(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】ブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/155 20060101AFI20240425BHJP
【FI】
A23B7/155
(21)【出願番号】P 2023145695
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2023-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521327367
【氏名又は名称】株式会社 GEEKSTILL
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【氏名又は名称】村中 克年
(73)【特許権者】
【識別番号】520437892
【氏名又は名称】坂本 裕子
(72)【発明者】
【氏名】岸川 勇太
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213464(JP,A)
【文献】山ぶどう新芽のピクルスシナモン&クローブのセット, [online],2021年06月21日,[2024年1月12日検索], Retrieved from the Internet:<URL: https://web.archive.org/web/20210621221516/https://shop.kojiyamotomiya.com/p/item-detail/detail/i132.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母菌の作用の下でブドウの花蕾を塩水に所定期間浸漬して発酵させる第1の浸漬工程と、
前記所定期間の経過により前記塩水から前記花蕾を取り出してピクルス液に浸漬する第2の浸漬工程とを有することを特徴とするブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載するブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法において、
前記第1の浸漬工程における発酵は、前記ブドウの花蕾に付着している酵母菌を利用して行わせるものであることを特徴とするブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載するブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法において、
前記第1の浸漬工程における発酵は、前記塩水内に酵母菌を付与して行わせるものであることを特徴とするブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載するブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法において、
前記塩水の濃度を5~7%としたことを特徴とするブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物として処理されていた多数の小さな巨峰の実を有効利用した巨峰ベビーを原料とする食品は、特許文献1に開示されている。
【0003】
ところが、同様に廃棄処理されているブドウの花蕾を利用した食品は、未だに提案されていない。そこで、廃棄処理されているブドウの花蕾を利用した食品を提供できれば環境負荷を減ずる観点からも非常に有用であり、喫緊の課題とされている環境破壊を防止する観点からも望ましく、SDGsの趣旨に沿う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、廃棄物としていたブドウの花蕾を食品として有効利用することができるブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
酵母菌の作用の下でブドウの花蕾を塩水に所定期間浸漬して発酵させる第1の浸漬工程と、
前記所定期間の経過により前記塩水から前記花蕾を取り出してピクルス液に浸漬する第2の浸漬工程とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載するブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法において、
前記第1の浸漬工程における発酵は、前記ブドウの花蕾に付着している酵母菌を利用して行わせるものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の態様は、
第1の態様に記載するブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法において、
前記第1の浸漬工程における発酵は、前記塩水内に酵母菌を付与して行わせるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の態様は、
第1~第3の態様のいずれかに記載するブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法において、
前記塩水の濃度を5~7%としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来廃棄していたブドウの花蕾を食品(ピクルス)として有効利用することができる。この結果、その分環境負荷を低減することができ、地球環境の良好な維持にも貢献することができる。また、廃棄物の有効利用という観点から産業の発達にも貢献(法1条)出来る。さらに、フランス料理等の添え物としての用途も考えられ、これに伴う需要が喚起されて商業的な成功も充分に期待し得るものとなる。また、本発明に係るピクルスは、オレイン酸等の不飽和脂肪酸を含み抗酸化作用があることが分かった。カロリーは33kcal/100gと低カロリーであるため、優れた健康食品となる。さらに、検査の結果、充分食用に供し得る点も確認できた。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本形態に係るブドウの花蕾(以下、本形態において「花蕾」とは、ブドウの花蕾を意味する。)を用いたピクルスの製造方法は次の二つの工程を有する。すなわち、第1の浸漬工程と、第2の浸漬工程である。第1の浸漬工程は、酵母菌の作用の下で花蕾を塩水に所定期間浸漬して発酵させる工程である。第2の浸漬工程は、前記所定期間の経過により前記塩水から前記花蕾を取り出してピクルス液に浸漬する工程である。
【0012】
ここで、第1の工程における所定期間は、花蕾の発酵期間を規定する期間であり、この期間には花蕾の発酵が進行する。したがって、短すぎると発酵が充分に進行せず、また長すぎると花蕾の形状が崩れる等の不都合が発生するので、前記所定期間は花蕾の発酵状態に基づき決めれば良いが、1週間程度が適当である。
【0013】
また、花蕾の発酵には、酵母菌が必要であるが、今回、ブドウの花蕾には酵母菌が付着していることを確認した。そこで、本形態では、外部から酵母菌を加えることなく塩水に花蕾を浸漬するだけにした。これでも花蕾に付着している酵母菌の作用で花蕾の発酵を進行させることが可能であることを確認できた。そこで、本形態の第1工程ではでは、単に花蕾を塩水に浸漬するだけとした。このように、花蕾そのものに付着している酵母菌を利用した場合、外部から酵母菌を付与する作業を省略することができるので、その分合理的な当該ピクルスの製造を実行し得る。
【0014】
第1の浸漬工程における塩水の濃度で最終食品であるピクルスの塩味が変わる。そこで、塩水の濃度は、最終食品であるピクルスの塩味をどの程度にするかという観点から決めれば良い。平均的な味覚を参考にすれば3~7%、好適には5%程度が好適である。
【0015】
本発明は、前記第1の浸漬工程において、花蕾を浸漬した塩水に酵母菌を外部から追加することを禁ずるものではない。場合によっては、塩水に酵母菌を混入することも可能である。
【0016】
かかる本形態によれば食品としてのピクルスを製造することができるが、このピクルスは、例えばフランス料理等の添え物として好適なものであり、また〔表1〕に示すように、オレイン酸等の不飽和脂肪酸を含み抗酸化作用があることが分かった。また、カロリーは33kcal/100gと低カロリーであるため、優れた健康食品となる。
【要約】
【課題】 廃棄物としていたブドウの花蕾を有効利用することができるブドウの花蕾を用いたピクルスの製造方法を提供する。
【解決手段】 酵母菌の作用の下でブドウの花蕾を塩水に所定期間浸漬して発酵させる第1の浸漬工程と、前記所定期間の経過により前記塩水から前記花蕾を取り出してピクルス液に浸漬する第2の浸漬工程とを有するとともに、前記第1の浸漬工程における発酵は、前記ブドウの花蕾に付着している酵母菌を利用して行わせるものとした。
【選択図】 なし
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