(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-23
(45)【発行日】2024-05-02
(54)【発明の名称】メッシュ経編地及び繊維製品
(51)【国際特許分類】
D04B 21/10 20060101AFI20240424BHJP
【FI】
D04B21/10
(21)【出願番号】P 2024000685
(22)【出願日】2024-01-05
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593179509
【氏名又は名称】株式会社ヴィオレッタ
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】上原 健司
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 美弥子
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-155897(JP,A)
【文献】特許第2657200(JP,B2)
【文献】特許第5443524(JP,B2)
【文献】特許第6588075(JP,B2)
【文献】特開2019-135336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性糸及び弾性糸によって編成され、少なくとも一部にメッシュ組織を備えるメッシュ経編地であって、
前記メッシュ組織では、複数本の非弾性糸が相対向する一対の繰り返しパターン(閉じ目・開き目のみ異なる場合は同一の繰り返しパターンとみなす。)に従って編成されるとともに、複数本の弾性糸が前記一対の繰り返しパターンに従って前記複数本の非弾性糸と重なるように編成され、
前記一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸、これに重なる弾性糸、及び前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の弾性糸は非通糸位置を含み、前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸は非通糸位置を含まないことを特徴とするメッシュ経編地。
【請求項2】
前記一対の繰り返しパターンが、3~12コースを繰り返し単位とし、3~5ウェールの範囲で左右に振られているものである、請求項1に記載のメッシュ経編地。
【請求項3】
前記一対の繰り返しパターンが、4コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られているものである、請求項1に記載のメッシュ経編地。
【請求項4】
前記一対の繰り返しパターンが、6コースを繰り返し単位とし、3、又は4ウェールの範囲で左右に振られているものである、請求項1に記載のメッシュ経編地。
【請求項5】
前記一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸が、複数本のハーフセットの非弾性糸である、請求項1に記載のメッシュ経編地。
【請求項6】
前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸が、複数本のハーフセットの非弾性糸と、その非通糸位置を補う複数本のハーフセット又はフルセットの非弾性糸との組合せで構成される請求項1に記載のメッシュ経編地。
【請求項7】
2つのハーフセット編みで構成されるジャカード編成組織を備え、当該ジャカード編成組織を構成する一方のハーフセット編みが前記一対の繰り返しパターンの一方に従い、他方のハーフセット編みが前記一対の繰り返しパターンの他方に従う、請求項6に記載のメッシュ経編地。
【請求項8】
AATCC(米国繊維化学技術・染色技術協会)規格195による一方向浸透性が3級以上である請求項1に記載のメッシュ経編地。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載のメッシュ経編地からなる、繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ経編地及び繊維製品に関し、詳しくは、縁始末をしなくても解れ(ほつれ)の生じ難いメッシュ経編地とこれを用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
経編地の縁部は、何らの工夫もしない場合、解れを生じるため、従来、この解れを防止する手法が模索されてきた。
そのような技術の一つとして、本発明者は、通気性や伸縮性に優れ、かつ、縁始末が不要な経編地と、これを用いた衣類を提案した(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の経編地は、従来にない極めて優れた経編地であり、本発明者は、この技術の良さを生かしつつ更なる付加価値の付与を実現するべく、継続的に検討を行っている。
そのような試みの1つとして、本発明者は、透けの抑制と、皮膚へのくい込み(噛み込み)、及び肌へのべたつきの抑制という課題を設定した。
すなわち、本発明は、通気性や伸縮性に優れ、かつ、縁始末が不要でありながら、透け難く、皮膚へのくい込みが生じ難く、かつ肌がべたつき難いメッシュ経編地と、これを用いた繊維製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を行い、以下の構成によれば、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかるメッシュ経編地は、非弾性糸及び弾性糸によって編成され、少なくとも一部にメッシュ組織を備えるメッシュ経編地であって、前記メッシュ組織では、複数本の非弾性糸が相対向する一対の繰り返しパターン(閉じ目・開き目のみ異なる場合は同一の繰り返しパターンとみなす。)に従って編成されるとともに、複数本の弾性糸が前記一対の繰り返しパターンに従って前記複数本の非弾性糸と重なるように編成され、 前記一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸、これに重なる弾性糸、及び前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の弾性糸は非通糸位置を含み、前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸は非通糸位置を含まないことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るメッシュ縦編地では、このようにメッシュ経編地の相対向する編成組織のうち、一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸、これに重なる弾性糸、及び一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の弾性糸を非通糸位置を設けながら編成し、一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸は非通糸位置を設けずに編成したので、非通糸位置を備え一対の繰り返しパターンの一方に従う非弾性糸、及びこれに重なる弾性糸と、非通糸位置を備え一対の繰り返しパターンの他方に従う弾性糸とにより形成されるメッシュ組織の透孔に、一対の繰り返しパターンの他方に従って編成される非弾性糸のうち弾性糸と重ならない非弾性糸のシンカーループを横断させることができるので、メッシュ組織の透孔による肌の透けや、透孔の皮膚への食い込みを抑制することができる。また、このような編成を行うので、非弾性糸からなる表側の編組織から弾性糸からなる裏側の編組織に向かう一方向浸透性を形成できるので、非弾性糸側を肌側にして肌着を形成することで、肌のべたつきを抑制することができる。
【0008】
前記一対の繰り返しパターンは、3~12コースを繰り返し単位とし、3~5ウェールの範囲で左右に振られていることが好ましい。こうすることで、メッシュ組織の透孔の数を肌が過度に透けない範囲に制限しながら、肌のべたつきを抑制するのに十分な透孔を確保できる。
【0009】
前記一対の繰り返しパターンは、4コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られているもの、6コースを繰り返し単位とし、3、又は4ウェールの範囲で左右に振られているものが特に好ましい。こうすることで、肌の透けと、肌のべたつきをよりバランスよく抑制できる。
【0010】
本発明のメッシュ経編地は、前記一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸が、複数本のハーフセットの非弾性糸であるもの、前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸が、複数本のハーフセットの非弾性糸と、その非通糸位置を補う複数本のハーフセット又はフルセットの非弾性糸との組合せで構成されるものを含む。
ここで、「ハーフセット」とは、縦編み機の筬に列設された複数のガイドの1本おきに編糸を通して編成すること、又はこうして編成された編組織をいう。
【0011】
本発明のメッシュ経編地は、AATCC(米国繊維化学技術・染色技術協会)規格195による一方向浸透性が3級以上であることが好ましい。こうすることで、肌のべたつきをより効果的に抑制できる。
【0012】
本発明にかかる繊維製品は、上記本発明にかかるメッシュ経編地からなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分な通気性や伸縮性を備え、かつ、縁始末が不要でありながら、透け難く、皮膚へのくい込みが生じ難く、かつ高い一方向浸透性により肌のべたつきを抑制するメッシュ経編地とこれを用いた繊維製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図2】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図3】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図4】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図5】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図6】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図7】本発明の経編地における一対の繰り返しパターンの一例を示す組織図である。
【
図8】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例1)を示す編成組織図である。
【
図9】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例2)を示す編成組織図である。
【
図10】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例3)を示す編成組織図である。
【
図11】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例4)を示す編成組織図である。
【
図12】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例5)を示す編成組織図である。
【
図13】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例6)を示す編成組織図である。
【
図14】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例7)を示す編成組織図である。
【
図15】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例8)を示す編成組織図である。
【
図16】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例9)を示す編成組織図である。
【
図17】本発明の経編地におけるメッシュ組織の一例(編成例10)を示す編成組織図である。
【
図18】参考例1の経編地における編成組織図である。
【
図19】
図8のメッシュ経編地(編成例1)における一対の繰り返しパターンの一方の非弾性糸、及びこれに重なる弾性糸による編目構造図である。
【
図20】
図8のメッシュ経編地(編成例1)における一対の繰り返しパターンの他方で編成された弾性糸による編目構造図である。
【
図21】
図8のメッシュ経編地(編成例1)における一対の繰り返しパターンの他方で編成された非弾性糸による編目構造図である。
【
図22】
図8のメッシュ経編地(編成例1)の層構造を示した模式的断面図である。
【
図23】
図8のメッシュ経編地(編成例1)における全編糸を合わせて示した編目構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかるメッシュ経編地(以下、単に「経編地」と表記することがある)及びこれを用いた繊維製品の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0016】
〔編成糸〕
本発明の経編地は、非弾性糸及び弾性糸によって編成される。
非弾性糸としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維、レーヨン、アセテートなどの再生繊維、綿、絹などの天然繊維などからなるものを、経編地の用途や要求性能に合わせて適宜に選択して使用することができる。種類としては、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン糸、太細糸、混繊糸、複合糸など、特に限定されない。
非弾性糸の太さとしては、特に限定するわけではないが、例えば、22~156dtexである。
【0017】
また、弾性糸についても、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリウレタン繊維などの弾性繊維からなるものなどが使用できる。弾性糸に非弾性糸を被覆した被覆弾性糸や、非弾性繊維と弾性繊維とを組み合わせた複合糸なども使用できる。
弾性糸の太さとしては、特に限定するわけではないが、例えば、22~470dtexである。
【0018】
〔メッシュ組織〕
メッシュ組織は、一般に、相対向する一対の編成糸において、両編成糸が離間して透孔を形成する離間部が一定の繰り返し単位で繰り返されることにより形成される。
本発明の経編地は、少なくとも一部にメッシュ組織を備える。経編地全体にわたってメッシュ組織が形成されていてもよいし、一部にメッシュ組織以外の領域(例えば、ジャカード柄部分など)を含んでいても良い。
【0019】
本発明におけるメッシュ組織では、複数本の非弾性糸が相対向する一対の繰り返しパターンに従って編成されるとともに、複数本の弾性糸が同様の一対の繰り返しパターンに従って前記複数本の非弾性糸と重なるように編成される。
なお、この繰り返しパターンに関し、本発明では、閉じ目・開き目のみ異なる場合(同一の編方向及び同一の変位幅で編成される場合)は同一の繰り返しパターンとみなす。
【0020】
この一対の繰り返しパターンは、好ましくは、3~12コースを繰り返し単位とし、3~5ウェールの範囲で左右に振られているものであり、より好ましくは、4コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られているもの、あるいは6コースを繰り返し単位とし、3、又は4ウェールの範囲で左右に振られているものである。
【0021】
<繰り返しパターンの例示>
メッシュ組織を編成するための一対の繰り返しパターンについて、具体例を、
図1~7に示す。
【0022】
図1の例は、
繰り返しパターン:10/12/23/21//と、
繰り返しパターン:23/21/10/12//と
からなる。4コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られている。
【0023】
図2の例は、
繰り返しパターン:10/01/12/23/32/21//と、
繰り返しパターン:23/32/21/10/01/12//と
からなる。6コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られている。
【0024】
図3の例は、
繰り返しパターン:10/01/12/23/34/43/32/21//と、
繰り返しパターン:34/43/32/21/10/01/12/23//と
からなる。8コースを繰り返し単位とし、4ウェールの範囲で左右に振られている。
【0025】
図4の例は、
繰り返しパターン:10/23/21//と、
繰り返しパターン:23/10/12//と
からなる。3コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られている。
【0026】
図5の例は、
繰り返しパターン:01/12/32/21//と、
繰り返しパターン:32/21/01/12//と
からなる。4コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られている。
【0027】
図6の例は、
繰り返しパターン:10/21/23/12//と、
繰り返しパターン:23/12/10/21//と
からなる。4コースを繰り返し単位とし、3ウェールの範囲で左右に振られている。
【0028】
図7の例は、
繰り返しパターン:01/12/23/43/32/21と、
繰り返しパターン:43/32/21/01/12/23と
からなる。6コースを繰り返し単位とし、4ウェールの範囲で左右に振られている。
【0029】
図1~7に例示した繰り返しパターンを利用した具体的なメッシュ組織の編成例を
図8~
図18に示す。
なお、図中、「H」はハーフセットで糸通しされていることを意味し、「F」はフルセットで糸通しされていることを意味する。
【0030】
<編成例1>
編成例1の編み組織図を
図8に示す。
編成例1は、筬GB1に1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた非弾性糸11による非弾性糸編成組織と、筬GB2にフルセットで糸通しされた非弾性糸12による非弾性糸編成組織と、筬GB3と筬GB4にそれぞれ1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた弾性糸21,22による各弾性糸編成組織とからなる。
【0031】
非弾性糸11,12は、
図1に示す一対の繰り返しパターンに従って編成される。
非弾性糸11をハーフセットとすることで、一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸が非通糸位置11a(
図19参照)を含むようにしている。これにより、メッシュ組織特有の透孔による通気性がもたらされる。
【0032】
他方、非弾性糸12をフルセットとすることで、一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸が非通糸位置を含まないようにしている。
弾性糸21,22も、
図1に示す一対の繰り返しパターンに従い、それぞれ、非通糸位置21a,22a(
図19、
図20参照)を設けながら、非弾性糸11,12と重なるように編成される。
【0033】
図19は編成例1における非弾性糸11、及びこれに重なる弾性糸21の編目構造を示し、
図20は、弾性糸22の編目構造を示し、
図21は、非弾性糸12の編目構造をそれぞれ示している。
そして
図23は、これらの編糸を合わせて示した編目構造図を示している。
図23では、非弾性糸11,12を実線で、弾性糸21,22を破線で示している。
編成例1では、非弾性糸11,12及び弾性糸21の3本の編糸により形成されるループ3と、非弾性糸12及び弾性糸22の2本の編糸により編成されるループ4とがコース方向(
図19の上下方向)、及びウェール方句(
図19の左右方向)に交互に表れ、ウェール方向に隣接するループ3とループ4との間に、透孔5(
図23において、1つの透孔5を灰色に着色して示す)がコース方向及びウェール方向に間欠的に設けられた編目構造を有する。そして、編成例1の編目構造では、この透孔5を横断する非弾性糸12によるシンカーループ12aが2本形成されている。このように、透孔5に、シンカーループ12a,12aが横断していることで、通気性を過度に阻害することなく、防透け性を付与し、皮膚への食い込みを抑制できる。
【0034】
また、編成例1の縦編地では、
図22に示すように、表側(
図22の下側)に、非弾性糸11,12による編成組織が形成され、裏側に弾性糸21,22による編成組織が形成される。係る層構造を有することで、表側の編目構造が密に、裏側の編目構造が粗になるため、毛細管現象により、表側から裏側へ向かう方向の一方向浸透性が具現されるものと推察される。
また、複数本の弾性糸が、非弾性糸と同様の繰り返しパターンに従って非弾性糸と重なるように編成され、非弾性糸と弾性糸がいわゆるプレセットやヒートセットで融着されることで、伸縮性に優れ、かつ、縁始末が不要な経編地となる。
編成例1に係る編目構造では、ループ3において、非弾性糸11、非弾性糸12が共に弾性糸21により融着されるので、上記従来のメッシュ縦編地に比べて、より切断面がほつれにくい。
【0035】
<編成例2>
編成例2の編み組織図を、
図9に示す。
編成例2は、一対の繰り返しパターンとして、
図2に示す繰り返しパターンを採用したこと以外は、編成例1と同じである。
このように、一対の繰り返しパターンとして、コース数や振り幅を変更することで、用途や目的に合わせた経編地を製造することができる。
【0036】
<編成例3>
編成例3の編み組織図を
図10に示す。
編成例3では、一対の繰り返しパターンとして、
図5に示す繰り返しパターンを採用したこと以外は、編成例1と同じである。
なお、
図1に示す一対の繰り返しパターンと、
図5に示す一対の繰り返しパターンは、同一の編方向及び同一の変位幅で編成され、開き目・閉じ目のみが異なるものであるから、本発明においては、同一の繰り返しパターンであるとみなされる。
【0037】
<編成例4,5>
編成例4,5の編み組織図を
図11,12に示す。
編成例4では、編成例1における筬GB3と筬GB4で編成される各繰り返しパターンを入れ替えている。
編成例5では、編成例1における筬GB1と筬GB2で編成される各繰り返しパターンを入れ替えている。
このように、本発明において、各繰り返しパターンをいずれの筬で編成するかは、特に限定されるものではない。
【0038】
<編成例6>
編成例6の編み組織図を
図13に示す。
編成例6は、筬GB1と筬GB2にそれぞれ1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた非弾性糸11,12による各非弾性糸編成組織と、筬GB3にフルセットで糸通しされた非弾性糸13による非弾性糸編成組織と、筬GB4と筬GB5にそれぞれ1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた弾性糸21,22による各弾性糸編成組織とからなる。
【0039】
非弾性糸11,12は、
図1に示す一対の繰り返しパターンに従って編成される。
非弾性糸13は、
図1に示す一対の繰り返しパターンのうち、非弾性糸11と同様の繰り返しパターンに従って、非弾性糸11の非通糸位置を補うように、フルセットで編成される。
【0040】
非弾性糸12をハーフセットとし、一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸が非通糸位置を含むように構成することで、メッシュ組織特有の透孔による通気性がもたらされる。
他方、非弾性糸11,13を組み合わせて、一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸が非通糸位置を含まないように構成することで、通気性を過度に阻害することなく、防透け性を付与することができる。
【0041】
このように、本発明において、「一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸は非通糸位置を含まない」とは、複数本のハーフセットの非弾性糸(編成例6では非弾性糸11)と、その非通糸位置を補う複数本のフルセットの非弾性糸(編成例6では非弾性糸13)とを組合せた場合も含む。
【0042】
<編成例7>
編成例7の編み組織図を
図14に示す。
編成例7は、筬GB3による非弾性糸編成組織が、ハーフセットで糸通しされた非弾性糸13によって編成される点以外は、編成例6と同じである。
この非弾性糸13は、非弾性糸11の非通糸位置を補うようにメッシュ組織に組み込まれる。
【0043】
このように、本発明において、「一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸は非通糸位置を含まない」とは、複数本のハーフセットの非弾性糸(編成例7では非弾性糸11)と、その非通糸位置を補う複数本のハーフセットの非弾性糸(編成例7では非弾性糸13)とを組合せた場合も含む。
【0044】
<編成例8>
編成例8の編み組織図を
図15に示す。
編成例8は、編成例6をさらに応用した編成例であって、2つのハーフセット編みで構成されるジャカード編成組織を備えるものである。
筬Jb1に1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた非弾性糸11及びジャカード筬Jb2に1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた非弾性糸12によるジャカード編成組織と、筬GB2にフルセットで糸通しされた非弾性糸13による非弾性糸編成組織と、筬GB3と筬GB4にそれぞれ1イン1アウトのハーフセットで糸通しされた弾性糸21,22による各弾性糸編成組織と、筬GB5にフルセットで糸通しされた弾性糸23による弾性糸編成組織とからなる。
【0045】
非弾性糸11,12は、
図1に示す一対の繰り返しパターンに従って編成される。
非弾性糸13は、
図1に示す一対の繰り返しパターンのうち、非弾性糸11と同様の繰り返しパターンに従って、非弾性糸11の非通糸位置を補うように、フルセットで編成される。
【0046】
非弾性糸12をハーフセットとし、一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸が非通糸位置を含むように構成することで、メッシュ組織特有の透孔による通気性がもたらされる。
他方、非弾性糸11,13を組合わせて、一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸が非通糸位置を含まないように構成することで、通気性を過度に阻害することなく、防透け性を付与することができる。
【0047】
このように本発明の経編地は、ジャカード筬によりJb1,Jb2により非弾性糸11,12を編成するようにしたので、ジャカード編成組織を備えることができ、これにより多彩な柄表現を付加することができる。
なお、編成例11では、筬GB5により弾性糸23を挿入することによって伸縮性を向上させている。この挿入用の弾性糸としては、太めの弾性糸(例えば、44~310dtex)を用いることが好ましい。このように、本発明の経編地は、用途や目的に応じ、筬を追加して任意の編成組織を追加しても良い。
【0048】
<編成例9,10>
編成例9,10の編み組織図を
図16,17に示す。
これらの編成例は、一部の編成糸について、開き目・閉じ目のみが編成例8(
図15)と異なる。
本発明では、開き目・閉じ目のみ異なる場合は同一の繰り返しパターンとみなされるので、これらの編成例も、本発明に包含される。
【0049】
〔経編地の編成〕
本発明にかかる経編地を編成するに際しては、通常の編成装置および編成方法が適用できる。
経編機としては、特に限定されず、例えば、トリコット編機、ラッセル編機などが使用でき、また、ジャカード編成組織を編成する場合には、ジャカード機構を備えたジャカード編機が使用できる。
編成後は、セット加工や精練処理、染色処理等の、通常の経編地に行われている処理を施すことができる。
【0050】
〔経編地の用途〕
本発明にかかる経編地は、様々な繊維製品に利用でき、特にその用途が限定されるものではないが、例えば、ファンデーションやインナーウェア、スポーツウェア、アウターウェアなどの衣類、枕カバー、ベッドカバーなどの寝具や、カーテンなどに好適に利用できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明にかかる経編地について実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、
図8の編成例1に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表1に示す。
【0053】
【0054】
〔実施例2〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、
図9の編成例2に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表2に示す。
【0055】
【0056】
〔実施例3〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、
図11の編成例4に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表3に示す。
【0057】
【0058】
〔参考例1〕
カールマイヤー社製のRSE5EL(28ゲージ)を用いて、
図18の編成例に従い、経編地を作製した。
編成条件を下表4に示す。
【0059】
【0060】
〔性能評価〕
実施例1~3、及び参考例1について、MMT(Moisture Management Tester)試験装置を用い、AATCC195規格に基づいて行った浸透面(表面)における湿潤時間、浸透面における給水速度、一方向浸透指数、及びドライ試験の結果を表5に示す。当該試験は、一般財団法人カケンテストセンターに依頼して行った。表5に示すように、実施例1から実施例3のメッシュ経編地は、いずれも十分な湿潤性、吸水性、速乾性を有する他、非弾性糸により編成される表側から弾性糸により編成される裏側への一方向浸透指数がいずれも4級であり、下着として着用した場合に肌のべたつきを効果的に抑制できることがわかった。尚、参考例1のメッシュ縦編地は、試験液が編地を貫通するため測定不可であった。
【0061】
【符号の説明】
【0062】
11,12,13 非弾性糸
11a,21a,22a 非通糸位置
12a シンカーループ
21,22,23 弾性糸
3,4 ループ
5 透孔
GB1,GB2,GB3,GB4,GB5 通常の筬
Jb1,Jb2 ジャカード筬
【要約】
【課題】通気性や伸縮性に優れ、かつ、縁始末が不要でありながら、透け難く、皮膚へのくい込みが生じ難く、肌のべたつきを抑制可能なメッシュ経編地と、これを用いた繊維製品を提供する。
【解決手段】本発明にかかる経編地は。非弾性糸及び弾性糸によって編成され、少なくとも一部にメッシュ組織を備えるメッシュ経編地である。前記メッシュ組織では、複数本の非弾性糸11,12が相対向する一対の繰り返しパターン(閉じ目・開き目のみ異なる場合は同一の繰り返しパターンとみなす。)に従って編成されるとともに、複数本の弾性糸21,22が前記一対の繰り返しパターンに従って複数本の非弾性糸11,12と重なるように編成され、前記一対の繰り返しパターンの一方に従う複数本の非弾性糸11、これに重なる弾性糸21、及び前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の弾性糸22は非通糸位置を含み、前記一対の繰り返しパターンの他方に従う複数本の非弾性糸は非通糸位置を含まない
【選択図】
図8