(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-24
(45)【発行日】2024-05-07
(54)【発明の名称】含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット
(51)【国際特許分類】
C08G 79/00 20060101AFI20240425BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240425BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240425BHJP
C08B 15/00 20060101ALI20240425BHJP
【FI】
C08G79/00
B01J20/26 B
C02F1/28 L
C08B15/00
(21)【出願番号】P 2020031472
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】木島 哲史
(72)【発明者】
【氏名】赤津 康彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 英夫
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-033164(JP,A)
【文献】特開2002-038038(JP,A)
【文献】特開2009-263598(JP,A)
【文献】特表2012-527544(JP,A)
【文献】特開2017-088845(JP,A)
【文献】特開2017-088722(JP,A)
【文献】特開2019-141836(JP,A)
【文献】国際公開第2021/171745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 79/00
B01J 20/26
C02F 1/28
C08B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
Rf(A-OH)
k 〔X〕
(ここで、kは1または2であり、kが1の場合Rfは
炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、
該パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換されたポリフルオロアルキル基、
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を含んで構成されるポリフルオロアルキル基、または
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基、炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、
kが2の場合Rfは
炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基であり、
Aは炭素数1~6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール、セルロース
繊維にキレート剤を化学的に結合させたファイバーおよびジルコニウム化合物の縮合体からなる含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項2】
一般式〔X〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
R
F-A-OH 〔I〕
(ここで、R
Fは
炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、
該パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換されたポリフルオロアルキル基、または
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を含んで構成されるポリフルオロアルキル基であり、
Aは炭素数1~6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコールが用いられた請求項1記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項3】
一般式〔I〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
C
nF
2n+1(CH
2)
jOH 〔II〕
(ここで、nは1~6、jは1~6の整数である)で表されるポリフルオロアルキルアルコールが用いられた請求項2記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項4】
一般式〔I〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
C
nF
2n+1(CH
2CF
2)
a(CF
2CF
2)
b(CH
2CH
2)
cOH 〔III〕
(ここで、nは1~6、aは1~4、bは0~2、cは1~3の整数である)で表されるポリフルオロアルキルアルコールが用いられた請求項2記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項5】
一般式〔X〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
R
F′-A-OH 〔Ia〕
または一般式
HO-A-R
F′′-A-OH 〔Ib〕
(ここで、R
F′は
炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基、
炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、
R
F′′は炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基であり、
Aは炭素数1~6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコールが用いられた請求項1記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項6】
一般式〔Ia〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
C
mF
2m+1O〔CF(CF
3)CF
2O〕
dCF(CF
3)(CH
2)
eOH 〔IIa〕
(ここで、mは1~3、dは0~100、eは1~3の整数である)で表されるヘキサフルオロプロペンオキシドオリゴマーアルコールが用いられた請求項5記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項7】
一般式〔Ia〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
C
mF
2m+1(OCF
2CF
2CF
2)
s(OCF
2CF
2)
t(OCF
2)
u(CH
2)
vOH 〔IIa´〕
(ここで、mは1~3、s、t、uはそれぞれ0~200、vは1または2の整数である)で表されるポリフルオロポリエーテルアルコールが用いられた請求項5記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項8】
一般式〔Ib〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
HO(CH
2)
fCF(CF
3)〔OCF
2CF(CF
3)〕
gO(CF
2)
hO〔CF(CF
3)CF
2O〕
iCF(CF
3)(CH
2)
fOH
〔IIb〕
(ここで、fは1~3、g+iは0~50、hは1~6の整数である)で表されるパーフルオロアルキレンエーテルジオールが用いられた請求項5記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項9】
一般式〔Ib〕で表される含フッ素アルコールとして、一般式
HO(CH
2CH
2O)
pCH
2CF
2(OCF
2CF
2)
q(OCF
2)
rOCF
2CH
2(OCH
2CH
2)
pOH 〔IIb´〕
(ここで、pは0~6、q+rは0~50の整数である)で表されるポリフルオロアルキレンエーテルジオールが用いられた請求項5記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項10】
ジルコニウム化合物が、テトラアルコキシジルコニウムである請求項1記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項11】
含フッ素アルコール100重量部に対し、セルロース繊維にキレート剤を化学的に結合させたファイバーが20~600重量部、ジルコニウム化合物が約50~500重量部の割合で用いられた請求項1記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【請求項12】
排水中に含まれるフッ素化合物の吸着剤として用いられる請求項1記載の含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素セルロースジルコニウムコンポジットに関する。さらに詳しくは、排水中に含まれているフッ素化合物の回収などに有効に用いられる含フッ素セルロースジルコニウムコンポジットに関する。
【背景技術】
【0002】
NF3、SF6、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン等のフッ素化合物は、その特異な性質を利用して、冷媒や溶媒など種々の用途に用いられている。これらのフッ素化合物は、極めて有用な化学物質であるが、一度自然界に放出されると蓄積され、生態系あるいは人体に有害となる場合がある。
【0003】
例えば、C8のパーフルオロアルキル基を有する表面処理剤は基質に塗布することで、高い撥水撥油性を示すコーティングが可能であるが、近年C7以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物が、細胞株を用いた試験管内試験において、発がん因子と考えられている細胞間コミュニケーション阻害をひき起すこと、かつこの阻害は官能基ではなく、フッ素化された炭素鎖長に依存し、炭素鎖が長いもの程阻害力が高いことが報告されており、フッ素化された炭素数の長い化合物を使用したモノマーの製造が制限されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4674604号公報
【文献】WO 2007/080949 A1
【文献】特開2008-38015号公報
【文献】米国特許第3,574,770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、環境中に放出されてもパーフルオロオクタン酸等を生成させず、しかも短鎖の化合物に分解され易いユニットを有する含フッ素アルコールを用い、フッ素化合物を含んだ排水中からフッ素化合物を吸着して分離するための吸着剤等として利用可能な含フッ素コンポジットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の目的は、一般式
Rf(A-OH)k 〔X〕
(ここで、kは1または2であり、kが1の場合Rfは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、該パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換されたポリフルオロアルキル基、炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を含んで構成されるポリフルオロアルキル基または炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基、炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、kが2の場合Rfは炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基であり、Aは炭素数1~6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコール、セルロース繊維にキレート剤を化学的に結合させたファイバーおよびジルコニウム化合物の縮合体からなる含フッ素セルロースジルコニウムコンポジットによって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る含フッ素セルロースジルコニウムコンポジットは、環境中に放出されてもパーフルオロオクタン酸等を生成させず、しかも短鎖の化合物に分解され易いユニットを有する含フッ素アルコールを用いていることから、環境汚染につながらない。また、高い撥水撥油性を有していることから、相対的に親フッ素性(フルオロフィリック)が高くなり、フッ素化合物を含んだ排水中からフッ素化合物を吸着して分離するための吸着剤等として有効に利用することができるといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般式〔X〕で表される含フッ素アルコールとしては、一般式
RF-A-OH 〔I〕
(ここで、RFは炭素数6以下のパーフルオロアルキル基、該パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子で置換されたポリフルオロアルキル基、または炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を含んで構成されるポリフルオロアルキル基であり、Aは炭素数1~6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコールが用いられる。この含フッ素アルコール〔I〕とセルロースファイバーおよびジルコニウム化合物の混合物の有機溶媒溶液は、各種フッ素化合物の分離を目的として吸着剤などとして用いられる。
【0009】
また、一般式〔X〕で表される含フッ素アルコールとしては、一般式
RF′-A-OH 〔Ia〕
または一般式
HO-A-RF′′-A-OH 〔Ib〕
(ここで、RF′は炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基、炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、RF′′は炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基であり、Aは炭素数1~6のアルキレン基である)で表される含フッ素アルコールが用いられる。この含フッ素アルコール〔Ia〕または〔Ib〕とセルロースファイバーおよびジルコニウム化合物の混合物の有機溶媒溶液についても、各種フッ素化合物の分離を目的として吸着剤などとして用いられる。
【0010】
含フッ素アルコール〔I〕としては、例えば一般式
CnF2n+1(CH2)jOH 〔II〕
n:1~6、好ましくは4~6
j:1~6、好ましくは1~3、特に好ましくは2
で表されるポリフルオロアルキルアルコール等が用いられる。
【0011】
アルキレン基Aとしては、CH2基、CH2CH2基等が挙げられ、かかるアルキレン基を有するパーフルオロアルキルアルキルアルコールとしては、2,2,2-トリフルオロエタノール(CF3CH20H)、3,3,3-トリフルオロプロパノール(CF3CH2CH2OH)、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパノール(CF3CF2CH20H)、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブタノール(CF3CF2CH2CH2OH)、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタノール(CF3CF2CF2CF2CH20H)、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキサノール(CF3CF2CF2CF2CH2CH2OH)、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクタノール(CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2OH)等が例示される。
【0012】
また、末端ポリフルオロアルキル基は、末端パーフルオロアルキル基の末端CF3基が例えばCF2H基などに置き換った基あるいは中間CF2基がCFH基またはCH2基に置き換った基を指しており、かかる置換基を有する含フッ素アルコール〔I〕としては、例えば2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール(HCF2CF2CH2OH)、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブタノール(CF3CHFCF2CH2OH)、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンタノール(HCF2CF2CF2CF2CH2OH)等が挙げられる。
【0013】
一般式〔II〕で表されるポリフルオロアルキルアルコールは、例えば特許文献1に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
まず、一般式
CnF2n+1(CF2CF2)b(CH2CH2)cI
で表されるポリフルオロアルキルアイオダイド、例えば
CF3(CH2CH2)I
CF3(CH2CH2)2I
C2F5(CH2CH2)I
C2F5(CH2CH2)2I
C3F7(CH2CH2)I
C3F7(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CH2)I
C4F9(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CF2CF2)2(CH2CH2)I
C2F5(CF2CF2)2(CH2CH2)2I
C4F9(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CF2CF2)(CH2CH2)2I
をN-メチルホルムアミド HCONH(CH3)と反応させ、ポリフルオロアルキルアルコールとそのギ酸エステルとの混合物とした後、酸触媒の存在下でそれに加水分解反応させ、ポリフルオロアルキルアルコール
CnF2n+1(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH
を形成させる。ただし、n+2bの値は6以下である。
【0014】
含フッ素アルコール〔I〕としてはまた、RF基が炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基および炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基を含んで構成されるポリフルオロアルキル基であり、具体的には炭素数3~20、好ましくは6~10のポリフルオロアルキル基であり、Aが炭素数2~6、好ましくは2のアルキレン基である含フッ素アルコール、例えば一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH 〔III〕
n:1~6、好ましくは2~4
a:1~4、好ましくは1
b:0~2、好ましくは1~2
c:1~3、好ましくは1
で表されるポリフルオロアルキルアルコール等も用いられる。
【0015】
一般式〔III〕で表されるポリフルオロアルキルアルコールは、特許文献1に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
まず、一般式
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cI
で表されるポリフルオロアルキルアイオダイド、例えば
CF3(CH2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)(CH2CH2)2I
C3F7(CH2CF2)(CH2CH2)I
C3F7(CH2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CH2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C2F5(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)I
C2F5(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)I
C4F9(CH2CF2)(CF2CF2)(CH2CH2)2I
C4F9(CH2CF2)2(CF2CF2)(CH2CH2)2I
をN-メチルホルムアミド HCONH(CH3)と反応させ、ポリフルオロアルキルアルコールとそのギ酸エステルとの混合物とした後、酸触媒の存在下でそれに加水分解反応させ、ポリフルオロアルキルアルコール
CnF2n+1(CH2CF2)a(CF2CF2)b(CH2CH2)cOH
を形成させる。
【0016】
含フッ素アルコール〔Ia〕としては、RF′基が炭素数6以下の末端パーフルオロアルキル基、炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有する、直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、具体的には炭素数3~305、好ましくは8~35のエーテル結合含有パーフルオロアルキル基であり、Aが炭素数1~3、好ましくは1のアルキレン基である含フッ素アルコール、例えば一般式
CmF2m+1O〔CF(CF3)CF2O〕dCF(CF3)(CH2)eOH 〔IIa〕
m:1~3、好ましくは3
d:0~100、好ましくは1~10
e:1~3、好ましくは1
で表されるヘキサフルオロプロペンオキシドオリゴマーアルコール
または一般式
CmF2m+1(OCF2CF2CF2)s(OCF2CF2)t(OCF2)u(CH2)vOH 〔IIa´〕
m:1~3、好ましくは3
s、t、u:それぞれ0~200の整数、好ましくは0~80の
整数
v:1または2、好ましくは1
で表されるポリフルオロポリエーテルアルコール等が用いられる。
【0017】
また、含フッ素アルコール〔Ib〕としては、RF′′基が炭素数6以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル結合を有し、具体的には炭素数5~160のパーフルオロアルキレン基またはポリフルオロアルキレン基であり、Aが炭素数1~3、好ましくは1のアルキレン基である含フッ素アルコール、例えば一般式
HO(CH2)fCF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕gO(CF2)hO〔CF(CF3)CF2O〕iCF(CF3)(CH2)fOH
〔IIb〕
f:1~3、好ましくは1
g+i:0~50、好ましくは2~50
h:1~6、好ましくは2
または一般式
HO(CH2CH2O)pCH2CF2(OCF2CF2)q(OCF2)rOCF2CH2(OCH2CH2)pOH 〔IIb´〕
p:0~6、好ましくは1~4
q+r:0~50、好ましくは10~40
で表されるパーまたはポリフルオロアルキレンエーテルジオール等が用いられる。
【0018】
一般式〔IIa〕で表されるヘキサフルオロプロペンオキシドオリゴマーアルコールにおいて、m=1、e=1の化合物は特許文献2に記載されており、次のような工程を経て合成される。
一般式 CF3O〔CF(CF3)CF2O〕nCF(CF3)COOR (R:アルキル基、n:0~12の整数)で表される含フッ素エーテルカルボン酸アルキルエステルを、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤を用いて還元反応させる。
【0019】
一般式〔IIa´〕で表されるポリフルオロポリエーテルアルコールとしては、市販品、例えばダイキン工業製品デムナム(DEMNUM)SA等を用いることができる。
【0020】
さらに、一般式〔IIb〕で表されるパーフルオロアルキレンエーテルジオールにおいて、f=1は特許文献3~4に記載されており、次のような一連の工程を経て合成される。
FOCRfCOF → H3COOCRfCOOCH3 → HOCH2RfCH2OH
Rf:-CF(CF3)〔OCF2C(CF3)〕aO(CF2)cO〔CF(CF3)CF2O〕bCF(CF3)-
【0021】
一般式〔IIb´〕で表されるポリフルオロアルキレンエーテルジオールとしては、市販品、例えばSolvay Solexis社製品Fomblin Z DOL TX等を用いることができる。
【0022】
セルロース繊維にキレート剤を化学的に結合させたファイバーとしては、線径約70~100μm、長さ約0.5~1.0mmのものが用いられ、例えば市販品であるキレスト製品キレストファイバーGRY-HW、IRY-HWをそのまま用いることができる。
【0023】
キレストファイバーは、セルロース繊維を基材とし、セルロース繊維にEDTA等のキレート剤(金属イオンと錯体を形成する化合物)を化学的に結合させたものであり、その立体構造や表面積の大きさにより(半)金属イオンに対して非常に速い吸着速度を有しているといった性質を有する。
【0024】
ジルコニウム化合物としては、アルコキシジルコニウム化合物が挙げられ、例えばテトラブトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウムなどのテトラアルコキシジルコニウムのほか、ジ-n-ブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジ-n-ブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトネート)など一般式
R:CH
3、C
2H
5、n-C
3H
7 、i-C
3H
7、n-C
4H
9、i-C
4H
9などの低級アルキル基
n:1~4の整数
で表されるキレート環およびアルコキシル基から構成される有機ジルコニウム化合物が挙げられ、好ましくはテトラアルコキシジルコニウムが用いられる。テトラアルコキシジルコニウムのアルコキシル基は、炭素数1~5の低級アルコキシ基が好ましく、4つのアルコキシ基は同一または異なっていてもよく、また枝分かれしていてもよい。
【0025】
これらの各成分は、含フッ素アルコール100重量部に対し、セルロースファイバーが約20~600重量部、好ましくは約100~300重量部の割合で、またジルコニウム化合物が約50~500重量部、好ましくは約100~300重量部の割合で用いられる。セルロースファイバーの使用割合がこれよりも多い割合で使用されると親水親油性を示すようになり、また、ジルコニウム化合物の使用割合がこれよりも多い割合で使用されると親水性を示すようになる。セルロースファイバーを用いない場合には、液状になり、またジルコニウム化合物を用いない場合には、有機物の吸着率が低くなるようになる。
【0026】
含フッ素アルコール、セルロースファイバーおよびジルコニウム化合物の反応は、含フッ素アルコールおよびセルロースファイバーを仕込んだこれらの可溶性溶媒、例えばメタノール中に、ジルコニウム化合物を加えて10~30分間攪拌後、例えば25重量%アンモニア水溶液を滴下して5時間攪拌し、一般に室温条件下で混合することにより行われる。反応終了後、約70~90℃、減圧下で溶媒を蒸発させることにより、含フッ素コンポジットが取得される。
【0027】
得られた含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット中の含フッ素アルコール量は、約5~60重量%、好ましくは約10~40重量%である。
【0028】
含フッ素アルコール、セルロースファイバーおよびジルコニウム化合物とからなる含フッ素コンポジットは、高い撥水撥油性を有することから、相対的に親フッ素性(フルオロフィリック)に富み、したがってビスフェノールAF等のフッ素化合物を吸着する吸着剤などとして用いることができる。具体的には、本発明の含フッ素コンポジットは、水やメタノール中で分散しているフッ素化合物を吸着することができるので、このコンポジットを遠心分離機などで回収後、フッ素系溶媒中に分散させてフッ素化合物を分離することが可能となる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0030】
実施例1
容量13mlの反応容器に、CF3(CF2)5(CH2)2OH〔FA-6〕50mg、セルロースファイバー(キレスト製品キレストファイバーGRY-HW)150mgおよびメタノール 5mlを仕込み、その後Zr(OCH2CH2CH3)4の70重量% 1-プロパノール溶液 150mgを攪拌しながら加えた。10分間攪拌後、25重量%アンモニア水溶液2mlを攪拌させながら滴下し、室温条件下で5時間攪拌を行った。その後、85℃、減圧下で溶媒を蒸発させて含フッ素セルロースジルコニウムコンポジット粉末を得た。
【0031】
得られたコンポジットを用いて、液滴の接触角測定および有機物吸着率の測定が行われた。
液滴の接触角(単位:°):
コンポジット粉末を直径5mm、深さ1mmのアルミニウム皿の中に平らになるように入れて測定サンプルとした。この測定サンプルに、シリンジを用いてn-ドデカンまたは水の液滴4μlを静かに接触させた。接触角計(協和界面化学製Drop Master 300)を用い、液滴がサンプルに吸収された場合が0°、液滴を接触させても全く吸収されずサンプルから離した際に液滴がシリンジの先に残存した場合を180°とした。
有機物質吸着率:
濃度75 mg/dm3のビスフェノールAまたは160 mg/dm3のビスフェノールAFの、水94重量%-メタノール6重量%混合溶液を作製し、この溶液5mlにコンポジット粉末20mgを加え、スターラーで一日攪拌した。攪拌した溶液をシリンジに取り付けたフィルターを通してコンポジットを除去し、得られた溶液について、UV-visスペクトルにより極大吸収波長の吸光度Aの測定を行った。有機化合物吸着前の有機化合物溶液の吸光度A0を用いて、有機化合物吸着率を次の式により算出した。
有機化合物吸着率(%)={ (A0 - A) / A0 }×100
【0032】
実施例2
実施例1において、FA-6の代わりにC3F7O〔CF(CF3)CF2O〕4CF(CF3)CH2OH〔PO-6-OH〕が同量(50mg)用いられ、またZr(OPr)4の70重量%1-プロパノール溶液量が100mgに変更されて用いられた。
【0033】
実施例3
実施例1において、FA-6の代わりにPO-6-OHが同量(50mg)用いられた。
【0034】
実施例4
実施例1において、FA-6の代わりにC3F7O〔CF(CF3)CF2O〕7CF(CF3)CH2OH〔PO-9-OH〕が同量(50mg)用いられ、またZr(OPr)4の70重量%1-プロパノール溶液量が100mgに変更されて用いられた。
【0035】
実施例5
実施例1において、FA-6の代わりにPO-9-OHが同量(50mg)用いられた。
【0036】
実施例6
実施例1において、FA-6の代わりに含フッ素アルコール CF3(CF2)3CH2(CF2)5CH2CH2OHが同量(50mg)用いられた。
【0037】
実施例7
実施例1において、FA-6の代わりにHOCH2CF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕gO(CF2)2O〔CF(CF3)CF2O〕jCF(CF3)CH2OH (g+j =7)〔OXF9DOH〕が同量(50mg)用いられた。
【0038】
実施例8
実施例1において、FA-6の代わりにHOCH2CF(CF3)〔OCF2CF(CF3)〕gO(CF2)2O〔CF(CF3)CF2O〕jCF(CF3)CH2OH (g+j=12)〔OXF14DOH〕が同量(50mg)用いられた。
【0039】
比較例
実施例1において、FA-6およびZr(OPr)4の70重量%1-プロパノール溶液が用いられなかった。
【0040】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は次の表に示される。
表