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特許7478322再構成可能センサアレイを備えた光学顕微鏡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】再構成可能センサアレイを備えた光学顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
G02B21/00
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2021552205
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2019058991
(87)【国際公開番号】W WO2020207571
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】521302951
【氏名又は名称】エコール ポリテクニーク フェデラール デ ローザンヌ (ウ ペ エフ エル)
【住所又は居所原語表記】1015 Lausanne (CH)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】アンニュイ,ティエモ
(72)【発明者】
【氏名】アントロヴィック,イヴァン ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュウェート,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルスキーニ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】シェルボン,エドアード
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133368(JP,A)
【文献】特表2016-528557(JP,A)
【文献】特表2002-523731(JP,A)
【文献】特開2016-001227(JP,A)
【文献】特表2018-509760(JP,A)
【文献】特表2001-509255(JP,A)
【文献】特開2014-170045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0257196(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/74
H04N 5/30 - 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡であって、
標本(35)を照射するための光源(10)と、
前記標本(35)から発せられる検出光(15)を測定するための光子計数検出器素子(61、62)から成るセンサアレイ(60)と、
前記センサアレイ(60)を制御するための制御装置(70)と、
を備え、
前記制御装置(70)又は前記制御装置(70)の部品と前記センサアレイ(60)とが、同じ集積回路内に構築され、複数のマルチビットカウンタがオンチップマルチビットカウンタとして形成され、
前記制御装置(70)が、前記光子計数検出器素子(62)を1つ以上のスーパーピクセル(65)に柔軟にビニングするために構成され、
前記制御装置(70)が、前記センサアレイ(60)の有効領域を調節し、かつそれぞれのマルチビットカウンタをスーパーピクセル(65)のそれぞれに割り当てるように構成され、それぞれのマルチビットカウンタは、前記スーパーピクセル(65)のそれぞれにビニングされた全ての光子計数検出器素子(62)によって計数された光子を示す累積数を出力する、光学顕微鏡。
【請求項2】
前記制御装置(70)が、スーパーピクセル(65)の数を可変に設定し、1つの前記スーパーピクセル(65)にビニングされる前記光子計数検出器素子(62)の数を可変に設定するように構成されている、請求項1に記載の光学顕微鏡
【請求項3】
各光子計数検出器素子(61~63)が、前記制御装置(70)へのそれぞれの信号ラインを介して接続されている、請求項1又は2に記載の光学顕微鏡。
【請求項4】
前記制御装置(70)が、前記検出光(15)のパワーの低減に合わせて前記センサアレイ(60)の前記有効領域を低減させるように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項5】
前記センサアレイ(60)上の検出光(15)のスポットサイズ(16)を調節するための調節可能光学素子(33、34)を更に備え、
前記制御装置(70)が、
前記検出光(15)のパワーの低減に合わせて、前記センサアレイ(60)上の検出光スポットサイズ(16)を低減し、かつ前記センサアレイ(60)の前記有効領域を低減するように前記光学素子(33、34)を制御する、
ように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項6】
前記制御装置(70)が、検出光スポットサイズ(16)に関する情報に従って、前記ビニングと前記センサアレイ(60)の前記有効領域を設定するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項7】
前記制御装置(70)が、照射波長の増大と共に、及び/又は現在使用されている対物レンズがより小さな背面開口の対物レンズと交換されたとき、及び/又は標本部分が前記センサアレイ上に撮像される開口数に応じて、前記センサアレイ(60)の前記有効領域を増大させ、前記スーパーピクセル(65)毎の光子計数検出器素子(61、62)の平均数を増大させるように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項8】
前記制御装置(70)がPSFオーバーサンプリングモード(S2)用に構成され、
前記センサアレイ(60)の前記有効領域が、前記センサアレイ(60)上のPSFサイズ(16)に応じて設定され、
前記スーパーピクセル(65)の数が、前記PSFサイズ(16)に応じて設定され、及び/又は
同じスーパーピクセル(65)にビニングされる前記光子計数検出器素子(61、62)の数が、所望の最大計数率に応じて設定される、請求項1~のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項9】
前記制御装置(70)が、前記PSFオーバーサンプリングモード(S2)において、前記制御装置(70)によって出力されるデータレートが所定の最大レートを超過しない、及び/又は一定となるように、PSFサイズ(16)の増大と共に、同じ前記スーパーピクセル(65)にビニングされる前記光子計数検出器素子(61、62)の数を増加させるように構成されている、請求項に記載の光学顕微鏡。
【請求項10】
前記制御装置(70)が、前記PSFオーバーサンプリングモード(S2)において、隣接する前記スーパーピクセル(65)間の中心間距離が最大で0.2エアリーディスク径となるように、前記スーパーピクセル(65)を設定するように構成されている、請求項又はに記載の光学顕微鏡。
【請求項11】
前記制御装置(70)がライン走査モード(S11)用に構成され、
前記標本(35)が、前記センサアレイ(60)上の細長検出光スポットを導く細長照射光ビームで照射され、
前記制御装置(70)が、細長スーパーピクセル(65)が前記細長検出光スポットに垂直な方向に形成されるように、前記光子計数検出器素子(61、62)を一緒にビニング
前記制御装置(70)が共焦点検出モード(S6)用に構成され、全ての有効化された前記光子計数検出器素子(61、62)が1つの前記スーパーピクセル(65)にビニングされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項12】
前記制御装置(70)がアレイ走査モード用に構成され、前記標本(35)が複数の照射スポットで照射され、前記有効領域と前記光子計数検出器素子(61、62)の前記ビニングが、前記設定された照射に応じて設定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項13】
前記制御装置(70)が、前記PSFオーバーサンプリングモード(S2)又は前記共焦点検出モード(S6)において、衝突光強度に基づき、検出器アレイ(60)上の検出光スポットサイズ(16)を調節して、前記光子計数検出器素子(61、62)の飽和を回避し、SNRを増大させるように構成されている、請求項~12のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項14】
前記制御装置(70)が、
ユーザに、前記PSFオーバーサンプリングモード(S2)、前記共焦点検出モード(S6)、前記ライン又はアレイ走査モード(S11)、及び視野撮像モード(S15)のうちの少なくとも2つを含む複数の撮像モード(S2、S6、S11、S15)を提供し、
選択された前記撮像モード(S2、S6、S11、S15)に応じて、前記光子計数検出器素子(61、62)の前記ビニングを設定する、ために構成されている、請求項~13のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項15】
前記制御装置(70)が、前記選択された撮像モード(S2、S6、S11)に応じて、前記光学顕微鏡の光学素子(33、34)を調節するように構成され、
前記共焦点検出モード(S6)では、前記光学素子(33、34)が、具体的には、前記センサアレイ(60)上に瞳撮像を設定し、前記センサアレイ(60)上の検出光スポットサイズ(16)を調節することによって、前記センサアレイ(60)上の強度分布を均質化するように調節され、
前記PSFオーバーサンプリングモード(S2)では、前記光学素子(33、34)が、前記センサアレイ(60)上に標本点を撮像して、PSFに関する空間情報を記録するように調節される、請求項14に記載の光学顕微鏡。
【請求項16】
前記光学素子のうちの1つ(33)がベルトランレンズ(33)であり、前記光学素子の別の1つ(34)が撮像レンズ(34)であり、
前記制御装置(70)が、
前記ベルトランレンズ(33)を前記検出光(15)のビーム路に挿入することによって瞳撮像を設定し、
前記検出光(15)を前記センサアレイ(60)の近傍に集束させる前記撮像レンズ(34)の焦点距離を適応させることによって、前記検出光スポットサイズ(16)を調節するように構成されている、請求項15に記載の光学顕微鏡。
【請求項17】
前記制御装置(70)が、
ユーザに所望のフレームレートを入力するように促し、
前記所望のフレームレートに応じて、前記センサアレイ(60)の前記ビニング及び前記有効領域を調節して、結果として生じるデータレートを制限するように構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項18】
前記制御装置(70)が、前記センサアレイ(60)の前記有効領域が変更されるときに前記ビニングを調節することによって、出力データレートを一定に保つように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項19】
最大数のM個の柔軟に設定可能なスーパーピクセルを提供するため、前記制御装置(70)が、いくつかのM≧2個のユニット(71a)を有する処理ユニット(71)を備え、前記ユニット(71a)のそれぞれが、前記光子計数検出器素子(61)のそれぞれそれぞれの入力ラインおよびそれぞれのプログラマブルスイッチ(71c)を介して切り替え可能に接続されるそれぞれの結合回路(71d)を備え、前記結合回路(71d)のそれぞれが、全ての前記検出器素子(61)の合同光子計数率を示す信号ストリームを出力し、該信号ストリームに対して、前記結合回路(71d)への前記それぞれのスイッチ(71c)が閉鎖される、請求項1~18のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項20】
前記制御装置(70)が、いくつかのM個の入力ラインを有するスーパーピクセルカウンタユニット(72)を備え、前記入力ラインのそれぞれが、前記結合回路(71d)の対応する出力に接続され、
前記M個の入力ラインのそれぞれが、前記スーパーピクセルカウンタユニット(72)の少なくとも1つのマルチビットカウンタにつながる、請求項19に記載の光学顕微鏡。
【請求項21】
前記スーパーピクセルカウンタユニット(72)が、結合回路毎に2つのマルチビットカウンタを備え、前記M個の入力ラインのそれぞれが一対のマルチビットカウンタにつながり、前記対のマルチビットカウンタのうちの一方が読み出され、前記マルチビットカウンタの他方が入射する光子計数率をカウントする、請求項20に記載の光学顕微鏡。
【請求項22】
前記制御装置(70)が、前記光子計数検出器素子(61、62)から前記制御装置(70)までの信号ラインの長さが異なることから生じるタイミング遅延を示す較正マトリクスに基づき、異なる前記スーパーピクセル(65)の出力データストリーム間のタイミング遅延を調節するように構成されている、請求項1~21のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項23】
前記照射光(12)で前記標本(35)を走査し、前記検出光(15)を前記センサアレイ(60)に向けて方向付けるように構成されているスキャナ(25)を更に備え、
前記制御装置(70)が、前記走査中、前記ビニングを調節するように構成されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項24】
前記制御装置(70)が、同じスーパーピクセル(65)の前記光子計数検出器素子(61、62)間で異なる感度を設定するように構成されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の光学顕微鏡。
【請求項25】
光学検出器であって、
光子計数検出器素子(61、62)から成るセンサアレイ(60)と、
前記センサアレイ(60)を制御するための制御装置(70)と、
を備え、
前記制御装置(70)又は前記制御装置(70)の部品と前記センサアレイ(60)とが、同じ集積回路内に構築され、複数のマルチビットカウンタがオンチップマルチビットカウンタとして形成され、
前記制御装置(70)が、前記光子計数検出器素子(62)を複数のスーパーピクセル(65)に柔軟にビニングするために構成され、
前記制御装置(70)が、前記センサアレイ(60)の有効領域を調節し、かつそれぞれのマルチビットカウンタをスーパーピクセル(65)のそれぞれに割り当てるように構成され、それぞれのマルチビットカウンタは、前記スーパーピクセル(65)のそれぞれにビニングされた全ての光子計数検出器素子(62)によって計数された光子を示す累積数を出力する、光学検出器。
【請求項26】
前記光子計数検出器素子(61、62)のそれぞれに対する事象駆動型有効リチャージ構成要素を更に備える、請求項25に記載の光学検出器。
【請求項27】
前記制御装置(70)が、連続及び/又は不連続光子計数検出器素子(61)を同じスーパーピクセル(65)に柔軟にビニングするために構成されている、請求項25又は26に記載の光学検出器。
【請求項28】
撮像方法であって、
照射光(12)で標本(35)を照射することと、
前記標本(35)から発せられる検出光(15)を、光子計数検出器素子(61、62)から成るセンサアレイ(60)を用いて測定することと、
制御装置(70)を用いて前記センサアレイ(60)を制御することと、
前記光子計数検出器素子(62)を、前記センサアレイ(60)と同じ集積回路内の1つ以上のスーパーピクセル(65)に柔軟にビニングすることと、
オンチップマルチビットカウンタとして形成された複数のマルチビットカウンタのうちのそれぞれのマルチビットカウンタをスーパーピクセル(65)のそれぞれに割り当てることであって、それぞれのマルチビットカウンタは、前記スーパーピクセルのそれぞれにビニングされた全ての光子計数検出器素子(62)によって計数された光子を示す累積数を出力することと、
前記センサアレイ(60)の有効領域を調節することと、を含む、撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、請求項1のプリアンブルによる光学顕微鏡に関する。本開示はまた、請求項25のプリアンブルによる光学検出器、及び請求項28のプリアンブルによる撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学顕微鏡は、ライフサイエンス又は材料試験などの広範な用途で使用される。具体的には、共焦点走査顕微鏡検査は、確立した技術である。共焦点走査顕微鏡で採用されている現行のセンサ技術は、マルチアルカリ若しくはGaAsP光電陰極を備えた光電子増倍管、又はGaAsP光電陰極及びAPD(アバランシェフォトダイオード)検出器を備えたハイブリッド検出器を含む。
【0003】
近年の進歩には、高感度、高速応答時間、及び低暗計数率を提供する単一光子アバランシェダイオード(SPAD)が見られる。SPADアレイは、Sheppardらの著作に基づく画像走査技術(Airyscan)において使用することができる点像分布関数(PSF)の空間サンプリングを可能にする。Sheppard,C.J.,Optic80、53~54(1988)、及びSheppard,C.J.,Mehta,S.B.&Heintzmann,R.Opt Lett.38、2889~2892(2013)を参照されたい。ある種の用途においては、PSFは軸対称であるが、一般的には任意の光分布が使用されてもよい。
【0004】
光子計数検出器素子又はSPADは、自由電荷担体を欠く空乏領域を有する接合部を備える。降伏電圧を超える電圧VOPが、接合部に印加される。SPADによって吸収される光子は、空乏領域内の担体を注入することができてもよく、その結果として、衝突電離がダイオードの更なる領域に分散し、光子計数として検出可能なアバランシェを引き起こし得る。
【0005】
続く光子を検出するため、アバランシェがクエンチされる。ダイオードがクエンチされると(即ち、衝突電離及びダイオード内の自由担体の不在のため、電流が存在しない)、ダイオードの電圧が、例えば、クエンチ抵抗を介して電流の流れによってリチャージされ、ダイオードは別の担体を検出する準備が整う。
【0006】
一般的な光学顕微鏡は、標本を照射するための光源と、標本から発せられる検出光を測定するための光子計数検出器素子から成るセンサアレイと、を備える。制御装置が、センサアレイを制御するように構成される。光源から標本へ照射光を誘導し、標本からセンサアレイへ検出光を誘導するための光学素子が配置されてもよい。同様に、一般的な光学検出器は、光子計数検出器素子から成るセンサアレイと、センサアレイを制御するための制御装置と、を備える。一般的な撮像方法は、照射光で標本を照射する工程と、光子計数検出器素子を備えるセンサアレイによって標本から発せられる検出光を測定する工程と、制御装置でセンサアレイを制御する工程と、を含む。
【0007】
US2016/0131883A1は、複数のアバランシェフォトダイオード又はPMTを有するレーザ走査顕微鏡について記載している。検出光を個々のフォトダイオードに導くために光ファイバが使用される。PSFは空間的に分解され、それにより、上述の画像走査技術の実行を可能にする。フォトダイオード及び光をフォトダイオードへ誘導するのに使用される光ファイバが比較的少数である結果、ズーム光学部品が、通常、PSFのサイズを限られた数の光ファイバとセンサピクセルに適合させるために使用される。PSFのサイズを適合させるために必要なズーム光学部品はかなり複雑であるため、多数の必要な光学素子によって信号検出効率に悪影響を及ぼし得る一方で、コストが増大する。
【0008】
US2017/0176250A1は、特に、SPAD素子を備えた距離測定用センサアレイについて記載している。この場合、センサアレイの全てのSPAD素子の出力ラインは、単一出力に結合される。よって、センサアレイは、SPAD素子の任意の1つが衝突する光子を測定する度に検出信号を出力する。この設計は、特定の用途にとっては正確な結果を提供するが、出力ラインの単独出力へのビニング(統合)が、上述のPSFオーバーサンプリング技術などの多くの顕微鏡検査技術において、このセンサアレイを使用できなくしてしまう。
【0009】
本発明の目的は、不当に高い光学的な複雑度及びコストを伴わずに、非常に高い画像品質を提供する光学顕微鏡、光学検出器、撮像方法を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
上述の目的は、請求項1の特徴を有する光学顕微鏡、請求項25の特徴を有する光学検出器、及び請求項28に記載されるような方法によって達成される。
【0011】
好適な実施形態は、従属請求項、並びに特に添付図面と併せて、以下の説明で提示される。
【0012】
本発明によると、上述の種類の光学顕微鏡と上述の種類の光学検出器は、制御装置が、光子計数検出器素子を1つ以上のスーパーピクセルに柔軟にビニングするために構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明によると、上述の方法は、少なくとも、ビニング光子計数検出器素子を1つ以上のスーパーピクセルに柔軟にビニングする工程を特徴とする。本方法は、特に、本明細書に記載の本発明による光学顕微鏡の実施形態を用いて実施することができる。
【0014】
具体的には、センサアレイ、制御装置、光学素子又は光源について記載する後述の好適な実施形態は、本発明の光学顕微鏡と光学検出器の両方に適用されてもよい。
【0015】
従来、複雑なズーム光学部品が、光ビームがセンサアレイを十分に満たすように、センサアレイに衝突する光ビームのサイズを調節するために使用される。それとは全く異なり、本発明は、衝突する光スポットのサイズと特徴に合わせてセンサアレイを調節することを可能にする。PSFオーバーサンプリングモードの場合、センサアレイに衝突する光ビーム(又は光スポット)のサイズは、PSFによって定義される。空間分解PSFは、高解像技術に必要な情報の取得を可能にする。十分な数の検出点が空間分解PSFには必要であるが、不必要に多数の検出点は、データレートに関する妥当な制約を超過する。光子計数検出器素子の出力ラインを不定数のスーパーピクセルに柔軟にビニングすることで、こうした問題が解決される。PSF(検出器アレイに衝突する光スポット)が大きいほど、より大きなスーパーピクセルが設定されてもよい。小さな光スポットの場合、光が衝突する検出器素子は小さなスーパーピクセルに分類されてもよい(又は、いくつかの検出器素子は、どのスーパーピクセルにもビニングされなくてもよい)一方で、低強度の光が衝突する、又は光が衝突しない他の検出器素子は大きなスーパーピクセルにビニングされてもよく、又は無効にされてもよい。発明のコンセプトは光分布の正確な測定を可能にするが、ズーム光学部品の要件(例えば、ズーム倍率)は低下する。同時に、本発明のコンセプトは、最大計数率と信号値雑音比(SNR)における利点を提供し得る。
【0016】
具体的には、CMOS SPAD技術に基づいて、各検出器素子に個々に対処することができ、センサアレイは、(即ち、光子計数検出器素子から出力された)全ての個々のピクセルを任意のスーパーピクセルに結合(ビニング)できるように再構成可能にすることができる。したがって、ビニングは、原則的に、検出器素子の位置とは無関係である。よって、制御装置は、連続(隣接)及び/又は非連続の光子計数検出器素子を同じスーパーピクセルに柔軟にビニングするために構成されてもよい。
【0017】
好適な実施形態では、事象駆動型有効リチャージが光子計数検出器素子のために使用される。対応する事象駆動型有効リチャージ(電子)構成要素は、制御装置及び/又はセンサアレイの一部とみなされてもよい。事象駆動型有効リチャージにより、各検出器素子を個々にリチャージすることができる。即ち、全ての検出器素子が同時にリチャージされるわけではなく、その代わりに、アバランシェ事象を経る特定の検出器素子のみがリチャージされる。これは、光に対する「非無効化」センサ応答をもたらし、受動的なクロック駆動型リチャージSPADと比較して、動的範囲を拡張する。更なる説明は、2018年8月20日、第26巻17号、OPTICS EXPRESS22234に公開されたIvan Michel Antolovicらの「Dynamic range extension for photon counting arrays」で提供される。
【0018】
再構成可能センサアレイの柔軟性が、ビニングだけでなく個々の検出器素子の有効化にも関連する場合、追加の利点が達成される。「有効」又は「有効化された」は本明細書では、更に処理される測定信号(光子計数率)を出力する検出器素子を示し、無効化された検出器素子は、更に使用される測定信号を出力しないものと理解される。あるいは、「無効化された」は、出力が更に処理されるようにルーティングされない検出器素子を示してもよい。いくつかの検出器素子に衝突する光強度が低い場合、それらの検出器素子を有効にすることは、実際には、暗騒音のために総SNRを悪化させ得る。この場合、関連の検出器素子を無効にすることが、それらを1つ以上の大きなスーパーピクセルに結合することにとって好ましい場合がある。低い検出光パワーの場合、小さなスポットに検出光を集中させて、それぞれの検出器素子のみを有効にすることが好ましい場合がある。強度の増大に合わせて、スポットサイズを増大させ、それに応じて有効領域を増大させることによって精度を向上させることができる。言い換えれば、制御装置は、検出光パワーの低減に合わせて、センサアレイ上の検出光スポットサイズを低減させ、有効領域を低減するために、光学素子を制御するように構成されてもよい。検出光パワーの増大と共に、より多くの検出器素子を有効化して、最大計数率、及びより多くの光子束を通るSNRを増大させてもよい。
【0019】
スーパーピクセルは、1つ以上の(又は2つ以上の)検出器素子の出力の組み合わせとして理解される。説明の簡潔化のため、本開示は、多くの場合、全ての検出器素子がスーパーピクセルにビニングされるオプションを含むスーパーピクセルへのビニングについて言及するが、いくつかの(有効な)検出器素子がビニングされないオプションも含み得る。
【0020】
制御装置は、それぞれのマルチビットカウンタを各スーパーピクセルに割り当てるように構成されてもよい。マルチビットカウンタは、各検出器素子から測定データを個々に送信することと比較してデータレートを低減する。各マルチビットカウンタは、それぞれのスーパーピクセルにビニングされた全ての検出器素子によって計数された光子を示す累積数を出力する。よって、データレートは、X[ビット/秒]からX・N/(2-1)[ビット/秒]まで低減することができ、Xはスーパーピクセル検出速度を示し、Nはマルチビットカウンタのビット数を示す。
【0021】
制御装置(又は制御装置の部分)とセンサアレイは、同じ回路基板上及び/又は同じIC(集積回路)内に構築されてもよい。具体的には、上述の制御装置の各部は、同じIC内のセンサアレイと共に構築されてもよく、制御装置の他の部分はICの外部だが、ICと同じ回路基板上に形成される。例えば、マルチビットカウンタは、オンチップマルチビットカウンタとして形成されてもよい。各光子計数検出器素子は、それぞれの信号ラインを介して制御装置に(即ち、マルチビットカウンタ又はマルチビットカウンタに到達する前に前処理ユニットに)接続されてもよい。これにより、制御装置該の最大必要データ帯域幅が低減される。
【0022】
制御装置は、スーパーピクセルの数を可変に設定してもよい、及び/又は1つのスーパーピクセルにビニングされるピクセルの数を可変に設定してもよい。同時に使用される異なるスーパーピクセルはまた、サイズが変更されてもよい。
【0023】
制御装置の例示的な電子態様を以下に説明する。制御装置は、いくつかの最大M個のスーパーピクセルを柔軟に設定するように構成されてもよく、その目的で、制御装置は、M個のユニットと同数の処理ユニットを備える。各検出器素子は、各ユニットに接続される。検出器素子の数がNである場合、各ユニットはN個の入力ラインを有してもよく、各ユニットは1つの検出器素子の光子計数率を受信する(より一般的には、各ユニットは、少なくともいくつかだが全てとは限らない検出器素子に接続されてもよい)。各ユニットは、特定の検出器素子によって出力される光子計数率が、スイッチを介して転送されるか、又は遮断されるかを柔軟に制御する複数のスイッチ(具体的には、検出器素子毎に1つのスイッチ)を備える。各ユニットは、接続を切り換える結合回路を備える。スイッチの状態に応じて、どの検出器素子が同じ結合回路に接続されるかを柔軟に制御することができる。各結合回路は、この結合回路につながるそれぞれのスイッチが閉鎖される、それらの検出器素子の全ての光子計数率を示すデータストリームを出力する。
【0024】
各スイッチは、メモリを通じて、具体的には、それぞれの1ビットメモリを通じて制御されてもよく、2つの可能なメモリの状態が、スイッチが閉鎖されるべきか開放されるべきかを定義する。
【0025】
制御装置は、複数の個別のマルチビットカウンタを有するスーパーピクセルカウンタユニットを更に備えてもよい。各結合回路は、マルチビットカウンタのうちの少なくとも1つに接続される。よって、マルチビットカウンタは、それぞれの結合回路に接続される全ての検出器素子の光子計数率に対応する数を出力する。更なる変形では、各結合回路は、一対のマルチビットカウンタに接続される。よって、マルチビットカウンタの総数は、M個の結合回路が存在する場合、少なくとも2Mでなければならない。一対のマルチビットカウンタは、交互の位相で動作し、即ち、これらのマルチビットカウンタの一方が結合回路から入射する光子計数率をカウントする一方、他方のマルチビットカウンタが読み出され、その逆もまた可である。このようにして、読出しに起因する時間遅延が低減又は回避される。
【0026】
最大M個のスーパーピクセルを提供するため、制御装置は、いくつかのM個の個別の結合回路と少なくともいくつかのM個(好ましくは、2M個)のマルチビットカウンタを備えてもよい。Nが検出器素子の数を示す場合、各結合回路は、検出器素子に接続される最大N個のプログラマブルスイッチを備える。Mはプログラマブルスイッチの数よりも小さく、Nよりも小さい。よって、プログラマブルスイッチと関連する1ビットメモリの総数は、N-Mであってもよい。動作時、M個未満のスーパーピクセルが所望されてもよく、その場合、それに応じて低減された数のマルチビットカウンタが読み出される。
【0027】
制御装置は、光スポットサイズ情報に従って、センサアレイのビニング及び/又は有効領域を設定してもよい、即ち、各検出器素子が個別に有効化及び無効化されてもよい。光スポットサイズ情報は概して、センサアレイ上で予測される光分布又はサイズを示す情報又は想定であってもよい。情報は、過去の測定値又は基準測定値に基づいてもよい。加えて、又は代わりに、光スポットサイズ情報は、現在使用されている照射波長及び/又は現在使用されている対物レンズから(少なくとも部分的に)得られてもよい。照射波長はPSFサイズに影響を及ぼし、具体的には、PSFサイズは照射波長の増大と共に増大し得る。どのように有効領域及びビニングがPSFサイズに応じて(ひいては、波長に応じて)設定されるかに関する詳細な説明を以下に述べる。PSFサイズは、対物レンズの背面開口径によっても影響を受ける。背面開口径が小さいほど、PSFサイズは大きい。いくつかの実施形態では、照射波長の増大と共に、及び/又は対物レンズがより小さな背面開口径の対物レンズに変更されるとき、センサアレイの有効領域が増大される、及び/又はスーパーピクセル毎の検出器素子の(平均)数が増大され、その逆もまた可である。即ち、照射波長の減少と共に、及び/又は対物レンズがより大きな背面開口径の対物レンズに変更されるとき、有効領域及び/又はスーパーピクセル毎の検出器素子の(平均)数が低下される。波長だけでなく背面開口径もPSFサイズに影響を及ぼすため、これらの要因に応じて、有効領域及びスーパーピクセルを調節することが有益であり得る。加えて、又は代わりに、スーパーピクセル毎の検出器素子の有効領域及び/又は平均数は、標本部分がセンサアレイ上に撮像される開口数に応じて設定されてもよい。また、開口数は、センサアレイ上の検出光スポットサイズに影響を及ぼす。同じスーパーピクセルに結合される検出器素子の平均数を調節することによって、送信されるデータストリームは管理可能に維持され、具体的には、後述するように一定である。
【0028】
制御装置は、複数の撮像モードをユーザに提供するように構成されてもよい。ユーザは、例えば、コンピュータを介して、撮像モードのうちの1つを選択してもよい。撮像モードは、後述するように、PSFオーバーサンプリングモード、ライン(又はアレイ)走査モード、視野撮像モード、及び共焦点検出モードのうちの少なくとも2つを備える。ビニング及び任意で有効なセンサ領域が、選択された撮像モードに応じて設定される。また、光学素子は、更に後述するように、撮像モードに応じて調節される。
【0029】
PSFオーバーサンプリングモード(画像走査モード)
制御装置は、PSFオーバーサンプリングモード(画像走査モードとも称される)を実行するように構成されてもよい。照射光が標本点上に集束され、標本点から発せられる検出光(例えば、蛍光)が、照射された標本面の共役面に配置されるセンサアレイに集束される。ピンホールは瞳面に配置されてもよい。検出光は、センサアレイ上に検出光スポットを形成する。光スポットのサイズ及び強度分布は、PSFを表す。光スポットの径は、1エアリーディスク径として理解することができる。PSFオーバーサンプリングモードでは、スーパーピクセルは、隣接するスーパーピクセル間の中心間距離が最大0.2エアリーディスク径以下となるように設定されてもよい。これにより、空間分解PSFにとって十分な数の検出点が確保される。また、センサアレイの有効領域は、PSFサイズに応じて設定される。いくつかの実施形態では、有効なセンサ領域は、PSFサイズの増大に合わせて増大する。具体的には、有効領域は、PSFサイズ(即ち、センサアレイ上のPSF又は光スポットのサイズ)に等しいサイズ又は径(10%又は20%の誤差内)に設定されてもよい。加えて、又は代わりに、スーパーピクセルの数は、PSFサイズに応じて設定されてもよい。同じスーパーピクセルにビニングされる光子計数検出器素子も、PSFサイズに応じて設定されてもよい。PSFサイズの増大と共に、同じスーパーピクセルに結合される検出器素子の数を増加させて、特に、過剰に高いデータレートを回避することができる。結合される検出器素子の数は、制御装置によって出力されるデータレート(即ち、スーパーピクセルの取得された測定データを含むデータ)が所定の最大レートを超過しない、及び/又は一定である、即ち、厳密に一定である、又は所定範囲、例えば、10%若しくは20%内で一定であるように調節されてもよい。このため、過剰データレートを回避しつつ、PSFをサンプリング/空間分解するのに十分な数のデータ点が確保される。同じスーパーピクセルに結合される検出器素子の数はまた、所望の最大計数率に応じて設定されてもよい。所望の最大計数率が大きいほど、多くの検出器素子が同じスーパーピクセルに結合され得る。計数率の下限が考慮されない場合、最大計数率は、センサの動的範囲としてみなすことができる。しかしながら、暗計数率は個々の検出器素子の光子計数率の下限を定義し得るため、いくつかの検出器素子を結合することで最小計数率が増加し、最大計数率を増加させながらも動的範囲を増加させない。
【0030】
同時に使用されるスーパーピクセルは、サイズ及び形状が変更されてもよい。PSFが中心で最大である(又はそのように予測される)場合、1つ以上の中央スーパーピクセル(複数可)は外側のスーパーピクセルよりも小さくてもよい。
【0031】
ライン走査モード及びアレイ走査モード
制御装置はまた、ライン走査モード(又はより一般的には、アレイ走査モード)を実行するように構成されてもよい。ライン走査モードでは、標本は、例えば、標本上に照射光を集束させる円柱レンズを用いることによって、細長照射光スポットで照射される。この照射は、センサアレイ上に細長検出光スポットを導く。制御装置は、細長スーパーピクセルが細長検出光スポットを横断又は直交する方向に形成されるように、光子計数検出器素子を共にビニングする。例えば、細長検出光スポットがセンサアレイ上の列を形成する場合、1つ以上の行の検出器素子が同じスーパーピクセルにビニングされる(行と列は互いに直交する)。細長検出光スポットで照射されない検出器素子は、無効にされてもよい。よって、ライン走査モードに使用されるビニングパターンは、PSFオーバーサンプリングモードで使用されるビニングパターンから大幅に変動する。
【0032】
ライン走査モードでは、細長照射光ビームが標本上で走査され、走査方向は、細長照射光スポットの長手方向を横断する、又は直交する。いくつかの測定値が、この走査中にセンサアレイを用いて連続的に記録され、標本画像がこれらの測定値から算出される。
【0033】
原則的には、走査時間及び画像取得時間の低減に関して、ライン走査モードと同様の利点を提供しつつ、細長照射光スポット以外の照射形状も使用され得る。このようなアレイ走査モードは、ドット又はライン以外の照射光パターンを使用する。例えば、グリッド又は複数のラインは、後で標本上で走査される照射光パターンとして使用されてもよい。
【0034】
アレイ走査モードでは、複数の照射光スポットは、標本にわたって同時に走査される。複数の照射光スポットは、円形、縦長、又はほぼ任意の他の形状を有していてもよい。
【0035】
視野撮像モード
視野撮像モードは、例えば、他の記載する撮像モードで記録される標本画像と比較して分解能又はSNRが低減された全体画像を記録するために使用されてもよい。視野撮像モードでは、標本の広視野画像が、センサアレイを用いて記録される。よって、光学素子は照射及び/又は検出ビーム路に対して除去又は挿入されて、単に標本点が照射されるのではなく、標本面(瞳面ではなく)がセンサアレイ上に撮像されるように確保してもよい。有効領域はセンサアレイ全体にわたっていてもよく、又は開口数又はズーム設定に応じて設定されてもよい。ビニングは、出力データレートを低減するために使用されてもよい。視野撮像モードの変形では、異なる標本部分のいくつかの広視野画像が連続的に記録されて、次いで、供に綴じ合わされて全体画像を形成する。
【0036】
共焦点検出モード
制御装置はまた、PSFオーバーサンプリングなしに共焦点検出モードを実行するように構成されてもよい。共焦点検出モードでは、照射光が標本点に集束され、この標本点から発せられる検出光がセンサアレイに誘導される。照射光を標本上に集束させ、標本からの検出光を受け取るために同じ対物レンズが使用される。ピンホールは瞳面に配置されてもよい。空間分解能を必要とせずに、検出器アレイに衝突する全ての検出光をできる限り精密に測定することが望ましい場合がある。この場合、全ての有効化された光子計数検出器素子は、1つのスーパーピクセルにビニングされてもよい。この動作モードではPSFオーバーサンプリングが行われないために、1つのスーパーピクセルで十分である。それでも、複数の光子計数検出器素子(SPAD)を使用し、それらを1つのスーパーピクセルにビニングすることは、従来の検出器を超える大きな利点を有する。SPADは、低光強度を測定するのに最適である。高い光パワーでは、単一SPADが飽和し得る。この不感時間中(光子検出後の電圧が、ダイオードの降伏電圧を超過するようにまだ回復していないとき)、単一SPADは別の光子を検出できない。しかしながら、複数のSPADを有するセンサアレイを使用することによって、最大計数率を増大させることができる。従って、SPADアレイは、動的範囲又は最大計数率における大きな欠点なしに、精度を高めることができる。
【0037】
光学素子の調節
制御装置はまた、選択された撮像モードに応じて、光学素子、例えば、レンズやミラーを調節するように構成されてもよい。共焦点検出モードでは、光学素子は、センサアレイ上の強度分布を均質化するように調節してもよい、例えば、移動又は変形させてもよい。具体的には、光学素子が、センサアレイ上で瞳を撮像するために、検出光のビーム路に組み入れられてもよい。更に、光学素子は、センサアレイ上の検出光スポットのサイズを調節する、又は調節するように移動させてもよい。よって、光学システムは、同じセンサアレイ上で標本面撮像と瞳撮像とを切り換えるように構成される。瞳画像は、標本画像(例えば、単に標本点が照射される場合)よりも均一な強度分布を有してもよい。従って、センサアレイ上に瞳を撮像することが好ましいことがあり得る。SPADアレイが使用されるために、従来の構造と比較して、個々の検出器素子上の過剰強度ピークの存在しない均一な強度分布がより適切である。衝突光パワーが比較的高い場合、瞳画像は、SNRを最適化するようにセンサ領域を均一に満たすべきである。衝突する検出光の光パワーが比較的低い場合、少数の検出素子上に光を集中させて、照射された検出素子上の強度を高めることが好ましい場合がある。そうしなければ、弱い信号強度が、検出器素子の暗騒音によって薄らいでしまう。従って、少なくとも検出光の特定のパワー範囲内で、制御装置は、ビームパワーの増加と共に増大するように、センサアレイ上の検出光スポットサイズを調節してもよい。センサアレイの有効領域は、このスポットサイズ調節に対応して調節される。
【0038】
共焦点撮像モード及び/又はPSFオーバーサンプリング撮像モードでは、検出光スポットサイズの調節はまた、検出器素子の飽和を回避する、又はSNRを増大するように実行されてもよい。検出器素子上の強度が、所定閾値(例えば、それを超えると、出力光子計数率が衝突強度に線形比例しなくなる値)を超過する場合、検出光スポットサイズを増大させて、検出器素子毎の衝突光パワーを低下させてもよい。
【0039】
検出光スポット(又は瞳画像)のサイズを調節するため、撮像レンズは、センサアレイの近傍に検出光を集束させるように調節されてもよい。例えば、撮像レンズは、センサアレイに対して合焦面を変位させるように移動されてもよい。センサアレイが焦点から遠くに外れるほど、検出光スポットが大きくなる。撮像レンズの設計に応じて、撮像レンズは、例えば、適応液体レンズの場合、移動させる代わりに、変形又はその他の方法で調節されてもよい。
【0040】
共焦点撮像モードとは全く異なり、PSFオーバーサンプリングモードでは、光学素子は、センサアレイ上に標本点を撮像して、PSFに関する空間情報を記録するように調節される。従って、共焦点検出モードからPSFオーバーサンプリングモードへの変更は、センサアレイ上への瞳撮像から標本面撮像への変更を示唆し得る。このような変化は、検出光のビーム路にベルトランレンズを挿入する、又は検出光のビーム路からベルトランレンズを取り外す、例えば、ベルトランレンズを異動させる、又は検出光をベルトランレンズに再方向付けることによって影響を及ぼすことができる。あるいは、位相分布又はSLM(空間光モデュレータ)を設定するための位相マスクが、照射又は検出瞳面に配置されてもよい。SLMは、具体的には、調節可能マイクロレンズのアレイ、回析光学素子、デジタルマイクロミラー装置などの調節可能ミラー、又は制御可能な液晶アレイによって形成されてもよい。SLMは同様に、スポットサイズ及び/又は強度分布を調節してもよい。
【0041】
また、照射ビーム路内の光学素子は、選択された撮像モードに応じて調節又は挿入されてもよい。例えば、PSFオーバーサンプリングモード又は共焦点撮像モードでは、照射光は標本点上に集束されるが、広視野撮像モードは、より大きな照射標本領域を必要とし、ライン走査モードは円柱レンズの導入を必要とする場合がある。
【0042】
FLIMの調節
本発明の顕微鏡はまた、FLIM(蛍光寿命撮像顕微鏡検査)にも適する。SPADは、FLIM測定にとって望ましい高時間分解能を提供する。蛍光寿命を判定するため、蛍光物質は反復光パルスで励起される。各パルス後、光子がセンサアレイに到達するまでの期間が判定される。よって、光子到着時間のヒストグラムが生成され、そこから蛍光寿命が取得される。高強度パルスを使用して、多数の光子を測定し、必要な測定時間を低減することが有益であろう。しかしながら、強度の増大と共に、同じSPADが第1の光子を登録した直後、第2の光子がSPADに到達し得る。第1の光子の検出は、第2の光子がSPADによって気づかれない不感時間を伴う。従って、光子到着時間のヒストグラムは、パイルアップ効果として知られる短時間に向かって歪曲する、又は偏る。この欠点は、強度分布を均質化し、センサアレイ上の光スポット径を増大させることによって、本発明の顕微鏡で回避することができる。これらの手段は、不感時間中に第2の光子がSPADに衝突する可能性を低下させる。制御装置は、検出光強度の増大と共に、検出光スポットサイズが増加して、任意選択的に瞳撮像が強度分布を均質化するように実行される追加の撮像モードとして、FLIMを提供するように構成されてもよい。スーパーピクセルは、時間-デジタルコンバータに接続して、レーザ期間毎に複数の光子を検出してもよい。
【0043】
別の実施形態
制御装置は、撮像パラメータ、特に、所望の分解能、フレームレート、及び/又はSNRを入力するようにユーザに促すように構成されてもよい。ユーザによる入力に応じて、次に、制御装置は、センサアレイ及び任意選択的に上述したような光学素子のビニング及び有効領域を調節する。具体的には、ビニング及び有効領域は、所望のフレームレートに応じて、結果として生じるデータレートを制限するように設定されてもよい。制御装置からデータを送信するための帯域幅は既知であるため、所望のフレームレートは、制御装置から出力されるデータレートの上限に変換することができる。ビニング及び有効領域は、結果として生じるデータ量に影響を及ぼし、従って、データレート要件を遵守するように調節することができる。
【0044】
追加の利点は、適応ビニングによって、空間分解能と取得速度とのバランスをとることである。画像走査顕微鏡で達成可能な分解能の向上から恩恵を得るため、特定のSNRが必要である。信号強度(例えば、センサアレイ上の強度)が低すぎる場合、従来、SNRを増大させるため、取得速度を低下させなければならない。しかしながら、適応ピクセルビニングは、所望の取得速度に有利なように分解能を低下させることができる。信号強度は、例えば、光子計数率であってもよく、先行する測定値(標本の走査中)又は基準測定値から得られてもよい。
【0045】
制御装置はまた、特に、センサアレイの有効領域が変更されるときにビニングを調節することによって、出力データレートを一定に保つように構成されてもよい(即ち、厳密に一定である、又は所定限度、例えば、10%又は20%内で一定である)。例えば、対物レンズの変更は、センサアレイ上の検出光スポットのサイズの変更を導くことができ、従って、有効領域を新たな光スポットサイズに調節することができ、それにより、ビニングが新たな有効領域サイズに調節されて、特に、データレートを一定に保つ。スーパーピクセルの数は一定に保たれてもよいが、異なるビニングパターンが使用されてもよい。スーパーピクセル用のマルチビットカウンタのビット数が変化するにつれ、一定のデータレートを確保するため、スーパーピクセルの数も変化し得る。
【0046】
光強度の増大と共に、不感時間中に光子が検出器素子に衝突するために、気づかれないままとなる可能性が高まる。よって、検出器素子からの測定結果は、超高強度で悪影響を及ぼされる。この問題に対処するため、検出器素子の感度は、例えば、降伏電圧を超える超過電圧を調節することによって調節されてもよい。センサアレイに衝突する光スポットは典型的には、非均一な光分布を有する。具体的には、PSFオーバーサンプリングモードでは、衝突光スポットは、中央で最大強度を有し、外側領域に向かって強度が低下していく。従って、中央検出器素子の感度は、外側検出器素子の感度と異なるレベルに設定されてもよい。具体的には、同じスーパーピクセルの光子計数検出器素子間で、異なる感度が設定されてもよい。感度は、例えば、PSFについての想定又は基準測定値に基づき、センサアレイ上の予測される強度分布に従って設定されてもよい。
【0047】
検出器素子から制御装置への信号ラインの長さが異なると、異なるスーパーピクセルの出力データストリームのタイミング遅延を招く場合がある。制御装置は、これらのタイミング遅延を調節又は補償するように構成されてもよい。較正マトリクスが、制御装置のストレージに保存されて、この目的で使用されてもよい。
【0048】
制御装置は複数の物理的出力ラインを備えてもよく、各出力ラインはそれぞれのスーパーピクセルに関連付けられる。次いで、出力ラインの数は、同時に使用可能な最大数のスーパーピクセルに対応させてもよい。一実施例として、出力ラインの数は、検出器素子の数の10%~40%であってもよい。
【0049】
光子計数検出器アレイ上で2つ以上の光スポットを同時に測定することができる。様々なPSFが異なる光スポットに対して適用されてもよく、したがって、光スポットはセンサアレイ上で異なるサイズを有してもよい。大きな光スポットに対するスーパーピクセルは、小さな光スポットに対するスーパーピクセルよりも多くの検出器素子を備えるように設定されてもよい。
【0050】
スキャナは、照射光で標本を走査する、及び/又はセンサアレイに向けて検出光を方向付けるように提供及び構成されてもよい。ビニングは、走査中、例えば、特定の標本領域から発せられる光の量に応じて調節されてもよい。走査が継続している間、走査から得られる情報を使用してビニングを調節してもよい。このような実行時の適応では、例えば、SPADの感度や照射光強度などの他のパラメータも調節されてもよい。
【0051】
上述の光学顕微鏡は、特に(レーザ)走査顕微鏡として形成され得る。あるいは、又は任意で、広視野顕微鏡として構成されてもよい。上述のセンサアレイ及び制御ユニットは、任意の対象物が照射され、対象物からの検出光が測定される多くの用途において上述の利点を実現する。本発明は、顕微鏡を必ずしも必要としない他のセンサ装置、例えば、材料分析、カメラ又は監視システム、天文又は製造監視などに適用されてもよい。
【0052】
光学顕微鏡は、標本ホルダと対物レンズ、特に、画像距離を無限に設定する無限対物レンズを備えることによって定義されてもよい。光学顕微鏡は、対物レンズの後ろ、即ち、対物レンズと検出器アレイとの間でビーム路に配置されて、対物レンズからの光を(中間)画像面に集束させる結像レンズ付きのチューブを更に備えてもよい。他の光学システムとは全く異なり、光学顕微鏡は少なくとも1つの中間画像面を生成する。光学顕微鏡は、光源が接続される照射ポート、例えば、1つ以上のレーザを更に備えてもよい。標本から発せられる検出光は、任意の種類の光、例えば、蛍光若しくは燐光、他の機構を通じて標本によって拡散又は影響される照射光、又は照射光によって少なくとも部分的に生じ得る、他の理由のために標本から発せられる光であってもよい。概して、標本光はまた、照射に関連しない作用により発せられてもよい。
【0053】
光学顕微鏡は、照射光を標本上に誘導又は集束させるように配置された対物レンズを備えてもよい。対物レンズはまた、具体的には、標本から発せられる検出光を受け取り、検出光をセンサアレイに向けて誘導するように配置されてもよい。一般的に、個別の照射及び検出対物レンズが使用され得る。光学顕微鏡は、対物レンズと照射源との間に配置されるスキャナを更に備えてもよい。制御装置は、標本上で走査される標本走査を実行するようにスキャナを制御する。任意で、スキャナはまた、対物レンズから光子計数検出器アレイに向けて検出光を方向付けてもよい(非走査構成)。スキャナは、光ビームを調節可能に偏向させるように構成された装置として理解されてもよい。スキャナは、ミラー、レンズ、又はプリズムなどの1つ以上の可動光学素子を備えてもよい。あるいは、スキャナはまた、音響光学効果に基づき、照射光を調節可能に偏向させてもよい。
【0054】
PSFは、どのように照射光及び検出光が光学顕微鏡又は光学システムによって誘導されるかを定義すると理解され得る。具体的には、PSFは照射PSFと検出PSFから成るとみなすことができ、照射PSFは、どのように光源の点が標本面に撮像されるかを定義し、検出PSFは、どのように標本面からの点がセンサアレイの面に撮像されるかを定義する。本明細書で使用されるとき、検出器アレイ上の検出スポットサイズは、画像走査技術又は共焦点撮像におけるPSFサイズと称することもできる。
【0055】
簡潔化のため「検出器素子」とも称される光子計数検出器素子は、具体的には、いわゆるガイガーモードで特に動作するSPAD(単一光子アバランシェダイオード)であってもよい。ガイガーモードでは、超過バイアス電圧によってダイオードの降伏電圧を超える電圧VOPが、SPADのダイオードに印加される。その結果、光子吸収が、電荷アバランシェ、ひいては計数可能な事象を引き起こし得る。それに応じて、センサアレイはSPADアレイと称されてもよい。
【0056】
制御装置は、単一ユニット又は分散システムとして形成され得るFPGA又は処理ユニットなどの電子構成要素を備えてもよい。制御装置の機能は、ソフトウェア及び/又はハードウェアとして実装されてもよい。制御装置又はその部品は、具体的には、センサアレイに隣接するオンチップユニットとして配置されてもよい。制御装置の各部はまた、ネットワーク上で光学顕微鏡の他の構成要素と通信するサーバ又はコンピュータアプリケーションを介して提供されてもよい。
【0057】
走査モードでは、標本点は、ピクセル滞留時間中に検出器素子が光子をカウントする標本の照射部分として定義されてもよい。ピクセル滞留時間の経過後、スキャナは、次の標本点として定義される標本の別の部分を照射する。
【0058】
分かりやすくするため、「光スポット」という表現は、本開示では、標本又はセンサアレイ上の光分布を指すために使用される場合が多い。より一般的には、「光スポット」は、光分布、例えば、リング状パターン、1つ以上のライン、又はスポット若しくはリングとして理解され得る。
【0059】
本発明の検出器は、本明細書に記載の光学顕微鏡で使用されてもよい。あるいは、検出器は、例えば、携帯/手持ち装置や医療装置又は車両センサにおける、距離測定、品質管理、監視のための他の光測定装置の一部であってもよい。任意で、検出器は、本明細書に記載の光学素子及び対象物を照射するための光源と組み合わせて使用されてもよく、検出器は、この対象物から発せられる光を測定するように配置されてもよい。本発明の光学顕微鏡の様々な実施形態の意図される使用は、本発明の方法の変形をもたらす。同様に、本発明の光学顕微鏡は、本発明の上述の例示的な方法を実行するように構成されてもよい。具体的には、制御装置は、本明細書に記載の方法工程を実行するために、センサアレイ又は光学顕微鏡の他の構成要素を制御するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明及び本発明の様々な他の特徴及び利点のより十分な理解は、限定ではなく単に例として示される概略的な図面と関連して、以下の説明によって容易に得られるであろう。図面中の同様の参照符号は、類似の又は略類似の構成要素を指すことができる。
【0061】
図1】本発明による光学顕微鏡の一実施形態の概略図である。
図2】ビニングを用いる第1の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図3】ビニングを用いる第2の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図4】ビニングを用いる第3の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図5】ビニングを用いる第4の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図6】ビニングを用いる第5の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図7】ビニングを用いる第6の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図8】ビニングを用いる第7の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図9】ビニングを用いる第8の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図10】ビニングを用いる第9の設定における図1の光学顕微鏡のセンサアレイの概略図である。
図11】本発明の光学顕微鏡のセンサアレイ及び制御ユニットの概略図である。
図12】本発明の方法を示す概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、本発明の光学顕微鏡100の一実施形態を概略的に示す。
【0063】
光学顕微鏡100は、照射光12を発する光源10を備える。光源10は、例えば、1つ以上のレーザを備えてもよい。例示的な光学顕微鏡100はレーザ走査顕微鏡として形成される。光学顕微鏡は、標本35上で照射光12を走査する1つ以上の可動ミラー又は他の可動光学素子を有するスキャナ25を備える。光学素子23、24が、光源10からスキャナ25を介して対物レンズ30まで照射光12を誘導するために使用されてもよい。対物レンズ30は照射光12を標本点上に集束させ、スキャナ25による走査運動により、異なる標本点が連続的に照射される。スキャナ25を用いて設定される照射光の2つの連続ビーム路を、参照符号12A及び12Bで示す。
【0064】
標本35は、例えば、蛍光又は燐光であり得る検出光15を射出する。照射光12はパルス出力されてもよく、具体的には、標本35の粒子の多光子励起をもたらしてもよい。それにより、検出光15は小さな標本点からのみ射出され、照射光12とは異なる(具体的には、より短い)波長を有する。
【0065】
図示される非走査構成では、検出光15は、照射光12と同じビーム路上で対物レンズ30、スキャナ25、及び光学素子23、24を介して誘導される。ビームスプリッタ22は、検出光15と照射光12を空間的に分離するために使用される。一実施例として、ビームスプリッタ22は、波長に応じて、衝突光を透過又は反射させるように構成されてもよい。次に、検出光15は、更なる光学素子31、32、33、34によってセンサアレイ60に誘導される。共焦点設計用の任意のピンホール18が、中間画像面に配置されてもよい。
【0066】
制御装置70は、センサアレイ60、光学素子33及び34、光源10、並びにスキャナ25を制御し、また、光学顕微鏡100の更なる構成要素を制御するように構成されてもよい。これらの構成要素はまとめて、光学顕微鏡100の一部であるが、一般的に他の撮像システムでも使用され得る光学アセンブリと称されてもよい。
【0067】
図2~4はそれぞれセンサアレイ60の拡大図である。制御装置と共に、センサアレイは、光学顕微鏡又は別の光測定装置に実装され得る、本発明の独立した態様とみなすことができる検出器を形成する。このように、本発明の制御装置の一実施形態は、光学顕微鏡の追加の構成要素を必要とせずに、図1に示すようにセンサアレイ60と制御装置70によって形成されてもよい。次に、図2~4を参照すると、センサアレイ60は、2次元アレイ、例えば、六角形又は矩形の構造内で互いに隣接して配置される複数の単一光子検出素子61を備える。単一光子計数検出器素子61は、具体的には、SPAD(単一光子アバランシェダイオード)のアレイとして形成されてもよい。センサアレイ60に衝突する検出光は、点線の円として示される検出光スポット16を形成する。制御装置は、検出素子61を個別に有効又は無効にするように構成される。無効化された検出素子は白で描かれ、参照符号63で示される。有効化された検出素子のみが、例えば、標本の画像を算出する、又はPSFを判定するために、更に処理される測定値(即ち、光子計数率)を出力する。制御装置は、任意の数の検出器素子61をスーパーピクセルに柔軟にビニングする、又は結合するように更に構成される。スーパーピクセルは、備えられる検出器素子の累積光子計数率を出力するマルチビットカウンタを備える、又はマルチビットカウンタに接続される。スーパーピクセルの数と、各スーパーピクセル内の検出器素子の数は、制御装置によって柔軟に設定することができる。
【0068】
図2の実施例では、検出光スポット16によって照射された検出器素子62が有効化され、ビニングされず、その結果、37の光子計数率となる。図2に示すように、相当数の非照射検出器素子を無効化することが有益である。有効化された検出器素子62によって画定されるセンサアレイ60の領域は、「有効領域」とも称される。
【0069】
図3は、いくつかの有効化された検出器素子62が、スーパーピクセル65にビニングされるケースを示す。各スーパーピクセル65は、7個の検出器素子62を備える。異なる充填パターン(スラッシュ、チェック、ダイヤモンドなど)を有するスーパーピクセル65が示される。ここでも、照射されない検出器素子63は無効化される。図3では、検出光スポット16が図2のものより大きいため、より多くの検出器素子62が有効化される。しかしながら、19個のスーパーピクセル65へのビニングにより、19個の光子計数率のみが出力され、従って、データレートは比較的低い。
【0070】
別の実施例として、図4は、全て又はほぼ全ての検出器素子61が照射され、有効化され、いくつかのスーパーピクセル65にビニングされるケースを示す。このため、全て又はほぼ全ての検出器素子61の光子計数率をなお使用しつつ、データレートを低減することができる。
【0071】
図5は、検出光スポット/分布16が、検出器アレイ60の一部を照射するケースを示す。検出器アレイ60の有効領域は、検出光スポット16に合致するように調節される。ビニングパターンは、1つの中央スーパーピクセル65といくつかの周囲のリング状スーパーピクセル65とを備えるように設定される。リング状スーパーピクセル65は、PSFが回転方向に不変である場合、特に適切である。リング状スーパーピクセル65は直径が異なる。図示される実施例では、各リングの厚さは、1層の検出器素子61によって画定される。しかしながら、あるいは、外側リングはより厚く、2つ以上の層の検出器素子61を備えていてもよい。
【0072】
図6に示す別のビニング構成では、様々なサイズのスーパーピクセルが設定される。中心点を中心とした内側のスーパーピクセルは、中心点から離れたスーパーピクセル65A~65Dよりも小さいサイズを有していてもよい。
【0073】
図7の実施例では、検出器アレイ60は、それぞれのスーパーピクセル65A~65Dを構成する4つの四分円に分割されている。スーパーピクセル65A~65Dは、互いに直接隣接してもよい、又は非作動の検出器素子63によって分離されてもよい。図8は、スーパーピクセルの様々な形状を使用するビニングパターンを示す。内側領域は、同様のサイズのいくつかのスーパーピクセル65C、65D、例えば、いくつかの円形又は六角形スーパーピクセル65C、65Dに分割される。外側領域はリング状スーパーピクセル65A、65Bに分割される。リング状スーパーピクセル65Aは、リング中心により近いリング状スーパーピクセル65Bよりも大きい厚さを有するように設定されてもよい。
【0074】
図9は、ライン状照射で使用され得るビニングパターンを示す。1つ以上の長手照射スポットが、例えば、1つ以上の円柱レンズを用いて標本面で生成される場合、1つ以上の長手検出スポット16A、16Bが検出器アレイ60上に形成されてもよい。図9では、検出器素子の複数の隣接する列(又はライン)が、同じスーパーピクセル65A又は65Bにビニングされている。よって、各スーパーピクセル65A及び65Bはライン形状を有し、ラインの厚さは柔軟に設定されてもよい。図9のスーパーピクセル65A、65Bは、例えば、波長に応じて分散される場合に特定の波長を選択するため、他の照射パターンで使用されてもよい。
【0075】
図10は、ビニングパターンの柔軟性を更に示す。必ずしも隣接する検出器素子のみが同じスーパーピクセルにビニングされる必要はない。その代わりに、スーパーピクセル65B又は65Cは、離間した検出器素子から成ってもよい。例えば、第1のスーパーピクセル65Aはラインを形成してもよく、第2のスーパーピクセル65Bは互いに離間した2つの群の検出器素子によって形成されてもよく、第3のスーパーピクセル65Cは互いに離間したいくつかの個々の検出器素子によって形成されてもよい。このようなスーパーピクセルのうちの1つ以上が較正測定のために使用されてもよく、他のスーパーピクセルが実際の標本測定のために割り当てられる。特に、異なる標本位置の場合、較正測定は、離間した検出器素子を含むスーパーピクセルを用いて実行されてもよい。
【0076】
制御装置70は、SNRを増大させ、データレートを許容可能な境界内に維持し、所望のフレームレートを確保する(フレーム毎に限られた量のデータを要する)ように、ビニングパターン及び有効領域を設定するように構成される。更に、制御装置70は、センサアレイ60上の検出光スポット16のサイズを修正し、検出光スポット16内の強度分布に影響を及ぼすことができる。この目的で、制御装置70は顕微鏡の光学素子を調節する。有効なビニング及び有効化パターンを説明する前に、まず、この調節について記載する。
【0077】
図1に示すように、検出光15のビーム路内の光学素子33、34は、検出光15に影響を及ぼすように調節可能である。光学素子34は、センサアレイ60の前方の撮像レンズであってもよい。光学素子は、センサアレイ60上に検出光15を集束させて、図2~4に示す検出光スポットを生成する。光学素子34を調節することによって、検出光15の焦点は、センサアレイ60に対して移動する。その結果、検出光スポットは焦点外れとなり、拡大される(図1Aに示す)。光学素子34は、検出光15の伝搬方向にシフトされてもよい。あるいは、光学素子34は、焦点位置を変更するように変形する調節可能(液体)レンズであってもよい。
【0078】
光学素子33はベルトランレンズ33であってもよい。図1及び1Aに示す状況では、ベルトランレンズ33は、検出光15のビーム路を外れるように移動する。制御装置はベルトランレンズ33をビーム路内へ移動させ、図1Bに示すようなケースをもたらしてもよい。ベルトランレンズ33は、センサアレイ60の面に瞳面を撮像する。光学素子34を調節すると、センサアレイ60上に結果として生じる検出光スポットのサイズが変更される。図1Bの検出光スポットは、図1の検出光スポットと異なる、多くの場合、より均一な強度分布を有する。更に、検出ビームスポットのサイズは、図1Bに示す場合のように、有効に変更することができる。
【0079】
図11は、本発明の光学顕微鏡の実施形態のセンサアレイ60と制御ユニット70の構造を概略的に示す。センサアレイ60は多数のN1-N2個の検出器素子を備え、従って、例えば、処理ユニット71へのそれぞれの信号ラインを介して、多数のN1-N2個の光子計数率を出力するように構成される。処理ユニット71は制御装置70の一部であり、同じIC内又は同じ回路基板上でセンサアレイ60と共に形成される。処理ユニット71は、多数のM個の個々のユニット71aを備える。このようなユニット71aのうちの1つの設計を、図11に概略的に示す。残りのユニット71aは同様に形成されてもよい。ユニット71aは、すべての検出器素子がそれぞれのスイッチ71cを介して接続される結合回路71dを含む。よって、各ユニット71aは、多数のN1-N2個の入力ラインと同数のスイッチ71cとを有し、どの検出器素子が結合回路71dに接続されるかを柔軟に制御する。結合回路71dは、受信した信号を示す結合信号を出力する。結合回路71dは、スーパーピクセルカウンタユニット72につながる1つのみの出力ラインを有していてもよい。結合回路71dは、検出器素子出力によって制御されるプルアップ又はプルダウンドライバを有する共有バスとして、OR機能として、XOR機能又は任意のその他の結合機能として実装されてもよい。各スイッチ71cは、1ビット(それぞれのスイッチ71cの「オン」及び「オフ」状態を示す)を有し得るそれぞれのメモリ71bを介して制御されてもよい。従って、各結合回路71dは、多数のN1-N2個の1ビットメモリ71bを備えてもよい。各スイッチ71cは、ANDゲート又は並列PMOS+NMOSの組み合わせとして実装されてもよい。個々のメモリ素子は一緒に接続されて、シフトレジスタを形成してもよい。結合回路71dの出力は、スーパーピクセルカウンタユニット72につながる。従って、処理ユニット71からの多数のM個の出力ラインが存在し、Mは積N1-N2より小さい。スーパーピクセルカウンタユニット72は、結合回路71d毎に少なくとも1つ、好ましくは2つのマルチビットカウンタを備える。結合回路71d毎に少なくとも1つのマルチビットカウンタの場合、スーパーピクセルカウンタユニット72は、それぞれのスイッチ71cを介してそれぞれの結合回路71dに接続される全ての検出器素子の総光子計数率を示す光子計数率を出力することができる。
【0080】
スーパーピクセルカウンタユニット72が結合回路71d毎に2つのマルチビットカウンタを備える場合、滞留時間中の並列計数及び読出しが可能である。つまり、1つのマルチビットカウンタが読み出される(それぞれの結合回路によって受信及び出力される更なる信号をカウントしない)間、同じ結合回路に接続されるもう1つのマルチビットカウンタが有効化されて、その結合回路によって受信及び出力される信号をカウントする。このため、連続的な読出しにより、スーパーピクセル間で滞留時間中の遅延が低減される。
【0081】
マルチビットカウンタの読出しは、全てのマルチビットカウンタ(よって、全てのスーパーピクセル)の一部のみが読み出されて、データレートを低減するように連続的であってもよい。
【0082】
上述の顕微鏡の柔軟性と、制御装置を用いて設定される好適な動作モードの有益な効果を、図12を参照して説明する。図12は、本発明の例示的な方法の工程を示すフローチャートである。特に明記しない限り、工程は、制御装置によって、具体的には、上述の構成要素(例えば、光学素子、光源、及びセンサアレイ)を調節することによって実行されてもよい。
【0083】
工程S1では、撮像モードと撮像パラメータの選択が、ユーザに対して提供又は表示される。ユーザの選択に応じて、方法は、選択された撮像モードS2、S6、S11、又はS15に続く。
【0084】
「PSFオーバーサンプリングモード」S2が選択される場合、方法は工程S3~S5に続く。これらの工程の順番は変更されてもよく、一部又は全部の工程が同時に実行されてもよく、又は工程のうちの1つ若しくは2つが省略されてもよい。工程S3では、光学素子33、34は、センサアレイ60上に標本面を鮮明に撮像するように調節される。上述したように、瞳撮像用のベルトランレンズは省略されてもよく、調節可能集束レンズが、標本面の鮮明な画像がセンサアレイ上に生成されるように設定されてもよい。鮮明な画像は、システムのPSFを示すサイズ及び強度分布を有する検出光スポットを構成する。光学素子33、34は工程S3で更に調節されて、検出光ビームの強度/パワーに応じて、センサアレイ60上の検出光スポットサイズを適切なサイズに調節する。過剰強度は検出器素子の飽和を招く、即ち、出力光子計数率が、衝突光子速度又は強度の線形関係から逸脱する。飽和閾値は、出力光子計数率が、衝突光強度との線形関係から10%超逸脱する光強度として定義されてもよい。飽和を回避するため、光学素子33、34は、検出光ビームのパワーの増大と共に検出光スポットサイズを増大させることによって、検出器素子の強度を飽和閾値未満に保つように制御される。工程S4では、センサアレイの有効領域が、センサアレイ上の検出スポットサイズに応じて設定される。具体的には、有効領域は、例えば、PSFサイズの20%又は30%以下の偏差でスポットサイズと合致させてもよい。検出器素子のスーパーピクセルへのビニングは、工程S5で、選択された撮像パラメータ、例えば、所望のフレームレートに応じて設定される。制御ユニットからのデータ送信のための所望のフレームレート及び最大帯域幅は、ピクセル滞留時間中に出力され得る測定データの上限閾値に影響を及ぼす、又は上限閾値を定義する。スーパーピクセルの数は、上記の上限閾値に一致する(又は超えない)ように設定される。
【0085】
「共焦点検出モード」S6が選択される場合、方法は工程S7~S10に続く。ここでも、工程S7~S10の順番は変更されてもよく、一部又は全部の工程が同時に実行されてもよく、又はこれら工程のうちの1つ以上が省略されてもよい。工程S7及びS8では、光学素子33、34は、検出光ビームのパワー又はエネルギーに応じて光スポットサイズを設定し、センサアレイ全体で強度分布を均質化するように調節される。スポットサイズの低減は、少数の検出器素子が、より高い強度又は光パワーで照射されることを意味する。低強度の場合、検出器素子の暗騒音がかなり大きくなり、従って、スポットサイズが低減される場合にSNRを増大させる場合がある。高強度の場合、対照的に、検出器素子は飽和する場合がある(出力光子計数率はもはや線形に衝突強度に依存しない。更に、総SNRが悪化する)。従って、高強度の場合、スポットサイズが増大されて、検出器素子上の過剰に高い強度を回避する。よって、制御装置は、(算出されるか、又は以前に測定された)光ビームのパワー又はエネルギーに応じて設定されるスポットサイズを算出する所定機能を利用してもよい。強度の増加に伴い、この機能は、増大した設定スポットサイズを出力する。共焦点検出モードでは、単に検出器素子からの総出力が関係する一方、検出器素子全体の強度分布は分析されない。従って、検出器素子全体の強度分布は、他の基準を満たすように影響されてもよい。具体的には、過剰強度に起因するいくつかの検出器素子の飽和を回避するため、光学素子33、34は、強度分布をより均一にするように調節される。個々の検出器素子からの空間情報は使用されないため、センサアレイ上の鮮明な画像は要求されない。上述したように、集束レンズ34はスポットサイズを変更するように調節されてもよく、瞳画像を生成し(より均一な強度分布を有し得る)、スポットサイズに影響を及ぼすために、ベルトランレンズ33を任意選択的に使用してもよい。鮮明な撮像を提供しつつスポットサイズを調節させることができるズーム光学部品とは対照的に、2つのみの光学素子33、34を用いる調節は複雑さが大幅に低下し、可能性としては、光損失とコストが低減される。このように単純化された光学部品の使用は、SPADセンサアレイ60によって提供される柔軟性により可能となる。上述の工程S7及びS8は、1工程として実行されてもよい。以下の工程S9では、有効領域は、センサアレイ上の光スポットサイズに合致するように設定される。あるいは、有効領域は、例えば、光スポットサイズの最大20%の誤差分だけ光スポットサイズより大きなサイズに設定されてもよい。より簡易な変形では、全ての検出器素子が有効化されてもよい。工程S10では、全ての有効化された検出器素子が、同じスーパーピクセルにビニングされる。従って、スーパーピクセルの出力値は、全ての有効化された検出器素子の総光子計数率である。この手順はデータレートを低下させるが、共焦点撮像に関連する情報は失われない。
【0086】
「ライン走査モード」S11が選択される場合、方法は工程S12~S14に続く。ここでも、工程S12~S14の順番は変更されてもよく、一部又は全部の工程が同時に実行されてもよく、又はこれら工程のうちの1つ以上が省略されてもよい。ライン走査モードでは、照射ビーム路内の光学部品は、検査される標本面に照射ラインを提供するように調節される。例えば、円柱レンズが照射ビーム路に挿入されてもよい。工程S12では、光学素子33、34が、センサアレイ上に標本面を鮮明に撮像するように調節される。標本のライン又は細長領域が照射されると、検出光がこの照射された標本領域から射出され、センサアレイ上に細長又はライン状検出光スポットを導く。工程S13では、有効領域は、少なくともいくつかの非照射検出器素子が無効化されるように、細長検出光スポットに応じて設定される。具体的には、照射された検出器素子のみが有効化される。工程S14はビニングパターンを設定する。細長検出光スポットの長手方向に垂直な方向に互いに隣接する検出器素子は、同じスーパーピクセルにビニングされる。対照的に、長手方向に互いに隣接する検出器素子は同じスーパーピクセルにビニングされない(あるいは、分解能を犠牲にしてフレームレートを更に増大するため、長手方向に隣接する2又は3つの検出器素子のみがビニングされる)。
【0087】
「視野走査/撮像モード」S15が選択される場合、方法は工程S16~S19に続く。工程S16では、光学素子が、センサアレイ上に標本面を鮮明に撮像するように調節される。工程S17では、例えば、標本点のみが照射されるように照射が設定されるPSFオーバーサンプリングモードS2又は共焦点検出モードS6とは対照的に、広視野照射が設定される。次に、工程S18では、有効領域は、現在挿入されている対物レンズ、広視野照射サイズ、又はズーム設定に依存し得る、センサアレイ上の照射領域に対応するように設定される。工程S19では、例えば、現在のズーム位置に応じて選択され得るビニングパターンが設定される。
【0088】
上述の方法の変形例では、光学素子33、34以外の光学素子が提供され、スポットサイズ及び/又は光分布を変更するように調節されてもよい。更なる変形例は、追加の撮像モードを提供してもよい、又は3つの上述の撮像モードのうちの全てを提供しなくてもよい。
【0089】
本発明の方法、検出器、及び光学顕微鏡は、複雑かつコストのかかるズーム光学部品を必要とせずに、特に良好な画像品質と同時に高い柔軟性を提供する。
【符号の説明】
【0090】
10 光源
12 照射光
12A、12B 照射光12のビーム路
15 検出光
16、16A、16B センサアレイ60上の検出光スポット(サイズ)/PSF
18 ピンホール
22 ビームスプリッタ
23、24 光学素子
25 スキャナ
30 対物レンズ
31、32 光学素子
33 光学素子、ベルトランレンズ
34 光学素子、調節可能レンズ
35 標本
60 センサアレイ
61 光子計数検出器素子
62 有効化された光子計数検出器素子
63 無効化された光子計数検出器素子
65、65A~65D スーパーピクセル
70 制御装置
71 制御装置70の処理ユニット
71a 処理ユニット71のユニット
71b ユニット71aのメモリ
71c ユニット71aのスイッチ
71d ユニット71aの結合回路
100 光学顕微鏡
N1-N2 検出器素子61の数;処理ユニット71への入力ラインの数
M ユニット71aの数;処理ユニット71の出力ラインの数
S1~S19 方法工程

図1
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12