(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】丸編機及び丸編機で両面ロングパイル編み物を編む方法
(51)【国際特許分類】
D04B 9/12 20060101AFI20240424BHJP
D04B 3/02 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
D04B9/12
D04B3/02 Z
(21)【出願番号】P 2023155925
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2023-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393010101
【氏名又は名称】佰龍機械廠股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】游 仁偉
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169414(JP,A)
【文献】特開2023-109287(JP,A)
【文献】特開昭52-099351(JP,A)
【文献】特開2015-214768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 9/12
D04B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機であって、
複数の引掛け針と、間隔をあけてこれらの引掛け針の間に設けられる複数のカッターとを備える水平ニードルベッドと、
複数のシンカーを備えるシンカーベッドと、
複数のカッター付き編針と、間隔をあけてこれらのカッター付き編針の間に設けられる複数のかぎ針とを備える垂直ニードルベッドとを含み、
前記丸編機は、両面ロングパイル編み物を編むためのものであり、これらのカッター付き編針は、それぞれ、これらの引掛け針及びこれらのかぎ針と基礎組織、及び前記基礎組織に接続される第1パイルループと第2パイルループを形成させ、前記第1パイルループ及び前記第2パイルループがそれぞれこれらのカッター付き編針及びこれらのカッターによって切開されて、それぞれ前記基礎組織の2つの対向面に位置する複数のロングパイル組織が形成され、これらのカッター付き編針が突き出して前記第1パイルループを切開しようとする前に、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードルには完全にループが除去されており、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものが既に少なくとも1つの平編カムを通過していることを特徴とする丸編機。
【請求項2】
これらのカッター付き編針のそれぞれは、ラッチニードルアセンブリ及びプレートによって組み合わされることを特徴とする請求項1に記載の丸編機。
【請求項3】
これらのカッター付き編針のそれぞれは、前記ラッチニードルと、
垂直方向の位置が前記ラッチニードルより低い切刃とを含み、前記ラッチニードルは、これらのカッター付き編針のそれぞれのヘッドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の丸編機。
【請求項4】
これらの引掛け針、これらのカッター、これらのシンカー、これらのカッター付き編針、これらのかぎ針は、それぞれ、複数のカムによってガイドされて動作することを特徴とする請求項3に記載の丸編機。
【請求項5】
これらの引掛け針、これらのカッター、これらのシンカー、これらのカッター付き編針及びこれらのかぎ針は、それぞれ、複数のカムによってガイドされて動作することを特徴とする請求項1又は2に記載の丸編機。
【請求項6】
丸編機で両面ロングパイル編み物を編む方法であって、
2つの糸を給糸し、複数のカッター付き編針のうちの少なくとも1つ及び複数のかぎ針のうちの少なくとも1つで、前記2つの糸のうちの1つによって形成される基礎組織、及び、前記基礎組織に接続される第1パイルループを編成する、第1ループ形成工程と、
2つの糸を給糸し、これらのカッター付き編針のうちの少なくとも1つ及び複数の引掛け針のうちの少なくとも1つで、前記2つの糸のうちの1つによって形成される前記基礎組織、及び、前記基礎組織に接続される第2パイルループを編成する工程であって、前記第1パイルループと前記第2パイルループは、前記基礎組織の両側に位置する、第2ループ形成工程と、
これらのカッター付き編針のうちの少なくとも1つを制御して、前記第1パイルループに対して糸切断を行わせてロングパイル組織を形成させる、第1糸切断工程と、
複数のカッターのうちの1つを制御して、前記第2パイルループに対して糸切断を行わせて別のロングパイル組織を形成させる、第2糸切断工程とを含み、
前記第1ループ形成工程は前記第1糸切断工程とは続かず、これらのカッター付き編針が突き出して前記第1パイルループを切開する時に、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードルには完全にループが除去されており、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものが既に少なくとも1つの平編カムを通過していることを特徴とする丸編機で両面ロングパイル編み物を編む方法。
【請求項7】
前記方法で、前記第1ループ形成工程、前記第2ループ形成工程、前記第1糸切断工程及び前記第2糸切断工程をこの順に行うことを特徴とする請求項6に記載の丸編機で両面ロングパイル編み物を編む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸編機及びその編み方に関し、特に、両面ロングパイル編み物を編むための丸編機及びその編む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1ではその
図16に両面パイル編み物が開示されている。しかしながら、当該技術案は、実際には、片面パイル編み物を編むための丸編機だけを開示しており、丸編機の設計に関しては、別の面の糸切断構造を増設するだけではなく、考慮すべき事項が依然として多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国登録特許第KR101457067B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、従来の丸編機は編む時に両面ロングパイル編み物を完成させることができないという課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の目的を達成するためになされたものであって、水平ニードルベッドと、シンカーベッドと、垂直ニードルベッドとを含む丸編機である。当該水平ニードルベッドは、複数の引掛け針と、間隔をあけてこれらの引掛け針の間に設けられる複数のカッターとを備え、当該シンカーベッドは、複数のシンカーを備え、当該垂直ニードルベッドは、複数のカッター付き編針と、間隔をあけてこれらのカッター付き編針の間に設けられる複数のかぎ針とを備える。当該丸編機は、両面ロングパイル編み物を編むためのものであり、これらのカッター付き編針は、それぞれ、これらの引掛け針及びこれらのかぎ針と基礎組織、及び当該基礎組織に接続される第1パイルループと第2パイルループを形成させ、当該第1パイルループ及び当該第2パイルループがそれぞれこれらのカッター付き編針及びこれらのカッターによって切開されて、それぞれ当該基礎組織2つの対向面に位置する複数のロングパイルが形成され、これらのカッター付き編針が突き出して当該第1パイルループを切開しようとする前に、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードルには完全にループが除去されており、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものが既に少なくとも1つの平編カムを通過している。
【0006】
一実施例では、これらのカッター付き編針のそれぞれは、ラッチニードルアセンブリ及びプレートによって組み合わされる。
【0007】
一実施例では、これらのカッター付き編針のそれぞれは、当該ラッチニードルと、水平高さが当該ラッチニードルより低い切刃とを含み、当該ラッチニードルは、これらのカッター付き編針のそれぞれのヘッドである。
【0008】
一実施例では、これらの引掛け針、これらのカッター、これらのシンカー、これらのカッター付き編針及びこれらのかぎ針は、それぞれ、複数のカムによってガイドされて動作する。
【0009】
また、本発明は、丸編機で両面ロングパイル編み物を編む方法を提供し、当該方法は、
2つの糸を給糸し、複数のカッター付き編針のうちの少なくとも1つ及び複数のかぎ針のうちの少なくとも1つで、当該2つの糸のうちの1つによって形成される基礎組織、及び、当該基礎組織に接続される第1パイルループを編成する、第1ループ形成工程と、
2つの糸を給糸し、これらのカッター付き編針のうちの少なくとも1つ及び複数の引掛け針のうちの少なくとも1つで、当該2つの糸のうちの1つによって形成される当該基礎組織、及び、当該基礎組織に接続される第2パイルループを編成する工程であって、当該第1パイルループと当該第2パイルループは、当該基礎組織の両側に位置する、第2ループ形成工程と、
これらのカッター付き編針のうちの少なくとも1つを制御して、当該第1パイルループに対して糸切断を行わせてロングパイル組織を形成させる、第1糸切断工程と、
複数のカッターのうちの1つを制御して、当該第2パイルループに対して糸切断を行わせて別のロングパイル組織を形成させる、第2糸切断工程とを含み、
当該第1ループ形成工程は当該第1糸切断工程とは続かず、これらのカッター付き編針が突き出して当該第1パイルループを切開する時に、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードルには完全にループが除去されており、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものが既に少なくとも1つの平編カムを通過している。
【0010】
一実施例では、当該方法で、当該第1ループ形成工程、当該第2ループ形成工程、当該第1糸切断工程及び当該第2糸切断工程をこの順に行う。
【発明の効果】
【0011】
上記のように実施された本発明は、従来と比べて次の特徴を備える。本発明は、これらのカッター付き編針が突き出して第1パイルループを切開しようとする前に、これらのカッター付き編針のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードルには完全にループが除去されており、既に少なくとも1つの平編カムを通過しており、これにより、丸編機で編む時、2つの工程が続いて行われることから生じる生地の浮き、ループ形成が不安定になるなどの問題を避ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の丸編機の部分構造の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の丸編機の構造の断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明のカッター付き編針の分解模式図である。
【
図4】
図4は、両面ロングパイル編み物の組織模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の丸編機の構造の断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明のパイルカットされていない編み物の組織模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細な説明及び技術内容を、図面を参照して説明する。
図1及び
図2を参照すると、本発明は、水平ニードルベッド21と、シンカーベッド22と、垂直ニードルベッド23とを含む丸編機20を提供する。水平ニードルベッド21は、丸編機20のダイヤル24に位置し、シンカーベッド22は、丸編機20のシンカーリング25に位置し、垂直ニードルベッド23は、丸編機20のシリンダ26に位置する。水平ニードルベッド21は、複数の引掛け針211と、間隔をあけてこれらの引掛け針211の間に設けられる複数のカッター212とを備え、シンカーベッド22は、複数のシンカー(Sinker)221を備え、垂直ニードルベッド23は、複数のカッター付き編針231と、間隔をあけてこれらのカッター付き編針231の間に設けられる複数のかぎ針232とを備える。これらの引掛け針211及びこれらのかぎ針232は、いずれもラッチニードル構造(Latch Needle)を備えず、これらのカッター付き編針231のそれぞれは、ラッチニードル233と、切刃234とを含み、切刃234の水平高さはラッチニードル233より低く、ラッチニードル233は、これらのカッター付き編針231のそれぞれのヘッドである。また
図3を参照すると、一実施例では、これらのカッター付き編針231のそれぞれは、ラッチニードルアセンブリ235及びプレート236によって組み合わされる。さらに、ラッチニードルアセンブリ235及びプレート236は、それぞれ、組付け凹溝237と、組付けバンプ238とを備え、これによりラッチニードルアセンブリ235とプレート236は同じ軸線上に位置する。
【0014】
また、これらの引掛け針211、これらのカッター212、これらのシンカー221、これらのカッター付き編針231及びこれらのかぎ針232は、それぞれ、複数のカム27によってガイドされて突き出し又は引き込みの動作を行う。これらのカム27は、
図5に示されるとおり、少なくとも1つの平編カム271と、少なくとも1つの編みカム272とを含む。これらのカッター付き編針231を例とすると、これらのカッター付き編針231のそれぞれは少なくとも1つの平編カム271を通過する時に、少なくとも1つの平編カム271上のレールの設計で平編状態(糸オーバー状態とも呼ばれる)にある。これらのカッター付き編針231のそれぞれは少なくとも1つの編みカム272を通過する時に、少なくとも1つの編みカム272上のレールの設計で突き出し及び引き込みの動作が生じる。
【0015】
また
図1を参照すると、丸編機20は複数の給糸口28をさらに含み、これらの給糸口28は、少なくとも1つの糸を給糸して編むためのものである。
【0016】
さらに、丸編機20は、
図4のとおり、両面ロングパイル編み物30を編むためのものであり、両面ロングパイル編み物30は、基礎組織31と、それぞれ基礎組織31に接続され且つ基礎組織31の2つの対向面に位置する2つのロングパイル組織32とを含み、2つのロングパイル組織32のそれぞれは複数のカットパイル321を含み、これらのカットパイル321の長さは、3.5mm~15mmである。
【0017】
また、
図2~
図6を参照すると、本発明は、丸編機20で両面ロングパイル編み物30を編む方法を提供し、当該方法は、
2つの糸を給糸し、これらのカッター付き編針231のうちの少なくとも1つ及びこれらのかぎ針232のうちの少なくとも1つで、当該2つの糸のうちの1つによって形成される基礎組織31、及び、基礎組織31に接続される第1パイルループ322を編成する、第1ループ形成工程と、
2つの糸を給糸し、これらのカッター付き編針231のうちの少なくとも1つ及びこれらのかぎ針232のうちの少なくとも1つで、当該2つの糸のうちの1つによって形成される基礎組織31、及び、基礎組織31に接続される第2パイルループ323を編成する工程であって、第2パイルループ323と第1パイルループ322は、
図6のとおり、基礎組織31の両側に位置する、第2ループ形成工程と、
これらのカッター付き編針231のうちの少なくとも1つを制御して、第1パイルループ322に対して糸切断を行わせてこれらのカットパイル321を形成させる、第1糸切断工程と、
これらのカッター212のうちの1つを制御して、第2パイルループ323に対して糸切断を行わせてこれらのカットパイル321を形成させる、第2糸切断工程とを含む。
【0018】
さらに、本発明の丸編機20で当該方法により両面ロングパイル編み物30を編成する過程では、これらのカッター付き編針231が突き出して第1パイルループ322を切開しようとする前に(即ち、第1糸切断工程に入る前に)、これらのカッター付き編針231のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードル233には完全にループが除去されており、且つこれらのカッター付き編針231のうち糸を切断しようとするものが既に少なくとも1つの平編カム271を通過している。つまり、第1ループ形成工程は第1糸切断工程とは直接続かず、2つの工程の間に準備時間があり、前記準備時間は実施によって調整してもよいが、当該準備時間は、
図5に示されるとおり、少なくとも、これらのカッター付き編針231のうち糸を切断しようとするものが1つの平編カム271を完全に通過する時間である。これにより、丸編機20で編む時、2つの工程が続いて行われることから生じる生地の浮き、ループ形成不安定などの問題を避ける。
【0019】
さらに、一実施例では、本発明の当該方法で、当該第1ループ形成工程、当該第2ループ形成工程、当該第1糸切断工程及び当該第2糸切断工程をこの順に行う。
【符号の説明】
【0020】
20 丸編機
21 水平ニードルベッド
211 引掛け針
212 カッター
22 シンカーベッド
221 シンカー
23 垂直ニードルベッド
231 カッター付き編針
232 かぎ針
233 ラッチニードル
234 切刃
235 ラッチニードルアセンブリ
236 プレート
237 組付け凹溝
238 組付けバンプ
24 ダイヤル
25 シンカーリング
26 シリンダ
27 カム
271 平編カム
272 編みカム
28 給糸口
30 両面ロングパイル編み物
31 基礎組織
32 ロングパイル組織
321 カットパイル
322 第1パイルループ
323 第2パイルループ
【要約】 (修正有)
【課題】両面ロングパイル編み物を完成させることができる丸編機を提供する。
【解決手段】水平ニードルベッド(21)は、複数の引掛け針(211)と、間隔をあけてこれらの引掛け針(211)の間に設けられる複数のカッター(212)とを備え、シンカーベッド(22)は、複数のシンカー(221)を備え、垂直ニードルベッド(23)は、複数のカッター付き編針(231)と、間隔をあけてこれらのカッター付き編針(231)の間に設けられる複数のかぎ針(232)とを備える。これらのカッター付き編針(231)が突き出して第1パイルループを切開しようとする前に、これらのカッター付き編針(231)のうち糸を切断しようとするものに含まれるラッチニードル(233)には完全にループが除去されており、これらのカッター付き編針(231)のうち糸を切断しようとするものが既に少なくとも1つの平編カムを通過している。
【選択図】
図2