(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】保冷庫
(51)【国際特許分類】
F25D 21/04 20060101AFI20240424BHJP
F25D 21/08 20060101ALI20240424BHJP
F25D 21/14 20060101ALI20240424BHJP
【FI】
F25D21/04 P
F25D21/08 A
F25D21/14 L
(21)【出願番号】P 2023506851
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004485
(87)【国際公開番号】W WO2022196170
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021043838
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白田 満将
(72)【発明者】
【氏名】柳原 直樹
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/039446(WO,A1)
【文献】特開2017-020745(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118217(WO,A1)
【文献】特開平06-159904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 ~ 31/00
A47F 3/04
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷室、前記保冷室を開閉する引戸および機械室を有する箱体と、
前記機械室に配置され、前記保冷室内を冷却する冷凍回路を構成する圧縮機と、
前記圧縮機の周囲を通過して、前記機械室に開口している送風口を介して、前記引戸に吹き付けられる気流を発生させるファンと、
前記保冷室に配置されているヒータと、
前記保冷室内の温度を検出するセンサと、
前記保冷室の設定温度が所定温度以下であるという条件、前記圧縮機が運転状態であるという条件、および、前記センサの検出温度が前記設定温度に所定値を加えた温度以下であるという条件が満たされる場合、前記ヒータを作動させる制御装置と、を備えている、
保冷庫。
【請求項2】
前記引戸は、前記保冷室を開閉する第1の引戸、および、前記保冷室と前記第1の引戸との間で前記保冷室を開閉する第2の引戸を有し、
前記圧縮機は、前記保冷室を閉じている前記第1の引戸より前記保冷室を閉じている前記第2の引戸に近い位置に配置されている、
請求項
1に記載の保冷庫。
【請求項3】
除霜運転により生じる水を受けるドレインパンをさらに備え、
前記ヒータは、前記ドレインパンを加熱するドレインパンヒータである、
請求項1
又は2に記載の保冷庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保冷庫に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、凝縮器用ファンからの空気を利用して効果的にガラス扉での結露を解消できる冷却貯蔵庫が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保冷庫は、薬剤等を保冷室にて低温で保管する。保冷室内と保冷室外との温度差によって、保冷室を開閉する引戸に結露が発生する。保冷室内の温度が低くなるにしたがって、引戸に発生する結露が多くなる可能性がある。また、近年、保冷室の温度の低温化が進んでいる。よって、引戸でより多くの結露が発生する可能性がある。
【0005】
本開示は、保冷庫において、結露の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示における保冷庫は、保冷室、保冷室を開閉する引戸および機械室を有する箱体と、機械室に配置され、保冷室内を冷却する冷凍回路を構成する圧縮機と、圧縮機の周囲を通過して、機械室に開口している送風口を介して、引戸に吹き付けられる気流を発生させるファンと、保冷室に配置されているヒータと、保冷室の設定温度が所定温度以下であるという条件、および、圧縮機が運転状態であるという条件が満たされる場合、ヒータを作動させる制御装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の保冷庫によれば、結露の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】制御装置が実行するプログラムのフローチャート
【
図7】制御装置が実行するプログラムのフローチャート
【
図8】制御装置が実行するプログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の保冷庫の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、
図1の矢印で示されるように、引戸30が配置されている側を保冷庫1の前方とし、その反対側を保冷庫1の後方とする。また、保冷庫1を前方から見たときの左側および右側を保冷庫1の左方および右方とする。また、保冷庫1が設置される面から離れる側を保冷庫1の上方とし、その反対側を保冷庫1の下方とする。
【0010】
保冷庫1は、薬剤を低温にて保管する薬品保冷庫である。なお、保冷庫1は、血液保冷庫または恒温器であってもよい。保冷庫1は、
図1から
図4に示されるように、箱体10、枠体20および引戸30を備えている。
【0011】
箱体10は、前面に、引戸30の移動により開口する開口H1を有する。箱体10の外側面と内側面との間には、断熱材が充填されている。箱体10の内側面に囲まれた空間は、保冷室R1であり、薬剤が収容される空間である(
図3および
図4)。
【0012】
枠体20は、開口H1を縁取るように箱体10に設けられている。枠体20には、外側レール21および内側レール22が、枠体20の底面に左右方向に延びるように設けられている。内側レール22は、外側レール21よりも後方(保冷室R1側)に配置されている(
図3)。また、枠体20には、引戸30が取り付けられている。
【0013】
引戸30は、第1の引戸31および第2の引戸32を有している。第1の引戸31は、外側レール21に沿って移動可能に取り付けられている。第1の引戸31は、閉じられている状態にて枠体20の右側に位置する。第2の引戸32は、内側レール22に沿って移動可能に取り付けられている。第2の引戸32は、閉じている状態にて枠体20の左側に位置する。第1の引戸31および第2の引戸32それぞれが移動することにより、開口H1ひいては保冷室R1が開閉する。
【0014】
第1の引戸31が外側レール21に配置され、第2の引戸32が内側レール22に配置されているため、第1の引戸31より第2の引戸32の方が保冷室R1側に位置する。したがって、第2の引戸32の発生する結露は、第1の引戸31に発生する結露に比べて多い。
【0015】
また、箱体10は、保冷室R1の下方に機械室R2を有している(
図2および
図3)。
【0016】
機械室R2は、送風口H2を有している。送風口H2は、枠体20より前方にて開口し、後述する気流が引戸30に吹き付けられるように形成されている。
【0017】
また、機械室R2には、保冷室R1内を冷却する冷凍回路を構成する圧縮機41および凝縮器42、並びに、ファン43が配置されている。圧縮機41は、機械室R2において左側に配置されている。つまり、圧縮機41は、保冷室R1を閉じている第1の引戸31より保冷室R1を閉じている第2の引戸32に近い位置に配置されている。凝縮器42は、機械室R2においておよそ中央に配置されている。
【0018】
ファン43は、気流を発生させるものである。気流は、
図1および
図3に太矢印にて示されている。ファン43は、回転することによって、外気を機械室R2内に取り込んで、気流を発生させる。気流は、圧縮機41および凝縮器42の周囲を通過する。圧縮機41および凝縮器42が運転状態である場合、圧縮機41および凝縮器42の周囲を通過する気流は、圧縮機41の温度および凝縮器42の温度によって温められる。
【0019】
さらに、気流は、送風口H2から吹き出して、引戸30に吹き付けられる。温められた気流が引戸30を温めることによって、引戸30において結露の発生が抑制される。
【0020】
図4に示されるように、保冷室R1は側壁51によって、保管領域R1aと冷却領域R1bとに区画されている。保管領域R1aは、薬品等が保管される領域である。冷却領域R1bは、保冷室R1内の空気が冷却される領域である。
【0021】
保冷室R1の後側の上端部には、第2のファン52、冷凍回路を構成する蒸発器53、センサ54、デフロストヒータ55、第2のセンサ56、ドレインパン57およびドレインパンヒータ58が配置されている。蒸発器53の周囲が冷却領域R1bとなっている。換言すれば、冷却領域R1bに、第2のファン52、冷凍回路を構成する蒸発器53、センサ54、デフロストヒータ55、第2のセンサ56、ドレインパン57およびドレインパンヒータ58が配置されている。
【0022】
第2のファン52は、回転することによって、保管領域R1aの空気を冷却領域R1bに取り込むものである。第2のファン52は、冷却領域R1bの上端部に配置されている。よって、第2のファン52は、保管領域R1aの上側にある空気を取り込む。冷却領域R1bに取り込まれた空気は、冷却領域R1bの底部に形成されている開口から保管領域R1aに吹き出る。つまり、冷却領域R1bに取り込まれた空気は、
図4に示される矢印のように、冷却領域R1bの上端部から下方に向けて流れる。
【0023】
蒸発器53は、冷却領域R1bに取り込まれた空気を冷却するものである。蒸発器53は、第2のファン52より下方に配置されている。蒸発器53は、冷凍回路を循環する冷媒が流れる配管53aおよび配管53aに接触するように取り付けられているフィン53bを有している。
【0024】
センサ54は、保冷室R1内の温度を検出するものである。センサ54は、冷却領域R1b内において、蒸発器53より上方に配置されている。つまり、センサ54は、冷却領域R1bに取り込まれた空気の温度を、蒸発器53によって冷却される前に検出する。すなわち、センサ54の検出温度は、保管領域R1aの空気の温度と等しい。
【0025】
デフロストヒータ55は、作動することによって、配管53aおよびフィン53bに付着している霜を溶かすヒータである。デフロストヒータ55は、例えばシーズヒータおよびコードヒータなどである。デフロストヒータ55は、蒸発器53の配管53aから離れて、フィン53bに接触するように取り付けられている。デフロストヒータ55が作動される運転は、特に除霜運転という。除霜運転は、圧縮機41が停止している間に行われる。
【0026】
第2のセンサ56は、配管53aから離れて、フィン53bに接触するように配置され、フィン53bの温度を検出するセンサである。
【0027】
ドレインパン57は、除霜運転により生じる水を受けるものである。ドレインパン57は、蒸発器53の下方に配置されている。除霜運転により、配管53aおよびフィン53bに付着している霜が溶かされることによって水が生じる。この水は、ドレインパン57の上に落下して、不図示の配管を通って機械室R2に導出される。
【0028】
ドレインパンヒータ58は、ドレインパン57を加熱するヒータである。ドレインパンヒータ58は、例えばシーズヒータおよびコードヒータなどである。ドレインパンヒータ58の発熱量は、デフロストヒータ55の発熱量より小さい。ドレインパンヒータ58は、ドレインパン57の裏面に接触するように取り付けられている。ドレインパン57に受け止められた水は、蒸発器53によって冷却されて凍結する可能性がある。ドレインパンヒータ58が作動することによって、ドレインパン57に受け止められた水が凍結して氷が発生しても、この氷を溶かすことができる。
【0029】
デフロストヒータ55およびドレインパンヒータ58は、上記のように冷却領域R1bに配置されている。つまり、デフロストヒータ55およびドレインパンヒータ58は、保冷室R1に配置されている。
【0030】
また、保冷庫1は、
図5に示されるように、入力部61および制御装置62を備えている。入力部61は、保冷室R1の設定温度を入力するものである。入力部61は、例えばタッチパネルである。
【0031】
制御装置62は、保冷庫1を統括制御するコンピュータである。制御装置62は、コンピュータプログラム(以下単にプログラム)を記憶する記憶装置およびコンピュータプログラムを実行するプロセッサを備えている。
【0032】
制御装置62は、入力部61、センサ54、第2のセンサ56、圧縮機41、デフロストヒータ55、ドレインパンヒータ58、ファン43および第2のファン52が電気的に接続されている。制御装置62は、入力部61に入力された設定温度、センサ54の検出温度および第2のセンサ56の検出温度を取得する。制御装置62は、設定温度、センサ54の検出温度および第2のセンサ56の検出温度に基づいて、圧縮機41、デフロストヒータ55、ドレインパンヒータ58、ファン43および第2のファン52を制御する。
【0033】
制御装置62がプログラムを実行することにより、圧縮機41が制御されることによって、保冷室R1内の温度は、設定温度に調節される。制御装置62は、具体的には、設定温度およびセンサ54の検出温度に基づいて、圧縮機41の運転および停止を繰り返す(
図9)。プログラムが実行されている場合、ファン43および第2のファン52は、連続的に回転するよう制御される。
【0034】
次に、制御装置62がプログラムを実行することによって実現される、ドレインパンヒータ58の動作について、
図6から
図8のフローチャートを用いて説明する。プログラムの開始時点において、ドレインパンヒータ58は、作動していない。また、プログラムが実行されている場合、圧縮機41の運転および停止が繰り返されている。
【0035】
制御装置62は、
図6に示されるS10にて、入力部61から取得した設定温度が所定温度以下であるか否かを判定する。所定温度とは、保冷室R1の温度がその所定温度になると、引戸30に発生する結露が比較的多くなってしまう温度であり、例えば3℃である。所定温度は、保冷庫1の製造時に制御装置62が実行するプログラム内で予め設定されている。設定温度が所定温度以下である場合(S10:YES)、制御装置62は、S11にて、後述する同期制御を実行する。
【0036】
一方、設定温度が所定温度より高い場合(S10:NO)、制御装置62は、S12にて、後述する非同期制御を実行する。
【0037】
次に、
図7に示される同期制御が実行される場合について説明する。同期制御は、圧縮機41が運転している場合にドレインパンヒータ58が作動する制御である。
【0038】
制御装置62は、S20にて、圧縮機41が運転状態であるか否かを判定する。圧縮機41が停止している場合(S20:NO)、制御装置62は、S20を繰り返し実行する。
【0039】
一方、圧縮機41が運転状態である場合(S20:YES)、制御装置62は、S21にて、センサ54の検出温度が設定温度に所定値を加えた温度(以下、加算温度と記載する。)以下であるか否かを判定する。所定値とは、設定温度がどのような温度であったとしても、保冷室R1の温度が加算温度になると、引戸30に発生する結露が比較的少なくなる値である。所定値は、設定温度に関わらない一定値であり、保冷庫1の製造時に制御装置62が実行するプログラム内で予め設定されている。所定値は、例えば5である。
【0040】
保冷室R1内の温度が設定温度よりも比較的高いことにより、センサ54の検出温度が加算温度より高い場合(S21:NO)、制御装置62は、ドレインパンヒータ58が作動されないまま、プログラムをS20に戻す。
【0041】
一方、圧縮機41が運転状態であることにより保冷室R1内の温度が低下して、センサ54の検出温度が加算温度以下となった場合(S21:YES)、制御装置62は、S22にてドレインパンヒータ58を作動させる。
【0042】
続けて、制御装置62は、S23にて圧縮機41が停止したか否かを判定する。保冷室R1内の温度が設定温度に到達していないことにより、圧縮機41が運転状態である場合(S23:NO)、制御装置62は、S23を繰り返し実行する。
【0043】
一方、保冷室R1内の温度が設定温度に到達したことにより、圧縮機41が停止した場合(S23:YES)、制御装置62は、S24にてドレインパンヒータ58を停止して、プログラムをS20に戻す。
【0044】
次に、
図8に示される非同期制御が実行される場合について説明する。非同期制御は、圧縮機41の運転とドレインパンヒータ58の作動とが同期しない制御である。
【0045】
制御装置62は、S30にて、圧縮機41の運転状態が停止したか否かを判定する。圧縮機41の運転状態が継続している場合(S30:NO)、制御装置62は、S30を繰り返し実行する。
【0046】
一方、保冷庫1内の温度が設定温度に到達したことにより、圧縮機41の運転が停止した時(S30:YES)、制御装置62は、S31にて、ドレインパンヒータ58を作動させるとともに、除霜運転、具体的にはデフロストヒータ55の作動を開始する。なお、除霜運転は、第2のセンサ56の検出温度が第2の所定温度になるまで継続する。
【0047】
続けて、制御装置62は、S32にて、第2のセンサ56の検出温度が第3の所定温度以上であるか否かを判定する。第3の所定温度は、ドレインパンヒータ58の作動を停止させるための閾値である。第3の所定温度は、第2の所定温度よりも高い温度である。第2の所定温度および第3の所定温度は、保冷庫1の製造時に制御装置62が実行するプログラム内で予め設定されている。
【0048】
第2のセンサ56の検出温度が第3の所定温度より小さい場合(S32:NO)、制御装置62は、S32を繰り返し実行する。
【0049】
第2のセンサ56の検出温度が第3の所定温度以上となった場合(S32:YES)、制御装置62は、S33にてドレインパンヒータ58を停止させ、プログラムをS30に戻す。
【0050】
なお、第2のセンサ56の検出温度が第3の所定温度となるときの保冷室R1内の温度は、保冷室R1内に保管されている薬品等に悪影響を及ぼす可能性がある温度よりも十分に低い温度である。
【0051】
次に、ドレインパンヒータ58の同期制御が行われた場合の保冷庫1の動作について、
図9のタイムチャートを用いて説明する。プログラムが実行されている場合、上記のように、ファン43は連続的に回転しているため、気流が引戸30に吹き付けられている。
【0052】
設定温度が所定温度以下であり(S10:YES)、かつ、圧縮機41が作動を開始した時(S20:YES)において(時刻t1)、センサ54の温度の検出温度が加算温度以下である場合(S21:YES)、ドレインパンヒータ58は作動する(S22)。
【0053】
圧縮機41が作動しているため、蒸発器53によって保冷室R1内の空気は冷却される。一方、ドレインパンヒータ58は、保冷室R1内に配置されているため、蒸発器53によって冷却された空気を加熱する。つまり、ドレインパンヒータ58は、冷凍回路による冷却を抑制するように動作する。よって、ドレインパンヒータ58が作動している場合において、保冷室R1内の温度が設定温度に到達するまでの到達時間は、ドレインパンヒータ58が作動していない場合の到達時間より長くなる。つまり、ドレインパンヒータ58が作動している場合の圧縮機41の運転時間は、ドレインパンヒータ58が停止している場合の圧縮機41の運転時間より長くなる。
【0054】
圧縮機41の運転時間が長くなるにしたがって圧縮機41の温度が上昇する。これに伴って、圧縮機41の周囲を通過する気流の温度が上昇する。つまり、ドレインパンヒータ58が停止している場合の気流の温度よりも、ドレインパンヒータ58が作動している場合の気流の温度が高くなる。したがって、引戸30に発生する結露が比較的多くなる所定温度以下に設定温度が設定されている場合に、気流の温度を高くすることができるため、結露の発生を抑制することができる。
【0055】
上記のように、圧縮機41は、保冷室R1を閉じている第1の引戸31より保冷室R1を閉じている第2の引戸32の近くに配置されている。よって、第1の引戸31に吹き付けられる気流の温度より第2の引戸32に吹き付けられる気流の温度の方を高くすることができる。また、上記のように、第2の引戸32に発生する結露は、第1の引戸31に発生する結露より多い。つまり、圧縮機41の配置によって、第2の引戸32に発生する結露を効果的に抑制することができる。
【0056】
保冷室R1内の温度が低下して、設定温度に到達することにより、圧縮機41が停止した時(S23:YES、時刻t2)、ドレインパンヒータ58が停止する(S24)。
【0057】
続けて、設定温度が所定温度以下であり(S10:YES)、かつ、圧縮機41が作動を開始した時(S20:YES)においても(時刻t4)、センサ54の検出温度が加算温度より高い場合(S21:NO)、ドレインパンヒータ58が作動しない。センサ54の検出温度が加算温度より高い場合、保冷室R1内の温度と設定温度との差が比較的大きいため、冷凍回路による冷却を優先させるために、ドレインパンヒータ58が作動しないように制御される。
【0058】
センサ54の温度の検出温度が加算温度より高い場合は、例えば、使用者が引戸30を開いたことにより、保冷室R1内に外気が流入して、保冷室R1内の温度が上昇した場合である。また、センサ54の検出温度が加算温度より高い場合、上記のように、引戸30に発生する結露は比較的少ないため、ドレインパンヒータ58が作動していない場合の気流の温度でも結露の発生を十分に抑制することができる。
【0059】
続けて、圧縮機41の運転によって保冷室R1内の温度が低下して、センサ54の検出温度が加算温度以下となった場合(S21:YES)、ドレインパンヒータ58が作動する(S22、時刻t5)。そして、保冷室R1内の温度がさらに低下して、設定温度に到達することにより、圧縮機41が停止した時(S23:YES、時刻t6)、ドレインパンヒータ58が停止する(S24)。
【0060】
次に、ドレインパンヒータ58の非同期制御が行われた場合の保冷庫1の動作について、
図9のタイムチャートを用いて説明する。非同期制御が行われている場合においても、上記のように、ファン43は連続的に回転しており、気流が引戸30に吹き付けられている。
【0061】
設定温度が所定温度より高く(S10:NO)、かつ、圧縮機41が作動を開始した時(S30:NO)において(時刻t1)、ドレインパンヒータ58は作動しない。よって、引戸30に吹き付けられる気流の温度は、ドレインパンヒータ58が作動している場合の気流の温度に比べて低くなる。しかしながら、設定温度が所定温度より高い場合、引戸30に発生する結露は、設定温度が所定温度以下である場合に引戸30に発生する結露より少ないため、引戸30に発生する結露は十分に抑制される。
【0062】
保冷室R1内の温度が低下して、設定温度に到達することにより、圧縮機41の運転が停止した時(S30:YES、時刻t2)、ドレインパンヒータ58が作動する(S31)。また、この時(時刻t2)、デフロストヒータ55も作動する。
【0063】
圧縮機41が停止しているため、ドレインパンヒータ58が作動していても圧縮機41の温度は上昇しない。よって、気流の温度は上昇しない。
【0064】
フィン53bに付着している霜が解けて、フィン53bの温度が上昇したことによって、第2のセンサ56の検出温度が第3の所定温度以上となった場合(S32:YES、時刻t3)、ドレインパンヒータ58の作動が停止する(S33)。
【0065】
続けて、ドレインパンヒータ58は、圧縮機41の運転が停止した時に作動を開始し(時刻t6)、第2のセンサ56の検出温度が第3の所定温度以上となった場合に停止する(時刻t7)ことを繰り返し実行する。
【0066】
本開示は、これまでに説明した実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれる。
【0067】
例えば、同期制御において、圧縮機41が運転状態である場合に、加算温度に関わらず、ドレインパンヒータ58が作動するようにしてもよい。この場合、
図7に示されるフローチャートにおいてS21は実行されない。つまり、制御装置62は、保冷室R1の設定温度が所定温度以下であるという条件、および、圧縮機41が運転状態であるという条件が満たされる場合、ドレインパンヒータ58を作動させる。
【0068】
また、圧縮機41を機械室R2の中央、または、保冷室R1を閉じている第2の引戸32より保冷室R1を閉じている第1の引戸31に近い位置に配置してもよい。
【0069】
また、同期制御において、圧縮機41が運転状態である場合にドレインパンヒータ58に代えてデフロストヒータ55が作動してもよい。
【0070】
2021年3月17日出願の特願2021-043838の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示は、薬用保冷庫、血液保冷庫、および、恒温器などの保冷庫に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 保冷庫
10 箱体
20 枠体
30 引戸
41 圧縮機
42 凝縮器
43 ファン
52 第2のファン
54 センサ
56 第2のセンサ
57 ドレインパン
58 ドレインパンヒータ
H1 開口
H2 送風口
R1 保冷室
R2 機械室