(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】剥離ライナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240424BHJP
C09J 7/40 20180101ALN20240424BHJP
【FI】
B32B27/00 L
C09J7/40
(21)【出願番号】P 2023013906
(22)【出願日】2023-02-01
(62)【分割の表示】P 2021131519の分割
【原出願日】2017-11-24
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】大畠 健二
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃史
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特許第7242779(JP,B2)
【文献】特許第6931318(JP,B2)
【文献】特開2010-083915(JP,A)
【文献】特開2004-115766(JP,A)
【文献】特開2016-188344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離ライナーの製造方法であって、
前記剥離ライナーは、剥離処理面に、互いに平行な複数のストライプ状凸部を有し、
前記ストライプ状凸部の幅が10~150μmであり、前記ストライプ状凸部の高さが5~40μmであり、
前記ストライプ状凸部同士の中心線間隔が200~1000μmであり、
前記ストライプ状凸部同士の間に、凹凸部が設けられており、前記凹凸部の最大高さ粗さRzが3μmより大きく、かつ、前記ストライプ状凸部の高さよりも小さく、
前記凹凸部の高さが不揃いであり、
前記ストライプ状凸部は、互いに平行なもののみを有するか、又は、格子状、平行四辺形、ひし形形状若しくは三角形状であり、
金属ロール全面をサンドブラスト処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部を形成し、こうして得た金属ロールを剥離ライナー用基材に押し当てることにより、剥離ライナー用基材に所定の形状を形成し、さらに剥離剤を塗布することによって、金属ロールのストライプ状凹部に対応する、前記互いに平行な複数のストライプ状凸部、及び、このストライプ状凸部同士の間に、金属ロールのサンドブラスト処理面に対応する高さの不揃いな、前記凹凸部を設ける、剥離ライナーの製造方法。
【請求項2】
金属ロール全面をサンドブラスト処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部をエッチング処理して形成する、請求項1に記載の剥離ライナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離ライナー付き粘着シートに用いることのできる剥離ライナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材シートに粘着剤層を介して剥離ライナーが積層された剥離ライナー付き粘着シートが、装飾、表示等の用途に用いられている。このような装飾又は表示用粘着シートは、施工時には、剥離ライナーを剥がして粘着剤層を被着体に貼付するだけでよいことから、従来の塗装による装飾又は表示方法に代わって広く普及してきている。
【0003】
粘着シートが大面積となる場合、施工時に粘着剤層と被着体との間に空気溜まりが生じ易く、粘着シートの美観を損ねることがあったが、このような問題を解決するために、剥離ライナーの表面に凹凸部を設けることで、粘着剤層と被着体との間で空気(エア)を連通しうるようにする技術も知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-224254号公報
【文献】特開平07-278508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの剥離ライナー付き粘着シートは、粘着剤層の表面に空気を連通しうる凹凸が設けられ、高い粘着力が期待されているが、被着体に一度貼付すると、その後の位置調整や再配置が難しくなり、位置直しが難しくなるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、施工時のエア抜け性に優れ、かつ位置直し適性に優れる剥離ライナー付き粘着シート及びそれに用いることのできる剥離ライナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねたところ、剥離ライナー、粘着剤層及び基材シートがこの順に積層されてなる剥離ライナー付き粘着シートであって、前記剥離ライナーが、剥離処理面に、所定の大きさの互いに平行な複数のストライプ状凸部を有し、ストライプ状凸部同士の間にも、所定の大きさの凹凸部を設けることにより、その目的を達成しうることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の剥離ライナーの製造方法を提供するものである。
[1] 剥離ライナーの製造方法であって、
前記剥離ライナーは、剥離処理面に、互いに平行な複数のストライプ状凸部を有し、
前記ストライプ状凸部の幅が10~150μmであり、前記ストライプ状凸部の高さが5~40μmであり、
前記ストライプ状凸部同士の中心線間隔が200~1000μmであり、
前記ストライプ状凸部同士の間に、凹凸部が設けられており、前記凹凸部の最大高さ粗さRzが3μmより大きく、かつ、前記ストライプ状凸部の高さよりも小さく、
前記凹凸部の高さが不揃いであり、
前記ストライプ状凸部は、互いに平行なもののみを有するか、又は、格子状、平行四辺形、ひし形形状若しくは三角形状であり、
金属ロール全面をサンドブラスト処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部を形成し、こうして得た金属ロールを剥離ライナー用基材に押し当てることにより、剥離ライナー用基材に所定の形状を形成し、さらに剥離剤を塗布することによって、金属ロールのストライプ状凹部に対応する、前記互いに平行な複数のストライプ状凸部、及び、このストライプ状凸部同士の間に、金属ロールのサンドブラスト処理面に対応する高さの不揃いな、前記凹凸部を設ける、剥離ライナーの製造方法。
【0009】
[2] 金属ロール全面をサンドブラスト処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部をエッチング処理して形成する、[1]に記載の剥離ライナーの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の剥離ライナー付き粘着シートによれば、施工時のエア抜け性に優れ、かつ位置直し適性に優れる粘着シート及びそれに用いることのできる剥離ライナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の剥離ライナー付き粘着シートの一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態の剥離ライナー付き粘着シートのうち、剥離ライナーを示す斜視模式図である。
【
図3】粘着シートの使用方法の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<剥離ライナー付き粘着シート>>
本発明の剥離ライナー付き粘着シートについて、図面を引用しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の剥離ライナー付き粘着シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2は、この剥離ライナー付き粘着シートのうち、剥離ライナーを示す斜視模式図である。
ここに示す剥離ライナー付き粘着シート1は、剥離ライナー10、粘着剤層20及び基材シート30がこの順に積層されてなり、剥離ライナー10は、粘着剤層20に接する剥離処理面に、互いに平行な複数のストライプ状凸部11を有し、ストライプ状凸部11の幅12が10~150μmであり、ストライプ状凸部11の高さ13が5~40μmであり、ストライプ状凸部11同士の中心線間隔14が200~1000μmであり、ストライプ状凸部11同士の間に凹凸部15が設けられており、凹凸部15の最大高さ粗さRzが3μmより大きく、かつ、ストライプ状凸部11の高さ13よりも小さいものである。
【0014】
図3は、粘着シートの使用方法の一例を示す断面模式図である。剥離ライナー付き粘着シート1を使用する際には、剥離ライナー10を剥がし、残りの粘着シート40の粘着剤層20の側を、被着体50に当接させる。剥離ライナー10が、粘着剤層20に接する剥離処理面に、互いに平行な複数のストライプ状凸部11を有することにより、この剥離ライナー10の表面に貼合された粘着剤層20の表面には、互いに平行な複数のストライプ状凹部22が形成され、このストライプ状凹部22があるので、施工時に、スキージや指などで圧をかけながら貼ることにより、容易に空気(エア)を抜くことができ、空気溜まりが発生することがないので、容易に密着性よくきれいに貼付することができる。また、剥離ライナー10が、前記ストライプ状凸部11同士の間に凹凸部15が設けられていることにより、施工時に、この凹凸部15に対応する粘着剤層20の凹凸を有する転写面24が被着体との初期の接触面となり、位置直し適性にも優れるものとすることができる。貼付後の粘着シート40は、基材シート30の表面に凹みなどが生じたり、凹凸構造が浮き出たりして、外観が損なわれることもない。
【0015】
以下、本発明の剥離ライナー付き粘着シートを構成する各層について説明する。
【0016】
<剥離ライナー>
前記剥離ライナーは、剥離処理面に、互いに平行な複数のストライプ状凸部を有する。
前記ストライプ状凸部の幅は10~150μmであり、20~130μmであることが好ましく、40~110μmであることがより好ましい。
【0017】
前記ストライプ状凸部の高さは5~40μmであり、10~30μmであることが好ましく、15~35μmであることがより好ましい。
【0018】
前記ストライプ状凸部同士の中心線間隔は200~1000μmであり、300~900μmであることが好ましく、400~800μmであることがより好ましい。
【0019】
剥離ライナーが、互いに平行な、以上のような大きさの複数のストライプ状凸部を有することにより、この剥離ライナーの表面に設けられた粘着剤層の表面には、このような大きさの複数のストライプ状凹部が形成され、施工時に容易にエアを抜くことができる。複数のストライプ状凸部は、基材シートの端縁部まで連続して形成されていることが好ましい。剥離ライナーの複数のストライプ状凸部の形状は、粘着剤層の表面に複数のストライプ状凹部を形成し、施工時に容易にエアを抜くことができる形状であればよく、断面形状は問わない。剥離ライナーの複数のストライプ状凸部の断面は、略正方形であってもよく、略長方形であってもよく、略三角形であってもよく、略半円形であってもよく、略半楕円形であってもよい。
【0020】
また、剥離ライナーの複数のストライプ状凸部は平行で規則的に等間隔にすることが好ましい。複数のストライプ状凸部を平行で規則的に等間隔にすることにより、基材シートが透明又は半透明なときも、貼着後に粘着剤層の表面の複数のストライプ状凹部を目立たなくすることができる。
【0021】
剥離ライナー10の複数のストライプ状凸部11は、互いに平行なものを有していればよく、例えば、
図2に示す様に互いに平行なもののみを有していてもよく、互いに平行なもの及び互いに直角に交わるものを有する格子状であってもよく、互いに平行なもの及び互いに所定の角度で交わるものを有する平行四辺形乃至ひし形形状であってもよく、互いに平行なもの及び互いに所定の角度で交わるものを有する三角形状であってもよい。
【0022】
前記剥離ライナーには、前記ストライプ状凸部同士の間に、凹凸部が設けられている。
前記凹凸部の最大高さ粗さRzは3μmより大きく、5μmより大きいことが好ましく、7μmより大きいことがより好ましい。また、前記凹凸部の最大高さ粗さRzは前記ストライプ状凸部の高さよりも小さく、前記ストライプ状凸部の高さの80%より小さいことが好ましく、前記ストライプ状凸部の高さの70%より小さいことがより好ましい。
【0023】
剥離ライナーが、前記ストライプ状凸部を有するとともに、前記ストライプ状凸部同士の間に、凹凸部が設けられ、以上のような大きさの凹凸部とすることにより、粘着シートの施工時に粘着剤層が被着体との間で点接着となることで、エア抜け性に優れ、かつ、位置直し適性にも優れるものとすることができる。
【0024】
剥離ライナーの凹凸部の高さは不揃いであることが好ましい。凹凸部の高さが不揃いであることにより、位置直し適性がより優れるものとすることができる。
【0025】
剥離ライナーとしては、剥離ライナー用基材の少なくとも一方の表面に剥離処理したものが用いられる。剥離ライナー用基材としては、特に限定されず、例えば上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材に、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムなどが挙げられる。さらにこれらのフィルムを積層した積層フィルムであってもよい。
【0026】
剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系、ゴム系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0027】
上記の剥離剤を用いて剥離ライナー用基材となるフィルム等の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布された剥離ライナーを常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させて剥離剤層を形成させればよい。剥離剤層の厚さについては特に制限はないが、0.05~5μm程度である。
【0028】
この剥離ライナーの厚さについては特に制限はないが、通常10~250μm程度であり、好ましくは20~200μm程度である。
【0029】
(剥離ライナーの製造方法)
剥離ライナーの製造方法としては、剥離ライナー用基材に、エンボスロールなどを用いる従来公知の方法により、所定の形状を形成し、さらにシリコーンなどの剥離剤を塗布することによって剥離処理面を設ける。
例えば、金属ロール全面をサンドブラスト処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部をエッチング処理し、こうして得た金属ロールを剥離ライナー用基材に押し当てることにより、剥離ライナー用基材に所定の形状を形成し、さらに剥離剤を塗布することによって、金属ロールのストライプ状凹部に対応する互いに平行な複数のストライプ状凸部11、及び、このストライプ状凸部11同士の間に、金属ロールのサンドブラスト処理面に対応する高さの不揃いな凹凸部15が設けられた、剥離ライナー10を作製することができる。
また、金属ロール全面を一定深さの円錐形状にエッチング処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部をエッチング処理し、こうして得た金属ロールを剥離ライナー用基材に押し当てることにより、剥離ライナー用基材に所定の形状を形成し、さらに剥離剤を塗布することによって、金属ロールのストライプ状凹部に対応する互いに平行な複数のストライプ状凸部11、及び、このストライプ状凸部11同士の間に、金属ロールの円錐形状のエッチング処理面に対応する高さが規則的に揃った凹凸部15が設けられた、剥離ライナー10を作製することができる。
【0030】
<基材シート>
本発明の粘着シートに用いる基材シートとしては、特に制限はなく、従来粘着剤層を有する粘着シートなどの基材シートとして慣用されている各種のプラスチックシートや紙類などを用いることができる。上記材料の表面には印刷、印字、蒸着、スパッタリング等の装飾層や、ハードコート、汚染防止コート、光沢度調整コート等の機能層が形成されてもよい。
【0031】
このプラスチックシートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、各種オレフィン系共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂;ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の成分を含む熱可塑性エラストマー及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるシートを挙げることができる。
【0032】
また、これらプラスチックシートは、その上に設けられる粘着剤層、印刷層やインク受理層などの層との密着性を向上させるために、所望によりコロナ処理やプライマー処理を施すこともできる。
紙類としては、上質紙、アート紙、コート紙、クラフト紙などが用いられる。基材シートに紙類を用いる場合、坪量は、通常40~120g/m2の範囲で選定される。
【0033】
また、基材シートの厚さは特に制限はないが、通常20~500μm、好ましくは30~300μmの範囲で選定される。
ここで、「基材シートの厚さ」とは、基材シート全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材シートの厚さとは、基材シートを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。なお、基材シートの厚さの測定方法としては、例えば、任意の5箇所において、接触式厚み計を用いて厚さを測定し、測定値の平均を算出する方法等が挙げられる。
【0034】
<粘着剤層>
前記粘着剤層は、公知のものを適宜使用できる。
粘着剤層は、これを構成するための各種成分を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~30℃の温度等が挙げられる。
【0035】
当該粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物としては特に制限はなく、従来粘着シートの粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤及びポリエステル系粘着剤などを用いることができる。また、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋型または非架橋型のいずれであってもよい。
アクリル系粘着剤は、粘着性を付与する単量体、凝集力を付与する単量体及び架橋性官能基を含有する単量体からなる共重合体を、架橋剤で架橋したものが挙げられる。
粘着性を付与する単量体としては、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
凝集力を付与する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
官能基を含有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。
【0036】
前記粘着剤組成物は、上述の成分以外に、さらに着色剤(顔料、染料)、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線等の各種添加剤を含有するものでもよい。
【0037】
粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、5~100μmであることが好ましく、5~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましい。ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。なお、粘着剤層の厚さの測定方法としては、例えば、任意の5箇所において、接触式厚み計を用いて厚さを測定し、測定値の平均を算出する方法等が挙げられる。
【0038】
粘着剤組成物は、アクリル系共重合体等、粘着剤層を構成するための各成分を配合することで得られる。
【0039】
<<剥離ライナー付き粘着シートの製造方法>>
剥離ライナー付き粘着シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0040】
例えば、剥離ライナーの剥離処理面上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離ライナーの剥離処理面上に粘着剤層を積層し、基材シートと剥離ライナーの剥離処理面上に形成された粘着剤層とを貼合して、剥離ライナー付き粘着シートとすることができる。剥離ライナー付き粘着シートの粘着剤層の剥離ライナー側の表面は、剥離ライナーの剥離処理面の形状が、逆形状に転写された表面形状を有することとなる。
【0041】
また、基材シート上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材シート上に粘着剤層を積層し、剥離ライナーの剥離処理面と基材シート上に形成された粘着剤層とを貼合して、剥離ライナー付き粘着シートとすることもできる。このときも、剥離ライナー付き粘着シートの粘着剤層の剥離ライナー側の表面は、剥離ライナーの剥離処理面の形状が、逆形状に転写された表面形状を有することとなる。
【0042】
剥離ライナーの剥離処理面又は基材シートの表面への粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0043】
必要に応じて、塗工した粘着剤組成物を加熱することで、架橋してもよい。加熱条件は、例えば、80~130℃で1~5分とすることができるが、これに限定されない。
【実施例】
【0044】
以下、剥離ライナー付き粘着シートの実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0045】
[凹凸部の最大高さ粗さRzの測定方法]
JIS B0601:2013に準拠して、株式会社ミツトヨ製の「SURFTEST SV-3000」を用いて、ストライプ状凸部間の凹凸部の表面粗さを測定し、凹凸部の最大高さ粗さRzを求めた。
【0046】
[エア抜け性(空気溜まり消失性)試験]
サンプルを50mm×50mmにカットし、剥離ライナーを剥がした粘着シートを直径15mmの円形の空気溜まりができるようにメラミン塗装板に貼り、その粘着シートをスキージにより圧着して、下記の基準に従って評価した。
○:空気溜まりが消失した。
×:空気溜まりが消失しなかった。
【0047】
[位置直し適性試験]
剥離ライナー付き粘着シートを幅50mm×長さ100mmにカットして試験体とした。粘着シートを貼り付ける下地材として、平らなメラミン塗装板の表面をエタノールで清拭した物を準備した。続いて、剥離ライナー付き粘着シートから剥離ライナーを剥離し、粘着剤層がメラミン塗装板と接するように試験体を配置した。10秒後、粘着シートの粘着剤層とメラミン塗装板とを接触させた状態で、下地材に沿う方向に粘着シートを移動(スライド)させた。
○:下地材に沿う方向に粘着シートを滑らかに移動できた。
△:下地材に沿う方向に粘着シートを、引っ掛かりがあったが移動できた。
×:下地材に沿う方向に粘着シートを移動できなかった。
【0048】
[実施例1]
(基材シートの製造)
下記ベース樹脂を溶融させて得られた基材シート用組成物を、カレンダーにより80μmの厚みに成膜することにより、基材シートを得た。
【0049】
ベース樹脂:
ポリ塩化ビニル(PVC):100質量部、フタル酸ジオクチル:20質量部、エポキシ系可塑剤:5質量部、バリウム亜鉛系安定剤:2質量部、酸化チタン(顔料):10質量部
【0050】
(粘着剤組成物の製造)
単量体成分として、アクリル酸ブチル92質量部、及びアクリル酸8質量部、溶剤として、酢酸エチル200質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行い、重量平均分子量が65万のアクリル系共重合体を含む酢酸エチル溶液(乾燥質量濃度33質量%)を得た。酢酸エチル溶液100質量部に対してイソシアネート系架橋剤1質量部を添加することにより、粘着剤組成物を得た。
【0051】
(剥離ライナーの製造)
金属ロール全面をサンドブラスト処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部をエッチング処理し、こうして得た金属ロールを、紙基材にポリエチレンをラミネートした剥離ライナー用基材のポリエチレン面に押し当てることにより、剥離ライナー用基材に
図2に示す所定形状の表面を形成し、さらにシリコーンからなる剥離剤を厚さ0.1μmとなるよう塗布することによって、金属ロールのストライプ状凹部に対応する互いに平行な複数のストライプ状凸部11、及び、このストライプ状凸部11同士の間に、金属ロールのサンドブラスト処理面に対応する高さの不揃いな凹凸部15が設けられた、実施例1の剥離ライナーを作製した。
得られた剥離ライナーの、ストライプ状凸部の幅は80μmであり、ストライプ状凸部の高さは20μmであり、ストライプ状凸部同士の中心線間隔は600μmであり、ストライプ状凸部同士の間の、不揃いな高さの凹凸部の最大高さ粗さRzは10.2μmであった。
【0052】
(剥離ライナー付き粘着シートの製造)
この実施例1の剥離ライナーに、粘着剤組成物を、乾燥後の粘着剤層の厚さが30μmとなるように塗布し、90℃で1分間乾燥した後に、前記基材シートに転写して粘着剤層を形成し、実施例1の剥離ライナー付き粘着シートを作製した。この粘着シートの性能評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例2](参考例)
(剥離ライナーの製造)
金属ロール全面を一定深さの円錐形状にエッチング処理した後、互いに平行な複数のストライプ状凹部をエッチング処理し、こうして得た金属ロールを、紙基材にポリエチレンをラミネートした剥離ライナー用基材のポリエチレン面に押し当てることにより、剥離ライナー用基材に所定形状の表面を形成し、さらにシリコーンからなる剥離剤を厚さ0.1μmとなるよう塗布することによって、金属ロールのストライプ状凹部に対応する互いに平行な複数のストライプ状凸部11、及び、このストライプ状凸部11同士の間に、金属ロールのエッチング処理面に対応する一定高さの円錐形状の凹凸部15が設けられた、実施例2の剥離ライナーを作製した。
得られた剥離ライナーの、ストライプ状凸部の幅は80μmであり、ストライプ状凸部の高さは20μmであり、ストライプ状凸部同士の中心線間隔は600μmであり、ストライプ状凸部同士の間の、一定高さの円錐形状の凹凸部の最大高さ粗さRzは10.0μmであった。
【0054】
(剥離ライナー付き粘着シートの製造)
この実施例2の剥離ライナーに、実施例1と同様、粘着剤組成物を、乾燥後の粘着剤層の厚さが30μmとなるように塗布し、90℃で1分間乾燥した後に、前記基材シートに転写して粘着剤層を形成し、実施例2の剥離ライナー付き粘着シートを作製した。この粘着シートの性能評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
金属ロール全面へのサンドブラスト処理の条件を調整して、凹凸部の最大高さ粗さRzが1.2μmとなるようにした他は、実施例1と同様にして、比較例1の剥離ライナー付き粘着シートを作製した。この粘着シートの性能評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
金属ロールへの互いに平行な複数のストライプ状凹部のエッチング処理の条件を調整して、ストライプ状凸部の幅を8μm、ストライプ状凸部の高さが5μmとなるようにした他は、比較例1と同様にして、比較例2の剥離ライナー付き粘着シートを作製した。この粘着シートの性能評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例3]
金属ロールへの互いに平行な複数のストライプ状凹部のエッチング処理の条件を調整して、ストライプ状凸部の高さが3μmとなるようにした他は、比較例1と同様にして、比較例3の剥離ライナー付き粘着シートを作製した。この粘着シートの性能評価結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
実施例1~2の剥離ライナー付き粘着シートでは、前記ストライプ状凸部の幅が10~150μmであり、前記ストライプ状凸部の高さが5~40μmであり、前記ストライプ状凸部同士の中心線間隔が200~1000μmであり、前記ストライプ状凸部同士の間に、凹凸部が設けられており、前記凹凸部の最大高さ粗さRzが3μmより大きく、かつ、前記ストライプ状凸部の高さよりも小さいので、施工時のエア抜け性に優れ、また、位置直し適性も良好であった。比較例1の剥離ライナー付き粘着シートでは、前記ストライプ状凸部の高さが5μm以上なので、エア抜け性は良好であったものの、前記凹凸部の最大高さRzが3μm以下なので、位置直し適性が不良であった。比較例2の剥離ライナー付き粘着シートでは、前記凹凸部の最大高さ粗さRzが3μm以下であり、ストライプ状凸部の幅が10μm未満であり、エア抜け性も不良で、位置直し適性も不良であった。比較例3の剥離ライナー付き粘着シートでは、前記凹凸部の最大高さ粗さRzが3μm以下であり、ストライプ状凸部の高さが5μm未満であり、エア抜け性も不良で、位置直し適性も不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の剥離ライナー付き粘着シートは、施工時のエア抜け性に優れ、かつ位置直し適性に優れるので、バス、電車、乗用車、航空機等の外壁、内壁、窓ガラスの広告ラベル、装飾ラベル、表示ラベル等として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1・・・剥離ライナー付き粘着シート、10・・・剥離ライナー、20・・・粘着剤層、30・・・基材シート、40・・・粘着シート、50・・・被着体、11・・・ストライプ状凸部、12・・・ストライプ状凸部の幅、13・・・ストライプ状凸部の高さ、14・・・ストライプ状凸部同士の中心線間隔、15・・・凹凸部、22・・・ストライプ状凹部、24・・・凹凸を有する転写面