(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】エチレンビニルアルコール共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/12 20060101AFI20240424BHJP
C08F 218/08 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
C08F8/12
C08F218/08
(21)【出願番号】P 2022200294
(22)【出願日】2022-12-15
【審査請求日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0190000
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン フン
(72)【発明者】
【氏名】コ ミン ス
(72)【発明者】
【氏名】オー サン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ソク キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム クァン イン
(72)【発明者】
【氏名】ホン イン ハ
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-078404(JP,A)
【文献】特開平05-059116(JP,A)
【文献】特表2006-503174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0215733(US,A1)
【文献】特公昭45-012147(JP,B2)
【文献】特公昭45-018301(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0137820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器にエチレン及び酢酸ビニルを含む単量体、そして第1溶媒を投入して重合反応(polymerization)を通じてエチレン酢酸ビニル共重合体を製造する段階;
前記重合反応以後に未反応エチレンを回収する段階;
前記重合反応以後に未反応酢酸ビニルを回収する段階;
前記第1溶媒と相異なる第2溶媒を投入して前記エチレン酢酸ビニル共重合体
からエステル交換反応(transesterification)を通じてエチレンビニルアルコール共重合体
を製造する段階;及び
前記エステル交換反応で生成された
前記第2溶媒由来の酢酸
エステルを分離する段階を含み、
前記第2溶媒由来の酢酸
エステルを分離する段階は、前記エステル交換反応で生成された
前記第2溶媒由来の酢酸
エステル、前記第1溶媒及び前記第2溶媒の共沸混合物を回収する段階;
前記共沸混合物を第1蒸溜塔に投入して前記第1溶媒及び前記第2溶媒の第1混合物、そして前記第2溶媒及び前記第2溶媒由来の酢酸
エステルの第2混合物をそれぞれ分離する段階;
前記第2混合物を前記第1蒸溜塔と運転圧力が相異なる第2蒸溜塔に投入して前記第2溶媒由来の酢酸
エステルを分離する段階;及び
前記第2蒸溜塔で前記第2溶媒及び前記第2溶媒由来の酢酸
エステルの第3混合物を回収する段階を含
み、
前記第2溶媒は、エタノールを含むことを特徴とする、エチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記第2蒸溜塔で回収された前記第3混合物は、前記第1蒸溜塔に再投入されることを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1溶媒及び前記第2溶媒は、それぞれC1~C6のアルコールを含むことを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1溶媒は、t-ブタノールを
含むことを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記第2蒸溜塔の運転圧力は、前記第1蒸溜塔の運転圧力より高いことを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1蒸溜塔の運転圧力及び前記第2蒸溜塔の運転圧力は、それぞれ0.2bar~15barであることを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記第1蒸溜塔の上部の運転温度及び前記第2蒸溜塔の上部の運転温度は、それぞれ40℃~250℃であることを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記第2蒸溜塔に投入される前記第2混合物は、共沸組成に対して前記第2溶媒が前記第2溶媒由来の酢酸
エステルよりさらに高い含量を有することを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記第2蒸溜塔の運転圧力での共沸組成は、前記第1蒸溜塔の運転圧力での共沸組成に対して5モル%以上~25モル%以下の差を有することを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記第2混合物を成す
前記第2溶媒及び
前記第2溶媒由来の酢酸
エステルの含量比は、前記第3混合物を成す
前記第2溶媒及び
前記第2溶媒由来の酢酸
エステルの含量比と相異なることを特徴とする、請求項1に記載のエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンビニルアルコール共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンビニルアルコール共重合体は、優れたガスバリア性、耐溶媒性及び機械的強度などを有しているので、広い範囲にわたってフィルム、シート、容器、繊維などに加工され、新鮮食品の包装、自動車のガソリンタンクなどの多様な用途に用いられている。
【0003】
従来のエチレンビニルアルコール共重合体の工業的製造方法は、酢酸ビニルとエチレンを原料にしてラジカル溶液重合反応によりエチレン酢酸ビニル共重合体をまず合成し、その後、エチレン酢酸ビニル共重合体をアルカリにより加水分解することで製造される。
【0004】
エチレンビニルアルコール共重合体は、ビニルアルコール単量体の不安定性のため、エチレン酢酸ビニル共重合体の前駆体を経ずに直接製造するのは難しい。したがって、既存の工程は、エチレン酢酸ビニル共重合体の前駆体重合とエチレンビニルアルコール共重合体へのエステル交換反応の2種の連続工程でメタノールの単一溶媒を用いることが一般的である。しかし、既存のメタノールの単一溶媒工程は、前駆体であるエチレン酢酸ビニル共重合体の分子量の調節に限界があり、エステル交換反応により生成される副産物である酢酸メチルも経済的価値が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一具現例は、エチレン酢酸ビニル共重合体の重合反応とエステル交換反応でそれぞれ異なる二つの溶媒を用いたエチレンビニルアルコール共重合体の製造時、混合物から経済的価値が高く高純度の酢酸系副産物を分離し得るエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
反応器にエチレン及び酢酸ビニルを含む単量体、そして第1溶媒を投入して重合反応(polymerization)を通じてエチレン酢酸ビニル共重合体を製造する段階;前記重合反応以後に未反応エチレンを回収する段階;前記重合反応以後に未反応酢酸ビニルを回収する段階;前記第1溶媒と相異なる第2溶媒を投入して前記エチレン酢酸ビニル共重合体をエステル交換反応(transesterification)を通じてエチレンビニルアルコール共重合体に製造する段階;及び前記エステル交換反応により生成された第2溶媒由来の酢酸を分離する段階を含み、前記第2溶媒由来の酢酸を分離する段階は、前記エステル交換反応により生成された第2溶媒由来の酢酸、前記第1溶媒及び前記第2溶媒の共沸混合物を回収する段階;前記共沸混合物を第1蒸溜塔に投入して前記第1溶媒及び前記第2溶媒の第1混合物、そして前記第2溶媒及び前記第2溶媒由来の酢酸の第2混合物をそれぞれ分離する段階;前記第2混合物を前記第1蒸溜塔と運転圧力が相異なる第2蒸溜塔に投入して前記第2溶媒由来の酢酸を分離する段階;及び前記第2蒸溜塔で前記第2溶媒及び前記第2溶媒由来の酢酸の第3混合物を回収する段階を含むエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法を提供する。
【0007】
前記第2蒸溜塔で回収された前記第3混合物は、前記第1蒸溜塔に再投入され得る。
【0008】
前記第1溶媒及び前記第2溶媒は、それぞれC1~C6のアルコールを含むことができる。
【0009】
前記第1溶媒は、t-ブタノールを含むことができ、前記第2溶媒は、エタノールを含むことができる。
【0010】
前記第2蒸溜塔の運転圧力は、前記第1蒸溜塔の運転圧力より高くてもよい。
【0011】
前記第1蒸溜塔の運転圧力及び前記第2蒸溜塔の運転圧力は、それぞれ0.2bar~15barであってもよい。
【0012】
前記第1蒸溜塔の上部の運転温度及び前記第2蒸溜塔の上部の運転温度は、それぞれ40℃~250℃であってもよい。
【0013】
前記第2蒸溜塔に投入される前記第2混合物は、共沸組成に対して前記第2溶媒が前記第2溶媒由来の酢酸よりさらに高い含量を有することができる。
【0014】
前記第2蒸溜塔の運転圧力での共沸組成は、前記第1蒸溜塔の運転圧力での共沸組成に対して5モル%以上~25モル%以下の差を有することができる。
【0015】
前記第2混合物を成す第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の含量比は、前記第3混合物を成す第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の含量比と相異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
一具現例によると、エチレン酢酸ビニル共重合体の重合反応とエステル交換反応でそれぞれ異なる二つの溶媒を用いたエチレンビニルアルコール共重合体の製造時、エチレン酢酸ビニル共重合体の重合時に用いられた溶媒を重合以後に完璧に分離しない場合にも混合物から経済的価値が高く且つ高純度の酢酸系副産物を分離して確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一具現例によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造工程図である。
【
図2】一具現例によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造時に酢酸系副産物を分離する工程図である。
【
図3】実施例1によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造時に酢酸系副産物を分離する工程図である。
【
図4】比較例1によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造時に酢酸系副産物を分離する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具現例に対して技術分野において通常の知識を有している者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、具現例は、様々な相異なる形態で具現され得、ここで説明する具現例によって限定されない。
【0019】
一具現例によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法を
図1を参照して説明する。
【0020】
図1は、一具現例によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造工程図である。
【0021】
図1を参照すると、一具現例によるエチレンビニルアルコール共重合体は、大きく重合反応段階、未反応物回収段階、エステル交換反応段階、そして副産物分離段階を含むことができる。
【0022】
具体的に、反応器にエチレン及び酢酸ビニルを含む単量体、そして第1溶媒を投入して重合反応(polymerization)を通じてエチレン酢酸ビニル共重合体を製造する段階、前記重合反応以後に未反応エチレンを回収する段階;前記重合反応以後に未反応酢酸ビニルを回収する段階;前記第1溶媒と相異なる第2溶媒を投入して前記エチレン酢酸ビニル共重合体をエステル交換反応(transesterification)を通じてエチレンビニルアルコール共重合体に製造する段階;そして前記エステル交換反応により生成された酢酸系副産物、すなわち、第2溶媒由来の酢酸を分離する段階(A)を含むエチレンビニルアルコール共重合体が製造され得る。
【0023】
このとき、前記酢酸系副産物、すなわち、第2溶媒由来の酢酸を分離する段階(A)は後述する。
【0024】
一具現例によると、重合反応を通じて前駆体に該当するエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体を製造した以後、エステル交換反応を通じてエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を製造することになる。このとき、重合反応段階とエステル交換反応段階で使われる溶媒は互いに異なるものを用いる。
【0025】
従来には、重合反応段階とエステル交換反応段階で全て同一のメタノール溶媒を用いたが、このようなメタノール単一溶媒工程下では、前駆体として製造されるエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体の分子量の調節に限界があるので、高分子量の樹脂を得にくく、また、エステル交換反応で副産物として生成される酢酸メチルは、経済的価値が低いため活用が極めて難しい。
【0026】
一方、一具現例によると、重合反応段階とエステル交換反応段階でそれぞれ異なる溶媒を用いることによって、重合反応により製造されるエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体の分子量を高めることができ、これによって、高分子量のエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を得ることができ、エステル交換反応により生成された副産物は、経済的価値が高い物質を得ることができる。また、エチレン酢酸ビニル共重合体の製造のための重合反応で用いられた溶媒を重合以後に完璧に分離しない場合にも混合物から副産物を高純度で分離して確保することができる。
【0027】
具体的に、重合反応段階で用いられる第1溶媒は、C1~C6のアルコールを含むことができ、例えば、C1~C4のアルコール、C2~C4のアルコールを用いることができる。より具体的な例示としては、第1溶媒でt-ブタノールを用いることができる。
【0028】
また、エステル交換反応で用いられる第2溶媒は、C1~C6のアルコールを含むことができ、例えば、C1~C4のアルコール、C2~C4のアルコールを用いることができる。より具体的な例示としては、第2溶媒でエタノールを用いることができる。
【0029】
前記重合反応段階では、原料である単量体、すなわち、エチレン及び酢酸ビニルと重合溶媒である第1溶媒の重合反応が行われてエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体が製造される。前記重合反応は、ラジカル溶液重合法で行われ得る。
【0030】
このとき、前記第1溶媒は、前記単量体及び前記第1溶媒の総量に対して1重量%~30重量%で投入され得、例えば、2重量%~20重量%で投入され得る。第1溶媒が前記含量範囲内で投入される場合、適正量のエチレンを含有するエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体を得ることができる。
【0031】
前記重合反応を通じて製造されたエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体は、20モル%~40モル%のエチレンを含むことができ、例えば、25モル%~35モル%のエチレンを含むことができる。
【0032】
前記重合反応を通じて製造されたエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体の重量平均分子量は、100,000g/mol~400,000g/molであってもよい。エチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体の分子量が前記範囲内である場合、エチレンビニルアルコール共重合体だけでなくエチレン酢酸ビニル共重合体のゴムにも適用可能な高い分子量を有することになって製品の物性を向上させ得る。
【0033】
その後、前記重合反応以後に未反応物を回収する段階を経る。具体的に、未反応エチレンを回収する段階と未反応酢酸ビニルを回収する段階を順次的に経ることになり、回収された前記単量体は、前記重合反応に再投入されて再使用され得る。
【0034】
その後、重合反応段階で製造されたエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体は、新たに投入される第2溶媒とともにエステル交換反応を通じてエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体に転換され得る。
【0035】
このとき、前記第2溶媒は、エチレン酢酸ビニル共重合体及び第2溶媒の総量に対して10重量%~60重量%で投入され得、例えば、15重量%~40重量%で投入され得る。
【0036】
一具現例によると、重合反応段階とエステル交換反応段階でそれぞれ異なる溶媒を用い、このとき、前記重合反応段階で用いられた第1溶媒を重合以後に完璧に除去しない場合であっても、一具現例によると、第1溶媒、第2溶媒及び酢酸系副産物の混合物から酢酸系副産物を高純度で分離することができる。
【0037】
その後、後処理又はペレット化を通じて第2溶媒を除去してエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を得ることができる。
【0038】
一具現例によると、前記エステル交換反応以後にエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体だけでなく一緒に生成される酢酸系副産物を高純度で分離することができる。
【0039】
前記酢酸系副産物は、エステル交換反応で用いられた第2溶媒に由来するアルキル基を有する酢酸アルキルであってもよい。例えば、前記第2溶媒でエタノールを用いた場合、得られた酢酸系副産物は酢酸エチルであってもよい。前記得られた酢酸系副産物は、経済的価値が高い物質として非常に有用に用いられ得る。
【0040】
前記酢酸系副産物を分離する工程は、
図2を参照して説明する。
【0041】
図2は、一具現例によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造時に酢酸系副産物を分離する工程図である。
【0042】
図2を参照すると、前記酢酸系副産物、すなわち、第2溶媒由来の酢酸を分離する段階は、前記エステル交換反応で生成された第2溶媒由来の酢酸、前記第1溶媒及び前記第2溶媒の共沸混合物を回収する段階;前記共沸混合物1を第1蒸溜塔10に投入して前記第1溶媒及び前記第2溶媒の第1混合物3、そして前記第2溶媒及び前記第2溶媒由来の酢酸の第2混合物4をそれぞれ分離する段階;前記第2混合物4を前記第1蒸溜塔10と運転圧力が相異なる第2蒸溜塔20に投入して前記第2溶媒由来の酢酸5を分離する段階;及び前記第2蒸溜塔20で前記第2溶媒及び前記第2溶媒由来の酢酸の第3混合物6を回収する段階を含むことができる。
【0043】
また、前記第2蒸溜塔20で回収された前記第3混合物6は、前記第1蒸溜塔10に投入されて再使用され得る。
【0044】
一具現例によると、圧力が互いに異なる2個の蒸溜塔を順次的に用いて第2溶媒由来の酢酸、第1溶媒及び第2溶媒からなる混合物から酢酸系副産物である第2溶媒由来の酢酸を分離することによって、第2溶媒由来の酢酸を高純度で分離確保することができる。
【0045】
具体的に、前記共沸混合物1は、第1蒸溜塔10に投入されるとき、前記第2蒸溜塔20の上部から出た第3混合物6と混合されて一緒に第1蒸溜塔10に投入され得る。
【0046】
前記共沸混合物1の組成比及び第1蒸溜塔10の運転圧力条件によって第1蒸溜塔10の下部から第1溶媒及び第2溶媒の第1混合物3が分離され得る。
【0047】
第1蒸溜塔10の上部では、第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の第2混合物4が分離され、このとき、第2蒸溜塔20の運転圧力での共沸組成に近接した組成で分離され得、これは、第2蒸溜塔20に投入される。
【0048】
前記第2蒸溜塔20に投入された第2混合物4は分離され、第2蒸溜塔20の下部では純粋な第2溶媒由来の酢酸5が回収され、第2蒸溜塔20の上部では第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の第3混合物6が回収される。このとき、前記第3混合物6は、第2蒸溜塔20の運転圧力に該当する共沸組成に近接した組成で回収され得る。このような第3混合物6は、第1蒸溜塔10に再投入され得る。
【0049】
このとき、第2蒸溜塔20の運転圧力での共沸組成は、第1蒸溜塔10の運転圧力での共沸組成に対して5モル%以上35モル%以下の差を有することができ、例えば、15モル%以上25モル%以下の差を有することができる。第1蒸溜塔及び第2蒸溜塔の共沸組成が前記範囲内の差を有する場合、酢酸系副産物である第2溶媒由来の酢酸を高純度で分離確保することができる。
【0050】
前記第1蒸溜塔10の運転圧力は、0.2bar~15barであってもよく、例えば、0.3bar~3barであってもよい。また、前記第2蒸溜塔20の運転圧力は、0.2bar~15barであってもよく、例えば、2bar~10barであってもよい。このとき、前記第2蒸溜塔20の運転圧力は、前記第1蒸溜塔10の運転圧力より高くてもよい。第1蒸溜塔及び第2蒸溜塔の運転圧力がそれぞれ前記範囲内である場合、酢酸系副産物である第2溶媒由来の酢酸を高純度で分離確保することができる。
【0051】
前記第1蒸溜塔10の上部の運転温度は、40℃~250℃であってもよく、例えば、40℃~110℃、40℃~60℃であってもよい。また、前記第2蒸溜塔20の上部の運転温度は、40℃~250℃であってもよく、例えば、40℃~110℃、40℃~60℃であってもよい。第1蒸溜塔及び第2蒸溜塔の上部の運転温度がそれぞれ前記範囲内である場合、酢酸系副産物である第2溶媒由来の酢酸を高純度で分離確保することができる。
【0052】
前記第2蒸溜塔20に投入される前記第2混合物4、すなわち、第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸からなる第2混合物は、共沸組成に対して前記第2溶媒が前記第2溶媒由来の酢酸よりさらに高い含量を有することができる。第2混合物が前記組成を有する場合、酢酸系副産物である第2溶媒由来の酢酸を高純度で分離確保することができる。
【0053】
前記第2混合物4を成す第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の含量比は、前記第3混合物6を成す第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の含量比と相異なっていてもよい。具体的に、前記第2混合物4を成す第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の含量重量比は、15:85~50:50であってもよく、例えば、20:80~40:60であってもよい。また、前記第3混合物6を成す第2溶媒及び第2溶媒由来の酢酸の含量重量比は、40:60~90:10であってもよく、例えば、50:50~70:30であってもよい。第2混合物の組成と第3混合物の組成が前記のように相異なる場合、酢酸系副産物である第2溶媒由来の酢酸を高純度で分離確保することができる。
【実施例】
【0054】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載した実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはいけない。また、ここに記載しない内容は、この技術分野において熟練した者であれば、十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0055】
<エチレンビニルアルコール共重合体の製造>
[実施例1]
反応器にエチレン11重量%、酢酸ビニル63重量%、そして第1溶媒としてt-ブタノール26重量%を投入し、重合反応を55℃及び38kg/cm2gの条件下で行い、30モル%のエチレンを含むエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体を製造した。
【0056】
その後、順次的に未反応エチレン及び未反応酢酸ビニルを回収した。
【0057】
その後、前記製造されたエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体20重量%、未反応の第1溶媒であるt-ブタノール40重量%、及び第2溶媒としてエタノール40重量%を投入し、エステル交換反応を3bar及び110℃の条件下で行ってエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を製造し、このとき、副産物で酢酸エチルも一緒に生成された。
【0058】
反応器の下端では、製造されたエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体と第2溶媒であるエタノールの混合物が回収され、その後、後処理及びペレット化段階を通じて第2溶媒が除去されたエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を確保した。
【0059】
また、反応器の上端では、第1溶媒であるt-ブタノール、第2溶媒であるエタノール、そして副産物で生成された酢酸エチルの共沸混合物が回収された。
【0060】
前記共沸混合物から酢酸エチルを分離する方法は、
図3の通りである。
【0061】
図3は、実施例1によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造時に酢酸系副産物を分離する工程図である。
【0062】
図3を参照すると、t-ブタノール、エタノール及び酢酸エチルの共沸混合物1を、運転圧力が0.4barであり、塔上部の運転温度が48℃であり、塔下部の運転温度が59℃である第1蒸溜塔10に投入し、このとき、第2蒸溜塔20の上部から出たエタノール及び酢酸エチルの第3混合物6と混合して第1蒸溜塔10に投入した。第1蒸溜塔10の下部では、t-ブタノール及びエタノールの第1混合物3が回収され、第1蒸溜塔10の上部では、エタノール26.8重量%及び酢酸エチル73.2重量%の第2混合物4が回収された。その後、第2混合物4を、運転圧力が3.1barであり、塔上部の運転温度が106℃であり、塔下部の運転温度が116℃である第2蒸溜塔20に投入し、第2蒸溜塔20の下部では、99.9重量%の酢酸エチル5が回収され、第2蒸溜塔20の上部では、エタノール39.4重量%及び酢酸エチル60.5重量%の第3混合物6が回収された。前記第3混合物6は、再び第1蒸溜塔10に投入されて再使用された。
【0063】
[比較例1]
実施例1で共沸混合物から酢酸エチルを分離する方法以外は、実施例1と同一の方法でエチレンビニルアルコール(EVOH)共重合体を確保した。
【0064】
ここで、酢酸エチルを分離する方法は、
図4の通りである。
【0065】
図4は、比較例1によるエチレンビニルアルコール共重合体の製造時に酢酸系副産物を分離する工程図である。
【0066】
図4を参照すると、t-ブタノール、エタノール及び酢酸エチルの混合物11を第1蒸溜塔30に投入し、このとき、第2蒸溜塔40で回収されたエチレングリコール15と混合した。エチレングリコールは、相対的に酢酸エチルよりt-ブタノール及びエタノールとの親和力が一層良い物質であるので、第1蒸溜塔30の上部で99.5重量%以上の酢酸エチル12が回収された。残ったt-ブタノール、エタノール及びエチレングリコールの第1混合物13は、第1蒸溜塔30の下部に回収されて第2蒸溜塔40に投入された。第2蒸溜塔40からt-ブタノール及びエタノールの第2混合物14とエチレングリコール15が分離され、分離されたエチレングリコール15は、貯蔵庫16で一部をメイクアップ(makeup)17した後、第1蒸溜塔30に再投入された。
【0067】
前記実施例1及び比較例1を参照すると、一具現例によって運転圧力が互いに異なる2個の蒸溜塔を用いて混合物を分離した実施例1の場合、エチレングリコールを用いた抽出蒸溜方式を使用して混合物を分離した比較例1の場合に比べ、高純度の酢酸エチルを分離確保することができ、製品純度の調節が一層容易であり、作業環境に悪影響を及ぼす抽出剤又は共沸剤を使用する必要がないので、作業環境に優れ、工程上のユーティリティーコストがより安い。
【0068】
一方、比較例1の場合は、抽出剤により製品純度の確保に限界があり、製品の主要不純物である水は精製過程で濃縮される危険がある。
【0069】
以上を通じて本発明の好ましい実施例に対して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。