(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車載用制御装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/093 20060101AFI20240425BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20240425BHJP
H02H 3/02 20060101ALI20240425BHJP
H02H 3/05 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
H02H3/093
H02H3/087
H02H3/02 G
H02H3/05 D
(21)【出願番号】P 2023180749
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2023523461の分割
【原出願日】2022-05-23
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2021087410
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 純司
(72)【発明者】
【氏名】川上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成治
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/026859(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/010007(WO,A1)
【文献】特開2009-232588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/093
H02H 3/087
H02H 3/02
H02H 3/05
H02J 1/00
H02J 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、
負荷と、前記電源部に基づく電力を前記負荷に供給する電力路と、前記電力路に設けられるリレーと、前記電力路
において前記リレーに対して直列に設けられる遮断部と、を備える車載システムに用いられる車載用制御装置であって、
前記遮断部
を遮断状態に切り替える制御部を備え、
前記制御部は、前記遮断部を第1遮断特性に基づいて前記遮断状態に切り替え、
前記リレーは、第2遮断特性に基づいてオフ状態とされ、
前記第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、電流値と遮断するまでの時間との対応関係を定めた特性であり、
前記第2遮断特性は、前記電流値が大きくなるにつれて第1の減少度合いで前記時間が減少し、
前記第1遮断特性は、第1電流値範囲において前記電流値が大きくなるにつれて第2の減少度合いで前記時間が減少し、前記第1電流値範囲の上限値よりも大きい第2電流値範囲において前記電流値が大きくなるにつれて第3の減少度合いで前記時間が減少し、
前記第2の減少度合い及び前記第3の減少度合いは、前記第1の減少度合いよりも大きく、
前記第1電流値範囲の下限値と前記第2電流値範囲の上限値との間に設定される閾値よりも小さい前記電流値に対して、前記第1遮断特性の方が前記第2遮断特性よりも長い前記時間が設定され、前記閾値よりも大きい前記電流値に対して、前記第1遮断特性の方が前記第2遮断特性よりも短い前記時間が設定されている
車載用制御装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記第1電流値範囲の上限値と前記第2電流値範囲の下限値との間の値である
請求項1に記載の車載用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電力路を流れる電流の値が、前記閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合、前記遮断部を即座に前記遮断状態に切り替える
請求項1又は請求項2に記載の車載用制御装置。
【請求項4】
前記遮断部は、半導体スイッチング素子である
請求項1又は請求項2に記載の車載用制御装置。
【請求項5】
前記遮断部は、パイロヒューズである
請求項1又は請求項2に記載の車載用制御装置。
【請求項6】
前記第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、前記電流値及び前記時間を変数とした一次関数によって定められる
請求項1又は請求項2に記載の車載用制御装置。
【請求項7】
前記第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、前記電流値と前記時間との対応関係を示すテーブルによって定められる
請求項1又は請求項2に記載の車載用制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記電力路を流れる電流の値が前記第2閾値を超えた場合、前記第1遮断特性によって定められた前記時間が経過していなくとも前記遮断部を前記遮断状態に切り替える請求項3に記載の車載用制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記電力路を流れる電流の値が前記第2閾値を超えた場合、前記第1遮断特性における前記第2電流値範囲の上限値に対応する前記時間の10分の1
以下の時間で前記遮断部を前記遮断状態に切り替える請求項3に記載の車載用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の背景技術には、負荷に電力を供給する負荷回路が開示されている。この負荷回路は、バッテリと、バッテリと負荷との間に設けられたリレー(半導体スイッチ)とを備えており、リレーがオンオフ動作することで、負荷の駆動、停止が切り替えられる。この負荷回路は、更に、負荷に過電流が流れた際に電力路を遮断するフューズを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、経路に流したい電流の最大値を基準にフューズを選定すると、電流値が低い状態においては適切に遮断できず、リレーの発煙等が生じるおそれがある。そこで、リレーを所定の遮断特性に基づいて遮断させる構成をとることで、電流値が低い状態においては、リレーによって電力路を適切に遮断することが考えられる。しかし、この構成を採用した場合、より大きな電流が流れることを許容しようとすると、フューズとリレーの両方を大型化させる必要がある。
【0005】
本開示は、リレーの大型化を抑制しつつ、より大きな電流が流れることを許容しうる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載用制御装置は、
電源部と、前記電源部に基づく電力が供給される電力路と、前記電力路に設けられるリレーと、前記電力路に設けられる遮断部と、を備える車載システムに用いられる車載用制御装置であって、前記遮断部を第1遮断特性に基づいて遮断状態に切り替える制御部を備え、前記リレーは、第2遮断特性に基づいてオフ状態とされ、前記第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、電流値と遮断するまでの時間との対応関係を定めた特性であり、前記第2遮断特性は、前記電流値が大きくなるにつれて第1の減少度合いで前記時間が減少し、前記第1遮断特性は、第1電流値範囲において前記電流値が大きくなるにつれて第2の減少度合いで前記時間が減少し、前記第1電流値範囲の上限値よりも大きい第2電流値範囲において前記電流値が大きくなるにつれて第3の減少度合いで前記時間が減少し、前記第2の減少度合い及び前記第3の減少度合いは、前記第1の減少度合いよりも大きく、前記第1電流値範囲の下限値と前記第2電流値範囲の上限値との間に設定される閾値よりも小さい前記電流値に対して、前記第1遮断特性の方が前記第2遮断特性よりも長い前記時間が設定され、前記閾値よりも大きい前記電流値に対して、前記第1遮断特性の方が前記第2遮断特性よりも短い前記時間が設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、リレーの大型化を抑制しつつ、より大きな電流が流れることを許容しうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車載システムの構成を概略的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1遮断特性及び第2遮断特性を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示の実施形態が列記されて例示される。
【0010】
〔1〕電源部と、前記電源部に基づく電力が供給される電力路と、前記電力路に設けられるリレーと、前記電力路に設けられる遮断部と、を備える車載システムに用いられる車載用制御装置であって、前記遮断部を第1遮断特性に基づいて遮断状態に切り替える制御部を備え、前記リレーは、第2遮断特性に基づいてオフ状態とされ、前記第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、電流値と遮断するまでの時間との対応関係を定めた特性であり、前記第2遮断特性は、前記電流値が大きくなるにつれて第1の減少度合いで前記時間が減少し、前記第1遮断特性は、第1電流値範囲において前記電流値が大きくなるにつれて第2の減少度合いで前記時間が減少し、前記第1電流値範囲の上限値よりも大きい第2電流値範囲において前記電流値が大きくなるにつれて第3の減少度合いで前記時間が減少し、前記第2の減少度合い及び前記第3の減少度合いは、前記第1の減少度合いよりも大きく、前記第3の減少度合いは、前記第2の減少度合いよりも小さく、前記第1電流値範囲の下限値と前記第2電流値範囲の上限値との間に設定される閾値よりも小さい前記電流値に対して、前記第1遮断特性の方が前記第2遮断特性よりも長い前記時間が設定され、前記閾値よりも大きい前記電流値に対して、前記第1遮断特性の方が前記第2遮断特性よりも短い前記時間が設定されている車載用制御装置。
【0011】
この構成によれば、電力路を流れる電流の値が閾値よりも小さい状態では、リレーによる遮断が優先され、電力路を流れる電流の値が閾値よりも大きい状態では、遮断部による遮断が優先される。しかも、電力路を流れる電流の値が閾値よりも大きい状態では、第2電流値範囲において第1遮断特性の時間の減少度合いが第1電流値範囲よりも小さくなっている。このため、リレーを遮断させる第2遮断特性を変えることなく、電力路に流れる電流の最大値を大きくすることができる。したがって、リレーの大型化を抑制しつつ、より大きな電流が流れることを許容しうる。
【0012】
〔2〕前記閾値は、前記第1電流値範囲の上限値と前記第2電流値範囲の下限値との間の値である〔1〕に記載の車載用制御装置。
【0013】
この構成によれば、リレーによる遮断を優先させる電流値の範囲では、第1遮断特性の時間を第2の減少度合いで減少させ、遮断部による遮断を優先させる電流値の範囲では、第1遮断特性の時間を第3の減少度合いで減少させることができる。このため、リレーによる遮断を優先させる電流値の範囲においては、遮断部による遮断が誤って先になされることを抑制することができる。そして、遮断部による遮断を優先させる電流値の範囲においては、第1遮断特性の電流値の最大値をより大きく引き延ばすことができる。
【0014】
〔3〕前記制御部は、前記電力路を流れる電流の値が、前記閾値よりも大きい第2閾値を超えた場合、前記遮断部を即座に前記遮断状態に切り替える〔1〕又は〔2〕に記載の車載用制御装置。
【0015】
この構成によれば、短時間であっても許容すべきでない大電流が流れた場合に、即座に電力路を遮断することができる。
【0016】
〔4〕前記リレーは、メカニカルリレーであり、前記遮断部は、半導体スイッチング素子である〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載の車載用制御装置。
【0017】
この構成によれば、リレーのコスト上昇を抑制することができ、且つ、第1遮断特性の時間の減少度合いが電流値の範囲に応じて変化する構成を遮断部によってより正確に実現することができる。
【0018】
〔5〕前記遮断部は、パイロヒューズである〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載の車載用制御装置。
【0019】
この構成によれば、電力路を物理的に切断することで電力路を遮断するため、より確実に電力路を遮断することができる。
【0020】
〔6〕前記第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、前記電流値及び前記時間を変数とした一次関数によって定められる〔1〕から〔5〕のいずれか1つに記載の車載用制御装置。
【0021】
この構成によれば、テーブル方式によって規定する構成と比較して、第1遮断特性及び第2遮断特性のデータ量を小さく抑えることができる。
【0022】
<第1実施形態>
図1で示す車載システム100は、車両に搭載されるシステムである。車載システム100は、電源部90と、負荷91と、電源部90に基づく電力を負荷91に供給する電力路80と、車載用制御装置1と、を備える。
【0023】
電源部90は、例えばバッテリであり、より具体的には鉛バッテリやリチウムイオンバッテリなどである。負荷91は、車両に設けられた電子機器である。電源部90及び負荷91は、それぞれ電力路80に電気的に接続されている。電源部90に基づく電力は、電力路80に供給され、電力路80を介して負荷91に供給される。
【0024】
車載用制御装置1は、リレー10と、遮断部11と、電流検出部12と、第2制御部13と、制御部14と、を備える。
【0025】
リレー10は、電力路80に設けられている。リレー10は、例えばメカニカルリレーである。リレー10の動作は、第2制御部13によって制御される。リレー10は、オン状態となることで、電源部90側から負荷91側への電力供給を許容し、オフ状態となることで、電源部90側から負荷91側への電力供給を遮断する。
【0026】
遮断部11は、電力路80に設けられている。遮断部11は、リレー10に対して直列に設けられ、リレー10よりも電源部90側に配置されている。遮断部11は、電源部90側から負荷91側への電力供給を許容する許容状態から電源部90側から負荷91側への電力供給を遮断する遮断状態に切り替わりうる。また、遮断部11は、遮断状態から許容状態に復帰しうる。遮断部11の動作は、制御部14によって制御される。遮断部11は、本実施形態では、半導体スイッチング素子である。
【0027】
電流検出部12は、電力路80を流れる電流の値を検出する。より具体的には、電流検出部12は、電力路80のうちリレー10と遮断部11との間の経路を流れる電流を検出する。電流検出部12は、例えば電力路80に設けられるシャント抵抗と、シャント抵抗の両端電圧を増幅して出力する差動増幅器と、を有する。電流検出部12の検出値は、第2制御部13及び制御部14のそれぞれに入力される。
【0028】
第2制御部13及び制御部14は、それぞれECUとして構成され、CPU、ROM、RAM等を有する。第2制御部13は、リレー10の動作を制御する。制御部14は、第1遮断特性BC1に基づいて遮断部11を遮断状態に切り替える。遮断部11は、電力路80に過電流が流れた場合に遮断されるものであり、通常は許容状態とされる。第2制御部13は、予め定められた駆動開始条件が成立した場合にリレー10をオン状態とする。これにより、電源部90に基づく電力が負荷91に供給される。駆動開始条件は、例えば運転者によって予め定められた駆動開始操作が行われたことであってもよいし、別の条件であってもよい。第2制御部13は、予め定められた駆動停止条件が成立した場合にリレー10をオフ状態とする。これにより、負荷91への電力供給が遮断される。駆動停止条件は、例えば運転者によって予め定められた駆動終了操作が行われたことであってもよいし、別の条件であってもよい。第2制御部13は、リレー10をオン状態とした後、駆動停止条件が成立していない場合であっても、第2遮断特性BC2に基づいてリレー10をオフ状態に切り替える。つまり、リレー10は、第2遮断特性BC2に基づいて遮断される。
【0029】
第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2は、電流値と遮断するまでの時間との対応関係を定めた特性である。より具体的には、第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2は、電流値とその電流値を超えた状態が継続した場合に遮断する時間との対応関係を定めた特性である。第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2は、電流値が0Aよりも大きい範囲で規定されている。第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2は、
図2に示すように、電流値が大きくなるにつれて、対応する時間が減少する。第1遮断特性BC1は、電流値が大きくなるにつれて対応する時間が第1の減少度合いで減少する。第2遮断特性BC2は、第1電流値範囲R1では、電流値が大きくなるにつれて対応する時間が第2の減少度合いで減少し、第1電流値範囲R1の上限値よりも大きい第2電流値範囲R2では、電流値が大きくなるにつれて対応する時間が第3の減少度合いで減少する。第1遮断特性BC1は、第1電流値範囲R1の少なくとも一部及び第2電流値範囲R2の少なくとも一部において規定されている。第2の減少度合い及び第3の減少度合いは、第1の減少度合いよりも大きい。第3の減少度合いは、第2の減少度合いよりも小さい。第1の減少度合い、第2の減少度合い、及び第3の減少度合いはいずれも一定である。
【0030】
第1電流値範囲R1の下限値と第2電流値範囲R2の上限値との間には、閾値Ithが設定されている。本実施形態では、閾値Ithは、第1電流値範囲R1の上限値と第2電流値範囲R2の下限値との間に設定されている。第1電流値範囲R1と第2電流値範囲R2は、閾値Ithを間に挟んで連続している。第1電流値範囲R1の下限値は、0よりも大きい値である。
【0031】
第1遮断特性BC1は、閾値Ithよりも小さい電流値に対して、第2遮断特性BC2よりも長い時間が設定されている。つまり、電力路80を流れる電流値が閾値Ithよりも小さい場合には、遮断部11よりもリレー10が先に遮断される。また、第2遮断特性BC2は、閾値Ithよりも小さい電流値に対して、リレー10の発煙が生じないように時間が設定されている。このため、電力路80を流れる電流値が閾値Ithよりも小さい状態では、リレー10が発煙する前にリレー10が遮断されるようになっている。
【0032】
第1遮断特性BC1は、閾値Ithよりも大きい電流値に対して、第2遮断特性BC2よりも短い時間が設定されている。つまり、電力路80を流れる電流値が閾値Ithよりも大きい場合には、遮断部11がリレー10よりも先に遮断される。閾値Ithは、例えば、リレー10による遮断が困難になる電流値よりも小さい値が設定される。この場合、電力路80を流れる電流値が閾値Ithよりも大きい状態となっても、遮断部11によってリレー10の遮断よりも速く且つリレー10よりも確実に遮断することができる。
【0033】
第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2は、電流値及び時間を変数とした一次関数によって定められている。例えば、第1遮断特性BC1の第1電流値範囲R1における電流値と時間との関係は、下記式(1)によってあらわされる。第1遮断特性BC1の第2電流値範囲R2における電流値と時間との関係は、下記式(2)によってあらわされる。第2遮断特性BC2における電流値と時間との関係は、下記式(3)によってあらわされる。
Y1=A1・X1+B1・・・式(1)
Y2=A2・X2+B2・・・式(2)
Y3=A3・X3+B3・・・式(3)
X1、X2、X3は電流値であり、0よりも大きい値である。Y1、Y2、Y3は時間であり、0よりも大きい値である。A1、A2、A3は傾きであり、0よりも小さい値である。B1、B2、B3は定数であり、0よりも大きい値である。
A1及びA2は、A3よりも小さい値である。A2は、A1よりも大きい値である。閾値Ithは、式(1)、式(2)、及び式(3)の交点である。
【0034】
次の説明は、第1遮断特性BC1に基づいて遮断部11を遮断する具体例に関する。制御部14は、第1遮断特性BC1によって定められる電流値を所定の分解能で複数の電流値に分解する。そして、制御部14は、電力路80を流れる電流の値が、分解した複数の電流値のそれぞれを超えるか否かを判定し、超えた場合に超えた電流値に対応するタイマを作動させる。そして、制御部14は、その電流値を下回ることなくタイマの作動時間がその電流値に対応する時間に到達した場合に、遮断部11を遮断状態に切り替える。これに対し、制御部14は、タイマの作動時間がその電流値に対応する時間に到達する前に、電力路80を流れる電流の値がその電流値を下回った場合に、タイマをリセットする。制御部14は、電力路80を流れる電流の値が、分解した複数の電流値を超えた場合には、超えた複数の電流値のそれぞれについてタイマを作動させ、同様の処理を行う。第2遮断特性BC2に基づいてリレー10を遮断する処理は、第1遮断特性BC1に基づいて遮断部11を遮断する処理と同様に行われる。
【0035】
制御部14は、電力路80を流れる電流の値が、閾値Ithよりも大きい第2閾値Ith2を超えた場合、遮断部11を即座に遮断状態に切り替える。第2閾値Ith2は、第2電流値範囲R2の上限値と同じ値である。第2閾値Ith2は、例えばリレー10の爆発が生じない電流値の範囲に設定される。第1遮断特性BC1は、第2閾値Ith2を超える電流値に対応する時間として「0」または「略0(例えば第1遮断特性BC1における第2電流値範囲R2の上限値に対応する時間の10分の1以下の時間)」が設定されている。この構成によれば、リレー10の爆発を抑制することができる。
【0036】
次の説明は、第1実施形態の効果に関する。
第1実施形態の車載用制御装置1によれば、電力路80を流れる電流の値が閾値Ithよりも小さい状態では、リレー10による遮断が優先され、電力路80を流れる電流の値が閾値Ithよりも大きい状態では、遮断部11による遮断が優先される。しかも、電力路80を流れる電流の値が閾値Ithよりも大きい状態では、第2電流値範囲R2において第1遮断特性BC1の時間の減少度合いが第1電流値範囲R1よりも小さくなっている。このため、リレー10を遮断させる第2遮断特性BC2を変えることなく、電力路80に流れる電流の最大値を大きくすることができる。したがって、リレー10の大型化を抑制しつつ、より大きな電流が流れることを許容しうる。
【0037】
更に、閾値Ithは、第1電流値範囲R1の上限値と第2電流値範囲R2の下限値との間の値である。この構成によれば、リレー10による遮断を優先させる電流値の範囲では、第1遮断特性BC1の時間を第2の減少度合いで減少させ、遮断部11による遮断を優先させる電流値の範囲では、第1遮断特性BC1の時間を第3の減少度合いで減少させることができる。このため、リレー10による遮断を優先させる電流値の範囲においては、遮断部11による遮断が誤って先になされることを抑制することができる。そして、遮断部11による遮断を優先させる電流値の範囲においては、第1遮断特性BC1の電流値の最大値をより大きく引き延ばすことができる。
【0038】
更に、制御部14は、電力路80を流れる電流の値が、閾値Ithよりも大きい第2閾値Ith2を超えた場合、遮断部11を即座に遮断状態に切り替える。この構成によれば、短時間であっても許容すべきでない大電流が流れた場合に、即座に電力路80を遮断することができる。
【0039】
更に、リレー10は、メカニカルリレーであり、遮断部11は、半導体スイッチング素子である。この構成によれば、リレー10のコスト上昇を抑制することができ、且つ、第1遮断特性BC1の時間の減少度合いが電流値の範囲に応じて変化する構成を遮断部11によってより正確に実現することができる。特に第1電流値範囲R1においては、遮断後に復帰させることも想定されるが、第1電流値範囲R1においては、電流値が小さくなるほど第1遮断特性BC1が第2遮断特性BC2から大きく離れるようになっており、遮断部11による遮断よりもリレー10による遮断がより確実に優先されるようになっている。このため、遮断部11の許容状態への復帰に関する要求が緩和され、その結果、遮断部11のコスト上昇を抑制することができる。極端に言えば、遮断部11を許容状態へ復帰させない構成とすることもでき、この場合には、遮断部11を許容状態へ復帰させるためのプログラムなどが一切不要となる。
【0040】
更に、第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2は、電流値及び時間を変数とした一次関数によって定められる。この構成によれば、テーブル方式によって規定する構成と比較して、第1遮断特性BC1及び第2遮断特性BC2のデータ量を小さく抑えることができる。
【0041】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0042】
上記実施形態では、車載用制御装置がリレー、遮断部、電流検出部、及び第2制御部を備える構成としたが、これらの一部又は全部を備えない構成であってもよい。
【0043】
上記実施形態では、第2制御部がリレーを制御する構成であったが、制御部がリレーを制御する構成としてもよい。この場合、車載システムに第2制御部を設ける必要は無い。
【0044】
上記実施形態では、リレーがメカニカルリレーであったが、半導体リレーであってもよい。
【0045】
上記実施形態では、遮断部が半導体スイッチング素子であったが、制御によってオフ状態に切り替えることができる構成であれば、半導体スイッチング素子でなくてもよい。例えば遮断部は、メカニカルスイッチであってもよい。
【0046】
上記実施形態では、遮断部は、遮断状態に切り替わった後、許容状態に戻ることができる構成であったが、戻ることができない構成であってもよい。許容状態に戻ることができない構成としては、例えば、制御信号が与えられることで経路を物理的に切断する遮断器であってもよい。より具体的には、駆動電流が入力された場合に爆発を生じさせ、この爆発によって変位部を移動させることで経路を物理的に切断する火工遮断器(例えばパイロヒューズ(PYROFUSE(登録商標)))であってもよい。あるいは、遮断部は、スイッチであるが、許容状態に復帰する制御がなされない構成であってもよい。
【0047】
上記実施形態では、「電力路を流れる電流の値が第2閾値を超えた場合、遮断部を即座に遮断状態に切り替える」構成として、第1遮断特性における第2閾値を超える電流値に対応する時間を0又は略0とする構成としたが、別の構成であってもよい。例えば、制御部は、第1遮断特性とは別に第2閾値を記憶しておき、電力路を流れる電流の値が第2閾値を超えた場合に、第1遮断特性によって定められた時間が経過していなくとも遮断部を遮断状態に切り替えるようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態では、第1遮断特性及び前記第2遮断特性は、電流値及び時間を変数とした一次関数によって定められる構成であったが、電流値と時間との対応関係を示すテーブルによって定められる構成であってもよい。
【0049】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0050】
1…車載用制御装置
10…リレー
11…遮断部
12…電流検出部
13…第2制御部
14…制御部
80…電力路
90…電源部
91…負荷
100…車載システム
BC1…第1遮断特性
BC2…第2遮断特性
Ith…閾値
Ith2…第2閾値
R1…第1電流値範囲
R2…第2電流値範囲