(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】ディスプレイシート
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
G06F3/042 472
(21)【出願番号】P 2023008564
(22)【出願日】2023-01-24
(62)【分割の表示】P 2021074138の分割
【原出願日】2019-12-11
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2018238317
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154035(JP,A)
【文献】特開2016-136381(JP,A)
【文献】特開2016-009414(JP,A)
【文献】特開2013-117935(JP,A)
【文献】特開2014-115733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光結像手段の一側に配置されたディスプレイ
上に設置され、前記光結像手段と組合されて非接触式入力装置の一部を構成し、前記ディスプレイに表示された画像からの光
が前記光結像手段を介して該光結像手段の他側に
結像して空中に形成される実像
上の特定の位置が指示手段により指示された
際に、その指示された位置を
非接触で検知する
ディスプレイシートであって、
前記
画像からの光を透過させる透過部と、前記光結像手段を介して赤外線を前記実像の全面に照射する赤外線発光素子と、前記実像に触れた前記指示手段によって反射した赤外線を前記光結像手段を介して受光する赤外線受光素子
とを有し、前記透過部と前記赤外線発光素子と前記赤外線受光素子とが重なることなく同一面内に並べて配置されてシート状に形成さ
れることを特徴とするディスプレイシート。
【請求項2】
請求項1記載のディスプレイシートにおいて、該ディスプレイシートの表面に前記赤外線発光素子が発する赤外線が拡散することなく所定の範囲に照射されるようにルーバーが設けられていることを特徴とするディスプレイシート。
【請求項3】
請求項1又は2記載のディスプレイシートにおいて、前記赤外線発光素子及び前記赤外線受光素子のいずれか一方又は双方にはフードが設けられていることを特徴とするディスプレイシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に形成される実像上の特定の位置が指示手段(例えば、指)で指示された際に、その指示された位置を非接触で簡単かつ確実に検知することができるディスプレイシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ(表示器)に画像を表示し、画像の特定の場所を指で押すと感圧センサ等で押圧部分のXY座標が検知され、その入力信号によって次の動作が行われるタッチパネルは従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2では、ディスプレイの直上に発光素子と受光素子をXY軸に沿って多数平行に並べてマトリックスを形成し、指やペン等の障害物(指示手段)でディスプレイの表面をタッチした場合に、その障害物がマトリックスを横切ることで、ディスプレイに当接した位置を検知していた。
【0004】
一方、特許文献3では、透明平板の内部に多数の第1、第2の平面光反射部を平行かつ一定間隔でそれぞれ並べた第1、第2の光制御パネルを、第1、第2の平面光反射部が平面視して直交状態となるように当接又は近接配置した光結像手段を用い、ディスプレイの画像とディスプレイ表面に赤外線を乱反射させた画像とを同時に再生画像として空中に表示し、ディスプレイの再生画像にタッチした指示手段の位置を二次元赤外線カメラによって検知して、ディスプレイの再生画像の指示位置を検知する方法及び装置が提案されている。
【0005】
また、特許文献4では、平面視して交差する第1、第2の微小反射面がそれぞれ同一平面上に多数立設して配置された光結像手段と、光結像手段の一側に設けられたディスプレイとを有し、ディスプレイの画像を光結像手段の他側に第1の像として形成し、第1の像にタッチした指示手段の画像位置を光学的に検知する非接触表示入力装置及び方法において、ディスプレイの表面に、表側からの光のみを検知する光センサを有し、指示手段からの反射光を光結像手段を介してディスプレイ上に第2の像として形成し、第2の像の位置を光センサで検知している。
【0006】
さらに、特許文献5に記載されているように、液晶パネルを構成するトランジスタ形状面に光センサを内蔵させ、液晶表面での指によるマルチタッチやタッチペンの動きを認識する装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-39745号公報
【文献】特開2000-56928号公報
【文献】特許第5509391号公報
【文献】特開2017-142577号公報
【文献】特開2011-29919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2では、タッチパネルの裏面側に存在する平面状のディスプレイに特定の平面画像が表示され、そのディスプレイ上の特定の位置が押圧されることにより、入力(押圧)位置が検知できる構造となっていた。従って、指やペン等の指示手段で画像を押した場合、必ず指示手段がディスプレイ表面に衝突し、ディスプレイが汚れる又はディプレイに疵を付けることがあった。
【0009】
特許文献3には、ディスプレイパネルの他に赤外線の光源、赤外線の乱反射面、赤外線カメラも必要となって装置構成がより複雑になるという問題がある。
特許文献4では、シート状の光センサシートからなる光センサをディスプレイの表側に設けることにより、光センサをディスプレイに組み込む必要がなくなるが、指示手段からの反射光を得るために、赤外線発光器が組み込まれた専用のディスプレイを用意するか、ディスプレイ外に赤外線発光器を設置する必要があり、汎用性に欠け、構成の複雑化及び装置の大型化を招くという問題がある。
【0010】
また、特許文献5は、液晶パネルに光センサを内蔵し、指やタッチペン等の指示手段が液晶パネルにタッチしたことを反射光によって検知する光学式のタッチパネルであり、特許文献3、4のような空中結像式(非接触式)の入力装置ではない。このようなディスプレイを用いたタッチパネルはATM等でも使用されているが、不特定多数の人が画面に触れるので衛生的ではなく、接触感染の防止には有効ではなかった。更に、ディスプレイに向けて光が照射されると、その反射光がディスプレイから放射され、ディスプレイが見難くなる場合があった。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、ディスプレイ上に設置して、光結像手段と組合せるだけで、空中結像式(非接触式)の入力装置を実現することができ、専用のディスプレイや赤外線発光器を別途用意する必要のない汎用性に優れたディスプレイシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的に沿う本発明に係るディスプレイシートは、光結像手段の一側に配置されたディスプレイに表示された画像からの光を、前記光結像手段を介して該光結像手段の他側に実像として結像させ、指示手段により指示された前記実像上の位置を検知する非接触式入力装置において、
前記ディスプレイからの光を透過させる透過部と、前記光結像手段を介して赤外線を前記実像の全面に照射する赤外線発光素子と、前記実像に触れた前記指示手段によって反射した赤外線を前記光結像手段を介して受光する赤外線受光素子と、これらを支持する部材とを有し、前記透過部と前記赤外線発光素子と前記赤外線受光素子とが重なることなく同一面内に並べて配置されてシート状に形成され、前記ディスプレイ上に配置されて使用される。
本発明に係るディスプレイシートにおいて、該ディスプレイシートの表面に前記赤外線発光素子が発する赤外線が拡散することなく所定の範囲に照射されるようにルーバーが設けられているのが好ましい。
前記赤外線発光素子及び前記赤外線受光素子の双方にフードが設けられ、前記赤外線発光素子からの赤外線が前記赤外線受光素子で直接受光されるのを防止してもよい。
本発明に係るディスプレイシートにおいて、前記赤外線発光素子のフードの高さを前記赤外線受光素子のフードの高さより高くすることもできる。
ここで、赤外線受光素子には可視光を検知しないようにフィルタ等を用いることが好ましいが、必須の要件ではない。前記赤外線発光素子及び前記赤外線受光素子以外を透明な材料(例えば、透明シート)で形成し、透明な材料の一部又は全部をディスプレイの光の透過部とすることもできる。
【0013】
前記赤外線発光素子及び前記赤外線受光素子の双方にフードが設けられている場合、ディスプレイ上で赤外線発光素子からの光が直接赤外線受光素子に入るなどの誤検知を防止できる。
【0014】
本発明に係るディスプレイシートにおいて、前記赤外線発光素子が発する赤外線には、高周波変調又はデジタル変調がかけられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るディスプレイシートをディスプレイ上に配置することにより、ディスプレイが発する光は透過部を透過し、ディスプレイと所定の距離をおいて設けられる光結像手段の一側から進入するので、ディスプレイに表示される画像が、光結像手段の他側に第1の実像(空中画像)として結像する。このとき、赤外線発光素子から空間に向かって照射される赤外線も光結像手段の一側から進入し、光結像手段の他側に結像した第1の実像に照射される。そして、指示手段が第1の実像に触れると、指示手段から反射した赤外線が光結像手段の他側から進入し、光結像手段の一側にあるディスプレイ上のディスプレイシートの表面で第2の実像として結像するので、赤外線受光素子により第2の実像の位置を検知して、第1の実像に対する指示手段の指示位置(接触位置)を簡単かつ確実に検知することができる。
【0016】
本発明に係るディスプレイシートにおいて、赤外線発光素子及び赤外線受光素子の双方にフードが設けられている場合、赤外線発光素子が発する赤外線が、直接、赤外線受光素子で受光されることを防ぎ、指示手段から反射してディスプレイシートの表面で結像した第2の実像(反射光)のみを受光して、指示手段の指示位置を正確に検知することができる。
【0017】
本発明に係るディスプレイシートにおいて、赤外線発光素子が発する赤外線に、高周波変調又はデジタル変調がかけられている場合、赤外線発光素子から照射されて指示手段から反射する赤外線と、自然界に存在する赤外線を赤外線受光素子で区別することができ、指示手段で指示された指示位置を検出する際の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は本発明の一実施例に係るディスプレイシートの部分平面図であり、(B)は(A)のA-A線断面図である。
【
図2】同ディスプレイシートを用いた非接触式入力装置の説明図である。
【
図3】(A)、(B)はそれぞれ同非接触式入力装置における光結像手段の正断面図、側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施例について説明する。
図1(A)、(B)に示す本発明の一実施例に係るディスプレイシート10は、
図2に示すようにディスプレイ11上に配置されて使用され、非接触式入力装置12の一部を構成し、空中に形成される第1の実像13上の特定の位置が指示手段(例えば、指)14で指示された際に、その指示された位置を非接触で検知するものである。なお、ディスプレイとしては、通常の液晶ディスプレイのように平面板状のものの他に、キーボードのように片側にのみ凹凸を有して発光する表示器等も使用することができる。但し、キーボード等のように凹凸がある表示器の場合は、ディスプレイシートを表示器の凹面又は凸面と並行に配置するのが好ましい。
【0020】
ディスプレイシート10は、
図1(A)、(B)、
図2に示すように、ディスプレイ11上から空間に向かって赤外線を照射する赤外線発光素子15と、空間からディスプレイ11に向かう赤外線を受光する赤外線受光素子16と、ディスプレイ11が発する光を空間に透過させる透過部17とがシート状に並べて又は散在して形成される。なお、赤外線発光素子15及び赤外線受光素子16以外を透明な材料(例えば、透明シート)で形成し、ディスプレイ11の光の透過部とすることもできる。
そして、
図1(A)、(B)に示すように、各赤外線発光素子15の上下には、各赤外線発光素子15に給電するための帯状の透明電極19、20が格子状に配置され、各赤外線受光素子16の上下には、各赤外線受光素子16から赤外線受光時の信号を得るための透明電極21、22が格子状に配置されている。
【0021】
各赤外線受光素子16の外周には、
図1(B)に示すように、周囲の赤外線発光素子15が発する赤外線が、直接、赤外線受光素子16で受光されることを防ぐためのフード(仕切り)23が設けられている。本実施例では、各赤外線受光素子16のみにフード23を設けたが、赤外線発光素子15のみにフードを設けてもよいし、赤外線発光素子15及び赤外線受光素子16にフードを設けてもよい。なお、フードを赤外線発光素子及び赤外線受光素子の双方に設ける場合は赤外線発光素子のフードの高さを赤外線受光素子のフードの高さより高く(1.5~3倍)するのが好ましい。
また、ディスプレイシート10の最上面と最下面は、
図1(B)に示すように、それぞれ透明な保護板24、25で覆われている。このとき、透過部17は、ディスプレイ11が発する光が透過できればよく、透明樹脂が好適に用いられるが、透明電極19、21を保護板24に形成し、透明電極20、22を保護板25に形成した場合は、透過部17は中空でもよいし、透明樹脂を充填してもよい。
【0022】
非接触式入力装置12は、
図2に示すように、ディスプレイ11と30~60度の角度αを有して離れて配置される光結像手段27を備えている。ディスプレイ11に表示される画像からの光は、ディスプレイシート10の透過部17を透過して光結像手段27の一側から進入し、光結像手段27の他側(光結像手段27を挟んでディスプレイ11と対称となる位置、以下、結像面11aという)に第1の実像(空中画像)13として結像する。
【0023】
以下、光結像手段27の詳細について説明する。
光結像手段27は、
図3(A)、(B)に示すように、立設状態で隙間を有して配置された複数の光反射面30を有する第1の光制御部31と、立設状態で隙間を有して配置された複数の光反射面32を有する第2の光制御部33を有し、それぞれの光反射面30、32が平面視して直交するように第1、第2の光制御部31、33が、厚さ方向に重ね合わされて配置(一体化)されたものである。
第1の光制御部31は、第1の透明板材34の一側に、傾斜面35と垂直面36とを有する断面三角形の複数の溝37、及び隣り合う溝37の間に形成される断面三角形の複数の凸条38がそれぞれ所定ピッチで配置された第1の透明樹脂からなる第1の成型母材のそれぞれの溝37の垂直面36に鏡面(金属反射面)からなる光反射面30が形成されたものである。なお、溝37の底部(傾斜面35の下端と垂直面36の下端との間)、及び凸条38の頂部(傾斜面35の上端と垂直面36の上端との間)には、それぞれ微小平面部39、40が形成されている。
【0024】
また、第2の光制御部33は、第2の透明板材41の他側に、傾斜面42と垂直面43とを有する断面三角形の複数の溝44、及び隣り合う溝44の間に形成される断面三角形の複数の凸条45がそれぞれ所定ピッチで配置された第2の透明樹脂からなる第2の成型母材のそれぞれの溝44の垂直面43に鏡面(金属反射面)からなる光反射面32が形成されたものである。なお、溝44の底部(傾斜面42の下端と垂直面43の下端との間)、及び凸条45の頂部(傾斜面42の上端と垂直面43の上端との間)には、それぞれ微小平面部46、47が形成されている。
但し、微小平面部40、47はない方が好ましい。
【0025】
そして、向かい合わせに配置された溝37、44には透明樹脂48が充填されている。
なお、第1、第2の透明樹脂の屈折率η1、η2は同等(η1はη2の0.95~1.05倍)で、その間に充填される透明樹脂48の屈折率η3は、第1、第2の透明樹脂の屈折率η1、η2の0.8~1.2倍(より好ましくは、0.9~1.1倍、更に好ましくは、0.95~1.05倍)の範囲にあることが好ましい。
第1、第2の透明樹脂としては、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタルクレート(アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、PMMA、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂を使用することができるが、特に融点、透明度の高いものが好適に用いられる。
【0026】
鏡面(金属反射面)を形成する方法としては、溝37、44の垂直面36、43に直接、スパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、イオンビームの照射、金属ペーストの塗布等を行うものが好適に用いられるが、スパッタリングや金属蒸着等で反射膜を形成した樹脂フィルムを溝37、44の垂直面36、43に貼り付けてもよい。なお、溝37、44の垂直面36、43に直接、スパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、イオンビームの照射等を行う場合は、真空中又は低圧下で、傾斜面35、42に沿った方向から、かつ照射する金属粒子が傾斜面35、42に当たらないように、斜め上方から垂直面36、43に向けて金属粒子を照射する。このとき、溝37、44の底部にそれぞれ微小平面部39、46が形成されているので、傾斜面35、42に金属粒子が付着することを緩和することができる。そして、垂直面36、43の下端まで斑なく金属粒子を照射することができる。なお、溝37、44の傾斜面35、42は平面状に形成する代わりに、凸条38、45の内側に窪む断面多角形状の多角面や断面円弧状の凹面、或いは表面に多数の微小な凹凸(疵)を有する凹凸面として、金属粒子の付着を防止してもよい。
【0027】
溝37、44に透明樹脂48を充填して第1、第2の光制御部31、33を一体化する方法としては、第1の光制御部31の一側と、第2の光制御部33の他側、つまり、それぞれの溝37、44が形成された側の面が対向するように向かい合わせに配置された状態で、その間に、第1、第2の透明樹脂より融点が低いシート状の透明樹脂を挟み込み、真空状態で加熱、押圧して、シート状の透明樹脂のみを溶解し、固化させてもよいし、それぞれの溝37、44に別々に透明樹脂からなる透明接着剤を充填し、第1、第2の光制御部31、33の溝37、44を向かい合わせ、突き合わせて、透明接着剤を硬化させてもよい。透明接着剤としては、紫外線等を照射することにより硬化する光硬化型の他、熱硬化型や二液混合型の接着剤を用いることができる。特に、屈折率η3を屈折率η1、η2に近づけるために、屈折率を調整した屈折率調整樹脂からなる光学用接着剤等が好適に用いられる。
なお、各溝の傾斜面が多角面、凹面、凹凸面等である場合、アンカー効果によって、傾斜面と、溝に充填される透明樹脂との密着性を高め、溝内を透明樹脂で隙間なく埋めて凹凸を解消することができる。その結果、傾斜面と透明樹脂との界面で乱反射(散乱)を発生させることなく光を通過させることができ、屈折も最小限に抑えて、明るく鮮明な空間画像を得ることができる。
【0028】
次に、光結像手段27の動作を説明する。
図2において、ディスプレイ11に画像が表示されると、その光が光結像手段27に向かって放射される。
図3(A)、(B)に示すように、光L1がP1の位置で光結像手段27の第2の光制御部33に入光した場合、その光L1は、光反射面32上のP2の位置で反射し、第1の光制御部31に進入する。そして、光反射面30のP3の位置で反射した後、P4の位置で第1の光制御部31から空中に出て行き結像する。ここで、
図3(A)のQ1で透明樹脂48から第1の光制御部31に入光するが、第1の光制御部31を構成する第1の透明樹脂の屈折率η1は、透明樹脂48の屈折率η3と近似する(略同等である)ので、全反射や分光等の現象は起こらない。また、
図3(B)のS1で第2の光制御部33から透明樹脂48に入光するが、第2の光制御部33を構成する第2の透明樹脂の屈折率η2は、透明樹脂48の屈折率η3と近似する(略同等である)ので、全反射や分光等の現象は起こらない。なお、P1、P4の位置でも屈折を起こすが、P1、P4の屈折は相殺する。また、光反射面30、32は表裏(
図3(A)、(B)では左右)いずれ側の面も光反射面として機能させることができる。
【0029】
なお、第1、第2の光制御部31、33を製造する過程において、垂直面36、43の頂部にある微小平面部40、47にも金属反射膜が形成されることがある。この金属反射膜が形成されたままになると、光結像手段27の中に微小な光反射面が存在することになり、光結像手段の結像性が悪くなる。そこで、微小平面部40、47に形成された金属反射膜を除去して光透過面(非光反射面)とするか、金属反射膜の表面側及び裏面側に黒色(光線吸収色の一例)に着色された光吸収層(非光反射面)を形成して、光反射面が存在しないようにすることが好ましい。
【0030】
以上のように構成された光結像手段27によれば、一側のディスプレイ11の画像が発する光は、光反射面32によって鏡面反射し、その上の光反射面30によって2回目の鏡面反射をするので、
図2に示したように、他側の空間内に第1の実像13として結像する。このとき、赤外線発光素子15から空間に向かって照射される赤外線も光結像手段27の一側から進入し、光結像手段27の他側に結像した第1の実像13の全面に面状に重なって照射されるが、視認することはできない。
【0031】
そして、指示手段14がディスプレイ11の第1の実像13に触れると、指示手段14から反射した赤外線が光結像手段27の他側から進入し、その画像(反射光によって指示手段14の形状に形成される赤外線画像)が光結像手段27の一側にあるディスプレイ11上のディスプレイシート10の表面で第2の実像49として結像する。第2の実像49は、赤外線による結像であるため目視することはできないが、赤外線受光素子16により、その位置を検知することができ、第1の実像13に対する指示手段14の指示位置(接触位置)を簡単かつ確実に検知して、入力作業を行うことができる。このとき、赤外線発光素子15が発する赤外線に、高周波変調又はデジタル変調がかけられていれば、指示手段14から反射する赤外線と、自然界に存在する赤外線を赤外線受光素子16で区別することができ、指示手段14で指示された指示位置を検出する際の検出精度を高めることができる。このディスプレイシート10を用いることにより、ディスプレイに赤外線発光素子や赤外線受光素子を内蔵したり、外付けの赤外線発光手段や赤外線カメラ等を設置したりする必要がなくなり、既存のディスプレイを用いて簡単に非接触式入力装置を構成することができる。
【0032】
また、
図2に示すように、第1の実像13の周囲を囲むように枠体50を設置することもでき、これにより、指示手段14による操作領域を明確化することができる。また、枠体50を設置する代りに、ディスプレイ11に表示する画像上に枠を一緒に表示しておき、第1の実像の一部として枠が表示されるようにしてもよい。
なお、結像面11aに届かない指示手段14の結像位置はディスプレイ11の表面位置を超えた位置(ディスプレイ11の裏側)になり、ディスプレイ11の表面上にはピントが外れた指示手段14の画像が表示されるので、赤外線受光素子16で、輝度勾配の差等を検知する、又は焦点の合った画像のみを検知する等のピント検出手段を設け、ピントが外れた画像のデータを除去する。そして、指示手段14の画像中心を演算して、ディスプレイ11上の指示位置を検知する。また、結像面11aを通過した指示手段14の結像位置はディスプレイ11の表面位置より手前側(光結像手段27側)になるので、前記と同様の処理を行ない、ピントが外れた画像のデータを除去する。
【0033】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
例えば、ディスプレイで表示する画像及び第1の実像は平面像に限らず、立体像とすることもできる。その場合、第1の実像として結像した立体像の一部(特定の深さ位置)を枠体で囲むようにして、枠体で囲まれた範囲で第1の実像にタッチして入力を行うことができる。例えば、キーボードのような押しボタンスイッチの立体像を第1の実像として結像させる場合、押しボタンスイッチの表面位置(高さ)に合わせて枠体を配置すると、押しボタンスイッチの立体像(第1の実像)の表面にスムーズにタッチして入力を行うことが可能となる。このとき、ディスプレイ側で、タッチされた押しボタンスイッチを発光表示したり、押しボタンスイッチの表示色を変更したりすれば、観察者(入力作業者)は、どの押しボタンスイッチにタッチしたか、第1の実像上で容易に確認することができる。また、指示手段で押しボタンスイッチにタッチしたタイミングに合わせて音を発するようにして、入力を確認できるようにしてもよい。
【0034】
上記実施例では、赤外線発光素子及び赤外線受光素子のいずれか一方又は双方にフードを設けたが、このフードに代えて又は加えて、ディスプレイシートの表面に、赤外線発光素子の発する赤外線が拡散することなく所定の範囲に照射されるようにルーバーを取り付けてもよい。このとき、ルーバーはディスプレイシートの表面に直交するように立設することが好ましいが、必要に応じて傾斜させてもよい。また、ルーバーの高さは、ディスプレイから光結像手段までの距離及びディスプレイと光結像手段とのなす角度αに応じて、適宜、選択することができる。ルーバーは、ディスプレイシートの外周に沿って配置するだけでもよいが、赤外線発光素子の配置(ピッチ)に合わせて、複数並列に配置することが好ましく、特に、ルーバーを格子状(縦横)に配置した場合、赤外線の拡散を効果的に防止することができる。なお、ルーバーは、赤外線が透過しないように黒色等に着色することが好ましい。また、各赤外線受光素子で受光した赤外線強度の違いにより、第2の実像の範囲内で所定値以上の赤外線強度が得られた位置を、ピントの合った位置(画像が鮮明な位置)と判断し、指示手段による指示位置として検知してもよい。
【0035】
なお、上記実施例では、光結像手段として、第1、第2の光制御部の表側(溝が形成された面)同士が接するように配置したものを用いたが、光結像手段は、第1、第2の光制御部の光反射面が、平面視して直交配置されていればよい。よって、第1、第2の光制御部の表側と裏側が接するように配置する場合や、第1、第2の光制御部の裏側同士が接するように配置する場合もある。更に、第1、第2の光制御部を2枚の透明板材を用いて別々に形成して接合する代わりに、1枚の透明板材の一側及び他側に第1、第2の光制御部を形成することもできる。なお、第1、第2の光制御部として、第1、第2の成型母材の各溝の垂直面に鏡面(金属反射面)を形成する代わりに、溝内に空気等の気体を密封したり、溝内を真空にしたりして、光の全反射を利用すれば、各溝の垂直面をそのまま光反射面とすることができる。
【0036】
また、上記実施例では、光結像手段として、第1、第2の光制御部の複数の光反射面がそれぞれ直線状(平行)に配置されたものについて説明したが、複数の光反射面が放射状に配置された第1の光制御部と、複数の光反射面が同心円状に配置された第2の光制御部を有するものも使用することができる。この場合、第1の光制御部の放射状の光反射面が、基準点Xを中心にして直線状に設けられるのに対し、第2の光制御部の同心円状の光反射面は、平面視して基準点Xと重なる基準点Yを中心とする同心円に沿って湾曲しているが、平面視して光反射面同士が交差する点では、両者は直交している。よって、上記実施例と同様に、動作させることができる。
更には、光結像手段としては、例えば、特許第5420774号公報に記載のものを使用してもよいし、特許第4734652号公報に記載の2つの直交する光反射面を有する単位光学素子を平面状に並べて配置したものでもよい。
なお、光結像手段は、ディスプレイに表示される画像を、空間内に結像させることができればよく、第1、第2の光制御部を組合せたもの以外に、例えば、直交する反射面を多数有する2面リフレクター又はレンズ等を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るディスプレイシートを、ディスプレイ上に設置して、光結像手段と組合せるだけで、空中結像式(非接触式)の入力装置を実現することができ、赤外線発光源や赤外線受光部を内部に組み込んだ専用のディスプレイや赤外線発光器を別途用意する必要がなく、通常のディスプレイを使用できるので装置が安価となる。
【符号の説明】
【0038】
10:ディスプレイシート、11:ディスプレイ、11a:結像面、12:非接触式入力装置、13:第1の実像、14:指示手段、15:赤外線発光素子、16:赤外線受光素子、17:透過部、19~22:透明電極、23:フード(仕切り)、24、25:保護板、27:光結像手段、30:光反射面、31:第1の光制御部、32:光反射面、33:第2の光制御部、34:第1の透明板材、35:傾斜面、36:垂直面、37:溝、38:凸条、39、40:微小平面部、41:第2の透明板材、42:傾斜面、43:垂直面、44:溝、45:凸条、46、47:微小平面部、48:透明樹脂、49:第2の実像、50:枠体