(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】新規カプセル化化粧品組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20240424BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240424BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240424BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240424BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/27
A61Q17/04
A61Q19/00
A61Q1/00
(21)【出願番号】P 2022569570
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 US2021032113
(87)【国際公開番号】W WO2021231665
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウィルソン エー.
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503660(JP,A)
【文献】特表2011-530603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微粒子から成る複数の粒子を含む化粧品組成物又は皮膚科用組成物であって、前記複数の微粒子から成る粒子が、複数のコーティングされた粒子、及び複数のコーティングされていない粒子を含み、各コーティングされた粒子、及び各コーティングされていない粒子がコアを有する少なくとも1種の活性成分を含み、前記複数のコーティングされた粒子が、その上にコーティングを更に含
み、
各コーティングされた粒子が、コーティング組成物でコーティングされており、
前記コーティング組成物が、総組成物の1~50重量%の量で少なくとも1つのポリアクリレートコポリマーを含む、化粧品組成物又は皮膚科用組成物。
【請求項2】
前記複数の微粒子から成る粒子が、前記コーティング組成物で更にコーティングされている、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性成分が、化粧剤、ペプチド、DNA、ビタミン、有機酸、色素又はタンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記コーティングされたコア及び前記コーティングされていないコアが同じ又は異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コーティングされた粒子が二酸化チタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コーティングされていない粒子が酸化亜鉛である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記コーティングされた粒子が色素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記コーティング組成物が、20:1
~1:1の比率でアクリル酸アンモニウムコポリマー及びスチレンアクリル酸アンモニウムコポリマーを更に含む、請求項
1又は
2に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトの皮膚又は毛髪を保護する方法であって、前記方法が、複数のコーティングされた粒子及び複数のコーティングされていない粒子を含み、それぞれが、コア及びコーティングを有する少なくとも1種の活性成分を有効量で含
む化粧品組成物を、適用することを含
み、
各コーティングされた粒子が、コーティング組成物でコーティングされており、
前記コーティング組成物が、総組成物の1~50重量%の量で少なくとも1つのポリアクリレートコポリマーを含む、方法。
【請求項10】
前記化粧品組成物が、日焼け止め剤である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記化粧品組成物が、スキンケア剤、メイクアップ剤又は両方の組み合わせである、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、基材及び/又は表面をコーティングするための新規組成物に関する。具体的には、本発明は、皮膚を保護するための新規化粧品組成物又は新規皮膚科用組成物に関し、特に、サンケア及びメイクアップを目的とする用途に関する。
【背景技術】
【0002】
人体は、太陽光、人工光及び汚染物質に非常に敏感である。刺激物、汚染物質及び紫外放射線への長期曝露は、ヒト皮膚の層に影響を及ぼし、皮膚損傷、発赤、発疹、皮膚火傷等をもたらす。皮膚上のこのような因子によって引き起こされる損傷に対する認識の増大、及び技術的発展に伴い、ヒト皮膚を保護する属性を有する多くの化粧品製品及び皮膚科用製品が市販されるようになった。注目すべきことに、多くの市販製品は、有害因子によって引き起こされる損傷から人体を保護するのに有効でない。例えば、日焼け止め剤製品の有効性は、太陽光線保護指数(SPF)によって示される。一般に、日焼け止め剤組成物は、紫外放射線の通過を遮断し、それによって、このような放射線の皮膚への浸透を防止する活性剤を含有するクリーム、ローション又は油として製剤化される。しかしながら、多くの市販の製剤は、活性剤の凝集及び不均一な分布及び不均一な孔径のために安定していない。
【0003】
凝集は、肉眼で見える透明な粒子を有する望ましくない製剤をもたらす。凝集はまた、活性剤の漏れ又は渦巻き、色の漏出を引き起こし、それによって、日焼け防止製品の安定性及び有効性を損なう。日焼け止め剤組成物の場合、凝集及び漏出、並びに場合によってはフリーラジカル生成の増加は、製品の有効性を損ない、紫外放射線がヒト皮膚を透過することを可能にしてしまう。その他の場合では、例えば、メイクアップ組成物において、フリーラジカル生成の増加及び凝集は、組成物中に存在する色及び賦形剤の漏出をもたらし、それによって、組成物の貯蔵寿命に影響を及ぼす。
【0004】
同様に、多くの環境汚染物質、微生物粒子及びウイルス粒子は、接触を介して表面から表面へと伝播される。細菌粒子又はウイルス粒子から表面を保護することは、複数の調査研究の目的であり、多くのコーティング用途がこの目的のために利用されているが、主な課題は、汚染物質、細菌粒子又はウイルス粒子の侵入を防止することであり、特に、表面及び/又は基材を通る空気流を促進しながら、このような粒子の非常に小さい粒径を考慮することである。
【0005】
したがって、本発明の目的は、基材及び/又は表面をコーティングするための新規組成物を提供することである。また、本発明の目的は、コーティングされた活性成分を化粧品製剤及び皮膚科用製剤に組み込んだ新規化粧品又は皮膚科用調製物、このような組成物の製造プロセス及びその使用を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本明細書の実施形態は、複数の微粒子から成る複数の粒子を含む化粧品組成物であって、複数の微粒子から成る粒子が複数のコーティングされた活性成分粒子を含み、各コーティングされた粒子が、コア及びその上のコーティングを有する少なくとも1種の活性成分を含む、化粧品組成物を提供する。複数の微粒子から成る粒子は、複数のコーティングされていない活性成分粒子を更に含み、コーティングされていない粒子は、コアを有する少なくとも1種の活性成分を含む。更なる実施形態では、コーティングされた粒子及びコーティングされていない粒子は、同じ活性成分コア又は異なる活性成分コアを有する。活性成分は、化粧剤、ペプチド、DNA、ビタミン、有機酸、色素又はタンパク質である。特定の実施形態では、粒子は、少なくとも1つのポリアクリレートコポリマー又はその複合体を含むコーティング組成物でコーティングされる。
【0007】
本発明は更に、本明細書に記載の化粧品組成物を適用することによってヒト皮膚又は毛髪を保護する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図面無し。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書で定義される用語は、本発明に関連する分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではないが、例示のために具体例が使用され得る一般的な分類を含む。本明細書における用語は、本発明の特定の実施形態を説明するために使用されるが、それらの使用法は、特許請求の範囲に概説されるものを除き、本発明の範囲を定めるものではない。
【0010】
本明細書で使用する場合、「化粧剤」は、哺乳動物のケラチン組織への局所適用に好適な剤を意味する。化粧剤は、対象の皮膚、身体、若しくは毛髪の外観(例えば、色、質感、見た目、感触等)又は匂いの洗浄又は強化又は保護を補助する物質であってもよい。化粧剤は、皮膚又は毛髪の下層構造を変化させ得る。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「予防する(prevent)」及び「予防すること(preventing)」とは、皮膚若しくは毛髪の状態の再発、拡散又は発症の予防を含む。本発明が完全な予防に限定されることは意図されない。
【0012】
「対象」とは、任意の哺乳動物、好ましくは、ヒトを指す。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「局所」とは、皮膚上の1種又は複数の剤(例えば、化粧品、ビタミンなど)の投与を指す。
【0014】
用語「Tg」は、ガラス転移温度を指す。
【0015】
用語「ゼータ電位」とは、分散媒、すなわち、コーティングと粒子の固定層との間に存在する電荷の電位差の尺度を指す。スキンケア又はサンケア組成物の場合、ゼータ電位は、活性成分(複数可)が紫外光によって照射される前後に生成されるフリーラジカルの量を測定する。
【0016】
実施例及び比較実施例、又は別様に明示的に示される場合を除き、基材又は反応条件の量又は比率、基材及び/又は使用の物理的特性を示す本明細書における全ての数は、「約」という語によって変更されるものとして、理解されるべきである。全ての量は、別途指定されない限り、最終的な組成物の重量百分率として示される。
【0017】
コーティング組成物
本発明の一態様は、商業的、工業的及び臨床的使用のための化粧品活性成分及び/又は非化粧品基材材料をコーティングする目的で、少なくとも1つのポリアクリレートコポリマー又はその複合体を含む新規コーティング組成物を提供することである。
【0018】
アクリレートコポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸又は単純エステルのうちの1つのうちの2つ以上のモノマーから形成される、フィルム形成ポリマーである。アクリレートコポリマーの化学構造を以下に示す。
【0019】
【0020】
ポリ(2-プロペンアミド)ポリマーとしても知られるポリアクリレートコポリマーは、アクリルアミドのサブ単位から形成される。それは、架橋形態で、又は直鎖構造として存在してもよい。それは高度に吸水性であり、水と相互作用する場合にヒドロゲルを形成する。アミド基を含むポリアクリレートを加水分解して、ポリアクリレートポリマー主鎖の側鎖中にカルボキシル基を形成してもよい。第一級アミンは、ホフマン転位反応を介してポリマー主鎖の鎖内に形成される。アクリルアミドモノマーはまた、多くの異なるモノマーと共重合されてもよく、それによって、種々の反応性化学基を含むアクリルアミド又はアクリレートコポリマーを生成する。ポリアクリレートの代表的な構造を以下に示す。
【0021】
【0022】
ポリアクリレートコポリマーは、柔らかく、強靭で、ゴム状である。それらはまた、主鎖構造中に二重結合がないために、良好な衝撃靭性及び弾性、耐熱性、耐候性及び耐オゾン性を有し、高度に透明である。本発明によるポリアクリレートコポリマーは、とりわけ、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ブチル、ベンジル、4-クロロフェニル、2-シアノメチル、シクロヘキシル、エチル、ヘキシル、イソブチル、プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシルアクリレート、メタクリレート、ビニルアクリレート、アクリル酸アンモニウム、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルを含む。メタクリレート、スチレン及びアクリロニトリルポリマーは、凝集力(硬度)を増大させ、乾燥時の皮膚上の粘着感を低減又は排除する。
【0023】
一態様によれば、本発明は、コーティング組成物であって、直鎖ポリアクリレートコポリマーとして、又はアクリレートと2つ以上の化学化合物、例えば、限定されないが、アクリル酸若しくは塩との複合体として存在する少なくとも1つのポリアクリレートコポリマーを含む、コーティング組成物に関する。
【0024】
本発明によれば、少なくとも1つのポリアクリレートコポリマー又はその複合体は、約2000~約1000000g/モルの分子量を有する。一実施形態では、ポリアクリレートコポリマーは、約50,000~150,000g/モル、好ましくは約84,000~約125,000g/モルの範囲の平均分子量及び約-40~60℃、好ましくは約-30~約30℃の範囲のTgを有する。一実施形態では、コーティング組成物中に用いられるポリアクリレートコポリマー又はその複合体は、コーティング組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約95重量%、好ましくは約40重量%~約90重量%の範囲の量で存在する。コーティング組成物中のポリアクリレートコポリマー又はポリアクリレートコポリマー複合体の選択は、コーティングされる基材に依存する。ポリアクリレートコポリマー又は複合体の選択に影響を及ぼす別の要因は、最終コーティング組成物の所望の多孔度及びコーティング組成物の所望の物理的特性である。本発明によるコーティング組成物は水性であり、典型的には、総コーティング組成物の約50重量%~約60重量%の水を含んでもよい。しかしながら、コーティング組成物は、噴霧可能でなくてもよい、又は商業的若しくは工業的取り扱いのために非常に薄くてもよい。更に、コーティング組成物は、非多孔性である場合があり、又は場合によっては、孔径が大きすぎる場合がある。所望の孔径及び可撓性を達成するために、ブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン又はこれらの任意の組合せなどの賦形剤及び担体が、コーティング組成物の総重量の約0.1%~5%の範囲の量でコーティング組成物中にて用いられる。特定の実施形態では、所望の孔径は、範囲内に部分範囲を含む、約0.1nm~5μnmの範囲であってもよい。
【0025】
更に、商業的な目的のために、基材へのコーティング組成物の接着性の増大が所望される。これは、乾燥した基材の表面張力が、確実に基材の表面張力の10mN/m(ミリニュートン/メートル)以内であることによって、達成されてもよい。一般に、コーティング組成物中のブチレングリコール、プロパンジオール及びグリセリンのうちの1種以上のレベルを増大させることは、コーティング組成物の表面張力を低下させる。有利には、コーティング組成物の表面張力は、必要に応じて、0.1%~5%のブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン又はこれらの任意の組合せの使用によって調節され得る。したがって、噴霧性、可撓性、快適性及び接着性の効果は、これらの成分の任意の組合せの総濃度を、総コーティング組成物の約0.1重量%~5重量%へと調節することによって、達成される。
【0026】
コーティング組成物中のポリアクリレートコポリマー又はポリアクリレートコポリマー複合体の選択を決定する更に別の要因は、ポリアクリレートコポリマー又はその複合体のヤング率、並びにコポリマーの合計ヤング率である。コポリマーのヤング率は、コポリマーの剛性又は可撓性並びに基材への接着性を含む、コーティング組成物の取り扱い特性に影響を及ぼす。特に、剛性の増大はコーティング組成物の多孔度を増大させるので、コポリマーのヤング率もまた多孔度に影響を及ぼす。本明細書に記載されるように、本発明のコーティング組成物を利用する非化粧品用途のために、空気流を可能にするが、汚染物質、細菌粒子又はウイルス粒子の侵入は防止するように、孔径を制御することが望ましい。化粧品用途では、活性成分から化粧品組成物への、活性剤内で生成されたフリーラジカルの漏出並びに色素からの色の漏出を防止することが望ましい。
【0027】
いくつかの実施形態では、ポリアクリレートコポリマー又はその複合体は、約0.001パスカル単位~約100ギガパスカル単位の範囲のヤング率を用いる。いくつかの実施形態では、ヤング率は、約0.001ギガパスカル単位~約20ギガパスカル単位の範囲である。いくつかの実施形態では、ヤング率は、約0.001ギガパスカル単位~約10ギガパスカル単位の範囲である。いくつかのその他の実施形態では、ポリアクリレートコポリマー又はその複合体の組み合わせは、約0.001パスカル単位~約100ギガパスカル単位の範囲のヤング率を用いる。
【0028】
本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、基材は化粧品活性成分であってもよい。その他の実施形態では、基材は、とりわけ、プラスチック、金属、紙、布/織物、紙、薬物、医薬製品を含む非化粧品材料であってもよい。更なる実施形態では、基材はまた、保存バッグ、ペースメーカーリード、人工血管、病院用デバイスなどの、病院用途又は臨床用途に従来使用されている任意の血液接触材料であってもよい。いくつかの実施形態では、基材は、例えば、限定されないが、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、Dacron(商標)又はそれらから作製された複合材料を介して、その表面上で修飾されてもよい。更に、基板は、例えば、セラミック、石英、又はシリコン若しくは金などの金属、あるいはその他のポリマー基材材料又は非ポリマー基材材料などの好適な反応性基を有する又は有さない、無機又は金属系材料であってもよい。
【0029】
一実施形態では、少なくとも1つのポリアクリレートコポリマーがコーティングに利用される。別の実施形態では、ポリアクリレートコポリマーを含むポリマー複合体が利用される。好適なポリマーの実施例としては、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含むエチレン性不飽和硫黄酸官能性モノマー、並びに2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スルホエチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ブチル、ベンジル、4-クロロフェニルとのそれらの塩と、
2-シアノメチル、シクロヘキシル、エチル、ヘキシル、イソブチル、プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシルアクリレート、メタクリレート、ビニルアクリレート、アクリル酸アンモニウム、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルと、が挙げられる。また上記ポリマーに加えて、両性ポリマーを利用してもよい。ポリマーは、噴霧工程の前に最初に水中に分散される。噴霧工程の後、基材を乾燥させて水分を除去する。
【0030】
一実施形態では、基材の表面上に存在するコーティングの厚さは、0.1nm~100mmの間で変更され得る。いくつかの実施形態では、コーティングの厚さは、約0.5nm~50mmの範囲である。
【0031】
ある種の実施形態では、ポリアクリレートコポリマーを含むポリマー複合体は、コーティング組成物の約1重量%~約60重量%の範囲の量で存在してもよい。いくつかの実施形態では、ポリアクリレートを含むポリマー複合体は、乾燥後に50%未満の含水量を有する。好ましい実施形態では、それは、乾燥後に10%、5%、1%又は0.1%未満の含水量を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、基材とコーティング組成物との比率は、約1:1~約99:1の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約50:99である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、基材とコーティングとの比率は、約1:1~約1:99の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:50である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:25である。本発明のいくつかの実施形態では、コーティングのpHは、約pH1~14、好ましくは4~19、最も好ましくは5~8の範囲である。
【0033】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物中に存在するポリアクリレートコポリマーとポリアクリレート複合体との比率は、約1:1~約99:1、好ましくは約1:1~約1:50、最も好ましくは1:1~約10:1の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:99、好ましくは約1:1~約1:50、最も好ましくは1:1~約1:10である。
【0034】
本発明の別の態様は、ポリアクリレートコポリマー又はその複合体を含むコーティング組成物を適用することによって基材の粒径を調節する方法であって、コーティング組成物の多孔度が約1nm~約5μmの範囲内であり、粒径が約10nm~約50μmである方法に関する。本発明において企図される粒径は、化粧品用途及び非化粧品用途にとって
重要である。特に、基材が織布マスクなどの織布材料である場合、粒径は、繊維を通る空気流を可能にしながらも侵入を防止し得る粒子の種類を決定する。化粧品用途の場合、粒子は、活性コア内から化粧品組成物への活性成分の漏出を決定する。
【0035】
別の態様では、本発明はまた、第1のコーティングによって基材上への第2のコーティングの接着が容易となるように、基材上の複数のコーティングを企図する。いくつかの実施形態では、第2のコーティングは、化粧品活性成分、医薬API(Active Pharmaceutical Ingredient、原薬、医薬品有効成分)又は抗菌剤又は抗ウイルス剤を含むがこれらに限定されない組成物を含む。
【0036】
代表的な実施形態:コーティング組成物
A.アクリル酸アンモニウムコポリマー
一実施形態では、本発明によるコーティング組成物は、アクリル酸アンモニウムコポリマーを含む。2-メチル-2-プロペン酸としても知られるアクリル酸アンモニウムコポリマー(INCI名)は、アクリル酸、メタクリル酸又は単純エステルのうちの1つの、2つ以上のモノマーのポリマーのアンモニウム塩である。アクリル酸アンモニウムコポリマーは、フィルム形成剤としても機能する帯電防止剤、結合剤として、化粧品用途に利用される。更に、コーティング組成物中で利用される場合、アクリレート/アクリル酸アンモニウムコポリマーは、接着剤及び/又は固定剤としても作用する。
【0037】
アクリル酸アンモニウムコポリマーは、例えば、Vinysol1086WPとして市販されている。一実施形態では、アクリル酸アンモニウムコポリマーは、総コーティング組成物の約20重量%~約95重量%、好ましくは総コーティング組成物の約30重量%~約95重量%、より好ましくは約37重量%~約50重量%の範囲の量で利用される。Vinysol1086WPは、約8のpH、約10℃の計算されたガラス転移温度Tg、0.1mmの厚さで約10mPasの粘度を有し、本質的に陰イオン性である。
【0038】
スチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマー
実施形態によれば、アクリル酸アンモニウムコポリマーは、スチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーと組み合わされて、得られたコーティング組成物の剛性及び多孔度に対処する。スチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーもまた皮膜形成剤であり、化粧品組成物に利用される。
【0039】
以下の反応は、スチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーの形成を例証する。
【0040】
【0041】
本発明では、スチレン/アクリル酸アンモニウムの量は、コーティング組成物の総重量の約0.1%~約10%の範囲である。スチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーは、Vinysol1013JHとして市販されている。Vinysol1013JHは、陰イオン性であり、pHが6.5~9.0であり、粘度が5~500mPa-sであると報告されている。Vinysol1013JHの計算されたガラス転移温度(Tg)は30℃であると報告されている。より高いTgは、フィルムがより硬いことを意味する。
【0042】
Vinysol1086WP及びVinysol1013JHは、スチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーの45.0%の水性混合物である。したがって、Vinysol1086WP、Vinysol1013JH、又はこれら2つの組み合わせを使用する場合、上記のようなスチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーの濃度を達成するために、Vinysol1086WPとVinysol1013JHとの総濃度は、コーティング組成物の総重量の約1%~約66.7%であるべきである。コーティング組成物の約2重量%~65重量%が好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態では、Vinysol1086WPとVinysol1013JHとを組み合わせたヤング率は、約1ギガパスカル単位~約20ギガパスカル単位の範囲である。いくつかの実施形態では、ポリアクリレートコポリマーの組み合わされたヤング率は、約5ギガパスカル単位~約20ギガパスカル単位の範囲、好ましくは約10ギガパスカル単位である。
【0044】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物中に存在するアクリル酸アンモニウムコポリマーとスチレン/アクリル酸アンモニウムコポリマーとの比率は、約1:1~約30:1、最も好ましくは13:1~約15:1の範囲である。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリアクリレートコポリマーを含むコーティング組成物は、約-40℃~約40℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。好ましい実施形態では、Tgは約-30℃~約30℃の範囲である。
【0046】
B.可塑剤
本発明によるコーティング組成物は水性であり、典型的には、総コーティング組成物の約50重量%~約60重量%の水を含む。この量の水は、Vinysol1086WP及びVinysol1013JHを含む全ての供給源からのものである。しかしながら、水性コーティング組成物は、これまで記載されてきたように、化粧品産業において一般的に使用される種類の機械式ポンプ噴霧器から噴霧可能ではない。最良の場合であっても、生成物の狭い流れが生成され、大気に衝突した際にもほとんど霧化されない、又は全く霧化されない。これは、比較的大きな領域を薄膜で覆うことを意図した製品には受け入れられない。このため、第3の主成分は、ブチレングリコール、プロパンジオール及びグリセリンのうちの1種以上である。このような成分は可塑剤として作用し、コーティング組成物に対して複数の有益な効果を有する。例えば、これらの基材は、湿潤コーティング組成物の噴霧性を増大させる、並びに可撓性を増大させる。可塑剤は、コーティング組成物の多孔度を増大させることによってこれを実行する。本発明の好ましいコーティング組成物が基材に適用され、これを乾燥させる場合、乾燥した基材は、1nm~5μm、例えば、1nm~3μmの平均多孔度を有する。0.1%~5%のブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン又はこれらの任意の組み合わせを使用して、孔径を達成し得る。
【0047】
更に、これらの同じ可塑剤は、別の有益な役割を果たす。本発明のコーティング組成物は、噴霧される、又は適用される基材材料に対して高い接着性を有するべきである。乾燥フィルムの表面張力が、化粧品又はスキンケア剤又は調製物の表面張力の10mN/m(ミリニュートン/メートル)以内である場合、十分に高い接着性を確保し得る。典型的なシリコーン中水型又は油中水型製品は、約20mN/m~50mN/mの表面張力を有する。本発明のコーティング組成物の約50%~60%の量で存在する水は、約72mN/mの表面張力を有する。したがって、本発明のコーティング組成物の表面張力を、典型的には、基材の表面張力の10mN/m以内に低下させる必要がある。一般に、組成物中のブチレングリコール、プロパンジオール及びグリセリンのうちの1種以上のレベルを増大させることは、組成物の表面張力を低下させる。有利には、コーティング組成物の表面張力は、必要に応じて、0.1%~5%のブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン又はこれらの任意の組合せの使用によって調節され得る。したがって、噴霧性、可撓性、快適性及び接着性の効果は、これらの成分の任意の組合せの総濃度を、総コーティング組成物の約1重量%~5重量%へと調節することによって、達成される。
【0048】
C.界面活性剤及び乳化剤
1種以上の界面活性剤又は乳化剤もまた、表面張力を調節するために使用されてもよい。上記のように、本発明のコーティング組成物は、典型的には、総コーティング組成物の約50重量%~約60重量%の水を含む。本発明のいくつかの好ましい実施形態は、単一水相組成物であり、油又はシリコーンをほとんど含有しない、又は全く有しない。その他の好ましい実施形態では、コーティング組成物は、軽く乳化された水中油型乳濁液である。乳濁液の実施形態は、組成物が芳香油を含む場合に、又は組成物が少なくとも1種の油溶性活性物質(例えば、ビタミンEアセテート)を送達するために使用される場合に、有用である。しかしながら、コーティング組成物の表面張力を調節するために、1種以上の界面活性剤又は乳化剤もまた、本発明において使用し得る。一般に、界面活性剤又は乳化剤のレベルを増大させると、組成物の表面張力が低下する。表面張力を調節するために使用されるか油溶性成分を乳化するために使用されるかにかかわらず、1種以上の界面活性剤又は乳化剤は、8~12のHLBを有し、また総コーティング組成物の2%以下、典型的には総コーティング組成物の0.01%~2%を含むべきである。
【0049】
D.カラギーナン及びヒアルロン酸
本発明のコーティング組成物を皮膚に適用し、完全に乾燥させる場合、組成物により、使用者は粘着性を感じる場合がある。約0.01%~約1.0%の濃度でカラギーナン及び/又はヒアルロン酸を使用することによって、本明細書に記載の組成物のコーティング効果を妨げることなく、粘着感を軽減し得る。追加の効果として、カラギーナンはわずかな可塑化効果を有し、凝集及び粒径を低減させる効果を有する。従って、使用される場合、カラギーナンは、本発明のコーティング組成物の噴霧性を増大させる、並びに乾燥組成物の粘着性の感触を低減させる。本発明の好ましいコーティング組成物は、記載されるようなカラギーナン及び/又はヒアルロン酸を含む。
【0050】
E.疎水性材料
ケラチン表面又は非ケラチン表面を含む表面に適用する前に、本発明のコーティング組成物は、第1の親水性状態にある。水溶性成分をこの第1の状態で配合する能力は有利である。第1の状態において十分な親水性を維持するために、疎水性材料の使用は、コーティング組成物の総重量に基づいて約5%未満、例えば、0.001%~5%、好ましくは2%未満、より好ましくは約0.25%未満に制限されるべきである。部分的に親水性であり、部分的に疎水性である材料は、最終的なコーティング組成物の性能に基づいて、これらの限界を超える可能性がある。本発明のいくつかの実施形態では、コーティング組成物が疎水性油又はワックスなどの疎水性成分を含まない場合が好ましい。油は、エステル、トリグリセリド、炭化水素及びシリコーンなどの、周囲温度で液体である有機物質である。化粧品組成物に使用される典型的なワックスは、カルナウバワックスである。本発明のいくつかの実施形態では、組成物が疎水性油又はワックスを含有しない場合が最も好ましい。
【0051】
F.ポリウレタン
ポリウレタンは、組成物を非常に硬くする傾向があり、皮膚又は毛髪からフィルムを除去するのに必要な水の特定の最低温度を変化させる。したがって、本発明のコーティング組成物は、0.5%以下、例えば0.0001%~0.5%のポリウレタンを含む。
【0052】
G.種々の成分
消費者体験を微調整するために、又は組成物の性能を向上させるために、種々の成分をコーティング組成物中に含んでもよい。例えば、アルコールは、皮膚への適用後の乾燥を速めるのに有用であり得る。5%までのアルコール量が有用であり得る。コーティング組成物はまた、防腐剤及び抗酸化剤を、典型的には、コーティング組成物の約2重量%まで含んでもよい。消費者が許容できる製品を作製するために、必要に応じて、典型的には、コーティング組成物の1重量%未満の量で、増粘剤、粘度低下剤及び/又はpH調整剤(苛性ソーダなど)を使用してもよい。これらの量では、前述で指定された成分は、組成物の有用な特性に悪影響を及ぼさないようである。
【0053】
H.アクティブデリバリー
上記のように、本発明の好ましいコーティング組成物は多孔質であり、1nm~5.0μmの平均孔径を有する。本孔径は、コーティング組成物を、化粧品成分、抗菌剤及び/又は抗ウイルス剤を含む活性成分のための送達基剤として有用にする。1nm~5μmの範囲の孔径は、抗菌剤及び/又は抗ウイルス剤などの剤の制御された流入に特に有用である。本発明の組成物は、抗菌剤又は抗ウイルス剤を含んでもよい。好ましくは、コーティング組成物は、総組成物の約1重量%~約15重量%の抗菌剤又は抗ウイルス剤を含む。好ましい実施形態では、このような剤は、疎水性キャリア又は親水性キャリアとともに、好適に配合される。
【0054】
活性成分は、水相又は油相(存在する場合)に組み込まれてもよい。親水性(水溶性)活性物質の例としては、藻類抽出物、ゲットウ葉抽出物(alpinia speciosa leaf extract)、アルテロモナス発酵抽出物(Alteromonas ferment extract)、アスコルビル酸グルコシド(ascorbyl acid glucoside、AA2G)、スイカ(citrullus lanatus、西瓜)果実抽出物、ヒトシベサンザシ(crataegus monogyna、サンザシ)花抽出物、ヒアルロン酸、加水分解酵母タンパク質、乳酸菌発酵体(Lactobacillus ferment)、カミツレ(matricaria、カモミール)抽出物、レンズマメ(lens esculenta、レンチル)果実抽出物、ボタン(paeonia suffruticosa、牡丹)根抽出物、パンテノール、セイヨウリンゴ(pyrus malus、リンゴ)果実抽出物、及びサトウキビ(saccharum officinarum)抽出物が挙げられる。各個々の親水性活性物質は、典型的には、コーティング組成物の5.0重量%以下、例えば、0.0001重量%~5重量%で組み込まれる。疎水性(油溶性)活性物質の例としては、ローマンカモミール(Anthemis nobilis)油、bht(ブチル化ヒドロキシトルエン)、カフェイン、ココヤシ油、サリチル酸、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル、及びトコフェリル酢酸が挙げられる。
【0055】
各個々の疎水性活性物質は、典型的には、コーティング組成物の1重量%以下、例えば、0.0001重量%~1重量%で組み込まれる。本発明のいくつかの実施形態では、コーティングのpHは、約pH1~14、好ましくは4~19、最も好ましくは5~8の範囲である。
【0056】
以下の非限定的実施例は、本発明を例示する。
【0057】
【0058】
個々のコア及びコーティング
別の態様では、本発明は、活性成分の個々の各粒子が本明細書に記載のコーティング組成物でコーティングされるように、複数のコーティングされた活性成分を含む、複数の微粒子から成る化粧品組成物又は皮膚科用組成物を提供する。活性成分の各個々の粒子は、コア及びその上のコーティングを更に含み、コアは上記のコーティング組成物でコーティングされている。一実施形態では、化粧品組成物は、少なくとも1種の活性成分を含む。その他の実施形態では、化粧品組成物は、類似の又は異なる2種以上の活性成分を含む。活性成分は、とりわけ、低分子粒子、色素、ペプチド、生体粒子、化学分子、ビタミン、抗酸化剤であってもよい。化粧品組成物は、クリーム、ローション、乳濁液、染料、ゲル、油、懸濁液、溶液、粉末、発泡体、ワックス、ペースト、ファンデーション、石鹸、スプレー又はセラムの形態であってもよいが、これらに限定されない。
【0059】
本発明の一実施形態では、二酸化チタン粒子が活性成分として利用される。本実施形態では、個々の各二酸化チタン粒子は、コア及びその上のコーティングを含む。したがって、個々の二酸化チタン粒子のコアは、コーティング組成物でコーティングされる。
【0060】
このようなコーティングに使用されるポリマーは、コア上にコーティングする前に水中に分散される。コーティングは、一般に、マイクロ流体噴霧器を使用して各コア上に噴霧すること(すなわち、噴霧工程)によって、達成される。噴霧工程の後、活性成分粒子のコアを乾燥させて、コーティングされたコア中に存在する全ての水粒子を確実に除去し、それによって、個々にコーティングされた活性成分コアを含む疎水性複合体を得る。噴霧化された噴霧器が測定可能かつ均一なポリマーコーティングを堆積させることができるように、本プロセスが、密閉チャンバ内で活性成分を浮揚させるための流体床及び強制空気を必要とすることから、コーティングされたコアは、完全に乾燥されなければならない。本発明の特定の実施形態では、各二酸化チタン粒子のコアは、コーティング組成物でコーティングされる。
【0061】
実施形態では、コーティングの厚さは、100nm~100μmの間で変動し得る。いくつかの実施形態では、コーティングの厚さは、約0.5~3nmの範囲である。例えば、本範囲において、二酸化チタンコア粒子は、十分に高い紫外線吸収、反射及び散乱を示し、それによって、それを日焼け止め剤又はサンケア組成物に好適なものにする。
【0062】
更なる実施形態では、コーティングされた粒子は、粒子コアの約1重量%~99重量%、少なくとも約25重量%、30重量%、35重量%、50重量%、70重量%、80重量%、90重量%又は99重量%の範囲の量で活性成分を含む。好ましい実施形態では、コーティングされた粒子は、粒子コアの総重量の約40~90%の範囲の量で存在する。百分率は更に、化粧品組成物の総重量に関する。個々のコーティングされた各粒子は、コア及びその上のコーティングを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、複数のコーティングされた粒子は、50%未満の含水量を有する。好ましい実施形態では、複数のコーティングされた粒子は、乾燥後に10%、5%又は2%未満の含水量を有する。好ましい実施形態では、複数のコーティングされた粒子は、1%以下の含水量を有し、疎水性である。
【0064】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、活性成分のコア上に噴霧される前に、特定のゼータ電位を有する。ゼータ電位は、分散媒、すなわちコーティングと粒子の固定層、すなわちコア粒子との間の電位差の尺度である。その他の実施形態では、コーティング工程の前に、特定の電荷が活性成分のコアに噴霧される。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約1000ボルト~約0.01ミリボルトの範囲内である。いくつかの実施形態では、ゼータ電位は、約100ボルト~約0.01ミリボルトの範囲である。
【0065】
特定の実施形態では、コーティング組成物中に存在するポリアクリレートコポリマー及び複合体は、コア活性成分の電荷を中和するのに必要な得られたゼータ電位に基づいて選択される。このような様式で、コーティング工程の後、コア粒子は、化粧品組成物の正味電荷を中和するのに十分な合成電荷を有する。二酸化チタンの場合、そのバンドギャップは3.05eVである。コーティングが適用された後、コーティングと二酸化チタンとの間の電位は、波長の吸収に正の影響を及ぼし、それによって、化粧品組成物のSPFの増大をもたらす。
【0066】
したがって、本発明は、活性成分のコアに存在する電荷を調整するための方法を企図し、また、ポリアクリレートコポリマー又はその複合体を含むコーティングを適用することによって活性成分の電荷を中和するための方法も企図する。これは、フリーラジカル生成を防止し、また、日焼け止め剤、サンケア、メイクアップ又はこれらの組み合わせのための組成物のSPFを増大させる。
【0067】
いくつかの実施形態では、粒子あたりのコアとコーティングとの比率は、1:1~約99:1の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:100である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:10である。いくつかの実施形態では、粒子あたりのコアとコーティングとの比率は、約1:1~約1:99の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:50である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:25である。
【0068】
複数のコア及びコーティング
本発明の実施形態は更に、複数のコーティングされたコア及び/又はコーティングされていないコアを含む複数のコーティングされた粒子を含む、複数の微粒子から成る化粧品組成物又は皮膚科用組成物を提供する。
【0069】
本発明の一態様によれば、化粧品組成物は複数の粒子を含み、各粒子はコア及びその上のコーティングを有する少なくとも1種の活性成分を含み、粒子コアは、最初に上記のようなコーティング組成物でコーティングされることが企図される。次に、コーティングされた粒子を、複数のコーティングされていない粒子に近接させる。各コーティングされていない粒子は、コアを有する少なくとも1種の活性成分を含む。コーティングされていない粒子及びコーティングされた粒子は、均一な様式、すなわち、溶液、分散液等で、媒体中で一緒に混合することですぐ近くにもたらされる。したがって、本発明は、コア及びコーティングを有する複数のコーティングされた活性成分粒子と、コアを有する複数のコーティングされていない活性成分粒子と、を含み、それによって、コーティングされた粒子とコーティングされていない粒子との両方が特定の比率で組み合わされている、複数の微粒子から成る化粧品組成物を提供する。複数のコーティングされた活性成分粒子及び複数のコーティングされていない活性成分粒子がコーティング内に一緒に存在するように、得られた複数の微粒子から成る粒子をコーティング組成物で更にコーティングする。
【0070】
低減した近接性(すなわち、粒子間の距離)は、化粧品組成物の有効性を増大させる。コーティングが存在しない場合、日焼け止め剤の活性成分コアは、日焼け止め剤組成物の有効性に影響を及ぼすフリーラジカルを生成する。本発明によれば、コーティングされていない活性成分粒子が、コーティングされた活性成分コア粒子の近接範囲内にもたらされる場合、コーティングされていないコア粒子は、コーティングされたコア粒子によって生成されるいずれのフリーラジカルをも中和する。更に、ポリアクリレートコポリマーを使用するコーティングされたコア及びコーティングされていないコアの任意の更なるコーティングは、凝集及びフリーラジカル生成を更に低減する。このような日焼け止め剤組成物は、より高い反射率及びSPFを有し、それによって、紫外線の吸収が増大する。更に、上記のように、コーティングはまた、コアによって生成されるフリーラジカルを中和するのに不可欠な電荷を考慮に入れる場合がある。
【0071】
酸化亜鉛粒子を含む日焼け止め剤組成物の具体例では、コーティングが適用された後、コーティングと酸化亜鉛粒子との間の電位は、吸収波長に正の様式で影響を及ぼし、それによって、日焼け止め剤又はサンケア組成物のSPFの増大をもたらす。
【0072】
スキンケア剤の場合、複数の微粒子から成る粒子を形成する、コーティングされた活性成分とコーティングされていない活性成分との組み合わせ上の複数のコーティングは、皮膚層を刺激し、皮膚層に影響を及ぼすことが知られている任意の青色光から反射する。
【0073】
別の実施形態では、活性成分粒子の複数のコーティングされたコアを、少なくとも1種の複数のコーティングされた活性成分粒子に近接させる。いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子は、同じ活性成分のものである。いくつかの実施形態では、コーティングされた物品は、異なるコア活性成分を有する異なる粒子である。
【0074】
粒子は、分散液中若しくは溶液中で、又は適切な溶媒中で粒子を混合することによって、近接させてもよい。コーティングされた粒子の重量は、粒子の総重量の約1%~99%、少なくとも約25%、30%、35%、50%、70%、80%、90%又は99%の範囲の量である。
【0075】
本発明の化粧品組成物中の活性成分の総量(重量比)は、約1~100%、10~100%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、又は約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%であり得る。一実施形態では、活性成分の総量は60~90%である。
【0076】
いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子は、約10~90mN/mの範囲の表面張力を有する。いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子は乳濁液中に存在する。いくつかの実施形態では、乳濁液は油相である。いくつかのその他の実施形態では、乳濁液は水相である。
【0077】
特定の実施形態では、コーティングされた粒子は、色素又は色素粉末である。いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子は、スキンケア活性物質又はスキンケア剤である。いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子は、洗浄剤である。いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子は、色素、スキンケア活性物質、洗浄剤又はこれらの組み合わせを含む。
【0078】
コーティングされた粒子のコアは、任意の好適な粒径又は形状を有し得る。例えば、コーティングされた粒子は、約0.1~5000ミクロンの粒径範囲を有するコーティングされた粉末の形態であり得る、又は約0.1~5000nmの範囲の公称粒径を有する構造の形態であり得る。
【0079】
代表的実施形態:化粧品組成物
1.日焼け止め剤組成物
本発明の代表的実施形態が提供される。本発明の一態様によれば、ヒト皮膚、毛髪又は身体を保護するための化粧品組成物又は皮膚科用組成物が提供される。代表的実施形態は、紫外線照射からヒト皮膚を保護することを目的とする日焼け止め剤組成物である。化粧品組成物は、個々の各コア二酸化チタン粒子が、その上の表面コーティングでコーティングされるように、コーティングされた二酸化チタン粒子を含む。化粧品組成物は、多層コーティングを更に含み、いくつかの実施形態では、組成物は、複数の微粒子から成る粒子内に2つ以上のコーティングされたコア粒子を含む。
【0080】
二酸化チタン又は酸化亜鉛などの金属酸化物は、日焼け止め剤に広く使用されている。それらの作用は、実質的に有害な紫外線照射の反射、散乱及び吸収に基づいており、金属酸化物の一次粒径に大きく依存する。二酸化チタンはまた、化粧品製剤にも広く使用されている。特に、二酸化チタン又は酸化亜鉛などの金属酸化物は、その光触媒活性故に、ヒドロキシルラジカルなどの反応種を形成する。このような反応種は、化粧品組成物中の活性成分の凝集、漏れ又は漏出を引き起こし、したがって、それはSPFを含む製品性能を損なう。
【0081】
本発明の出願人らは、驚くべきことに、コア及びその上のコーティングを有するコーティングされた複数の二酸化チタン粒子を含み、それによって、粒子の個々の各コアが、本明細書に記載のコーティング組成物でコーティングされている、複数の微粒子から成る新規化粧品組成物を発見した。したがって、個々のコーティングされた各粒子は、コア及びその上のコーティングを含む。コーティングは、個々の各粒子がプロセスにおいてコーティングされるように、マイクロ流体噴霧器を介して二酸化チタン粒子の表面上にコーティング組成物を噴霧することによって、実行されてもよい。コーティング組成物の選択は、活性成分のコア及び化粧品組成物の所望の特性に依存する。本代表的実施形態では、ポリアクリレートコポリマー及びその複合体が、コーティングに利用される。好ましい実施形態では、上記の代表的実施形態に記載されているように、アクリル酸アンモニウムコポリマー及びスチレンアクリル酸アンモニウムコポリマーが利用される。
【0082】
本代表的実施形態によれば、個々の二酸化チタン粒子のコアは、コーティング組成物を二酸化チタン粒子に混合させる又は噴霧することによって、液相コーティングでコーティングされる。コアをコーティングした後に、粒子を乾燥させて水を除去する。いくつかの実施形態では、粒子は、乾燥時に50%未満の含水量を有する。好ましい実施形態では、粒子は、乾燥時に10%、5%、1%又は0.1%未満の含水量を有する。
【0083】
いくつかの実施形態では、コーティングは、コーティング及び乾燥プロセスの際にコアの正味電荷を中和するのに必要な、コア粒子の得られたゼータ電位に基づいて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、コアとコーティングとの比率は、1:1~約99:1の範囲である。
【0084】
代表的実施形態の別の態様では、複数の微粒子から成るコーティングされた二酸化チタン粒子を、コーティングされていない酸化亜鉛粒子と混合する。二酸化チタン粒子のそれぞれのコアをコーティングし、続いて乾燥させた際に、各コーティングされたコア粒子を、分散液、溶液又は懸濁液中で混合することによって、複数のコーティングされていない酸化亜鉛粒子と混合する。したがって、得られた複数の微粒子から成る混合物は、複数のコーティングされた
二酸化チタン及びコーティングされていない酸化亜鉛粒子を含む。次に、得られた複数の微粒子から成る粒子を、同じコーティング組成物又は異なるコーティング組成物で更にコーティングする。
【0085】
代表的実施形態の更に別の態様では、複数の微粒子から成るコーティングされた二酸化チタン粒子を、コーティングされた酸化亜鉛粒子と混合する。各二酸化チタン粒子のコアをコーティングし、続いて乾燥させた際に、コーティングされた粒子を、分散液、溶液又は懸濁液中のコーティングされた酸化亜鉛粒子と混合する。したがって、得られた複数の微粒子から成る化粧品組成物は、複数のコーティングされた二酸化チタン粒子及びコーティングされた酸化亜鉛粒子を含む。得られた複数の微粒子から成る粒子は、同じコーティング組成物又は異なるコーティング組成物で更にコーティングされる。
【0086】
一実施形態では、コーティングされた粒子の重量は、粒子の総重量の約1%~99%、少なくとも約25%、30%、35%、50%、70%、80%、90%又は99%の範囲の量である。
【0087】
いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子のコアとコーティングされていない粒子との比率は、約1:1~約99:1の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約99:50である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、コアとコーティングとの比率は、約1:1~約1:99の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:50である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:25である。
【0088】
いくつかの実施形態では、コーティングされた粒子のコアとコーティングされた粒子との比率は、約1:1~約99:1の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約99:50である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約50:1である。いくつかの実施形態では、コアとコーティングとの比率は、約1:1~約1:99の範囲である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:50である。いくつかの実施形態では、この比率は、約1:1~約1:25である。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態では、コーティングのpHは、pH1~14、好ましくは4~19、最も好ましくは5~8である。本発明の化粧品組成物中の活性成分の総量(重量比)は、約1~100%、10~100%、20~100%、20~90%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、又は約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約100%であり得る。一実施形態では、活性成分の総量は60~90%である。
【0090】
2.メイクアップ組成物
本代表的実施形態は、色素及び/又は色素粉末を含む組成物によってヒト皮膚の外観を改善することに関する。化粧品組成物は、複数のコーティングされた色素粒子(粉末を含む)を含み、それによって、個々の各色素粒子が、その上の表面コーティングでコーティングされる。したがって、個々のコーティングされた各粒子は、コア及びその上のコーティングを含む。化粧品組成物は、多層コーティングを更に含み、いくつかの実施形態では、組成物は、複数の微粒子から成る粒子内に2つ以上のコーティング粒子を含む。
【0091】
出願人らは、驚くべきことに、個々の各粒子がコーティング組成物でコーティングされるように、コア及びその上のコーティングを有する複数のコーティングされた色素粒子を含む新規化粧品組成物を発見した。コーティングは、マイクロ流体噴霧器を介して色素粒子を噴霧することによって実行されてもよい。コーティング基材は、疎水性、親水性又は両親媒性であってもよい。コーティング基材の選択は、活性成分のコア及び所望の化粧品組成物に依存する。例えば、両性ポリマーを使用してもよい。
【0092】
本代表的実施形態によれば、コアを有する少なくとも1種の色素を含む複数の粒子は、コーティング組成物でコーティングされる。色素粒子をコーティングした後、粒子を乾燥させて水を除去する。いくつかの実施形態では、色素粒子は、乾燥時に50%未満の含水量を有する。好ましい実施形態では、コア粒子は、乾燥後に10%、5%、1%又は0.1%未満の含水量を有する。
【0093】
代表的実施形態の別の態様では、次に、複数の微粒子から成る複数のコーティングされた粒子を、分散液、溶液又は懸濁液中のコーティングされていない酸化亜鉛粒子と混合する。したがって、コーティングされた色素粒子とコーティングされていない酸化亜鉛粒子との混合物が得られる。次に、複数の微粒子から成る粒子は、同じコーティング組成物又は異なるコーティング組成物で更にコーティングされる。
【0094】
代表的実施形態の更に別の態様では、複数の微粒子から成る複数のコーティングされた粒子を、分散液、溶液又は懸濁液中でコーティングされた酸化亜鉛粒子と混合する。したがって、複数のコーティングされた色素粒子及びコーティングされた酸化亜鉛粒子が得られる。次に、複数の微粒子から成る粒子は、同じコーティング組成物又は異なるコーティング組成物で更にコーティングされる。
【0095】
代表的実施形態の一実施形態では、コーティングされた粒子の重量は、粒子の総重量の約1%~99%、少なくとも約25%、30%、35%、50%、70%、80%、90%又は99%の範囲の量である。
【0096】
製剤
本発明の一態様によれば、化粧剤を含む製剤は、哺乳類のケラチン性組織に、ヒト皮膚、顔又は毛髪に適用されてもよい。化粧剤を含む製剤は、種々の形態のものであってもよい。例えば、このような形態のいくつかの非限定的実施例としては、溶液、懸濁液、ローション、クリーム、ゲル、乳濁液、懸濁液、トナー、軟膏、洗浄剤、剥離剤、液体シャンプー及びヘアコンディショナー、ペースト、発泡体、粉末、ムース、シェービングクリーム、ヒドロゲル、フィルム形成製品、顔及び皮膚用マスクなどが挙げられる。
【0097】
紫外光への曝露は、角質層の過剰な鱗屑剥離及び感触の変化をもたらし得る。したがって、本発明の化粧剤は、場合により日焼け止め活性物質を含有してもよい。本明細書で使用される場合、「日焼け止め活性物質」は、日焼け止め剤及び物理的日焼け防止剤の両方を含む。好適な日焼け止め活性物質は、有機性又は無機性であってもよい。
【0098】
本明細書で有用な無機性日焼け止め剤としては、以下の金属酸化物が挙げられる:約15nm~約100nmの平均一次粒径を有する二酸化チタン、約15nm~約150nmの平均一次粒径を有する酸化亜鉛、約15nm~約150nmの平均一次粒径を有する酸化ジルコニウム、約15nm~約500nmの平均一次粒径を有する酸化鉄及びこれらの混合物。本明細書で使用される場合、無機性日焼け止め剤は、化粧剤の約0.1重量%~約20重量%、好ましくは約0.5重量%~約10重量%、より好ましくは約1重量%~約5重量%の量で存在する。
【0099】
多種多様な従来の有機性日焼け止め活性物質が、本明細書での使用に好適である。Sagarinらは、Cosmetics Science and Technology(1972年)の第VIII章、189頁以下参照で、多数の好適な活性物質を開示している。具体的な好適な日焼け止め活性物質としては、例えば、p-アミノ安息香酸、その塩及びその誘導体(エチル、イソブチル、グリセリルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸)と、アントラニル酸(すなわち、o-アミノ-安息香酸塩、メチル、メンチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、リナリル、テルピニル及びシクロヘキセニルエステル)と、サリチル酸塩(アミル、フェニル、オクチル、ベンジル、メンチル、グリセリル及びジ-プロピレングリコールエステル)と、ケイ皮酸誘導体(メンチル及びベンジルエステル、α-フェニルシンナモニトリル、ブチルシンナモイルピルビン酸)と、ジヒドロキシケイ皮酸誘導体(ウンベリフェロン、メチルウンベリフェロン、メチルアセト-ウンベリフェロン)と、トリヒドロキシ-ケイ皮酸誘導体(エスクレチン、メチルエスクレチン、ダフネチン、並びにグルコシド、エスクリン及びダフニン)と、炭化水素(ジフェニルブタジエン、スチルベン)と、ジベンザールアセトン及びベンザールアセトフェノン、ナフトールスルホネート(2-ナフトール-3,6-ジスルホネートのナトリウム塩及び2-ナフトール-6,8-ジスルホネートのナトリウム塩)と、ジヒドロキシナフトエ酸及びその塩と、o-及びp-ヒドロキシビフェニルジスルホネートと、クマリン誘導体(7-ヒドロキシ、7-メチル、3-フェニル)と、ジアゾール(2-アセチル-3-ブロモインダゾール、フェニルベンゾオキサゾール、メチルナフトオキサゾール、各種アリールベンゾチアゾール)と、キニーネ塩(重硫酸塩、硫酸塩、塩化物、オレイン酸塩、タンニン酸塩)と、キノリン誘導体(8-ヒドロキシキノリン塩、2-フェニルキノリン)と、ヒドロキシ-又はメトキシ-置換ベンゾフェノンと、尿酸及びビオルル酸と、タンニン酸及びその誘導体(例えば、ヘキサエチルエーテル)と、(ブチルカルボトール)(6-プロピルピペロニル)エーテルと、ヒドロキノンと、ベンゾフェノン(オキシベンゼン、スルイソベンゾン、ジオキシベンゾン、ベンゾレゾルシノール、2,2,4,4-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、オクタベンゾンと、4-イソプロピルジベンゾイルメタンと、ブチルメトキシジベンゾイルメタンと、エトクリレンと、オクトクリレンと、[3-(4’-メチルベンジリデンボーマン-2-オン)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸及び4-イソプロピル-ジ-ベンゾイルメタンと、が挙げられる。これらのうち、2-エチルヘキシル-p-メトキシケイ皮酸(PARSOL MCXとして市販されている)、4,4-t-ブチルメトキシジベンゾイル-メタン(PARSOL1789として市販されている)、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチル-p-アミノ安息香酸、ジガロイルトリオレエート、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、エチル-4-(ビス(ヒドロキシ-プロピル))アミノ安息香酸塩、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-サリチル酸塩、グリセリル-p-アミノ安息香酸塩、3,3,5-トリ-メチルシクロヘキシルサリチル酸、アントラニル酸メチル、p-ジメチル-アミノ安息香酸又はアミノ安息香酸塩、2-エチルヘキシル-p-ジメチル-アミノ-安息香酸塩、2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸、2-(p-ジメチルアミノフェニル)-5-スルホンベンゾオキサゾイン酸、オクトクリレン及びこれらの化合物の混合物が好ましい。
【0100】
本発明において有用な化粧剤において有用なより好ましい有機性日焼け止め活性物質は、2-エチルヘキシル-p-メトキシケイ皮酸、ブチルメトキシジベンゾイル-メタン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾ-フェノン、2-フェニルベンゾイミダゾール-5-スルホン酸、オクチルジメチル-p-アミノ安息香酸、オクトクリレン及びこれらの混合物である。
【0101】
また、米国特許第4,937,370号(1990年6月26日にSabatelliによって発行)、及び米国特許第4,999,186号(1991年3月12日にSabatelli及びSpirnakによって発行)に開示されているような日焼け止め活性物質もまた、化粧剤において特に有用である。そこに開示されている日焼け止め剤は、単一粒子中に、異なる紫外放射線吸収スペクトルを示す2つの別個の発色団部分を有する。発色団部分の一方は主に中波長紫外線(UVB radiation)範囲で吸収し、他方は長波長紫外線(UVA radiation)範囲で強く吸収する。
【0102】
本クラスの日焼け止め剤の好ましい要素は、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)メチル-アミノ安息香酸エステルと、4-ヒドロキシジベンゾイルメタンとのN,N-ジ-(2-エチルヘキシル)-4-アミノ安息香酸エステルと、4-ヒドロキシジベンゾイルメタンとの4-N,N-(2-エチルヘキシル)メチル-アミノ安息香酸エステルと、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステルと、4-(2-ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの4-N,N-(2-エチルヘキシル)-メチルアミノ安息香酸エステルと、2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンのN,N-ジ-(2-エチルヘキシル)-4-アミノ安息香酸エステル、及び4-(2-ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンのN,N-ジ-(2-エチルヘキシル)-4-アミノ安息香酸エステル並びにこれらの混合物である。
【0103】
特に好ましい日焼け止め活性物質としては、4,4’-t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、2-エチルヘキシル-p-メトキシケイ皮酸、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸及びオクトクリレンが挙げられる。
安全かつ有効な量の有機性日焼け止め活性物質が使用されるが、典型的には、化粧剤の約1重量%~約20重量%、より典型的には、約2重量%~約10重量%である。正確な量は、選択された日焼け止め剤及び所望の太陽光線保護指数(SPF)に依存して変化する。
【0104】
更に、局所化粧剤は、保存剤、抗酸化剤、脂肪物質、油、水、有機溶媒、シリコーン、増粘剤、皮膚軟化剤、乳化剤、日焼け止め剤、消泡剤、界面活性剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、非イオン性ポリマー若しくは両性ポリマー又はそれらの混合物、噴射剤、酸性化剤若しくは塩基剤、染料、着色材/着色剤、研磨剤、皮膚感覚剤、収斂剤などの従来の化粧品補助剤及び添加剤と、酸化鉄、金属酸化物などではあるがこれらに限定されない色素若しくはナノ色素若しくは可燃性色素と、あるいは化粧品組成物中に典型的に配合される任意のその他の成分と、を含有してもよい。本発明の化粧品組成物における使用に好適であり、スキンケア産業において従来使用されているこのような化粧品成分は、例えば、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition(1992年)に記載されているが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の化粧剤は、ローション、乳液、クリーム及び油、乳濁液中の油、水性物質、ゲル、ヒドロゲル、シャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアクリーム、毛髪染料、ヘアカラー、染毛のための前処理剤又は後処理剤、並びに枝毛のためのコーティング剤等の形態で存在してもよいが、これらに限定されない。
【0106】
本発明の化粧剤の製剤種類は、溶液系、可溶性系、乳濁液系、ゲル系、粉末分散系又は水油二相系を含む、任意の種類のものであってもよい。
【0107】
添加剤として好適であり得る従来の化粧品補助剤は、例えば、共乳化剤、脂質及びワックス、安定剤、増粘剤、生物起源剤、フィルム形成剤、芳香剤、染料、真珠光沢剤、防腐剤、色素、電解質(例えば、硫酸マグネシウム)、並びにpH調節剤である。共乳化剤は、好ましくは、ポリグリセロールエステル、ソルビタンエステル又は部分的にエステル化されたグリセリドなどの周知のW/O乳化剤、及び更にはO/W乳化剤である。脂質の典型例は、グリセリドであり、とりわけ、蜜蝋、石蝋又は微結晶ワックスなどの親水化されたものと組み合わせて言及され得るワックスがある。
【0108】
ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム及び/又はステアリン酸亜鉛などの脂肪酸の金属塩が用いられ得る。好適な増粘剤は、例えば、架橋ポリアクリル酸及びその誘導体、多糖類、より具体的には、キサンタンガム、グアー-グアー、寒天、アルギネート、及びチロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース、並びに更には脂肪族アルコール、モノグリセリド及び脂肪酸、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンである。
【0109】
例えば、生物起源の活性植物抽出物、タンパク質加水分解物及びビタミン複合体が理解される。慣例的なフィルム形成剤は、例えば、キトサン、微晶質キトサン又は四級化キトサンなどの親水コロイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系のポリマー、四級セルロース誘導体及び類似化合物である。
【0110】
好適な防腐剤は、例えば、ホルムアルデヒド溶液、p-ヒドロキシ安息香酸塩又は
ソルビン酸である。例えば、エチレングリコールジステアリン酸エステルなどの真珠光沢剤には、コールジステアレート(coldistearate)があるが、脂肪酸(複数)及び脂肪酸もまた考慮される。
【0111】
化粧用目的に好適な染料及び認可された物質を使用してもよい。このような染料は、通常、総混合物に基づいて0.001~0.1重量%の濃度で使用される。酸化防止剤の追加の含有量が一般に好ましい。従って、化粧品用用途及び/又は皮膚科用用途に好適な又は慣例的な全ての抗酸化剤を、好ましい抗酸化剤として使用し得る。
【0112】
したがって、本発明の日焼け止め剤組成物は、例えば、油中水型クリーム、水中油型クリーム及びローション、エアロゾール発泡体クリーム、ゲル、油、グリースペンシル、散布剤、スプレー又はヒドロアルコール性ローションとして、液体、ペースト又は固体形態であり得る。
【0113】
使用
本発明の別の態様は、環境汚染物質、細菌粒子又はウイルス粒子から表面を保護する目的のための、ポリアクリレート又はその複合体を含むコーティング組成物の使用、特に商業的使用である。非化粧用実施形態では、表面は、紙、織物、金属、プラスチック、可燃性材料、及び要素、並びに臨床的表面及び病院的表面及び関連器具であってもよい。
【0114】
本発明の別の態様は、コーティングされた化粧品活性成分粒子及びコーティングされていない化粧品活性成分粒子を含む、複数の微粒子から成る化粧品組成物の化粧的使用である。化粧的使用には、皮膚の老化の徴候を予防及び/又は治療すること、並びに紫外線から皮膚を保護することが含まれる。
【0115】
その他の使用としては、明度の低下、顔色の輝きの喪失、皮膚の表面外観の低下、及び/若しくは皮膚のきめの低下を予防かつ/あるいは治療すること、並びに/又は皮膚の生体力学的特性を維持及び/若しくは改善すること、並びに/又は線維芽細胞のエネルギー機構を刺激すること、毛髪を改善すること、毛髪の質感を改善すること、皮膚の輝きを改善すること、紫外線照射から皮膚を保護すること、日焼け止め剤として作用すること、皮膚の機能障害、小じわ、皺、老化若しくは状態の悪化を治療することもまた挙げられる。
【0116】
本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
複数の微粒子から成る複数の粒子を含む化粧品組成物又は皮膚科用組成物であって、前記複数の微粒子から成る粒子が、複数のコーティングされた粒子、及び複数のコーティングされていない粒子を含み、各コーティングされた粒子、及び各コーティングされていない粒子がコアを有する少なくとも1種の活性成分を含み、前記複数のコーティングされた粒子が、その上にコーティングを更に含む、化粧品組成物又は皮膚科用組成物。
[項2]
各コーティングされた粒子が、コーティング組成物でコーティングされている、項1に記載の組成物。
[項3]
前記複数の微粒子から成る粒子が、前記コーティング組成物で更にコーティングされている、項2に記載の組成物。
[項4]
前記コーティング組成物が、総組成物の約1~50重量%の量で少なくとも1つのポリアクリレートコポリマーを含む、項2に記載の組成物。
[項5]
前記活性成分が、化粧剤、ペプチド、DNA、ビタミン、有機酸、色素又はタンパク質である、項1に記載の組成物。
[項6]
前記コーティングされたコア及び前記コーティングされていないコアが同じ又は異なる、項1に記載の組成物。
[項7]
前記コーティングされた粒子が二酸化チタンである、項1に記載の組成物。
[項8]
前記コーティングされていない粒子が酸化亜鉛である、項1に記載の組成物。
[項9]
前記コーティングされた粒子が色素である、項1に記載の組成物。
[項10]
前記コーティング組成物が、20:1~約1:1の比率でアクリル酸アンモニウムコポリマー及びスチレンアクリル酸アンモニウムコポリマーを更に含む、項2又は3に記載の組成物。
[項11]
ヒトの皮膚又は毛髪を保護する方法であって、前記方法が、複数のコーティングされた粒子及び複数のコーティングされていない粒子を含み、それぞれが、コア及びコーティングを有する少なくとも1種の活性成分を有効量で含む前記化粧品組成物を、適用することを含む、方法。
[項12]
前記化粧品組成物が、日焼け止め剤である、項11に記載の方法。
[項13]
前記化粧品組成物が、スキンケア剤、メイクアップ剤又は両方の組み合わせである、項11に記載の方法。
本発明の特定の実施形態を例示及び説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々のその他の変更及び修正が行われ得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内である全てのこのような変更及び修正を対象とすることが意図される。