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特許7478224検査台及び検査台で検査動作を実施する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】検査台及び検査台で検査動作を実施する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/05 20060101AFI20240424BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
G01M15/05
G01M17/007 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022506825
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 AT2020060287
(87)【国際公開番号】W WO2021022310
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】A50698/2019
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ビーア・マクシミーリアーン
(72)【発明者】
【氏名】クヴィック・アンドレアス
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/104270(WO,A1)
【文献】特表2020-501124(JP,A)
【文献】特開2014-174107(JP,A)
【文献】特開2017-090321(JP,A)
【文献】特開2013-019669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00-15/14
G01M 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査台(10)で検査動作を実施する方法であって、
この検査台(10)では、検査対象物(1)が負荷機械(2)と接続され、
検査動作に対応して、目標回転モーメント(T_soll)が、検査台自動化ユニット(5)から回転モーメントコントローラ(R2)に与えられ、それを用いて、回転モーメントコントローラ(R2)によって、負荷機械(2)の実際の回転モーメント(T_ist)が調整され、
検査対象物制御量(SW)が、検査対象物コントローラ(R1)から検査対象物(1)に与えられる、
方法において、
負荷機械(2)の実際の回転数(n)が検出されて、少なくとも一つの限界値(G)からの実際の回転数(n)の少なくとも一つの属性の少なくとも一つの偏差(a,a1,a2)が算出されることと、
この少なくとも一つの偏差(a,a1,a2)に基づき、少なくとも一つの追加的な回転モーメント補正値(Tk)が算出されて、目標回転モーメント(T_soll)に積算されることと、を特徴とする方法。
【請求項2】
実際の回転数(n)の第一の属性として、実際の回転数(n)の値が用いられることと、
限界値(G)として、回転数上限値(n)及び/又は回転数下限値(n)が規定されることと、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実際の回転数(n)の第二の属性として、実際の回転数勾配(dn)が用いられることと、
限界値(G)として、回転数勾配上限値(dn)及び/又は回転数勾配下限値(dn)が規定されることと、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
実際の回転モーメント(T_ist)が検出されて、実際の回転モーメント(T_ist)を制御する回転モーメントコントローラ(R2)にフィードバックされることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
検査対象物制御量(SW)を与えることにより検査対象物(1)の検査対象物実際量(M)を調整するために、目標値(W)が、検査台自動化ユニット(5)から検査対象物コントローラ(R1)に与えられることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
検査対象物(1)の検査対象物実際量(M)が検出されて、検査対象物実際量(M)を制御する検査対象物コントローラ(R1)にフィードバックされることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの限界値(G)が不変に予め設定されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの限界値(G)が、有利には、既知のシステム量に応じて変更可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
検査動作を実施するための検査台(10)であって、
この検査動作を実施するための検査台(10)では、検査対象物(1)が負荷機械(2)と接続され、
検査台自動化ユニット(5)、検査対象物コントローラ(R1)及び回転モーメントコントローラ(R2)が配備され、
この検査対象物コントローラ(R1)が、検査対象物(1)に検査対象物制御量(SW)を与え、
この検査台自動化ユニット(5)が、検査動作に対応して、目標回転モーメント(T_soll)を回転モーメントコントローラ(R2)に与え、これを用いて、この回転モーメントコントローラ(R2)が、負荷機械(2)の実際の回転モーメント(T_ist)を調整する当該検査台において、
負荷機械(2)の実際の回転数(n)を検出する回転数検出ユニット(21)が配備されていることと、
少なくとも一つの限界値(G)からの実際の回転数(n)の少なくとも一つの属性の少なくとも一つの偏差(a,a1,a2)を決定するように構成された少なくとも一つの比較ユニット(V,V1,V2)が配備されていることと、
この少なくとも一つの偏差(a,a1,a2)に基づき、少なくとも一つの追加的な回転モーメント補正値(Tk)を算出して、目標回転モーメント(T_soll)に積算するように構成された少なくとも一つの補正ユニット(B,B1,B2)が配備されていることと、を特徴とする検査台。
【請求項10】
第一の補正ユニット(B1)が、回転数補正コントローラ(Rn)、有利には、PIコントローラと、第一の積算ユニット(B11)とを有し、この回転数補正コントローラ(Rd)が、第一の比較ユニット(V1)から、回転数限界値(n,n)からの実際の回転数(n)の第一の偏差(a1)を受け取って、この第一の偏差(a1)に基づき、回転モーメント補正値(Tk)を算出して、第一の積算ユニット(B11)によって制御回転モーメント(T)に積算することを特徴とする請求項9に記載の検査台。
【請求項11】
前記の回転数補正コントローラ(Rn)が、有利には、第一の回転数限界値を上回った場合に作動可能であるか、有利には、第二の回転数限界値を下回った場合に停止可能であるか、或いはその両方であることを特徴とする請求項10に記載の検査台。
【請求項12】
第二の補正ユニット(B2)が、回転数勾配補正コントローラ(Rdn)、有利には、PIコントローラと、第二の積算ユニット(B12)とを有し、この回転数勾配補正コントローラ(Rdn)が、第二の比較ユニット(V2)から、回転数勾配限界値(dn,dn)からの実際の回転数勾配(dn)の第二の偏差(a2)を受け取って、この第二の偏差(a2)から、回転モーメント補正値(Tk)を算出して、第二の積算ユニット(B12)によって、この回転モーメント補正値(Tk)を制御回転モーメント(T)に積算することを特徴とする請求項9~11に記載の検査台。
【請求項13】
前記の回転数勾配補正コントローラ(Rdn)が、有利には、第一の回転数勾配限界値を上回った場合に作動可能であるか、有利には、第二の回転数勾配限界値を下回った場合に停止可能であるか、或いはその両方であることを特徴とする請求項12に記載の検査台。
【請求項14】
実際の回転モーメント(T_ist)を検出するように構成された回転モーメント検出ユニット(22)が、配備されて、実際の回転モーメント(T_ist)をフィードバックして、実際の回転モーメント(T_ist)を制御するために、回転モーメントコントローラ(R2)と接続されていることを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載の検査台。
【請求項15】
前記の検査台自動化ユニット(5)が、検査対象物コントローラ(R1)に目標値(W)を与えるように構成されていることと、
前記の検査対象物コントローラ(R1)が、検査対象物制御量(SW)を与えることにより検査対象物(1)の検査対象物実際量(M)を調整するように構成されていることと、を特徴とする請求項9~14のいずれか1項に記載の検査台。
【請求項16】
検査対象物(1)の検査対象物実際量(M)を検出するために、実際量検出ユニット(11)が配備され、この実際量検出ユニット(11)が、検査対象物実際量(M)をフィードバックして、検査対象物実際量(M)を制御するために、検査対象物コントローラ(R1)と接続されていることを特徴とする請求項15に記載の検査台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査台で検査動作を実施する方法に関し、この検査台では、検査対象物が負荷機械と接続され、検査動作に応じて、目標回転モーメントが、検査台自動化ユニットから回転モーメントコントローラに与えられ、それを用いて、回転モーメントコントローラによって、負荷機械の実際の回転モーメントが調整され、検査対象物制御量が検査動作コントローラから検査対象物に与えられる。更に、本発明は、検査動作を実施するための検査台に関し、この検査動作を実施するための検査台では、検査対象物が負荷機械と接続され、検査台自動化ユニットが、検査対象物コントローラと回転モーメントコントローラを配備され、この検査対象物コントローラが、検査対象物に検査対象物制御量を与え、この検査台自動化ユニットが、検査動作に応じて、目標回転モーメントを回転モーメントコントローラに与え、それを用いて、回転モーメントコントローラが、負荷機械の実際の回転モーメントを調整する。
【背景技術】
【0002】
燃焼エンジン、燃焼エンジンを備えたパワートレイン及び燃焼エンジンを備えた車両を開発する場合、排気ガスと燃料消費量の挙動の検査が主要な役割を果たす。開発の全ての段階において、燃焼エンジンの排気ガスと燃料消費量の挙動の検査が、エンジン検査台、パワートレイン検査台又はローラー検査台などの検査台で行われる。しかし、その検査に関する法律的な基本条件は、目下のところ非常に大きく変化する。そこで、例えば、新しい欧州ドライビングサイクル(NEDC)などの早期の特に標準化された走行サイクルが、その検査に使用される一方、現実の走行条件下での検査が更に必要とされる。そのために、排気ガス挙動に関して、所謂リアルドライビングエミッション(RDE)の検査動作が使用され、そこでは、所定の走行サイクルが与えられるのではなく、或る程度決められた基本条件だけに合致すればよい多少ともランダムな走行区間を走行している。
【0003】
従って、一方において、現実の道路上での車両を用いた現実のテスト走行から、例えば、GPSデータ、エンジン回転数、走行ペダル位置、車両速度などのテスト走行の測定値を検出する必要がある。そして、他方において、例えば、燃焼エンジンの排気ガス又は燃料消費量の挙動を検出して、評価するためには、検出された測定値から、テスト走行に関して代表的な検査動作を検査台において設定して、次に、検査台で全体的又は部分的に実施できるようにしなければならない。
【0004】
その検査台では、検査対象物、例えば、燃焼エンジンが、単独で(エンジン検査台)、或いは別のコンポーネントと組み合わせて(パワートレイン検査台、ローラー検査台)、検査動作の規定に基づき動かされる。検査動作を実施するために、燃焼エンジンは、検査台で、一つ又は複数の負荷機械(動力計)と直接的又は間接的に接続される。
【0005】
その負荷機械に対しては、例えば、回転モーメント又は回転数が開ループ制御量又は閉ループ制御量としての役割を果たすことができる。回転モーメントコントローラ又は回転数コントローラによって、目標回転モーメント又は目標回転数に応じて、実際の回転モーメント又は実際の回転数を調整することができる。その場合、負荷機械は、例えば、接続された検査台シャフトを介して、検査動作のための負荷モーメントを発生させる。目標回転モーメント又は目標回転数は、検査台自動化ユニットによって、検査動作の規定に基づき回転モーメントコントローラ又は回転数コントローラに与えられる。
【0006】
回転モーメントコントローラ又は回転数コントローラによる実際の回転モーメント又は実際の回転数の調整は、自動化技術の意味における「開ループ制御」の形で行うことができ、それは、実際の回転モーメント又は実際の回転数のフィードバックが行われないことを意味する。それに代わって、実際の回転モーメント又は実際の回転数を回転モーメントコントローラ又は回転数コントローラにフィードバックすることができ、それは、自動化技術の意味における「閉ループ制御」に相当する。
【0007】
検査対象物に対しては、基本的に同じく実際の検査対象物回転数又は実際の検査対象物回転モーメントを閉ループ制御量又は開ループ制御量として「閉ループ制御」又は「開ループ制御」することができる検査対象物コントローラが配備されている。そのために、検査対象物に対して、制御量を与えることができ、制御量としては、回転数又は回転モーメントが、さもなければ、走行ペダル位置、燃料噴射量、実効シリンダー平均圧力、ECUエンジンモーメント、燃料噴射量、燃料噴射時点、点火時点などの回転数又は回転モーメントに作用する制御量が考えられる。例えば、受動的に実施される検査対象物に対しては、具体的な検査対象物実際量を用いずに制御量を調整することもできる。
【0008】
そのため、検査台自動化ユニットから、回転モーメントコントローラに対して、検査動作の規定に基づき、例えば、又もや現実のテスト走行から生成された目標回転モーメントの(時間に関して離散的な、或いは時間に関して連続する)時間的な推移が与えられる。同様に、検査対象物コントローラから、検査対象物に対して、検査対象物制御量が与えられ、それを用いて、検査対象物実際量としての実際の検査対象物回転モーメント又は実際の検査対象物回転数を調整することができる。その場合、負荷機械と検査対象物が、機械的な開ループを形成する。それは、検査対象物実際量(例えば、実際の検査対象物回転モーメント)が単に機械的に検査対象物インタフェースから別の検査対象物インタフェースに伝えられることを意味するのではなく、検査対象物実際量が、完全に一つ又は複数の負荷機械によってサポートされることを意味する。即ち、検査対象物は、検査動作を実施するために、検査対象物インタフェースを介して、一つ又は複数の負荷機械から直に負荷を加えられる。その直接的な負荷印加によって、検査対象物と負荷機械の間の強固な連結を、そのため検査対象物への動的で精密な負荷印加を保証することができる。更に、直接的な負荷印加によって、検査台の簡単な操作が得られ、検査動作を良好にシミュレーションすることが可能である。
【0009】
負荷機械の回転モーメントコントローラに対して、目標回転モーメントが与えられるか、或いは負荷機械の回転数コントローラに対して、目標回転数が与えられる。回転数コントローラが存在しないか、或いは回転モーメントコントローラが存在しない場合、目標回転モーメントと目標回転数の規定の間を切り換えることができるが、回転数コントローラと回転モーメントコントローラを同時に動作させることはできない。しかし、そのような回転数コントローラと回転モーメントコントローラの間の切換が行われる場合、その装置に、不連続性が生じる可能性があり、それは、防止すべきである。不連続性として、例えば、負荷機械の制御モーメントが飛躍的に変化する可能性があり、それにより、実際の回転数と実際の回転モーメントも意図しない形で飛躍的に変化してしまう。
【0010】
特許文献1は、回転数に依存して停止可能な回転モーメントコントローラが配備された検査台を記載している。それにより、回転数が高過ぎる値に到達した時に、制御の停止が実行されることを保証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】ドイツ特許第2828920号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上述した欠点を回避し、出来る限りロバストな制御方法を保証する、一つ又は複数の負荷機械から直に負荷が印加される、検査対象物用の検査台を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、本発明に基づき、負荷機械の実際の回転数を検出し、少なくとも一つの限界値からの実際の回転数の少なくとも一つの属性の少なくとも一つの偏差を算出し、この少なくとも一つの偏差に基づき、少なくとも一つの追加的な回転モーメント補正値を算出して、目標回転モーメントに積算することによって解決される。
【0014】
更に、この課題は、負荷機械の回転数を検出する回転数検出ユニットが検査台に配備され、少なくとも一つの限界値からの実際の回転数の少なくとも一つの属性の少なくとも一つの偏差を決定するように構成された少なくとも一つの比較ユニットが配備され、この少なくとも一つの偏差に基づき、少なくとも一つの追加的な回転モーメント補正値を算出して、目標回転モーメントに積算するように構成された少なくとも一つの補正ユニットが配備されることによって解決される。
【0015】
例えば、駆動部(回転モーメント発生器)、パワートレイン部品、パワートレイン、車両等が、検査対象物としての役割を果たす。検査対象物の駆動入力部及び/又は駆動出力部は、一つ又は複数の負荷機械に接続することができ、この接続は、アダプティブ変速機を介して行うこともできる。
【0016】
そのため、例えば、エンジン検査台、(ディファレンシャル)変速機検査台、パワーパック(エンジンと変速機)、(ハーフシャフトまでの)パワートレイン全体、ローラー検査台、パワートレイン部品(クラッチ、トルクコンバーター、センターディファレンシャル、ディファレンシャルなど)が検査台として考えられる。
【0017】
本発明では、負荷機械に対して、回転モーメントコントローラが配備されていると仮定する。この回転モーメントコントローラは、実施形態に応じて、自動化技術の意味における実際の回転モーメントの「閉ループ制御」又は自動化技術の意味における実際の回転モーメントの「開ループ制御」を実行することができる。
【0018】
本出願では、回転モーメントコントローラと検査対象物コントローラによって、基本的に、それぞれ自動化技術の意味における「開ループ制御」及び/又は「閉ループ制御」を実行することができる。これは、回転モーメントコントローラと検査対象物コントローラが必ずしも自動化技術の意味における純粋な「閉ループコントローラ」である必要はなく、自動化技術の意味における「開ループ制御部」であるとすることもできる。
【0019】
そのため、実際の回転モーメントを調整する、即ち、閉ループ制御又は開ループ制御するために、検査動作に応じて、目標回転モーメントが、検査台自動化ユニットから回転モーメントコントローラに与えられる。これは、制御回転モーメントを与えることで直接的に行うか、或いは回転モーメントと等価の制御量又は回転モーメントを導き出すことができる制御量を与えることによって行うことができる。考え得る別の制御量としては、例えば、電流、電圧、バルブ位置等が挙げられる。
【0020】
検査対象物制御量を検査対象物に与える検査対象物コントローラを検査対象物に配備することができる。この検査対象物コントローラは、検査対象物目標量を与えることにより、検査対象物実際量(検査対象物回転モーメント、検査対象物回転数)の「閉ループ制御」又は検査対象物実際量の「開ループ制御」を実行することができる。この場合、検査対象物目標値を規定することができ、検査対象物が受動式(例えば、純粋に機械式)に構成されている場合、検査対象物に検査対象物目標量だけを与えて、検査対象物目標値を与えなくとも、それで十分であるとすることができる。例えば、走行ペダル位置が検査対象物制御量としての役割を果たすことができ、それにより、T/α閉ループ制御又はT/α開ループ制御(Tは、負荷機械の回転モーメントを表し、αは、走行ペダル位置を表す)と呼ばれる。検査対象物に対して、走行ペダル位置の代わりに、回転数が検査対象物制御量として与えられる場合、T/N閉ループ制御又はT/N開ループ制御と呼ばれ、Tは、負荷機械の回転モーメントを表し、Nは、検査対象物の検査対象物回転数を表す。
【0021】
この列挙は、単なる例であると見做すべきであり、検査対象物コントローラによって、任意の制御量を与えることができ、それは、T/*閉ループ制御又はT/*開ループ制御と呼ばれ、このアスタリスク記号は、検査対象物の任意の制御量に関するダミーとして使用されている。
【0022】
T/*閉ループ制御又はT/*開ループ制御の動作中に、通常は負荷機械の実際の回転モーメントだけを調整することができ、それにより、柔軟性が低くなり、変化する、特に、上昇する実際の回転数に対応できなくなる。実際の回転数が上昇すると、検査台の構成要素、特に、検査対象物が損傷されるかもしれない虞が生じる。従って、本発明では、実際の回転数が、回転モーメント検出ユニットを用いて検出される。更に、実際の回転数の少なくとも一つの属性が限界値と比較されて、限界値からのその属性の偏差が算出される。その時々の偏差に基づき、回転モーメント補正値が算出されて、目標回転モーメントに積算される。それにより、目標回転モーメントによって、検査対象物の実際の回転数に影響を与えることができる。
【0023】
有利には、実際の回転数の第一の属性として、実際の回転数の値が用いられ、限界値として、回転数の上限値及び/又は下限値が規定される。第一の補正ユニットは、回転数補正コントローラ、有利には、PIコントローラと、第一の積算ユニットとを有することができ、この回転数補正コントローラは、第一の比較ユニットから、回転数限界値からの実際の回転数の回転数偏差を受け取って、この回転数偏差に基づき、回転モーメント補正値を算出して、第一の積算ユニットによって、制御回転モーメントに積算する。
【0024】
これによって、属性としての実際の回転数の値を監視することができる。そのため、追加的な回転モーメント補正値が目標回転モーメントに積算されることによって、回転数の上限値/下限値を上回らない/下回らないことを保証できる。
【0025】
この回転数補正コントローラは、有利には、第一の回転数限界値を上回った場合に作動可能であることと、有利には、第二の回転数限界値を下回った場合に停止可能であることとの一つ以上であるとすることができる。この作動及び/又は停止は、使用者及び/又は検査台自動化ユニットによって行うことができる。
【0026】
有利には、実際の回転数の第二の属性として、実際の回転数の実際の回転数勾配が用いられて、限界値として、回転数勾配の上限値及び/又は下限値が規定される。第二の補正ユニットは、回転数勾配補正コントローラ、有利には、PIコントローラと、第二の積算ユニットとを有することができ、この回転数勾配補正コントローラは、第二の比較ユニットから、回転数勾配限界値からの実際の回転数勾配の第一の偏差を受け取って、この第一の偏差から、回転モーメント補正値を算出して、第二の積算ユニットによって、回転モーメント補正値を制御回転モーメントに積算する。
【0027】
実際の回転数勾配が属性として見做される場合、目標回転モーメントを適合させることによって、回転数の急激な変化に対応することができる。それにより、回転数の変化速度が限界値を上回らないことを保証することができる。実際の回転数勾配の検出は、例えば、回転数の二つの連続する絶対値を互いに比較することによって行うことができる。
【0028】
この回転数勾配補正コントローラは、有利には、第一の回転数勾配限界値を上回った場合に作動可能であることと、有利には、第二の回転数勾配限界値を下回った場合に停止可能であることとの一つ以上であるとすることができる。この作動及び/又は停止は、使用者及び/又は検査台自動化ユニットによって行うことができる。
【0029】
有利には、実際の回転数が検出されて、実際の回転モーメントを制御する回転モーメントコントローラにフィードバックされる。それに対応して、実際の回転モーメントを検出するように構成されるとともに、実際の回転モーメントを制御する回転モーメントコントローラにフィードバックするために、回転モーメントコントローラと接続された回転モーメント検出ユニットを配備することができる。
【0030】
それにより、自動化技術の意味における実際の回転モーメントの制御が得られる。従来技術で一般的な制御の通り、実際の回転モーメントを制御するために、実際の回転モーメントが回転モーメントコントローラにフィードバックされて、更に、調節可能でない目標回転モーメントが回転モーメントコントローラに与えられる場合、制御すべき実際の回転モーメントの属性にしか対応することができない。しかし、高い実際の回転数が負荷機械に発生するが、それが必ずしも実際の回転モーメントの上昇を伴う必要が無いケースが起こり得る。特に、燃焼エンジンと負荷機械の間のクラッチが解放された時に、実際の回転数の上昇が起こり得る。そのため、従来技術による実際の回転数の制御によって、そのような回転数の変化に対応することができない。しかし、本発明では、負荷機械の実際の回転数が検出されて、少なくとも一つの限界値からの実際の回転数の少なくとも一つの属性の少なくとも一つの偏差が算出され、その少なくとも一つの偏差に基づき、追加的な回転モーメント補正値が算出されて、目標回転モーメントに積算されるので、変化する実際の回転数に対応することができる。それにより、実際の回転モーメントによって、実際の回転数の属性を所与の限界値内に保持することができる。
【0031】
有利には、検査対象物制御量を与えることによって、検査対象物の検査対象物実際量を調整するために、目標値が、検査台自動化ユニットから検査対象物コントローラに与えられる。そのように、検査台自動化ユニットは、検査対象物コントローラに目標値を与えるように構成することができ、検査対象物コントローラは、検査対象物制御量を与えることによって、検査対象物の検査対象物実際量を調整するように構成することができる。
【0032】
有利には、検査対象物の検査対象物実際量を検出して、検査対象物実際量を制御する検査対象物コントローラにフィードバックすることができる。そのため、検査対象物の検査対象物実際量を検出するために、実際量検出ユニットを配備することができ、この実際量検出ユニットは、検査対象物実際量をフィードバックして、検査対象物実際量を制御するために、検査対象物コントローラと接続されている。それにより、検査対象物コントローラは、検査対象物実際量に関する自動化技術の意味での「閉ループコントローラ」として設計されている。
【0033】
有利には、少なくとも一つの限界値が不変に予め設定されている。少なくとも一つの不変の限界値を与えることによって、実際の回転数の属性に関する不変の制限を実現することができる。下限値が規定される場合、その下限値を下回ることを監視できる。上限値が規定される場合、その上限値を上回ることを監視できる。
【0034】
有利には、少なくとも一つの限界値は、有利には、既知のシステム量に依存して変更可能である。既知のシステム量としては、例えば、検査動作の時間的なフローを用いることができる。例えば、検査対象物を作動させる前に、回転数下限値をゼロにすることができる。検査対象物を作動させた後に、検査動作中の検査対象物の停止を防止するために、回転数下限値を高くすることができる。
【0035】
検査台としてのエンジン検査台で検査対象物としてのエンジンを校正する場合、例えば、目標回転モーメントが負荷機械に与えられ、(又もやエンジンモーメントに影響を与える)走行ペダル位置がエンジンに与えられる。この校正の枠組みにおいて、検査台自動化ユニットによって、例えば、燃料噴射時点が変更される。燃料噴射時点によって、燃焼品質以外に、エンジンのエンジンモーメントも変化するので、動作点が完全には安定せず、それにより、エンジン回転数も変化する可能性がある。極値では、エンジンが損耗するか、或いは停止する可能性があり、それは、実際の回転数の監視とそれへの介入による実際の回転数の制限によって防止することができる。そのため、エンジンを常に所与の動作点付近に保持するように、回転数限界値を動的に一緒に動かすことができるので、動作点のシフト後にエンジンを新たに熱的に安定化させる必要がない。
【0036】
例えば、回転数を制御される検査対象物(エンジン、駆動機械等)と回転モーメントを制御される負荷機械を備えたパワートレイン検査台の動的な動作が規定される場合、例えば、クラッチが解放されたために、検査対象物において、予期しない形で検査対象物モーメントが一時的に維持されないケースが起こり得る。ここで、所与の回転数限界値に依存して、負荷機械によって、実際の回転数の上昇に対応することができる。しかし、この具体的なケースに対応できない時には、回転数限界値を暫定的にシフトすることができると規定される。
【0037】
以下において、本発明の有利な実施形態の例を模式的に図示し、本発明を限定するものではない図1~3を参照して、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】負荷機械用の回転モーメントコントローラを備えた検査台のブロック図
図2】比較ユニットと補正ユニットのブロック図
図3】第一と第二の補正ユニットの特別な実施形態のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1には、検査対象物1のための典型的な検査台10が図示されている。検査台10としては、例えば、エンジン検査台、(ディファレンシャル)変速機検査台、パワーパック(エンジンと変速機)、(ハーフシャフトまでの)パワートレイン全体、ローラー検査台、パワートレイン部品(クラッチ、トルクコンバーター、センターディファレンシャル、ディファレンシャルなど)が考えられる。
【0040】
検査台10には、検査対象物1、例えば、車両の一部としての燃焼エンジンを物理的に設置することができる。しかし、パワートレイン、パワートレインコンポーネント、車両全体又はそれ以外の検査すべきコンポーネントも検査対象物1としての役割を果たすことができる。検査対象物1の駆動入力部及び/又は駆動出力部は、例えば、検査台シャフトを介して、一つ又は複数の負荷機械と接続されている。検査対象物1と負荷機械の間の接続は、アダプティブ変速機を介して行うこともできる。
【0041】
検査台10には、検査対象物コントローラR1と回転モーメントコントローラR2が配備されている。検査対象物コントローラR1及び/又は回転モーメントコントローラR2は、検査台自動化ユニット5の一体的な部分として、独自のユニットとして、検査対象物制御部又は負荷機械制御部のインバータの一部などとして実現することができる。検査対象物コントローラR1及び/又は回転モーメントコントローラR2の機能は、特に、同期機械が検査対象物1及び/又は負荷機械2としての役割を果たす場合に、フィールド指向制御に基づくことができる。フィールド指向制御は、リアルタイムシステム上で動作して、切換パルスをトランジスタに供給することができる。検査対象物コントローラR1及び/又は回転モーメントコントローラR2は、そのようなリアルタイムシステムに統合することもできる。本発明による補正ユニットB,B1,B2も、そのようなリアルタイムシステムに統合することができる。
【0042】
回転モーメントコントローラR2によって、個々の負荷機械4又は複数の負荷機械4の組合せを制御することができる。そのため、検査対象物1は、例えば、検査台加算変速機を介して、複数の負荷機械4と接続することができる。
【0043】
検査台自動化ユニット5は、検査動作を実施するために、それに対応する負荷機械2に関する目標回転モーメントT_sollの時間的な推移を算出して、その目標回転モーメントT_sollを回転モーメントコントローラR2に供給する。目標回転モーメントT_sollの推移を生成するために、車両の検査走行をシミュレーションするシミュレーションハードウェア及び/又はシミュレーションソフトウェアを検査台自動化ユニット5に配備することができる。そのために、例えば、運転者モデル、車両モデル及び周囲環境モデルを有するシミュレーションモデルを検査台自動化ユニット5に実装することができる。例えば、タイヤモデル、道路モデルなどの別のモデルも実装することができる。
【0044】
検査動作中に、負荷機械2において、実際の回転モーメントT_istが調整される。図示された実施形態では、実際の回転モーメントT_istは、回転モーメント検出ユニット22によって検出されて、回転モーメントコントローラR2にフィードバックされる。例えば、検査台シャフトにおける回転モーメントセンサー又はそれ以外の測定量から実際の回転モーメントT_istを推測する観測器が回転モーメント検出ユニット22としての役割を果たすことができる。実際の回転モーメントT_istは、当然のことながら、それ以外の(測定)量から導き出すこともできる。ここで、回転モーメントコントローラR2が、更に、制御回転モーメントTを算出して、それを負荷機械2に送り、負荷機械では、前述した通り、実際の回転モーメントT_istが調整される。
【0045】
検査台10では、検査対象物1が、同じく検査動作の規定に基づき動かされ、検査対象物コントローラR1が検査対象物1に検査対象物制御量SWを与える。これは、例えば、所定の測定量に関する情報を受け取るように行うことができる。有害物質排出量、(燃料)消費量、検査対象物1の音響挙動などを測定量として見做すことができる。測定量に応じて、例えば、検査対象物の排気ガスが供給されて来る排気ガス測定ユニットなどのそれに対応する測定ユニットを配備することができる。排気ガス測定ユニットは、例えば、CO、CO、NOなどの少なくとも一つの有害物質の排出量、炭化水素の全体量(THC)及び(煤粒子などの)粒子数の中の一つ以上を測定する。検査対象物の燃料消費量を測定する燃料消費量測定ユニットも測定ユニットとして配備することができる。
【0046】
図示された実施形態では、検査台自動化ユニット5は、検査動作に応じて検査対象物目標量Wを検査対象物コントローラR1に与えるように構成されている。更に、図示された実施形態では、検査対象物コントローラR1は、検査対象物制御量SWを与えることによって、検査対象物1の検査対象物実際量Mを調整するように構成されており、検査対象物1の検査対象物実際量Mを検出して、検査対象物実際量Mを制御する検査対象物コントローラR1にフィードバックするために、実際量検出ユニット11が配備されている。それにより、ここでは、検査対象物コントローラR1は、検査対象物制御SWを検査対象物1に与えることによって、検査対象物1の検査対象物実際量Mを検査対象物目標量Wに制御するように構成されている。実際のエンジン回転モーメント、実際のエンジン回転数などが検査対象物実際量Mとしての役割を果たすことができ、それに対して、目標エンジン回転モーメント、実際のエンジン回転数などが検査対象物目標量Wとしての役割を果たすことができる。検査対象物制御量SWとして、例えば、走行ペダル位置αを算出して、検査対象物1を制御するエンジン制御ユニットECUに渡すことができる。
【0047】
実際の回転モーメントT_ist、目標回転モーメントT_soll、制御回転モーメントT、検査対象物実際量M、検査対象物目標量W、検査対象物制御量SW、実際の回転数nなどのパラメータは、検査動作中の時間的に連続した、或いは時間的に離散した推移としても理解することができる。
【0048】
図2には、実際の回転数nを検出する回転数検出ユニット21が配備されている。実際の回転数nは、少なくとも一つの限界値Gからの実際の回転数nの少なくとも一つの属性の少なくとも一つの偏差aを決定して、補正ユニットBに転送する比較ユニットVに供給される。そのために、補正ユニットBは、この少なくとも一つの偏差aに基づき、追加的な回転モーメント補正値Tkを算出して、目標回転モーメントT_sollに積算し、それにより、修正された目標回転モーメントT_soll’が得られるように構成されている。ここで、回転モーメントコントローラR2は、実際の回転モーメントT_istを修正された目標回転モーメントT_soll’に制御し、それにより、修正された実際の回転数n’が得られる。即ち、修正された目標回転モーメントT_soll’は、修正された実際の回転モーメントT_ist’を介して実際の回転数nに作用し、それにより、修正された実際の回転数n’が調整される。それによって、(ここでは修正された)実際の回転数nの属性が所与の限界値Gを上回らないことを保証できる。
【0049】
この場合、補正ユニットBは、回転モーメントコントローラR2の前に接続されており、それにより、回転モーメントコントローラR2が回転モーメント補正値Tkを更に訂正すること、即ち、ここで同じく修正された実際の回転モーメントT_ist’が再び修正されていない実際の回転モーメントT_istに制御されてしまうことが防止される。回転モーメントコントローラR2の前に、補正された目標回転モーメントT_soll’への加算によって、目標回転モーメントT_sollが補正されるので、回転モーメントコントローラR2は、そのような目標回転モーメントT_sollへの介入に全く「気付かない」。
【0050】
当然のことながら、追加的な回転モーメント補正値Tkは、偏差aに応じて、正又は負の値を仮定することができ、それにより、目標回転モーメントT_sollへの積算が、修正された目標回転モーメントT_soll’を増大又は減少させることができる。
【0051】
図示されている通り、回転モーメントコントローラR2を用いて、検査対象物の実際の回転モーメントT_istが目標回転モーメントT_sollに応じて制御される場合、実際の回転モーメントT_istの変化に対応できるだけでなく、実際の回転数nの属性も監視することができる。従って、回転モーメント補正値Tkの積算によって、実際の回転数nの属性がその限界値Gを上回らない、或いは下回らないとの結果を生み出すこともできる。
【0052】
実際の回転数nの第一の属性として、実際の回転数n自体が用いられる場合、実際の回転数nを限界値Gとしての回転数上限値n又は回転数下限値nと比較することができる。実際の回転数nと回転数上限値n又は回転数下限値nの間の第一の偏差a1が上回った(或いは、下回った)場合、負又は正の追加的な回転モーメント補正値Tkが算出されて、それが、目標回転モーメントT_sollに積算されて、修正された目標回転モーメントT_soll’を増大又は減少させることとなる。
【0053】
この回転数上限値n又は回転数下限値nは、不変に予め設定されているか、或いは検査動作の時間的な進行中に適合させることができる。この回転数上限値n又は回転数下限値nを別のシステム量、例えば、検査対象物1のシステム量に依存して適合させることも可能である。回転数上限値nと回転数下限値nが実際の回転数nに関する限界値Gとして与えられた場合、例えば、実際の回転数が回転数上限値nと回転数下限値nの間の所与の回転数範囲内に留まるように、負荷機械2の実際の回転数nを制御することができる。
【0054】
実際の回転数nの第二の属性として、回転数の実際の回転数勾配dnが用いられる場合、第二の偏差a2を算出するために、実際の回転数勾配dnを限界値Gとしての回転数勾配上限値dn又は回転数勾配下限値dnと比較することができる。第二の偏差a2が回転数勾配上限値dnを上回った(或いは、回転数勾配下限値dnを下回った)場合、負又は正の追加的な回転モーメント補正値Tkが算出されて、それが、目標回転モーメントT_sollに積算されて、修正された目標回転モーメントT_soll’を増大又は減少させることとなる。
【0055】
しかし、回転数勾配下限値dnの選定、特に、回転数勾配上限値dnの選定は、検査対象物1を保護する役割を果たすことができる。所定の実際の回転数勾配dnを上回ることが、検査対象物にとって有害であると判断された場合、回転数勾配上限値dnは、その所定の実際の回転数勾配dnへの到達が防止されるように選定することができる。
【0056】
この回転数勾配上限値dn又は回転数勾配下限値dnが実際の回転数勾配dnに関する限界値Gとして与えられた場合、例えば、回転数勾配dnが回転数勾配上限値dnと回転数勾配下限値dnの間の所与の回転数勾配範囲内に留まるように、負荷機械2の実際の回転数nを制御することができる。
【0057】
基本的に、この少なくとも一つの偏差aが最大偏差を上回った場合及び/又は最小偏差を下回った場合にのみ、この少なくとも一つの追加的な回転モーメント補正値Tkが目標回転モーメントT_sollに積算されると規定することもできる。
【0058】
図3は、本発明の特別な実際形態を図示しており、第一の補正ユニットB1が回転数補正コントローラRn、有利には、(ここでは、一つのPIコントローラとしてのみ図示されている)上側PIコントローラ及び下側PIコントローラと、第一の積算ユニットB11とを有する。第一の比較ユニットV1は、少なくとも一つの限界値Gとしての回転数限界値n,nからの実際の回転数nの第一の偏差a1を算出して、その第一の偏差a1を回転数補正コントローラRnに渡す。この回転数補正コントローラRnは、第一の偏差a1から回転モーメント補正値Tkを算出して、それを第一の積算ユニットB11に送り、このユニットは、回転モーメント補正値Tkを目標回転モーメントTに積算する。
【0059】
第一の積算ユニットB11は、加算する形で目標回転モーメントT_sollに介入する。これは、積算ユニットB11によって、回転モーメント補正値Tkが目標回転モーメントT_sollに積算される、即ち、符号に応じて加算又は減算されることを意味し、これは、修正された目標回転モーメントT_soll’を生み出す。
【0060】
上側PIコントローラ及び/又は下側PIコントローラの制御範囲、即ち、動作範囲は、有利には、第一の偏差a1と目標回転モーメントT_sollに依存し、それにより、好適な回転モーメント補正値Tkが算出される。上側PIコントローラの制御範囲は、上限値G(回転数上限値n)を上回った場合にのみ、それが介入するように選定することができ、下側PIコントローラの制御範囲は、下限値G(回転数下限値n)を下回った場合にのみ、それが介入するように選定することができる。回転数下限値nとして、有利には、ゼロが規定される。有利には、上側PIコントローラと下側PIコントローラのコントローラパラメータは、共通のパラメータセットによって定義可能である。
【0061】
更に、回転数勾配補正コントローラRdn、有利には、PIコントローラと、第二の積算ユニットB12とを有する第二の補正ユニットB2が配備されている。実際の回転数nから、実際の回転数勾配dnが算出され、それは、第二の比較ユニットV2又はその前に接続された算出ユニットによって行うことができる。図3では、実際の回転数勾配dnは、第二の比較ユニットV2に与えられ、そのため、(図示されていない)算出ユニットによって、実際の回転数nから算出される。第二の比較ユニットV2は、実際の回転数勾配dnと、限界値Gとして存在する回転数勾配上限値dn及び/又は回転数勾配下限値dnとの間の第二の偏差a2を算出する。この第二の偏差a2が、回転数勾配補正コントローラRdnに供給されて、このコントローラは、それを処理して、それに基づき回転モーメント補正値Tkを第二の積算ユニットB21に送る。第二の積算ユニットB21は、目標回転モーメントT_sollに回転モーメント補正値Tkを積算し、これは、修正された目標回転モーメントT_soll’を生み出す。この回転数勾配補正コントローラRdnの実施形態は、回転数補正コントローラRnに関して上述した通り実現することができる。そのため、同じく上側と下側のPIコントローラを配備することができ、これらの制御範囲は、同じく回転数勾配dnが回転数勾配上限値dnを上回るか、回転数勾配下限値dnを下回るか、或いはその両方の場合にのみ、各PIコントローラが介入するように選定することができる。実際の回転数勾配dnは、符号を有する形で規定することができ、回転数勾配下限値dnは、負の符号を有する。
【0062】
そのため、第一の積算ユニットB11が、回転モーメント補正値Tkを修正された目標回転モーメントT_soll’に積算することにより、目標回転モーメントT_sollを修正し、第二の積算ユニットB12が、(別の)回転モーメント補正値Tkを積算することにより、既に修正された目標回転モーメントT_soll’を更に修正することができるか、或いは、第二の積算ユニットB21が第一の積算ユニットB11の前に配置されている場合には、その逆となる。
【0063】
比較ユニットV1,V2、回転数補正コントローラRn及び回転数勾配補正コントローラRdnなどの中の一つ以上は、検査台自動化ユニット5の一体的な部分として、独自のユニットとして、検査対象物コントローラR1及び/又は回転モーメントコントローラR2の機能などとして実現することができる。
【0064】
(例えば、第一の偏差a1が小さ過ぎるので、回転数補正コントローラRnが修正を許容しないために)第一の積算ユニットB11が、目標回転モーメントT_sollを修正しないケースが発生する場合、それにも関わらず、第二の積算ユニットが、追加的な回転モーメント補正値Tkを算出して、目標回転モーメントT_sollに積算することができる。同様に、(例えば、第二の偏差a2に起因して、回転数勾配補正コントローラRdnが修正を許容しないために)第二の積算ユニットB12が、制御回転モーメントTを修正しないケースが発生する場合、それにも関わらず、第一の積算ユニットB11が、追加的な回転モーメント補正値Tkを算出して、目標回転モーメントT_sollに積算することができる。
【0065】
図示された実施形態では、回転数補正コントローラRnと回転数勾配補正コントローラRdnが配備されているが、当然のことながら、回転数補正コントローラRnだけ、或いは回転数勾配補正コントローラRdnだけを使用して、目標回転モーメントT_sollを修正することも考えられる。
【0066】
回転数補正コントローラRnは、作動可能な形及び停止可能な形で構成することができる。そのように、回転数補正コントローラRnは、例えば、実際の回転数が第一の回転数限界値を上回ることに依存して作動し、第二の回転数限界値を下回った場合に停止することができる。第一及び第二の回転数限界値は、当然のことながら、一致することができる。それらが一致する場合、ヒステリシスが形成される。
【0067】
回転数勾配補正コントローラRdnは、作動可能な形及び停止可能な形で構成することができる。そのように、回転数勾配補正コントローラRdnは、例えば、実際の回転数勾配dnが第一の回転数勾配限界値を上回ることに依存して作動し、第二の回転数勾配限界値を下回った場合に停止することができる。第一及び第二の回転数勾配限界値は、当然のことながら、一致することができる。それらが一致する場合、ヒステリシスが形成される。
図1
図2
図3