(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 17/00 20060101AFI20240425BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20240425BHJP
A43B 17/08 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
A43B17/00 Z
A43B13/14 B
A43B17/08
(21)【出願番号】P 2022096414
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2022-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509292010
【氏名又は名称】軽部 央
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】軽部 央
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】村上 聡
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-118524(JP,A)
【文献】特開2002-142806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B17/00-17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏に接する表面全体に複数の凸状部が溝を介して並んで形成されており、
前記凸状部の上面が平面状であり、
前記凸状部の頂部から前記溝の底部までが傾斜部で接続されており、
前記凸状部の高さHが0.05mm~2.0mmであり、
前記溝の幅W1が1.0mm~2.0mmであり、
前記傾斜部の幅W2が式:W2<W1を満た
し、
前記凸状部が菱形であり、前記菱形の短い対角線D2、前記溝の幅W1及び前記傾斜部の幅W2が式:W2<W1<D2を満たすこと、
を特徴とするインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に装入して使用する中敷材であるインソールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、靴の中敷材であるインソールとしては、単一素材で足型に切断した平面形状のものや、足裏の形状に合わせて足型凹面にしたカップインソール等がある。
【0003】
例えば、特許文献1(実開昭54-37340号)には、多層構成にして空間部を形成しクッション性及び通気性を向上させることを目的とした「履物底」が提案されている。
【0004】
また、特許文献2(実公平4-18403号)では、3層以上重ねてなる多層カップインソールにおいて、非通気性で反発性素材の合成樹脂製である下層の足型凹面にした上面に、中央から側周囲へ連通して開口する溝を概略放射状で幅を広狭適宜に形成し、その上に不織布等の通気性素材で底面をフラットに形成した中間層を積層接着したものが提案されている。
【0005】
特許文献1及び2では、前記溝を、足指が位置する前半部ではこの前半部が加圧成型により肉薄で硬化しているため溝幅を広めに形成して屈曲性(柔軟性)と通気性を良好にし、踵部が位置する後半部ではこの後半部が肉厚であり保形性が低下しがちなため溝幅を狭く形成して保形性を損ねないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭54-37340号
【文献】実公平4-18403号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、足裏全体において通気性が十分とは言えず、ムレ易く、また、足裏とインソールとの間のグリップが不十分であり、即ち通気性及びグリップ性の観点から改善の余地があった。特に運動する者やアスリートにとっては、通気性及びグリップ性の両立が重要である。
【0008】
そこで、本発明は、足裏全体において通気性が十分でムレにくく、また、足裏とインソールとの間のグリップ性が十分なインソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決すべく、本発明は、
表面に複数の凸状部が溝を介して並んで形成されており、
前記前記凸状部の頂部から前記溝の底部までが傾斜部で接続されていること、
を特徴とするインソール、を提供する。
【0010】
上記の本発明のインソールにおいては、
前記凸状部が、菱形、三角形又は円形であること、
が好ましい。
【0011】
また上記の本発明のインソールにおいては、
前記凸状部の高さHが0.05mm~2.0mmであり、
前記溝の幅W1が1.0mm~2.0mmであり、
前記傾斜部の幅W2が式:W2<W1を満たすこと、
が好ましい。
【0012】
本発明に係るインソールは、サンダル、スポーツシューズ、ビジネスシューズ等の種々の履物に適用可能である。なかでもスポーツシューズ用に最適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記のような構成を有することによって、足裏全体において通気性が十分でムレにくく、また、足裏とインソールとの間のグリップ性が十分なインソールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にインソール1の表面の様子を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1のインソール1の凸状部4及び溝6の部分の概略平面図である。
【
図3】
図1のA-A線概略断面であり、インソール1の表面足裏側に設けられた凸状部4及び溝6の構造を説明するための概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るインソールの代表的な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、本発明はこれら図面に限定されるものではない。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、形状、寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もある。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態にインソール1の表面の様子を示す概略斜視図を示す。
図1に示すように、本実施形態に係るインソール1は、後方部分2において、左右及び後方の壁がやや起立しており、いわゆる「カップインソール」を構成している。
【0017】
また、インソール1の表面(即ち使用者の足裏に接する面)には、全体において、複数の凸状部4が溝6を介して並んで形成されている。そして、凸状部4の上面から溝6の底部6aまでが、凸状部4の全周にわたって傾斜部4aで接続されている。
【0018】
つぎに、
図2は、
図1のインソール1の凸状部4及び溝6の部分の概略平面図である。本実施形態の凸状部4は菱形を有しており、上面が平面状である。インソール1においては、
図1に示すように凸状部4の全周囲を囲うように溝6が設けられている。
【0019】
菱形の凸状部4については、長い対角線D1と短い対角線D2の2つの対角線を有しているが、長い対角線D1が概ねインソール1の長さ方向Lに平行になるように、全ての凸状部4が配置されている。また、溝6も凸状部4の全周囲を囲うように設けられている。
【0020】
このように、傾斜部4aを有する菱形の凸状部4及び溝6が設けられていることにより、インソール1が使用者の足裏に接した場合に、凸状部4でグリップ性が担保され、また、溝6の部分で通気性が担保され、足裏のムレを効果的に抑制できる。
【0021】
次に、
図3に、
図1のA-A線概略断面、即ちインソール1の後方部分2の表面足裏側に設けられた凸状部4及び溝6の構造を説明するための概略部分縦断面図を示す。
【0022】
本実施形態においては、凸状部4の高さ(即ち、溝6の底部6aから凸状部4の上面(頂点)までの距離)Hが0.05mm~2.0mmである。0.05mm以上であれば、十分な溝6を確保できて十分な通気性が得られ、また、凸状部4の傾斜部4a及びエッジ部分を確保し易く、十分なグリップ性が得られる。2.0mm以下であると、凸状部4が安定感を有し、グリップ性を確保できる。
【0023】
また、溝6(底部6a)の幅W1が1.0mm~2.0mmであるのが好ましい。1.0mm以上であれば、溝6の十分な空間を確保できて通気性を担保することができ、また、2.0mm以下であると、溝6及び底部6aが幅広くなり過ぎず、凸状部4の傾斜部4a及びエッジ部分を確保し易く、十分なグリップ性が得られる。
【0024】
更に、傾斜部4aの幅W2と溝6(底部6a)の幅W1とは、溝6及び底部6aが幅広くなり過ぎず、凸状部4の傾斜部4a及びエッジ部分を確保し易く、十分なグリップ性が得られるという観点から、式:W2<W1を満たすこと、が好ましい。
【0025】
なお、凸状部4の面積については、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限は無いが、短い対角線D2が溝6(底部6a)の幅W1及び傾斜部4aの幅W2に対して十分に長く、式:W2<W1<D2を満たしていればよい。
【0026】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それらも本発明に含まれる。上記実施形態では凸状部4が菱形である場合について説明したが、凸状部は、正方形、三角形又は円形であってもよい。
【0027】
また、上記実施形態においては、インソール1が単一の層で構成されている態様について説明したが、複数の層で形成されていてもよく、その場合は、使用者の足裏に接する最表面に、上記実施形態で説明したインソール1が上層として配置されればよい。例えば、中間層や下層を有する3層構造のインストールであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 インソール
2 後方部分
4 凸状部
4a 傾斜部
6 溝
6a 底部