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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20240425BHJP
   F25B 6/04 20060101ALI20240425BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651B
F25B6/04 Z
F25B1/00 304Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020029428
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133724
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】中原 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 正明
(72)【発明者】
【氏名】重森 大輝
(72)【発明者】
【氏名】西野 正樹
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184108(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073687(WO,A1)
【文献】特開平08-268035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F25B 6/04
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用のモータへの電力供給源となる電池と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
走行風が導入可能とされ、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と
車室内用の空調エアが流れる空調通路に配設され、車室内暖房用となる暖房用熱交換器と、
前記外部熱交換器と前記暖房用熱交換器との間に設けられ、暖房時に冷媒が通過される暖房用膨張弁と、
車室内冷房用となる冷房用膨張弁および前記空調通路に配設された冷房用熱交換器と、
前記電池の冷却用となる電池用膨張弁および電池用熱交換器と、
前記空調通路への空調エアの導入を、外気導入と内気循環との間で切換える切換ダンパと、
制御ユニットと、
冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
を備え、
冷媒が、前記外部熱交換器、前記暖房用熱交換器、前記冷房用熱交換器および前記電池用熱交換器とで共用され、
暖房時でかつ前記電池を冷却するときに、前記圧縮機からの冷媒が順次、前記暖房用熱交換器、前記暖房用膨張弁、前記外部熱交換器、前記電池用膨張弁、前記電池用熱交換器を通過するようにされ、
前記制御ユニットは、前記暖房時でかつ前記電池を冷却するときに、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときは、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車両駆動用のモータへの電力供給源となる電池と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
走行風が導入可能とされ、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と
車室内用の空調エアが流れる空調通路に配設され、車室内暖房用となる暖房用熱交換器と、
車室内冷房用となる冷房用膨張弁および前記空調通路に配設された冷房用熱交換器と、
前記電池の冷却用となる電池用膨張弁および電池用熱交換器と、
前記空調通路への空調エアの導入を、外気導入と内気循環との間で切換える切換ダンパと、
制御ユニットと、
冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
車室内の湿度を検出する湿度センサと、
を備え、
冷媒が、前記外部熱交換器、前記暖房用熱交換器、前記冷房用熱交換器および前記電池用熱交換器とで共用され、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときは、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御するようにされ、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が前記所定圧力以下でかつ前記湿度センサにより検出される湿度が所定値以上のときは、あらかじめ所定期間だけ前記外気導入とした後に前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記電池の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記温度センサにより検出される温度が所定温度以上のときに、冷媒が前記電池用膨張弁から前記電池用熱交換器を流れるようにされ、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下でかつ前記温度センサにより検出される温度が前記所定温度以上のときに、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
車両駆動用のモータへの電力供給源となる電池と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
走行風が導入可能とされ、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と
車室内用の空調エアが流れる空調通路に配設され、車室内暖房用となる暖房用熱交換器と、
車室内冷房用となる冷房用膨張弁および前記空調通路に配設された冷房用熱交換器と、
前記電池の冷却用となる電池用膨張弁および電池用熱交換器と、
前記空調通路への空調エアの導入を、外気導入と内気循環との間で切換える切換ダンパと、
制御ユニットと、
冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
を備え、
冷媒が、前記外部熱交換器、前記暖房用熱交換器、前記冷房用熱交換器および前記電池用熱交換器とで共用され、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときは、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御するようにされ、
前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器への冷媒の通過および前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器への冷媒の通過がそれぞれ、冷媒が前記外部熱交換器を通過した後に行われるようにされ、
前記外部熱交換器を通過した後の冷媒の流れ態様として、第1態様と第2態様と第3態様との間で切換えるための切換手段を有し、
前記第1態様では、冷媒が、前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器を通過する一方、前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器を通過しないようにされ、
前記第2態様では、冷媒が、前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器を通過する一方、前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器を通過しないようにされ、
前記第3態様では、冷媒が、前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器を通過すると共に、前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器をも通過するようにされ、
前記圧力センサが、前記外部熱交換器を通過した後の冷媒の圧力を検出するようにされている、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記外部熱交換器への走行風の導入状態を変更する開閉式のグリルシャッターをさらに備え、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときに、前記グリルシャッターが閉状態となるように制御する、
ことを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の車両(自動車)にあっては、エンジン(内燃機関)を有しないで、車両の駆動をモータのみによって行う電気自動車が増加する傾向にある。
【0003】
上記電気自動車にあっても、車室内の空調を行う必要がある。車室内空調を行うために、圧縮機によって圧縮される冷媒を利用して、ヒートポンプ方式で暖房と冷房との両方を行えるようにすることが望まれる。このため、暖房用熱交換器と、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と、冷房用の膨張弁および冷房用の熱交換器とが必要とされる。
【0004】
また、電気自動車は、車両駆動用のモータへ給電するための大容量の電池が搭載される。そして、電池が、充放電することによって所定温度以上の高温になったときには、電池を冷却する必要がある。この電池の冷却を、冷媒を利用して行う場合には、電池冷却用となる電池用膨張弁と電池用熱交換器とが必要となる。
【0005】
特許文献1には、車室内空調用の冷媒と、電池冷却用の冷媒とを別途独立して設けたものが開示されている。また、特許文献2には、電池冷却は行わないものであるが、冷媒圧力が低下したときに、冷媒経路を切換えるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-130980号公報
【文献】特開2019-26118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、システムの簡素化等のために、冷媒を、車室内空調用と電池冷却用とで共用(共通化)することが考えられる。この場合、電池冷却のためには、大きな冷却能力が要求されることから、冷媒の圧力が低下し過ぎないようにすることが重要となる。しかしながら、冷媒を車室内空調用と電池冷却用とで共用した場合に、冷媒の圧力が低下し過ぎて、電池を十分に冷却できないという事態を生じることがある、ということが判明した。
【0008】
特に、暖房時には、外気との間で熱交換を行う外部熱交換器を通過した後の冷媒の圧力が大きく低下してしまう事態を生じやすいものとなる。この場合、冷媒が、外気との間で熱交換を行う外部熱交換器を通過し、その後電池冷却用の膨張弁を通過した後に、冷媒の高圧側圧力の低下が過大となることで冷媒の流量不足が発生する懸念がある。冷媒の流量不足が生じると、冷媒の圧力(つまり温度)を十分に低下させることができず、電池冷却用の熱交換器での冷却能力が不十分になってしまうことになる。
【0009】
なお、冷媒の圧力が所定圧力以下に低下したときに、冷媒が外部熱交換器をバイパスするようなバイパスシステムを別途設けることも考えられるが、この場合は、システムが複雑化すると共にコストアップとなり、好ましくないものである。
【0010】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、冷媒を車室内空調用と電池冷却用とで共用させた場合でも、システムを複雑化することなく、電池冷却を十分に行えるようにした車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
車両駆動用のモータへの電力供給源となる電池と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
走行風が導入可能とされ、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と
車室内用の空調エアが流れる空調通路に配設され、車室内暖房用となる暖房用熱交換器と、
前記外部熱交換器と前記暖房用熱交換器との間に設けられ、暖房時に冷媒が通過される暖房用膨張弁と、
車室内冷房用となる冷房用膨張弁および前記空調通路に配設された冷房用熱交換器と、
前記電池の冷却用となる電池用膨張弁および電池用熱交換器と、
前記空調通路への空調エアの導入を、外気導入と内気循環との間で切換える切換ダンパと、
制御ユニットと、
冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
を備え、
冷媒が、前記外部熱交換器、前記暖房用熱交換器、前記冷房用熱交換器および前記電池用熱交換器とで共用され、
暖房時でかつ前記電池を冷却するときに、前記圧縮機からの冷媒が順次、前記暖房用熱交換器、前記暖房用膨張弁、前記外部熱交換器、前記電池用膨張弁、前記電池用熱交換器を通過するようにされ、
前記制御ユニットは、前記暖房時でかつ前記電池を冷却するときに、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときは、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御する、
ようにしてある。
【0012】
上記第1の解決手法によれば、冷媒の圧力が所定圧力以下のときには、内気循環とすることにより暖房用熱交換器での熱交換量が低下されて、冷媒の圧力低下が抑制される。これにより、電池冷却の要求があった際に、電池の冷却を十分に行うことが可能となる。また、冷媒の圧力が所定圧力以下に低下したときに、冷媒が外部熱交換器をバイパスするようなバイパスシステムを別途設けた場合に比して、システムの簡単化やコスト低減の上でも好ましいものとなる。以上に加えて、暖房時には、冷媒が暖房用膨張弁を通過した際に圧力と温度が十分に低下されて、外部熱交換器によって外気から十分に吸熱することができ、暖房を効率よく行う上で好ましいものとなる。この一方、冷媒は、暖房用膨張弁を通過するときと外部熱交換器を通過するときとの両方で圧力低下されることから、冷媒の圧力が低下し過ぎて、電池用熱交換器の冷却能力が低下してしまう事態を生じやすいものとなるが、暖房用熱交換器での熱交換量を低減させる制御を行うことにより、冷媒の圧力が低下しすぎてしまう事態が防止されることになる。
【0013】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項2に記載のように、
車両駆動用のモータへの電力供給源となる電池と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
走行風が導入可能とされ、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と
車室内用の空調エアが流れる空調通路に配設され、車室内暖房用となる暖房用熱交換器と、
車室内冷房用となる冷房用膨張弁および前記空調通路に配設された冷房用熱交換器と、
前記電池の冷却用となる電池用膨張弁および電池用熱交換器と、
前記空調通路への空調エアの導入を、外気導入と内気循環との間で切換える切換ダンパと、
制御ユニットと、
冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
車室内の湿度を検出する湿度センサと、
を備え、
冷媒が、前記外部熱交換器、前記暖房用熱交換器、前記冷房用熱交換器および前記電池用熱交換器とで共用され、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときは、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御するようにされ、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が前記所定圧力以下でかつ前記湿度センサにより検出される湿度が所定値以上のときは、あらかじめ所定期間だけ前記外気導入とした後に前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御する、
ようにしてある。上記第2の解決手法によれば、第1の解決手法の場合とほぼ同様の作用効果を得ることができる。これに加えて、車室内の湿度が高いときは、あらかじめ外気導入として湿度を低下させた後に内気循環とするので、内気循環としたことに伴ってフロントウインドガラス等に曇りを生じてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
【0014】
上記第1の解決手法または第2の解決手法を前提として、次のような解決手法を採択することができる。すなわち、請求項3に記載のように、
前記電池の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記温度センサにより検出される温度が所定温度以上のときに、冷媒が前記電池用膨張弁から前記電池用熱交換器を流れるようにされ、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下でかつ前記温度センサにより検出される温度が前記所定温度以上のときに、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御する、
ようにすることができる。この場合、電池冷却が要求されることをも条件として内気循環とするので、暖房用熱交換器での換気量を不必要に低下させてしまう事態を防止する上で好ましいものとなる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような第3の解決手法を採択してある。すなわち、請求項4に記載のように、
車両駆動用のモータへの電力供給源となる電池と、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
走行風が導入可能とされ、外気と冷媒との間で熱交換させるための外部熱交換器と
車室内用の空調エアが流れる空調通路に配設され、車室内暖房用となる暖房用熱交換器と、
車室内冷房用となる冷房用膨張弁および前記空調通路に配設された冷房用熱交換器と、
前記電池の冷却用となる電池用膨張弁および電池用熱交換器と、
前記空調通路への空調エアの導入を、外気導入と内気循環との間で切換える切換ダンパと、
制御ユニットと、
冷媒の圧力を検出する圧力センサと、
を備え、
冷媒が、前記外部熱交換器、前記暖房用熱交換器、前記冷房用熱交換器および前記電池用熱交換器とで共用され、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときは、前記内気循環となるように前記切換ダンパを制御するようにされ、
前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器への冷媒の通過および前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器への冷媒の通過がそれぞれ、冷媒が前記外部熱交換器を通過した後に行われるようにされ、
前記外部熱交換器を通過した後の冷媒の流れ態様として、第1態様と第2態様と第3態様との間で切換えるための切換手段を有し、
前記第1態様では、冷媒が、前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器を通過する一方、前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器を通過しないようにされ、
前記第2態様では、冷媒が、前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器を通過する一方、前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器を通過しないようにされ、
前記第3態様では、冷媒が、前記冷房用膨張弁と前記冷房用熱交換器を通過すると共に、前記電池用膨張弁と前記電池用熱交換器をも通過するようにされ、
前記圧力センサが、前記外部熱交換器を通過した後の冷媒の圧力を検出するようにされている、
ようにしてある。上記第3の解決手法によれば、第1の解決手法とほぼ同様の作用効果を得ることができる。これに加えて、冷媒の具体的な経路が提供される。そして、圧力センサは、電池冷却に重要となる外部熱交換器を通過した後の冷媒の圧力を検出するので、電池冷却に必要な冷媒の圧力が十分に確保されているか否かを精度よく判定する上でも好ましいものとなる。
【0020】
【0021】
前記各解決手法を前提として、次のような解決手法を採択することができる。すなわち、
前記外部熱交換器への走行風の導入状態を変更する開閉式のグリルシャッターをさらに備え、
前記制御ユニットは、前記圧力センサで検出される冷媒の圧力が所定圧力以下のときに、前記グリルシャッターが閉状態となるように制御する、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、グリルシャッターを閉じることにより、外部熱交換器での熱交換量を低減させて、冷媒が外部熱交換器を通過した際の圧力低下を抑制して、全体として冷媒の圧力低下をより十分に抑制することができる。
【0022】
【0023】
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、冷媒を車室内空調用と電池冷却用とで共用させた場合でも、システムを複雑化することなく、電池冷却を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明が適用された車両の一例を示す簡略平面図。
図2】冷媒の循環系統例を示すもので、暖房時での冷媒の流れを矢印で示す。
図3図2の循環系統例において、冷房時での冷媒の流れを矢印で示す。
図4図2の循環系統例において、除霜時での冷媒の流れを矢印で示す。
図5図2の循環系統例において、電池冷却時での冷媒の流れを矢印で示す。
図6図2の循環系統例において、冷房と電池冷却とを同時に行うときの冷媒の流れを矢印で示す。
図7図2の循環系統例において、暖房と電池冷却とを同時に行うときの冷媒の流れを矢印で示す。
図8】本発明の制御系統例を示す図。
図9】本発明の制御例を示すフローチャート。
図10】本発明の第2の制御例を示すフローチャート。
図11】本発明の第3の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明が適用された車両Vの一例を示すものである。車両Vは、後述するように電気自動車とされている。図中、1は左右の前輪、2は左右の後輪である。なお、図1中、左方が車両前方を示す。
【0027】
車両Vは、前輪1の直後方において、左右方向に延びるダッシュパネル3を有する。このダッシュパネル3によって、前側のモータ収納室(エンジンルームに相当)4と、後側の車室5とが区画されている。車室5内には、運転席6、助手席7、後席8が配設されている。9は、ステアリングハンドルである。
【0028】
車室5内には、ダッシュパネル3の直後方に位置させて、左右方向に延びるインストルメントパネル10が配設されている。このインストルメントパネル10内には、後述する空調ユニット20が配設されている。また、車室5の床面下方には、大容量の電池(バッテリ)21が配設されている。実施形態では、電池21は、フロアパネルの車幅方向中央部に形成されたトンネル部内に収納されているが、電池21の配設位置は特に問わないものである。
【0029】
モータ収納室4内には、モータ22が配設されている。モータ22の駆動力は、トランスアクスル23、左右一対のドライブシャフト24を介して、左右の前輪1に伝達される。車両Vは、実施形態では、前輪1が駆動輪とされ、後輪2が従動輪とされたFF車とされている。
【0030】
モータ22には、インバータ25が取付けられている。このインバータ25を介して、電池21とモータ22との間での電力の授受が行われる。すなわち、電池21からモータ22へ給電することにより、走行駆動される。また、減速時には、モータ22が発電機として機能されて、電池21の充電が行われる(回生)。なお、車両Vは、後輪駆動車あるいは4輪駆動車であってもよく、また駆動用モータの数は2以上であってもよく、さらにインホイール式のモータを用いたものであってもよい。
【0031】
モータ収納室2前部には、外部熱交換器30が配設されている。この外部熱交換器30は、後述するように、その内部を流れる冷媒と外気との間で熱交換を行うものである。外部熱交換器30は、走行風を受けて、外気と冷媒との間での熱交換が効率よく行うことが可能となっている。また、外部熱交換器30の直後方には、クーリングファン31が配設されている。このクーリングファン31を作動させることにより、車両Vの停止時にあっても、外気を外部熱交換器30へ導入することが可能となっている。
【0032】
外部熱交換器30の直前方には、開閉可能なグリルシャッター32が配設されている。
このグリルシャッター32が開作動されたときには、走行風が外部熱交換器30に導入可能とされる。また、グリルシャッター32が閉作動されたときは、走行風の外部熱交換器30への導入が規制される。
【0033】
グリルシャッター32は、基本的には、車両Vの空力特性を改善するものである。すなわち、グリルシャッター32を閉じたときに、車両Vの空気抵抗が低減される。実施形態では、基本的に、車速が所定車速(例えば60km/h)以上のときにグリルシャッター32が閉とされ、車速が上記所定車速未満のときはグリルシャッター32が開とされる(車両Vの停止時も開状態とされる)。グリルシャッター32が開いた状態では、外部熱交換器30による熱交換機能が向上される。
【0034】
車両Vは、発熱源としてのエンジン(内燃機関)を有しないものである。このため、空調ユニット20は、電池21の電力を利用して空調を行うものとなっている。空調ユニット20による空調は、後述するようにヒートポンプ式とされている。
【0035】
電池21は、充放電によって熱を発生するものである、電池21の保護のために、電池21の温度が上限温度(例えば60℃)を超えないように適宜冷却する必要がある。このため、電池21の温度が、上記上限温度よりも低い温度に設定された所定温度(例えば50℃)以上になると、電池21を冷却するようにしてある。そして、電池21の冷却を、後述するように、空調ユニット20に使用される冷媒(熱媒体)を利用して行うようになっている(冷媒が、空調用と電池21の冷却用とで兼用)。
【0036】
次に、空調と電池21の冷却を行うために設定される冷媒の循環系統例について、図2を参照しつつ説明する。なお、冷媒としては、例えば、R134a等のHFC系冷媒や、R1234yf等のHFO系冷媒、さらには二酸化炭素等を用いることができる。
【0037】
まず、空調ユニット20について説明する。空調ユニット20は、空調通路41を有する。空調通路41の入口には、切替ダンパ42が設けられて、外気導入と内気循環とが切替可能とされている。空調通路41内には、切替ダンパ42の近くにおいて、ブロア43が配設されている。ブロア43は、モータ44によって駆動される。なお、後述する各種電気機器類は、全て電池21からの給電を受けて作動(駆動)される。
【0038】
空調通路41内は、ブロア43の下流側において、冷房用の熱交換器45が配設されている。空調通路41のうち熱交換器45の下流側部分が、分岐板46によって2つの分岐通路43Aと43Bとに分岐されている。一方の分岐通路43Aには、上流側において暖房用の熱交換器47が配設されると共に、下流側において電気式のヒータ(例えばPTCヒータ)48が配設されている。ヒータ47は、通電されることによって加熱される。
【0039】
各分岐通路43Aと43Bの上流側端には、エアミックスダンパ49が配設されている。このエアミックスダンパ49によって、分岐通路43Aを流れるエア量と分岐通路43Bを流れるエア量との割合が変更される(割合は0~100%の範囲で変更)。
【0040】
各分岐通路43Aと43Bの下流側は、エアミックス室50に連なっている。このエアミックス室内の空調エアが、インストルメントパネル10等に設けた吹き出し口から車室内へと供給される。
【0041】
図2中、60は圧縮機、61はアキュムレータ(気液分離器)である。圧縮機60は、アキュムレータ61内の冷媒を吸引して圧縮するもので、電池21からの給電によって駆動される電気式とされている。
【0042】
圧縮機60で圧縮されて高温、高圧となった冷媒は、配管62を介して、暖房用の熱交換器47へ供給される。熱交換器47を通過した冷媒は、配管63を介して、前述した外部熱交換器30へ供給される。配管63の途中には、膨張弁として機能されるオリフィス64が配設されている。また、配管63には、オリフィス64をバイパスするバイパス配管65が設けられて、このバイパス配管65に電磁式の開閉弁66が接続されている。オリフィス64とバイパス配管65と開閉弁66とが、全開をとり得るようにされた開度可変式の膨張弁を構成している。このオリフィス64とバイパス配管65と開閉弁66との機能を、1つの弁装置として構成することもできる。
【0043】
外部熱交換器30を通過した冷媒は、配管67を介して、電磁式の切換弁68へと流れる。切換弁68には、2つの配管69、70が接続されている。切換弁68は、配管67を、配管69と70のいずれか一方に選択的に接続するものである。
【0044】
一方の配管69を流れる冷媒は、戻り用配管となる配管71を介して、アキュムレータ61へと流れる。他方の配管70を流れる冷媒は、冷房用の熱交換器45に供給される。この熱交換器45を通過した冷媒は、配管72および前述の配管71を介して、アキュムレータ61へと流れる。
【0045】
上記他方の配管70には、熱交換器45の近傍において、電磁式とされた開度可変式の膨張弁73が接続されている。膨張弁73は、完全に閉じた閉状態と、冷媒を膨張させるためにわずかに開かれる開状態との間で切換可能とされている。また、膨張弁73は、冷媒の膨張作用が得られる範囲で開度を変更可能とすることもできる。
【0046】
上記他方の配管70には、切換弁68と膨張弁73との間の位置から、バイパス用の配管80が導出されている。この配管80を流れる冷媒は、電池21を冷却するための熱交換器81に供給される。この熱交換器81を通過した冷媒は、配管82および前述の配管71を介して、アキュムレータ61へと流れる。なお、熱交換器81は、電池21と一体化された電池パックとして車体に配設されている。
【0047】
上記配管80には、電磁式とされた開度可変式の膨張弁83が接続されている。膨張弁83は、完全に閉じた閉状態と、冷媒を膨張させるためにわずかに開かれる開状態との間で切換可能とされている。また、膨張弁83は、冷媒の膨張作用が得られる範囲で開度を変更可能とすることもできる。
【0048】
前述した開閉弁66、切換弁68、膨張弁73、83の作動状態を適宜切換えることにより、冷媒の循環経路が切換えられる。以下に、暖房時、冷房時、除霜時、電池冷却時、冷房+電池冷却時、暖房+電池冷却時に場合分けして、冷媒の循環経路について説明する。
【0049】
(1)暖房時には、開閉弁66が閉、切換弁68が配管69を選択した状態とされる。また、エアミックスダンパ49は、空調エアが暖房用の熱交換器47を多く流れる位置に設定される。なお、各膨張弁73、83は閉とされるが、配管70、80に冷媒が流れないため、各膨張弁73、83の開閉状態は特に問わないものである。
【0050】
暖房時では、冷媒は、図2中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60によって圧縮されることにより高温、高圧になった冷媒が、熱交換器47を通過することにより、空調エアが加温される。熱交換器47を通過した冷媒は、オリフィス64を通過することにより減圧されると共に温度低下される。減圧かつ低温化された冷媒は、外部熱交換器30を通過する際に外気と熱交換されて、加温される(冷媒の吸熱)。加温された冷媒は、配管67、69、71を経て、アキュムレータ61へ戻される。
【0051】
(2)冷房時には、開閉弁66が開、切換弁68が配管70を選択、膨張弁73が開、膨張弁83が閉とされる。また、エアミックスダンパ49は、空調エアが暖房用の熱交換器47を少なく流れる位置に設定される。
【0052】
冷房時では、冷媒は、図3中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60によって圧縮された冷媒が、熱交換器47を通過するが、熱交換器47を流れる空調エアが少量(流量0の場合もあり)であって、空調エアの加温は殆ど行われない。熱交換器47を通過した冷媒は、オリフィス64をバイパスして、外部熱交換器30へと流れる。この外部熱交換器30によって、冷媒が外気によって冷却される(冷媒からの熱放出)。
【0053】
外部熱交換器30を通過した冷媒は、切換弁68から配管70を経て膨張弁73を通過する。この膨張弁73によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、冷房用の熱交換器45を流れることにより、空調エアが冷却される。熱交換器45を通過した冷媒は、配管72、71を経て、アキュムレータ61へ戻される。
【0054】
(3)除霜時は、外部熱交換器30に付着した霜を除去するときである。除霜時での冷媒の流れは図4に示されるが、開状態とされた開閉弁66を冷媒が通過する点を除いて、図2に示す暖房時と同じである。冷媒は、オリフィス64をバイパスすることから、外部熱交換器30に導入される冷媒の温度が、暖房時に比して相当に高温となり、これにより外部熱交換器30の除霜が行われる。
【0055】
除霜の開始は、外部熱交換器30に霜が発生したことを検出したときに開始される。この霜の検出を行うセンサとしては、例えば、霜を直接的に検出するセンサを用いることもできるが、冷媒の温度を検出するセンサによって行うこともできる。すなわち、例えば、暖房サイクルでの運転が継続されていることにより、外部熱交換器30に導入される直前の冷媒の温度が例えば-20℃以下となったときに、外部熱交換器30に霜が発生していると判定することができる。このように、霜発生の検出センサとしては、直接的に霜を検出する他、推定によって検出するものであってもよい。
【0056】
(4)電池冷却時には、開閉弁66が開、切換弁68が配管70を選択、膨張弁73が閉、膨張弁83が開とされる。電池冷却は、電池温度が所定温度(例えば50℃)以上のときに実行される。
【0057】
電池冷却時では、冷媒は図5中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60からの冷媒は、熱交換器47、開閉弁66、外部熱交換器30、切換弁68、配管70、80、膨張弁83を通過する。この膨張弁83によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、電池冷却用の熱交換器81を流れることにより、電池21が冷却される。熱交換器81を通過した冷媒は、配管82、71を経て、アキュムレータ61へ戻される。
【0058】
電池冷却時には、電池21から放出される熱を電池冷却用の熱交換器21を介して冷媒が受け、この熱を冷媒が熱交換器47にて放出することにより、車室内の暖房が可能となる。このとき、上述したように、グリルシャッター32が開いた状態では、外部熱交換器30による熱交換機能が向上される一方、冷媒の圧力低下度合いが大きくなる。外部熱交換器30を通過した後の冷媒が、電池用膨張弁83を通過した後、電池用熱交換器81へと流れて、電池21が冷却される。外部熱交換器30を通過した後の冷媒の圧力が低すぎると、電池用膨張弁83による冷媒の十分な膨張が行われず、電池21の冷却不足となるおそれが生じる。このように、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒圧力が、あらかじめ設定した所定圧力以下のときは、車速にかかわらず(グリルシャッター32の基本的な開閉条件にかかわらず)グリルシャッター32を閉じて、外部熱交換器30での熱交換機能を低下させるようにしてある。これにより、冷媒の圧力が低下しすぎてしまう事態が防止されて、電池21の冷却を十分に行うことが可能となる。
【0059】
(5)冷房かつ電池冷却時では、開閉弁66が開、切換弁68が配管70を選択、膨張弁73および83がそれぞれ開とされる。
【0060】
冷房でかつ電池冷却時では、冷媒は図6中矢印で示すように流れる。すなわち、圧縮機60からの冷媒は、熱交換器47、開閉弁66、外部熱交換器30、切換弁68、配管70へと流れる。配管70を流れた冷媒は、膨張弁73を通過すると共に、配管80を経て膨張弁83をも通過する。膨張弁73によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、冷房用の熱交換器45を流れることにより、空調エアが冷却される。また同時に、膨張弁83によって、冷媒が減圧かつ低温化される。低温になった冷媒が、電池冷却用の熱交換器81を流れることにより、電池21が冷却される。なお、膨張弁73、83の開度を調整することにより、熱交換器45を流れる冷媒の流量と熱交換器81を流れる冷媒の流量との割合を変更することができる。また、膨張弁73を流れる冷媒量と膨張弁83を流れる冷媒量との割合を変更する弁装置を別途設けることもできる。
【0061】
(6)暖房かつ電池冷却時では、図2の暖房状態から、切換弁68を配管70を選択する状態に変更される。また、膨張弁83が開とされる一方、膨張弁73は閉とされる。これにより、膨張弁83を通過することにより低温化された冷媒が熱交換器81を通過して、電池21が冷却される。
【0062】
暖房かつ電池冷却時では、冷媒の流れは図7矢印で示すようになる。すなわち、図2に示す暖房時に比して、外部熱交換器30を通過した後の冷媒が、膨張弁83から電池冷却用の熱交換器81を流れる態様とされる。
【0063】
この場合、冷媒が膨張弁として機能するオリフィス64を通過することから、冷媒の圧力が低下し過ぎてしまう事態が想定される。すなわち、暖房用熱交換器47とオリフィス64とによって圧力が大きく低下された冷媒が、外部熱交換器30によってさらに圧力低下されることから、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒圧力(つまり膨張弁83の直上流側での冷媒圧力)が、小さくなり過ぎてしまうことが想定される。このように、冷媒の圧力が低下し過ぎると、膨張弁83を通過させる冷媒の流量が十分に確保できないこととなって、熱交換器81によって電池21の冷却を十分に行うことが不可能になる。
【0064】
このため、冷媒の圧力(外部熱交換器30を通過した直後の冷媒圧力)があらかじめ設定された所定圧力以下であるときは、後述するように、暖房用熱交換器47での熱交換量を低減させて、この暖房用熱交換器47での冷媒の圧力低下を抑制するようにしてある。具体的には、内気循環とする制御と、ブロア43による空調エアの風量を低減する制御との少なくとも一方の制御を行うことにより、暖房用熱交換器47での熱交換量が低減される。なお、暖房不足になるときは、電気式のヒーター48を作動させればよい。
【0065】
グリルシャッター32は、前述したように、基本的に車速に応じて開閉される。しかしながら、冷媒の圧力が前記所定圧力以下のときは、車速に応じた基本の開閉条件に優先して、グリルシャッター32を強制的に閉とすることもできる。
【0066】
ちなみに、冷媒がオリフィス64を通過しないときは、外部熱交換器30に導入される直前における冷媒の圧力は、十分に大きいものである。これにより、外部熱交換器30において外気と冷媒との間で十分に熱交換されたとしても、外部熱交換器30を通過した直後での冷媒の圧力は十分に確保されて、電池21の冷却という点では問題を生じないものである。
【0067】
前述した冷媒循環経路について、各種センサS1~S14が設けられている。センサS1は、配管62に設けられて、圧縮機60から吐出された冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS2は、配管63に設けられて、冷媒の圧力を検出する圧力センサである(高圧センサ)。センサS3は、グリルシャッター32付近に設けられて、外気の温度を検出する温度センサである。センサS4は、配管67に設けられて、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS5は、配管67に設けられて、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒の圧力を検出する圧力センサである(低圧センサ)。
【0068】
センサS6は、電池21に設けられて、電池21の温度を検出する温度センサである。センサS7は、配管82に設けられて、熱交換器81を通過した直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS8は、配管82に設けられて、電池冷却用の熱交換器81を通過した直後の冷媒の圧力を検出する圧力センサである。
【0069】
センサS9は、冷房用の熱交換器45に設けられて、熱交換器45の温度を検出する温度センサである。センサS10は、配管72に設けられて、熱交換器45を通過した直後の冷媒の温度を検出する温度センサである。センサS11は、電気式のヒータ48の直下流側に設けられて、ヒータ48を通過した直後の空調エアの温度を検出する温度センサである。
【0070】
図8は、電池冷却を含む空調制御を行うための制御系統例を示す。図中Uは、マイクロコンピュータを利用して構成された制御ユニットである。制御ユニットUは、制御手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAMやインターフェイスを備えている。
【0071】
上記制御ユニットUには、前述した各種センサS1~S11の他、センサS12~ S15からの信号が入力される。センサS12は、車室内の温度を検出する温度センサである。センサS13は、車室内の湿度を検出する湿度センサである。センサS14は、車室内に設けられて日射量を検出する日射量センサである。S15は、車速を検出する車速センサである。
【0072】
制御ユニットUには、さらに、乗員によって操作される空調操作器S16からの信号が入力される。空調操作器S16は、従来と同様に構成されているが、例えば、空調のON、OFFスイッチ、温度設定スイッチ、風量変更スイッチ、吹き出し口変更スイッチ、自動モードと手動モードとのいずれかを選択するスイッチ等々を有している。
【0073】
制御ユニットUは、電池冷却と空調制御のために、図8に示す前述した各種機器類を制御する他、吹き出し口を選択するための吹き出し口切換ダンパ50を制御する。
【0074】
制御ユニットUは、上記空調操作器S16での操作に応じて、暖房、冷房等の空調制御を適宜行う。なお、空調制御そのものは、一般的な空調制御の場合と変わりがないので、これ以上の説明は省略する。
【0075】
制御ユニットUは、電池冷却が要求されるときに、冷媒の圧力が低下し過ぎてしまう事態を防止するための制御を実行する。このための制御例について、図9に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、以下の説明でQはステップを示す。
【0076】
まず、図9のQ1において、温度センサS6により検出される電池21の温度が所定値(所定温度で、例えば50℃)以上であるか否かが判別される。このQ1の判別でNOのときは、電池冷却を必要としないときなので、そのまま終了される。
【0077】
上記Q1の判別でYESのときは、Q2において、電池冷却が実行される。すなわち、冷媒が膨張弁83、電池用熱交換器81を流れて、電池21が冷却される。
【0078】
Q2の後、Q3において、圧力センサS5で検出される冷媒の圧力が、所定圧力以下であるか否かが判別される。このQ3の判別でNOのときは、Q5において、上記温度センサS6により検出される電池21の温度が所定値未満であるか否かが判別される。このQ5の判別でNOのときは、Q2に戻る(電池冷却の続行)。
【0079】
上記Q5の判別でYESのときは、Q6において、電池冷却が終了される(冷媒が電池用熱交換器81を流れない状態へ変更)。
【0080】
前記Q3の判別でYESのときは、冷媒の圧力が低下し過ぎていて、電池用熱交換器81による冷却能力(受熱能力)が不足する場合である。このときは、Q4において、ブロア43の回転数を減少させて、空調エアの風量が低減される。これにより、暖房用熱交換器47における冷媒と空調エアとの間での熱交換量が低減されて、冷媒の圧力低下が抑制されることになる。すなわち、電池用熱交換器81での冷却能力が十分に確保されて、電池21の冷却を十分に行うことが可能になる。
【0081】
上記Q4では、さらに、電気ヒータ48がON(作動)されて、空調エアの加温が行われる。すなわち、空調エアの風量低減に伴う暖房不足が、電気ヒーター48を作動させることによって補償される。このQ4の後は、Q5へ移行される。
【0082】
図10は、本発明の第2の制御例を示すものである。以下、図10の制御例について説明する。まず、Q11において、温度センサS6により検出される電池21の温度が所定値(所定温度で、例えば50℃)以上であるか否かが判別される。このQ11の判別でNOのときは、電池冷却を必要としないときなので、そのまま終了される。
【0083】
上記Q11の判別でYESのときは、Q12において、圧力センサS5で検出される冷媒の圧力が、所定圧力以下であるか否かが判別される。このQ12の判別でNOのときは、Q13において、電池冷却が実行される。すなわち、冷媒が膨張弁83、電池用熱交換器81を流れて、電池21が冷却される。
【0084】
Q13の後、Q14において、温度センサS6により検出される電池21の温度が前記所定値未満であるか否かが判別される。このQ14の判別でNOのときは、Q13に戻る(電池冷却の続行)。
【0085】
上記Q14の判別でYESのときは、Q15において、電池冷却が終了される(冷媒が電池用熱交換器81を流れない状態へ変更)。
【0086】
前記Q12の判別でYESのときは、Q16において、湿度センサS13により検出される車室内の湿度が所定値(所定湿度で、例えば70%)以上であるか否かが判別される。このQ16の判別でYESのときは、フロントウインドガラス等に曇りを生じる可能性が高いときである。このときは、Q17において、切換ダンパ42を制御して、外気導入とされる。これにより、室内の湿度が低減される。Q17の後は、再びQ16の判別が行われる。
【0087】
上記Q16の判別でNOときは、車室内の湿度が、フロントウインドガラス等の曇りが生じない低湿度のときである。このときは、Q18において内気循環となるように切換ダンパ42が制御される。すなわち、空調通路41に導入される空調エアは、外気導入に比して内気循環は相対的に暖かいために、暖房用熱交換器47での熱交換量が低減されることになる。これにより、冷媒の圧力低下が抑制される。
【0088】
上記Q18の後は、Q19において、電池冷却が実行される。すなわち、冷媒が膨張弁得83、電池用熱交換器81を流れて、電池21が冷却される。このとき、内気循環とされていることから、暖房用熱交換器47における冷媒と空調エアとの間での熱交換量が低減されて、冷媒の圧力低下が抑制されることになる。すなわち、電池用熱交換器81での冷却能力が十分に確保されて、電池21の冷却を十分に行うことが可能になる。
【0089】
上記Q19の後は、Q20において、温度センサS6により検出される電池21の温度が前記所定値未満であるか否かが判別される。このQ20の判別でNOのときは、Q18に戻る(内気循環状態での電池冷却の続行)。また、Q20の判別でYESのときは、Q15に移行されて、電池冷却が終了される。
【0090】
図11は、本発明の第3の制御例を示すものである。以下、図11の制御例について説明する。まず、Q31において、温度センサS6により検出される電池21の温度が所定値(所定温度で、例えば50℃)以上であるか否かが判別される。このQ31の判別でNOのときは、電池冷却を必要としないときなので、そのまま終了される。
【0091】
上記Q31の判別でYESのときは、Q32において、現在暖房時であるか否かが判別される。このQ32の判別は、冷媒の圧力が大きく低下する可能性の高い状態であるか否かの判別となる。
【0092】
上記Q32の判別でNOのときは、Q33において、電池冷却が実行される。すなわち、冷媒が膨張弁83、電池用熱交換器81を流れて、電池21が冷却される。
【0093】
Q33の後、Q34において、温度センサS6により検出される電池21の温度が前記所定値未満であるか否かが判別される。このQ34の判別でNOのときは、Q33に戻る(電池冷却の続行)。
【0094】
上記Q34の判別でYESのときは、Q35において、電池冷却が終了される(冷媒が電池用熱交換器81を流れない状態へ変更)。
【0095】
前記Q32の判別でYESのとき、つまり冷媒の圧力が小さくなりすぎる可能性の高いときは、Q36移行の処理が行われる。すなわち、Q36において内気循環とされ(図10のQ18対応)、Q37においてブロア風量低減と電気ヒータ48の作動が行われる(図9のQ4対応)。さらにQ38において、グリルシャッター32が閉状態とされる。上記Q36~Q38の処理は、それぞれ冷媒の圧力低下を抑制する制御なので、これらを全て実行することにより、冷媒の圧力低下抑制を十分に行うことが可能となって、電池用熱交換器81での冷却能力を十分に確保する上で極めて好ましいものとなる。
【0096】
上記Q39の後は、Q40において、温度センサS6により検出される電池21の温度が前記所定値未満であるか否かが判別される。このQ40の判別でNOのときは、Q36に戻る(電池冷却の続行)。
【0097】
上記Q40の判別でYESのときは、Q35において、電池冷却が終了される(冷媒が電池用熱交換器81を流れない状態へ変更)。
【0098】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。電池冷却のために、グリルシャッターの32の基本的な開閉条件に優先してグリルシャッター32を閉じるときは、外部熱交換器30を通過した直後の冷媒の圧力を極力十分に確保するために、圧縮機60の回転数(圧縮能力)を増大補正(例えば上限回転数まで増大)させることもできる。
【0099】
基本的な開閉条件に優先してグリルシャッター32を強制的に閉じる場合において、冷媒の圧力を検出するセンサとしては、圧力センサS5に代えて、例えば圧力センサS8あるいはS2を用いることもできる。なお、冷媒の圧力を検出する圧力センサとしては、外部熱交換器30を通過した後の冷媒の圧力を検出するものを用いるのが好ましい(圧力センサS5あるいはS8力を用いるのが好ましい)。
【0100】
冷房かつ電池冷却を行う場合に、冷房用の熱交換器45と電池用熱交換器81との冷却割合を変更可能とすることもできる。例えば、膨張弁73と83との開度割合を変更したり、別途流量調整弁を設けることもできる(例えば配管70と配管80との合流部(分岐部)に、分配割合変更の調整弁を設ける等)。
【0101】
グリルシャッター32の基本的な開閉条件は、車速に代えて外気温度に応じて設定してもよく、あるいは車速と外気温度との両方に応じて設定することもできる。例えば、外気温度に応じて設定するときは、外気温度が所定温度以下の低温時にグリルシャッター32を閉状態とし、外気温度が所定温度を超える高温時にグリルシャッターを開くように設定することができる。また、車速が所定車速以上のときにグリルシャッター32を閉じるようにしつつ、この所定車速を外気温度に応じて変更することができ、この場合、外気温度が低いほど所定車速が低車速となるように変更し、外気温度が所定温度以下の低温時にはグリルシャッターを全閉とするように設定することもできる。また、グリルシャッター32は、全閉状態と全開状態との2種類に限らず、車速と外気温度との少なくとも一方に基づいて3段階以上の段階的に開度を変化させてもよく、また連続可変式に開度を変化させるようにしてもよい。
【0102】
曇り止めを行う場合は、冷媒の流れは基本的には暖房の場合と同じであり、湿度が高い場合は、冷媒がさらに冷房用熱交換器45を通過するようにすればよい(除湿)。圧縮機60は、電池21からの給電を受ける電動モータによって駆動される場合に限らず、走行用の駆動源の動力の一部を用いて駆動されるものであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、エンジンを有しない電気自動車用の空調装置として好適である。
【符号の説明】
【0104】
V:車両
20:空調ユニット
21:電池
22:モータ
30:外部熱交換器
31:クーリングファン
32:グリルシャッター
40空調ユニット
41:空調通路
42:切換ダンパ(内気循環と外気導入との切換用)
43:ブロア(風量変更用)
45:熱交換器(冷房用)
47:熱交換器(暖房用)
60:圧縮機
64:オリフィス(膨張弁)
65:バイパス配管
66:開閉弁
68:切換弁
73:膨張弁(冷房用)
81:熱交換器(電池冷却用)
83:膨張弁(電池冷却用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11