(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】SIM、通信装置、切替方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/18 20090101AFI20240424BHJP
H04W 36/14 20090101ALI20240424BHJP
H04W 92/08 20090101ALI20240424BHJP
【FI】
H04W48/18
H04W36/14
H04W92/08
(21)【出願番号】P 2023049779
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2023-03-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永作 智史
(72)【発明者】
【氏名】デュラン,ロマン
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/170974(WO,A2)
【文献】特開2022-160280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0084487(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0023268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部を備える通信装置に搭載することが可能なSIMであって、
前記通信部がキャリア網へ接続するために使用される接続用情報を格納するデータ格納部と、
前記通信部による第1キャリア網との接続の状態を監視し、前記第1キャリア網との接続に問題が生じた場合に、接続先のキャリア網を前記第1キャリア網から第2キャリア網へ切り替え、一定の条件が満たされた場合に、前記第1キャリア網への切戻試行を行う切替制御部とを備え、
前記SIMは、前記接続用情報の一部として使用される鍵情報を管理する鍵管理部を、前記切替制御部とは別に備え、前記鍵管理部と前記切替制御部は、前記SIMにおけるアプレット部内に備えられる
SIM。
【請求項2】
前記一定の条件が満たされた場合とは、前記第2キャリア網への切り替えから一定時間が経過したことである
請求項1に記載のSIM。
【請求項3】
前記切替制御部は、TCP又はUDPのパケットによる到達性確認により、前記第1キャリア網との接続に問題が生じたか否かを判断する
請求項1に記載のSIM。
【請求項4】
第1キャリア網から第2キャリア網への切り替えが行われる際に、前記切替制御部は、前記データ格納部における第1キャリア網の接続用情報を第2キャリア網の接続用情報に書き換える
請求項1に記載のSIM。
【請求項5】
第1キャリア網から第2キャリア網への切り替えが行われる際に、前記切替制御部は、第2キャリア網へのアタッチの失敗を検知した後、ランダムに定めた時間が経過したときにアタッチのリトライを実行する
請求項1に記載のSIM。
【請求項6】
請求項1ないし
5のうちいずれか1項に記載のSIMを備える前記通信装置。
【請求項7】
通信部を備える通信装置に搭載することが可能なSIMが実行する切替方法であって、
前記SIMは、切替制御部を備え、
前記通信部が、前記SIMにおけるデータ格納部に格納された接続用情報を用いて第1キャリア網に接続しているときに、
前記切替制御部が、前記第1キャリア網との接続の状態を監視し、前記第1キャリア網との接続に問題が生じた場合に、接続先のキャリア網を前記第1キャリア網から第2キャリア網へ切り替え、一定の条件が満たされた場合に、前記第1キャリア網への切戻試行を行
い、
前記SIMは、前記接続用情報の一部として使用される鍵情報を管理する鍵管理部を、前記切替制御部とは別に備え、前記鍵管理部と前記切替制御部は、前記SIMにおけるアプレット部内に備えられる
切替方法。
【請求項8】
SIMに、請求項1ないし
5のうちいずれか1項に記載の
前記鍵管理部及び前記切替制御部の処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に搭載されるSIM(Subscriber Identity Module)に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯端末やIoT端末等の通信装置がキャリア(モバイル網オペレータと呼んでもよい)の回線を利用するために、通信装置にはSIMが搭載される。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のSIMを搭載することにより、1台の接続端末において複数のモバイルキャリアを自動で切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1等の従来技術では、複数のSIMを利用しない限り、自動的に他のキャリア網への切り替えを行うことができない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、1枚のSIMを用いることにより、自動的にキャリア網の切り替えを行うことを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術によれば、通信部を備える通信装置に搭載することが可能なSIMであって、
前記通信部がキャリア網へ接続するために使用される接続用情報を格納するデータ格納部と、
前記通信部による第1キャリア網との接続の状態を監視し、前記第1キャリア網との接続に問題が生じた場合に、接続先のキャリア網を前記第1キャリア網から第2キャリア網へ切り替え、一定の条件が満たされた場合に、前記第1キャリア網への切戻試行を行う切替制御部とを備え、
前記SIMは、前記接続用情報の一部として使用される鍵情報を管理する鍵管理部を、前記切替制御部とは別に備え、前記鍵管理部と前記切替制御部は、前記SIMにおけるアプレット部内に備えられる
SIMが提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、1枚のSIMを用いた状態でも、自動的にキャリア網の切り替えを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】SIMのハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】通信装置の動作を説明するための状態遷移図である。
【
図5】通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。以下で説明する「回数」、「時間」はいずれも一例であり、いずれも任意の値に設定可能である。
【0011】
(システム構成例)
図1に、本実施の形態における通信システムの全体構成例を示す図である。
図1に示すように、本通信システムは、通信装置200と、複数のキャリア網を有する。
図1には、複数のキャリア網の例として、キャリアA網、キャリアB網、キャリアC網が示されている。通信装置200は、複数のキャリア網のうちのいずれかと接続して通信を行う。
【0012】
本実施の形態では、各キャリア網は、モバイル通信サービスを提供するキャリア(オペレータ)のモバイル網(例:5G網、LTE網)であることを想定するが、これに限定されるわけではない。通信装置200がSIM100を用いて接続可能(切替可能)なキャリア網として、固定網や無線LAN網、自営のモバイル網等が含まれていてもよい。
【0013】
通信装置200は、SIM100、及び通信部210を有する。本実施の形態のSIM100は、一般に流通・販売がされるカード型のSIMであるものとするが、これに限定されない。SIM100は、通信装置200内に固定されるチップ型のSIMであってもよい。
【0014】
通信部210は、SIM100上で動作するプログラム(アプレットと呼ぶ)からの命令に従って、通信動作を行うことが可能である。
【0015】
通信装置200は、SIM100を搭載可能な装置であればどのような装置でもよい。例えば、通信装置200は、IoT機器、スマートフォン、タブレット、PC、サーバ、CPE、工作機械、自動車、ドローン、等であってもよい。なお、本実施の形態におけるSIMをeSIM、eUICCと呼んでもよい。
【0016】
(SIM100のハードウェア構成例)
図2に、SIM100の基本的なハードウェア構成例を示す。
図2に示すように、SIM100は、CPU1、メモリ2、インタフェース3を有する。メモリ2に格納されたプログラムがCPU1で実行されることにより、SIM100の処理が実行される。SIM100は、プログラムを実行することより、例えば、所定のタイミングでTCP又はUDPのパケット送信の実行命令をインタフェース3から通信部210に通知することで、通信部210にTCP又はUDPのパケット送信の動作を実行させる。なお、実行命令はTCP又はUDPのパケット送信に限定されない。
【0017】
また、通信部210の状態は、インタフェース3を通じてSIM100の内部に通知され、SIM100は、実行されているプログラムに従って、その状態に応じた処理を実行する。本実施の形態では、SIM100上で実行されるプログラムをアプレットと呼んでもよい。
【0018】
SIM100内のプログラム(アプレット)は、SIM100の外部からネットワークを介してSIM100に格納することもできるし、可搬記録媒体(メモリ、CD-ROM等)に記録されたプログラム(アプレット)をSIM100に格納してもよい。
【0019】
(SIM100の機能構成例)
図3に、SIM100の機能構成例を示す。
図3に示すように、SIM100は、データ格納部110とアプレット部120を備える。データ格納部110には、通信部210がキャリア網に接続するための必要な情報が格納される。ここでは、当該情報を「接続用情報」と呼ぶことにする。接続用情報はキャリア網ごとに異なるものである。データ格納部110は具体的には、SIM100上のファイルシステムを構成するファイルである。
【0020】
通信部210は、データ格納部110から、あるキャリア網に接続するための接続用情報を読み出すことで、当該キャリア網に接続することができる。
【0021】
接続用情報には、例えば、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)、PLMN(Public Land Mobile Network)リスト、Ki/OPcが含まれる。Ki/OPcは、該当のキャリア網に接続するための認証用情報である。Ki/OPcを鍵情報と呼んでもよい。
【0022】
アプレット部120は、切替制御部121と鍵管理部122を備える。切替制御部121と鍵管理部122はいずれも、SIM100上のプログラム(アプレット)により実現される機能部である。切替制御部121と鍵管理部122を1つのアプレットとして実現することも可能である。その場合、例えば、切替制御部121の中に鍵管理部122を含める。
【0023】
ただし、切替制御部121と鍵管理部122を2つのアプレットに分けることで特別な効果が得られる。その効果については後述する。
【0024】
切替制御部121は、通信部210が接続するキャリア網の切替制御を行う。また、切替制御部121は、通信部210が接続する可能性のあるキャリア網ごとの、鍵情報以外の接続用情報を管理(保持)する。鍵管理部122は、通信部210が接続する可能性のあるキャリア網ごとの鍵情報を管理(保持、更新等)する。
【0025】
切替制御部121は、キャリア網の切り替えを行うことを決定した場合に、データ格納部110に格納されている接続用情報を、切り替えようとする接続用情報に書き換える。鍵情報以外の接続用情報(IMSI等)については、切替制御部121が保持する接続用情報を用いて書き換えを行い、鍵情報については、切替制御部121は、鍵管理部122から鍵情報を取得し、その鍵情報を用いて書き換えを行う。あるいは、切替制御部121は、鍵管理部122に対して、データ格納部110の鍵情報を書き換えるように指示し、鍵管理部122はその指示に従って書き換えを実行する。
【0026】
切替制御部121と鍵管理部122とを分けることによる効果(2つのアプレットにすることによる効果)は下記(1)、(2)のとおりである。
【0027】
(1)切替制御部121と鍵管理部122とを分けることで、切替制御部121側を自由にバージョンアップ(例:OTA等によるプログラムの入れ替え)することが可能となる。
【0028】
より詳細な例として、鍵管理部122はADM2と呼ばれる、SIMの製造後に破棄される鍵を保持する。このことは、鍵管理部122をバージョンアップすることができないことを意味する。
【0029】
切替制御部121と鍵管理部122とが分割されていれば、鍵管理部122以外の動作を切替制御部121が担うことができ、切替制御部121はリッチな機能を搭載したり、その機能をアップデートしたりすることができる。
【0030】
(2)鍵管理部122を最小限度のコンパクトな実装にしておくことで、セキュリティリスクを最小化することが可能となる。
【0031】
(通信装置200の動作例)
次に、
図4の状態遷移図を参照して、SIM100の制御に基づく通信装置200の動作例を説明する。ここでは一例として、通信装置200の接続先候補がキャリアA網とキャリアB網の2つであるとする。
【0032】
本実施の形態では、基本的に、キャリアA網との接続に問題がなければ、通信装置200の通信部210はキャリアA網との接続を継続し、キャリアA網との接続に問題が生じた場合に、キャリアB網に接続する。キャリアB網に接続した後、キャリアA網との接続が回復した場合、通信部210はキャリアA網に接続する。以下、
図4に示す手順に沿って、動作例を詳細に説明する。
【0033】
図4に示す動作手順は、基本的には、SIM100における切替制御部121の処理手順に相当する。また、
図4における各状態は、切替制御部121がそのときに把握している状態を示す。
【0034】
より具体的には、切替制御部121は、現在の状態を常に監視(把握)して、その状態に応じた予め定めた条件に従って、データ格納部110に格納されている接続用情報を別の接続用情報に書き換えたり、通信部210に対して命令を送信したりする。これにより通信部210の動作が実現される。
【0035】
<キャリアA網接続状態>
通信装置200の起動時(SIM100起動が含まれる)、SIM100を挿入したとき(起動したとき)、等の初期状態において、通信部210は、キャリアA網に接続する。すなわち、初期状態において、SIM100のデータ格納部110には、キャリアA網用の接続用情報が格納され、通信部210は、当該接続用情報を用いてキャリアA網に接続する。なお、SIM100の起動の際には、全てのタイマー/カウンタがリセットされる。ただし、SIM100の起動の際に、起動前の接続用情報を用い、タイマー/カウンタをリセットしない(起動前の値を用いる)という動作も設定により可能である。
【0036】
通信部210がキャリアA網に接続されている状態のS101において、切替制御部121は、通信部210にハートビートを行わせることにより、キャリアA網との接続が正常であるか否かを監視する。
【0037】
ハートビートの具体的方法に関しては、キャリアA網との接続の正常性を確認できるのであればどのような方法を用いてもよいが、本実施の形態では、予め定めた宛先に対して所定時間間隔でTCP又はUDPのパケットを送信し、その応答を監視することで、当該宛先への到達性を確認することとしている。ここでは2つの宛先(宛先1、宛先2とする)を使用する。以降、到達性確認のためのパケット送信は、TCP又はUDPのパケット送信であるが、これに限定されない。TCP及びUDP以外のプロトコルでのパケット送信を行ってもよい。
【0038】
より具体的には、切替制御部121は、宛先1のみに対してパケット送信を実行し、当該宛先1で到達性が確認できなかった場合に、宛先2に対するパケット送信を実行することとしている。
【0039】
TCP又はUDPのパケット送信の動作に関して、例えば、切替制御部121は、通信部210からキャリアA網と接続状態にあることを示す通知を受けてから、パケット送信を通信部210に指示する。接続状態であることが確認できない場合(電波をつかめない場合等)、切替制御部121は、接続状態になるまで待つ。一定時間(例えば1分)待っても接続状態を検知できない場合、切替制御部121は、別のキャリア網への接続を通信部210に指示してもよい。
【0040】
TCP又はUDPのパケット送信指示を受けた通信部210は、パケット送信を実行し、パケット送信に成功したか失敗したか(到達性確認に成功したか失敗したか)を示す情報を切替制御部121に通知する。切替制御部121は、この情報により、宛先への到達性確認に成功したか失敗したかを把握できる。
【0041】
パケットの送信時間間隔(=切替制御部121が通信部210にパケット送信実行を指示する時間間隔)は、2つの宛先のそれぞれについて、例えば1分である。時間間隔は例えばタイマーで計測する。
【0042】
また、上記のようにタイマーを用いて所定の時間間隔を計測することに代えて、通信装置200側(ここでは通信部210とする)からSIM100へのポーリングを利用して定期的なパケット送信実行を実現することも可能である。なお、SIMが挿入された装置では一般的にこのポーリングが行われる。
【0043】
上記ポーリングの時間間隔は例えば15秒である。この場合、SIM100における切替制御部121は、通信部210からのポーリングを4回受けたこと(4回待ったこと)を検知する度に通信部210に対してパケット送信実行を指示する。これにより1分間隔での到達性確認を行うことができる。
【0044】
なお、上記の「1分」、「ポーリング待ち4回」等はいずれも例であり、パケット送信の実行間隔は「1分」、「ポーリング待ち4回」に限定されない。
【0045】
<キャリアB網切替判定状態>
切替制御部121は、例えば、2つの宛先の両方でパケット送信に失敗したこと(到達性確認に失敗したこと)を検知すると、キャリアB網切替判定状態に遷移する(S102)。
【0046】
キャリアB網切替判定状態において、切替制御部121は、キャリアA網接続状態でのパケット送信時間間隔よりも短い時間間隔で、通信部210に対してパケット送信を実行させる。パケット送信の宛先については、キャリアA網接続状態でのパケット送信の場合と同じ2つの宛先である。
【0047】
2つの宛先それぞれについてのパケット送信時間間隔は、例えば10秒である。また、ポーリングを使用する場合には、例えば、切替制御部121は、1回のポーリングを受ける度に、通信部210に対してパケット送信を指示する。
【0048】
また、キャリアB網切替判定状態においては、2つの宛先それぞれについてのパケット送信の回数に制限がある。その回数は例えば2回である。ここでの判定は下記の2つのケースA、Bがある。
【0049】
(A)切替制御部121は、宛先1への2回のパケット送信、及び、宛先2への2回のパケット送信のうちのいずれかのパケット送信が成功したことを検知した場合、S103において、切り替えを中止して、キャリアA網接続状態に戻る。キャリアA網接続状態では前述したとおりのハートビート動作が行われる。
【0050】
(B)切替制御部121は、宛先1へのパケット送信が2回連続で失敗であり、かつ、宛先2へのパケット送信も2回連続で失敗したことを検知すると、S104において、キャリアB網接続状態への遷移を実行する。
【0051】
キャリアB網接続状態への遷移において、切替制御部121は、まず、通信部210にキャリアA網との接続の切断を指示する。これにより、通信部210は、キャリアA網との接続を切断する。
【0052】
続いて、切替制御部121は、データ格納部110におけるキャリアA網の接続用情報を、キャリアB網の接続用情報に書き換え、キャリアB網への接続を通信部210に指示する。これにより、通信部210はキャリアB網に接続する。通信部210がキャリアB網に接続することで、現在の状態がキャリアB網接続状態になる。より詳細には、接続においてアタッチ動作が行われる。アタッチに失敗した場合のリトライ動作については後述する。
【0053】
<キャリアB網接続状態>
キャリアB網接続状態のS105において、切替制御部121は、キャリアA網接続状態でのS101と同じ方法でハートビート動作を行う。このときのパケット送信の2つの宛先については、キャリアA網接続状態での2つの宛先と同じでもよいし、異なっていてもよい。キャリアA網接続状態でのS102と同様に、ハートビート動作において、2つの宛先に対するパケット送信がともに失敗した場合には、キャリアA網への接続を行う。
【0054】
また、キャリアB網への接続後、キャリアB網との接続が正常の状態でも、一定時間経過したら、切替制御部121は、S106において、キャリアA網への切戻試行を行う。「一定時間」は例えば1時間である。ポーリングを使用する場合、例えば、キャリアB網への接続後、240回のポーリングを受けた後に切戻試行を行う。
【0055】
切戻試行においては、切替制御部121は、まず、通信部210にキャリアB網との接続の切断を指示する。これにより、通信部210は、キャリアB網との接続を切断する。
【0056】
続いて、切替制御部121は、データ格納部110におけるキャリアB網の接続用情報を、キャリアA網の接続用情報に書き換え、キャリアA網への接続を通信部210に指示する。これにより、通信部210はキャリアA網に接続する。これにより、現在の状態はキャリアA網切戻判定状態になる。
【0057】
<キャリアA網切戻判定状態>
キャリアA網切戻判定状態において、切替制御部121は、宛先1へのパケット送信を通信部210に実行させ、当該パケット送信に成功した場合にはキャリアA網接続状態に遷移する(S107)。宛先1へのパケット送信に失敗した場合には、切替制御部121は、宛先2へのパケット送信を通信部210に実行させ、当該パケット送信に成功した場合にはキャリアA網接続状態に遷移する(S107)。
【0058】
切替制御部121は、宛先1へのパケット送信と宛先2へのパケット送信の両方に失敗したことを検知すると、切り戻しを中止する。具体的には、切替制御部121は、データ格納部110におけるキャリアA網の接続用情報を、キャリアB網の接続用情報に書き換え、キャリアB網への接続を通信部210に指示する。これにより、通信部210はキャリアB網に接続する。通信部210がキャリアB網に接続することで、現在の状態がキャリアB網接続状態になる。
【0059】
その後、一定時間(例えば1時間)後に、切替制御部121は、再びキャリアA網への切戻試行を行う。なお、キャリアA網への最初の切戻試行に失敗した後に再度実行する切戻試行の開始のための上記一定時間は、最初の「一定時間」(例えば1時間)よりも短くてもよい。
【0060】
また、キャリアB網からキャリアA網への切り戻しについては、切替制御部121が、外部のモニタリングサーバから切戻指示を受けたことをトリガとして行ってもよい。
【0061】
<一斉アタッチ回避について>
上述したとおり、パケット送信に失敗したとき等において、キャリアA網からキャリアB網への切り替え、あるいは、キャリアB網からキャリアA網への切り替えが行われる。
【0062】
本実施の形態では、SIM100を備える複数の通信装置200(例えば多数のIoT機器)が存在することを想定している。複数の通信装置200が一斉にあるキャリア網に対してアタッチ(接続要求信号送信)を行うと、当該キャリア網が輻輳して、接続し難くなる可能性がある。また、各通信装置200は、アタッチでエラーを検出した際には、アタッチの再試行(リトライ)を行うが、当該キャリア網に対して、一斉に同じタイミングでリトライを行うと、接続できない状態が継続する可能性がある。
【0063】
そこで、本実施の形態では、切替制御部121は、アタッチでエラーを検出した際には、リトライのタイミングにランダム性を持たせることとしている。この場合の動作例を以下に説明する。ここではキャリアA網からキャリアB網への切り替えの場合を説明するが、キャリアB網からキャリアA網への切り替えの場合も同様である。
【0064】
切替制御部121は、キャリアA網からキャリアB網への切り替えを行うことを決定すると、キャリアA網との接続を切断し、データ格納部110における接続用情報をキャリアB網の接続用情報に書き換える。続いて、切替制御部121は、通信部210に対してキャリアB網へのアタッチを指示する。ここではアタッチに失敗するものとし、切替制御部121は、通信部210からアタッチに失敗したことを示すエラーの通知を受ける。
【0065】
切替制御部121は、エラーの通知を受けてから、予め定めた時間(ここでは60秒とする)に、n秒を加えた時間だけ待ち、60+n秒が経過したことを検知したら、再びキャリアB網へのアタッチを行う。そして、ここでもアタッチに失敗したら、60+n秒待って、再びキャリアB網へのアタッチを行う。
【0066】
上記のnは、例えば、0秒~60秒間でランダムな値である。つまり、リトライの度にランダムに選ばれたnの値が使用される。
【0067】
また、前述したポーリングを使用する場合には、アタッチに失敗した後、m回のポーリングを待って、リトライを行う。mは、ランダムな値である。例えば、mは4~8の間の値である。
【0068】
上記のキャリアA網からキャリアB網への切り替えの例において、キャリアB網へのアタッチのリトライがR回失敗したら、キャリアA網への接続を行うことしてもよい。Rは任意に設定可能である。例えば、Rは1でもよいし、2以上の値でもよい。キャリアB網からキャリアA網への切り替えの場合も同様である。
【0069】
(通信装置のハードウェア構成例)
本実施の形態で説明した通信装置200は、例えば、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現できる。
【0070】
すなわち、通信装置200は、コンピュータに内蔵されるCPUやメモリ等のハードウェア資源を用いて、通信装置200で実施される処理に対応するプログラムを実行することによって実現することが可能である。上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0071】
図5は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図5のコンピュータは、それぞれバスBSで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。また、
図5は、SIM100が挿入されている場合の例を示す。
【0072】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0073】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、通信装置200に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワーク等に接続するためのインタフェース(通信機能)として用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0074】
(実施の形態の効果)
以上説明したとおり、本実施の形態に係る技術により、SIM100を用いることで、通信装置200が自動的にキャリア網の切り替えを行うことが可能となる。
【0075】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0076】
<付記>
(付記項1)
通信部を備える通信装置に搭載することが可能なSIMであって、
前記通信部がキャリア網へ接続するために使用される接続用情報を格納するデータ格納部と、
前記通信部によるキャリア網への接続の状態を監視し、前記状態に基づいて、キャリア網の切り替えを実行する切替制御部と
を備えるSIM。
(付記項2)
第1キャリア網から第2キャリア網への切り替えが行われる際に、前記切替制御部は、前記データ格納部における第1キャリア網の接続用情報を第2キャリア網の接続用情報に書き換える
付記項1に記載のSIM。
(付記項3)
前記SIMは、前記接続用情報の一部として使用される鍵情報を管理する鍵管理部を、前記切替制御部とは別に備える
付記項1又は2に記載のSIM。
(付記項4)
第1キャリア網から第2キャリア網への切り替えが行われる際に、前記切替制御部は、第2キャリア網へのアタッチの失敗を検知した後、ランダムに定めた時間が経過したときにアタッチのリトライを実行する
付記項1ないし3のうちいずれか1項に記載のSIM。
(付記項5)
付記項1ないし4のうちいずれか1項に記載のSIMを備える前記通信装置。
(付記項6)
通信部を備える通信装置に搭載することが可能なSIMが実行する切替方法であって、
前記通信部が、前記SIMにおけるデータ格納部に格納された接続用情報を用いてキャリア網に接続しているときに、前記キャリア網への接続の状態を監視し、前記状態に基づいて、キャリア網の切り替えを実行する
切替方法。
(付記項7)
SIMに、付記項1ないし4のうちいずれか1項に記載の切替制御部の処理を実行させるためのプログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【0077】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 CPU
2 メモリ
3 インタフェース
100 SIM
110 データ格納部
120 アプレット部
121 切替制御部
122 鍵管理部
200 通信装置
210 通信部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置
1008 出力装置
【要約】
【課題】SIMを用いることにより、自動的にキャリア網の切り替えを行う。
【解決手段】通信部を備える通信装置に搭載することが可能なSIMにおいて、前記通信部がキャリア網へ接続するために使用される接続用情報を格納するデータ格納部と、前記通信部によるキャリア網への接続の状態を監視し、前記状態に基づいて、キャリア網の切り替えを実行する切替制御部とを備える。
【選択図】
図1