(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】車両用空調制御装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240425BHJP
F16D 48/06 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
B60H1/32 623Z
B60H1/32 623C
B60H1/32 623G
B60H1/32 623K
F16D48/06 101Z
(21)【出願番号】P 2020134075
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 勝哉
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-038934(JP,A)
【文献】特開2006-176035(JP,A)
【文献】特開2006-327394(JP,A)
【文献】特開2006-327569(JP,A)
【文献】特開2019-142316(JP,A)
【文献】特開2020-011605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F16D 48/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機の動力によりクラッチを介して作動するコンプレッサーの駆動状態を制御する車両用空調制御装置において、
前記コンプレッサーで圧縮された冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段で検出された冷媒の圧力が予め設定した圧力閾値を超えたとき、前記クラッチを切断して前記コンプレッサーを停止させる停止制御手段と、
前記停止制御手段により前記クラッチを切断してからの経過時間を計測する計時手段と、
前記計時手段で計測された経過時間が予め設定した時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続して前記コンプレッサーを駆動させる駆動制御手段と、
前記クラッチの蓄熱に関連するパラメータを検出する蓄熱検出手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、
前記蓄熱検出手段で検出されたパラメータに基づいて前記クラッチの蓄熱が増加しているか減少しているかを判定し、前記クラッチの蓄熱が増加している場合に前記時間閾値を長くする一方、前記クラッチの蓄熱が減少している場合に前記時間閾値を短くする補正を行う時間閾値補正部と、
前記計時手段で計測された経過時間が前記時間閾値補正部で補正された時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続する制御信号を生成する接続制御部と、を有し、
前記蓄熱検出手段は、前記クラッチの蓄熱に関連するパラメータとして、前記クラッチの温度、前記駆動機の回転数、および車両の外気温度のうち、前記クラッチの温度を優先して検出するとともに、前記駆動機の回転数および前記車両の外気温度のうちの少なくとも1つを検出し、
前記時間閾値補正部は、前記蓄熱検出手段で検出された前記クラッチの温度が上昇しているときに前記クラッチの蓄熱が増加していると判定し、前記クラッチの温度が低下しているときに前記クラッチの蓄熱が減少していると判定し、前記クラッチの温度が変化していないときに前記クラッチの温度以外の他のパラメータの値に応じて前記クラッチの蓄熱の増減を判定して、該判定結果に従い前記時間閾値の補正を行うことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
駆動機の動力によりクラッチを介して作動するコンプレッサーの駆動状態を制御する車両用空調制御装置において、
前記コンプレッサーで圧縮された冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段で検出された冷媒の圧力が予め設定した圧力閾値を超えたとき、前記クラッチを切断して前記コンプレッサーを停止させる停止制御手段と、
前記停止制御手段により前記クラッチを切断してからの経過時間を計測する計時手段と、
前記計時手段で計測された経過時間が予め設定した時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続して前記コンプレッサーを駆動させる駆動制御手段と、
前記クラッチの蓄熱に関連するパラメータを検出する蓄熱検出手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、
前記蓄熱検出手段で検出されたパラメータに基づいて前記クラッチの蓄熱が増加しているか減少しているかを判定し、前記クラッチの蓄熱が増加している場合に前記時間閾値を長くする一方、前記クラッチの蓄熱が減少している場合に前記時間閾値を短くする補正を行う時間閾値補正部と、
前記計時手段で計測された経過時間が前記時間閾値補正部で補正された時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続する制御信号を生成する接続制御部と、を有し、
前記蓄熱検出手段は、前記クラッチの蓄熱に関連するパラメータとして、前記クラッチの温度、前記駆動機の回転数、および前記車両の外気温度をそれぞれ検出し、
前記時間閾値補正部は、前記蓄熱検出手段で検出された各パラメータの値に応じて前記クラッチの蓄熱の増減を個別に判定し、該蓄熱の増減の度合いが最も大きいパラメータによる判定結果に従い前記時間閾値の補正を行うことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記クラッチの負荷に関連するパラメータを検出する負荷検出手段を備え、
前記停止制御手段は、
前記負荷検出手段で検出されたパラメータに基づいて前記クラッチの負荷が増加しているか減少しているかを判定し、前記クラッチの負荷が増加している場合に前記圧力閾値を低くする一方、前記クラッチの負荷が減少している場合に前記圧力閾値を高くする補正を行う圧力閾値補正部と、
前記圧力検出手段で検出された冷媒の圧力が前記圧力閾値補正部で補正された圧力閾値を超えたとき、前記クラッチを切断する制御信号を生成する切断制御部と、
を有することを特徴とする請求項
1または2に記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
前記負荷検出手段は、前記クラッチの負荷に関連するパラメータとして、前記クラッチの温度、前記駆動機の回転数、および車両の外気温度のうちの少なくとも1つを検出し、
前記圧力閾値補正部は、前記負荷検出手段で検出されたパラメータの値が上昇しているときに前記クラッチの負荷が増加していると判定し、前記パラメータの値が低下しているときに前記クラッチの負荷が減少していると判定して、該判定結果に従い前記圧力閾値の補正を行うことを特徴とする請求項
3に記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
前記負荷検出手段は、前記クラッチの負荷に関連するパラメータとして、前記駆動機の回転数を優先して検出するとともに、前記クラッチの温度および前記車両の外気温度のうちの少なくとも1つを検出し、
前記圧力閾値補正部は、前記負荷検出手段で検出された前記駆動機の回転数が上昇しているときに前記クラッチの負荷が増加していると判定し、前記駆動機の回転数が低下しているときに前記クラッチの負荷が減少していると判定し、前記駆動機の回転数が変化していないときに前記駆動機の回転数以外の他のパラメータの値に応じて前記クラッチの負荷の増減を判定して、該判定結果に従い前記圧力閾値の補正を行うことを特徴とする請求項
4に記載の車両用空調制御装置。
【請求項6】
駆動機の動力によりクラッチを介して作動するコンプレッサーの駆動状態を制御する車両用空調制御装置において、
前記コンプレッサーで圧縮された冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段で検出された冷媒の圧力が予め設定した圧力閾値を超えたとき、前記クラッチを切断して前記コンプレッサーを停止させる停止制御手段と、
前記停止制御手段により前記クラッチを切断してからの経過時間を計測する計時手段と、
前記計時手段で計測された経過時間が予め設定した時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続して前記コンプレッサーを駆動させる駆動制御手段と、
前記クラッチの負荷に関連するパラメータを検出する負荷検出手段と、を備え、
前記停止制御手段は、
前記負荷検出手段で検出されたパラメータに基づいて前記クラッチの負荷が増加しているか減少しているかを判定し、前記クラッチの負荷が増加している場合に前記圧力閾値を低くする一方、前記クラッチの負荷が減少している場合に前記圧力閾値を高くする補正を行う圧力閾値補正部と、
前記圧力検出手段で検出された冷媒の圧力が前記圧力閾値補正部で補正された圧力閾値を超えたとき、前記クラッチを切断する制御信号を生成する切断制御部と、を有し、
前記負荷検出手段は、前記クラッチの負荷に関連するパラメータとして、前記クラッチの温度、前記駆動機の回転数、および前記車両の外気温度をそれぞれ検出し、
前記圧力閾値補正部は、前記負荷検出手段で検出された各パラメータの値に応じて前記クラッチの負荷の増減を個別に判定し、該負荷の増減の度合いが最も大きいパラメータによる判定結果に従い前記圧力閾値の補正を行うことを特徴とする車両用空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサーの駆動状態を制御する車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調システムでは、冷凍サイクル内を循環する冷媒の圧力に応じてコンプレッサーの駆動状態を制御することにより、冷媒の過充填などが原因で冷媒の圧力が異常に上昇した場合でも、コンプレッサーの破損等を防止できるようにする対策がとられてきた。このような空調システムの保護を目的とした制御技術の一つとして、コンプレッサーの吐出側に設置した圧力スイッチ(圧力センサ)で検出される冷媒の圧力が所定の閾値以上に上昇した場合にコンプレッサーを停止し、その後、冷媒の圧力が上記閾値未満に低下したことが確認されるとコンプレッサーを再び駆動する制御、いわゆる高圧カット制御が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-294072号公報
【文献】特開2019-142316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の高圧カット制御においては、圧力スイッチで検出される冷媒の圧力が、車両の外気温度等の環境要因に左右されて増減し、その増減速度も環境に依って異なることが多い。このため、冷媒の圧力の検出値と所定の閾値との大小比較によって高圧カット制御を行った場合、コンプレッサーを停止してから再び駆動するまでの時間(以下では「高圧カット時間」と呼ぶ)にばらつきが生じるという課題があった。
【0005】
通常、コンプレッサーは高圧下で作動しており、該コンプレッサーの駆動/停止(オン/オフ)を切り替えるクラッチは、切替え時のクラッチ板の滑りによって発熱し、その熱が内部に蓄えられる。このようなクラッチの蓄熱は、高圧カット制御においてコンプレッサーが停止、すなわち、クラッチが切断されている間に放熱される。しかしながら、上記のような高圧カット時間のばらつきによって、コンプレッサーの停止期間が短くなると、クラッチの十分な放熱が困難になる場合がある。この場合、クラッチ板の変形や破損、早期摩耗、固着等の不具合が発生する可能性があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、クラッチの蓄熱による不具合の発生を低減することができる高圧カット制御を実現可能な車両用空調制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の一態様は、駆動機の動力によりクラッチを介して作動するコンプレッサーの駆動状態を制御する車両用空調制御装置を提供する。この車両用空調制御装置は、前記コンプレッサーで圧縮された冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段で検出された冷媒の圧力が予め設定した圧力閾値を超えたとき、前記クラッチを切断して前記コンプレッサーを停止させる停止制御手段と、前記停止制御手段により前記クラッチを切断してからの経過時間を計測する計時手段と、前記計時手段で計測された経過時間が予め設定した時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続して前記コンプレッサーを駆動させる駆動制御手段と、前記クラッチの蓄熱に関連するパラメータを検出する蓄熱検出手段と、を備えている。前記駆動制御手段は、前記蓄熱検出手段で検出されたパラメータに基づいて前記クラッチの蓄熱が増加しているか減少しているかを判定し、前記クラッチの蓄熱が増加している場合に前記時間閾値を長くする一方、前記クラッチの蓄熱が減少している場合に前記時間閾値を短くする補正を行う時間閾値補正部と、前記計時手段で計測された経過時間が前記時間閾値補正部で補正された時間閾値に達したとき、前記クラッチを接続する制御信号を生成する接続制御部と、を有している。前記蓄熱検出手段は、前記クラッチの蓄熱に関連するパラメータとして、前記クラッチの温度、前記駆動機の回転数、および車両の外気温度のうち、前記クラッチの温度を優先して検出するとともに、前記駆動機の回転数および前記車両の外気温度のうちの少なくとも1つを検出する。前記時間閾値補正部は、前記蓄熱検出手段で検出された前記クラッチの温度が上昇しているときに前記クラッチの蓄熱が増加していると判定し、前記クラッチの温度が低下しているときに前記クラッチの蓄熱が減少していると判定し、前記クラッチの温度が変化していないときに前記クラッチの温度以外の他のパラメータの値に応じて前記クラッチの蓄熱の増減を判定して、該判定結果に従い前記時間閾値の補正を行う。
【発明の効果】
【0008】
上記のような本発明の一態様に係る車両用空調制御装置では、停止制御手段でコンプレッサーを停止させてから駆動制御手段でコンプレッサーを再び駆動させるまでの時間(高圧カット時間)が、計時手段で計測される経過時間および予め設定した時間閾値の関係に従って制御されるようになる。これにより、環境要因によって冷媒の圧力が増減した場合でも高圧カット時間にばらつきが生じることがないので、クラッチの放熱を確実に行うことができ蓄熱による不具合の発生を低減した高圧カット制御を実現することが可能になる。また、クラッチの蓄熱に関連性の高いクラッチの温度をパラメータとして優先的に用いることで、クラッチの蓄熱の増減を正確に判定できるようになるので、時間閾値を精度良く補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による車両用空調制御装置が適用された車両の空調システムを示す概念図である。
【
図2】上記実施形態による車両用空調制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】上記実施形態における高圧カット制御の動作を示すフローチャートである。
【
図4】上記実施形態においてクラッチの負荷に関連するパラメータと圧力閾値との関係の一例を示す図である。
【
図5】上記実施形態においてクラッチの蓄熱に関連するパラメータと時間閾値との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による車両用空調制御装置が適用された車両の空調システムを示す概念図である。
図1において、車両用空調制御装置1は、例えば、エンジン2等のパワーユニットを搭載したパワーユニット搭載ルーム50内にコンプレッサー3を備えた空調システムについて、コンプレッサー3の駆動状態を制御することが可能である。
【0011】
コンプレッサー3は、駆動機としてのエンジン2から伝達される動力によって作動し、内部に封入されている冷媒を圧縮して吐出する。エンジン2からコンプレッサー3への動力の伝達は、エンジン2のクランクシャフトに設けられたプーリー2aとコンプレッサー3に設けられたプーリー3aとに掛け渡されたベルト4、および電磁クラッチ5を介して行われる。電磁クラッチ5は、コンプレッサー3の駆動時にコンプレッサー3側のプーリー3aと電気的に接続され、エンジン2からの動力をコンプレッサー3に伝達する。電磁クラッチ5の状態(接続または切断)は、空調用電子制御ユニット(ECU)21から出力される制御信号に従って制御される。コンプレッサー3で圧縮された冷媒は、吐出側ホース6を通してコンデンサー7に送られる。
【0012】
コンデンサー7は、コンプレッサー3で圧縮された冷媒(気体)を冷却して液化させる。コンデンサー7には、ファン8によって外気が引き込まれており、冷媒の冷却が外気を利用して行われる。コンデンサー7で冷却された冷媒(液体)は、液パイプ9の中を通ってカーエアコン(HVAC)10に送られる。
【0013】
カーエアコン10は、車室51側に配置されており、膨張弁11とエバポレーター12とを有している。膨張弁11は、コンデンサー7で液化された冷媒を小さなノズル穴から噴射し、気化し易い霧状となった冷媒をエバポレーター12内へ送る。エバポレーター12では、霧状の冷媒が周囲の熱を奪って気化する。これによりエバポレーター12が冷やされ、エバポレーター12の周辺に図示を省略したブロワファン等からの風を送ることで冷風が生成される。エバポレーター12で気化された冷媒は、膨張弁11および吸入側ホース13を経由してコンプレッサー3に戻され、再び圧縮される。
【0014】
上記のような空調システムでは、コンプレッサー3、吐出側ホース6、コンデンサー7、液パイプ9、膨張弁11、エバポレーター12、および吸入側ホース13によって冷凍サイクルCが形成され、コンプレッサー3で圧縮された高圧の冷媒が冷凍サイクルC内を循環している。なお、
図1中の破線矢印は、冷凍サイクルC内を循環する冷媒の移動方向を表している。
【0015】
空調用電子制御ユニット21は、電磁クラッチ5を介してコンプレッサー3をオン/オフさせる、すなわち、電磁クラッチ5を接続してコンプレッサー3を駆動させるか、または、電磁クラッチ5を切断してコンプレッサー3を停止させるかを制御可能である。空調用電子制御ユニット21は、CPU等のプロセッサ、フラッシュROM等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリ、外部機器との入出力インターフェース、およびこれらを相互に通信可能に接続するバスを有する周知のマイクロコンピュータを備えている。空調用電子制御ユニット21は、車両の図示を省略したイグニッションスイッチがオンされてバッテリーに接続されることにより起動される。空調用電子制御ユニット21には、圧力センサー(PS)22、回転数センサー(RS)23、クラッチ温度センサー(CTS)24および外気温度センサー(OTS)25等から出力される各信号がそれぞれ入力される。
【0016】
圧力センサー22は、コンプレッサー3で圧縮された冷媒の圧力を計測する。本実施形態において圧力センサー22は、例えば、コンプレッサー3の吐出側で液パイプ9上に配置されている。圧力センサー22は、コンデンサー7を通過し液パイプ9内を膨張弁11に向けて流れる冷媒の圧力を計測して、その計測結果を示す信号を空調用電子制御ユニット21に出力する。なお、圧力センサー22の配置は上記一例に限定されない。
【0017】
回転数センサー23は、例えば、角度検出デバイス等を用いてエンジン2側のプーリー2aのクランク角度を計測し、その計測値からエンジン2の回転数を測定する。回転数センサー23は、測定したエンジン2の回転数を示す信号を空調用電子制御ユニット21に出力する。
【0018】
クラッチ温度センサー24は、電磁クラッチ5に隣接して配置されており、電磁クラッチ5の温度を計測して、その計測結果を示す信号を空調用電子制御ユニット21に出力する。
外気温度センサー25は、車両の外気温度を計測して、その計測結果を示す信号を空調用電子制御ユニット21に出力する。
【0019】
図2は、本実施形態による車両用空調制御装置1の機能ブロック図である。
図2において、車両用空調制御装置1は、空調用電子制御ユニット(ECU)21の機能ブロックとして、クラッチ温度検出部21a、エンジン回転数検出部21b、外気温度検出部21c、圧力閾値補正部21d、時間閾値補正部21e、切断制御部21f、計時部21g、および接続制御部21hを有している。
【0020】
クラッチ温度検出部21aは、クラッチ温度センサー24からの出力信号を受けて、該出力信号により示される電磁クラッチ5の温度CTを検出する。クラッチ温度検出部21aで検出された電磁クラッチ5の温度CTは、圧力閾値補正部21dおよび時間閾値補正部21eにそれぞれ伝えられる。
【0021】
エンジン回転数検出部21bは、回転数センサー23からの出力信号を受けて、該出力信号により示されるエンジン2の回転数Rを検出する。エンジン回転数検出部21bで検出されたエンジン2の回転数Rも、圧力閾値補正部21dおよび時間閾値補正部21eにそれぞれ伝えられる。
【0022】
外気温度検出部21cは、外気温度センサー25からの出力信号を受けて、該出力信号により示される外気温度OTを検出する。外気温度検出部21cで検出された外気温度OTも、圧力閾値補正部21dおよび時間閾値補正部21eにそれぞれ伝えられる。
【0023】
圧力閾値補正部21dは、クラッチ温度検出部21aから伝えられる電磁クラッチ5の温度CT、エンジン回転数検出部21bから伝えられるエンジン2の回転数R、および外気温度検出部21cから伝えられる外気温度OTに基づいて、電磁クラッチ5の負荷が増加しているか減少しているかを判定する。そして、圧力閾値補正部21dは、電磁クラッチ5の負荷が増加している場合に、書き換え可能なメモリ等に予め設定および記憶されている圧力閾値Pthを低くする補正を行う一方、電磁クラッチ5の負荷が減少している場合には、圧力閾値Pthを高くする補正を行う。ただし、電磁クラッチ5の負荷に実質的な増減が生じていない場合には、圧力閾値補正部21dは現行の圧力閾値Pthを維持するものとする。圧力閾値補正部21dで処理された圧力閾値Pthは、切断制御部21fに伝えられる。なお、圧力閾値補正部21dにおける電磁クラッチ5の負荷の増減の具体的な判定方法、および該負荷の増減に応じた圧力閾値Pthの具体的な補正方法については後述する。
【0024】
時間閾値補正部21eは、クラッチ温度検出部21aから伝えられる電磁クラッチ5の温度CT、エンジン回転数検出部21bから伝えられるエンジン2の回転数R、および外気温度検出部21cから伝えられる外気温度OTに基づいて、電磁クラッチ5の蓄熱が増加しているか減少しているかを判定する。そして、時間閾値補正部21eは、電磁クラッチ5の蓄熱が増加している場合に、書き換え可能なメモリ等に予め設定および記憶されている時間閾値Tthを長くする補正を行う一方、電磁クラッチ5の蓄熱が減少している場合には、時間閾値Tthを短くする補正を行う。ただし、電磁クラッチ5の蓄熱に実質的な増減が生じていない場合には、時間閾値補正部21eは現行の時間閾値Tthを維持するものとする。時間閾値補正部21eで処理された時間閾値Tthは、接続制御部21hに伝えられる。なお、時間閾値補正部21eにおける電磁クラッチ5の蓄熱の増減の具体的な判定方法、および該蓄熱の増減に応じた時間閾値Tthの具体的な補正方法についても後述する。
【0025】
切断制御部21fは、圧力センサー22からの出力信号を受けて、該出力信号により示される冷媒の圧力Pを検出する。そして、切断制御部21fは、圧力閾値補正部21dから伝えられる圧力閾値Pthを参照し、冷媒の圧力Pが圧力閾値Pthを超えたとき、電磁クラッチ5を切断するための制御信号S1を生成する。切断制御部21fで生成された制御信号S1は、電磁クラッチ5に出力されるとともに計時部21gにも伝えられる。切断制御部21fからの制御信号S1に従って電磁クラッチ5が切断されると、エンジン2からの動力がコンプレッサー3に伝達されなくなりコンプレッサー3が停止する。
【0026】
計時部21gは、切断制御部21fからの制御信号S1が伝えられると、図示を省略した内部のタイマー回路を起動することにより、制御信号S1に従って電磁クラッチ5が切断されてからの経過時間Tを計測する。計時部21gで計測された経過時間Tは、接続制御部21hに伝えられる。
【0027】
接続制御部21hは、計時部21gで計測された経過時間Tが伝えられると、時間閾値補正部21eから伝えられる時間閾値Tthを参照し、電磁クラッチ5が切断されてからの経過時間Tが時間閾値Tthに達したとき、電磁クラッチ5を接続するための制御信号S2を生成する。接続制御部21hで生成された制御信号S2は電磁クラッチ5に出力され、該制御信号S2に従って電磁クラッチ5が接続されると、エンジン2からの動力がコンプレッサー3に伝達されてコンプレッサー3の駆動が再開される。
【0028】
なお、本実施形態では、電磁クラッチ5が本発明のクラッチに相当し、圧力センサー22が本発明の圧力検出手段に相当し、圧力閾値補正部21dおよび切断制御部21fが本発明の停止制御手段に相当し、計時部21gが本発明の計時手段に相当し、時間閾値補正部21eおよび接続制御部21hが本発明の駆動制御手段に相当する。また、回転数センサー23およびエンジン回転数検出部21bと、クラッチ温度センサー24およびクラッチ温度検出部21aと、外気温度センサー25および外気温度検出部21cとが、本発明における蓄熱検出手段と負荷検出手段との双方に相当する。
【0029】
次に、本実施形態による車両用空調制御装置1の動作について、
図3に示すフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
上述したような構成の車両用空調制御装置1では、まず、車両のイグニッションスイッチがオンされることで空調用電子制御ユニット21等の各部が起動される。そして、
図3のステップS10において、車室51内の計器盤周辺に配置された空調操作パネルのエアコンスイッチ(図示省略)がオンされると、次のステップS20で車両用空調制御装置1は、電磁クラッチ5を接続してコンプレッサー3を始動させる制御を実行する。コンプレッサー3の始動によって、圧縮された冷媒が冷凍サイクルC内を循環するようになるので、車両用空調制御装置1は、冷媒の圧力が異常に上昇した場合であってもコンプレッサーの破損等を防止するための高圧カット制御を開始する。
【0030】
本実施形態の車両用空調制御装置1による高圧カット制御では、続くステップS30において、圧力閾値補正部21dが電磁クラッチ5の負荷に応じて圧力閾値Pthを補正する処理を実行する。具体的に、圧力閾値補正部21dでは、まず、クラッチ温度検出部21aから伝えられる電磁クラッチ5の温度CTと、エンジン回転数検出部21bから伝えられるエンジン2の回転数Rと、外気温度検出部21cから伝えられる車両の外気温度OTとを利用して、電磁クラッチ5の負荷が増加しているか減少しているかの判定が行われる。
【0031】
上記電磁クラッチ5の負荷の増減判定は、例えば、電磁クラッチ5の負荷に関連する3つのパラメータ(電磁クラッチ5の温度CT、エンジン2の回転数R、車両の外気温度OT)のうちから、空調システムの稼働状況等に応じて少なくとも1つのパラメータを選択して行うことが可能である。
【0032】
具体的な一例を挙げると、通常のエアコン稼働時において、電磁クラッチ5の負荷との関連性が最も高いパラメータはエンジン2の回転数Rであることが想定される。そこで、圧力閾値補正部21dでは、3つのパラメータのうちからエンジン2の回転数Rが優先して選択され、回転数Rが上昇しているときに電磁クラッチ5の負荷の増加が判定され、回転数Rが低下しているときに電磁クラッチ5の負荷の減少が判定される。また、回転数Rが実質的に変化していないときには、エンジン2の回転数R以外の他のパラメータ(電磁クラッチ5の温度CTまたは外気温度OT)が選択され、該パラメータの値が上昇しているときに電磁クラッチ5の負荷の増加が判定され、該パラメータの値が低下しているときに電磁クラッチ5の負荷の減少が判定される。
【0033】
或いは、他の具体的な一例として、圧力閾値補正部21dでは、電磁クラッチ5の温度CT、エンジン2の回転数R、および車両の外気温度OTの3つのパラメータのそれぞれについて、電磁クラッチ5の負荷の増減が個別に判定され、該負荷の増減の度合いが最も大きいパラメータが選択されて、該パラメータによる判定結果が圧力閾値Pthの補正に利用されるようにすることも可能である。
【0034】
上記のようにして電磁クラッチ5の負荷の増減判定が行われると、圧力閾値補正部21dでは、負荷が増加している場合に圧力閾値Pthを低くする一方、負荷が減少している場合に圧力閾値Pthを高くする補正が行われる。
【0035】
図4は、圧力閾値Pthと各パラメータとの関係の一例を示す概念図であり、上段が電磁クラッチ5の温度CTに対する圧力閾値Pthの関係、中段がエンジン2の回転数Rに対する圧力閾値Pthの関係、下段が車両の外気温度OTに対する圧力閾値Pthの関係を表している。
図4の上段に示すように、電磁クラッチ5の温度CTに対する圧力閾値Pthの関係は、電磁クラッチ5の温度CTが比較的低温(CT1以下)の場合、エアコンを積極的に使用するために、圧力閾値Pthが相対的に高い所定値に設定される。一方、電磁クラッチ5の温度CTが比較的高温(CT2以上)の場合、電磁クラッチ5を積極的に保護するために、圧力閾値Pthが相対的に低い所定値に設定される。電磁クラッチ5の温度CTがCT1とCT2の間にある場合には、電磁クラッチ5の温度CTが上昇するほど圧力閾値Pthが低められ、電磁クラッチ5の温度CTが低下するほど圧力閾値Pthが高められる。つまり、電磁クラッチ5の温度CTが上昇傾向にあって電磁クラッチ5の負荷の増加が見込まれる場合に、圧力閾値Pthが相対的に低い値に設定されるようにすることで、電磁クラッチ5の積極的な保護が図られるようにするとともに、電磁クラッチ5の温度CTが低下傾向にあって電磁クラッチ5の負荷の減少が見込まれる場合には、圧力閾値Pthが相対的に高い値に設定されるようにすることで、エアコンの積極的な使用が図られるようにしている。
【0036】
また、
図4の中段に示すように、エンジン2の回転数Rに対する圧力閾値Pthの関係は、エンジン2の回転数Rが比較的低い(R1以下)の場合、エアコンを積極的に使用するために、圧力閾値Pthが相対的に高い所定値に設定される。一方、エンジン2の回転数Rが比較的高い(R2以上)の場合、電磁クラッチ5を積極的に保護するために、圧力閾値Pthが相対的に低い所定値に設定される。エンジン2の回転数RがR1とR2の間にある場合には、エンジン2の回転数Rが上昇するほど圧力閾値Pthが低められ、エンジン2の回転数Rが低下するほど圧力閾値Pthが高められる。つまり、エンジン2の回転数Rが上昇傾向にあって電磁クラッチ5の負荷の増加が見込まれる場合に、圧力閾値Pthが相対的に低い値に設定されるようにすることで、電磁クラッチ5の積極的な保護が図られるようにするとともに、エンジン2の回転数Rが低下傾向にあって電磁クラッチ5の負荷の減少が見込まれる場合には、圧力閾値Pthが相対的に高い値に設定されるようにすることで、エアコンの積極的な使用が図られるようにしている。
【0037】
さらに、
図4の下段に示すように、外気温度OTに対する圧力閾値Pthの関係は、外気温度OTが比較的低温(OT1以下)の場合、エアコンを積極的に使用するために、圧力閾値Pthが相対的に高い所定値に設定される。一方、外気温度OTが比較的高温(OT2以上)の場合、電磁クラッチ5を積極的に保護するために、圧力閾値Pthが相対的に低い所定値に設定される。外気温度OTがOT1とOT2の間にある場合には、外気温度OTが上昇するほど圧力閾値Pthが低められ、外気温度OTが低下するほど圧力閾値Pthが高められる。つまり、外気温度OTが上昇傾向にあって電磁クラッチ5の負荷の増加が見込まれる場合に、圧力閾値Pthが相対的に低い値に設定されるようにすることで、電磁クラッチ5の積極的な保護が図られるようにするとともに、外気温度OTが低下傾向にあって電磁クラッチ5の負荷の減少が見込まれる場合には、圧力閾値Pthが相対的に高い値に設定されるようにすることで、エアコンの積極的な使用が図られるようにしている。
【0038】
上記のようにして圧力閾値補正部21dによる電磁クラッチ5の負荷に応じた圧力閾値Pthの補正処理(
図3のステップS30)が完了すると、続くステップS40に進み、切断制御部21fにおいて、圧力センサー22により検出された冷媒の圧力Pが圧力閾値補正部21dから伝えられる圧力閾値Pthを超えたか否かの判定が行われる。冷媒の圧力Pが圧力閾値Pthを超えている場合には(YES)、次のステップS50に進み、冷媒の圧力Pが圧力閾値Pth以下の場合には(NO)、ステップS100に移る。
【0039】
ステップS50では、切断制御部21fが電磁クラッチ5を切断するための制御信号S1を生成し、該制御信号S1が電磁クラッチ5に出力され、かつ、計時部21gにも伝えられる。切断制御部21fからの制御信号S1に従って電磁クラッチ5が切断されると、エンジン2からの動力がコンプレッサー3に伝達されなくなりコンプレッサー3が停止する。続くステップS60では、切断制御部21fからの制御信号S1が伝えられた計時部21gにおいて、内部のタイマー回路が起動されることにより、電磁クラッチ5が切断されてからの経過時間Tの計測が開始される。
【0040】
上記経過時間Tの計測と並行して、次のステップS70では、時間閾値補正部21eが電磁クラッチ5の蓄熱に応じて時間閾値Tthを補正する処理を実行する。具体的に、時間閾値補正部21eでは、まず、クラッチ温度検出部21aから伝えられる電磁クラッチ5の温度CTと、エンジン回転数検出部21bから伝えられるエンジン2の回転数Rと、外気温度検出部21cから伝えられる車両の外気温度OTとを利用して、電磁クラッチ5の蓄熱が増加しているか減少しているかの判定が行われる。
【0041】
上記電磁クラッチ5の蓄熱の増減判定は、前述した圧力閾値補正部21dでの電磁クラッチ5の負荷の増減判定の場合と同様に、例えば、電磁クラッチ5の蓄熱に関連する3つのパラメータ(電磁クラッチ5の温度CT、エンジン2の回転数R、車両の外気温度OT)のうちから、空調システムの稼働状況等に応じて少なくとも1つのパラメータを選択して行うことが可能である。
【0042】
具体的な一例を挙げると、通常のエアコン稼働時において、電磁クラッチ5の蓄熱との関連性が最も高いパラメータは電磁クラッチ5の温度CTであることが想定される。そこで、時間閾値補正部21eでは、3つのパラメータのうちから電磁クラッチ5の温度CTが優先して選択され、該温度CTが上昇しているときに電磁クラッチ5の蓄熱の増加が判定され、温度CTが低下しているときに電磁クラッチ5の蓄熱の減少が判定される。また、電磁クラッチ5の温度CTが実質的に変化していないときには、電磁クラッチ5の温度CT以外の他のパラメータ(エンジン2の回転数Rまたは外気温度OT)が選択され、該パラメータの値が上昇しているときに電磁クラッチ5の蓄熱の増加が判定され、該パラメータの値が低下しているときに電磁クラッチ5の蓄熱の減少が判定される。
【0043】
或いは、他の具体的な一例として、時間閾値補正部21eでは、電磁クラッチ5の温度CT、エンジン2の回転数R、および車両の外気温度OTの3つのパラメータのそれぞれについて、電磁クラッチ5の蓄熱の増減が個別に判定され、該蓄熱の増減の度合いが最も大きいパラメータが選択されて、該パラメータによる判定結果が時間閾値Pthの補正に利用されるようにすることも可能である。
【0044】
上記のようにして電磁クラッチ5の蓄熱の増減判定が行われると、時間閾値補正部21eでは、蓄熱が増加している場合に時間閾値Tthを長くする一方、蓄熱が減少している場合に時間閾値Tthを短くする補正が行われる。
【0045】
図5は、時間閾値Tthと各パラメータとの関係の一例を示す概念図であり、上段が電磁クラッチ5の温度CTに対する時間閾値Tthの関係、中段がエンジン2の回転数Rに対する時間閾値Tthの関係、下段が車両の外気温度OTに対する時間閾値Tthの関係を表している。
図5の上段に示すように、電磁クラッチ5の温度CTに対する時間閾値Tthの関係は、電磁クラッチ5の温度CTが上昇するほど時間閾値Tthが長くなり、電磁クラッチ5の温度CTが低下するほど時間閾値Tthが短くなるように設定される。温度CTの変化に対する時間閾値Tthの変化の割合(直線の傾き)は、低温側で緩やかになっており、高温側で急峻になっている。図示の関係に従って設定される時間閾値Tthは、電磁クラッチ5の内部に蓄えられた熱を十分に放熱することが可能である。つまり、電磁クラッチ5の温度CTが低下傾向にあって電磁クラッチ5の蓄熱の減少が見込まれる場合には、時間閾値Tthが相対的に短く設定されるようにすることで、エアコンの積極的な使用が図られている。一方、電磁クラッチ5の温度CTが上昇傾向にあって電磁クラッチ5の蓄熱の増加が見込まれる場合には、時間閾値Tthが相対的に長く設定されるようにすることで、電磁クラッチ5の積極的な保護(放熱)が図られている。
【0046】
また、
図5の中段に示すように、エンジン2の回転数Rに対する時間閾値Tthの関係は、エンジン2の回転数Rが上昇するほど時間閾値Tthが長くなり、エンジン2の回転数Rが低下するほど時間閾値Tthが短くなるように設定される。回転数Rの変化に対する時間閾値Tthの変化の割合(直線の傾き)は、低回転側で緩やかになっており、高回転側で急峻になっている。図示の関係に従って設定される時間閾値Tthは、電磁クラッチ5の内部に蓄えられた熱を十分に放熱することが可能である。つまり、エンジン2の回転数Rが低下傾向にあって電磁クラッチ5の蓄熱の減少が見込まれる場合には、時間閾値Tthが相対的に短く設定されるようにすることで、エアコンの積極的な使用が図られている。一方、エンジン2の回転数Rが上昇傾向にあって電磁クラッチ5の蓄熱の増加が見込まれる場合には、時間閾値Tthが相対的に長く設定されるようにすることで、電磁クラッチ5の積極的な保護(放熱)が図られている。
【0047】
さらに、
図5の下段に示すように、外気温度OTに対する時間閾値Tthの関係は、外気温度OTが上昇するほど時間閾値Tthが長くなり、外気温度OTが低下するほど時間閾値Tthが短くなるように設定される。外気温度OTの変化に対する時間閾値Tthの変化の割合(直線の傾き)は、低温側で緩やかになっており、高温側で急峻になっている。図示の関係に従って設定される時間閾値Tthは、電磁クラッチ5の内部に蓄えられた熱を十分に放熱することが可能である。つまり、外気温度OTが低下傾向にあって電磁クラッチ5の蓄熱の減少が見込まれる場合には、時間閾値Tthが相対的に短く設定されるようにすることで、エアコンの積極的な使用が図られている。一方、外気温度OTが上昇傾向にあって電磁クラッチ5の蓄熱の増加が見込まれる場合には、時間閾値Tthが相対的に長く設定されるようにすることで、電磁クラッチ5の積極的な保護(放熱)が図られている。
【0048】
上記のようにして時間閾値補正部21eによる電磁クラッチ5の蓄熱に応じた時間閾値Tthの補正処理(
図3のステップS70)が完了すると、続くステップS80に進み、接続制御部21hにおいて、計時部21gで計測された経過時間Tが時間閾値補正部21eから伝えられる時間閾値Tthに達したか否かの判定が行われる。経過時間Tが時間閾値Tthに達している場合には(YES)、次のステップS90に進み、経過時間Tが時間閾値Tthに達していない場合には(NO)、前述のステップS70に戻って、時間閾値Tthの補正および経過時間Tの判定の処理が繰り返し行われる。
【0049】
ステップS90では、接続制御部21hが電磁クラッチ5を接続するための制御信号S2を生成して電磁クラッチ5に出力する。接続制御部21hからの制御信号S2に従って電磁クラッチ5が接続されると、エンジン2からの動力がコンプレッサー3に伝達されてコンプレッサー3の駆動が再開される。これにより一連の高圧カット制御が完了し、続くステップS100でエアコンが継続稼働する。なお、エアコン稼働中も冷媒の圧力Pを監視して上述したステップS30~ステップS90による高圧カット制御が継続的に行われる。
【0050】
以上説明したように本実施形態の車両用空調制御装置1では、切断制御部21fにより電磁クラッチ5を切断してコンプレッサー3を停止させてから、接続制御部21hにより電磁クラッチ5を接続してコンプレッサー3を再び駆動させるまでの時間(高圧カット時間)が、計時部21gで計測される経過時間Tと時間閾値Tthとの関係に従って制御されるようになる。これにより、環境要因によって冷媒の圧力Pが増減した場合でも高圧カット時間にばらつきが生じることがないので、電磁クラッチ5の放熱を確実に行うことができ蓄熱による不具合の発生を低減した高圧カット制御を実現することが可能になる。
【0051】
また、本実施形態の車両用空調制御装置1では、時間閾値補正部21eにより、電磁クラッチ5の蓄熱に関連するパラメータに基づいて電磁クラッチ5の蓄熱の増減が判定され、蓄熱が増加している場合に時間閾値Tthを長くする一方、蓄熱が減少している場合に時間閾値Tthを短くする補正が行われる。これにより、電磁クラッチ5の蓄熱の状態に応じて高圧カット時間を適切に調整できるようになるので、電磁クラッチ5の放熱を十分かつ効果的に行うことが可能になるとともに、エアコンの非稼働時間を最小限にすることで高圧カット制御により快適性が損なわれるのを防ぐことができる。
【0052】
さらに、電磁クラッチ5の蓄熱に関連性の高い電磁クラッチ5の温度CTをパラメータとして優先的に用いることで、電磁クラッチ5の蓄熱の増減を正確に判定できるようになるので、時間閾値Tthを精度良く補正することが可能になる。或いは、電磁クラッチ5の温度CT、エンジン2の回転数Rおよび外気温度OTの3つのパラメータをそれぞれ利用して電磁クラッチ5の蓄熱の増減を個別に判定し、該蓄熱の増減の度合いが最も大きいパラメータによる判定結果を用いるようにしても、時間閾値Tthの補正を高い精度で行うことができる。
【0053】
また、本実施形態の車両用空調制御装置1では、圧力閾値補正部21dにより、電磁クラッチ5の負荷に関連するパラメータに基づいて電磁クラッチ5の負荷の増減が判定され、負荷が増加している場合に圧力閾値Pthを低くする一方、負荷が減少している場合に圧力閾値Pthを高くする補正が行われる。これにより、電磁クラッチ5の負荷の状態に応じて冷媒圧力の上限値(高圧カット値)を適切に調整できるようになるので、電磁クラッチ5の負荷の上昇を防ぎつつ、高圧カット制御を最適なタイミングで効率的に実施することが可能になる。
【0054】
上記効果について具体的に説明すると、コンプレッサー3により冷媒が高圧に圧縮された状態では、電磁クラッチ5の回転数が高くなっているので、電磁クラッチ5の接続/切断(オン/オフ)を切り替えたときの負荷が大きくなる。このような状態では、電磁クラッチ5の温度が上昇し易くなり、クラッチ板の変形等の不具合が発生する可能性がある。そこで、電磁クラッチ5の負荷が大きくなり易い条件を検出し、その条件下では冷媒の圧力が相対的に低い状態(コンプレッサー3の回転数が低い状態)で電磁クラッチ5を切断(オフ)することにより、電磁クラッチ5の負荷の上昇を防ぎ、電磁クラッチ5の温度が上がらないようにすることができる。これにより、高圧カット時間が比較的短くなっても電磁クラッチ5の放熱を確実に行うことができ、効率的な高圧カット制御が実現可能になる。
【0055】
さらに、電磁クラッチ5の負荷に関連性の高いエンジン2の回転数Rをパラメータとして優先的に用いることで、電磁クラッチ5の負荷の増減を正確に判定できるようになるので、圧力閾値Pthを精度良く補正することが可能になる。或いは、エンジン2の回転数R、電磁クラッチ5の温度CTおよび外気温度OTの3つのパラメータをそれぞれ利用して電磁クラッチ5の負荷の増減を個別に判定し、該負荷の増減の度合いが最も大きいパラメータによる判定結果を用いるようにしても、圧力閾値Pthの補正を高い精度で行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、クラッチ温度センサー24を利用して電磁クラッチ5の温度CTを検出する構成例を示したが、エンジン2側とコンプレッサー3側との回転数の差からクラッチ板の滑り具合を検出し、該滑り具合と外気温度などから電磁クラッチ5の温度CTを推定するようにしてもよい。また、既述の実施形態では、エンジン2から伝達される動力によってコンプレッサー3が作動する構成例を示したが、車両を駆動するモーター等をコンプレッサー3の駆動機とすることも可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…車両用空調制御装置
2…エンジン
3…コンプレッサー
5…電磁クラッチ
21…空調用電子制御ユニット(ECU)
21a…クラッチ温度検出部
21b…エンジン回転数検出部
21c…外気温度検出部
21d…圧力閾値補正部
21e…時間閾値補正部
21f…切断制御部
21g…計時部
21h…接続制御部
22…圧力センサー(PS)
23…回転数センサー(RS)
24…クラッチ温度センサー(CTS)
25…外気温度センサー(OTS)
CT…電磁クラッチの温度
OT…車両の外気温度
P…冷媒の圧力
Pth…圧力閾値
R…エンジンの回転数
S1,S2…制御信号
T…経過時間
Tth…時間閾値