(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】無溶媒イオン性液体エポキシ樹脂
(51)【国際特許分類】
C07D 233/61 20060101AFI20240424BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C07D233/61 CSP
C08G59/40
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022188804
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2019543192の分割
【原出願日】2017-10-24
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2016-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリーゼン、コーディー
(72)【発明者】
【氏名】バウティスタ - マルティネス、ホセ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンチャレンコ、ミクハイロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ポール
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102531991(CN,A)
【文献】特開平05-117243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/00-233/96
C08G 59/00- 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミンイミダゾリウム
ハロゲン化物を調製する方法であって、
ハロアルキルアミンをハロゲン化トリフェニルメチルと反応させて、保護されたハロアルキルアミンを生成することであって、ハロアルキルアミンが第1級アミンであり、保護されたハロアルキルアミンが第2級アミンであ
ること;
保護されたハロアルキルアミンをアルキルイミダゾールと反応させて、二置換アルキルイミダゾールを生成すること;
二置換アルキルイミダゾールからトリフェニルメチルを除去して、二置換アルキルイミダゾールのハロゲン化物誘導体を生成すること;及び
二置換アルキルイミダゾールのハロゲン化物誘導体を中和して、ジアミンイミダゾリウム
ハロゲン化物を生成すること、
を含
み、しかも、
ハロアルキルアミンが、ブロモエチルアミンであり、
ハロゲン化トリフェニルメチルが、トリチルクロリドであり、
保護されたハロアルキルアミンが、ブロモエチルトリフェニルメチルアミンであり、
アルキルイミダゾールが、2-メチルイミダゾールであり、
ジアミンイミダゾリウムハロゲン化物が、1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロマイドである、
前記方法。
【請求項2】
ハロアルキルアミンとハロゲン化トリフェニルメチルとの反応が、トリエチルアミンおよびジクロロメタンの存在下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保護されたハロアルキルアミンとアルキルイミダゾールとの反応が、水素化ナトリウムおよびジメチルホルムアミドの存在下で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
二置換アルキルイミダゾールからのトリフェニルメチルの除去が酸性媒体中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
二置換アルキルイミダゾールのハロゲン化物誘導体の中和が塩基性媒体中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載のジアミンイミダゾリウム
ハロゲン化物を含むイオン性液体。
【請求項7】
1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロマイドが、イオン性液体エポキシシステムの硬化剤化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロマイドが、イオン性液体エポキシシステムのイオン性エポキシ化合物と反応するように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イオン性エポキシ化合物が、分子構造(Z
1
-R
2
-Z
2
)を含む(式中、R
2
はイオン性部分であり、Z
1
はエポキシド基を含み、及びZ
2
はエポキシド基を含み、並びにイオン性部分Bは、R
2
に対する対イオンとして作用する。)、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法に従って、1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロマイドを調製すること;
硬化剤化合物としての1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロマイドで、イオン性液体エポキシシステムを調製すること;及び
1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロマイドを、前記イオン性エポキシ化合物と反応させて、ポリマーを生成すること:
を含む、方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、電池の部品として好適である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組入れられる、2016年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/412,741号のより早期の出願日の優先権を主張する。
【0002】
開示の分野
本開示は、新規イオン性エポキシ樹脂、このような樹脂を含有する系及びこのような樹脂を生成又は使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
従来のエポキシ系は、歯科用充填材、プリント回路基板、風力タービン、軽量車両、塗料、外装、床材、接着剤、航空宇宙用途及び他の各種の用途で広く使用されている熱硬化性ポリマーを含むことが多い。この広範囲の用途は、硬度、可撓性、接着性、架橋度、鎖間結合の性質、高強度(引張、圧縮及び曲げ強度)、耐薬品性、耐疲労性、耐食性及び電気抵抗の所望の特性を備えた、各種の硬化反応の可用性並びに関連する化学組成及び構造によって促進される。粘度などの未硬化エポキシ樹脂の特性は、モノマー、硬化剤及び触媒を適切に選択することにより、加工性を促進する。供給源にもよるが、世界のエポキシ市場は、2015年の60~71億米ドルから2020年には92~105億米ドルまで拡大し、生産高は年平均250万トンと見積もられている。
【0004】
従来、エポキシ系の顕著な特性の多くは、甚大な揮発性有機化合物(VOC)の放出という犠牲のもとに得られている。環境保護庁の規制により、全VOCの少なくとも80%を工業的工程で回収することが要求され、製造に携わる作業者の健康上のリスクと共に、全体的な運用コストに甚大な影響がもたらされている。
【発明の概要】
【0005】
要約
硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eを含む無溶媒イオン性エポキシ系が開示されている。硬化剤化合物は分子構造(Y1-R1-Y2)を含み、式中、R1はイオン性部分であり、Y1は求核基であり、Y2は求核基であり、イオン性部分Aは、R1に対して対イオンとして作用する。エポキシ化合物は分子構造(Z1-R2-Z2)を含み、式中、R2はイオン性部分であり、Z1はエポキシド基を含み、Z2はエポキシド基を含み、イオン性部分Bは、R2に対して対イオンとして作用する。実施形態において、エポキシ化合物E及び/又は硬化剤Hは、無溶媒イオン性液体中に含まれるため、従来のエポキシにおけるVOCの問題を大幅に解決される。この系は、促進剤、架橋剤、可塑剤、抑制剤、イオン性疎水性及び/若しくは超疎水性化合物、イオン性親水性化合物、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物、生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物並びに/又は可塑剤化合物をさらに含むことができる。
【0006】
開示されたエポキシ系から生成されたポリマー及びその使用方法も開示されている。ある実施形態において、硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eの重合時に生成されるポリマーは、静電引力によって修復工程を推進するポリマー鎖に沿って安定な電荷が存在するために、自己修復特性を有し得る。実施形態において、硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eの重合時に生成されたポリマーは、高度に規則的な多孔質系を形成し、この多孔質系は、これに限定されないが、濾過膜、2次イオン性液体の交換後の固体電解質、交換膜などに使用できる。ある実施形態において、ポリマーは固体電解質を構成し、固体電解質は電池の部品、コンデンサ、圧電材料及び/又は電気アクチュエータなどの電子部品として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロミドの代表的なNMRスペクトルの一例である。
【
図2】
図2は、γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-,メチルエステルベンゼンブタン酸の代表的なNMRスペクトルの一例である。
【
図3】
図3は、γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタン酸の代表的なNMRスペクトルの一例である。
【
図4】
図4は、本明細書に開示される実施形態による、無溶媒イオン性液体エポキシ樹脂及び硬化剤の例の化学構造を示す。
【
図5】
図5は、本明細書に開示される実施形態による、重合反応後に超疎水性材料を生成する、超疎水性アニオン性部分を含むイオン性液体エポキシ系の一例の化学構造を示す。
【
図6】
図6は、本明細書に開示される実施形態による、重合反応後に超疎水性材料を生成する、超疎水性カチオンを含む例示のイオン性液体エポキシ系の化学構造を示す。
【
図7】
図7は、本明細書に開示される実施形態による、重合反応後に遷移的疎水性-親水性材料を生成するイオン性液体エポキシ系の化学構造を示す。
【
図8】
図8は、本明細書に開示される実施形態による、医薬活性アニオン及びカチオンを含み、重合反応後に薬物放出材料を生成するイオン性液体エポキシ系の化学構造を示す。
【
図9】
図9A~
図9Fは、本明細書に開示される実施形態による、無溶媒イオン性液体エポキシ樹脂の例示的な薬理学的活性イオン(
図9Aは抗ヒスタミン薬、
図9Bは皮膚軟化剤、
図9Cは抗炎症薬、
図9Dは鎮痛剤、
図9Eは抗炎症薬、
図9Fは抗コリン作動性薬)の化学構造を示す。
【
図11】
図11は、本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシド及び硬化剤の合成に使用可能な疎水性アニオンの例の化学構造を示す。
【
図12】
図12は、本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシド及び硬化剤の合成に使用可能な疎水性カチオンの例の化学構造を示す。
【
図13】
図13は、イオン性液体エポキシド及び硬化剤の合成に使用可能な親水性アニオンの例の化学構造を示す。
【
図14】
図14は、本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシド及び硬化剤の合成に使用可能な親水性カチオンの例の化学構造を示す。
【
図15】
図15A~
図15Fは、本明細書に開示される実施形態による、イオン性液体エポキシド系において活性材料として使用される生物活性イオン性液体(BAIL)の例(
図15Aは、1-アルキル-1-メチルピペリジニウム-4-(4-クロロ-2-メチルフェノキシ)ブタノアート、除草剤;
図15Bは、クロリニウムピラジナート、細胞毒性;
図15Cは、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムサリチラート、抗凝固剤-抗炎症剤;
図15Dは、ラニチジニウムドクサート、ヒスタミン皮膚軟化薬;
図15Eは、リドカイニウムドクサート、鎮痛剤-皮膚軟化剤;
図15Fは、ジデシルジメチルアンモニウムイブノプロフェナート、抗菌性-抗炎症剤)の化学構造を示す。
【
図16】
図16A~
図16Fは、本明細書に開示される実施形態による、ポリマー及びエポキシド系において可塑剤として使用されるイオン性液体の例(
図16Aは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート;
図16Bは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;
図16Cは、テトラヘキシルホスホニウムデカノアート;
図16Dは、1-エチルピリジニウムビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシナート;
図16Eは、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート;
図16Fは、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド)の化学構造を示す。
【
図17】
図17A~
図17Dは、本明細書に開示される実施形態による、BPAを含まないイオン性液体エポキシ系(
図17Aは、脂肪族エポキシ樹脂の例;
図17Bは、脂肪族硬化剤の例;
図17Cは、脂肪族エポキシ樹脂の第2の例;
図17Dは、エポキシ樹脂の芳香族非フェノール性の例)の化学構造を示す。
【
図18】
図18A及び
図18Bは、本明細書に開示される実施形態による、固体電解質成分を備えた電気化学セル(
図18A)の例を示す概略図;及び、印加電位による電極の体積変化を伴う電気化学アクチュエータ(
図18B)の例を示す概略図である。
【
図19】
図19は、ポリマー構造の主鎖に固定電荷を含有するポリマー系の修復工程を示す、一連の概略断面図である。機械的損傷(亀裂)が存在してから、本明細書に開示される実施形態による、ポリマー構造中の電荷の静電引力が、材料の「修復」を行った。
【
図20】
図20は、50%重量/重量テトラブチルホスホニウムTFSIイオン性液体の存在下で硬化させたJeffamine-BPAフィルムの一連の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。本明細書に開示される実施形態により、SEM分析の前に、イオン性液体を除去するためにフィルムをメタノールで数回洗浄し、真空オーブン(35℃、完全真空、48時間)中で乾燥させた。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な記述
概要
各種の実施形態は、処理コストを劇的に削減し、関連する健康被害を軽減するために、例えば現在の系の広範な適用性を維持しながら、低い蒸気圧にてVOC放出を制限する、改良エポキシ化学作用の発明者らによる実現に基づいている。本開示は、各種の実施形態に従って、組合されたときに反応して高強度、汎用性及び/又は付加官能性のエポキシ系熱硬化性樹脂を形成する反応性イオン性液体の系を種々に提供する、技術及び機構に関する。これらのエポキシ系は前述のVOCガス放出の問題を解決する。
【0009】
いくつかの実施形態は、例えばアニオン上のエポキシド(グリシジル基)で置換されたアニオンを包含するイオン性液体を合成することを含む。別のこのようなイオン性液体は、ジアミン及びトリアミンの両方のカチオンを含有することができる。なお別のこのようなイオン性液体は、メチル化DABCOカチオン触媒を含有することができる。室温イオン性液体は、標準的な条件下で融解し、ゼロ蒸気圧を含むいくつかの独自の物性を有する無溶媒液体を形成する有機塩である。イオン性液体を形成する考えられるイオン対の組合せは約106と見積もられている。反応性部分を包含する有機塩の合成によって、無溶媒及び無揮発性化学作用が実現される。以下は、実施する一連の例示的な削減である。
【0010】
各種の実施形態のある特徴を説明するために、無溶媒イオン性液体エポキシ系は、各正電荷を有するイオン性部分基R1及びイオン性部分Bに関して、さらに各負電荷を有するイオン性部分基R2及びイオン性部分Aに関して種々に説明される。例えば、スキーム1は、例示的な一実施形態として、硬化剤イオン性液体(IL)中の正のR1
+置換基及び樹脂IL中の負のR2
-を示す。しかし、他の実施形態において、イオン性部分基R1、R2の各電荷符号を逆にすることができる(即ち、イオン性部分A、Bのそれぞれの電荷符号も逆にされる)。
【0011】
複数の実施形態の説明
本明細書では、硬化剤化合物(H)及びエポキシ化合物(E)を含むエポキシ系が開示される。通例、硬化剤化合物及びエポキシ化合物は個別に提供され、次いで使用時に混合されてポリマーを形成する。実施形態において、硬化剤化合物は、
Y
1-R
1-Y
2
よる分子構造を有し、式中、R
1はイオン性部分であり、Y
1及びY
2はR
1に結合している。ある実施形態において、Y
1は求核基であるか又は求核基を含む。ある実施形態において、Y
2は求核基であるか又は求核基を含む。ある実施形態において、Y
1及びY
2は同一である。ある実施形態において、Y
1及びY
2は同一ではない。具体例において、Y
1及びY
2は、NH
2基、SH基、OH基、SeH基及びPH
2基から独立して選択される求核基を含む。ある実施形態において、硬化剤化合物(H)は、例えば、R
1に対する対イオンとして作用するイオン性部分Aを有する分子錯体としての、無溶媒イオン性液体の一部、例えば成分である。Y
1-R
1-Y
2の例を表1並びに
図4、5、6、7、8、10A~10I及び17A~17Dに示す。イオン性対イオンの例を
図4、5、6、7、8、9、10A~10I、13A~17Dに示す。
【0012】
開示されたエポキシ系は、エポキシ化合物Eをさらに含む。実施形態において、エポキシ化合物は、
Z
1-R
2-Z
2
による分子構造を有し、式中、R
2はイオン性部分であり、Z
1はエポキシド基であるか又はエポキシド基を含み、Z
2はエポキシド基であるか又はエポキシド基を含む。ある実施形態において、Z
1及びZ
2は同一である。ある実施形態では、Z
1及びZ
2は同一ではない。ある実施形態において、エポキシ化合物(E)は、例えば、R
2に対する対イオンとして作用するイオン性部分Bを有する分子錯体としての、無溶媒イオン性液体の一部、例えば成分である。Z
1-R
1-Z
2の例を表1並びに
図4、5、6、7、8、10A~10I及び17A~17Dに示す。イオン性対イオンの例を
図4、5、6、7、8、9、10A~10I、13A~17Dに示す。
【0013】
ある実施形態において、エポキシ系は、促進剤、架橋剤、可塑剤又は抑制剤のうちの1つ以上をさらに含む。促進剤、架橋剤、可塑剤及び/又は抑制剤は、硬化剤化合物、エポキシ化合物と共に、又は系の別の成分としてさえ含まれることができる。促進剤、架橋剤、可塑剤及び抑制剤イオンの例を
図10A~10I及び16A~16Fに示す。
【0014】
ある実施形態において、エポキシ系はイオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物をさらに含む。実施形態において、イオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物は、例えば対イオンAとしてのエポキシ及び硬化剤化合物、例えば対イオンBとしてのエポキシ化合物のいずれか若しくは両方を、又は例えば対イオンA及び対イオンBとしての両方を備えることができる。実施形態において、イオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する。このようなイオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物は当分野において既知であり、代表的な例を
図5及び6に見出すことができる。
【0015】
ある実施形態において、エポキシ系はイオン性親水性化合物をさらに含む。実施形態において、イオン性親水性化合物は、例えば対イオンAとしての硬化剤化合物、例えば対イオンBとしてのエポキシ化合物のいずれか若しくは両方を、又は例えば対イオンA及び対イオンBとしての両方を備えることができる。実施形態において、イオン性親水性化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する。このようなイオン性親水性化合物は、当分野において既知である。
【0016】
ある実施形態では、エポキシ系はイオン性遷移的疎水性/親水性化合物をさらに含む。実施形態において、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物は、例えば対イオンAとしての硬化剤化合物、例えば対イオンBとしてのエポキシ化合物のいずれか若しくは両方を、又は例えば対イオンA及び対イオンBとしての両方を備えることができる。実施形態において、イオン性遷移的疎水性/親水性化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する。このようなイオン性遷移的疎水性/親水性化合物は当分野において既知であり、代表的な例を
図7に見出すことができる。
【0017】
ある実施形態において、エポキシ系は生物活性化合物(BAIL、生物活性イオン性液体(Biological Active Ionic Liquid))化合物をさらに含む。実施形態において、生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物は、例えば対イオンAとしての硬化剤化合物、例えば対イオンBとしてのエポキシ化合物のいずれか若しくは両方を、又は例えば対イオンA及び対イオンBとしての両方を備えることができる。実施形態において、生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する。このような生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物は当分野において既知であり、代表的な例を
図8、9A~9F及び15A~15Fに見出すことができる。
【0018】
ある実施形態において、エポキシ系は可塑剤化合物をさらに含む。実施形態において、可塑剤化合物は、例えば対イオンAとしての硬化剤化合物、例えば対イオンBとしてのエポキシ化合物のいずれか若しくは両方を、又は例えば対イオンA及び対イオンBとしての両方を備えることができる。実施形態において、可塑剤化合物は、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する。このような可塑剤化合物は当分野において既知であり、代表的な例を
図16A~16Fに見出すことができる。ある実施形態において、可塑剤化合物は、低い揮発性~ゼロの揮発性を有する。
【0019】
スキーム1
スキーム1は、開示された実施形態による、各イオン性部分基及び対応する対イオンをそれぞれ含む第1の化合物と第2の化合物との重合反応の例を示す。
【化1】
【0020】
より詳細には、スキーム1は、一実施形態による開示されたエポキシ系の例を示す。図示するように、エポキシ系は硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eを含む。図示するように、硬化剤化合物Hは、イオン性部分基R1及び結合した、例えばR1に化学結合したY1基及びY2基を含有するカチオン性分子構造(Y1-R1-Y2)を含む。第1の反応で示すように、硬化剤化合物Hはさらに、R1におけるカチオン性分子構造(Y1-R1-Y2)と併せて、アニオン性部分A-、例えば対イオンを含む。図示するように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基R2及びR2に結合した2個のエポキシド/求電子(本明細書では「Z」で表される)基を含むアニオン性分子構造(Z1-R2-Z2)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、アニオン性分子構造(Z1-R2-Z2)と併せて、例えばR2に対する対イオンとして作用するカチオン性部分B+を含む。第2の反応で示すように、硬化剤化合物Hは、R1におけるアニオン性分子構造(Y1-R1-Y2)と併せて、アニオン性部分A+、例えば対イオンをさらに含む。図示するように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基R2及びR2に結合した2個のエポキシド/求電子(本明細書では「Z」で表される)基を含むカチオン性分子構造(Z1-R2-Z2)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、アニオン性分子構造(Z1-R2-Z2)と併せて、例えばR2に対する対イオンとして作用するアニオン性部分B-を含む。第3の反応で示すように、硬化剤化合物Hはさらに、R1におけるカチオン性分子構造(Y1-R1-Y2)と併せて、アニオン性部分A-、例えば対イオンを含む。図示するように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基R2及びR2に結合した2個のエポキシド/求電子(本明細書では「Z」で表される)基を含むカチオン性分子構造(Z1-R2-Z2)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、アニオン性分子構造(Z-R2-Z)と併せて、例えばR2に対する対イオンとして作用するアニオン性部分B-を含む。第4の反応で示すように、硬化剤化合物Hはさらに、R1におけるカチオン性分子構造(Y1-R1-Y2)と併せて、カチオン性部分A+、例えば対イオンを含む。図示するように、エポキシ化合物Eは、イオン性部分基R2及びR2に結合した2個のエポキシド/求電子(本明細書では「Z」で表される)基を含むカチオン性分子構造(Z1-R2-Z2)を有する。さらに、エポキシ化合物Eは、アニオン性分子構造(Z1-R2-Z2)と併せて、例えばR2に対する対イオンとして作用するカチオン性部分B+を含む。
【0021】
別途記載しない限り、「アニオン性」は、「アニオン性分子構造」、「アニオン性部分」、「アニオン性部分基」などの特定の文脈で使用される場合、負の電荷を与えて、対応する「カチオン性」構造/部分/基の正電荷との結合を容易にする、原子又は分子構造の特徴を示す。例えば、アニオン性部分A-は、イオン結合(例えばA-が単一原子である場合)又は分子間結合によって、イオン性部分基R1に結合することができる。又は若しくは加えて、カチオン性部分B+は、イオン結合(例えばB+が単一原子である場合)又は分子間結合によって、イオン性部分基R2に結合することができる。別の例において、カチオン性部分A+は、例えばイオン結合(例えばA+が単一原子である場合)又は分子間結合によって、イオン性部分基R1に結合することができる。又は若しくは加えて、アニオン性部分B-は、イオン結合(例えばB-が単一原子である場合)又は分子間結合によって、イオン性部分基R2に結合することができる。
【0022】
スキーム1に示す反応経路の例において、Y1及び/又はY2は求核基、例えば-NH2、-SH、-OH、-SeH、-PH2又は他の求核置換基を含むが、これらに限定されない。分子構造(Y1-R1-Y2)において、少なくとも1個のこのようなY基は、完了した重合反応における安定な化学結合、例えば二量体形成のために、分子構造(Z1-R2-Z2)のエポキシド基と反応性であることができる。
【0023】
表1は、それぞれのイオン性液体エポキシ系において種々に利用することができる分子構造の例を示す。本明細書では上付数字(例えばR
1、R
2、R
3、R
4など)を使用して、例えば代わりに下付数字(例えばR
1、R
2)を使用して示される部分基の成分構造を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0024】
R1、R2、R3、R4及びR5は任意の好適な鎖であることができ、Y1及び/又はY2は、例えば、-NH2、-SH、-OH、-SeH、-PH2を含む求核基であることができるが、これに限定されない。Y1及び/又はY2及び並びにエポキシ部分(エポキシ基は、Y1及び/又はY2と反応して、永続的な化学結合を形成するのに好適な任意の求電子基であることができるZ基の例である。)は、R1及びR2の間で交換することができる。アニオン性部分は、任意の好適なアニオン性置換基であることができる。
【0025】
スキーム1に示す実施形態によって例証されるように、イオン性部分基R1に結合したY1基及び/又はY2基は、アミン基であることができる(例えばY1及び/又はY2が第1級アミン基である場合)。硬化剤化合物Hは、エポキシ化合物Eと反応する硬化剤として機能することができる。化合物H、Eの反応によって、Y1基及び/又はY2基の一方と鎖を形成するエポキシド基の1つが生じ、例えば別個の副生成物分子が、アニオン性部分A-とカチオン性部分B+によって形成される。ある実施形態は、著しく低減されたVOC副生成物を与えると同時に、選択されるR1、R2、Z1及び/又はZ2、Y1及び/又はY2、A-、A+及びB-並びにB+の多種多様な組合せを種々に容易にして、所望の材料特性を達成する。
【0026】
スキーム1に示す例示的な実施形態において、第1の化合物はイオン性部分基R1及び対応する対イオンAを含み、第2の化合物はイオン性部分基R2及び対応する対イオンBを含む。スキーム1に示す例証的な反応経路は、重合反応からのダイマー形成の例を表す。
【0027】
イオン性部分R1基及びR2基の各種の組合せが可能であり、対応する対イオン(A及びB)が慎重に選択される場合、2つの化合物は2次イオン性液体(A-B+)を形成することができ、イオン性液体エポキシ系からのVOC放出の可能性が制限される、又は回避さえされる。スキーム1の最後の2つの例に示すように、2次イオン性液体が生成されないが、ポリマー鎖中に永久電荷が残存して、対応する対イオンを補償する場合、同じ電荷イオン性液体樹脂及びイオン性液体硬化剤を使用することもできる。
【0028】
本開示の態様は、本明細書に開示されているエポキシド系の重合によって生成されたポリマーに関する。実施形態において、硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eとの重合時に生成されるポリマーは、静電引力によって修復工程を推進するポリマー鎖に沿って安定な電荷が存在するために、自己修復特性を備える。実施形態において、硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eの重合時に生成されたポリマーは、高度に規則的な多孔質系を形成し、この多孔質系は、これに限定されないが、濾過膜、2次イオン性液体の交換後の固体電解質、交換膜などとして使用できる。実施形態において、ポリマーは固体電解質を含む。本明細書に開示されているポリマーを含む電子部品。実施形態において、電子部品は、電池、コンデンサ、圧電材料及び/又は電気アクチュエータの部品である。
【0029】
合成方法
スキーム2
スキーム2は、本明細書に開示される実施形態によるエポキシ系の硬化剤化合物を合成するための反応例を示す。このような反応は、例えばスキーム1に示すように、硬化剤化合物Hの一部又は全部の生成に寄与することができる。
【0030】
スキーム2に示すように、ジアミンイミダゾリウムイオン性液体のクラスによって、本明細書に開示されるものなどの、エポキシポリマー系における硬化剤として使用することができるアミン化学作用が提供される。例えば、スキーム2の例証的反応は、1,3-ジ(2’-アミノエチレン)-2-メチルイミダゾリウムブロミドの合成を提供する。
【0031】
合成の第1ステップでは、トリチルクロリド(2)を使用してブロモエチルアミン(1)中のアミノ基を保護し、得られた化合物(3)を2-メチルイミダゾール(4)中、塩基性条件下で置換して(DMF中で12時間還流)、2置換中間体(5)を得て、アミン基の脱保護をジオキサン中の酸性媒体中で行い、塩酸塩誘導体(6)を得て、目的化合物(7)を得るためには、NaOHを使用した慎重な中和が必要である。
【化2】
【0032】
目的化合物(7)(
図1参照)の全プロトンNMR分光キャラクタリゼーションを得ると、予想された特性と相関する適正なピークが示された。得られた材料は、高粘度の褐色液体である。さらなる検討により、分解の兆候を伴わずに、6ヶ月の時間枠内でのこの硬化剤の安定性が示されている(実験室の棚、密閉容器中での、不活性雰囲気を用いない貯蔵)。化合物(7)を含むイオン性液体硬化剤を、重合反応の促進剤又は調整剤を用いずに、市販の樹脂(1:1質量比)に対して試験した。試験によって、硬化剤が120℃の硬化温度により、2時間にわたって有効であり、褐色固体材料を生成することが明らかとなった。
【0033】
スキーム3
スキーム3は、本明細書に開示される実施形態によるスキーム1に示すような、アニオン性分子構造(Z
1-R
2-Z
2)を含むエポキシ化合物を合成するための工程における、反応の一例を示す。図示するように、ホスフィナートジエポキシ酸の合成は、改良アルブゾフ反応を使用して生成することができる。スキーム3に示す反応例では、酸性化合物(9)をテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドによって中和して、対応するホスホニウムイオン性液体を得る。ここでR
5はアルキル、例えば1~16個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の炭素原子を有するアルキルであることができる。
【化3】
【0034】
スキーム4
スキーム4は、本明細書に開示される実施形態によるスキーム1に示すような、アニオン性分子構造(Z
1-R
2-Z
2)を含むエポキシ化合物を合成するための工程における、反応の別の例を示す。より詳細には、スキーム4は、モノマー部分へのイオン性部分の付加によるビスフェノールAジグリシジルエーテル(2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン)類似体の合成を示す(スキーム4)。
【化4】
【0035】
スキーム5
スキーム5は、本明細書に開示される実施形態によるスキーム1に示すような、アニオン性分子構造Z
1-R
2-Z
2)を含むエポキシ化合物を合成するための工程における、反応の別の例を示す。スキーム5の例証的なジグリシジル化反応において、4-ヒドロキシ-γ-(4-ヒドロキシフェニル)-γ-メチル-メチルエステルベンゼンブタン酸(10)は、塩基性条件下、100℃にて15分間、エピクロロヒドリン(11)と反応する。このような反応は、γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-,メチルエステルベンゼンブタン酸(12)の90%を上回る収率を生じることができる。このような1つの反応から生じる材料のプロトンNMR分析を
図2に示す。
図2は、化合物(12)が主成分であることを示す特徴的なピークを示す。
【化5】
【0036】
スキーム6
スキーム6は、本明細書に開示される実施形態によるスキーム1に示すような、アニオン性分子構造(Z1-R2-Z2)を含むエポキシ化合物を合成するための工程における、反応の別の例を示す。スキーム6に示す反応は、例えばスキーム5に示す反応から継続することができる。
【0037】
スキーム6に示すように、-OMe(酸素/メチル基)部分は、例えば0℃にて混合されたNaOH(3当量)/アセトン/水を使用して、例えばさらなる精製を必要とせずに加水分解され、1.5時間にわたって室温まで加温することができる(スキーム6)。反応をTLCで追跡した場合、反応時間の延長は、所望の生成物からの逸脱を示すわけではない。遊離酸誘導体(13)、γ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタン酸が定量的収率で得られ、CDCl
3中でのプロトンNMRによって完全にキャラクタリゼーションされた。
【化6】
【0038】
化合物(13)について得られた代表的なスペクトルの一例を
図3に示す。
図3により、化合物(13)のすべての特徴的性質が明らかとなる。反応生成物のNMRは、精製工程中に使用された溶媒(酢酸エチル)の存在も示す。
【0039】
スキーム7
スキーム7は、本明細書に開示される実施形態によるスキーム1に示すような、アニオン性分子構造(Z
1-R
2-Z
2)を含むエポキシ化合物を合成するための工程における、反応の別の例を示す。スキーム7に示す反応は、例えばスキーム6に示す反応から継続することができる。化合物(13)中のエポキシ基を損傷する可能性を軽減するために、等モル量のテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(14)を使用してメタノール中でイオン性液体形成を行って、ベンゼンブタン酸プロトンを中和して(スキーム7)、MeOH(混合時間15分)を迅速に除去し、45℃にて4時間、真空下(30mmHg)にて水を生成し、室温にて完全真空下、24時間にわたって乾燥することができる。このような工程の実験では、暗黄色の粘稠な液体が得られた。
【化7】
【0040】
実施形態において、等モル量の化合物(15)のイオン性液体樹脂及び化合物(7)のイオン性液体硬化剤を組合せ、例えば室温にて手動で混合して、1.5mlシリコン型に注入して、真空炉に一晩、120℃にて12時間配置することができる。組合せた化合物(7)及び(15)の反応によって、脂っぽい性質及びゴム様の靭性を有する固体材料が生じる。このような特性は、エポキシ系中の架橋剤が比較的少量であることに関係し得ると理論付けられた。この仮定を精査するために、新たなイオン性液体硬化剤を調製した。重合工程中に生成した2次イオン性液体は、テトラブチルホスホニウムブロミドである
【0041】
スキーム8
スキーム8は、脂肪族の性質のエポキシ化合物:2,2-ビス(グリシジルオキシメチル)プロピオン酸のテトラブチルホスホニウム塩(21)を合成する方法における反応の一例を示す。合成経路は3つのステップを含む:NaOHを含むトルエン中の臭化アリル(17)による、市販の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(16)のアルキル化。この反応は、完了するために一晩の還流を要し、ジアリル中間体(18)を収率90%で生成する。生成物はきわめて純粋であり、次のステップのためのさらなる精製を必要としない。オレフィン中間体(18)からエポキシド(20)への酸化は、室温にて一晩、m-クロロ過安息香酸(19)を用いて標準方法で行った。この方法は面倒なカラム精製を要するが、安全であり、エポキシ化生成物を収率90%で与える(20)。目的のイオン性液体エポキシ樹脂(21)の形成は、スキーム7の化合物(15)について記載した同様の方法により、等モル量のテトラブチルホスホニウムヒドロキシド(14)を含むメタノール中で行った。
【化8】
【0042】
スキーム9
スキーム9は、正に帯電した複素環コアを有するエポキシ化合物を合成する工程における反応の一例を示す。このようなエポキシイオン性樹脂は、負に帯電した硬化剤(スキーム1の2行目)又は同様に正の硬化剤(スキーム1の3行目)と反応することができる。両方の正に帯電した成分(3行目)の場合には、AB型の追加のイオン性液体は形成されず、このことはある特性にとって有用であり得る。
【化9】
【0043】
合成経路は、2つのステップ:通常のアルキル化条件(NaHCO3-アセトニトリル、一晩還流)での4-ブロモ-1-ブテン(23)による市販のイミダゾール(22)のアルキル化及び4級化を含む。4級化中間体(24)を99%で得た。粗生成物は十分に純粋であり、さらに精製せずに次のステップで使用した。オレフィン性4級化中間体(24)のエポキシ化は、室温で一晩、m-クロロ過安息香酸(19)を用いて、標準方法で行った。脂肪族エポキシイオン性樹脂を用いた類似の場合(スキーム8、化合物20)と同様に、生成物は面倒なカラム精製を必要とした。最終収率は約50%であった。
【0044】
スキーム10
スキーム10は、一実施形態によるエポキシ系の硬化剤化合物を合成するための工程における反応例を示す。この例示的な実施形態では、新しい硬化剤はポリマー鎖間の架橋を促進するために、多分岐構造を有するものである。N1,N1-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン(化合物26、スキーム10)を、BOC(例えばtert-ブチルオキシカルボニル)保護基を使用して、室温条件下にて一晩撹拌しながら保護した。次いで保護化合物(28)をアセトニトリル還流下120℃にて一晩撹拌しながら、ヨウ化メチルを使用してアルキル化し、(28)の完全消費までアルキル化反応をTLCによって追跡し、溶媒及び過剰のMeI(ヨウ化メチル)を回転蒸発により45~50℃及び30mmHgにて4時間除去して、続いて室温及び完全真空にて乾燥させた。試薬の入手しやすさによるMeIアルキル化剤の選択に言及することは重要であるが、選択される選択肢が複数あり、最終選択物を使用して、エポキシ樹脂系全体の特性を調整することができる。HCl-ジオキサン溶液を使用してBOC保護を除去し、NaOHを使用して残りの酸を中和した。このステップの後、LiTFSIの水溶液中でのイオン性液体のメタセシスによって最終イオン性液体を得て、ナノ純水での数回洗浄並びに50℃及び15mmHgでの4時間の回転蒸発によって無機塩を除去した。化合物(30)2-アミノ-N、N-ビス(2-アミノエチル)-N-メチル-エタンアミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドを粘稠な白色液体として得て、室温及び完全真空下にて24時間乾燥させた。
【化10】
【0045】
化合物(15)及び(30)を用いた試験反応の結果の例を本明細書に記載する。より詳細には、2-アミノ-N、N-ビス(2-アミノエチル)-N-メチル-エタンアミニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(30)1グラムをテトラブチルホスホニウムγ-メチル-4-(2-オキシラニルメトキシ)-γ-[4-(2-オキシラニルメトキシ)フェニル]-ベンゼンブタノアート(15)1グラムと手動で混合して(モル比1.5:1)、シリコーン型中で120℃にて12時間硬化させ、薄黄色の硬質固形材料を生じさせ、生成した2次イオン性液体は、テトラブチルホスホニウムビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドである。
【0046】
スキーム11
スキーム11は、一実施形態によるエポキシ系のための調整剤(例えば促進剤又は触媒)の合成を促進する反応の例を示す。このような促進剤/触媒は、スキーム1に示すような反応を促進することができる。重合反応の調整剤を、VOC放出の可能性を軽減又はさらに無効にするイオン性液体又はイオン性化合物として合成することが可能である。最もよく使用されている反応調整剤の1つはDABCOであり、重合反応におけるその触媒効果は、硬化工程の促進を補助する。イオン性DABCO化合物の合成は既知であるが、そのイオン性形態は抗菌剤として試験されているものの、重合調整剤としては試験されていない。例証的な一実施形態において、ダブコニウム化合物は、例えば還流条件下で一晩撹拌しながら、ジクロロメタン中で1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを1-ブロモオクタンで直接アルキル化することによって合成することができる。オクチルダブコニウムブロミドを定量的収率で得ることができる。
【化11】
【0047】
エポキシ技術に対するこの手法の1つの利点は、各材料の特定の用途に従って最終生成物に異なる特徴を与えるために、重合反応中に生成されるイオン性液体の特性を調整できることである。このインサイチュ調整剤は、ポリマー網目の可塑剤として作用するように、及び/又は充填剤として作用するように固化するように、疎水性又は親水性となるように設計することができる。又は若しくは加えて、このようなインサイチュ調整剤は、医療用途の抗菌性イオン性液体を提供する際の使用に適応させることができる。
【0048】
化合物及びエポキシ系の例
図4は、スキーム1に示すものの特徴のいくつか又はすべてを含む、一実施形態によるエポキシ系の一例を示す。より詳細には、
図4は、無溶媒エポキシ樹脂(ジエポキシホスフィナートテトラブチルホスホニウム)及び硬化剤(ジメチルアミンイミダゾリウムブロミド)を含む系の一例を示す。このような系の重合反応が完了すると、副生成物として得られたイオン性液体は、次いで、例えば重合ホスフィナート/ジメチルアミンイミダゾリウム網目の可塑剤として使用することができる、テトラブチルホスホニウムブロミドを含むことができる。
【0049】
図5は、スキーム1に示すものの特徴のいくつか又はすべてを含む、一実施形態によるエポキシ系の一例を示す。より詳細には、
図5は、考えられる無溶媒イオン性液体エポキシ系の一例を示す。例えば、使用者が超疎水性表面を有するポリマーを必要とする場合、アニオン性部分がイオン性液体の疎水性部分である、イミダゾリウムビス[ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニル]イミドイオン性液体の場合のように、重合反応が起こった後に超疎水性イオン性液体が生成されるように、硬化剤及び樹脂を設計することができる。このようなイオン性液体エポキシ系の1つを
図5に示す。
【0050】
図6は、スキーム1に示すものの特徴のいくつか又はすべてを含む、一実施形態によるエポキシ系の一例を示す。より詳細には、
図6は、トリ(n-ヘキシル)[2-エトキシ-2-オキソエチル]アンモニウムなどの超疎水性カチオンの代替的使用を示す。
【0051】
図7は、スキーム1に示すものの特徴のいくつか又はすべてを含む、一実施形態によるエポキシ系の一例を示す。
図7に示す実施形態例の場合、最終生成物の疎水性-親水性の特性を調整することができ、遷移的疎水性を有するイオン性液体を使用する重合工程の後に調整することができる。この場合、疎水性は二酸化炭素の存在によって調整される。CO
2を含まない環境では、この種のイオン性液体は疎水性挙動を有する。材料がCO
2に暴露されると、イオン性液体は親水性状態に遷移する。この現象は可逆的であり、エポキシ樹脂の硬化後も調整可能な材料を与えることができる。ピラゾール、イミダゾール及びトリアゾールから誘導されたアニオン性部分においても、同じ挙動が認められた。
【0052】
図8は、スキーム1に示すものの特徴のいくつか又はすべてを含む、一実施形態によるエポキシ系の一例を示す。硬化工程後の二次イオン性液体の生成は、イオン性液体エポキシ樹脂の各種の医療、医薬及び/又は他の重要な利用分野において有用であり得る。いくつかの実施形態は、例えばイブプロフェナート及びリドカイニウムから誘導されるものなどの、薬理学的活性のイオン性液体を使用する、薬物のための長期放出系を種々に提供する。各種の実施形態により、これらのイオン性液体から複数の組合せを得て、例えば鎮痛剤放出フェルールの可能性を開くことができる(
図8)。このようにして生成された2次イオン性液体は、リドカイニウムイブプロフェナートである。
【0053】
図9A~
図9Fは、一実施形態によるエポキシ系それぞれの、例えばそれぞれスキーム1のアニオン性部分A
-又はカチオン性部分B
+のそれぞれ1つとして種々に機能する、アニオン性部分及びカチオン性部分の各種の例を示す。いくつかの実施形態は、エポキシポリマー技術を医薬活性イオン性液体の新たな分野と種々に融合させる。
図9A~
図9Fは、各種の実施形態による使用に適合させることができる有用な治療材料のいくつかの例を示す。
【0054】
図10A~
図10Iは、それぞれの実施形態によるエポキシ系の硬化剤化合物、エポキシ化合物及び調整剤それぞれの各種の例を示す。
図10A~10Iに示す化合物のいくつか又はすべてはそれぞれ、例えばスキーム1に示す系の特徴のすべてのいくつかを有する、各系の成分であることができる。
【0055】
重要なのは、考えられる対イオンが多数存在することによって、無溶媒イオン性液体エポキシ系の最終使用者に必要とされる多種多様な仕様のいずれかを満足するものである、最終ポリマーの設計が可能となることに注目することである。適正なイオンを組合せることにより、可撓性、硬度、疎水性、硬化時間、硬化温度、設定された2次反応、イオン伝導性などのポリマー特性を調整できる。また、イオン性液体架橋剤、促進剤及び触媒(
図10A~
図10Iに示す例)によって、エポキシ系全体がゼロ蒸気圧成分から確実に構成される。
【0056】
少なくとも一部はこのような特性のいくつか又はすべてのために、一例として、電気エネルギーを貯蔵する電池の開発において重要な熱硬化性固体電解質を製造することが可能であり得る。いくつかの実施形態による無溶媒イオン性液体エポキシ系により、電池構造内への電解質の注入が可能となり、重合反応が引き起こされて、完全に重合したイオン性液体充填固体電解質が提供される。
【0057】
図11は、一実施形態による各エポキシ系それぞれのアニオン性部分、例えばスキーム1に示すアニオン性部分A
-の各種の例を示す。
図12は、一実施形態による各エポキシ系それぞれのカチオン性部分、例えばスキーム1に示すカチオン性部分B
+の各種の例を示す。
【0058】
上述のように、疎水性材料は、硬化剤及びエポキシイオン性液体に対応する対イオンを選択して、イオン性液体エポキシから生成することができる。各種の実施形態により、最終材料のための特定の所望の疎水性レベルに正確に適合する組合せを選択しやすくするために、多種多様の疎水性アニオン(
図11)及び疎水性カチオン(
図12)を利用することができる。
【0059】
図13は、一実施形態による各エポキシ系それぞれのアニオン性部分、例えばスキーム1に示すアニオン性部分A
-の各種の例を示す。
図11に示す例によって例証されるように、2次イオン性液体が顕著な親水性を有するエポキシドイオン性液体を合成することが可能であり得る。多くの無機アニオンはきわめて親水性であり(
図13)、イオン性液体を生成するために嵩高いアニオンを必要とする。
【0060】
図14は、一実施形態による各エポキシ系それぞれのカチオン性部分、例えばスキーム1に示すカチオン性部分B
+の各種の例を示す。
図14は、同じく親水性が高い水素結合供与体部分を有する、無機カチオン及び有機カチオンを示す。
【0061】
図15A~
図15Fは、一実施形態による各エポキシ系それぞれのイオン性液体エポキシ化合物、例えばスキーム1に示すものなどの各種の例を示す。除草特性を有するイオン性液体から抗腫瘍活性を有するイオン性液体まで、広範囲の生物活性イオン性液体(BAIL)がある。いくつかの例を
図15A~
図15Fに示す。新たなBAILが定期的に導入されており、これらのBAILの多くは、適正な硬化工程の後に、薬物溶出材料を提供するイオン性液体エポキシ系における2次イオン性液体として使用することができる。他の例は、フルフェナム酸(非ステロイド系抗炎症薬)及びアンピシリン(抗腫瘍活性)から誘導されたイオン性液体である。
【0062】
図16A~
図16Fは、一実施形態による各エポキシ系の反応によってそれぞれ形成された副生成物化合物の各種の例を示す。
図16A~16Fに示す化合物はそれぞれ、例えばスキーム1に示すアニオンA
-とカチオンB
+との反応によって形成することができる。
【0063】
可塑剤は、各種のポリマーの機械的特性、例えば剛性、変形性、伸び、靭性、工程粘度、使用温度などを調整するために使用される。従来、2種類の可塑剤、即ち内部可塑剤及び外部可塑剤がある。内部可塑剤は、ポリマーの機械的性質、即ち共重合部分、置換基の付加などに影響を及ぼす、ポリマーに対する構造的調整である。外部可塑剤は、ポリマーの結晶度に影響を及ぼす、ポリマー加工中に包含される添加剤である。有機溶媒は通常、可塑剤として利用されるが、その効率は通例、ポリマー構造中の溶媒の耐久性に関連する。多くの一般的な可塑剤は、例えば揮発性、沸点、浸透圧及び溶解力などのパラメータに応じた速度で、時間の経過とともに消散する。このような問題のために、いくつかの実施形態では、比較的低い蒸気圧を有するイオン性液体を、新たなクラスの可塑剤として使用することができる。このような使用は、より良好な溶解力、浸透圧及び低い揮発性を利用することができる。可塑剤として使用されるイオン性液体のいくつかを
図16A~16Fに示し、そのすべてはイオン性液体エポキシド系において2次イオン性液体として使用することができる。
【0064】
図17A~
図17Dは、一実施形態による各エポキシ系それぞれのエポキシ化合物、例えばスキーム1に示すものなどの各種の例を示す。近年、各種のポリマー配合物中のビスフェノールA(BPA)の存在が健康被害の懸念を示すことが見出されている。BPAは、女性及び男性の生殖系における問題、子供の先天性欠損症、代謝性疾患及び免疫系障害に関連/相関している。これら及び/又は他の理由のために、ポリマー製造においてBPA不含有の選択肢を有することは、製造業者にとって重要である。各種の実施形態による無溶媒イオン性液体エポキシド系は低い固有蒸気圧を有し、揮発性BPAのリスクが比較的低いため、それらはヒトへの使用を目的とするポリマー系製品におけるBPA汚染の可能性を軽減するのに重要であり得る。脂肪族系は、BPA問題を軽減することができる手段の一例である。BPA副生成物の可能性を軽減するために提案されたいくつかの構造を、
図17A~
図17Dに示す。
【0065】
図18A~
図18Bは、一実施形態による各エポキシ材料をそれぞれ含むデバイスの一例を示す。例えば、
図18A及び
図18Bの装置はそれぞれ、スキーム1に示す反応によって形成されたものなどの、各エポキシ材料を含むことができる。
【0066】
固体電解質と電気化学アクチュエータは密接に関連している。例えば、両方の系は一般に、2つの電子伝導体(電極)間に電解質(有機又は無機塩)を含有するポリマーマトリックスからなる。主な違いは、固体電解質において、対応する化学作用が通例、印加電位によるイオン移動によって引き起こされる体積変化(
図18A)である、電極内の体積変化を最小化するように設計されていることであり、充放電サイクル中に電解質濃度が一定となる。他方、電気化学アクチュエータにおいては、例えば電極体積及び電解質濃度が変化する、異なる効果が望まれる。したがって、電極内で異なる体積変化を引き起こすための異なる化学作用を必要とすることがあり(
図18B)、セルの片側で圧縮が生じ、反対側で膨張が生じて、この現象は、セルに印加される電位差に比例する運動を生じるために使用される。
【0067】
異なる実施形態によるイオン性液体エポキシド系は、固体電解質及び電気化学アクチュエータのそれぞれの製造に種々に適合させることができる。このようなエポキシド系は、重合反応の副生成物としての2次イオン性液体の生成を伴うポリマーマトリックス(エポキシドポリマー)の合成を容易にすることができる。固体電解質を有する電気化学セルと電気化学アクチュエータとの間の遷移は、2次イオン性液体イオンの設計時選択及び電極の組成に基づくことができる。また、これらの電気機械特性の存在によって、例えばポリマー中の機械的応力と印加された電気化学ポテンシャルとの間の強い対応のために、イオン性液体エポキシド系は圧電材料の設計及び開発に改善をもたらすことができる。この技術の考えられる用途の1つは、多種多様のセンサーの構築である。
【0068】
自己修復ポリマー
図19は、開示された実施形態によるエポキシ材料、例えばスキーム1に示すような反応によって形成されたエポキシ材料を含む、自己修復ポリマーの例を示す。自己修復ポリマーは、引っかき傷、刺し傷又は亀裂などの機械的損傷からそれ自体を修復することができる材料である。モノマー材料及び機械的損傷の形成後に反応する触媒を充填したマイクロカプセルの形成に最も使用されている自己修復特性をポリマーに与える機構が、いくつかある。しかし、修復工程がポリマー構造中に存在する電荷の静電引力の推進力となる、イオノマー鎖からなるポリマー材料もある。
図19は、この種の系の修復工程の断面図を示す。
【0069】
いくつかの実施形態によるイオン性液体エポキシド系の性質により、例えば重合反応中に生成された2次イオン性液体が最終製品の機械的挙動を改善する可塑剤として作用する、材料の自己修復特性を促進に適した、固定電荷を有するポリマー鎖を種々に与えることができる。
【0070】
ポリマーフィルム
図20は、開示された実施形態によるエポキシ材料、例えばスキーム1に示すような反応によって形成されたエポキシ材料を含む、フィルムの例を示す。
【0071】
イオン性液体を用いたエポキシドポリマーの調整を行って、温度、時間、硬化剤/樹脂比などの硬化反応条件を変化させることができる。例えば、エポキシ系中のイオン性液体含有量は、調整剤として利用される場合、2~5部/100ゴム(phr)の範囲であることができる。イオン性液体は、硬化工程中にいくつかのエポキシド成分の粘度を調整するために、5~10phrの範囲で使用することができる。しかし、より高いイオン性液体含有量(全質量の約30~70%重量/重量)では、イオン性液体は最終材料中に空隙を生じさせる傾向がある。このイオン性液体を洗い流した後、得られた材料は10~20μm程度の孔径を有する、高多孔質固体である(
図20、50%テトラブチルホスホニウムTFSIイオン性液体を含むJeffamine-BPA系のSEM画像を参照のこと)。いくつかの実施形態によるイオン性液体エポキシド系は、同様の結果を生じることができ、最終製品は、高度に規則的な孔径を有するフィルタ構造として使用することができる。イオン性液体の含有量を調整することによって、フィルタ系の得られる孔径及び選択性を選択的に設計(「調節」)することが可能であり得る。
【0072】
ある実施形態を本明細書で例示し、説明したが、当業者によって、同じ目的を達成するために計算された多種多様な代替及び/又は同等の実施形態又は手段が、提示した実施形態の代わりとなり得て、範囲から逸脱せずに説明され得ることが認識されるであろう。当業者は、実施形態がきわめて多種多様の方法で実施され得ることを容易に理解するであろう。本出願は、本明細書で論じた実施形態の任意の適合又は変形を含むものである。したがって、実施形態は特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるものであることが明らかである。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
低溶媒又は無溶媒エポキシ系であって、
分子構造(Y
1
-R
1
-Y
2
)を含む硬化剤化合物H
(式中、R
1
はイオン性部分であり、Y
1
は求核基であり、及びY
2
は求核基であり、並びにイオン性部分Aは、R
1
に対する対イオンとして作用する。)及び
分子構造(Z
1
-R
2
-Z
2
)を含むエポキシ化合物E
(式中、R
2
はイオン性部分であり、Z
1
はエポキシド基を含み、及びZ
2
はエポキシド基を含み、並びにイオン性部分Bは、R
2
に対する対イオンとして作用する。)
を含む、低溶媒又は無溶媒エポキシ系。
[2]
前記エポキシ化合物Eが無溶媒イオン性液体である、[1]に記載のエポキシ系。
[3]
Y
1
及びY
2
が、NH
2
基、SH基、OH基、SeH基及びPH
2
基から独立して選択される求核剤を含む、[1]又は[2]に記載のエポキシ系。
[4]
前記硬化剤化合物Hが、無溶媒イオン性液体である、[1]~[3]のいずれかに記載のエポキシ系。
[5]
前記硬化剤化合物が、表1並びに図4、5、6、7、8、10A~10C及び17A~17Dに示す1つ以上の硬化剤化合物から選択される、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ系。
[6]
前記エポキシ化合物が、表1並びに図4、5、6、7、8、10E及び17A~17Dに示す1つ以上のエポキシ化合物から選択される、[5]に記載のエポキシ系。
[7]
促進剤、架橋剤、可塑剤又は抑制剤の1つ以上をさらに含む、[1]~[6]のいずれかに記載のエポキシ系。
[8]
前記促進剤、前記架橋剤、前記可塑剤又は前記抑制剤が、図10D、10F~10I及び16A~16Fに示す1つ以上の促進剤、架橋剤、可塑剤又は抑制剤から選択される、[7]に記載のエポキシ系。
[9]
イオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物をさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載のエポキシ系。
[10]
前記イオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物が、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する、[9]に記載のエポキシ系。
[11]
前記イオン性疎水性及び/又は超疎水性化合物が、図5及び6に示す1つ以上の疎水性及び/又は超疎水性化合物からである、[9]又は[10]に記載のエポキシ系。
[12]
イオン性親水性化合物をさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載のエポキシ系。
[13]
前記イオン性親水性化合物が、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する、[12]に記載のエポキシ系。
[14]
イオン性遷移的疎水性/親水性化合物をさらに含む、[1]~[13]のいずれかに記載のエポキシ系。
[15]
前記イオン性遷移的疎水性/親水性化合物が、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する、[14]に記載のエポキシ系。
[16]
前記イオン性遷移的疎水性/親水性化合物が、図7に示す1つ以上のイオン性遷移的疎水性/親水性化合物からである、[14]又は[15]に記載のエポキシ系。
[17]
生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物をさらに含む、[1]~[16]のいずれかに記載のエポキシ系。
[18]
生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物が、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する、[17]に記載のエポキシ系。
[19]
前記生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物が、図8、9A~9F及び15A~15Fに示す1つ以上の生物活性(BAIL、生物活性イオン性液体)化合物である、[17]又は[18]に記載のエポキシ系。
[20]
可塑剤化合物をさらに含む、[1]~[19]のいずれかに記載のエポキシ系。
[21]
前記可塑剤化合物が、硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時にイオン性液体として放出されて、生成されるポリマーの特性を調整する、[20]に記載のエポキシ系。
[22]
前記可塑剤化合物が、図16A~図16Fに示す1つ以上の可塑剤化合物である、[20]又は[21]に記載のエポキシ系。
[23]
前記可塑剤化合物が低揮発性からゼロ揮発性を有する、[20]~[22]のいずれかに記載のエポキシ系。
[24]
硬化剤化合物H及びエポキシ化合物Eとの重合時に生成されるポリマーが、静電引力によって修復工程を推進するポリマー鎖に沿って安定な電荷が存在するために、自己修復特性を備える、[1]~[23]のいずれかに記載のエポキシ系。
[25]
硬化剤化合物Hとエポキシ化合物Eとの重合時に生成されるポリマーが、高度に規則的な多孔質系を形成する、[1]~[24]のいずれかに記載のエポキシ系。
[26]
前記生成されたポリマーが濾過膜、固体電解質又は交換膜である、[25]に記載のエポキシ系。
[27]
[1]~[26]のいずれかに記載のエポキシド系の重合によって生成されたポリマー。
[28]
前記ポリマーが固体電解質を含む、[27]に記載のポリマー。
[29]
[28]に記載のポリマーを含む電子部品。
[30]
電子部品が、電池、コンデンサ、圧電材料及び/又は電気アクチュエータの部品である、[29]に記載の電子部品。