程を含むとより好ましい。
また、粉体化合物を機械的に破砕する工程をさらに含むと好ましい。
【0039】
本発明のセルロース複合粉体を製造する装置としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、カッターミル、ハンマーミル、ウイレーミル、ジェットミル、押出機、臼式粉砕機等が挙げられる。
【0040】
セルロース複合粉体の製造方法において、セルロース系物質と、粉体化合物とを含む粉体をメカノケミカル処理する工程を含む場合、使用するセルロース系物質の平均粒子径は1~100μmであると好ましく、より好ましくは1~50μmであり、さらに好ましくは1~40μm、最も好ましくは1~30μmである。
また、使用する粉体化合物は、平均粒子径が1nm~500μmであると好ましく、より好ましくは1nm~300μm、さらに好ましくは1nm~200μm、最も好ましくは1nm~100μmである。粉体化合物は、セルロース複合粉体を製造する工程において、1μm以下に粉砕されると本願効果を奏する点で、好ましい。
【0041】
本発明のセルロース複合粉体は、皮膚感覚に優れるため、化粧料として好適に用いることができる。化粧料に配合して用いる場合、常法に従い、公知の化粧料成分と組み合わせて使用することができる。化粧料成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、アルコール類、水、保湿剤、ゲル化剤、増粘剤、本発明のセルロース複合粉体以外の粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、機能性成分等が挙げられる。
本発明のセルロース複合粉体を配合した化粧料の形態としては、粉末状、固形状、クリーム状、ゲル状、液状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。
本発明のセルロース複合粉体の化粧料への配合量は、特に限定されないが、0.1~50重量%が好ましく、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。
【実施例
【0042】
以下に、本発明のセルロース複合粉体の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例、及び比較例のセルロース複合粉体について次に示す要領で物性の評価を行った。
【0043】
〔平均粒子径〕
測定装置として、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスタサイザー3000、Malvern社製)を使用し、乾式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値を採用した。
【0044】
〔せん断付着力評価〕
JIS-Z8835(一面せん断試験による限界状態線(CSL)及び壁面崩壊線(WYL)の測定法)に基づき、せん断式粉体流動性測定機(Volution Powder Tester、Mercury Scientific社製)を使用し、回転セル型定容積法により測定した。
測定試料(粉体)は水分量10%以下のものを用いた。水分量は赤外線水分計法により測定した。
垂直圧力30MPa及び垂直圧力10MPaにおける粉体層の崩壊挙動を測定し、垂直圧力30MPaにおける粉体層のせん断付着力C30、及びに垂直圧力10MPaにおける粉体層のせん断付着力C10を求めた。
また、得られたC30、及びC10から、C30をC10で除した値(C30/C10)を算出した。
【0045】
〔円形度の測定〕
粒子分析画像装置(モフォロギG3、Malvern社製)を使用し、画像解析法により測定した。
【0046】
〔吸油量の測定〕
JIS-K5101吸油量の測定法に基づき、油としてオレイン酸を用いて測定した。
【0047】
〔水に対する浮上性の評価〕
セルロース複合粉体10gと、水200gを容積500mlの分液漏斗に投入し、上下に20回振り混ぜた後、25℃で12時間静置した後、下層(水分散液)を下から、水と空気の界面に浮上した浮上物を上から取り出した。漏斗に水を200g追加し、再度前記作業を繰り返した。浮上物を80℃で水分量10%以下になるまで乾燥し、乾燥後重量を測定した。水と空気の界面に浮上した浮上物の割合を以下の式(1)により算出した。
浮上物の割合=(分離上層部の乾燥後重量/10g)×100(%) (1)
なお、セルロース複合粉体の水分量は、赤外線水分計法にて測定した。
【0048】
〔皮膚感覚評価〕
パネラー5名により、各種粉体を肌上に塗布した際の粉感について、しっとり感、滑り性、柔らかさ、きしみ感の4点について、1~5段階評価を行った。各々の評価項目における評価基準は以下とした。
しっとり感:しっとり感を感じるほど数値が大きい。
滑り性:滑り性がよいと感じるほど数値が大きい。
柔らかさ:柔らかさを感じるほど数値が大きい。
きしみ感:きしみ感がないと感じるほど数値が大きい。
各々の項目において、各パネラーの評価結果の平均値を求め、平均値の数値が高いほど、皮膚感覚に優れるとして評価した。また、4項目の結果の平均値を算出し、平均値の数値が高いほど、皮膚感覚としてバランスに優れた粉体であるとして評価した。
【0049】
〔比較例1〕
6%水酸化ナトリウム250gに可溶化でんぷんを攪拌しながら添加し、23%でんぷん溶液を得た。これにビスコース80gを添加して室温で攪拌しながらビスコースの微小分散液を調整した。この微小分散液に硫酸を添加してセルロースを凝固・再生した。得られた再生セルロースをグラスフィルターにより分離し、水洗してセルロース微粒子Aを得た。得られたセルロース微粒子Aの平均粒子径は10.0μm、C30は3.1kPa、C30/C10は4.2であった。また、円形度は0.95、吸油量は60ml/100g、水に対する浮上物の量は0%であった。皮膚感覚評価において、しっとり感2、滑り性3.6、柔らかさ2.4、きしみ感2であった。滑り性においては、比較的良好な結果であったが、他の評価項目において、数値が低く、皮膚感覚に劣る結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても2.5であり、粉感としてバランスに劣る結果であった。
【0050】
〔実施例1〕
比較例1のセルロース微粒子Aを20gと、N-ラウロイル-L-リジン粉体(平均粒子径 19.0μm)2gを混合し、ジルコニア製の3mmボール200gと共に容積500mlの密閉容器に入れ、遊星ボールミルにて回転数200rpmで、1時間破砕と複合化を行い、セルロース複合粉体1得た。
得られたセルロース複合粉体1の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
得られたセルロース複合粉体1の平均粒子径は10.0μm、C30は1.3kPa、C30/C10は1.4であった。また、円形度は0.95、吸油量は60ml/100g、水に対する浮上物の量は95%であった。皮膚感覚評価においては、しっとり感4.8、滑り性5、柔らかさ4.4、きしみ感5であった。全ての評価において、数値が高く、皮膚感覚に優れる結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても4.8であり、粉感としてバランスに優れる結果であった。
【0051】
〔比較例2〕
衝突板式ジェット粉砕機を用いて、精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(粒度 100メッシュパス90%以上)を、圧力0.6MPaにて供給量2kg/hで粉砕し、セルロース粉末Bを得た。
得られたセルロース粉末Bの平均粒子径は22.0μm、C30は12kPa、C30/C10は3.4であった。また、円形度は0.70、吸油量は160ml/100g、水に対する浮上物の量は0%であった。皮膚感覚評価において、しっとり感1、滑り性1、柔らかさ2.4、きしみ感1であった。全ての評価項目において、数値が低く、皮膚感覚に劣る結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても1.4であり、粉感としてバランスに劣る結果であった。
【0052】
〔実施例2〕
セルロース微粒子Aに変えて、セルロース粉末Bを用いた以外は、実施例1と同様に行い、セルロース複合粉体2を得た。
得られたセルロース複合粉体2の平均粒子径は18.0μm、C30は3.5kPa、C30/C10は1.9であった。また、円形度は0.63、吸油量は100ml/100g、水に対する浮上物の量は86%であった。皮膚感覚評価においては、しっとり感3.8、滑り性3.6、柔らかさ4.4、きしみ感3.8であった。全ての評価において、数値が高く、皮膚感覚に優れる結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても3.9であり、粉感としてバランスに優れる結果であった。
【0053】
〔比較例3〕
粉砕時間を12時間に変更した以外は、実施例2と同様に行い、セルロース複合粉体3を得た。
得られたセルロース複合粉体3平均粒子径は12.0μm、C30は1.5kPa、C30/C10は4.3であった。また、円形度は0.38、吸油量は130ml/100g、水に対する浮上物の量は100%であった。皮膚感覚評価において、しっとり感4.2、滑り性2.4、柔らかさ3.6、きしみ感2であった。しっとり感においては優れているが、滑り性、きしみ感において数値が低く、皮膚感覚に劣る結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても3.1であり、粉感としてバランスに劣る結果であった。
【0054】
〔実施例3〕
セルロース粉末Bを400gとジメチルシリル化シリカ粉体(1次平均径 16nm)20gをアルミナ製の50mmボール2Lと共に容積5Lのボールミルに入れ30rpm、12時間粉砕と複合化を行い、セルロース複合粉体4を得た。
得られたセルロース複合粉体4の平均粒子径は20.0μm、C30は1.6kPa、C30/C10は2.9であった。また、円形度は0.68、吸油量は70ml/100g、水に対する浮上物の量は90%であった。皮膚感覚評価においては、しっとり感4.6、滑り性4.4、柔らかさ4、きしみ感4.6であった。全ての評価において、数値が高く、皮膚感覚に優れる結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても4.4であり、粉感としてバランスに優れる結果であった。
【0055】
〔比較例4〕
粉砕時間を1時間に変更した以外は実施例3と同様に行い、セルロース複合粉体5を得た。
得られたセルロース複合粉体5の平均粒子径は22.0μm、C30は10kPa、C30/C10は3.3であった。また、円形度は0.70、吸油量は140ml/100g、水に対する浮上物の量は10%であった。皮膚感覚評価において、しっとり感1、滑り性1.2、柔らかさ2.2、きしみ感1であった。全ての評価項目において、数値が低く、皮膚感覚に劣る結果であった。各評価項目のトータルバランス結果としても1.4であり、粉感としてバランスに劣る結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のセルロース複合粉体は、皮膚感覚良好であるので、粉末化粧料、固形化粧料、液状化粧料、クリーム状化粧料、スプレー状化粧料等の化粧料に用いることができる。また、圧縮による凝集性が低いため、樹脂や塗料用の改質剤や、意匠性付与剤等として用いることができる。
図1