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特許7478254シリアルバスシステムの加入者局用の通信制御デバイスおよび送信/受信デバイス、ならびにシリアルバスシステムで通信するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】シリアルバスシステムの加入者局用の通信制御デバイスおよび送信/受信デバイス、ならびにシリアルバスシステムで通信するための方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20240424BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20240424BHJP
   G06F 13/42 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
G06F13/38 320A
G06F13/42 310
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022564180
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021059203
(87)【国際公開番号】W WO2021213810
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102020205257.3
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ムッター,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ハートビヒ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】バルカー,シュテッフェン
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/010686(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0083463(US,A1)
【文献】特開2017-028398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/40
G06F 13/38
G06F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルバスシステム(1)の加入者局(10)用の通信制御デバイス(11)であって、
前記加入者局(10)と前記シリアルバスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(20;30)との通信を制御するために送信信号(TxD_PRT)を生成するための通信制御モジュール(113)であって、前記シリアルバスシステム(1)が、前記加入者局(10)と前記シリアルバスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(20;30)間でメッセージ(45;46)を交換するために、少なくとも第1の通信フェーズ(451,452,454,455)および第2の通信フェーズ(453)が使用される、通信制御モジュール(113)と、
前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)の動作モードで、送信/受信デバイス(12)に前記送信信号(TxD_PRT)を送信するための第1の端子(111)であって、前記シリアルバスシステム(1)のバス(40)上に前記送信信号(TxD)を送信するように設計されている第1の端子(111)と、
前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)の前記動作モードで、前記送信/受信デバイス(12)からデジタル受信信号(RxD)を受信するための第2の端子(112)と、
前記第2の通信フェーズ(453)で、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)を介した差動信号伝送のために、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)の伝送方向を同じ方向に切り替えるための動作モード切替えモジュール(15)と、
を備える通信制御デバイス(11)。
【請求項2】
前記動作モード切替えモジュール(15)が、前記第2の通信フェーズ(453)の第1の動作モードで、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)を出力として切り替え、前記送信信号(TxD_PRT)から反転デジタル送信信号(TxD2)を生成し、前記送信信号(TxD_PRT)を前記第1の端子(111)で出力し、前記反転デジタル送信信号(TxD2)を前記第2の端子(112)で出力するように設計されており、および/または
前記動作モード切替えモジュール(15)が、前記第2の通信フェーズ(453)の第2の動作モードで、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)を入力として切り替え、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)で受信された信号(RxD1)および信号(RxD2)からなる差動受信信号から非差動受信信号(RxD_PRT)を生成し、前記通信制御モジュール(113)に出力するように設計されている、
請求項1に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項3】
前記動作モード切替えモジュール(15)が、前記第2の通信フェーズ(453)の前記第1の動作モードで、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)で、所定の期間(T)にわたって、前記送信信号(TxD_PRT)及び前記反転デジタル送信信号(TxD2)を同じレベルで生成して出力するように設計されており、前記送信/受信デバイス(12)の前記動作モードを前記第2の通信フェーズ(453)の前記第1の動作モードから前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)の前記動作モードに切り替えることができることを前記送信/受信デバイス(12)に信号通知する、請求項2に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項4】
前記動作モード切替えモジュール(15)が、
前記送信/受信デバイス(12)の前記動作モードに応じて、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)の前記伝送方向を制御するための方向制御ブロック(151)と、
前記送信信号(TxD_PRT)から反転デジタル送信信号(TxD2)を生成するための符号化ブロック(152)と、
前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)で受信された信号(RxD1)および信号(RxD2)からなる差動受信信号から非差動受信信号(RxD_PRT)を生成するための復号化ブロック(153)と、
前記送信/受信デバイス(12)が前記第2の通信フェーズ(453)の動作モードに切り替えられているときに、前記復号化ブロック(153)によって生成された前記非差動受信信号(RxD_PRT)を出力するためのマルチプレクサ(154)と、
を有する請求項2または3に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項5】
前記動作モード切替えモジュール(15)が、前記送信/受信デバイス(12)の前記動作モードを前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)の前記動作モードから前記第2の通信フェーズ(453)の所定の動作モードに切り替えなければならないことを、前記第1の端子(111)または前記第2の端子(112)を介して前記送信/受信デバイス(12)に信号通知するように設計されている、請求項1~のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項6】
前記通信制御モジュール(113)が、第1のビット時間(T_B1)を備えるビットを備える前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)での前記送信信号(TxD_PRT)を生成するように設計されており、
前記第1のビット時間(T_B1)が、前記第2の通信フェーズ(453)での前記送信信号(TxD_PRT)で前記通信制御モジュール(113)が生成するビットの第2のビット時間(T_B2)よりも少なくとも10倍大きい、
請求項1~のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項7】
前記動作モード切替えモジュール(15)が、前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)の前記伝送方向を、前記送信/受信デバイス(12)が切り替えられている動作モードに応じて選択するように設計されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項8】
前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)で前記バス(40)から受信された信号が、前記第2の通信フェーズ(453)で前記バス(40)から受信された信号とは異なる物理層で生成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項9】
前記第1の通信フェーズ(451)で、前記加入者局(10)と前記シリアルバスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(20;30)のどれが、後続の第2の通信フェーズ(453)で前記バス(40)への少なくとも一時的に排他的であり衝突のないアクセスを得るかが交渉される、請求項1~8のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11)。
【請求項10】
シリアルバスシステム(1)の加入者局(10)用の送信/受信デバイス(12)であって、
前記シリアルバスシステム(1)のバス(40)上に送信信号(TxD_TC)を送信するための、および前記バス(40)から受信された信号からデジタル受信信号(RxD_TC)を生成するための送信/受信モジュール(123)であって、前記シリアルバスシステム(1)において、前記加入者局(10)と前記シリアルバスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(20;30)間でメッセージ(45;46)を交換するために、少なくとも第1の通信フェーズ(451,452,454,455)および第2の通信フェーズ(453)が使用される送信/受信モジュール(123)と、
前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)の動作モードで、通信制御デバイス(11)から送信信号(TxD)を受信するための第1の端子(121)と、
前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)の動作モードで、前記デジタル受信信号(RxD_TC)を前記通信制御デバイス(11)に送信するための第2の端子(122)と、
前記第2の通信フェーズ(453)で、前記第1の端子(121)および前記第2の端子122)を介した差動信号伝送のために、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)の伝送方向を同じ方向に切り替えるための動作モード切替えモジュール(16)と、
を備える送信/受信デバイス(12)
【請求項11】
前記動作モード切替えモジュール(16)が、前記第2の通信フェーズ(453)の第1の動作モードで、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)を入力として切り替え、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)で受信された信号(TxD1_TC)および信号(TxD2_TC)からなる差動デジタル送信信号か送信信号(TxD_TC)を生成するように設計されており、および/または
前記動作モード切替えモジュール(16)が、前記第2の通信フェーズ(453)の第2の動作モードで、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)を出力として切り替え、前記デジタル受信信号(RxD_TC)から反転デジタル受信信号(RxD2_TC)を生成し、前記デジタル受信信号(RxD_TC)を前記第2の端子(122)で出力し、前記反転デジタル受信信号(RxD2_TC)を前記第1の端子(121)で出力するように設計されている、
請求項10に記載の送信/受信デバイス(12)
【請求項12】
前記動作モード切替えモジュール(16)が、前記第2の通信フェーズ(453)の前記第2の動作モードで、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)で、所定の期間(T)にわたって前記デジタル受信信号(RxD_TC)及び前記反転デジタル受信信号(RxD2_TC)を同じレベルで生成して出力するように設計されており、前記通信制御デバイス(12)に追加情報を信号通知し、前記追加情報が、前記シリアルバスシステム(1)において前記メッセージ(45;46)によって前記加入者局(10)と前記シリアルバスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(20;30)間で交換される前記信号の情報への追加である、請求項11に記載の送信/受信デバイス(12)
【請求項13】
前記動作モード切替えモジュール(16)が、
前記送信/受信デバイス(12)の前記動作モードに応じて、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)の前記伝送方向を制御するための方向制御ブロック(161)と、
前記デジタル受信信号(RxD_TC)から反転デジタル受信信号(RxD2_TC)を生成するための符号化ブロック(162)と、
前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)で受信された信号(TxD1_TC)および信号(TxD2_TC)からなる差動デジタル送信信号から送信信号(TxD_TC)を生成するための復号化ブロック(163)と、
前記送信/受信デバイス(12)が前記第2の通信フェーズ(453)の動作モードに切り替えられているときに、前記復号化ブロック(163)によって生成された前記送信信号(TxD_TC)を出力するためのマルチプレクサ(164)と、
を有する請求項11または12に記載の送信/受信デバイス(12)。
【請求項14】
前記送信/受信モジュール(123)が、前記送信信号(TxD_TC)を差動信号(CAN_H、CAN_L)として前記バス(40)に送信するように設計されている、
請求項1013のいずれか一項に記載の送信/受信デバイス(12)。
【請求項15】
前記動作モード切替えモジュール(16)が、前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)の前記伝送方向を、前記送信/受信デバイス(12)が切り替えられている動作モードに応じて選択するように設計されている、請求項10~14のいずれか一項に記載の送信/受信デバイス(12)
【請求項16】
前記第1の通信フェーズ(451,452,454,455)で前記バス(40)から受信された信号が、前記第2の通信フェーズ(453)で前記バス(40)から受信された信号とは異なる物理層で生成されている、請求項10~15のいずれか一項に記載の送信/受信デバイス(12)
【請求項17】
前記第1の通信フェーズ(451)で、前記加入者局(10)と前記シリアルバスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(20;30)のどれが、後続の第2の通信フェーズ(453)で前記バス(40)への少なくとも一時的に排他的であり衝突のないアクセスを得るかが交渉される、請求項10~16のいずれか一項に記載の送信/受信デバイス(12)
【請求項18】
バス(40)と、
少なくとも2つの加入者局(10;20;30)であって、互いにシリアル通信することができるように前記バス(40)を介して互いに接続されており、前記加入者局(10;20;30)のうちの少なくとも1つの加入者局(10;20;30)が、請求項1~のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11;21;31)と、請求項1017のいずれか一項に記載の送信/受信デバイス(12;22;32)とを有する、加入者局(10;20;30)と、
を備えるシリアルバスシステム(1)。
【請求項19】
シリアルバスシステム(1)で通信するための方法であって、シリアルバスシステム(1)のために加入者局(10;20;30)で実行され、前記シリアルバスシステム(1)の加入者局(10;20;30)間でメッセージ(45;46)を交換するために、少なくとも1つの第1の通信フェーズ(451,452,454,455)および第2の通信フェーズ(453)が使用され、前記加入者局(10;20;30)が、請求項1~のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11;21;31)と、請求項1017のいずれか一項に記載の送信/受信デバイス(12;22;32)とを有し、
前記第2の通信フェーズ(453)で、前記通信制御デバイス(11;21;31)用の動作モード切替えモジュール(15;25;35)によって、前記通信制御デバイス(11;21;31)用の前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)の伝送方向を同じ方向に切り替えるステップと、
前記第2の通信フェーズ(453)で、前記送信/受信デバイス(12;22;32)用の動作モード切替えモジュール(16;26;36)によって、前記送信/受信デバイス(12;22;32)用の前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)の伝送方向を同じ方向に切り替えるステップであって、前記方向が、前記通信制御デバイス(11;21;31)用の前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)が切り替えられている方向とは異なるステップと、
前記通信制御デバイス(11;21;31)用の前記第1の端子(111)および前記第2の端子(112)と前記送信/受信デバイス(12;22;32)用の前記第1の端子(121)および前記第2の端子(122)とを介して、前記通信制御デバイス(11;21;31)と前記送信/受信デバイス(12;22;32)との間で差動信号伝送を実行するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いデータレートおよび高いエラーロバスト性で動作する、シリアルバスシステムの加入者局用の通信制御デバイスおよび送信/受信デバイス、ならびにシリアルバスシステムで通信するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両でのセンサと制御機器との間の通信のために、CAN FDを用いたCANプロトコル仕様としての規格ISO11898-1:2015でメッセージとしてデータが伝送されるバスシステムが使用されることが多い。メッセージは、センサ、制御機器、送信機などのバスシステムのバス加入者間で伝送される。
【0003】
CANよりも高いビットレートでデータを伝送することができるようにするために、CAN FDメッセージフォーマットには、メッセージ内でより高いビットレートに切り替えるための選択肢がある。ここでは、データフィールドの領域でより高いクロッキングを使用することにより、可能な最大データレートが増加されて1Mbit/sの値を超える。そのようなメッセージは、以下ではCAN FDフレームまたはCAN FDメッセージとも呼ばれる。CAN FDでは、使用データ長が8バイトから64バイトに拡張されており、データ転送速度がCANよりも大幅に高くなる。
【0004】
送信元バス加入者から受信元バス加入者へのデータ伝送をCAN FDよりも高速化するために、CAN XLと呼ばれるCAN FD後継バスシステムが現在開発されている。ここで、データフェーズにおいて、CAN FDよりも高いデータレートに加えて、CAN FDで従来達成されている最大64バイトの使用データ長も増加されるべきである。しかし、CANまたはCAN FDベースの通信ネットワークのロバスト性の利点は、CAN FDの後継バスシステムでも保持すべきである。
【0005】
データがバス上で高速に伝送されるほど、加入者局のプロトコルコントローラがバスから受信する信号の品質に対する要求が高くなる。例えば、受信された信号のビットのエッジ急峻度が低すぎると、ビットの非対称性が強くなりすぎることがあり、したがって受信された信号が正しく復号化されない可能性がある。
【0006】
受信された信号のビットのエッジ急峻度が増加されると、非常に高い放射が生じる。これは、他の場所、例えばプリント回路基板上および加入者局用のマイクロコントローラ内でのコストにつながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、前述の問題を解決する、シリアルバスシステムの加入者局用の通信制御デバイスおよび送信/受信デバイス、ならびにシリアルバスシステムで通信するための方法を提供することである。特に、高いエラーロバスト性で、高いデータレートおよびフレーム毎の使用データ量の増加を実現することができる、シリアルバスシステムの加入者局用の通信制御デバイスおよび送信/受信デバイス、ならびにシリアルバスシステムで通信するための方法が提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、請求項1の特徴を有するシリアルバスシステムの加入者局の通信制御デバイスによって解決される。通信制御デバイスは、加入者局とバスシステムの少なくとも1つの他の加入者局との通信を制御するために送信信号を生成するための通信制御モジュールであって、バスシステムが、バスシステムの加入者局間でメッセージを交換するために、少なくとも第1の通信フェーズおよび第2の通信フェーズが使用される、通信制御モジュールと、第1の通信フェーズの動作モードで、送信/受信デバイスに送信信号を送信するための第1の端子であって、バスシステムのバス上に送信信号を送信するように設計されている第1の端子と、第1の通信フェーズの動作モードで、送信/受信デバイスからデジタル受信信号を受信するための第2の端子と、第2の通信フェーズで、第1および第2の端子を介した差動信号伝送のために、第1および第2の端子の伝送方向を同じ方向に切り替えるための動作モード切替えモジュールとを有する。
【0009】
通信制御デバイスを用いて、通信制御デバイスと送信/受信デバイスとの間の追加の高価な端子なしで、CAN FD後継バスシステムのための非常に高いビット対称性を有する所要の高速のデータ伝送を提供することができる。
【0010】
ここで、通信制御デバイスは、有利には、バスから受信された信号から送信/受信デバイスが生成して通信制御デバイスに送信する受信信号RxDでのビットの対称性が保持されるように設計されている。これは、CANフレームの送信と受信の両方に当てはまり、すなわち送信信号TxDにも当てはまる。
【0011】
さらに、送信/受信デバイス(トランシーバ)と通信制御デバイス(マイクロコントローラ)との間の受信信号RxDの差動伝送時にも、NRZ符号化(NRZ=Non-Return-To-Zero)を保つことができる。その結果、送信/受信デバイス(トランシーバ)と通信制御デバイス(マイクロコントローラ)との間のデータ伝送のために、遅いエッジを有する端子(ピン)が使用されてもよい。その結果生じる、受信および送信された信号のビットの低いエッジ急峻度は、システムの放射を大幅に減少させる。
【0012】
したがって、受信および送信された信号のビットのそのようなエッジ急峻度が選択され得、放射の要件は問題なく満たされ得る。さらに、通信制御デバイスは、信号の対称性を維持するために、PWM符号化やマンチェスタ符号化などの複雑なライン符号化法を使用する必要がない。これにより、送信信号TxDおよび受信信号RxDのデータ伝送および復号化の複雑さが低減される。
【0013】
さらに、通信フェーズの1つで通信制御デバイスを用いて、CANで知られている通信調停が維持されてもよく、それでもCANまたはCAN FDに比べて伝送速度をさらに大幅に向上させることができる。これは、異なるビットレートを有する2つの通信フェーズが使用され、通信調停におけるよりも高いビットレートで使用データが伝送される第2の通信フェーズの開始が送信/受信デバイスに関して確実に識別されることによって達成され得る。したがって、送信/受信デバイスは、第1の通信フェーズから第2の通信フェーズに確実に切り替えることができる。
【0014】
その結果、送信元から受信元へのビットレート、したがって伝送速度の大幅な増加が実現可能である。しかしここで、同時に、高いエラーロバスト性も保証されている。これは、少なくとも10Mbpsの正味データレートの実現に寄与する。さらに、使用データのサイズは、64バイトよりも大きくてもよく、特にフレームあたり最大2048バイトにすることができ、または必要に応じて任意の長さを有することもできる。
【0015】
通信制御デバイスによって実行される方法は、CANプロトコルおよび/またはCAN FDプロトコルに従ってメッセージを送信する少なくとも1つのCAN加入者局および/または少なくとも1つのCAN FD加入者局もバスシステム内に存在するときにも使用することができる。
【0016】
通信制御デバイスの有利なさらなる形態は、引用形式請求項に記載されている。
動作モード切替えモジュールは、第2の通信フェーズの第1の動作モードで、第1および第2の端子を出力として切り替え、送信信号から反転デジタル送信信号を生成し、送信信号を第1の端子で出力し、送信信号からの反転デジタル送信信号を第2の端子で出力するように設計されていてもよい。追加または代替として、動作モード切替えモジュールは、第2の通信フェーズの第2の動作モードで、第1および第2の端子を入力として切り替え、第1および第2の端子で受信された差動受信信号から非差動受信信号を生成し、通信制御モジュールに出力するように設計されていてもよい。
【0017】
1つの例示的実施形態によれば、動作モード切替えモジュールは、第2の通信フェーズの第1の動作モードで、2つの端子で、所定の期間にわたって、2つの送信信号を同じレベルで生成して出力するように設計されており、送信/受信デバイスの動作モードを第2の通信フェーズの第1の動作モードから第1の通信フェーズの動作モードに切り替えることができることを送信/受信デバイスに信号通知する。
【0018】
1つの例示的実施形態によれば、動作モード切替えモジュールは、送信/受信デバイスの動作モードを第1の通信フェーズの動作モードから第2の通信フェーズの所定の動作モードに切り替えなければならないことを、第1または第2の端子を介して送信/受信デバイスに信号通知するように設計されている。
【0019】
例として、通信制御モジュールは、第1のビット時間を備えるビットを備える第1の通信フェーズでの送信信号を生成するように設計されており、第1のビット時間が、第2の通信フェーズでの送信信号で通信制御モジュールが生成するビットの第2のビット時間よりも少なくとも10倍大きい。
【0020】
上記課題は、請求項6の特徴を有するシリアルバスシステムの加入者局用の送信/受信デバイスによって解決される。送信/受信デバイスは、バスシステムのバス上に送信信号を送信するための、およびバスから受信された信号からデジタル受信信号を生成するための送信/受信モジュールであって、バスシステムにおいて、バスシステムの加入者局間でメッセージを交換するために、少なくとも第1の通信フェーズおよび第2の通信フェーズが使用される送信/受信モジュールと、第1の通信フェーズの動作モードで、通信制御デバイスから送信信号を受信するための第1の端子と、第1の通信フェーズの動作モードで、デジタル受信信号を通信制御デバイスに送信するための第2の端子と、第2の通信フェーズで、第1および第2の端子を介した差動信号伝送のために、第1および第2の端子の伝送方向を同じ方向に切り替えるための動作モード切替えモジュールとを有する。
【0021】
送信/受信デバイスは、通信制御デバイスに関して前述しているものと同じ利点を提供する。送信/受信デバイスの有利なさらなる形態は、引用形式請求項に記載されている。
動作モード切替えモジュールは、第2の通信フェーズの第1の動作モードで、第1および第2の端子を入力として切り替え、第1の端子および第2の端子で受信された差動デジタル送信信号から非差動送信信号を生成するように設計されていてもよい。追加または代替として、動作モード切替えモジュールが、第2の通信フェーズの第2の動作モードで、第1および第2の端子を出力として切り替え、デジタル受信信号から反転デジタル受信信号を生成し、デジタル受信信号を第2の端子で出力し、デジタル受信信号に対する反転デジタル受信信号を第1の端子で出力するように設計されていてもよい。
【0022】
1つの例示的実施形態によれば、動作モード切替えモジュールは、第2の通信フェーズの第2の動作モードで、2つの端子で、所定の期間にわたって2つの受信信号を同じレベルで生成して出力するように設計されており、通信制御デバイスに追加情報を信号通知し、追加情報が、バスシステムにおいてメッセージによってバスシステムの加入者局間で交換される信号の情報への追加である。
【0023】
任意選択で、送信/受信モジュールは、送信信号を差動信号としてバスに送信するように設計されている。
動作モード切替えモジュールは、第1および第2の端子の伝送方向を、送信/受信デバイスが切り替えられている動作モードに応じて選択するように設計されていてもよい。
【0024】
前述したデバイスは、場合により、送信/受信デバイスの動作モードに応じて、第1および第2の端子の伝送方向を制御するための方向制御ブロックと、差動信号を符号化するための符号化ブロックと、第1および第2の端子での差動信号を復号化して、非差動信号にするための復号化ブロックと、送信/受信デバイスが第2の通信フェーズの動作モードに切り替えられているときに、復号化ブロックによって生成された非差動信号を出力するためのマルチプレクサとを有する。
【0025】
1つの選択肢によれば、第1の通信フェーズでバスから受信される信号が、第2の通信フェーズでバスから受信される信号とは異なる物理層で生成されている。
第1の通信フェーズで、バスシステムの加入者局のどれが、後続の第2の通信フェーズでバスへの少なくとも一時的に排他的であり衝突のないアクセスを得るかが交渉されることが考えられる。
【0026】
上述した通信制御デバイスおよび上述した送信/受信デバイスは、バスシステムの加入者局の一部であってもよく、バスシステムは、さらに、バスと、少なくとも2つの加入者局であって、互いにシリアル通信することができるようにバスを介して互いに接続されている、加入者局とを含む。ここで、少なくとも2つの加入者局のうちの少なくとも1つは、前述した通信制御デバイスおよび前述した送信/受信デバイスを有する。
【0027】
前述の課題は、さらに、請求項15に記載のシリアルバスシステムで通信するための方法によっても解決される。方法は、バスシステムのために加入者局で実行され、バスシステムの加入者局間でメッセージを交換するために、少なくとも1つの第1の通信フェーズおよび第2の通信フェーズが使用され、加入者局が、前述した通信制御デバイスと、前述した送信/受信デバイスとを有し、第2の通信フェーズで、通信制御デバイス用の動作モード切替えモジュールによって、通信制御デバイス用の第1および第2の端子の伝送方向を同じ方向に切り替えるステップと、第2の通信フェーズで、送信/受信デバイス用の動作モード切替えモジュールによって、送信/受信デバイス用の第1および第2の端子の伝送方向を同じ方向に切り替えるステップであって、その方向が、通信制御デバイス用の第1および第2の端子が切り替えられている方向とは異なるステップと、通信制御デバイス用の第1および第2の端子と送信/受信デバイス用の第1および第2の端子とを介して、通信制御デバイスと送信/受信デバイスとの間で差動信号伝送を実行するステップとを含む。
【0028】
この方法は、通信制御デバイスおよび/または送信/受信デバイスに関して前述したのと同様の利点を提供する。
本発明のさらなる可能な実装形態は、例示的実施形態に関して上述または後述する特徴または実施形態の、明示的には言及されていない組合せも含む。ここで、当業者は、本発明のそれぞれの基本形態への改良または補完として個別の態様を追加するであろう。
【0029】
以下、添付図面を参照し、例示的実施形態に基づいて、本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の例示的実施形態によるバスシステムの簡略化されたブロック図である。
図2】第1の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局によって送信され得るメッセージの構造を例示する図である。
図3】第1の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局の簡略化された概略ブロック図である。
図4】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図5】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図6】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図7】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図8】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの受信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図9】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの受信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図10】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの受信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図11】加入者局がバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの受信元であるときの、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図12】加入者局がデータフェーズにおいてバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であり、データフェーズから通信調停フェーズに再び切り替わる第2の例示的実施形態での、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図13】加入者局がデータフェーズにおいてバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であり、データフェーズから通信調停フェーズに再び切り替わる第2の例示的実施形態での、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図14】加入者局がデータフェーズにおいてバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であり、データフェーズから通信調停フェーズに再び切り替わる第2の例示的実施形態での、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図15】加入者局がデータフェーズにおいてバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であり、データフェーズから通信調停フェーズに再び切り替わる第2の例示的実施形態での、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
図16】加入者局がデータフェーズにおいてバスシステムのバスを介して送信されるメッセージの送信元であり、データフェーズから通信調停フェーズに再び切り替わる第2の例示的実施形態での、図3の加入者局での信号または状態の、時間の関数としての図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面中、特に指示のない限り、同一の要素または機能的に同一の要素には同じ参照符号が付されている。
図1は、例としてバスシステム1を示し、バスシステム1は、特に基本的には、以下に述べるように、CANバスシステム、CAN FDバスシステム、CAN FD後継バスシステム、および/またはそれらの変形システムのために設計されている。以下、CAN FD後継バスシステムをCAN XLと呼ぶ。バスシステム1は、特に自動車や航空機などの車両、または病院などで使用することができる。
【0032】
図1では、バスシステム1は、多数の加入者局10、20、30を有し、加入者局10、20、30はそれぞれ、第1のバスワイヤ41および第2のバスワイヤ42を有するバス40に接続されている。バスワイヤ41、42は、CAN_HおよびCAN_Lとも呼ぶことができ、送信状態で信号のためのドミナントレベルのカップリング後またはレセシブレベルの生成後に電気信号伝送に使用される。バス40を介して、メッセージ45、46を、個々の加入者局10、20、30間で信号の形式でシリアル伝送可能である。加入者局10、20、30は、例えば自動車の制御機器、センサ、表示装置などである。
【0033】
図1に示されるように、加入者局10は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、第1の動作モード切替えモジュール15、および第2の動作モード切替えモジュール16を有する。これに対して、加入者局20は、通信制御デバイス21および送信/受信デバイス22を有する。加入者局30は、通信制御デバイス31、送信/受信デバイス32、第1の動作モード切替えモジュール35、および第2の動作モード切替えモジュール36を有する。加入者局10、20、30の送信/受信デバイス12、22、32は、図1には図示されていないが、それぞれバス40に直接接続されている。
【0034】
各加入者局10、20、30で、メッセージ45、46が符号化され、それぞれの通信制御デバイス11、21、31と関連の送信/受信デバイス12、22、32との間で、TXDラインおよびRXDラインを介してフレームの形でビット毎に交換される。これについては、以下でより詳細に述べる。
【0035】
通信制御デバイス11、21、31は、それぞれの加入者局10、20、30と、バス40に接続されている加入者局10、20、30のうちの少なくとも1つの他の加入者局とのバス40を介した通信をそれぞれ制御する働きをする。
【0036】
通信制御デバイス11、31は、例えば修正されたCANメッセージ45(以下では、CAN XLメッセージ45とも呼ぶ)である第1のメッセージ45の作成および読取りを行う。ここで、CAN XLメッセージ45は、図2を参照してより詳細に述べられているCAN FD後継フォーマットに基づいて構成されている。さらに、通信制御デバイス11、31は、必要に応じて、CAN XLメッセージ45またはCAN FDメッセージ46を送信/受信デバイス12、32に対して提供する、または送信/受信デバイス12、32から受信するように実装されていてもよい。したがって、通信制御デバイス11、31は、第1のメッセージ45または第2のメッセージ46の作成および読取りを行い、ここで、第1および第2のメッセージ45、46は、それらのデータ伝送規格が異なり、すなわちこの場合にはCAN XLまたはCAN FDである。
【0037】
通信制御デバイス21は、ISO11898-1:2015に準拠した従来のCANコントローラのように、特にCAN FD許容の従来のCANコントローラまたはCAN FDコントローラのように実装されていてもよい。通信制御デバイス21は、第2のメッセージ46、例えば従来のCAMメッセージまたはCAN FDメッセージ46の作成および読取りを行う。CAN FDメッセージ46には、0~64データバイトが含まれていることがあり、これらはさらに、従来のCANメッセージよりも明らかに速いデータレートで伝送される。この場合、通信制御デバイス21は、従来のCAN FDコントローラのように実装されている。
【0038】
送信/受信デバイス12、32は、以下でより詳細に述べる相違点を除いて、CAN XLトランシーバとして実装されていてもよい。送信/受信デバイス12、32は、追加または代替として、従来のCAN FDトランシーバのように実装可能である。送信/受信デバイス22は、従来のCANトランシーバまたはCAN FDトランシーバのように実装されていてもよい。
【0039】
2つの加入者局10、30を用いて、CAN XLフォーマットでのメッセージ45の作成および伝送、ならびにそのようなメッセージ45の受信を実現可能である。
図2は、メッセージ45に関してCAN XLフレーム450を示し、CAN XLフレーム450は、送信/受信デバイス12または送信/受信デバイス32によって送信される。CAN XLフレーム450は、バス40でのCAN通信のために、様々な通信フェーズ451~455、すなわち通信調停フェーズ451、第1の切替えフェーズ452、データフェーズ453、第2の切替えフェーズ454、およびフレーム終了フェーズ455に分割されている。
【0040】
通信調停フェーズ451では、例えば、SOFビットとも呼ばれ、フレームの開始(Start of Frame)を示すビットが最初に送信される。さらに、通信調停フェーズ451では、メッセージ45の送信元を識別するための例えば11ビットを有する識別子も送信される。通信調停時、識別子を用いて、どの加入者局10、20、30がメッセージ45、46を最高の優先順位で送信したいか、したがって後続の時間に関して切替えフェーズ452およびそれに続くデータフェーズ453での送信のためにバスシステム1のバス40への排他的なアクセスを得るかが、ビット毎に加入者局10、20、30間で交渉される。
【0041】
この例示的実施形態では、第1の切替えフェーズ452で、通信調停フェーズ451からデータフェーズ453への切替えが準備される。切替えフェーズ452は、通信調停フェーズ451のビットのビット持続時間T_B1を有し、通信調停フェーズ451の物理層で少なくとも一部送信されるビットを有することができる。第1の切替えフェーズ452は、通信調停フェーズ451に論理的に属する。特に、この切替えフェーズ452では、送信/受信デバイス12、32は、デバイス12、32が別のモードまたは動作モード、すなわちデータフェーズ453の物理層に切り替わることを信号通知される。
【0042】
データフェーズ453では、フレーム450のビットは、データフェーズ453の物理層で、通信調停フェーズ451のビットのビット持続時間T_B1よりも短いビット持続時間T_B2で送信される。データフェーズ453では、とりわけ、CAN XLフレーム450またはメッセージ45の使用データが送信される。使用データは、メッセージ45のデータフィールドと呼ぶこともできる。このために、データフェーズ453で、データフィールド内のコンテンツのタイプを識別するデータフィールド識別子の後に、例えば11ビット長のデータ長コード(Data-Length-Code)が送信され得る。コードは、例えば、1~2048の値または他の値を増分1で取ることができる。代替として、データ長コードは、より少数またはより多数のビットを含むことができ、値範囲および増分が別の値を取ることができる。続いて、ヘッダチェックサムフィールドなどさらなるフィールドが続く。その後、CAN XLフレーム450またはメッセージ45の使用データが送信される。データフェーズ453の最後に、例えばチェックサムフィールドに、データフェーズ453のデータおよび通信調停フェーズ451のデータに関するチェックサムが含まれていてもよい。メッセージ45の送信元は、それぞれ所定数の同一のビット、特に10個の同一のビットの後に、反転ビットとして、スタッフビットをデータストリームに挿入することができる。特に、チェックサムは、チェックサムフィールドまでのフレーム450のすべての関連のビットが保証されるフレームチェックサムF_CRCである。例えば、データフェーズ453内のスタッフビットは、これらのビットがフレーム450自体を保証し、したがってエラー検出に使用されるので、保証されない。
【0043】
この例示的実施形態では、第2の切替えフェーズ454で、データフェーズ453からフレーム終了フェーズ455への切替えが準備される。これは、通信調停フェーズ451による伝送動作モードに再び切り替えられることを意味する。切替えフェーズ454は、通信調停フェーズ451のビットのビット持続時間T_B1を有し、データフェーズ453の物理層で少なくとも一部送信されるビットを有することができる。第2の切替えフェーズ454は、通信調停フェーズ451と同じ伝送動作モードが使用されるフレーム終了フェーズ455に論理的に属している。特に、この第2の切替えフェーズ454では、送信/受信デバイス12、32は、デバイス12、32が別のモードまたは動作モード、すなわち通信調停フェーズ451の物理層に切り替わることを信号通知される。
【0044】
フレーム終了フェーズ455では、2ビットAL2、AH2の後、終了フィールドに少なくとも1ビットの確認ビットACKが含まれていてもよい。その後、CAN XLフレーム450の終了を示す7つの同一のビットのシーケンスが続き得る。少なくとも1つの確認ビットACKを用いて、受信元は、受信されたCAN XLフレーム450またはメッセージ45を正しく受信したか否かを知らせることができる。
【0045】
少なくとも通信調停フェーズ451およびフレーム終了フェーズ455では、CANおよびCAN-FDと同様に物理層が使用される。さらに、切替えフェーズ452、454で少なくとも部分的に、すなわち最初に第1の切替えフェーズ452で、および最後に第2の切替えフェーズ454で、CANおよびCAN-FDと同様に物理層が使用され得る。物理層は、既知のOSI参照モデル(Open Systems Interconnection(開放型システム間相互接続)参照モデル)のビット伝送レイヤまたはレイヤ1に対応する。
【0046】
これらのフェーズ451、455における重要な点は、既知のCSMA/CR法が使用されることであり、CSMA/CR法は、より優先順位の高いメッセージ45、46が破壊されることなく、加入者局10、20、30がバス40に同時にアクセスすることを許可する。これにより、さらなるバス加入者局10、20、30がバスシステム1に比較的容易に追加され得、これは非常に有利である。
【0047】
CSMA/CR法により、バス40上にいわゆるレセシブ状態が存在することになり、このレセシブ状態は、バス40上で他の加入者局10、20、30がドミナント状態で上書きされ得る。
【0048】
フレーム450またはメッセージ45、46の開始時の通信調停、およびフレーム450またはメッセージ45、46のフレーム終了フェーズ455での確認は、ビット持続時間またはビット時間が、バスシステム1の任意の2つの加入者局10、20、30間の信号伝搬時間の2倍を大幅に超えるときにのみ可能である。したがって、通信調停フェーズ451、フレーム終了フェーズ454におけるビットレートは、フレーム450のデータフェーズ453よりも遅くなるように選択される。特に、フェーズ451、455でのビットレートは、500kbit/sとして選択され、そこから、約2μsのビット持続時間またはビット時間となり、一方、データフェーズ453でのビットレートは、5~10Mbit/s以上として選択され、そこから、約0.1μsのより短いビット時間となる。したがって、他の通信フェーズ451、452、454、455での信号のビット時間は、データフェーズ453での信号のビット時間の少なくとも10倍大きい。
【0049】
加入者局10が送信元として通信調停に勝ち、したがって加入者局10が送信元として送信のためにバスシステム1のバス40への排他的アクセスを得たときに初めて、メッセージ45の送信元、例えば加入者局10は、バス40への切替えフェーズ452およびそれに続くデータフェーズ453のビットの送信を開始する。送信元は、切替えフェーズ452の一部の後に、より高速のビットレートおよび/または他の物理層に変更することができ、またはそれに続くデータフェーズ453の第1のビットで、すなわちデータフェーズ453の開始時に、より高速のビットレートおよび/または他の物理層に変更することができる。
【0050】
ごく一般に、CANまたはCAN FDと比較して、CAN XLを用いるバスシステムでは特に以下の異なる特性が実現され得る。
a)CANおよびCAN FDのロバスト性および使いやすさに寄与する実証済みの特性、特に識別子を用いたフレーム構造およびCSMA/CR法による通信調停の採用および場合によっては適応。
【0051】
b)毎秒約10メガビットへの正味データ伝送レートの増加。
c)約2キロバイトまたは任意の値への、フレーム当たりの使用データのサイズの増加。
【0052】
図3は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、および動作モード切替えモジュール15、16を備えた加入者局10の基本構造を示す。通信制御デバイス11の動作モード切替えモジュール15は、送信/受信デバイス12の動作モード切替えモジュール16と対称に構成されている。動作モード切替えモジュール15は、第1の動作モード切替えモジュールと呼ぶこともできる。動作モード切替えモジュール16は、第2の動作モード切替えモジュールと呼ぶこともできる。
【0053】
加入者局30は、ブロック35が通信制御デバイス31に統合されておらず、通信制御デバイス31および送信/受信デバイス32から独立して提供されていること以外は、図3に示されるのと同様に構成されている。したがって、加入者局30およびブロック35を個別には述べない。以下に述べる動作モード切替えモジュール15の機能は、動作モード切替えモジュール35でも同じである。以下に述べる動作モード切替えモジュール16の機能は、動作モード切替えモジュール36でも同じである。
【0054】
代替または追加として、ブロック16が送信/受信デバイス12に統合されておらず、通信制御デバイス11および送信/受信デバイス12から独立して提供されていることも可能である。
【0055】
送信/受信デバイス12は、バス40に接続されており、より正確には、CAN_H用の第1のバスワイヤ41およびCAN_L用の第2のバスワイヤ42に接続されている。バスシステム1の動作中、送信/受信デバイス12は、通信制御デバイス11の送信信号TxDを、バスワイヤ41、42のための対応する信号CAN_HおよびCAN_Lに変換し、これらの信号CAN_HおよびCAN_Lをバス40に送信する。ここでは送信/受信デバイス12に関して信号CAN_HおよびCAN_Lに言及するが、これらは、メッセージ45に関しては信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lとして理解されるべきであり、信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lは、データフェーズ453において、従来の信号CAN_HおよびCAN_Lとは少なくとも1つの特徴が異なり、特に、信号TxDの様々なデータ状態に関するバス状態の生成に関して、および/または電圧もしくは物理層および/またはビットレートに関して異なる。
【0056】
バス40には、差動信号VDIFF=CAN_H-CAN_Lが生成される。アイドルまたはスタンバイ状態(idleまたはStandby)を除いて、送信/受信デバイス12は、通常動作では、その受信元で、加入者局10がメッセージ45の送信元であるか否かに関係なく、バス40でのデータまたはメッセージ45、46の伝送を常にリッスンする。送信/受信デバイス12は、以下でより詳細に述べられるように、バス40から受信された信号CAN_HおよびCAN_Lから受信信号RxDを生成し、この受信信号RxDを通信制御デバイス11に転送する。
【0057】
加入者局10の以下に述べられる構造は、通信制御装置11と送信/受信デバイス12との間で信号によってビットを対称的に、すなわちビットの持続時間を変えることなくロバストにかつ単純に伝送することができるようにする。これは、特にフレーム450のデータフェーズ453中のデータの伝送中に非常に有利である。
【0058】
図3によれば、通信制御デバイス11は、動作モード切替えモジュール15に加えて、デジタル送信信号TxD用の第1の双方向端子111、デジタル受信信号RxD用の第2の双方向端子112、および通信制御モジュール113を有する。送信/受信デバイス12は、動作モード切替えモジュール16に加えて、デジタル送信信号TxD用の第1の双方向端子121、デジタル受信信号RxD用の第2の双方向端子122、および送信/受信モジュール123を有する。端子111、112、121、122は、後述するように、モジュール15、16および対応する信号によって双方向に動作可能であり、すなわち出力または入力として切替え可能である。
【0059】
通信制御デバイス11は、マイクロコントローラとして設計されている、またはマイクロコントローラを有する。通信制御デバイス11は、例えばエンジン用の制御装置、機械または車両用のセキュリティシステム、または他のアプリケーションなど、任意のアプリケーションの信号を処理する。しかし、システムASIC(ASIC=特定用途向け集積回路)は示されていない。システムASICは、代替として、加入者局10の電子アセンブリに必要な複数の機能が組み合わされているシステムベースチップ(SBC)でよい。システムASICには、とりわけ、送信/受信デバイス12と、送信/受信デバイス12に電気エネルギーを供給するエネルギー供給デバイス(図示せず)とが組み込まれていてもよい。エネルギー供給デバイスは通常、5Vの電圧CAN_Supplyを送達する。しかし、必要に応じて、エネルギー供給デバイスは、異なる値を有する異なる電圧を送達することができ、および/または電流源として設計されていてもよい。
【0060】
通信制御モジュール113は、CANプロトコル、特にCAN XLまたはCAN FD用のプロトコルを実装するプロトコルコントローラである。通信制御モジュール113は、以下の出力信号を出力する、または以下の入力信号を入力するように設計されている。
【0061】
信号TxD_PRTは、送信信号TxDに対応する出力信号である。信号RxD_PRTは、受信信号RxDに対応する入力信号である。
これらの信号に加えて、通信制御モジュール113は、以下の制御信号TX_DM、RX_DMを生成して出力するように設計されている。
【0062】
制御信号TX_DMは出力信号であり、送信/受信デバイス12がTX-DataPhaseModeで動作すべきか否かを示す。動作モードは、FAST_TXモードまたは第1の動作モードとも呼ばれる。動作モードTX-DataPhaseModeでは、加入者局10は通信調停フェーズ451で通信調停に勝利し、後続のデータフェーズ453でフレーム450の送信元である。この場合、加入者局10は、送信ノードと呼ばれることもある。動作モードTX-DataPhaseModeでは、送信/受信デバイス12は、データフェーズ453のために物理層を使用し、ここでバスワイヤCAN_HおよびCAN_Lをドライブする。
【0063】
制御信号RX_DMは出力信号であり、送信/受信デバイス12がRX-DataPhaseModeで動作すべきか否かを示す。動作モードは、FAST_RXモードまたは第2の動作モードとも呼ばれる。動作モードRX-DataPhaseModeでは、加入者局10は、通信調停フェーズ451で通信調停に負け、後続のデータフェーズ453ではフレーム450の受信元にすぎず、すなわち送信元ではない。この場合、加入者局10は、受信ノードと呼ばれることもある。動作モードRX-DataPhaseModeでは、送信/受信デバイス12は、データフェーズ453のために物理層を使用するが、バスワイヤCAN_HおよびCAN_Lをドライブしない。
【0064】
送信/受信デバイスがTX-DataPhaseModeでもRX-DataPhaseModeでもないとき、いわゆるArbitrationPhaseModeであり、すなわち通信調停フェーズ451およびフレームフェーズ455で使用されるモードである。このモードでは、ドミナントおよびレセシブバス状態を伴い送信され得る物理層が使用される。
【0065】
切り替えるべき動作モードを送信/受信デバイス12に信号通知するための回路は、ここには示されていない。特に、信号通知は、TxD端子111および/またはRxD端子112を介して同様に行われる。
【0066】
動作モード切替えモジュール15は、方向制御ブロック151、符号化ブロック152、復号化ブロック153、およびマルチプレクサ154を有する。第1の動作モード切替えモジュール15は、通信制御モジュール113が出力する上記の信号を受信する。
【0067】
方向制御ブロック151は、通信制御モジュール113の制御信号TX_DM、RX_DMから切替え信号DIR_TxDおよびDIR_RxDを生成する。切替え信号DIR_TxDは、通信制御デバイス11の第1の双方向に切替え可能な端子111の方向DIR、より正確には伝送方向を制御する。言い換えると、切替え信号DIR_TxDは、デバイス11のTxD端子111の方向を制御する。切替え信号DIR_RxDは、通信制御デバイス11の第2の双方向に切替え可能な端子112の方向DIR、より正確には伝送方向を制御する。言い換えると、切替え信号DIR_RxDは、デバイス11のRxD端子112の方向を制御する。
【0068】
ここで、信号TX_DMが設定されている場合、特にその信号値が1である場合、TxD端子111の方向およびRxD端子112の方向が出力に切り替わる。その結果、通信制御モジュール113は、以下でより詳細に述べるように、端子111、112を介して、バス40上に送信すべきフレーム450を差動信号として送信することができる。特に、通信制御モジュール113がフレーム450を送信し、ここで信号TX_DMが設定されている場合、TxD端子111の方向およびRxD端子112の方向が出力に切り替えられている。
【0069】
信号RX_DMが設定されている場合、特にその信号値が1である場合、TxD端子111の方向およびRxD端子112の方向が入力に切り替えられている。その結果、通信制御モジュール113は、以下でより詳細に述べるように、端子111、112を介して、バス40を介して送信されるフレーム450を差動信号として受信することができる。特に、通信制御モジュール113がフレーム450を受信し、ここで信号RX_DMが設定されている場合、TxD端子111の方向およびRxD端子112の方向が入力に切り替えられている。
【0070】
符号化ブロック152は、信号TxD_PRT、すなわち送信信号TxDから、信号TxD2を生成する。信号TxD2は、TxD_PRT信号の反転信号である。符号化ブロック152は、信号TxD2を端子112に出力する。前述したように端子111、112が出力に切り替えられていると、通信制御デバイス11は、端子111、112を介して、信号TxD_PRT、TxD2を差動出力信号として送信/受信デバイス12に出力することができる。最も単純な場合には、符号化ブロック152は、信号TxD_PRTを反転するインバータである。
【0071】
復号化ブロック153は、その入力で端子111、112に接続されている。前述したように端子111、112が入力に切り替えられると、復号化ブロック153は、端子111、112から、信号RxD1および信号RxD2からなる差動入力信号を受信する。復号化ブロック153は、信号RxD1、RxD2を復号化して、非差動信号RxD_PRTにする。復号化ブロック153は、RxD_PRT信号をマルチプレクサ154に出力する。
【0072】
通信制御モジュール113は、制御信号RX_DMによってマルチプレクサ154を制御する。制御信号RX_DMの信号値に応じて、通信制御モジュール113に、信号RxD_PRTとして、復号化ブロック153によって復号化された信号が提供されるか、端子112からの信号RxD1が提供されるかが選択される。
【0073】
送信/受信デバイス12において、送信/受信モジュール123は、CANプロトコルに従ってメッセージ45、46を送信および/または受信する、特に前述したようにCAN XLまたはCAN FDに関するプロトコルに従ってメッセージを送信および/または受信するように設計されている。送信/受信モジュール123は、物理媒体、すなわちバスワイヤ41、42を有するバス40への接続を行う。送信/受信モジュール123は、バスワイヤ41、42またはバス40のための信号CAN_HおよびCAN_Lをドライブおよび復号化する。さらに、送信/受信モジュール123は、以下の出力信号を出力する、または以下の入力信号を受信するように設計されている。
【0074】
信号RxD_TCは、バス40からの差動信号CAN_H、CAN_Lから送信/受信モジュール123が生成するデジタル受信信号に対応する出力信号である。信号TxD_TCは、送信信号TxD、すなわちバス40上への送信のために通信制御モジュール113によって生成された信号に対応する入力信号である。
【0075】
これらの信号に加えて、送信/受信モジュール123は、以下の制御信号TX_DM_TC、RX_DM_TCを生成して出力するように設計されている。
制御信号TX_DM_TCは出力信号であり、前述したように、送信/受信デバイス12が動作モードTX-DataPhaseModeで動作する、またはデータフェーズ453でフレーム450の送信元として機能するように切り替えられているか否かを示す。これは、送信/受信モジュール123がデータフェーズ453においてバス40上でビットを送信する、すなわちバス40をドライブする動作モードである。
【0076】
制御信号RX_DM_TCは出力信号であり、前述したように、送信/受信デバイス12が動作モードRX-DataPhaseModeで動作する、またはデータフェーズ453でフレーム450の受信元としてのみ機能し、すなわち送信元としては機能しないように切り替えられているか否かを示す。これは、送信/受信モジュール123がデータフェーズ453でバス40からビットを受信するだけである、すなわちバス40をドライブしない動作モードである。
【0077】
第2の動作モード切替えモジュール16は、方向制御ブロック161、符号化ブロック162、復号化ブロック163、およびマルチプレクサ164を有する。第2の動作モード切替えモジュール16は、送信/受信モジュール123が出力する上記の信号を受信する。
【0078】
方向制御ブロック161は、送信/受信モジュール123の制御信号TX_DM_TC、RX_DM_TCから切替え信号DIR_TxD_TCおよびDIR_RxD_TCを生成する。切替え信号DIR_TxD_TCは、送信/受信デバイス12の第1の双方向に切替え可能な端子121の方向DIR、より正確には伝送方向を制御する。言い換えると、切替え信号DIR_TxD_TCは、デバイス12のTxD端子121の方向を制御する。切替え信号DIR_RxD_TCは、送信/受信デバイス12の第2の双方向に切替え可能な端子112の方向DIR、より正確には伝送方向を制御する。言い換えると、切替え信号DIR_RxD_TCは、デバイス12のRxD端子122の方向を制御する。
【0079】
ここで、信号RX_DM_TCが設定されている場合、特にその信号値が1である場合、TxD端子121の方向およびRxD端子122の方向が出力に切り替えられている。その結果、送信/受信モジュール123は、バス40を介して別の加入者局によって送信されたフレーム450を、端子121、122を介して差動信号として通信制御デバイス11に送信することができる。特に、送信/受信モジュール123がフレーム450を受信し、ここで信号RX_DM_TCが設定されている場合、TxD端子121の方向およびRxD端子122の方向が出力に切り替えられている。
【0080】
信号TX_DM_TCが設定されている場合、特にその信号値が1である場合、TxD端子121の方向およびRxD端子122の方向が入力に切り替えられている。その結果、送信/受信モジュール123は、その端子121、122を介して、通信制御デバイス11から、バス40上に送信すべきフレーム450を差動信号として受信することができる。特に、送信/受信モジュール123がフレーム450をバス40上に送信し、ここで信号TX_DM_TCが設定されている場合、TxD端子121の方向およびRxD端子122の方向が入力に切り替えられている。
【0081】
符号化ブロック162は、信号RxD_TC、すなわち受信信号RxDから信号RxD2_TCを生成する。信号RxD2_TCは、信号RxD_TCの反転信号である。符号化ブロック162は、信号RxD2_TCを端子121に出力する。前述したように端子121、122が出力に切り替えられていると、送信/受信デバイス12は、端子121、122を介して信号RxD2_TC、RxD_TCを差動出力信号として通信制御デバイス11に出力することができる。最も単純な場合には、符号化ブロック162は、信号RxD_TCを反転するインバータである。
【0082】
復号化ブロック163は、その入力で端子121、122に接続されている。前述したように端子121、122が入力に切り替えられていると、復号化ブロック163は、端子121、122から、信号TxD1_TCおよび信号TxD2_TCからなる差動入力信号を受信する。復号化ブロック163は、信号TxD1_TC、TxD2_TCを復号化して、非差動信号TxD_TCにする。復号化ブロック163は、信号TxD_TCをマルチプレクサ154に出力する。
【0083】
送信/受信モジュール123は、制御信号TX_DM_TCによりマルチプレクサ164を制御する。制御信号TX_DM_TCの信号値に応じて、送信/受信モジュール123に、信号TxD_TCとして、復号化ブロック163によって復号化された信号が提供されるか、端子121からの信号TxD1_TCが提供されるかが選択される。
【0084】
その結果、通信制御デバイス11は、前述したように、動作モードTX-DataPhaseModeで、シリアル送信信号TxDのビットストリームをTxDおよびRxD端子111、112を介して差動信号として送信する。送信/受信デバイス12は、そのTxDおよびRxD端子121、122でこの差動信号を受信し、この差動信号を復号化して、非差動信号TxD_TCにする。
【0085】
図4図7は、加入者局10がメッセージ45の送信元であり、したがって送信/受信デバイス12がデータフェーズ453で動作モードTX-DataPhaseModeに切り替えられているときの、通信制御デバイス11における前述した信号の信号曲線に関する例を示す。ここで、図6および図7において、記号「P1」は入力を表し、記号「P2」は出力を表す。
【0086】
図4図7によれば、通信制御デバイス11および送信/受信デバイス12は、通信調停フェーズ451中のデータの伝送のために、通常どおり加入者局10の端子111、112、121、122を使用する。通信制御デバイス11は、TxD端子111によってデータを送信し、同時にRxD端子112によってバス40からデータを受信する。
【0087】
送信/受信デバイス12のより高速の動作モードでは、加入者局10は、図4図7に示されるように、送信ノードとして排他的に送信のみを行う。
さらに、送信/受信デバイス12のより高速の動作モードで、加入者局10が、図8図11に示されるように、受信ノードとして排他的に受信のみを行う。図8図11は、加入者局10がメッセージの送信元ではなく、したがって送信/受信デバイス12が動作モードRX-DataPhaseModeに切り替えられているときの、通信制御デバイス11での前述した信号の信号曲線に関する例を示す。ここで、図10および図11において、記号「P1」は入力を表し、記号「P2」は出力を表す。その結果、送信/受信デバイス12は、前述したように、動作モードRX-DataPhaseModeでは、TxDおよびRxD端子121、122を介して、シリアル受信信号RxDのビットストリームを差動信号として送信する。通信制御デバイス11は、そのTxDおよびRxD端子111、112でこの差動信号を受信し、この差動信号を復号化して、非差動信号RxD_PRTにする。さらに、データの伝送は、図4から図7に関して前述したように、通信調停フェーズ451およびフレーム終了フェーズ455中に端子111、112、121、122を介して行われる。
【0088】
したがって、フレーム450のフェーズ451、455およびCAN FDとは対照的に、加入者局10、30においてデータフェーズ453で、送信/受信デバイス12の動作モードRX-DataPhaseMode、TX-DataPhaseModeにおけるCANバス40上での同時の送受信は必要なくなる。ここで、通信制御デバイス11および送信/受信デバイス12は、送信/受信デバイス12がデータフェーズ453の動作モードにある時間内に、信号RxD、TxDに関する両方の端子111、112、121、122を同じ方向で使用して、差動送信信号TxD(データフェーズ453の第1の動作モード)または差動受信信号RxD(データフェーズ453の第2の動作モード)を伝送する。
【0089】
モジュール15、16の前述した形態の第1の修正形態によれば、モジュール15、16の少なくとも1つだけが動作モードTX-DataPhaseModeへの切替えを可能にすることができる。そのような変形形態は、例えば、その機能を実施するためにそれ自体は信号を送信するだけでよく、バス40から信号を受信する必要はないバスシステム1の加入者局10、20において有利であり得る。そのような加入者局の形態に関する例は純粋な制御要素であり、その制御は、バス40を介して伝送されるが、バスでの通信とは独立して制御用のイベントを受信または生成する。
【0090】
モジュール15、16の前述した形態の第2の修正形態によれば、モジュール15、16の少なくとも1つだけが動作モードRX-DataPhaseModeへの切替えを可能にすることができる。そのような変形形態は、例えば、その機能を実施するためにそれ自体は信号を送信する必要がなく、バス40から信号を受信するだけでよいバスシステム1の加入者局10、20において有利であり得る。そのような加入者局の形態に関する例は、送信機、特にロータリエンコーダ、アクチュエータなどである。
【0091】
当然、デバイス11、12の前述した機能は、CAN FDおよび/またはCANの別の修正形態に関しても、少なくとも使用データの送信のために使用可能である。
加入者局10の形態により、デバイス11、12間のデータ伝送の対称性が保証され得るように、通信制御デバイス11およびそれに関連する送信/受信デバイス12でのそれぞれ1つの追加の端子を介したガルバニック接続は必要ない。すなわち、有利には、デバイス11、12の標準ハウジングでは利用可能でない追加の端子は必要ない。したがって、追加の端子を提供するために、別のより大型で高価なハウジングに変更する必要はない。
【0092】
デバイス11、12、32、35の上記の形態により、データフェーズ453で、CANまたはCAN-FDよりもはるかに高いデータレートが達成され得る。さらに、前述したように、データフェーズ453のデータフィールドでのデータ長は任意に選択され得る。これにより、通信調停に関するCANの利点を維持することができ、それでも、より大量のデータが以前よりも短時間で非常に確実に、したがって効果的に伝送され得る。
【0093】
図12図16は、第2の例示的実施形態における加入者局10での信号曲線を示す。ここで、加入者局10がフレーム450の送信元であるときのデータフェーズ453とフレーム終了フェーズ455との間の移行が示されている。フレーム終了フェーズ455では、伝送動作モードが通信調停フェーズ451に対応する。図15によれば、通信制御デバイス11は、フレーム終了フェーズ455でTxD端子111によってデータを送信し、したがって端子111は出力に設定されており(記号P2)、同時にRxD端子112によってバス40からデータを受信し、したがって端子111は、図16に示されるように入力(記号P1)に設定されている。
【0094】
しかし、データフェーズ453での動作モードTX-DataPhaseMode中、通信制御デバイス11は、その2つの端子111、112を出力として使用し(図15および図16での記号P2)、送信/受信デバイス12は、その2つの端子121、122を入力(記号P1)として使用する。それにより、データフェーズ453では、差動信号TxD_PRT、TxD2が端子111、112から端子121、122に伝送され、これらは図13および図14にTxD、RxDとして示されている。端子111での図13による信号TxDは、ビット持続時間T_B2を有するビットを有する。端子112での図14による信号RxDも同様に、反転したTxD信号に対応するので、ビット持続時間T_B2を有するビットを有する。
【0095】
データフェーズ453での動作モードTX-DataPhaseModeから、ビット持続時間T_B1を有する信号TxD、RxDが送信される通信調停フェーズ451の動作モードがArbitrationPhaseModeに切り替えられる場合(図13)、図13および図14に示されるように、動作モード切替えモジュール15は、切替えの信号通知のために、その2つの端子111、112を介して非差動信号を送信するように設計されている。例えば、動作モード切替えモジュール15は、図13および図14に示されているように、切替えフェーズ454で、所定の期間Tにわたって、その2つの端子111、112を介して信号通知Sとして信号TxD=RxD=1を送信する。所定の期間Tは、少なくとも例えばT=100nsである。このことから、送信/受信デバイス12は、ここで、その動作モードを通信調停フェーズ451の動作モードに切り替えるべきであることを認識することができる。
【0096】
前述した例では、CANバス40が「データ1」または「レセシブ」のレベルにある間に、切替えに関する信号通知Sが行われる。したがって、送信/受信デバイス12と通信制御デバイス11との間のRxDラインを送信/受信デバイス12がドライブし始めるとき、RxD端子112、122に競合または短絡が存在しない。送信/受信デバイス12の動作モードを切り替えるための信号通知SがCANバス40上で反転レベルで行われる場合、通信制御デバイス11は、レベルTxD=RxD=0の送信により切替えに関する信号通知Sを行うように設計されている。
【0097】
フレーム終了フェーズ455への切替えとは対照的に、この例示的実施形態では、通信調停フェーズ451からデータフェーズ453、すなわち送信/受信デバイス12の動作モードRX-DataPhaseMode、TX-DataPhaseModeの1つへの動作モード変更の信号通知を、RxD端子112を介して行うことができる。このために、通信制御デバイス11は、動作モード変更の信号通知の目的で、送信/受信デバイス12がそのRxD端子122をドライブするよりも強く、短時間にわたってRxD端子112をドライブする。これにより、通信制御デバイス11がそのRxD端子112をドライブし、送信/受信デバイス12がそのRxD端子122をドライブし、端子112、122での2つの信号源の重畳が生じるとき、RxDラインの値が特定されなくなり得るのが防止されている。端子112、122での2つの信号源のそのような重畳において、通信制御デバイス11が常に優位である。これにより、RxDラインの値が常に特定されている。
【0098】
しかし、第2の例示的実施形態はまた、デバイス11、12に関してさらなる端子またはピンまたはポートを必要とせず、したがってこの解決策は非常に費用対効果が高いという利点を有する。
【0099】
それ以外は、通信は、第1の例示的実施形態に関して述べたのと同様に、加入者局10、30およびバスシステム1で行うことができる。
第3の例示的実施形態によれば、送信/受信デバイス12および/または送信/受信デバイス32、特に動作モード切替えモジュール15および/または動作モード切替えモジュール16は、受信時に、通信制御デバイス11の動作モードRX-DataPhaseModeで、特に通信制御モジュール113に何らかの信号通知を行うように設計されていてもよい。このために、送信/受信デバイス12、32は、端子111、112に関して第2の例示的実施形態に関して述べたように、データフェーズ453の追加の動作モードで、TxDおよびRxD端子121、122を介して非差動信号を送信する。例えば、送信/受信デバイス12、32は、信号通知Sとして端子121、122に以下のレベルを送信することができる:TxD=RxD=1。
【0100】
送信/受信デバイス12、32の信号通知Sは、追加情報を含むことができ、または追加情報であり得、追加情報は、バスシステム1においてメッセージ45、46によってバスシステム1の加入者局10、30間で交換される信号の情報への追加である。追加情報は、デバイス11、12またはデバイス31、32の内部通信を可能にする。
【0101】
それ以外は、通信は、第1または第2の例示的実施形態に関して述べたのと同様に、加入者局10、30およびバスシステム1で行うことができる。
デバイス11、12、31、32、モジュール15、16、35、36、加入者局10、20、30、バスシステム1、およびそこで実施される方法の前述したすべての形態は、個別に、またはすべての可能な組合せで使用することができる。特に、上述した例示的実施形態のすべての特徴および/またはそれらの修正形態は、任意に組み合わせることができる。追加または代替として、特に以下の修正形態が考えられる。
【0102】
CANバスシステムの例で本発明を前述してきたが、本発明は、異なる通信フェーズのために生成されるバス状態が異なる、2つの異なる通信フェーズが使用される各通信ネットワークおよび/または通信方法で使用することができる。特に、本発明の上述した原理は、異なる通信フェーズのためにプロトコルコントローラまたはモジュール113からの切替え信号を必要とし、および/またはここでデバイス11、12間のデータ交換を必要とするインターフェースにおいて使用可能である。
【0103】
例示的実施形態による上述したバスシステム1を、CANプロトコルに基づくバスシステムに従って述べてきた。しかし、例示的実施形態によるバスシステム1は、データが2つの異なるビットレートでシリアル伝送可能である別のタイプの通信ネットワークでもよい。バスシステム1において、共通のチャネルへの加入者局10、20、30の排他的で衝突のないアクセスが少なくとも特定の期間にわたって保証されていることは、有利であるが、必須の前提条件ではない。
【0104】
例示的実施形態のバスシステム1における加入者局10、20、30の数および配置は任意である。特に、バスシステム1での加入者局20は省略することができる。加入者局10または30のうちの1つまたは複数がバスシステム1に存在することが可能である。バスシステム1内のすべての加入者局が同一に設計されている、すなわち加入者局10のみまたは加入者局30のみが存在することも考えられる。
図1
図2
図3
図4-7】
図8-11】
図12-16】